じぃちゃんのスパイス ドラマ

鬼怒川洋子(きぬがわようこ)は朝から怒っている。夫の鬼怒川久司(ひさし)はぼんやりと新聞を読んでいる。敏感に変化を察知する子供の鬼怒川洋司(ようじ)大学生と鬼怒川つかさ(18)はすぐに気づく。 隣家の並本麻佑子(なみもとまゆこ)専業主婦が怒鳴り込んできて鬼怒川次郎(じろう)に覗かれたから双眼鏡を取り上げてくれと久司は怒られる。心配しながらも通学して行く子供たち。久司が戻ると次郎が何事も無かったように食卓の席に着いている。怒っている洋子に代わって、目玉焼きを作り始める久司であった。
祥天音 12 1 0 12/15
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第一稿

人 物
鬼怒川洋子(ようこ)(42)会社員で主婦
鬼怒川久司(ひさし)(45)会社役員
鬼怒川洋司(ようじ)(20)大学生
鬼怒川つかさ(18)女子高校生
鬼怒川次郎(じ ...続きを読む
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人 物
鬼怒川洋子(ようこ)(42)会社員で主婦
鬼怒川久司(ひさし)(45)会社役員
鬼怒川洋司(ようじ)(20)大学生
鬼怒川つかさ(18)女子高校生
鬼怒川次郎(じろう)(82)年金生活者
並本麻佑子(なみもとまゆこ)(40)専業主婦


○成城学園前の住宅街(早朝)
    マラソンするサラリーマンが通り過ぎ
    る。
    犬の散歩をする並本麻佑子(40)は、
    白いスピッツを抱いて鬼怒川家の
    様子を伺いながら隣の自宅に入る

○鬼怒川家・外観(早朝)
    鬼怒川久司(45)が、外のポストの新聞を
    取りに出て家に入る。

○鬼怒川家・キッチン・リビング(早朝)
    久司がリビングに入る。
    奥では、キッチンに鬼怒川洋子(42)が
    目玉焼きを作っている。
    久司が新聞を読んでいると、
    鬼怒川洋司(20)が入ってくる。
洋司「あれ?…弁当は?」
    無言で、サラダボールを出す洋子
洋子「…(サラダをどんっと出す)」
    無言で見つめ合う久司と洋司。
    眠そうに遅れて来たつかさ(18)は、
    短いスカートの制服を着たつかさ
    は、美しい脚を見せソファに
    突っ伏して寝る。
つかさ「まじ、くそ眠い…」
    洋司がつかさに近づき小声で囁く
洋司「おい、おい、つかさ!」
つかさ「えっ、お兄ちゃん、何、眠い~」
洋司「母さんが変だ。 お前何した?」
    つかさ、慌ててキッチンを見る。
つかさ「…彼女連れ込んじゃった?」
洋司「まだしてないし!」
    洋司は、はっとし、口を押えたが、
    つかさニヤニヤしながら近づいて来る。
つかさ「1年間何して…まさかキスも、まだとか?」  
    洋司の目線がつかさから逃げるよう
    に、父、久司に向かうが、
    久司も首を振り新聞を読む。
    洋子が目玉焼きを乗せたお皿を
    3枚持ってきて、テーブルに置く。
    兄弟は、ほっとした表情で、席に着
    き、食事し始める。
    久司は、新聞を片づけるが目玉焼き
    の皿が久司の分だけ無い。

○鬼怒川家・次郎の部屋(早朝)
    次郎(82)は、静かに障子を明け、
    双眼鏡を持ち、隣の家を覗き見する
次郎「…ちっ」
    次郎は舌打ちし、布団に潜り込む

○鬼怒川家・玄関外(早朝)
    並本麻佑子(40)が、スピッツを抱き
    ながら、早足でやってきて、
    ピンポンを激しく鳴らす。

○鬼怒川家・キッチン・リビング(早朝)
    激しいピンポンは鳴り続けている
    キッチンで後ろを向きながら、
    洋子が低い声で言う。
洋子「…あなた?」
    兄弟は、静かに朝食を食べている
久司「あ…はいっ」
    久司は、急いで玄関に向かう。

○鬼怒川家・玄関ホール(早朝)
    久司、嫌そうにドアを開ける。
    並本麻佑子が現れる。
麻佑子「今日もなんです! お宅は
 おじい様にちゃんと怒ってくれました?」
久司「父は、引っ越してきたばかりで」
麻佑子「まーだ、そんなこと言われている   
 んですか? おじい様ってお金持ちの
 地元の名士なんですって?そんな父親
 でしょうから、信じたくないのも解り
 ますがね」
久司「…はぁ…」
麻佑子「野鳥の会だなんて誰が信じるん
 ですか? 青空じゃなくて、完全に、隣の!
 私の家を!私の部屋を!のぞき見して
 るんですよ!」 
久司「…いやぁー、でも…見る……かなぁ…?」
    麻佑子の顔が赤くなり、
    もっと怒り出す。
麻佑子「持ち物検査でも何でもして、
 双眼鏡を早く取り上げて下さいよ!」
久司「すみません、言って聞かせます」
麻佑子「お宅も、警察関係者だから
 大きな顔をしてらっしゃるのでしょうけ
 ど、のぞきは立派な犯罪ですから!」
久司「はい…ただ…、父は、豊子…母を
 亡くしたばかりで、ご飯も食べれなくて、
 引き取ったばかりですから…もう少し、
 温かい目で、見て頂けると…」
麻佑子「はぁ? ご飯も食べられなくて
 覗き見しますか? あれは、奥さまが
 居た時にもしていたような感じですよ。 
 地元の名士が聞いて呆れますわ?」
久司「母が全てやっていたもので…
 父もショックなはずで…」
麻佑子「お母様が全て、どこぞの家政婦
 さんのように、甘やかしていたんです
 ね?」
久司「はぁ? ちょっと失礼ですよ?」
麻佑子「あなたもあなたですよ! 
 奥様もどこぞの家政婦さんのように、
 働きっぱなしだから、男は偉そうに、
 覗き見するような暇を見つけて
 しまうんではありませんか? 
 覗き見をするようなおじい様にして
 しまっている息子のあなたにも責任
 あるのではありませんか?っと、
 私は、怒っているんです」
久司「はぁ?たかが、のぞきの疑いで、
 私まで責任が及ぶんですか?」
麻佑子「当たり前じゃありませんか!
 あなた世帯主でしょう?…まだ、
 わかりません? 一刻も早くおじい
 様から、双眼鏡を取り上げて下さい!」
久司「…はぁ…」 
麻佑子「でないと、こちらも、優秀な
 弁護士をつけて、覗き見の名士から、
 おたくから、豊かさも何もかも取り
 上げますわよ。」
犬「…ワンッワンッ!」
麻佑子「早く、双眼鏡取り上げて下さいね!」
    麻佑子と抱いたスピッツが、
    怒りながら立ち去る。
久司「……はぁ…めんどくせー」
    久司が、頭を軽く叩き重いため息
    を吐く。

○鬼怒川家・キッチン・リビング(早朝)    
    麻佑子の怒ってる声少し聞こえる
    パンを持ってきて食べ始める洋子
つかさ「ママ、パパと喧嘩した?」
    洋子は、パンを食べて頷く。
洋子「私もおじいさんに覗かれたのよ」
つかさ「えっ、ママまで?」
洋子「パパに、文句言ったら、あの人
 なんて言ったと思う?」
洋司とつかさ「…なんて?」
洋子「真面目だなーっ、減るもんじゃ
 ないだろって言ったのよ?」
洋司とつかさ「うわっ、ありえねー」
洋子「そうでしょ? 名士のお父様
 からお金も借りず、夫婦2人だけで、
 頑張ってやってきたのよ。 真面目結構、
 私が真面目じゃなかったら、一戸建て
 なんて到底無理だったし、あんたたち
 の大学費用捻出なんて出来なかったわ! 
 少ないボキャブラでバカ丸出しなのよ! 
 パパったら!」
    兄弟共、聞いていたが、時計を見て
    ソワソワし始める。
洋司「父さん酷いよね・・あの、悪いん
 だけど、時間で行かないと。 僕の弁当は?」
洋子「…お父さんから、お金貰って」
つかさ「私も?… パパ、ゴルフ諦めだね」
     意地悪そうに、洋子ニヤッと頷く
洋子「パパもおじいちゃんも、なんでも
 お金で解決出来るとでも思ってる
 みたいだから、ママもしぼりとって
 やるわ!」 
洋司「じゃ、行ってくる…母さんファイト!
 …ふーっ、怖っ」
つかさ「私たちはママの味方だよ!」
    つかさは、ママを軽くハグする。
    洋子は食べながら微笑み手を振る
    兄弟はほっとして、玄関に向かう
    久司が戻って席に着く。
    次郎が、ひょっこり現れ、
    堂々と食卓の席に着く。
    久司がぎょっと次郎を見る。
次郎「わしのご飯は、まだかいね?」
    洋子は、キッと久司をにらみつける。
    洋子は目玉焼きに箸をぶっ刺し
    ぐちゃぐちゃと潰す。
久司「ぼ…僕が作るかな? お父さん…
 卵2個でいい? 確か……半熟だったよね?」

end

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