愛の花束 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 20 0 0 01/09
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 20歳
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘) 18歳

○空港

地球家族6人が歩いている。
ホストファミリーの4人が近づいてくる。
HF「ようこそ、いらっしゃいました」
HM「向こうのバスで行きましょう」
父「ありがとうございます」

○バスの中

地球家族6人とホストファミリー4人が座っている。
2人ずつ乗ったリフトが次々に空港に向かって行くのが見える。
ジュン「あれは何ですか?」
HM「空港と町を往復しているリフトです。気持ちがいいですよ」
ミサ「へえ、帰りはあれに乗りたいな」
HB「いいですけど、あれに乗ると、みんなでお別れのあいさつができないですよ」
HS「そうです。見送りの人だけが途中でリフトから降りるしくみなんです」
ジュン「なるほど、それは困るな。やっぱり最後のあいさつは、みんな一緒にしたいですね」
HF「じゃあ、帰りも、このバスにしましょう」

○ホストハウスの居間

地球家族6人とホストファミリー4人、それに20歳くらいの男性が座っている。
HS「私のボーイフレンドなんです」
男性「はじめまして」
HSと男性、隣同士の席だが、緊張し合っている様子。
HM「そんなに緊張しないで。(地球家族に向かって)まだ知りあって3日だから、無理ないんですけどね」
ジュン「あー、そうなんですか」

○ホストファミリーの家の前

地球家族6人が出かけるところを、HSが呼びとめる。
HS「あの、今からどちらへお出かけですか?」
父「あそこの山へ、ハイキングに行くところなんです」
父、遠くに見える山を指さす。
HS「やっぱり、そうでしたか。じゃあ、一つお願いがあるんですけど」
父「なんでしょう」
HS「山の頂上に、小さな花屋があります。そこで『愛の花束』というのを、買ってきてくれませんか?」
タク「愛の花束?」
ジュン「それはどんなものなんですか?」
HS「私も見たことがありませんが、新聞に出ていました。最近山で発見された花で、相手に愛情を持って渡すと、花が開くんだそうです。だから、愛情を言葉でうまく伝えられない人たちに人気だと書いてありました」
ミサ「へえ」
父「わかりました。買ってきましょう」
HS「ありがとうございます」

○山の頂上近くの道

地球家族6人が細い山道を登っている。
父「さあ、もうすぐ頂上だ」
タク「あ、花屋があったよ」
タク、頂上に見える花屋を指さす。

○花屋

入口に看板が立てかけてある。
『愛の花束はいかがですか。愛する人に向けると、花が開く不思議な花束です。新聞でも取り上げられて、人気急上昇中』と書かれている。
地球家族6人が入る。年配の女性店員が花の手入れをしている。
父「すみません、愛の花束を・・・」
店員、地球家族のほうを見ずに、独り言のようにつぶやきはじめる。
店員「愛の形はさまざま。相手のことを深く知りたいと思うのも愛、相手と平穏に過ごしたいと思うのも愛、・・・」
父「あ、あの、すみません。私たちあまり時間がないものですから・・・。愛の花束を一つください」
店員、ようやく手を止めて地球家族のほうを見る。
店員「わかりました。どなたに渡される花束ですか?」
父「あ、それは聞いてなかったな」
ミサ「あら、決まってるじゃない。HSさんがボーイフレンドに渡すのよ。自分の気持ちをうまく伝えられないから、花束を使って表現しようとしているんだわ」
ジュン「いや、わからないよ。ボーイフレンドからHSさんに渡してもらうために買おうとしているのかもしれないよ。自分への愛を確かめようとしてね」
店員「まあ、どちらでもかまいません。そのお二人は、知り合ってどのくらいなんですか」
ミサ「まだ3日って言ってたわね」
店員「今すぐ、花束を作りますから、少しお待ちください」
店員、店内にある花を少しずつ取り上げる。花はすべて閉じている。

○山道

地球家族6人が歩いている。
父が花束を持っている。
母「さあ、帰りましょう」
ミサ「HSさん、その花束を使って、ボーイフレンドとうまく行くかしら」
ジュン「僕は疑問を感じるな。こんな道具を使わずに、言葉で自分の気持ちを表すべきだと思う」
父「うん、そういう考え方もあるけど、それがうまくできない人たちもいるからね。口下手や照れ屋で困っている人には、まさに大発明なんじゃないかな」
ミサ「発明? 自然界に咲いている花なんだから、発明じゃなくて、発見でしょう」
父「そうだな。あまりにもこの花が不思議だから、作り物のような気がしてしまってね」

その時、山道を歩いて来る20代くらいの女性とすれ違う。
女性「こんにちは」
地球家族「こんにちは」
父「こんにちは」
その時、父が持っている花束の花がいっせいに開く。
父「え?」
女性、すれ違って行ってしまう。
花束の花は、元通りいっせいに閉じる。
全員「・・・」
母「お父さん、今の、何?」
父「いや、さあ?」
ジュン「花が開いたよ。お父さん、今の女の人、好みのタイプなの?」
父、赤くなる。
父「何を言い出すんだ。さあ、行くぞ」
父、歩き出す。

次に、30代くらいの女性が対向してくる。
女性「こんにちは」
地球家族「こんにちは」
その時、父が持っている花束の花がまたいっせいに開く。
地球家族6人、花束に注目する。
女性、気付かずにすれ違って行く。
花束の花は、元通りいっせいに閉じる。
全員「・・・」
父「いや、これは、その・・・」
全員「・・・」
父「感度が良すぎるんじゃないか、この花。どこかに調節ボタンはないのかな」
父、花のあちこちをいじりまわす。
ジュン、父に耳打ちする。
ジュン「だから、これは本物の花なんだって」
父「あ、そうか。でも、きっと、異性とすれ違うだけで開いてしまうのかもしれないぞ。ちょっと試してみよう」
少し離れたところにベンチがあり、おばあさんが座っている。
父「あのおばあさんに近づくだけでも開くよ、きっと」
父、おばあさんに近づいて花を向ける。
父「こんにちは」
おばあさん「こんにちは」
花はまったく開かない。父が落ち着かない様子。おばあさんがキョトンとしている。
父「失礼しました。(小声で)しまった、余計なことをした・・・」
ジュンとタクがニヤリと笑う。

地球家族6人、また無言で歩き出す。
父「・・・なんだか、お父さんばかり持つのは不公平な気がするな。お母さんも、少しは持ちなさい」
父、母に無理やり花束を渡す。
母「えっ」
母、しぶしぶ花束を受け取り、また歩き出す。

次に、20代くらいの男性が対向してくる。
男性「こんにちは」
地球家族「こんにちは」
その時、母が持っている花束の花がまたいっせいに開く。
地球家族6人、花束に注目する。
男性、気付かずにすれ違って行く。
母、赤くなっている。
花束の花は、元通りいっせいに閉じる。
全員「・・・」
タク「そうか、お母さん、年下の男性がいいんだ・・・」
ジュン「(小声で、タクに)ちょっとタク、だめだよ、誰もが思っていることを口にしちゃ」
タク「(小声で、ジュンに)ごめん。気まずい雰囲気を断ち切ろうと思って・・・」
ジュン「(心の中で)確かに、このままじゃ、夫婦喧嘩になっちゃうな。よし、仕方がない」
ジュン「じゃあ、花束、僕が持つよ」
ジュン、母から花束を奪う。

次に、15歳くらいの女子が対向してくる。
女子「こんにちは」
地球家族「こんにちは」
その時、ジュンが持っている花束の花がまたいっせいに開く。
父とタクが、クスッと笑う。
ジュン「お父さん! 笑うんだったら、僕、花束持たないよ」
父「す、すまん」
ジュン「タクもだよ。今度はタクの番だよ」
タク「僕、いやだよ」
タク、走って逃げる。ジュンが追いかける。
ジュン「タク、自分だけずるいぞ。みんなこんなに恥をかいてるんだから!」
タク、近づいて来る。
タク「そうだ、いい方法を思いついた。みんなで持てばいいんだ。それなら誰だかわからないよ」
ジュン「みんな? 6人全員で?」
タク「それは無理だから、とりあえず、男3人で持とうか」

○道

地球家族6人が歩いている。父とジュンとタクの3人が花束をかかえるようにして運んでいる。
40歳くらいの女性がやってくる。
女性「あら、みなさん、大丈夫ですか?」
女性、花束を指さす。
女性「それ、もしかして、最近話題の『愛の花束』っていうやつですか? そんなに重いものなの?」
ジュン「いえ、重くはないんですけど・・・」
その時、花束の花がまたいっせいに開く。
女性「あら、いやだ、恥ずかしい。私、亭主も子供もおりますので・・・」
女性、顔を赤らめながら立ち去って行く。
全員「・・・」
父「ハハハ、ジュンかタクか、どちらか知らないが、お母さんくらいの年の女性が好みなのか、ハハハ」
ジュン「お父さん。無理がありすぎて、余計に気まずいよ。ほら」
父、母を見る。母が無表情で歩いている。
全員「・・・」
父「じゃあ、今度は女性3人の番だな」

地球家族6人が歩いている。母とミサとリコの3人が花束をかかえるようにして運んでいる。
15歳くらいの男子とすれ違う。
その時、花束の花がまたいっせいに開く。
ジュン「(小声で、タクに)これはきっと、ミサだな」
ミサ「・・・」
花束の花は、元通りいっせいに閉じる。
次に、10歳くらいの男子が近づいて来る。
その時、花束の花がまたいっせいに開く。
ジュン「(小声で、タクに)今度はきっと、リコだな」
タク「(小声で、ジュンに)いや、案外、またミサだったりして」
ミサ「ちょっと、ひそひそと犯人探しするの、やめて」
リコ「私じゃないよ!」
リコ、手を離す。花は開いたままである。
ミサ「ちょっと、リコ、手を離しちゃだめ」
男子が通り過ぎると、花が閉じる。
ミサ「それにしても、こんなにすぐ開いちゃう愛の花束って、商品としていかがなものかしら」
ジュン「うん、それでもここの人たちには人気商品だということは、僕たちが誰かまわずほれやすいのが異常なのかもしれないね」
タク「僕たちって? 地球人ってこと? それとも、うちの家族のこと?」
全員「・・・」
ジュン「タクにしてはいい質問だな」
母「さあ、次はお父さんたちの番よ」

母、花束を父に渡そうとする。
タク「あれ?」
ジュン「タク、どうした?」
タク「そういえば、花が開かないね。お母さんがお父さんに花を渡しているのに」
ジュン「本当だ。気がつかなかった。というか、タク、なんてこと言うんだ。まずいよ」
父「確かに、開いてないぞ」
父、母に花束を返そうとする。
ミサ「あら、まだ花が開かない」
ジュン「(心の中で)お父さんもお母さんも、花が開かないなんて・・・」
ミサ「(心の中で)そういえば、二人とも、愛してるって言っているのを聞いたことないな・・・」
そこへ、HSが近づいて来る。
HS「みなさん」
父「あ、もう家の近くまで来てたんですね」
父、花束をHSに渡す。
父「はい、頼まれていた花束です」
その時、花束の花がまたいっせいに開く。
HS「きゃっ」
父「しまった」
地球家族全員、気まずい表情。
HS「あ、いえ、びっくりしただけです。私は大丈夫です。どうもありがとうございました」

○ホストハウスの居間

地球家族6人とHB・HS。テーブルに花束が置いてある。
HS「お父さん、お母さん! 来て!」
ジュン「え、その花束、ボーイフレンドに渡すんじゃないんですか?」
HS「いえ、違うんです。ちょっと両親の愛を確かめようと思って」
HFとHMが入ってくる。
HF「どうした?」
HS「お父さん、その花束を、お母さんに渡してみてくれる?」
HF「これかい?」
HF、花束を持って、HMに渡そうとする。花は開かない。
HS「今度はお母さん、やってみて」
HM、花束を持って、HFに渡そうとする。花は開かない。
HS「やっぱり」
HF「何のことだい?」
HS「これ、愛の花束なのよ」
HM「愛の花束? 何、それ?」
HS「愛情があると、花が開くのよ。でも、開かないじゃない。二人とも、ちっとも愛してるって言わないから心配してたけど、やっぱり愛がないのね」
HM「いや、そんなわけが・・・」
HF「そんなに簡単に開かないんじゃないか、この花?」
HS「そんなことないわ。ね、さっき・・・」
HS、父のほうを見る。父があわてる。
父「え、いや、その・・・」
そこへ、HSのボーイフレンドの男性が入ってくる。
男性「どうしたの?」
HS「あ、ちょうどよかった。あなたのご両親にもこの愛の花束、試してみてよ」
HS、花束を持って男性に渡そうとする。
そのとき、花がいっせいに開く。
HS、照れ笑いをして、あわてて花束をテーブルに置く。
全員「・・・」
HS「ね、こんなふうに開くのよ。でもお父さんとお母さんがやっても開かない」
父「ちょっと待って」
HS「え?」
父、花束を持って、母に渡そうとする。花は開かない。
母が父に花束を返す。花は開かない。
父「ほら、ほら、私たちがやっても、開かないんですよ」
HS「え、どうして? まさか、お二人も?」
父「いえいえ。よく聞いてください。愛には、いろいろな形があります。相手のことを深く知りたいと思うのも愛、相手と平穏に過ごしたいと思うのも愛、・・・」
父、話しながら、花屋の女性店員の独り言を思いうかべている。
HS「へえ、ほかには?」
父「ほかには、・・・あー、ちょっと思い出せません。ただ、要するに、おそらく、愛の花束にもいろいろあって、これはたぶん、相手をもっと知りたいと思う愛情に反応する花なのでしょう。だから、もう十分知り尽くしている夫婦の場合には反応しないんですよ」
HF「なるほど、そういうことか。きっと、そうだね」
HFが冷や汗をかきながら弁明。
大人全員、笑う。子供全員、唖然として大人たちを見る。

○翌朝、道

地球家族6人とホストファミリー4人が歩いている。
父「短い間でしたが、お世話になりました。ありがとうございました」
HF「いいえ。われわれも空港まで、お見送りしましょう。バス乗り場はあっちです」
母「あ、実は、子供たちがどうしても、帰りはリフトにしたいと言うものですから・・・」
HM「じゃあ、そうしましょうか。ならば、リフトに乗る前に、最後のごあいさつですね」

○空港に向かうリフト

リフトに分かれて乗っている。
父とHS、母とHB、HFとミサとリコ、HMとジュンとタクの組み合わせ。
子供たちが別々のリフトに乗りながら、同時に話をしている。
HS「(父に)あの、最後に質問があるんですけど」
HB「(母に)あの、最後に質問があるんですけど」
ミサ「(HFに)あの、最後に質問があるんですけど」
ジュン「(HMに)あの、最後に質問があるんですけど」
HS「今後、もうお会いすることはないと思いますので、秘密は守れますから、本当のことを教えてください」
HB「今後、もうお会いすることはないと思いますので、秘密は守れますから、本当のことを教えてください」
ミサ「今後、もうお会いすることはないと思いますので、秘密は守れますから、本当のことを教えてください」
ジュン「今後、もうお会いすることはないと思いますので、秘密は守れますから、本当のことを教えてください」
HS「奥様のことを愛していますか?」
HB「ご主人様のことを愛していますか?」
ミサ「奥様のことを愛していますか?」
ジュン「ご主人様のことを愛していますか?」

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