お祝い返し ドラマ

会社の新社長に就任した城宮悠太(43)。彼の元に「岡村美喜子」という人物から就任祝いの品が届くが、彼にも秘書にもその人物に心当たりがない。
マヤマ 山本 34 0 0 11/16
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第一稿

<登場人物>
城宮 悠太(43)社長
野上 崇宏(37)秘書

配達員      声のみ



<本編>
○オフィスビル・外観

○同・社長室
   窓から ...続きを読む
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<登場人物>
城宮 悠太(43)社長
野上 崇宏(37)秘書

配達員      声のみ



<本編>
○オフィスビル・外観

○同・社長室
   窓から見える、四~五階からのものと思しき景色。
   部屋の端に「就任祝」と書かれた贈り物の数々。尚、贈り物の数はこの先徐々に増えていく。
   社長席に座る城宮悠太(43)とその向かい側に立つ野上孝弘(37)。ともに送り主の確認作業をしている。机の上には「社長 城宮悠太」の札。
城宮「野上君、この堀北さんって誰?」
野上「BSBの社長さんです」
城宮「あぁ、あそこの。じゃあ、一番いいヤツで返しといて。よろしく」
野上「承知しました。ところで社長、こちらの中畑さんというのは……?」
城宮「あぁ、ソイツは俺の腐れ縁だな。一番安いヤツでいいよ。よろしく」
野上「承知しました」
城宮「……あ、この岡村さんって人は誰?」
野上「いや、私は存じ上げませんが……社長の個人的なお知合いではないんですか?」
城宮「いや、知らないな」
野上「どうされます?」
城宮「……まぁ、一番安いヤツでいいから、一応お返し送っといて。よろしく」
   二人の間に置かれた「就任祝 岡村」という掛け紙付きの贈り物。

○メインタイトル『お祝い返し』

○オフィスビル・外観

○同・社長室
   部屋の端に「お中元」と書かれた贈り物の数々。
   社長席を挟んで向かい合う城宮と野上。
城宮「また随分と届いたな」
野上「まぁ、社長ですからね」
城宮「でも野上君も、これ全員にお中元送っておいてくれてる訳でしょ?」
野上「あ~……それなんですが……」
城宮「? 何かあった?」
野上「実は、この方がですね」
   と言って「お中元 岡村」という掛け紙付きの贈り物を見せる野上。
城宮「あぁ。この人、また送ってきてくれたの?」
野上「はい。ただ、結局どこのどなたなのか……。伝票を見る限り『岡村美喜子』さんという方らしいのですが、社長は本当にご存知ないのでしょうか?」
城宮「無いね」
野上「女性のようですし、苗字は変わっている可能性もありますが……?」
城宮「う~ん……無い」
野上「そうですか」
城宮「電話かけてみれば? 番号、書いてあるんでしょ?」
野上「何度かけても留守番電話でして」
城宮「そっか……」
野上「どうされます?」
城宮「まぁ、でも貰っちゃったもんは貰っちゃった訳だし、この人にもお中元、送っといて。よろしく」
野上「……承知しました」
    ×     ×     ×
   「お歳暮 岡村」という掛け紙付きの贈り物を持ってやってくる野上。
野上「失礼します」
   通話中の城宮。
城宮「(受話器を塞ぎ)そこ置いといて。(電話口へ)そこを何とか、お願いできないでしょうか……」
   部屋の端に「お歳暮」と書かれた贈り物の数々。持ってきた贈り物をそこに追加する野上。
城宮「(電話口へ)本当ですか? ありがとうございます。はい、早急に……」
    ×     ×     ×
   打ち合わせをする城宮と野上。
城宮「いや、コチラの会長さんはビールよりワインをお送りした方が喜ばれるよ」
野上「承知しました」
城宮「よろしく」
    ×     ×     ×
   社長席を挟んで向かい合う城宮と野上。
野上「……一六時から専務との会議、一九時から田内先生との会食となっております」
城宮「なるほど、わかった」
   部屋の端、「お中元 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の山。

○同・同(夜)
   来客と談笑する城宮。
城宮「あぁ、そうそう。頂き物なんですが、良いシャンパンが入りましてね」
   部屋の端、「お歳暮 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の山。

○同・同
   部屋の端、「お中元 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の山。
   窓の外を眺める城宮。
城宮「いよいよだな……」
   いやらしい笑みを浮かべる城宮。

○高層ビル・社長室
   窓から見える、二~三〇階からのものと思しき景色。
   部屋の端、「移転祝 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の山。
   窓の前に立ち、街を見下ろす城宮。その脇に立つ野上。
野上「社長。各所に送るお祝い返しの品なんですが……」
城宮「野上君に任せるよ」
野上「え……よろしいんですか?」
城宮「あぁ、よろしく」
野上「……承知しました」
    ×     ×     ×
   「お歳暮 岡村」という掛け紙付きの贈り物を持ってやってくる野上。
野上「失礼します」
   通話中の城宮。顎で「そこに置いといて」という仕草。
城宮「(電話口へ、英語で)そこを何とか、お願いできないでしょうか……」
   部屋の端に「お歳暮」と書かれた贈り物の山。持参した物をそこに追加する野上。
城宮「(電話口へ)本当ですか? ありがとうございます。はい、早急に……」
    ×     ×     ×
   社長席を挟んで向かい合う城宮と野上。
城宮「野上君。あの会社との取引は停止だ」
野上「え!? ですが社長、あちらの会社さんとはもう何十年来の……」
城宮「俺にたてついたらどうなるか、教えてやらないといけないんだよ。よろしく」
野上「……承知しました」
   部屋の端、「お中元 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の山。
    ×     ×     ×
   社長席に座り新聞を読む城宮。高笑い。
城宮「ハッハッハ。いい気味だ」
   部屋の端、「お歳暮 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の山。
    ×     ×     ×
   社長席を挟んで向かい合う城宮と野上。
城宮「野上……貴様、裏切ったな!」
野上「あなたは、やり過ぎたんですよ」
   出ていく野上。崩れ落ちる城宮。
   部屋の端、「お中元 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の山。
    ×     ×     ×
   通話中の城宮。
城宮「(電話口へ、英語で)そこを何とか……」
   部屋の端、「お歳暮 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の数々。尚、贈り物の数はこの先徐々に減っていく。
    ×     ×     ×
   社長席でうなだれる城宮。
   部屋の端、「お中元 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の数々。
    ×     ×     ×
   通話中の城宮。
城宮「(電話口へ)そこを何とか……」
   部屋の端、「お歳暮 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の数々。
    ×     ×     ×
   来客に土下座する城宮。
   部屋の端、「お中元 岡村」の掛け紙付きの物を含む贈り物の数個。
    ×     ×     ×
   誰もいない、何もない室内。

○ボロアパート・外観
城宮の声「何もかも、無くなったか」

○同・城宮の部屋
   一人、酒を飲む城宮。世捨て人のような風貌。
城宮「金も、地位も、人も……」
   ドアをノックする音。
配達員の声「宅急便です」
    ×     ×     ×
   城宮の視線の先、「お歳暮 岡村」の掛け紙付きの贈り物と伝票。
城宮「こんな俺に、まだ……」
   伝票を手に、スマホで電話をかける城宮。留守番電話のメッセージが流れる。
城宮「……岡村さんですか? 城宮です。いつも素敵なお品、ありがとうございます。お礼を言いたいので是非、その……折り返しを、よろしく」
   通話を切る城宮。一息つく。その瞬間、スマホに着信。
城宮「!?」
                   (完)

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