勇者ハンドボーラー ファンタジー

世界には、様々なルールが存在する。「人を殺してはいけない」「人を傷つけてはいけない」「ボールを持ったまま四歩以上歩いてはいけない」「コートプレイヤーがゴールエリア内に入ってはいけない」……。そしてこの世界の、この時代の最大のルール。それは「ハンドボールを制した者が、世界を制す」。 今、世界の覇権をかけて勇者と魔王がハンドボールで戦う!
マヤマ 山本 3 0 0 12/28
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第一稿

<登場人物>
シャムス(9)(22)勇者
ヱリ(20)シャムスの仲間、魔法使い
姫(0)同、姫
キヰス(22)同、戦士
ヂャック(28)同、商人
フルート(18)同、遊 ...続きを読む
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<登場人物>
シャムス(9)(22)勇者
ヱリ(20)シャムスの仲間、魔法使い
姫(0)同、姫
キヰス(22)同、戦士
ヂャック(28)同、商人
フルート(18)同、遊び人

グリフォン フルートの召喚獣
ペガサス  同
コカトリス 同

スォウ(23)元勇者
ウォーリー・トマス・ホーク(45)同
インプ  魔族

村長(60)
村人A、B
ゴブリンA、B



<本編>
○とある大陸
   実在する大陸とは異なる形。
ヱリN「世界には、様々なルールが存在します」

○リョスタの村・ハンドボールコート
   ハンドボールの練習をしている人々。粗末な服装の村人達に混ざり、きちんとした服装のシャムス(22)、ヱリ(20)の姿。シャムスの手首には特徴的なリストバンド。
ヱリN「『人を殺してはいけない』『人を傷つけてはいけない』『ボールを持ったまま四歩以上歩いてはいけない』」
   練習の様子を見守る姫(0)と村長(60)。姫の外見は十代後半の少女。
ヱリN「『他人の土地に侵入してはいけない』『他人の財産を奪ってはいけない』『コートプレイヤーがゴールエリア内に入ってはいけない』」
   村の鐘が鳴る。
   村人達の間に緊張が走る。
ヱリ「(シャムスに)来たみたいだね」
   頷くシャムス。
ヱリN「そしてこの世界の、この時代の最大のルール。それは……」
   やってくるゴブリン達。シャムス、ヱリ、村長を先頭に対峙する村人達。
   互いに持っているハンドボールを突き出すシャムスとゴブリン。
ヱリN「『ハンドボールを制した者が、世界を制す』」

○メインタイトル『勇者ハンドボーラー』

○某所・ハンドボールコート
   人間同士のハンドボールの試合が行われている。
ヱリN「ハンドボール。それは元々、人類がスポーツとして生み出したものです」

○(イメージ)人間界
   戦争する軍人や、選挙活動をする政治家の姿。
ヱリN「しかし、やがてその勝敗は、戦争や選挙に代わる権力争いのソレに変わっていきました」

○(イメージ)魔界
   ゴブリンやリザードマン、トロル、スケルトンといったモンスター達と、その背後に居る魔王のシルエット。
ヱリN「一方、かねてから人間界進出を目論んでいた魔界の長・魔王は、このハンドボールに目をつけ」

○某所・ハンドボールコート
   人間対モンスターのハンドボールの試合が行われている。
ヱリN「人類に勝つ為に、とある要素を持ち込んできたのです。それが……」

○リョスタの村・入口
   山道を歩くシャムス、ヱリ、姫。ヱリと姫が前を歩く形。
ヱリ「……はい、今回はここまで」
姫「え? 何でですか? 意地悪しないで話してくださいよ、ヱリさん」
ヱリ「ごめんね、姫。着いたみたいだからさ」
   二人の視線の先、村の入口がある。
姫「本当ですか? (振り返り)到着したそうですよ、勇者様」
   姫と目が合い、慌てて逸らすシャムス。
   村人達の歓迎の声。

○同・村長宅・前
   他の家よりやや大きめの平屋。
   村長を筆頭とした村人たちに歓迎されるシャムス、ヱリ、姫。シャムスはヱリの後ろに隠れるように立っている。
村長「こんな何もない村に、ようこそ来ていただきました。勇者様」
   一同の視線がシャムスに集まる。この先のシーンも含め、シャムスは非常に小声。
   T「シャムス 勇者 レフトバック 習得魔法:炎系」
シャムス「……あ、どうも」
ヱリ「もっと声張んなさいよ」
シャムス「声を出すと疲れる」
   T「ヱリ 魔法使い センターバック 習得魔法:未来予知」
ヱリ「すいませんね。このバカ勇者、人見知り激しくて」
シャムス「バカは余計だ」
村長「我が村をぜひともよろしくお願いします」
   シャムスに握手を求める村長。やや躊躇しながらもそれに応じるシャムス。
   それを皮切りに、一斉にシャムスの元に殺到する村人達。ヱリらに助けを求めるような視線を送りながら、村人達との握手に応じるシャムス。
   T「姫 マネージャー 習得魔法:??」
姫「それにしても、凄い歓迎ぶりですね。いつもこのような雰囲気なのですか?」
ヱリ「いや……何か変」
村長「(村人に)おい、勇者様歓迎の狼煙をあげなさい」
   威勢よく返事し、駆け出す村人。
村長「これでゴブリンどもも、しっぽを巻いて逃げ出すかもしれませんな。ハッハッハ」
シャムス「……え?」
村長「……え?」
ヱリ「……え?」
村長「……勇者様は、この村の危機を察知して来て下さったのでは……?」
   顔を見合わせるシャムス、ヱリ、姫。

○山林
   リョスタの村から上がる狼煙を見ているキヰス(22)、ヂャック(28)、フルート(18)の後ろ姿。この時点では全員の顔はまだわからないが、ヂャックの体形は太め。
キヰス「あの狼煙は?」
ヂャック「『勇者様歓迎』だねー、うん」
キヰス「お、ビンゴじゃねぇか。行こうぜ」
フルート「え~、面倒くせぇ」
   動き出す三人の後ろ姿。
姫の声「ゴブリン、ですか?」

○リョスタの村・村長宅・外観(夜)
   歓迎の宴が開かれている様子。
村長の声「はい、突然村にやってきまして」

○同・同・居間(夜)
   村人が集まって宴が開かれている。
   その中で村長からの接待を受けているシャムス、ヱリ、姫。尚、シャムスは食事にほとんど手を付けていない。
村長「この村を立ち退くように、と。もちろん断りましたが、そうしますと……」
ヱリ「ハンドボールの試合をする事になった?」
村長「(頷き)それが、半月前の事です」
ヱリ「って事は、試合は……」
村長「明日です」
ヱリ「なるほど。そんなタイミングでウチらが来たら、そりゃ勘違いしますよね」
村長「皆様は、どういった経緯でこの村へ?」
姫「それは、私のせいでして……」
ヱリ「『せい』っていうか、まぁ、姫が夜中にフラフラと突然出て行っちゃって……」

○(回想)山林(夜)
   何かに導かれるように歩いて行く姫とそれを追いかけて行くシャムス。
ヱリの声「ウチのバカ勇者が、姫を追いかけて」
   その姿を物陰に隠れて見ているヱリ。
ヱリ「二人きりでどこに? まさか……」
   こっそり後を付けるヱリ。
    ×     ×     ×
   迷子になるシャムス、ヱリ、姫。
ヱリの声「森の中で迷子になって」

○リョスタの村・村長宅・居間(夜)
   村長からの接待を受けているシャムス、ヱリ、姫。
ヱリ「この村にたどり着いた、という次第で」
村長「では、コチラのお姫様が我が村の救世主、という訳ですな」
姫「ただ、私も自分が何であんな風に出て行ったのか、さっぱり……」
ヱリ「姫はそもそも、記憶喪失で」
村長「そうでしたか。それは心配ですな」
姫「お気になさらず」
村長「ところで、勇者様」
   飲んでいた水を吹き出すシャムス。
ヱリ「呼ばれただけで驚きすぎ」
村長「お食事、お口に合いませんか?」
シャムス「いや、その、そういう訳じゃ……」
村長「(村人に)これ、勇者様にありったけの料理をお出ししなさい」
シャムス「いや、だから……」
村長「あ、そうだ。とっておきのお酒があるので、今蔵から……」
シャムス「(比較的大声で)結構です!」
村長「え?」
   一同の注目を浴びるシャムス。
シャムス「うっ……」
   貧血のように倒れそうになるシャムスと、その体を支えるヱリ。
村長「大丈夫ですか、勇者様!?」
ヱリ「放っといていいですよ。このバカ勇者、大声出すと疲れて倒れちゃうんで」
シャムス「(更なる小声で)バカは余計だ」
ヱリ「それにしてもさ、そんな大声出してまで嫌がる事かね?」
シャムス「あぁ嫌だよ。こんな、先に借りを作るような事」
   リストバンドを見つめるシャムス。
シャムス「ソレがもし、一生返せない借りになっちまったら……」

○(回想)教会・前
   泣きじゃくるシャムス(9)の頭をなでるスォウ(23)。その手には、今シャムスが着けているリストバンド。
スォウの声「このリストバンドは『勇者の証』って呼ばれている」
    ×     ×     ×
   リストバンドをシャムスに託すスォウ。
スォウ「守るべき人を守った君にこそ、相応しいと思う。受け取ってくれるね?」
   頷き、受け取るシャムス。
村長の声「勇者の証……」

○リョスタの村・村長宅・中(夜)
   宴の最中。村長の接待を受けるシャムス、ヱリ、姫。シャムスのリストバンドを見ている村長。
シャムス「え?」
村長「いえ、噂で耳にした事はあったのですが、実物を見るのは初めてでしてな」
   リストバンドに目を落とすシャムス。
村長「先代の勇者様が亡くなられてから、所在不明と聞いていたのですが、継承されていたのですな」
シャムス「あぁ……えぇ、まぁ」
姫「シャムスさんのお父様とヱリさんのご両親は、先代の勇者様のパーティの一員だったそうですよ」
村長「それは心強い。これならば、人類の未来も明るいですな」
ヱリ「その前にまず、明日ですね……」
村長「そうですな。我が村のチームに、お二人が助っ人とし入っていただく形にはなると思うのですが……」
ヱリ「まぁ、何とかしますよ。ねぇ、シャムス」
シャムス「……あぁ、負ける訳にはいかない」
   キッと目を開くシャムス。
シャムス「コレは、俺達の逆襲なんだから」
   しばしの沈黙。
村長「(ヱリに)……今、勇者様は何とおっしゃったんですかね?」
ヱリ「……さぁ? (シャムスに)ねぇ、もっと声張んなさいよ」
シャムス「……」
   笛の音。

○同・ハンドボールコート
   村人とゴブリンによるハンドボールの試合が行われている。攻撃中の村人チーム。マークされているシャムスにパスを出す村人A。
村人A「勇者様」
シャムス「え?」
   パスを受けた瞬間、ゴブリン達に挟まれ、止められるシャムス。
   笛が鳴る。
ゴブリンA「オッケー、ナイディー(『ナイスディフェンス』の略)」
村人A「勇者様、ドンマイです」
シャムス「今のは、俺じゃなくてヱリにパスを出した方が……」
村人A「(聞き取れず)え、何か?」
シャムス「だから、今のは俺じゃなくて……」
村人A「(聞き取れず)え?」
シャムス「……何でもないです」
   その様子を見ているヱリ。ため息。
    ×     ×     ×
   村人チームが三点差で負けている事を示すスコアボード。
   ハーフタイム中。ベンチ前に集まるシャムス、ヱリ、姫、村長ら村人達。
村長「(村人達に)これ、お前達。勇者様の足を引っ張るんでない」
村人A「すみません」
村長「もっと勇者様にボールを集めて……」
シャムス「いや、そうじゃなくて……」
   シャムスの声は誰にも聞こえていない。
ヱリ「ほら、言うならちゃんと言わないと」
シャムス「いや、でも……」
ヱリ「(ため息をついて)皆さん、ちょっといいですか?」
   ヱリを中心とした村人達の輪。その外に居るシャムスと姫。
姫「大丈夫ですか?」
シャムス「思ってたより、厄介なゴブリンかな」
姫「それは、負けるかもしれない、という事ですか?」
シャムス「いや、負けない。俺達の逆襲が、こんなところで終わる訳ない。……だから、姫。お願いがあるんだけど」
姫「私に、ですか?」
ヱリN「……では、さっきの続きを」
    ×     ×     ×
   試合再開、ゴブリンチームの攻撃中。
ヱリN「人間界支配をもくろむ魔王は、人類に勝つ為、ハンドボールにとある要素を持ち込んできたのです。それが……」
ゴブリンB「よし、やっちまえ」
ゴブリンA「ヒヒ、くらえ」
ヱリ「(察して)来る!」
ゴブリンA「土砂魔法、砂塵!」
   魔法で砂塵を発生させるゴブリンA。
ヱリN「魔法」
   砂塵で視界を奪われる村人B(=村人チームのGK)。
村人B「うわ~っ!?」
   シュートが決まる。
   喜ぶゴブリンチームの面々。
ヱリN「魔法を駆使したハンドボールで、魔王率いる魔族はあっという間に人間界を制圧してしまいました」

○(イメージ)書斎
   魔法の書を読みあさる人間達。
ヱリN「人類も慌てて魔法の習得に励みましたが、やはり魔族には一日の長があり」

○リョスタの村・ハンドボールコート
   喜ぶゴブリンチームの面々。
ゴブリンA「これで一〇点差だな」
ゴブリンB「勇者なんて、大したことねぇな」
   村人Bの元に集まるシャムス達。
ヱリN「人類が未だに覇権を奪還できない要因の一つと言われています」
ヱリ「さすがに、ちょっとヤバい?」
シャムス「大丈夫、きっともうすぐ……」
    ×     ×     ×
   ゴブリンチームの攻撃中。ポストプレイヤーの位置に入り、シャムスをブロックしているゴブリンB。
ゴブリンB「勇者とはいえ、お仲間がいないと何もできないか?」
シャムス「……」
ゴブリンB「おやおやおや、図星か? 黙ってないで、何とか言えよ」
シャムス「喋ると疲れる」
   パスを回すゴブリン達。タイミングを伺っているヱリ。視界の端で、何かに気付くシャムス。笑みを浮かべる。
ゴブリンB「(笑みに気付き)どうした? もう一〇点差だし、諦めちまったか?」
シャムス「まさか」
   半ば倒れ込みながらパスをカットするヱリと走り出すシャムス。
   前に大きくボールを投げ出すヱリ。
ヱリ「行け、シャムス!」
   ゴブリンBを振り切ってボールを受け取り、シュートを決めるシャムス。
   ゴブリンBに向けて指を指す。
シャムス「お前、さっき言ったな。『仲間がいないと何もできない』って」
ゴブリンB「それがどうかしたか?」
シャムス「仲間なら、居る」
ゴブリンB「ふんっ、女一人居るからって、大したこと……」
シャムス「よく見ろ」
ゴブリンB「あ?」
   シャムスが指差しているのはゴブリンBではなく、そのさらに後方。
   その指す先にあるものに気付くヱリ。
ヱリ「村長さん。タイムアウトを」
村長「は、はい」
   村人チームのベンチ前にやってくる姫、キヰス、ヂャック、フルート。三人の顔はここで初めてわかる。
   T「キヰス 戦士 右サイド 習得魔法:なし」
キヰス「おいおい、随分負けてんな」
   T「ヂャック 商人 GK 習得魔法:伸縮」
ヂャック「いやぁ、でもまずは三人とも無事でよかったよー、うん」
   T「フルート 遊び人 ?? 習得魔法:召喚」
フルート「つーか、マジで試合すんの? 聞いてねぇんだけど」
村長「もしかして、こちらの方々が、勇者様のお仲間様ですかな?」
姫「はい、私が迎えに行ってきました」
    ×     ×     ×
   タイムアウト中。シャムスを中心に集まるヱリ、姫、キヰス、ヂャック、フルート、村長ら村人達。
ヱリ「遅いよ、お兄ぃ」
キヰス「うるせぇ。こっちは狼煙見つけてすぐ来たんだよ」
ヂャック「まぁまぁ。でもさー、この残り時間で九点差だと、フルメンバーで行くしかないよねー、うん」
   頷くシャムス。
村長「残り2人はどうされます? ウチの村の選手でお役に立てるか……」
ヱリ「あ、大丈夫です。ねぇ、フルート」
フルート「ヤダ」
ヱリ「おい」
フルート「つーか、人数足りてんだろ? 何で俺が……」
ヱリ「(鬼の形相で)いいから、やれ!」
フルート「あ~、うぜぇ。どれで行く?」
ヱリ「グリちゃん、ペガちゃん、コカちゃんで」
フルート「はいはい」
   カードを三枚取り出すフルート。
フルート「グリフォン、ペガサス、コカトリス、召喚」
   グリフォン、ペガサス、コカトリスの三体の召喚獣が出現する。いずれも元ネタとなる空想上の生き物を、二足歩行型にアレンジした姿。村人達から感嘆の声。
   並び立つシャムス、ヱリ、キヰス、ヂャック、グリフォン、ペガサス、コカトリス。両端に姫とフルートも居る。
シャムス「さて、ここからが俺達の逆襲だ」
ヱリ「みんな、行くよ」
一同「おう!」
    ×     ×     ×
   試合再開。
キヰスの声「っしゃあ!」
   シュートを決め、戻ってくるキヰスとグータッチをするヱリ。
ヱリ「ナイッシュー、お兄ぃ」
キヰス「おうよ」
   ベンチに座る姫の目の前までやってくるキヰス。
キヰス「今、俺が決めたの見てた?」
姫「はい」
ヱリ「さっさと戻れ、バカ兄ぃ」
村人Aの声「すげぇ……」
   五点差を示すスコアボード。
村人Aの声「これで五連続得点」
   ボールを回す魔族チーム。
ゴブリンB「ふん、まだまだ」
   ボールを持って突っ込んでくるゴブリンBを止めるグリフォンとペガサス。
ゴブリンB「なっ!?」
   T「グリフォン ライトバック」
グリフォン「貴殿を行かせない事が、我々の使命ですぞ。ねぇ、ペガサス殿」
   T「ペガサス ポスト」
ペガサス「(頷き)ペガ」
   苦し紛れにゴブリンBが出したパスをカットするコカトリス。
ゴブリンB「しまった」
   そのままドリブルし、シュートを決めるコカトリス。
ヱリ「ナイッシュー、コカちゃん」
   T「コカトリス 左サイド」
   かけられた言葉の意味がわからず首を傾げるコカトリス。
   考え込むコカトリス。
   ヱリを威嚇するコカトリス。
ヱリ「褒めたんだよ。わかれよ」
村人Aの声「あの召喚獣達、大活躍ですね」
   ベンチに座る姫、村長、村人A。
村人A「同時に複数の召喚獣を動かすなんて一体どうやって……」
   姫の隣、ベンチに横になって眠っているフルート。
姫「このような感じです」
村人A「寝ながら!?」
    ×     ×     ×
   ゴブリンチームの攻撃中。ゴールからやや離れた位置でボールを受けるゴブリンA。
ゴブリンA「調子んのんなよ!」
ヱリ「来るよ!」
ゴブリンA「土砂魔法、砂塵!」
   砂塵に襲われるヂャック。
ヂャック「そう来たかー、うん。伸びろー」
   ヂャックの腕が文字通り伸び、シュートを止める(本来、太くて短い腕が、細長くなるような感じ)。
ゴブリンA「何っ!?」
村人Aの声「伸びた!?」
ヱリ「ナイスキー、ヂャッ君」
   ベンチに座る姫、村長、村人A。
姫「ヂャックさんは魔法で手足を伸ばせるんです」
村人A「さすが勇者様チーム。レベルが高い」
村長「という事は、あれですな。それだけのメンバーが集まっとりますと……」
    ×     ×     ×
   勇者チームの攻撃中。ゴブリン達の動きをじっと見ているヱリ。
村長の声「ヱリ様のお力も大いに生かされるでしょうな」

○(イメージ)同・同
   ヱリの能力で見える、少し先の未来のビジョン。
   ペガサスをマークしているゴブリンBが、ヱリからグリフォンへのパスをカットしようと飛び出してくる。同時にフリーになったペガサスをマークする為、ゴブリン達のマークが一匹分ずつズレる。
ヱリ「見えた」

○同・同
   ボールを持つヱリ。グリフォンへパスを出そうとする。
ヱリ「グリちゃん」
   パスをカットしようと飛び出してくるゴブリンB。
ゴブリンB「いただきっ」
   その瞬間、ペガサスに視線を向けるヱリ。
ヱリ「……と見せかけて」
   フリーになったペガサスをマークする為、ゴブリン達のマークが一匹分ずつズレる。体をキヰスの方に向けるヱリ。
ヱリ「お兄ぃ!」
   上記の結果、ノーマークでパスを受けるキヰス。
キヰス「よくやった、妹!」
村人Aの声「上手い!」
キヰス「く、ら、え~!」
   体をほぼ地面と水平にしたジャンプシュート(=ムササビシュート)を放つキヰス。決まる。
キヰス「しゃあ!」
村人Aの声「あの人も凄ぇ」
   ベンチに座る姫、村長、村人A。
村長「魔法を使っとるそぶりはないが……」
村人A「シンプルに上手ぇ」
   再び姫の前に立つキヰス。
キヰス「姫、今のも俺が決めたんだよ」
姫「はい、見てました」
ヱリ「だから、さっさと戻れバカ兄ぃ」
    ×     ×     ×
   勇者チームの攻撃中。ゴブリン達に指示を出すゴブリンB。
ゴブリンB「そのサイドの奴は気をつけろよ。召喚獣のマークも外すな。あとは……」
   シャムスがポストの位置に入り、ゴブリンBをブロックする。
ゴブリンB「勇者!? 何故ココに!?」
シャムス「……確かに、俺は仲間がいないと何もできない」
ゴブリンB「は?」
シャムス「だけど、コレは俺一人の戦いじゃない。俺の、仲間の、人類の、そして……」
   リストバンドに手をやるシャムス。
シャムス「先代の、逆襲なんだ」
   本来のポジションに戻るシャムス。入れ替わりでペガサスがゴブリンBをブロックする。
ゴブリンB「待て、勇者!」
   シャムスにパスを出すヱリ。
ヱリ「さぁ、美味しい所決めちゃえ」
シャムス「あぁ」
   ジャンプシュートの体勢に入るシャムス。ボールが火を纏う。
ゴブリンA「あの魔法は……」
シャムス「火炎魔法……」
   懸命に腕を伸ばすゴブリンB。
ゴブリンB「させるか……」
   火を纏ったボールでシュートを放つシャムス。
シャムス「火ノ球(ファイヤーボール)!」
   ゴブリンBの腕もGKも弾き飛ばし、ゴールに突き刺さるシャムスのシュート。
シャムス「(大声で)っしゃああ!」
   ベンチで喜ぶ姫、村長、村人達。
   喜び、シャムスの元に集まるヱリ、キヰス、ヂャック。
インプの声「あーあー、アイツら負けちゃうよ~、残念無念」

○同・外の崖
   ハンドボールコートが見える高台。
   崖の上から勇者チームとゴブリンチームの試合の様子を見下ろしている魔族のインプと人間のウォーリー・トマス・ホーク(45)。ホークはローブのフードを深く被っており、顔は見えない。
インプ「あの村、ゲート計画には最適だったのに、何で勇者達に嗅ぎ付けられちゃったんだろうな~、残念無念」
ホーク「知らん」
インプ「え~、知り合いなんでしょ~?」
ホーク「アイツがガキの頃の話だ」
インプ「使えないな~、残念無念」
ホーク「心配はいらん。人間なんて所詮、一枚岩にはなれん種族だ」
インプ「君が言っちゃうと、説得力が違うね~」
   踵を返すホークと嫌らしい笑みを浮かべるインプ。
インプ「元勇者さんよ」
ホーク「ふん」

○リョスタの村・ハンドボールコート
   ベンチに横になるシャムスとその様子を見守るヱリ、姫ら。
シャムス「大きな声、出し過ぎた……」
ヱリ「バカ勇者」

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