バーチャル旅行の部屋 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 7 0 0 11/20
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
A(HMの親戚の女性) 19歳
B( ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
A(HMの親戚の女性) 19歳
B(女性) 25歳


○ホストハウスの玄関

地球家族6人。リコがドアを開ける。
リコ「おじゃまします」
HMが出て来る。
HM「いらっしゃい」

○居間

地球家族6人とHM。
HM「みなさんは、観光はこれからですか?」
父「はい、そうです」
HM「じゃあ、ちょうどいいわ。あちらの部屋へどうぞ」
父「え?」

○小部屋

地球家族6人が入る。いすが並んでいる。
HM「どうぞ座ってください」
地球家族、着席。HMもすぐ後ろに座る。一瞬暗くなり、部屋いっぱいに外の風景が映る。
タク「うわ、すごいや」
HM「どこを観光したいですか? どこでもおっしゃってください」
HM、リモコンを操作する。
前後左右、上も下も、部屋の壁全体に映し出された風景が、少しずつ動いていく。
ジュン「確かに、これはすごい。オープンカーでドライブしている気分ですよ」
HM「そうでしょう」
ミサ「不思議ね。単に旅先の写真やテレビの旅行番組を見ているだけじゃ、旅行しているつもりにはなれないのに、今は本当に車で旅しているような錯覚があるわ。なぜかしら?」
母「映像が立体的だからだと思うわ。それに、この自然の音、風、匂い。本当によくできているわ」
ジュン「この映像は、いつ撮影されたんですか?」
HM「これは全部、今の映像よ。いたるところにカメラが設置されていて、今現在の様子が映し出されているのよ」
ミサ「じゃあ、そこの歩道を歩いている人たちは、今まさに、同じ道を歩いているんですね」
歩く人々のすぐ近くにさしかかる。ミサが手をふる。
ミサ「こんにちは! あれ、無視されちゃった」
HM「残念ながら、映像の中にいる人たちには、私たちのことが見えないのよ」

HM「じゃあ、今度は、離れ島まで行ってみましょうか」
HMがリモコンを操作する。映像は、海上を進む。
ミサ「わー、今度は船に乗っているみたい」
タク「最高!」
父「部屋で旅行が楽しめるなんて、素晴らしいですね。でも、これだけのしかけを作るのは、お金がかかったんじゃないですか?」
HM「いいえ、それほど高くないですよ。それに、この星では、一家に一部屋、このような部屋があるのがあたりまえなんです。バーチャル旅行の部屋と呼んでいます」
ジュン「バーチャル旅行か」
HM「ほら、もう島に着きますよ」
映像は島に到着する。しばらくすると、雑貨屋があり、中に若い女性の店員(A)が立っているのが見える。
HM「あ、Aちゃんだわ。親戚の子です。もうすぐ20歳になるんですけど、おばあちゃんといっしょにこの島で暮らしているんですよ」
ジュン「すぐそこに立っているように見えても、会話ができないのが残念ですね」
母「そうよね。彼女も同じように、バーチャル旅行の部屋に入れば、こちらの様子を一方的に見られるということなんですよね」
HM「いいえ、島の人たちは、バーチャル旅行をすることができません。島には受信システムがないんです」
母「それは残念ね」

○居間

地球家族6人とHM。
ジュン「バーチャル旅行、楽しかったですよ」
ミサ「本当に楽しかったわ。安上がりに、気軽に旅行ができる感じでいいですね」
HM「そう、本当の旅行と違って、チケットの手配をする必要もないし」
タク「リコは、どこが一番良かった?」
リコ「最後に行った、島が良かった」
タク「そうだね、僕も、島の景色が最高に良かったな」
HM「島は、ここから近いんですよ。バーチャル旅行じゃなくて、本当の旅行も気軽に楽しめますよ。今日、今から行っていらっしゃったらどうですか?」
父「子どもたちだけで、行って来たらどうだ?」

○島に向かう船

地球家族の子ども4人が乗っている。同じ船にもう一人、若い女性(B)が乗っている。
ミサ「こんにちは」
B「こんにちは。ご家族で旅行ですか。いいですね」
ミサ「一人旅ですか?」
B「ええ、この島に来るのは初めてなんですけど、バーチャル旅行では何度も来ていて、大のお気に入りなんです。できればこの島に住みたいと思って、今日は思い切って、家を探しに来たんです」
ジュン「へえ、この島に引っ越すんですか」
ミサ「いいですね。でも、この島ではバーチャル旅行ができないそうですよ。受信システムがないからって」
B「え、そうなんですか? 知らなかったわ。がっかりだわ」
B、非常に落ち込んだ様子。
ジュン「大丈夫ですか?」
B「せっかくこの島に住もうと思って、心に決めて来たのに。私の最大の趣味を手放すなんてできないわ・・・」
タク「最大の趣味?」
B「ええ、私、小さい頃からバーチャル旅行が大好きなんです」
ミサ「でも、なんでこの島は受信システムを導入できないんだろう」
ジュン「そうだね。島に着いたら、役場にでも行って聞いてみようか」

○島の役場

地球家族4人とBが役場で立っている。役場の人が説明している。
役場の人1「もちろん、バーチャル旅行のシステムの導入は、検討していますよ。ただ、島の人口が今のままでは、採算がとれなくて、導入できないんですよ。あのシステムは安くはないですから、それなりに税金をつぎこまないといけなくて・・・」
ジュン「島に住む人数の問題か・・・。あと何人いればいいんですか?」
役場の人1「あと一人でいいんですけど」
ミサ「え、あとたったの一人いればいいだけなんですか? じゃあ・・・」
B「私、この島に越して来たいと考えているんです。そうしたら、一人増えますよね?」
役場の人2「ちょっと待って。だめだよ。さっきちょうど、この島を出て行きたいと言ってきた女性がいたから、それでももう一人足りないよ」
役場の人1「本当に? 出て行きたい女性って?」
役場の人2「向かいの雑貨屋の娘さんが、島を離れるらしいよ」
役場の人1「そうか。それでは、この村にバーチャル旅行を取り入れるには、島の住民があと2人必要ですね」
ジュン「惜しいなあ」

○役場の前の道

地球家族とB。
B「みなさん、いろいろありがとうございました。とりあえず、あきらめます。せっかくだから、少し観光して帰ります。それじゃ・・・」
B、去って行く。
ジュン「あと一人くらい、なんとかならないのかな」
目の前に雑貨屋がある。中に、店員の若い女性(A)が立っている。
ミサ「雑貨屋の娘さんって言ってたわよね。あの人かな。あ!」
タク「何、どうしたの?」
ミサ「さっき映像で見た、HMさんの親戚だとかいう娘さんだ」

○雑貨屋

地球家族が入っていく。ジュンが店員の女性(A)に話しかける。
A「いらっしゃいませ」
ジュン「すみません、Aさんですね」
A「え?」
ジュン「僕たち、今日HMさんのところに泊まっているんです」
A「あら」
ジュン「Aさんはこの島から出て行かれるって聞いたんですけど・・・」
A「あ、私、ジャーナリストになりたいんです。いろいろな地域を旅行して回りたいんですけど、それだけじゃ足りなくて、バーチャル旅行で経験を積む必要もあると思うんです。でも、この島ではバーチャル旅行ができません。それで、本土に移ることに決めました」
ジュン「そうだったんですか・・・」
そばで、いつの間にか、Aの祖母が聞いている。
Aの祖母「バーチャル旅行なんて必要ないよ。あんなの、本当の旅行じゃないんだから」
A「わかっているよ。でも、あちこち本当に旅していたら、お金も時間も足りないわ。バーチャル旅行をしたことがないジャーナリストなんていないもの、無理よ。今や、バーチャル旅行ができないのは、この島だけなのよ」
Aの祖母「心配しなくていいから、この島にいなさい」
A「そりゃ、私がいなくなって、おばあちゃんが寂しくなるのはわかるし、私も寂しい。でも・・・」
Aの祖母、目を閉じる。
Aの祖母「ほら、こうやって、目を閉じると、見えてくるよ」
タク「見えてくる?」
Aの祖母「バーチャル旅行の機械なんかなくても、行きたいと思う場所の風景が見えるし、音も聞こえる」
A「またその話? 気のせいよ。機械がなければ何も見えないわ」
Aの祖母「そんなことはない。きっと神様が与えてくれた能力だよ。島の住民だけバーチャル旅行ができないのを不公平に思ったんだろうね。でも、これは便利だよ。バーチャル旅行みたいに部屋にこもらなくても、いつでもどこでも、風景が見えてくるんだから」
A、しばらく目を閉じる。
A「無理だわ。何度も試したけど、何も見えない」
Aの祖母「あなたは、今19歳だね。20歳になれば見えるよ。見えるようになるには、島で暮らして20年はかかるんだ」
A「・・・」
A、その場を去り、すぐにバッグを持って戻ってくる。
A「その話、信じたいんだけど、私にはもう時間がないの。ジャーナリストになるための養成学校に行きたいと思っていて、明日から始まるのよ。明日の朝、船で本土に行くから。ごめんね、おばあちゃん・・・」
ジュン「あ、待ってください。島でバーチャル旅行ができるようになれば、島に残れるんですよね」
A「島でバーチャル旅行はできないんですよ」
ジュン「島の住民があと一人増えれば、できるようになるんです」
A「あと一人?」
A、少し考え込む。
A「あと一人と言っても簡単じゃないわ。島の人口は、何年も変わってないから」
ジュン「この島に引っ越したいと思っている人が、いるんですよ! ね、みんな」
地球家族みんな、うなずく。
ジュン「あの女の人、まだこの島にいると思うから、探しに行こう」

○港の前の道

地球家族が集まる。
タク「どこにもいないな。そっちもいなかった?」
ジュン「いなかった。観光するって言ってたから、まだ島にいると思うんだけど」
ミサ「ここにいれば来るはずよね」
タク「あ、でも、もうすぐ今日最後の船が出るよ」
ミサ「私たち乗らなきゃ、帰れなくなるわ」
ジュン「残念だけど、あきらめて帰ろう」

○翌朝、ホストハウスの居間

地球家族5人とHM。ジュンがいない。
父「今日はどこを見物しようか。あれ、ジュンは?」
ミサ「もうバーチャル旅行に出かけたみたい」
父「え、もう? というか、今日はバーチャルじゃなくて本当の旅行をしようと思ってたんだけど・・・」
ミサ「あ、もしかして・・・」

○小部屋

ジュンが中にいる。ミサ、タク、リコが入る。島の雑貨屋の映像。
ミサ「やっぱり、島を見てたんだ。Aさんが気になるわね」
Aがバッグを持って祖母にあいさつをしている。
A「おばあちゃん、お世話になりました。生まれたときから、ずっと育ててくれてありがとう」
Aの祖母「気をつけていくんだよ」
Aと祖母、道に出る。そのとき、雑貨屋に女性客が入る。
Aの祖母「いらっしゃいませ。じゃあ、あなたはもう行きなさい。船に間に合わなくなるよ」
客の顔が見える。Bである。
ジュン「Bさん!」
ミサ「まだ島にいたのね! Aさん、昨日言ってた人、その人よ!」
ジュンたち、口々にAに呼びかけるが、伝わらない。
ジュン「だめだ、こっちの声は伝わらないよ。そうだ、電話しよう! HMさん、島のおばあさんの電話番号はわかりますか?」
ジュン、ミサ、タク、急いで小部屋を出る。

○居間

ジュンが電話をかけている。ミサ、タクがそばにいる。呼び出し音が続く。
ジュン「だめだ、気づいてくれないよ」

○小部屋

リコが一人、映像を見ている。
リコが突然、叫ぶ。
リコ「おばあちゃん! おばあちゃん!」
Aの祖母、リコの声に気づく。
Aの祖母「あれ、この顔とこの声は、昨日の・・・」
リコ「おばあちゃん、見える? 聞こえる? Aさんを引き止めて!」
Aの祖母「聞こえるよ。ちょっと待って」
Aの祖母、Aの歩く後姿に声をかける。
Aの祖母「A、ちょっと待ちなさい!」
リコ「おばあちゃん! 今いるそのお客さん!」
ジュン、ミサ、タクが小部屋に戻ってきて驚く。
ジュン「リコ、どうした?」
リコ「おばあちゃんが気づいた」
ジュン「え、本当?」
ジュンたち、口々におばあちゃんに向かって叫ぶ。

○しばらくして、小部屋

映像は、島の役場。役場の人1、A、Aの祖母、Bがいる。
ジュン「(ミサに)これで、めでたしめでたしだな」
A「じゃ、私、この島に残るわね」
B「私はこの島への引越しを決めました」
役場の人1「それでは、人口が一人増えましたので、島にバーチャル旅行を導入することが決まりました」
みんなで拍手する。ジュンたちも映像を見ながら拍手する。
A「でも、おばあちゃんは、どうして地球の人たちと、さっき会話ができたの?」
Aの祖母「まだ信じないのかい。この島にはバーチャル旅行がないかわりに、20年暮らしていればどこでも見えるようになるって」
A「本当だったのね! それならば、私、バーチャル旅行いらないわ。もうすぐ20年になるもん。(役場の人に)島には導入しなくていいです」
B「ちょっと、何てことを。私はどうなるの? 引越しの契約、今済ませちゃったばかりなんですよ」
ジュン、ミサ、タク、リコ、顔を見合わせる。
ジュン「なんか、まずいことになったな」
ミサ「私たち、とんでもないおせっかいをしちゃったかしら?」
タク「逃げようか・・・」
ジュンたち、そろそろと席を立つ。
ジュン「バーチャル旅行って、本当に便利だね」

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