質屋に訪れたモンスター コメディ

レプロエンターテインメント「百演」に応募したコント作品です。 女店主が営む質屋に、ある日変わった母子が訪れる。 息子を質に入れて金を借りようとする母親。 なぜか女店主になついてくるマセたクソガキ(息子)。 最悪の日が始まろうとしていた。
井出眞諭 31 0 0 11/20
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第一稿

登場人物
 山田マミ(24)質屋の女店主
 大澄愛(30)質屋に現れた客
 大澄健太(6)愛の息子
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登場人物
 山田マミ(24)質屋の女店主
 大澄愛(30)質屋に現れた客
 大澄健太(6)愛の息子
----------------------------------------------------------------------------------   
本文
   質屋の店内。
   店主のマミが暇そうにしている。
   入ってくる大澄愛と健太。
愛「あのぉ……こちら質屋さんでよろしかっ
 たでしょうか?」
マミ「はい、そうですけど」
愛「よかった。ちょっとこの子を預かってい
 ただきたくて……」
   健太を差し出す愛。
マミ「はい?」
愛「10万ほど貸していただけませんか」
マミ「いや、ちょっと無理ですね……」
愛「では、8万ということで」
マミ「いやあ……」
愛「じゃあ5万。わかりました3万で!」
マミ「だから金額の問題じゃなくて」
愛「夕方には迎えに来ますから」
マミ「託児所じゃないんです。ここは質屋な
 んですよ。子供預けといてお金まで借りれ
 るところなんてないでしょ?」
愛「ダメですかぁ……」
マミ「当たり前でしょ、いったい何考えてん
 ですか」
健太「ねぇママ、お腹すいた」
愛「そうよね、お腹すいたわよね」
健太「(マミを見て)お腹すいた」
マミ「どうしてアタシを見つめるの?」
愛「お名前は?」
健太「大澄ケンタ!」
愛「ケンタくんは、いくつ?」
健太「6歳!」
愛「あら! いい子ねぇ!」
マミ「……理由を聞かせていただけます?」
愛「はい?」
マミ「だから、お金借りに来たんでしょ。そ
 のへんのATMでも借りれるでしょ。なん
 でうちに借りに来たんですか」
愛「それ聞いちゃいます?」
マミ「なにかそれなりの深い理由があるんな
 ら考えなくもないですけど」
愛「ほんとに? 考えてくれるんですか?」
マミ「だから理由を聞かせてください」
愛「それが、子供の前で言える話じゃないん
 ですけどね、ちょっと今、若い子と付き合
 っててお金かかるのよ。限度額いっぱいい
 っぱいなのよ」
マミ「ちょっと、子供の前でなにぶっちゃけ
 てんですか!」
愛「聞いたのはそっちでしょ。言わないと貸
 してくれないんでしょ? あなたのせいで
 喋っちゃってんでしょ?」
健太「ママ、限度額ってなに?」
愛「いいのよ、ケンタは知らなくて」
マミ「あなた、母親として恥ずかしくないん
 ですか?」
愛「あー聞きたくない!」 
健太「ママをいじめないで! ママは母親で
 ある前に女でいたいんだ!」
マミ「どこでそんな言葉覚えてくるの?」
健太「あ~お腹すいたよぉ」
愛「そうよね、お腹すいたわよね」
マミ「あなたね、男と遊ぶ前に、この子にち
 ゃんと食べさせてあげなさいよ」
愛「言われなくてもわかってるわよ! でも
 しょうがないじゃない。私にはこんな生き 
 方しかできないのだから……」
健太「お腹すいたよぉ」
マミ「あーもうわかりましたよ」
愛「え……。今なんて?」
マミ「貸しますよ! その代わり3万だけで
 すからね」
   マミ、金を差し出す。
愛「ありがとうございます! じゃあいい子
 にしてるのよ」
健太「わかった!」
   金を受け取り出て行こうとする愛。
マミ「あのちょっと!」
愛「まだ何か?」
マミ「お子さんは預かれないので、連れてっ
 てもらえます?」
愛「ええ? だってこの子を質に入れる代わ
 りにお金をお借りしたわけでしょ。このお
 金を返さないことには、私の元に息子は戻
 って来ない形でよろしいんですよねぇ?」
マミ「だからニュアンスが微妙におかしいで
 すよね。え、お金返す気あるんですよね? 
 お子さん引き取りに来る気あるんですよね
 ぇ?」
健太「ママ、そろそろ時間だよ? 待たせる
 とまた哲夫さんキレちゃうんじゃない?」
マミ「どうゆう人とつきあってんですか?」
愛「彼、怒るとすぐに手を上げてくるんだけ
 ど、そのあとはすごく優しいんです」
マミ「典型的な奴じゃないですか……ねぇ、
 ボクも一緒に行ったら? ママを守ってあ
 げなきゃダメよ」
健太「僕の存在がバレたら哲夫さん、ママに
 何をしてくるかわかったもんじゃないよ」
マミ「段階的にあたしを不安にさせるのやめ
 てくれる?」
愛「ケンタ、こんなママでごめんね」
健太「お腹すいたよぉ。意識が遠のくよぉ」
マミ「あぁ完全にもらい事故だこれ」
愛「申し訳ありません、このお金は必ず!  
 必ずや、お返ししますので」
マミ「ちゃんと返してくださいね。この子も
 今日中に引き取りに来てくださいよ」
愛「あー聞きたくない! 他人の説教はもう
 こりごりなのよ!」
マミ「情緒がきわめて不安定なんですけど、
 本当に大丈夫ですか?」
健太「ママを行かせてあげて」
マミ「どうゆう気持ちで言ってるの?」
健太「ママを行かせてあげて。お金を返しに
 来なくても許してあげて。その時はお詫び
 にこの家の子供になってあげるから」
マミ「どっちにしろ困るのよ」
   しれっと出て行こうとする愛。
マミ「待って待って待って!」
愛「もうなんですか」
マミ「あなたねぇ、これじゃただお金もらっ
 た上に、子供は他人に押し付けてくってい
 う最低な母親ですよ」
愛「お金借りただけでしょ? 子供預けるだ
 けでしょ? 何がいけないって言うのよ」
マミ「どうどう巡りなんだよな」
健太「ねぇお腹すいた」
愛「この人に何か食べさせてもらいなさい」
マミ「あなたまさか、子供捨てて男と逃げる
 つもり?」
愛「ちょっとなんですかその言い草。あたし
 がそんな女に見えますか?」
マミ「もはや、そうゆう風にしか見えないで
 しょ! わかりました、こうしましょう」
愛「そうしましょ!」
   出て行こうとする愛。
マミ「待って! ねぇ、ちゃんと聞いて。あ
 なたが今夜中に戻ってこなかったら児童相
 談所に連絡します。いいですね」
愛「え……」
マミ「あなたのその無責任な行動もすべて報
 告しますから。いいですね」
愛「わかったわよ。ケンタ、いい子にしてる
 のよ。すぐに戻ってくるから」
健太「うん、わかった!」
   出ていく愛。
マミ「……これで本当に良かったのかな」
健太「ねえ、お腹すいた」
マミ「あ、待ってて今なにか作ってあげる」
健太「おねえさんいくつ? かわいいね」
マミ「じろじろ見ないでよ」
健太「なに恥ずかしがってんだよ。ねぇ結婚 
 してないの? 彼氏は?」
マミ「あなたホントに6歳なの?」
健太「年齢なんか関係ないじゃん。一緒にお
 風呂入ろうよ」
マミ「大人をからかうのはやめなさい。お母
 さんに言いつけるわよ」
健太「どうせママは戻ってこないよ。本当は
 ボクのことが邪魔で邪魔で仕方ないんだか
 ら……。うぅ、うわーん」
   泣き出す健太。
マミ「泣かないで」
健太「うう……」
マミ「ボクさ、ママにぶたれたりしたことは
 あるの?」
健太「ぶたれたりしたことは、ない」
マミ「そう」
健太「でも言うこと聞かないとね、夜、森に
 連れて行かれて、木に縛り付けられたこと
 ならある」
マミ「立派な虐待じゃない」
健太「虐待ってなに?」
マミ「いいのよ知らなくて」
健太「社会的弱者が強い立場の人間から習慣
 的に冷酷な扱いを受けること?」
マミ「おおよそ見当はついてるのね。つらか
 ったわね、でももう大丈夫。いますぐ保護
 してもらうように頼んであげるから」
健太「電話はしないで」
マミ「どうして?」
健太「ママが怒られちゃうから」
マミ「こんな扱いをされてもまだママのこと
 が好きだって言うの?」
健太「うん。ママ大好き」
マミ「困ったなぁ。どうすればいいんだろ」
健太「じゃあ抱きしめて」
マミ「え?」
健太「ボクを抱きしめて。早く!」
マミ「……これでいい?」
健太「あぁ、落ち着く~」
マミ「もういいかな」
健太「ねぇ一緒にお風呂はいりたい」
マミ「どうしてそこをゴールにしたがるの」
   愛が戻ってくる。
愛「あのぉ……」
マミ「あ!」
健太「ママ!」
愛「これ、お借りした3万円」
マミ「戻ってきてくれたんですね」
愛「彼がスロットで大勝ちしたもんだから」
マミ「もうなんて言うか……。もはや何も言
 えない気分です」
愛「はい、じゃあさらに3万円」
マミ「え? なんですかこれ」
愛「うちの健太、もう1日だけ預かってもら
 おうかなと思って」
マミ「3万で?」
愛「3万で」
マミ「少ねーよ」

   暗転。

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