<登場人物>
服部 朱雀(17)剣士
巽 蒼龍(22)同、朱雀の許嫁
三瓶 玄武(26)同
トラスト 白虎(30)同、白虎隊隊長
服部 雲雀(9)朱雀の妹
巽 青龍(22)剣士、蒼龍の双子の弟
艮 黒龍(55)同、腕売り
乾 白龍(28)同、トラストの部下
坤 赤龍(41)同
服部 鳳凰(39)同、朱雀の父、故人
<本編>
○(回想)服部邸・外観
三年前。
蒼龍の声「うわぁぁぁ!?」
○(回想)同・庭
木刀で試合をする服部朱雀(14)と蒼龍(19)、それを見守る服部鳳凰(39)。全員二本腕。倒れる蒼龍。
蒼龍「くそっ、もう一本」
朱雀「上等だ。よろしいですか、父上?」
服部「構わないが、娘に勝つ道のりは、まだ遠いぞ? また日を改めれば……」
蒼龍「(立ち上がり)お願いします」
服部「わかった。だが、何故そこまでして娘に勝ちたい?」
蒼龍「約束ですから。(朱雀を見て)『俺が勝ったら、俺の嫁になる』って」
服部「……は? 朱雀はまだ一四だ。そんな気が遠くなるような話……」
まんざらでもない様子の朱雀。
服部「……そうか」
朱雀「まぁ、どうせ僕が勝つけどね」
蒼龍「そうはいかない。さっきまでは、愛が足りなかっただけだ」
構える朱雀と蒼龍。
○屋敷・庭
刀を構える朱雀(17)と巽青龍(22)。
朱雀の声「上等だ!」
戦い始める朱雀と青龍。
○メインタイトル『腕狩り朱雀』
T「第三話 鉄腕」
○道中
三瓶玄武(25)に続いて歩く朱雀と服部雲雀(9)。
雲雀「ところで姉上、私達は今どこに向かっているんですか?」
朱雀「玄武が、あの艮黒龍という男に最初に会ったという場所だ」
雲雀「でも、脱獄したような人が、また同じ場所に姿を見せますかね?」
朱雀「他に手がかりになりそうなものが浮かばないんだ、仕方ないだろう?」
立ち止まる三瓶。
朱雀「着いたのか?」
三瓶「この先、もうすぐだ。……だが、いいのか?」
朱雀「何がだい?」
三瓶「居ないとは思うが、もし艮が居れば、あの巽という男も居るかもしれん。また戦う事になるぞ?」
朱雀「上等だ。次こそは、勝つさ」
三瓶「まったく……(小声で)少しは恐がれ」
雲雀「さぁ、行きましょう」
歩き出す朱雀と雲雀。渋々ついていく三瓶。
○町C・市場
唖然として立つ朱雀、三瓶、雲雀。
朱雀&三瓶&雲雀「……」
屋台で腕や武器を売る艮黒龍(55)。
朱雀「普通に居る」
三瓶「普通に居るな」
雲雀「普通に居ますね」
艮「おや。お前さん達、また会ったね」
朱雀「こんな所で何をしている?」
艮「見たらわかるだろう? ただでさえ、しばらく投獄されて売り上げが落ちているんだ。商売を休んでる暇なんてないよ」
朱雀「上等だ。商売をしている暇があったら」
刀を抜く朱雀。
朱雀「例の約束を果たして……」
商品棚から槍を取り出し、朱雀に向けて突き出す艮。
朱雀「!?」
艮の攻撃を間一髪でかわす朱雀。立ち上がり、刀を構える。
朱雀「何をする!?」
艮「あんまり年寄りを舐めるんじゃないよ? 武器なら、売るほどあるんだ」
朱雀「いくら良い武器を持っていても、扱える腕が無ければ宝の持ち腐れだよ?」
三瓶「俺への皮肉か?」
朱雀「(無視して)その点、僕の強さは、お墨付きだ」
間合いを図る朱雀と艮。
艮「悪い事は言わない。お前さん達は、すぐにこの場を離れた方がいい」
朱雀「聞く耳を持つと思うかい?」
艮「いいや。ただ、老婆心ながら忠告したまでさ」
朱雀「なら、頭の片隅にでも入れておこう」
戦い始める朱雀と艮。武器同士のリーチの差で押され気味の朱雀。
朱雀「くっ。厄介な……」
一旦間合いを取る朱雀。
艮「いいのかい?」
武器を持ち替え、弓矢を放つ艮。
朱雀「なっ!?」
放たれる矢を必死に刀ではじく朱雀。
朱雀「弓も使えるのか?」
艮「昔取った杵柄って奴さ。伊達に歳をとっちゃいないよ」
弓矢による攻撃で、艮との距離がさらに遠くなる朱雀。
艮「じゃあ、こんなのはどうだい?」
弓矢を雲雀に向ける艮。
朱雀「まずい。玄武!」
三瓶の後ろに隠れる雲雀。怯えた様子。雲雀を庇うように刀を構える三瓶。
三瓶「いいぞ。もっと、恐がれ」
艮「おや。同じようにはいかないか」
朱雀「今だ!」
その隙に間合いを詰める朱雀。ソレを見て再び槍に持ち帰る艮。
交戦する両者。艮の息がやや荒くなる。
艮「歳は取りたくないもんだね」
朱雀「なら、早いうちに決めてあげよう」
斬りかかる朱雀、槍を突き付ける艮。二人の武器が交錯しようとしたその時、同時に何かを察し、同じ方向へ振り返る朱雀と艮。二人に向かってかぎ爪を突き立てるトラスト白虎(30)。かぎ爪を刀、槍で受け止める朱雀と艮。
朱雀「!?」
トラスト「ヘイ、ミスター艮アンド、ミス朱雀。会えて嬉しいよ」
艮「来たね、白虎隊」
トラストの後方、乾白龍(28)ら白虎隊の面々。
朱雀「どうしてココが?」
トラスト「知らないだろうが、囚人には逃走防止に発信機を取り付けているんだよ」
タブレット端末に映る発信機の追跡状況の映像を見せる白龍。
トラスト「まぁ、ミス朱雀は取り付ける前だったけどね」
白龍「何しろ、品薄ですので」
朱雀「(艮に)知っていたのか?」
艮「だから忠告したじゃろう?」
朱雀「だったらもっとわかるように言え」
トラスト「さて、ココで会ったも何かの縁、おとなしくお縄につくか、リベンジマッチか、選びたまえ」
朱雀「上等だ」
一歩前に出て「逮捕してください」と ばかりに両手首を突き出す艮。
朱雀「!?」
トラスト「ほう」
トラストと艮の間に割って入る朱雀。
朱雀「何を考えている?」
艮「別に儂は、お前さんに『ココから出してくれ』なんて頼んだ覚えはないよ?」
トラスト「ヘイ、ミス朱雀。ここはミスター艮に一任してみてはどうかな?」
朱雀「お断りだ」
トラストから艮を庇うように戦い出す朱雀。戦い自体は朱雀が優勢に進めているが、時折艮が不可解な動きをするため、思うように戦いを進められない朱雀。
朱雀「頼むから、勝手に動かないでもらえるかな?」
艮「人を徘徊老人みたいに言うのは止めてもらえるかね」
トラスト「ヘイ、ミス朱雀。よそ見をしている場合かい?」
朱雀「ちっ」
戦い続ける朱雀とトラスト。その隙に槍を手に持ち、後方から両者を襲う艮。その攻撃を間一髪でかわす朱雀。
朱雀「何をする!?」
艮「おや。上手く行くと思ったんだけどね」
朱雀「君の狙いは、僕達の相打ちか。上等だ」
トラスト「ヘイ、ミスター艮。卑怯だよ」
艮「老練と言って欲しいね」
三つ巴の戦いを繰り広げる朱雀、トラスト、艮。
トラスト「ヘイ、ミス白龍。援軍をお願いできるかな?」
白龍「承知しました。準備は出来ております」
機械式の義腕を三本目の腕として装着する白龍以外の白虎隊の面々。
雲雀「何ですか、あれは?」
三瓶「機械の三本腕、だと?」
艮「噂には聞いていたよ。アレが白虎隊の最新兵器じゃな?」
トラスト「さすが武器商人、耳が早いね。義腕という代物だ」
朱雀「三本腕に走るとは、白虎隊も地に落ちたものだな」
トラスト「ノープロブレム。法に反するのは三本腕ではなく、腕を狩る事だ」
朱雀「だとしても、その技術は本来、一本腕の人間を救うために使われるべきものではないかい?」
トラスト「……ヘイ、ミス朱雀。いくら正論を言ったからって、君の勝ちという訳じゃないんだよ?」
朱雀「別に僕は『勝った』などと思ってはいないし、君が敗北感を覚えたかどうかは興味がない」
トラスト「ヘイ、エブリワン。ミス朱雀は君らに一任しよう」
白龍「では、参りましょう」
朱雀と戦う白虎隊の面々。機械の腕自体は刀でダメージを受けないため戦うも苦戦気味の朱雀。
朱雀「くっ……」
その間に艮の元にやってくるトラスト。
トラスト「ヘイ、ミスター艮。君はどうする?」
艮「では、儂も札を切らせてもらおうかね」
トラスト「札?」
艮「わかっとらんな。儂は発信機で白虎隊がここに来る事をわかっとったんじゃぞ? 何の対策もしていない訳がなかろう?」
トラストの背後から襲い掛かる青龍。その攻撃を受け止めるトラスト。
トラスト「!?」
青龍「……ったく。結局、俺の出番か」
戦う青龍とトラスト。防戦一方のトラスト。
艮「お前さんらも残念だったね。大方、アジトに案内させるつもりで、儂を泳がせたんじゃろうけど」
トラスト「まさか、こんなジョーカーを用意していたとはね」
一旦距離を取るトラスト。
青龍「隊長でこの程度の気合か。これじゃ、隊員の底が知れるな」
トラスト「ヘイ、君の事は調べさせてもらったよ、ミスター巽。勘違いしないで欲しいんだが、僕の目的は僕個人として君を上回る事ではない」
青龍「何が言いたい?」
トラスト「ヘイ、エブリワン」
朱雀と戦っていた三本腕の白虎隊の面々が、そのまま上手く動き、朱雀、青龍、三瓶、雲雀、艮(とトラスト)を取り囲む。輪の外には白龍のみ。
朱雀「くっ。囲まれたか」
トラスト「ヘイ、ミスター巽。どうする?」
青龍「こんなもん、気合で突破して……」
艮「(青龍を制して)青いのぉ、巽殿。もうちょっと楽な道を選んでもいいんじゃぞ?」
朱雀「?」
白龍の声「きゃあ!?」
トラスト「!? ヘイ、ミス白龍。どうしたんだい? (返事がなく)ヘイ、ミス白龍!」
トラスト達から輪の外の様子は見えない。
電撃が走るように、動きが止まる三本腕の白虎隊の面々。
三瓶「今度は何だ?」
我を失い、朱雀、三瓶、トラストに襲い掛かる三本腕の白虎隊の面々。
トラスト「WHAT!?」
白虎隊の面々に応戦する朱雀、三瓶、トラスト。
朱雀「おい、白虎。何故君まで襲われている?」
トラスト「僕が知りたいくらいだよ」
三瓶「役に立たん奴だ」
トラスト「言ってくれるね。……ん?」
戦うそぶりも見せず白虎隊の輪の外に歩を進める青龍と艮、戦うそぶりも見せず二人に道を譲る白虎隊の面々。
艮「おやおや。コレだから、最新の兵器というのは恐いのぉ」
トラスト「ヘイ、エブリワン。僕らではなく、あの二人を……SHIT」
背中合わせになる朱雀、三瓶、トラスト。その中心部に雲雀。
朱雀「まさか、君と背中を合わせる事になるとはね」
トラスト「……ヘイ、ミス朱雀、ミスター三瓶。一つ相談がある」
朱雀「奇遇だな、僕もだ」
トラスト「……」
朱雀「……」
雲雀「私が代わりに申し上げます。この場は一時休戦して共に戦ってください」
トラスト「OK」
朱雀「上等だ」
背中合わせで白虎隊の面々に応戦する朱雀、三瓶、トラスト。
朱雀「おい、白虎。どうすれば、この三本腕軍団を止める事が出来るんだ?」
トラスト「さっきも言っただろう、ミス朱雀。僕が知りたいくらいだよ」
三瓶「本当に何も知らんのか?」
トラスト「YES。この件は、ミス白龍に一任していたからね」
三瓶「ミス白龍……さっき悲鳴を上げていた奴か。ならば……」
朱雀の服を掴む三瓶。
三瓶「貴様が見てこい」
朱雀「上等だ」
力任せに朱雀を白虎隊の輪の外に放り投げる三瓶。
トラスト「大したパワーだね、ミスター三瓶」
三瓶「貴様も行きたいか?」
トラスト「NO。さすがに、恐すぎる」
三瓶「(嬉しそうに)ほう。わかってるじゃねぇか」
× × ×
三瓶に放り投げられ、白虎隊の輪の外に着地する朱雀。
朱雀「よし。……ん?」
朱雀の前に立ちふさがる、また別の三本腕の白虎隊二名。やはり我を失っている様子。
朱雀「ここにも居たか。上等だ」
刀を構え駆け出す朱雀。
朱雀「服部流奥義、上等朱段の一撃!」
機械(三本目)の腕を斬られ、倒れる白虎隊の二名。
朱雀「おい、白龍とやら、どこに居る?」
艮の発信機を外す白龍の姿を見つける朱雀。その脇には、白龍のタブレット端末を持つ巽もいる。
艮「おや、見たね?」
朱雀「……それは、君達が艮に付けた発信機、だね?」
白龍「いかにも」
朱雀「君達は、グルだったのか?」
白龍「まったく。青龍さん、(タブレット端末を指して)ちゃんと操作してくださいよ」
青龍「知るか。(タブレット端末を指して)こんな代物で、俺の気合は伝わらねぇんだよ」
白龍「承知しました。返してください」
青龍からタブレット端末を受け取る白龍。タブレット端末を操作すると、白虎隊の面々が戦うのを止め、動き、道を開ける。結果、三瓶やトラスト、雲雀と対峙する形になる青龍、艮、白龍。
トラスト「ヘイ、ミス白龍。裏切ったのかい?」
白龍「その表現は正しくありませんよ、隊長。私は元々(艮や青龍を指し)こちら側の人間です」
トラスト「スパイ、という訳か。どうりでミスター艮の取り調べが進まない訳だ」
艮「じゃから(朱雀に)お前さんの手を借りずとも、儂は脱獄できたんじゃよ」
朱雀「どうりで渋る訳だ」
白龍「とはいえ、おかげで発信機を外す手間が増えて、私の素性もバレてしまいました。トータルで言えば、我々に不利益な結果となりましたね。ですが……」
朱雀に斬りかかる青龍。
朱雀「!?」
青龍の攻撃をかわし、三瓶やトラストの元に戻る形となる朱雀。
それを見てタブレット端末を操作する白龍。再び白虎隊の面々が動きだし、朱雀らを取り囲む。
朱雀「しまった」
艮「儂らはここらで失礼させてもらうよ」
白龍「ご武運をお祈りしております」
青龍「……ふん」
その場を立ち去る青龍、艮、白龍。
トラスト「ヘイ、ミス白龍。待ちたまえ……」
白虎隊の面々に行く手を阻まれるトラスト。
三瓶「そう簡単に行かせてもらえんようだな」
朱雀「だが、逃がす訳にもいくまい」
朱雀の視線の先、先ほど腕を狩った白虎隊二名が未だに倒れている。
朱雀「おそらくだが、彼らはあの機械の腕を通じて白龍に操られている」
三瓶「つまり、あの腕を狩っちまえばいい、という訳か?」
トラスト「しかし、ここにいるエブリワンを狩り終えるのは、かなり時間がかかるよ?」
朱雀「だから、役割を分けよう。まずは道を作り、一人が逃げた者達を追いかけ、残りの者がここで白虎隊を食い止める」
トラスト「OK。で、その分担は?」
朱雀「僕と玄武で食い止める。白虎、君が追うんだ」
トラスト「WHAT?」
朱雀「何を不思議に思う事がある? 白虎の仕事は白虎隊の相手をする事ではない、腕狩りを取り締まる事だろう?」
トラスト「それは、ミス朱雀の言う通りだが……」
三瓶「いいのか、朱雀? アイツらこそ、赤い目の男の手がかりなんだろう?」
朱雀「僕だって行きたい気持ちは山々だが、背に腹は代えられないよ」
トラスト「損な性格だね、ミス朱雀は」
朱雀「かもしれないね。だが世の中は、誰かが得をすればその分誰かが損するものだ、と僕は思っている」
トラスト「腕狩りが、一番顕著な例だね」
朱雀「だったら、僕が損をすれば、その分誰かが得をする」
トラスト「だから、自分が損な役回りでも構わない、という事かな?」
朱雀「『多少の』なら上等だ。(顎で無い右腕を指し)大損はごめんだけどね」
トラスト「OK。じゃあまずは、道を切り開く所から始めよう。タイガー会心の一撃!」
青龍らが去った方向に居た白虎隊数名の腕を狩るトラスト。包囲網が崩れ、道が開ける。
三瓶「よし、抜けるぞ。掴まれ」
雲雀「はい」
開けた道へ駆け出す朱雀、トラスト、雲雀を抱えた三瓶。
ある程度進んだ所で踵を返す朱雀。
朱雀「さぁ、白虎。早く……」
朱雀の前に立ちふさがるトラスト。
トラスト「ヘイ、ミス朱雀。君の作戦には乗らないよ?」
朱雀「何?」
トラスト「君とミスター三瓶でここにいる白虎隊を全員倒し、悠々と逃げるつもりなのだろう?」
朱雀「そんなつもりは……」
トラスト「だから、僕がここに残る。その代わり……ミス白龍らを追う役目は、君に一任していいかな、ミス朱雀?」
朱雀「いいのか?」
トラスト「そもそも、僕は組織のリーダーだ。部下の失態の尻拭いも、仕事に含まれているんだよ」
迫る白虎隊の面々に応戦するトラスト。
トラスト「さぁ、ここは僕らに一任して行くんだ、ミス朱雀」
朱雀「上等だ」
三瓶と雲雀に目をやる朱雀。頷く三瓶と雲雀。駆け出す朱雀。
○屋敷・外観
広大な敷地の庭がある。
○同・庭
並んで歩く青龍、艮、白龍。
白龍「……皆さん、お気づきですよね?」
艮「雀が一羽、入り込んだようじゃの」
踵を返す青龍。
艮「頼んだぞ、巽殿」
建物の中に入っていく艮と白龍。
青龍の前に姿を見せる朱雀。
青龍「少しは、気合入れ直して来たんだろうな?」
朱雀「気合なんて大した問題じゃない。僕の強さは、お墨付きだ」
刀を構える両者(第三話冒頭のシーン)。
鹿威しが鳴る。
それを合図に戦い始める朱雀と青龍。
○同・中
跪く艮と白龍。二人の視線の先、窓から外を見ている坤赤龍(41)の後ろ姿。
坤「招かれざる客か。煩わしい」
白龍「申し訳ございません」
艮「しかし一人くらい、巽殿一人で……」
坤「いや、一人じゃないな……」
艮「何と……?」
振り返る坤。右目は眼帯をしているが、左目は赤い。
T「坤 赤龍」
坤「煩わしい」
○同・庭
戦う朱雀と青龍。一度間を取る両者。
朱雀「服部流奥義、上等朱段の一撃!」
青龍「気合紺青の一撃!」
ぶつかり合う両者の技。弾き飛ばされる朱雀。
朱雀「くっ……」
刀を朱雀に向ける青龍。
青龍「気合が足んねぇんだよ、気合が」
刀を振り下ろす青龍。目を背ける朱雀。しかし朱雀の身に何も起こらない。
朱雀「?」
不思議に思い顔を上げると、朱雀を庇い、右腕(機械製の義腕)で青龍の刀を受け止める巽蒼龍(22)。
朱雀「!?」
青龍「お前は!?」
蒼龍「うおりゃ!」
腕で刀ごと青龍を押しのける蒼龍。朱雀に手を差し出す。
蒼龍「ケガはないか?」
青龍「兄貴……」
朱雀「蒼龍……」
朱雀にウインクする蒼龍。
T「巽 蒼龍」
蒼龍「待たせたな、許嫁」
(第三話 完)
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