<登場人物>
野火止 シグマ/シンゴウレッド(20)(30)戦隊メンバー
曾々木 ナオト/シンゴウイエロー(24)同
進藤 ルリ/シンゴウブルー(22)(32)同
野火止 ゴウ(8)野火止とルリの子供。
クラク少佐 敵の幹部
<本編>
○メインタイトル『戦隊内恋愛』
○採石場
怪人・クラク少佐の持つ杖から発せられる光線。青いバトルスーツの女性戦士・シンゴウブルーを庇って攻撃を受ける野火止シグマ(20)。
野火止「ぐあああ!」
ブルー「シグマ!?」
口から血を吐き、ブルーに倒れ掛かる野火止。
ブルー「(悲鳴)」
○病院・病室(夜)
壁にかけられた赤いジャケット。
ベッドで横になる野火止。その傍らに座る進藤ルリ(22)。色違いの青いジャケットを着用。
野火止「ん……」
ルリ「シグマ? わかる、シグマ?」
野火止「ルリ……さん?」
ルリ「良かった……何であんな無茶したの? バッカじゃないの?」
野火止「すみません」
野火止の手に交通安全のお守りを握らせるルリ。
ルリ「コレも。ちゃんと肌身離さず持っとけよ。もう、バッカじゃない……」
こらえきれず、野火止に抱き着いて泣くルリ。
窓際に飾られた写真立てには野火止、曾々木ナオト(24)、ルリの3ショット。ただし服装は、首から下がそれぞれ変身後(シンゴウレッド、シンゴウイエロー、ブルー)のスーツ。
○同・外観
○同・病室
リンゴの皮をむくルリと、その様子をベッドの上で見守る野火止。
野火止「ルリさん、こんな所に居て大丈夫なの?」
ルリ「大丈夫、大丈夫」
野火止「そもそもこの間のアオリ魔(=敵の総称)達、あの後どうなって……?」
ルリ「けが人はそんな事気にしないの。はい」
リンゴを野火止に食べさせるルリ。
突如、テレビの電源が入り、画面にクラク少佐が映る。
クラク少佐「皆様、いかがお過ごしですか?」
野火止&ルリ「!?」
○同・各所
待合室のテレビや病室の心電図など、様々なモニターに映るクラク少佐。
クラク少佐「先日の発表通り、私達アオリ魔は明朝、首都を制圧させていただきます」
○同・病室
テレビを観ている野火止とルリ。テレビに映るアオリ魔達。クラク少佐ら怪人達と、多数の戦闘員達が大通りを埋め尽くしている映像。
クラク少佐の声「お逃げになる方は、どうぞお急ぎください」
テレビの電源を消すルリ。
ルリ「まぁ、こういう事」
しばしの沈黙の後、体を起こそうとする野火止。それを押しとどめるルリ。
ルリ「シグマ。……告白、嬉しかったよ」
野火止「え?」
ルリ「でも、ごめん。私にはさ、命かけて戦う恋人を待てる強さは無いし、恋人が待ってるのに戦いに命をかける強さも無いの。だから、ごめん」
立ち去ろうとするルリの腕を掴む野火止。震えているルリの腕。
ルリ「離して」
野火止「手、震えてるよ」
ルリ「戦わなきゃ、町が大変な事になるの」
野火止「どうせ勝てない。結果は一緒だ」
ルリ「だとしても、どんな逆境でも決して諦めない。それがヒーローで……」
野火止「だったら、諦めんなよ!」
立ち上がり、ルリを抱きしめる野火止。
野火止「自分が生き延びる事、諦めんなよ、ルリさん!」
ルリ「シグマ……」
野火止「前にルリさん言ってたよね? 『私と世界、どっちかしか守れないとしたら、どっちを守る?』って」
ルリ「うん、言った」
野火止「俺は今、ルリさんを守りたい。世界よりもまず、ルリさんを。世界を守るなんて、その後で十分だ」
ルリ「でも、じゃあどうする気?」
野火止「……」
ルリのジャケットを脱がす野火止。
○大通り
片道二車線以上の道路同士の交差点。四方からクラク少佐ら怪人が率いる、道路の幅いっぱいに広がる戦闘員達の集団がやってくる。
その交差点の中心に立つ曾々木。野火止らと色違いの黄色いジャケット着用。
曾々木「(周囲を見回し)右を見ても左を見てもアオリ魔、か……」
クラク少佐「おやおや。黄色だけの信号で、何が出来るというんですか?」
曾々木「それを今から、検証するんだよ」
ブレスレット型変身アイテムに手をかける曾々木。
○病院・病室
誰もいない室内。ハンガーにかけられた野火止とルリのジャケット。
曾々木の声「交通変身、Go!」
○電車・中
並んで座る私服姿の野火止とルリ。二人とも、手には大きな荷物。
曾々木の声「悪意に注意、シンゴウイエロー」
○駅
走り出す電車。
曾々木の声「シンゴウジャー発進、Go!」
○電車・中
並んで座る野火止とルリ。野火止の手を握るルリ。
ルリ「……これで良かったのかな? 私達、世界を裏切って……」
野火止「大丈夫。ルリさんは、俺が守るから」
ルリを抱き寄せる野火止。
○走る電車
○野火止家・外観
古民家を改造したような二階建ての家。一階部分には「シグマジム」の看板。
○同・シグマジム
そこまで種類は多くないが、筋トレ器具の並んだ室内。
男性客を指導する野火止(30)。
野火止「八……はい頑張って、九……」
受付業務をするルリ(32)。
ルリ「ありがとうございました」
出ていく客と入れ違いで、ランドセルを背負った野火止ゴウ(8)が入ってくる。
ゴウ「ただいま」
ルリ「こら、ゴウ。お店から入るなって言ってるでしょ」
ゴウ「だってこっちの方が近いんだもん」
と言って奥に入っていくゴウ。
ルリ「まったく……」
目が合う野火止とルリ。思わず笑み。
○同・外観(夜)
○同・居間(夜)
扉を開け、隣の部屋(=寝室)で眠るゴウの姿を確認する野火止。静かに扉を閉める。
険しい表情でテレビを観ているルリの隣にやってきて腰を下ろす野火止。
野火止「ゴウのヤツ、やっと寝たよ……ん? どうかした?」
ルリ「シグマ……(と言ってテレビを指す)」
テレビ画面に映るクラク少佐。
クラク少佐「私達アオリ魔による王政も、今日で一〇周年を迎えました」
野火止「!?」
クラク少佐「しかし、改革はまだ道半ばです。今後は主要都市だけでなく、地方自治体にも積極的に介入し……」
顔を見合わせる野火止とルリ。
ルリ「まさか、この町も……?」
野火止「大丈夫……大丈夫だよ」
ルリを抱き寄せる野火止。
○商店街
並んで歩く野火止とゴウ。野火止は両手に買い物袋を持っている。
ゴウ「パパ、俺も一個持つ」
野火止「お、サンキュー」
ゴウに買い物袋を片方手渡す野火止。
ゴウ「(前方に何かを見つけ)ねぇ、パパ。何か変な人居るよ」
野火止「変な人?」
ゴウの指す先に目を向ける野火止。こちらに向かってくるアオリ魔の戦闘員。
野火止「!?」
持っていた買い物袋を落とす野火止。
野火止の目の前までやってくる戦闘員。息をのむ野火止。
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