七色の花火 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 8 0 0 03/13
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー


○夜、ホストハウスへの道
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー


○夜、ホストハウスへの道

地球家族6人、小走りに歩いている。
父「すっかり遅くなってしまった。夜7時までにはホストハウスに到着して下さいと書いてあるのに、もうすぐ7時だよ」
ミサ「ギリギリ間に合うかな」
ジュン「お父さん、ほかに何か情報が書いてある?」
父「ほかには・・・」
父、手に持っている資料を読む。
父「今日のホストファミリーは、年配の男性が一人だけのようだ。それから、この星は生まれる子供の数が多いから、人口が急速に増え続けていて、最近、100万人を超えたそうだよ」
ミサ「世界人口100万人か。地球よりはだいぶ少ないね」

○ホストハウスの入口

リコが玄関をあける。
リコ「おじゃまします」
すぐ脇に、地下に続く階段があり、下から声がする。
HF「地球のみなさんですね。よかった、7時に間に合った」
父「遅くなってすみません。7時に何かあるのですか?」
HF「花火ですよ」
タク「花火?」
HF「ご説明しましょう。まず地下室まで下りてきてください」
地球家族6人、階段を下りる。

○地下室

HFと地球家族6人。
ミサ「地下室がある家なんて、すごい」
HF「この星の家にはすべて地下室がありますよ」
ジュン「へえ、何のために?」
HF「この機械を地下室に置くためです」
HF、赤いボタンがついているだけの機械を、両手で持ち上げて見せる。
ジュン「シンプルな機械ですね。ボタンが一つあるだけだ」
HF「この星の住民は、生まれるとすぐに政府からこの機械をもらうのです。だから一人一台必ず持っています」
ジュン「一人一台? 赤ちゃんも?」
HF「生まれたばかりの赤ちゃんでも、このボタンを押すだけならできます。おっと、そろそろ7時だ。ボタンを押す時間です。みなさんは、外に出て空を見上げていてください」
母「どうしてですか」
HF「もう時間がない。説明は後です。早く外に出て」
父「は、はい」

○ホストハウスの玄関から外

地球家族6人、あわてて階段を上り、ドアから外に出る。
地球家族6人、空を見上げる。
母「そろそろ7時かしら」
父、時計を見る。
父「そうだな」
その時、空一面に花火の模様が広がる。
ミサ「わー、きれい」
花火が広がっては消える。これがしばらく続く。
ジュン「全部で何色かな」
タク「赤・橙・黃・緑・青・紫・・・。全部で6色だね」
やがて花火が全部消え、暗い夜空に戻る。
ジュン「終わりかな」

○居間

HFと地球家族6人。
HF「どうでした? 花火、きれいだったでしょう」
母「ええ、とても」
ミサ「本物の花火じゃないですよね」
HF「はい、正確に言えば、花火の映像を機械的に作り、映し出しているのです」
ジュン「遠くの空も見たんですけど、花火は果てしなく広がっていましたね」
HF「この星の空全体に広がります。もっとも、陸地があるのはこの辺りだけなので、その上空だけですけど」
ジュン「星の裏側は、今は昼間ですからね」
父「この星のみなさんは、7時になると花火を打ち上げるためにボタンを押すのですか?」
HF「はい。10日に一回、当番が回ってくるんです。私の住民番号の末尾の数字は3です。今日は、末尾が3の人達の当番の日なのです」
ジュン「じゃあ、当番じゃない日は外に出て花火が見られるんですね?」
HF「そういうことです」
ミサ「でも、どうしてあの機械は地下室に置いてあるんですか?」
HF「どういうわけか、星の光が少しでもあると、作動しないらしいんですよ」
ミサ「それで地下室に」
HF「はい、そのせいで、当番の日は花火を見ることができません」
父「こうやって当番を決めて花火を打ち上げる習慣って、いつから始まったんですかね?」
HF「私が生まれるずっと前、この星の人口が10万人を超えた頃からですよ。それ以来、花火を見ることは、全住民の生きがいなのです。もっともその当時は、花火の色は5色でした」
ジュン「今日の花火は6色でしたね。花火の色の数と人口が関係するのですか?」
HF「その通りです。何人がボタンを押すかによって色の数が決まります。1人が押せば1色。10人が押せば2色。100人が押せば3色。1000人が押せば4色。1万人が押せば5色。そして10万人が押せば6色です。
父「なるほど。この資料には、この星の人口が最近100万人を超えたと書いてありますよ」
HF「そうなんです。人口が100万人を超えたということは、つまり毎日の当番が10万人を超えたということです。だから、6色の花火になったのはつい最近なんですよ」
父「ご説明ありがとうございます。花火の仕組みがよくわかりました」
ジュン「ということは、7色の花火が見られるのは人口が1000万人を超えた時か。まだまだ先ですね」
HF「その通り。でも、みなさん驚くなかれ。実は、今日は特別な日なんです」
ジュン「特別な日? どんな?」
HF「この星の神様の誕生日ということになっています。そして、人口が100万人を超えた初めての誕生日ということで、今夜、7色の花火を作るように、政府から命令が出ました」
ミサ「そうか。当番に関係なく住民全員がボタンを押せば、今でも7色の花火自体は作れるんですものね」
母「でも、それじゃ誰も見ることができませんね」
HF「そうなんです。7色の花火は、今日の8時に作ることになっています。その花火は、あくまでも神様に捧げる花火ということで、誰も見ることができません」
ジュン「神様のための花火か・・・」
HF「8時には、また地下室に行かなければなりません。今のうちに、食べ物を買い出しに行きましょう」
父「はい」

○道

HFと地球家族6人が歩いている。
ジュン「さっきよりもだいぶ人通りが少ないですね」
HF「そりゃそうですよ。全住民が、8時までに家に戻って地下室にこもらなければいけないんですから」
ミサ「確かに・・・。あれ? あそこにいる人は、何かしら」
指さす先には、テレビカメラを持った男性と、マイクを持った女性。
HF「あれは、テレビ局の生中継だな」
HFと地球家族6人が近づく。
マイクを持った女性アナウンサーが話し始める。
アナウンサー「まもなく歴史的イベントの時間がやってきます。8時ちょうどに、住民全員で7色の花火を作るのです! 全員が地下室に入って待機しますので、人通りがほとんどなくなりました。そしてこの私もまもなく、中継を終わらせて自宅に戻ります。その間、テレビ番組はしばらく放送を中断します」
アナウンサー、地球家族と目が合う。
アナウンサー「あそこに家族がいらっしゃいますね。ちょっとインタビューしてみましょう」
アナウンサー、HFにマイクを向ける。
アナウンサー「まもなく8時ですよ。早く戻って地下室に入らないと」
HF「私の家はすぐそこですから、間に合いますよ」
アナウンサー、次にジュンにマイクを向ける。
アナウンサー「みなさんは?」
ジュン「実は、僕たちは地球からの旅行者なんです」
アナウンサー「地球からの旅行者? ということは、8時にボタンを押さなくてもいいんですね?」
ジュン「そうみたいですね・・・」
アナウンサー「ということは、あなたがたは、7色の花火を見ることができるのですか?」
ジュン「確かに、僕たちは7色の花火を外で見ることができますね。これはラッキーだな」
HF「ジュンさん、あまりそういうことを言わないほうが・・・。テレビを見ている人がうらやましがりますから」
ジュン「あ、ごめんなさい」
HF「花火は、私たちにとって特別のイベントです。そのことで、住民たちを刺激するのは良いことではありません。さあ、行きましょう」
HF、地球家族6人をアナウンサーから引き離すようにして立ち去る。

○ホストハウスの前の道

HFと地球家族6人が立っている。
HF「じゃあ、まもなく8時ですから、私は地下室に行きます。みなさんはここで、花火を見ていてください」
父「いいんですかね? この星の住民は誰も見ることができない花火ですよ。私たちだけ見ていいんですか?」
HF「せっかくこの特別な日に旅行にいらっしゃったんですから、見ていってくださいよ」
地球家族6人「・・・」
HF「そうだ、1つお願いがあります。花火が7色になることで、何の色が増えたのか、後で教えてくれるとうれしいです」
ジュン「それくらいお安い御用です」
HF、家の中に入っていく。

○しばらくして、ホストハウスの前の道

地球家族6人が夜空を見上げて立っている。
ジュン「8時まであと2分だな」
タク「何の色が増えるかな」
ミサ「7色だから、虹の色になるんじゃない?」
タク「ということは・・・」
ミサ「増えるのはきっと、あい色よ」
タク「あい色か・・・」
ミサ「タクの予想は?」
タク「意外なところで、黒かな」
ミサ「それだけはあり得ないから」
その時、HFがドアを開けて出てくる。
ミサ「あれ? ボタンを押さなくていいんですか? もうすぐ8時ですよね」
HF「やっぱり、私も7色の花火を見たくなりました」
ジュン「そんなこと許されるんですか?」
HF「人口はもう100万人を超えているんです。私一人くらいボタンを押さなくたって、7色の花火を作れますよ」
地球家族6人「・・・」
HF「ご覧のとおり、私はもう、いい歳です。今日見ておかないと、もう7色の花火を見られることはないかもしれません。そう考えれば、今日見てもバチは当たらないでしょう」
地球家族6人「・・・」
HF「もっとも、ついさっきまでは、ちゃんと地下室でボタンを押すつもりでした」
ミサ「どうして気が変わったんですか?」
HF「地球のみなさんが、7色の花火を見ることができると気づいたからです。神様だけが見られる花火というのならあきらめがつきますが、神様ではないみなさんが見られるのなら、私だって見てみたい」
父「そうか、私たちのせいか・・・。私たちも、見るのやめましょうか」
HF「いや、せっかくの記念です。私と一緒に見てください」
HF、腕時計を見る。
HF「さあ、そろそろ時間です。8時まであと20秒」
タク「(ミサに、小声で)僕、ある物語を教科書で読んだことがあるんだけど・・・。自分一人くらいと思っていたら、全員が同じことを考えてしまうという話で・・・」
ミサ「(タクに小声で)その話、知ってる。私も教科書で読んだ」
時計が8時ちょうどをさす。
夜空が、暗いまま何も変化がない。
HF「・・・」
地球家族6人「・・・」
HFと地球家族6人、黙ったまま空をながめる。
父「花火があがらない・・・」
タク「一色もあがらなかった・・・」
ミサ「やっぱり、みんな同じこと考えたんだ」
母「でも、まさか一人もボタンを押さないなんて」
ジュン「僕が、テレビカメラの前で、余計なことを言ったせいで・・・」
HF「さあ、寒くなります。部屋に入りましょう」

○翌朝、居間

地球家族6人が入ると、HFがちょうどテレビのニュースを見ている。
HF「おはようございます。昨日の花火の件について、ちょうどニュースをやっていますよ」
テレビには、高齢の女性が映っている。
HF「この星の最高権力者である女帝の、記者会見です」
全員、テレビ画面を見入る。記者と女帝が話を始める。
記者「昨日の8時の花火は大失敗に終わりました」
女帝「そういうあなたも、ボタンを押さなかったのでしょう?」
記者「いやー、昨日は、あの地球から来たという少年のテレビでの発言を聞いて、どうしても自分も花火が見たくなってしまい・・・」
女帝「私も同じですよ」
HFと地球家族、みんなでジュンのほうを見る。ジュン、気まずい表情。
記者「であれば、もう一度、別の日に計画しますか?」
女帝「いや、何回やっても同じでしょう。自分一人くらいボタンを押さなくてもと考える人が一定の人数いることがわかってしまいました。どんなにがんばっても、花火は6色でしょう」
記者「そうですね・・・」
女帝「やはり、当番制にして、人口が増えるのを待つしかありません」
記者「とすると、人口が1000万人を超えるまで待たなきゃいけないのか・・・。何十年かかることか・・・」
女帝「それじゃ、こうしましょう。当番制でも、ボタンを押す人と見る人の人数を逆にするのです」
記者「と、おっしゃいますと?」
女帝「つまり、末尾が1番の人が花火を見る日は、それ以外の人がボタンを押す当番というように」
記者「なるほど、その方法なら・・・」
記者、電卓をたたく。
記者「人口が1111111人に達すれば、当番は100万人。7色の花火になりますよ」
女帝、ほほえむ。
HFと地球家族6人がテレビを見続けている。
HF「いいことを聞きました。その方法ならば、私の生きているうちに、7色の花火がきっと打ちあがる・・・」
ミサ「そうですよ」
HF「むしろ、生きる望みができて、長生きする気力が出てきましたよ。これも、みなさんのおかげです」
HFと地球家族6人、笑顔になる。

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