(夏の昼間の光景。狭い自室の一隅に『漫画の描き方講座』のようなタイトルの本。
またコミックスなどでびっしり埋まっている本棚が置かれている。
本棚の横には、フィギュアが沢山置かれたパソコン机。
それらの前に無造作に漫画が散らばっている中、囲われるようにしてだるそうな表情で電話を聞いている久。)
澄也「君のずっと一人でつまらなそうな日常に、北欧からうるおいを届けよう」
俺の名前は町田久。アパートの一室で大半の時間を過ごしてる漫画家をやっている。
今電話しているのは俺の父親。
海外を飛び回っている自由人。悪く言えば自分勝手、羨ましいとは思うけど。
久「もしもし?…、起きたばかりだし急に突飛な事言われても分からないんだけど?…」
確かに俺には彼女がいないし、一人で籠りがちだ。でも十分食っていけてるし。
澄也「(苦笑いしながら)すまない
とにかく2日後に分かる」
久「2日後に何が起こるんだよ? 北欧って、ノルウェーか?
家に冷凍サーモンが届くのかよ?」
澄也「(笑いながら)何でそんな発想になるんだ
思ってるものよりいい事が届く。それとノルウェーじゃなくてアイルランド
じゃあな」
SE:プッ
久「あっ…」
急に切られた。まったく父さんの考えてる事は意味が分からない。
2日後。
イーファ「こんにちはー」
久「ぼこっ!? こんにちは」
何だこの綺麗な女の子は!?
綺麗すぎて思わず変な声が出た。
坂道系女子が、1時間引きつった笑いをしそうなほど、整いすぎている顔立ち。
腰辺りまで伸びた金髪は、何と言うか高級自然素材から編み出したような感じ。
ところが決して派手じゃないし、つつましい雰囲気がある。
あと白い陶器の技術が、とち狂って上がったかのような透明感が異常に高い肌。
そう言うのを包み込む、この人のためにしか作られてないような、ふわっとした白のワンピース。
まさか…!?
イーファ「私の名前はイーファ・オコナーともおします
お父さんの澄也さんの印象でアイルランドからここに来ましたー」
やっぱり父さんか!
(カップラーメンなど簡単な料理が狭いテーブルに置かれ、辺りが同様に乱雑になっている暗い部屋を見ながら)
父さんは変わった人だが、父さんじゃなければこう言う人ここに呼ばないな。
久「(冷静になり)あの・・、印象じゃなくて紹介だからね。でも日本語上手」
イーファ「ありがとおございます」
久「それと家に来た理由って何ですか?」
イーファ「息子を世話してホシいとたのまれましたー」
久「世話!?」
イーファ「その為に一緒に住んで欲しいと言われましたー」
久「へあ!?」
また変な声が出てしまった。
情報量が追い付かない。
(再度自分の汚い部屋を見回しながら)
確かに俺は傍から見れば世話しなければならないほど、だらしない生活をしている人に見えなくもないかもしれない。
だけど赤の他人の女の子に住んでもらって世話って!?… 同棲違う同居!?
混乱してる状況はさておき、イーファさんは俺に会うまでの経緯を話してくれた。
父さんは語学堪能なので、海外の赴任先で日本語などの外国語を教えている。
どうやら彼女は、その生徒の一人らしい。
父さんに大分良くしてもらったと言うイーファさんが、何かお礼がしたいと尋ねると、父さんは一人で寂しそうな俺の所に来て、助けて欲しいと頼んだ。
そうやって話を聞いたイーファさんは了解してここへ来た。‥良く掴めない話だ。
だけどスケール感の違う父さんだし、仲良くなる人も日本人の俺からしたら、その価値観には囚われない人なんだろう。
さっきからイーファさん、ニッコニコの笑顔で俺を見てる。
イーファ「澄也さんは素晴らしい人だから、息子さんもきっといい人!」
うはは。ここまで言われたら悪い気はしないな。やっぱりすごい可愛い人だ。
久「分かったじゃあ、イーファさんが良かったらここに住んで欲しい
洗濯物は自分でするけど、それ以外の事はお願い出来るかな?」
イーファ「はい! もちろんします! よろしくお願いします!」
(座りながら久に向かって、思いっきり頭を下げるイーファ)
こうして俺とイーファの同居生活が始まった。‥我ながら単純な奴だ。
それから父さんからのアドバイスを電話で受けながら、彼女の滞在手続きの確認や作業をした。
(仕切りを立て綺麗にしている部屋)
手続きの作業と並行して、狭い部屋でも寝たり着替える時だけでも、せめてプライベートを確保しようと仕切りを立てた。
イーファと住むと毎日が確かに、ものすごい楽しいものに一変した。
彼女がスーパーのバイトを始めると、それから毎日のように褒められていると嬉しそうに話す。それと俺は日本語を教える。
またイーファは俺の為に掃除・食事など、身の回りの世話を懸命にしてくれる。
イーファ「さて今日はアイルランドでお馴染みの弱肉強食、フィッシュパイを振る舞いまーす!」
久「弱肉強食?? …違う弱肉強食じゃなくて料理と言うの!」
イーファ「教えてくれてありがとう! この解凍間近の冷凍サーモンを包丁でお仕置きして…」
久「いやお仕置きじゃなくて”切る”だから!」
なんて間違った日本語を正すのは大変だが、それだって俺の好きな日常の一つになってる。数週間経っても全然飽きない。
イーファが来てくれてから一ヶ月後、嬉しい出来事が起きた。
(玄関のドアが開く音と荷物の袋がこすれてる音を出してから)
イーファ「ただいま」
久「お帰り」
(イーファの両手に持っている大きな手提げ荷物を見ながら)
久「ねえ持ってる荷物って、もしかして‥」
イーファ「(とびっきりの笑顔で)そう! 久の好きな漫画のアニメ! あと日本のことも知りたいから、好きだと言ってた声優のライブDVDも買ってきた!」
久「(感動している感じで)そんな‥初めての給料で買ったんだよね? もっと自分のために使えばいいのに」
イーファ「久にはいつもお世話になってる! だからこうやって使いたかった。一緒に見よう!」
食事を終えてたから俺とイーファは一緒に、アニメやライブDVDを見た。
一緒に鑑賞するのはもちろん嬉しいし、でも画面上の女の子よりも、横に実際にいる女の子の方に見惚れてる。
俺はイーファを好きになっていた。
(豪華なホテルで寛きながら、電話を耳に当てている澄也)
澄也「ははーんそれで告白したくなったのかー。一緒に住んでみて正解だっただろう?」
久「うん。今までこう言うのないよ!」
俺はイーファが仕事に出かけている間、父さんに電話で報告した。
澄也「良かった良かった。俺も嬉しい」
久「思い切って尋ねてみる」
澄也「いや、それは今は辞めといた方がいいぞ」
久「えっ?」
澄也「アイルランドとかヨーロッパ全体は告白の文化がそもそもないんだ
もし今しても、彼女混乱して出て行ってしまうかもよ。お前の言う通り、まだ日本に慣れてないんだし」
久「わかった…」
澄也「まあ長い間いると言ってるし、反対に告白なしで付き合うケースが多いから安心しな」
(電話を切った後の残念そうな表情の久)
みんなに人気のあるイーファだから、誰かに取られるんじゃないかと心配しているのかもしれない。
だけど忠告通り、今は保留する事にした。
次の日、
(ニヤリとした顔をしながら正座で名刺を渡しながら)
海狸「(不敵な感じで)はじめまして」
家に紺のワイシャツに黒のスーツで全身を纏った、何か業界人の雰囲気だけで出来たような男が訪ねてきた。
玄関先で芸能プロダクションのタレントスカウトをしている、稲作海狸だと名乗り、「一度あなた方二人とお話をしたい」と話をしてきた。
その返事をしそびれている間、稲作はすたすたと中に入ってきた。
海狸「玄関先でお伝えした通り、イーファ・オコナーさんの事はこの近辺で聞いています
私もそちらの勤めているスーパーに入り遠目からちらっと見たのですが、まず美しいの一言に尽きる
他の女の子より群を抜いて綺麗だ
それでレジ前に並んだのですが私はもう、動揺を隠しきれていなかった事でしょう
またこうやって出会えている私は幸せ者だ。もう貴方の事を守りたくてしょうがない
大手事務所が気づく前にこちらが発見して良かった」
イーファ「(気の抜けた感じで)はぁ・・・・」
海狸「私のお願い言ってもいいですか? 女優やモデル、さてはアーティストとしてイーファさんを活躍させたい
とにかく所属タレントとして、私の事務所に入れさせていただけませんか?」
海狸「聞いた事のない弱小事務所かもしれませんが、どうかご一考下さい」
(土下座をする海狸。それに対してビクッとするイーファ)
俺はイーファの手を握ろうか考えた。けれど合っているのか分からなかったので辞めた。
(顔を上げた海狸。)
海狸「でもいきなりこう言われても困りますよね?
なので返事は後日待つことにします
前向きにご検討いたしましたら、こちらの電話番号にお掛け下さい」
こうして稲作は帰っていった。
俺はすぐに料理を作った。ちょっと呆然としているイーファに食べさせてあげたくなったからだ。
(二人で食事を摂りながら)
久「事務所に入りたい?」
イーファ「(放心しているような感じで)Nil(ニール)、 今の生活を大切にしたい」
久「じゃあお断りの電話入れるよ」
イーファ「(同じく放心しているような感じで)Ta (トー)」
Nil(ニール)は『いいえ』で、Ta (トー)は『はい』の意味。
俺はその時安心し、食事を終えてから電話を掛けた。
しかし男個人や事務所の番号も含めて、何度も掛けてもその日は留守電だった。
次の日、
イーファ「ただいま…」
久「お帰り」
バイトから帰ってきたイーファが真っ青な顔をしている。
久「どうしたんだ?」
イーファ「職場に私が芸能界デビューする話が流れて、『おめでとう』って言われた…」
久「えっ?…」
イーファ「あの芸能プロダクションの男が来て、みんなにデビューするって話したと言うの」
久「違うって言えた?」
彼女は何度も首を横に振る。突然の出来事にまだ不慣れな日本語では、対応出来なかったのだろう。
俺は次の日彼女を休ませて、すぐにイーファが働いているスーパーに行き、あの話は違うと職場に行って説明をした。
数日後、またあの男が来た。
(玄関前で土下座をしながら)
海狸「申し訳ございません!」
(座りながら内心は怒っているものの、あくまで冷静に努めた表情で)
久「どう言う事か説明してもらえますか?」
海狸「戸惑っているようには見えましたが、前向きに捉えていると感じたので、先にこちらで挨拶を伺いに来ました」
久「変だと思わないのですか? 契約も何もしてないし、昨日こちらからお断りの電話を入れたのですが、出なかったじゃないですか」
海狸「そうですね。私の方が焦って行動してしまいました。それと昨日は会社も忙しかったのです」
(顔を上げた海狸。)
海狸「ですがイーファさん、みんな入ると聞いた時歓迎してくれましたよね?」
イーファはちょこんと首を縦に振った。
海狸「貴方にはその素質があるんですよ。
日本の芸能界についてまだ何も分からないかもしれませんが、もちろん手厚くサポートします」
久「手厚くって、貴方の様子だとそちらの体制には疑問を感じるのですが」
海狸「(強めの口調で)それは町田さんの偏見なんじゃないですか?
とりあえず今日はこれで帰らせてもらいます。それでは失礼しました」
(玄関のドアが閉まる)
イーファ「久…、私芸能界に入らないといけないのかな?」
久「それはない。一方的にプレッシャーを与えているだけだから」
芸能プロダクションからの精神的な圧力は次の日も来た。
ポストに『イーファ・オコナー様へ』と書かれたB4サイズの契約書が、勝手に届いてきた。
(封筒を開けるイーファ)
久「イーファ!」
イーファは思い詰めたような表情をしながら、少し乱暴に開ける。俺もその中身を見る事にした。
レッスン代が無償で交通費が支給される事。普通なりたての芸能人なら一つのお仕事で数千円のギャラしか出せないが、イーファの場合最低5万円は保証。
しかも月給としてサラリーマンの平均月収を軽く上回る金額も、貰える事を約束するなどの内容だ。
また同じ内容で彼女曰く、アイルランドで使われてるゲール語に翻訳されたものも、同梱されていた。
しかしそれは無茶苦茶な文章で、まるで機械翻訳されたものらしい。
それから数日後、
(パソコンの前で固まっている久)
久「(驚愕しながら)なっ・・・・・」
一人で調べ物をしていると使っているSNSのおすすめユーザーで、イーファ・オコナーの名前と共に彼女の写真が出てきた。
プロフィール文には『私は日本が好きです。芸能界デビューを目指して頑張っています! よろしくお願いします。』と書かれていて、他にも多く自撮りなどの写真がある。
SNSアカウントを開設したと聞いてないし、不信感が拭えない。
よく見ると自分が知っている場所が一枚も映っていないし、どこかイーファ本人も不自然だ。
…多分ディープフェイクを使って合成させている偽画像だ。
気になってイーファの名前で検索する。他のSNSなど主要サービスのアカウントが、同様に作られている。
イーファ「ただいま」
イーファが帰ってきた! イーファは自分のパソコンを見た瞬間聞いた事のないような、かすり声を出した。
イーファ「作った覚えない…」
絶対これはあのプロダクションだ。
イーファ「わぁァァァァァァ!」
久「イーファ! 大丈夫!?」
イーファ「私…ここを出て行く!」
久「ちょっと何言ってるんだ!?」
イーファ「ここにいるのが怖い! 久にも迷惑かかる!」
久「いや俺の事はいいから!」
イーファ「日本から離れたい! 国に帰って家族と会いたい!」
その瞬間、イーファが部屋から出て行く。
久「イーファ!」
俺も外に出て追いかける。
しかしイーファは走るのが早く、イーファに追い付けられなかった。
しばらくして俺は電話を掛けた。
泣きじゃくって会話にならなかったので、時間が経ってから文字でやり取りをした。
ネットカフェにしばらく泊まってる間に、父さんに手続きしてもらって帰ると言う。
俺は戻ってきてと言えなかった。事態を収めると自信を持って言えなかったからだ。
イーファ・オコナーのアカウントは、まだ運営され続けている。
絶対にイーファはアカウントを作っていない。
じゃなかったらあんな風に取り乱す事はないし、実際本人も否定している。
だから偽者だと運営に言っても、本人じゃないから対処出来ないと言われた。
警察にも言う事は出来ない。彼女にも事情を聞く事になり、それが精神的に摩耗させてしまうと思ったからだ。
よく分からないプロダクションからの封筒もまだ届く。
彼女が泊まっている場所を直接聞こうとした。
でも全然答えてもくれない。
俺は無気力に苛まれ、彼女にもプロダクションにも怒る気になれなくなった。
時折携帯電話でのイーファとのやり取り跡を覗く。
あれからちょっとだけ届いていた、上手く使いこなせない日本語で書かれた、イーファからの連絡も絶えていた。
そして俺はずっと仕事を続けている。
時々編集部と漫画の打ち合わせで会って、声を交わす程度。
日常が何もない分、漫画で色んな世界を描くししかない。
狭い世界の日々に戻り、嫌になりながらも受け入れる。
つい最近まであった日々を作品に活かすなんて、まだ出来ない。
テロップ『3日後-、』
澄也「よっ!」
(玄関先で笑顔で手を挙げる澄也)
久「父さん!…」
玄関を開けると父さんが現れた。
久「てっきり海外にいると思い込んでたよ」
澄也「(笑いながら)電話で手続きの事を話したりしてたじゃないか
(声のトーンを少し真剣味に変えて)イーファまだいるよ」
久「そうなんだ…」
澄也「俺が泊まってるホテルにいてもらっている
会ってみないか? 彼女も会いたいって言ってるから」
その事を聞いた瞬間、特別な針が動き出した感覚になった。
今まで失恋だったり、人が離れる経験を何度かしている。
その度にもう無理だと思って受け入れて、いつもの日常に戻る。
だけど今の自分が、大好きな女の子を引き止められるなら、例え駄目だとしても後悔しないように動くべきなんじゃないか?
澄也「どうする?」
久「(強く頷きながら)会ってみる」
その特別な針は、意味があるものなのかはまだ分からない。
イーファとの日常を過ごす未来に行けるかなんて、誰も知らない。
だけど、自分はまたイーファと会える。
俺は父さんに、イーファがいるホテルの場所を聞いた。
(ホテルロビーにて。客人などまばらに人がいる)
イーファ「久…」
イーファはロビーで俺が来るのを待ってくれていた。元気そうな顔を見せているが、少しやつれている。
久「会ってくれてありがとう。それだけで嬉しい」
イーファ「ごめんなさい」
何故かイーファに深くに頭を下げ謝られた。
イーファ「お父さんに怒られました。辛いのは分かるし国に帰るのは良いけど、大切に見てくれてる人とちゃんと向き合わないでどうするんだって」
俺は意外に感じた。怒ってる姿を見た事がないからだ。
けれど気持ちは、不思議と冷静でいられている。
久「やっぱり、アイルランドに帰りたいのか?」
イーファ「いいえ。本当はまだ帰りたくない!
でも!・・・」
イーファは目に涙を浮かべている。
俺も今、初めて涙を流している。今までの日々を思い出していた。
久「芸能プロダクションの事は俺が何とかしてみせる
どうればいいか正直分からないけど、俺がイーファを守りたいんだ
だからもう離れるなんて言わないでくれ
イーファの事が、好きなんだから!」
(目を丸くするイーファ)
(我に返り動揺する久)
しまった。イーファが驚いてしまってる。思わず感情に任せて言ってしまった。
告白せずに時間を掛けるのが大切だと言ってのに、イーファからさっきよりも大粒の涙が流れている。
イーファ「私も久の事が好き! 一生懸命良くしてくれて、丁寧に教えてくれて、守ってくれて、ずっと生活が楽しかったから!」
(久とイーファに拍手を送るギャラリー)
俺は力を使い果たしたかのように、その場にぐったりと座り込んでしまった。
だけど体中が喜びで満ち溢れていた。
次の日、俺はプロダクションの建物前で稲作海狸を呼び出していた。
海狸「そちらから連絡を頂きありがとうございます。あの、イーファさんはどこにいますか?」
久「すいませんが嘘です」
海狸「(ドスを効かせて怒りながら)あ?」
久「(あくまで冷静に)そう嘘を付かなきゃ来ないですよね?」
海狸「いないのにいるとか言って、こちらを呼び出すって頭狂っていませんか? 帰らせてもらいます」
いやそのまま帰さない。
久「ちょっと待って下さい。またそうやって逃げて、一方的になんかする気なんですか?
あと、録音したいので今までそちら側がやった事全部言って下さい」
海狸「は? 録音されて内容を言わされるって、意味が分からないんですけど」
久「守秘義務があるのかもしれせんが、やましい事なかったらしていいんじゃないですか?
あなた達の方から彼女を誘ってきたし、こちらには色々聞きたい事があります」
海狸「第一なんであなたが彼女の代わりに出てくるんですか。私は彼女本人に聞きたいんですよ」
久「そうは言いますが、貴方達が怪しいのは間違いないですし、イーファを守る権利がありますから」
海狸「てめえ何のかんの言わず出せよ!」
久「出せってその場にいないのに、どうやってまるで道具みたいに出すんですか?」
海狸「ふざけんなボケ」
稲作の方から襲いかかり取っ組み合いになった。それからしばらくして警察の人が来た。
(事情聴取を受ける顔に傷だらけの久)
俺は今までの経緯を全部話した。
何かしらで周囲に訴えるつもりだったが、まさか最初が警察になるとは思わなかった。
それから芸能プロダクションは警察にチェックされた。
また本来そうしたかったように俺はネット上で告発。
芸能プロダクションは閉鎖。イーファに目を付ける人はいなくなった。
事情聴取を終え満身創痍になっている俺を、イーファが出迎えてくれた。
イーファ「久…、私を守ってくれてありがとう」
(久に抱きつくイーファ)
久「ごめんな…。本当はイーファまで巻き込みたくなかったんだ」
イーファ「そんな事言わないで下さい。私は久の事が好きです
ずっと心細かったし、淋(さみ)しかった…。もう、勝手に離れたりしません」
全てが救われたイーファが見たいと思っていたけど、本当はもっと自分を好きになって欲しい気持ちが強かったのかもしれない。
けれどどうでも良く、ただただ嬉しい。
(アイルランドの家の前でお互いの両親と一緒に写っている、新郎新婦姿の久とイーファ)
3年後、俺とイーファはアイルランドに移り住み、結婚した。
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