待ち合わせは萬月の日以外で アクション

満月の夜の度、一部の若者が違法ドラッグによって巨人化して暴れまわる事が社会問題となっていた。狼男・秋元太郎(29)はそれに立ち向かうべく……。
マヤマ 山本 63 0 0 07/06
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第一稿

<登場人物>
秋元 太郎(29)/巨大狼 狼男
藤田 千代(22)カフェの店員

九重(60)カフェの店長
ダイゴ(26)巨人
ヒロシ(20)同



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<登場人物>
秋元 太郎(29)/巨大狼 狼男
藤田 千代(22)カフェの店員

九重(60)カフェの店長
ダイゴ(26)巨人
ヒロシ(20)同



<本編> 
○市街地(夜)
   夜空に輝く満月。人々の悲鳴。
   体長六〇メートルほどの巨人・ダイゴ(26)が暴れている。ダイゴの姿は体が大きい事以外は普通の成人男性。
ダイゴ「本当に大きくなれた……」
   建物を蹴って破壊するダイゴ。
ダイゴ「この力で……僕は生まれ変わるんだ!」
   そこに現れる体長六〇メートルほどの巨大狼。
ダイゴ「出たな、狼。僕の邪魔はさせな……」
   ダイゴに襲い掛かり、体を食いちぎる巨大狼。倒れるダイゴ。その際、多くの建物がその下敷きになる。
ダイゴ「ぎゃあ! う、腕が……!?」
   倒れたダイゴに馬乗りになる巨大狼。
ダイゴ「お願い、止めて。助けて……」
   ダイゴの体を食らう巨大狼。ダイゴの悲鳴は、やがて弱くなり、消えていく。
    ×     ×     ×
   血だまりが広がる。
   巨大狼が人間・秋元太郎(29)の姿に変わっていく。その周囲を囲む刑事達。
刑事「秋元太郎。殺人および……」
秋元「器物損壊および建造物侵入の現行犯で逮捕、でしょ?」
刑事「まったく……お前も懲りない奴だな」
秋元「へへっ」

○メインタイトル『待ち合わせは萬月の日以外で』

○警察署・外観

○同・前
   出てくる秋元。伸びをする。
秋元「あ~、娑婆の空気は美味いな。(立哨する警察官に向け)お勤め、ご苦労さんです」
九重の声「何だ、今日だったのか」

○喫茶店・外観
   ドアを開けた際の鈴の音。
九重の声「だったら連絡の一つでも入れろ」

○同・中
   カウンター席に加え、テーブル席もある店内。
   カウンター席でコーヒーを飲む秋元と、カウンター内に立つ九重(60)。
九重「迎えの一人でも居た方がいいだろうに」
秋元「そんな、おやっさんに手間かけさせるほどの事じゃないって」
九重「俺じゃねぇ。千代に迎えに行かせたよ」
秋元「言えばよかった。次は絶対そうするから」
九重「まったく……」
   ドアが開き、やってくる藤田千代(21)。
千代「おはようございま……あれ、太郎さん。随分とお久しぶりです」
秋元「おう、千代ちゃん。元気そうで何より」
千代「ずっとお店来ないで、どこで何やってたんです?」
九重「こら、千代」
秋元「男には、言えない事もあるんだよ。でも、千代ちゃんが『どうしても』って言うなら、特別に……」
千代「まぁ、いいや。そんな事より聞いてくださいよ」
秋元「あぁ、うん。聞くよ。何?」
千代「今度の誕生日デート、いきなりキャンセルされちゃったんです」
秋元「へぇ。千代ちゃんとのデートをキャンセルするなんて、ひどい男も居るもんだ」
九重「お前、何かしたんじゃねぇのか?」
千代「違います~。それが、今度の私の誕生日、満月なんです」
   秋元と九重の手が止まる。
千代「ほら、最近出てくる狼怪獣って、満月の夜に出てくるじゃないです? あと、巨人も。それで日和っちゃったらしくて」
九重「それは、相手も千代の身の安全を考えてくれたんだろ?」
千代「それは……そうかもしれないですけど」
九重「だったら……」
秋元「だったら、俺とデートする?」
千代&九重「え?」
秋元「俺、その日空いてるよ?」
九重「おい、何言って……」
千代「本当です? いいです。私も誕生日を独りで過ごしたくないんで」
秋元「じゃあ、決まり。やった、ついに千代ちゃんと初デートか。とっておきのプレゼント、用意しなきゃな」
千代「やった~、期待値爆上げです」
九重「おい、千代。いつまでも無駄口叩いてねぇで、さっさと仕事の準備しろ」
千代「は~い。じゃあ、太郎さん。ドタキャンしないでくださいね」
秋元「おう」
   店の奥に姿を消す千代。
九重「……どうするつもりだ?」
秋元「そうだよな~。結構急な話だし、店予約できっかな……?」
九重「デートの話じゃねぇ」
秋元「わかってるって」
九重「出来もしねぇ約束しやがって」
秋元「わかんないよ? 確かに巨人が出るのは必ず満月の日だけど、満月の日に必ず巨人が出る訳じゃないでしょ?」
九重「まったく……」
   楽しそうにスマホを操作する秋元。

○同・外観
   夜空に輝く満月。

○商店街
   花屋から出てくる秋元。比較的フォーマルな服装で、手には花束。
秋元「さて、と。(腕時計を見て)まだ大分早いけど、先に行って待っとくか」
   遠くで悲鳴や建物の壊れる音。
秋元「何だ!?」
   遠くに見える体長六〇メートルほどの巨人・ヒロシ(20)の姿。ヒロシの姿も体が大きい事以外は半グレの成人男性そのもの。
    ×     ×     ×
   暴れるヒロシ。
ヒロシ「かははっ、あの薬マジで凄ぇな。最高かよ!」
    ×     ×     ×
   ヒロシを見上げる秋元。逃げる人々に逆行するように走り出す。
九重の声「待て、太郎」
   足を止め、振り返る秋元。そこに立つ九重。
秋元「おやっさん。何で……?」
九重「随分とおしゃれな格好じゃねぇか」
秋元「そりゃあ、デートだもん。おしゃれするのは最低限のマナーでしょ?」
九重「でも、千代が待ってるのは(ヒロシの方を指し)アッチじゃねぇぞ?」
秋元「……」
九重「太郎」
秋元「……じゃあ、おやっさんにあの巨人、止められんの? 無理でしょ?」
九重「……俺は、な。けどこの国には警察だって、自衛隊だっているだろ?」
秋元「でもアイツらだって、簡単に人を殺せはしないだろ?」
九重「だからって、何で太郎がやるんだよ。大事な予定を蹴って、命かけて戦って、刑務所入れられて。ちょっとは自分の事、大事にしたらどうだ?」
秋元「ありがとう、でもさ……」
   九重に花束を放ってよこす秋元。
秋元「誰かがやらなきゃならない事なら、それが俺にしかできない事なら、それ以上の理由なんていらないでしょ」
九重「太郎……」
秋元「という訳でおやっさん。代打、任せた」
九重「今度出てくる日は、ちゃんと連絡入れろよな」
秋元「気が向いたらな」
   九重に笑いかけ、駆け出す秋元。
九重「……バカ野郎が」
    ×     ×     ×
   ヒロシの近くまでやってくる秋元。満月を見上げる。
秋元「うおおおお!」
   秋元の姿が巨大狼に変わる。
   対峙する巨大狼とヒロシ
ヒロシ「来ると思ったぜ、巨大狼。最高かよ。俺が速攻で片付けてやんよ」
   駆け出す巨大狼とヒロシ。

○駅前
   比較的フォーマルな服装をして立つ千代。逃げてくる人々を見て不安な表情。
   そこに差し出される花束。
千代「(笑顔を浮かべ)遅いです……」
   持ち主が九重と気づく千代。落胆。
千代「マスター、何で?」
九重「太郎は来れなくなった」
千代「……そっか、残念です。今度店に来たら、文句言ってやります」
九重「あぁ。(小声で)いつになるかわからねぇけどな」
千代「何か言ってます?」
九重「いいや。次待ち合わせする時は、満月じゃねぇ日にしとけ」
千代「本当です。そうします」
九重「さぁ、逃げるぞ」
千代「……はい」
   逃げ出す千代と九重。振り返る千代。遠くで戦う巨大狼とヒロシを睨む。
千代「狼怪獣め。人のデート滅茶苦茶にして、絶対許さないです」
   ヒロシの頭を食いちぎり、満月に向け咆哮する巨大狼。
                   (完)

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