<登場人物>
成城 清花(21)女子大生
美佳 (21)同
麗 (21)同
小町 (26)キャバクラ嬢
ボーイ
男性客
女性配信者
店員
<本編>
○メインタイトル『キレイは空気から』
○キャバクラ・店内(夜)
酒を飲む男性客の席にやってくる、着飾った姿の成城清花(21)。容姿端麗とは言い難く、貧乳。
清花「お隣、失礼します」
男性客「(清花の顔を見るなり)チェンジで」
清花「は?」
清花の声「何が『チェンジで』だよ」
○女子寮・外観(夜)
清花の声「まだ何もしてねぇわ」
○同・麗の部屋(夜)
座卓を囲み、酒を飲む清花、美佳(21)、麗(21)。美佳は巨乳、麗は容姿端麗。
清花「こっちはトークと飲みっぷりで勝負してんだっての」
美佳「どうどう」
麗「キャバ嬢も大変だね」
清花「せめて顔か胸、どっちかあればな~」
美佳「肩凝るよ?」
清花「言ってみてぇわ」
麗「まぁ、胸は無理かもだけど、キレイは何とかなるんじゃない?」
美佳「そういえば麗、最近キレイになったね?」
清花「思った思った。え、イジった?」
麗「イジるお金なんてないって。(スマホの画面を見せて)ほら、コレ」
女性配信者の声「みんな、知ってる?」
○(CM映像)
YouTube上の広告。女性配信者が空気清浄機(=冒頭のシーンに登場したもの)を紹介している。
女性配信者「キレイな空気を吸う事で、外見もキレイになれるっていう、今話題の空気清浄機。それが、コレ」
○女子寮・麗の部屋(夜)
座卓を囲む清花、美佳、麗。麗のスマホ(先のCM映像)と、動画で紹介されているのと同じ空気清浄機を見る三人。
女性配信者「キレイは空気から」
スマホをしまう麗。
麗「買っちゃったんだよね」
美佳「あ~、確かにこのCM、観た事ある」
清花「でもこういうCMって怪しくねぇ? 『あの○○も絶賛』っていう人、大体テレビから干されてるタレントだったり」
美佳「わかりみ~」
清花「あとセットで流れる、絵とかキャラとかは変わるのに物語の展開は全く変わらねぇあの漫画も何? 進研ゼミのDMかよ」
美佳「わかりみが深い~」
麗「でも実際、私キレイになったと思わない?」
清花「それは……まぁ」
麗「騙されたと思って、買ってみれば?」
○家電量販店・中
空気清浄機売り場に立つ清花。その視線の先に一台の空気清浄機。「キレイは空気から」「残り一台」というポップ付き。
麗の声「別に空気清浄機なんて、あって困るものでもないし」
清花「……どうだか」
空気清浄機の前に立つ清花。周囲を見回す。誰も見ていない事を確認し、それはそれは深い呼吸をする。
清花「うぷっ」
○キャバクラ・外観(夜)
○同・従業員入口(夜)
張り出されているキャストの人気ランキング(上位三人は写真付き)。一位は小町、清花はランキング圏外。
それを見ている清花。
清花「せめて、トップ10は入りてぇよな」
そこにやってくるボーイ。
清花「あ、おはようございます」
ボーイ「おざーっす」
清花の顔を不思議そうに見るボーイ。
ボーイ「あの……メイク変えました?」
清花「? いや、別に変えてねぇですけど」
ボーイ「そうっスか。何かいつもより盛れてるな、って思ったんで」
清花「あぁ……そう、ですか?」
と言いつつ嬉しそうな清花。
○家電量販店・前(朝)
シャッターが下りている中、最前列に並ぶ清花(他に並ぶ客はいない)。通りがかる通勤・通学途中の会社員や学生が訝し気に清花を見ているが、気にしない。
○同・同
まったく同じ姿勢で並ぶ清花。他に並ぶ客は数人程度。既にシャッターは開き、店員も開店に備え入口に立つ。
開店の音楽が流れる。
店員「い……」
猛スピードで入店する清花。
店員「……らっしゃいませ~」
開店の音楽が止む前に、空気清浄機の箱を持って出てくる清花。
店員「……ありがとうございました~」
○女子寮・清花の部屋
間取りは麗の部屋と変わらない。
部屋の中心に置かれた空気清浄機。目一杯空気を吸う清花。
清花「ぷは~っ」
○キャバクラ・店内(夜)
男性客の元にやってくる清花。ここから徐々にあか抜けていく。
清花「ご指名、ありがとうございます」
○大学・構内
男子学生に声をかけられる清花。それを冷やかす美佳と麗。
○女子寮・清花の部屋
浅草寺の常香炉の煙かのように、空気清浄機から出る空気を浴びる清花。
清花「もっと、もっと……」
○キャバクラ・店内(夜)
客と楽しそうに酒を飲む清花。そこにやってくるボーイに耳打ちされ、席を立つ。
清花「(客に)ごめんね。すぐ戻ってくるから」
○大学・構内
多くの男子学生を引き連れて歩く清花。ただし清花の表情はやや暗い。その様子を唖然とした表情で見つめる美佳と麗。
○女子寮・清花の部屋(夜)
稼働する空気清浄機を黙って見つめる清花。表情は暗い。そして電源を切る。
麗の声「どうしたの、浮かない顔して?」
○同・麗の部屋(夜)
座卓を囲み、酒を飲む清花、美佳、麗。
麗「せっかく、あんなモテモテになったのに」
美佳「本当。私も買えばよかった~」
清花「……いやさ、確かに寄ってくる男も、指名も増えたけど、何かむなしいっていうか」
美佳「贅沢~」
清花「結局、みんな私のトークやら飲みっぷりやらはどうでもよくて、外面しか興味持ってもらえてねぇのよ」
美佳「そんな事ないと思うけどな~」
麗「多分、清花に必要なのは自信だね。そうしなきゃ、何も変わんないよ」
清花「自信ねぇ……」
麗「とりあえず、今のキャバクラでナンバーワンを目指してみれば?」
美佳「それいい。獲っちゃいなよ、トップ」
清花「ナンバーワン、か……」
○キャバクラ・従業員入口(夜)
清花の視線の先、張り出されているキャストの人気ランキング。一位は小町、清花は二位。
そこにやってくるボーイ。
ボーイ「あ、おはようございます!」
清花「おざーっす」
ボーイ「? どうかしたんスか?」
清花「あぁ、いや。また二位か、って」
ボーイ「小町さんはレジェンドっスからね」
清花「小町さんにあって、私に無いもの……」
小町の写真。美佳ほどではないが、胸の大きい小町。
清花「(自分の胸を触り)やっぱ、コレか?」
ボーイ「胸大きくしたいんなら、俺いいの知ってるっスよ?」
清花「入れる金なら無ぇですよ?」
ボーイ「そうじゃなくて。(スマホの画面を見せて)ほら、コレっス」
女性配信者の声「みんな、知ってる?」
○(CM映像)
YouTube上の広告。女性配信者が加湿器を紹介している。
女性配信者「空気中の水分量を多くする事で、女性の胸を大きくする効果が期待できるっていう、今話題の加湿器。それが、コレ」
○家電量販店・中
自身のスマホでCM映像を観る清花。
女性配信者「巨乳は湿度から」
スマホをしまう清花。加湿器売り場に立っており、視線の先には紹介されていた加湿器。「巨乳は湿度から」「残り一台」というポップが貼られている。
加湿器をじっと見つめる清花。
(完)
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