ホラ吹き男のホラーナイト コメディ

吸血鬼退治のふりをして日銭を稼ぐインチキ霊能力者、ジョー。ある日そんな彼が仕事場に選んだ廃屋には本物の吸血鬼が潜んでいた。パニックに陥ったジョーの前にさらに本物の吸血鬼ハンターが現れて…。 社会からはぐれてしまった人々が繰り広げるドタバタコメディ。 ーようこそ、恐怖と詭弁の館へ
出田英人 80 1 0 10/27
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

ホラ吹きのホラーナイト

ジョー=マクレーン 男、主人公(30)
カラット=パスチャー 女(17)
ランス=ドラゴニテ 男(338)
グラム=フォワード 女(31)
...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

ホラ吹きのホラーナイト

ジョー=マクレーン 男、主人公(30)
カラット=パスチャー 女(17)
ランス=ドラゴニテ 男(338)
グラム=フォワード 女(31)
ポンド=エバーロング 女(28)
警官男 (35)





プロローグ

とある廃屋:広間

鐘の音とともに画面が明転。ジョーとカラットの姿が映し出される。彼らは何かのショーを始めようとしているようで、いそいそと支度をするカラットを尻目に、ジョーががもったいぶった様子でカメラに向かって語りかける。


ジョー 「いやはやどうも、こんな真夜中にご足労いただいきありがとうございます。なにせ奴ら吸血鬼は昼間はすっかり活動を止めてしまっておびき出すことも難しいのでね。あいつらを仕留めるなら動き始める真夜中が一番なのです。おっと、紹介が遅れました。私はジョー=マクレーン。吸血鬼ハンターです。そして横にいるのがカラット=パスチャー。私の助手です。」

カラット   「どうもよろしく。先輩が吸血鬼と戦っている間、みなさまの安全は私が守りますよ。」

ジョー    「しかしあなたも物好きですな。わざわざ吸血鬼退治を見物なさりたいだなんて。まあ良いでしょう。ですが、はあなたのような普通の人間は吸血鬼の姿を見ることすらかないません。奴らに対抗できるのは我ら吸血鬼ハンターだけなのですからね。カラット、結界の準備を。」

カラット    「わかりました。あ、私は助手ですが吸血鬼の姿が見えるわけではありません。私は普通の人間ですからね。」

カラット、何やらろうそくなどを並べたり杭に呪いをかけたりと準備を始める


ジョー 「何?お前は普通の人間ではないのかって?ほほう、あなたはなかなか鋭いお方のようだ。そう、我ら吸血鬼ハンターは特殊な生い立ちを持った者たち。大きく二つの種類に分けられます。一つはダンピール。言ってしまえば吸血鬼と人間のハーフですな。吸血鬼ハンターとしては優秀と言われていますが、奴らには忌まわしい吸血鬼の血が流れているのも事実。いつ我ら人間に牙を剥くか知れたものではありません。いずれ彼らも抹殺されなければならないでしょう。お前は違うのかって?ノンノン私はクルースニク。生まれた時から吸血鬼と戦う宿命を与えられた聖なる存在なのです。」

カラット   「先輩。準備ができました。」

ジョー   「うむ、それでは吸血鬼退治と参りましょうか。」

ジョー、懐から小瓶に入った水を取り出す。

ジョー   「我らクルースニクは吸血鬼と戦うためにまずこの聖水を飲んで力を得ます。」

ジョー、小瓶の水を飲み干す

ジョー    「ああ。力がみなぎってくる。そしてこれ。この笛の音色で奴らをおびき出し、この杭でとどめを刺すという寸法です。では今から吸血鬼を呼び出しますよ。危険ですからくれぐれも近寄ってはいけませんよ。」


ジョー、笛を奏でたあと見えない吸血鬼と対峙。杭を突き刺すジェスチャーをしたのち


ジョー 「さあ、今吸血鬼の心臓を貫きました。みなさま、これで安心です。もう奴らがここに現れることはないでしょう。それでは今日の代金はこちらに…。」


どこからともなく笑い声。グラムが登場する


グラム 「ほほほ、なにそれ?今ので吸血鬼を倒したっていうの?ただ変な踊りを踊っていただけじゃない。」

ジョー 「なにを失礼な。最初に言ったでしょう。普通の人間の目には吸血鬼は捉えられないと。」

グラム 「それで他の者どもは騙せても、私の目はごまかせませんことよ。」

ジョー 「あなたは一体何なんだ。邪魔をするなら出て行ってもらおうか。」

グラム 「私はグラム=フォワード、警視総監の娘よ!聞いたところによるとあなた、至るところでこうやって吸血鬼退治ごっこをして荒稼ぎしているそうね。」

ジョー 「ごっことは失礼な、吸血鬼は実在する。」

グラム 「それを疑っているわけじゃないわ。ただ、あなたが本物の吸血鬼ハンターかどうか疑っているだけ。」

ジョー 「何だと。」

グラム 「あなた、さっき吸血鬼は普通の人間の目には見えないと言ったわよね。」

ジョー 「ああ、いかにもそうだが。」

グラム  「ところがね、私の家のメイドがね、見たらしいのよ。本物の吸血鬼を。それは恐ろしくも美しい姿だと聞いたわ。彼女はただのメイド、あんたみたいな吸血鬼ハンターじゃないはずよ。」

ジョー 「は、そんな与太話。そのメイドがでっち上げただけじゃあないですか。」

グラム    「どうかしら、吸血鬼の存在がこれほど世に広まっているのにあなたたち吸血鬼ハンターにしか見えないなんておかしいと思わない?」

ジョー   「それは我々が奴らの危険性を知らしめるために努力をした結果であって…。」

グラム 「口ではなんとでも言えるわ、信じて欲しかったら私の目の前で吸血鬼を倒してごらんなさい。そうすればあなたのことを信じてあげる。」

ジョー 「お断りです。私にそんなことをする理由はありません。」

グラム 「それができないなら、パパに言ってあなたを詐欺罪で指名手配させるわ!」

ジョー   「そんな無茶な。」

グラム   「もちろん、もしあなたが私の目の前で吸血鬼を倒すことができたら、報酬はたんまりと支払ってあげるわ。」

ジョー    「何?」

グラム 「いい?あなたが選べる道は二つに一つ。このままおとなしくお縄を頂戴するか、それとも見事私の目の前で吸血鬼を退治して報酬を手に入れるかよ。」


雷鳴の中、グラムの高らかな笑い声がいつまでも響いていき画面は暗転。



第一場

ジョーのアジト

ジョーの似顔絵が描かれた指名手配書がアップで映る。それを眺めながらため息をつくジョー。


ジョー 「うわぁ、あの女依頼断った途端にこれだよ…。本当に警察が動き出すとはなぁ。」

カラット    「ジョー=マクレーン。吸血鬼ハンターを騙り民衆から多額の金をだまし取った詐欺師…。すごくよくかけてますね。。」

ジョー 「感心してんじゃねぇよカラット。町中にこんなものばらまかれちまったら商売上がったりだ。あの女、何が吸血鬼を私の目の前で倒してみなさい。だよ。ばっかじゃねぇの!そんなのいるわけないだろ。」

カラット     「世界のどこかにはいるかもしれませんよ。私はちょっぴり信じてます。」

ジョー     「いいや、いないね。」

カラット    「夢がないですね、先輩。夢を持っていない男は寿命が縮みますよ。新聞に書いてありました。」

ジョー     「俺たちみたいなはみ出し者が夢なんて追っかけたらバカを見るんだよ。それに俺は嘘つきだから人の言うことは信じない。お前もそんな大衆紙に書いてあること鵜呑みにしていたらろくな大人にならないぞ。」

カラット     「先輩と仕事してる時点でろくな大人になれないんで心配ありません。」

ジョー      「それも一理あるな。」

カラット      「それより先輩。どうするんですか、これ?」

カラット、ジョーに指名手配書を突きつける

ジョー    「だあ〜。くそぉ。言ってしまえば詐欺だけど。詐欺だけどさぁ。みんなは吸血鬼が退治されたつもりになってハッピーだし、俺もお金がもらえてみんな幸せじゃないか。」

カラット    「そうですね。今の所クレームも来てませんでしたしね。」

ジョー   「うーん。どうするか…。」

カラット   「別の街に逃げます?」

ジョー   「負けた気がして嫌だ。」

カラット   「じゃあ謝って許してもらいます?」

ジョー   「論外。」

カラット   「だったらどうするんですか。」

ジョー   「う〜ん。…よし、決めだ。お前あのグラムなんとかっていう女を呼び出せ。」

カラット   「やっぱり謝って許してもらうんですか。」

ジョー   「ばか!そんなわけねぇだろ。殺すんだよ、あいつの前で吸血鬼を。」

カラット   「でもいるわけないんでしょ。」

ジョー 「そこでお前だ。」

カラット   「私?」

ジョー 「お前に吸血鬼になってもらう。」

カラット   「私、先輩に殺されるんですか?」

ジョー 「そんなわけないだろ。やだよ。詐欺罪のうえに殺人罪まで背負うの。」

カラット   「じゃあ、どうやって吸血鬼をやっつけるんですか。」

ジョー   「あの女の前で一芝居うつんだよ。そのためにお前に吸血鬼の演技をしてもらう。」

ジョー、仕事道具の杭を弄びながら不敵に笑う。杭はばね仕掛けになっていて突き刺すと先端が中に収納されるようになっている。

カラット    「吸血鬼の演技をするんですか。なんかワクワクしますね。」

ジョー    「はしゃぐんじゃありません。あくまでビジネスだから最低限やってくれればいいの。」

カラット   「いいえ!やるからには半端はしません。私、吸血鬼の情報調べてきますね!」


カラット、部屋から飛び出していく。


ジョー 「お〜い!どこにいくんだ?ったく。あいつやけに張り切ってるな。まあ、いいや。俺も俺で準備をさせてもらうか。」


ジョーが立ち去った後タイトルコール



ランスの屋敷:広間

カラット   「先輩!お待たせしました!」


明転。呆れた顔のジョーとガチャピンみたいな格好のカラットが立っている


ジョー 「吸血鬼の格好で来いって言ったよね。どうしてそうなったの。」

カラット   「やだなぁ先輩、これが最新の吸血鬼の姿です。ちゃんと新聞でチェックしてきたんです」

ジョー 「それ半魚人だろ。」

カラット   「いいえ、チュパカブラです。」

ジョー 「チュパカブラ。…なにそれ。」

カラット   「遅れてるなぁ先輩。今話題の吸血鬼ですよ。新聞に書いてありました。牛とかの血を吸うやつです。」

ジョー 「いや、吸血鬼って言ったら普通人間の血を吸うやつじゃん。」

カラット   「人間の血もいけます!」

ジョー いや、そんな元気よく言われても。もっとこう…人間に直接危害を加えて欲しいんだよ」

カラット   「じゃあ、人間の血好きなバージョンでいきます。」

ジョー   「そんなのあるの。」

カラット   「はい!」

ジョー   「っていうかさ、だいたい吸血鬼の格好してきてって言ってその、チュパカブラとやらの格好してくるとかありえねぇだろ。」

カラット   「何ですか!さっきからくどくどと、じゃあどんな吸血鬼なら納得するんですか。」

ジョー   「最新のじゃなくてもっと古風なやつだよ。」

カラット   「古風なやつって?」

ジョー 「心臓に杭を打ったり銀の銃弾で倒したりするやつだよ。」

カラット 「チュパカブラだって心臓に杭が刺さったら死にますよ。」

ジョー 「そうじゃなくてぇ。」

カラット   「先輩、細かいことを気にしても仕方ないですよ。それに依頼人だって本物の吸血鬼を見たことはないわけじゃないですか。これが吸血鬼だって言い張ったらもう吸血鬼ですよ!」

ジョー   「言ってることはもっともだけどお前に言われると腹がたつ。」

カラット   「先輩、もう待ち合わせ時間近いんじゃないですか。」

ジョー   「わぁってるよ!とにかく俺が合図するまで隠れてろ。」

カラット  「はい。」

ジョー   「いいか。笛を吹いたら出てくるんだぞ。」

カラット   「はい!」


カラット、ドアを閉めて隠れる。


ジョー 「はあ、心配だなぁ。」


別のドアが開く音、グラム登場


ジョー 「ようこそおいでくださいました。」

グラム 「この私を随分待たせてくれたものね。てっきり逃げ出したのかと思っていたわ。」

ジョー 「ご冗談を。こいつを用意するのに手間取ってしまっただけですよ。」

ジョー、お守りのようなものを取り出しグラムに渡す。


グラム 「なにそれ」

ジョー 「我々クルースニクに伝わる秘密のお守りですよ」

グラム 「くるくるぱあ?なにそれ?」

ジョー 「クルースニクです。聞いてなかったんですか奥さん。吸血鬼を退治するために生まれた聖なる存在。」

グラム   「へえー。」

ジョー   「ともかく。このお守りさえあれば、あなたのような普通の人にも吸血鬼が見えるというわけなんです。」

グラム   「私のメイドはそんなもの持っていなかったと思うんだけど。」

ジョー   「ひょっとすると、そのメイドさんはサバタリアンではないでしょうか。」

グラム   「サバタ…何よそれ?」

ジョー   「土曜日生まれの人間のことです。私どもの間では、土曜日生まれの人間は邪なるものにも耐性がつきやすいとされています。人によっては吸血鬼の姿を視認できるものもいるのかもしれません。」

グラム 「へえ、私の家ののメイドはそのサバなんとかだからたまたま吸血鬼が見えたっていうのね。」

ジョー 「私の経験にもないことなので仮定でしかありませんが。では、前置きはこれくらいにして吸血鬼を倒す準備と参りましょう。我々クルースニクは戦う前にこの聖水を飲むことで奴らと戦うちからを手に入れるのです。」

グラム 「聖水を。」

ジョー   「うえっ。」

ジョー、水を吐き出しそうになるがなんとかこらえて飲み干す。

ジョー   「なんだこれ…」

グラム   「ちょっと大丈夫?」

ジョー   「ご心配なく。今日のために少し強めの聖水を用意してきただけですから。今回の吸血鬼は一筋縄では行きそうにありませんからね。」

グラム    「あらそう。それなら良いけど。」

ジョー    「そしてこの笛、これを奏でることで吸血鬼をおびき出します。この音色に惹かれて奴がやってきます。奥さん、お気をつけください。」


ジョー、笛を吹くが誰も現れる気配がない。


2人    「…。」


ジョー、もう一度笛を吹くが何も起こらない

2人    「…。」

ジョーが再度笛を吹こうとしたそのとき

グラム 「ちょっと、吸血鬼が出てくるんじゃないの?」

ジョー 「ふ、ふははは!そこに隠れているのはわかっているぞ吸血鬼!姿を現せ!」


ジョー、ドアを開けると眠ってるような様子のカラットが転がりでる。


グラム   「な、何?その緑色の物体は?」

ジョー   「これですか。これが吸血鬼」

グラム   「…。」(怪訝な顔)

ジョー   「…の幼虫です!幼虫。」

グラム   「幼虫。」

ジョー   「はい、そうです。吸血鬼に噛まれた人間は吸血鬼になる前に一度この幼虫の姿になってから立派な吸血鬼に羽化していくのです。ですからこの幼虫のうちに倒してしまわないと大変なことに。さあ、止めだ!」


ジョー、カラットに杭を刺そうとする。


グラム   「待って!」

ジョー   「え?」

グラム   「私は吸血鬼を退治している姿が見たいのよ。幼虫に止めをさすところを見たってつまらないわ。」

ジョー   「と、申されましても。」

グラム   「羽化させなさい。」

ジョー   「え。」

グラム   「その幼虫から羽化した吸血鬼を倒しなさい。」

ジョー   「いやぁ、そのぉ、その羽化するには100年くらいかかったりとか」

グラム   「指名手配、されっぱなしで良いの?」

ジョー   「ふーむ。そういえば幼虫をすぐに羽化させる方法もあったなぁ。大変だからやりたくないけど。」

グラム   「さっさとやりなさい。」

ジョー   「その儀式をやるんで一度部屋から出ていただけますか?」

グラム   「なんでよ。」

ジョー   「そのお、…すさまじく臭いんです。なんかニンニクとかの臭いとかいたしますので。」

グラム   「そんなに臭いの。」

ジョー   「はい、それはもう。レディには嗅がせられません。それとやっぱり吸血鬼を羽化させる儀式なんて世間に知れ渡っちゃうと危険ですから。はい。ほら。さあ、出てって。」


ジョー、グラムを無理やり部屋の外に追い出す。


ジョー   「ふう。おいカラット。いつまで寝転がってるんだよ。…お前幼虫ってことになったぞ。どうやって羽化しような。」

カラット  「…。」

ジョー   「はあ。とにかくそれ脱げ。ほら…おい。」


ジョー、カラットが死んでることに気づく


ジョー 「おい、おい!…死んでる?」


ジョー、カラットの首筋の噛み跡に気づく。


ジョー 「この噛み跡、まさか…?いや、本当に?そんな訳、ハハハ。」


ジョー、扉の奥にいる何者かの視線に気づく


ジョー 「いやああああああ!」


ジョー、部屋から逃げさる。取り残されたカラットの死体が映される。
不気味な音楽とともにカラットがぎこちなく動き出し、どこかに去っていく。

夜の街中:ランスの屋敷付近

吸血鬼ハンターの少女、ポンド=エバーロングの姿が現れる。少し離れた場所からランスの屋敷を偵察しているようだ。と、軽快な音楽とともに彼女の妄想混じりのモノローグが始まる。

ポンド   (私の名前はポンド=エバーロング。裏社会じゃ名の知れたさすらいの美人吸血鬼ハンター。この相棒と美貌で何匹もの獲物を射止めてきたわ。吸血鬼はもちろん、男もね…。今夜のターゲットはこの屋敷に潜む吸血鬼、ランス=ドラゴニテ)

警官    「お嬢ちゃん。お嬢ちゃん。何してるの、こんな夜中に。」

ポンド、現実に引き戻される

ポンド    「今から仕事なのよ。」

警官      「何言ってるのこんな夜中に。お嬢ちゃんいくつ」

ポンド    「28よ。」

警官      「ハハハ、ませてるねぇ。大人をからかっちゃいけないよ?危ないから早くお家に帰りなさい。」

ポンド    「あんたねぇ。」

警官      「お家はどこかな。お母さんに迎えに来てもらったほうが良いかな。」

ポンド    「だから28歳だって言ってんだろ。このナイスバディーを見て分かんないの?」


警官、しげしげとポンドを眺めてやがて何かに納得して。


警官      「うん、やっぱり子供だよね、君。一緒に警察署に行こうか。」

ポンド 「てめえ喧嘩売ってんのか!違う!私は28歳なの!やめろぉ
ー!」


警官、ポンドを連れて行こうとするが突然何かに怯えた様子で物陰に隠れる。


警官   「君、今日って何日だっけ?」

ポンド 「26日だけど。」

警官   「ええ!26日!まずい、うっかりしていた。お、おじさんは急用を思い出したから一旦帰るけど、お嬢ちゃんも早くお家に帰るんだよ!」


警官、慌てて去っていく。


ポンド   「なんだあいつ。まあ、いっか。それじゃあ気を取り直して吸血鬼退治と行こうかしらね!」


ポンド、ランスの屋敷に向かう。



ランスの屋敷:寝室



ジョー 「なんだよさっきのやつ。本物?え、本物?いるわけないよねそんなの。は!吸血鬼とかいるわけないし!」


何かの息遣いがかすかに聞こえる


ジョー    「か、カラットはそのなんか犬とかに殺されてしまったんだ。不幸なことに。」


ジョーが部屋から立ち去ろうとしたところにランス登場


ランス    「ようこそ我が屋敷に」

ジョー    「う、ウワァ。出た!」

ランス    「もう逃がさないぞ。ふふふ。」

ジョー  「な、なんなんだよおまえ!家主?あぁ、家主の方ですね!すいません。間違えて入っちゃったんで帰ります。」

ランス    「我は吸血鬼、ランス=ドラゴニテだ。」

ジョー    「吸血鬼?そ、そんなのいる訳…」

ランス    「ふふふ」

笑顔を見せるランス、口元からはいかにも吸血鬼といった牙がのぞいている。

ジョー    「牙?そそ、それじゃあお前がカラットを…」

ランス    「あの緑色の女か。美味かったぞ、奴の血は」

ジョー    「アーーーーーーー!違うんです!俺は吸血鬼を倒すクルースニクとか言ってたけど!あれちょっと格好つけちゃっただけなんです。クルースニクじゃなくてクルクルぱあなんです。なんで帰ります!平和的に!」

ランス    「言ったはずだ。今夜は逃がさないと。」

ジョー  「い、いやほら…僕今日お昼ごはんペペロンチーノでしたし。血吸っても美味しくないんじゃないかなって。だからうん、帰っていいですか。」

ランス    「お昼ペペロンチーノだったのか?」

ジョー    「はい、明日になったらニンニク抜けると思うんで明日また来ます!」

ランス    「パスタが好きなのか?」

ジョー    「はい、まぁ。」

ランス    「パスタかぁ。男にしては珍しいな。」

ジョー    「そうですかね。最近ハマり出して。」

ランス  「わかった!あのドレスの女と、あの女と一緒にパスタを食べたのだな!そうか、あの女の影響でパスタに…。」

ジョー    「あの、もう帰っても良いですか。」

ランス    「許さん!」

ジョー    「うわあああ!ごめんなさい!」


ジョー、ランスにニンニクを投げつけ逃げ去る。ランス、一瞬ひるむがししばらくニンニクを眺める


ランス 「これが…彼の懐に。」


ランスが大事そうにニンニクを回収。するとグラムが部屋に入ってくる。


グラム 「全くあの男どこに行ったのかしら。まさか逃げたんじゃないでしょうね。」

ランス   「お前は、ジョーと一緒にここにやってきた女! 」

グラム   「きゃ、化け物!」

ランス   「貴様がジョーとパスタを!おのれぇ!」

グラム   「パスタ?なんのこと。」

ランス   「とぼけるか。それもよかろう。我が野望のために貴様の血も吸い尽くしてくれる。あの女のようにな!」

グラム   「きゃー。」


銃声。ポンドが現れる


ランス 「何者だ。」

ポンド 「吸血鬼なんざに名乗る名前はねぇ!」


バトルが起きると思いきや、何もないところで転ぶポンド。立ち上がろうとするがドアノブに頭を打ち付けて悶絶する。


ランス 「ふん、邪魔が入ったか。」

ランス去る。


ポンド 「ふう。危ないところだったな。」

グラム 「あら、お嬢ちゃんも危ないところだったわね。」

ポンド 「お嬢ちゃんじゃねぇ。私はポンド=エバーロング。吸血鬼ハンター28歳よ。」

グラム   「あらそうなの。ごめんなさい。でも吸血鬼ハンターってなんでも退治してくれるのね。」

ポンド   「え? 私は吸血鬼専門だけど。」

グラム 「だってさっきのはフランケンシュタインでしょ?」

ポンド 「いや、奴は吸血鬼だ。」

グラム 「いいえ、フランケンシュタインよ!」

ポンド 「吸血鬼だ!」

グラム 「フランケンシュタイン!」

ポンド   「お前の血を吸おうとしてただろう。フランケンシュタインは血を吸おうとはしない。」

グラム   「やだし、違うし。あんなの吸血鬼じゃないし。」

ポンド   「だがやつはお前の血を求めてた。吸血鬼以外は考えられない。」

グラム   「じゃあ…じゃああれは血に飢えたゴリラよ!」

ポンド   「なんだそれ。」

グラム 「あんなブ男の吸血鬼がいてたまるか!いい?吸血鬼っていうのは闇の貴公子なの、もっとこう影があって耽美な生き物なの!だからあんなブサイクなおっさんじゃなくて血色の悪い美男子と相場が決まっているのよ。」

ポンド 「お前の吸血鬼へのこだわりは何なんだよ。」

グラム 「私、吸血鬼と結婚したいの!」

ポンド 「はあ?」

グラム 「私、人間の男にはもううんざりなの。口では本当の愛を囁きながら頭の中では地位と金のことしか考えていない。だから私は人ならざるものと添い遂げたいの、吸血鬼と禁断の愛を育みたいの。」

ポンド 「お前、吸血鬼なんて何がいいんだよ。昼間はずっと寝てばっかりだし、夜もフラフラ出かけては血吸って帰ってくるだけだぞ。あんなのただのニートじゃん。」

グラム 「ニートだろうと構わない!そこにラブとロマンスがあるならば。」

ポンド   「でも見ただろ。本物の吸血鬼はああいうふうなおっさんだぜ。」

グラム   「いいや、きっとあれは吸血鬼じゃないわ。たとえ吸血鬼だったとしても下っ端よ。」

ポンド 「お前のその確信はどこから出てくるんだ。」

グラム   「そうよ、さっきのは羽化したばっかりの不完全な吸血鬼に違いないわ。思い出してみればニンニクくさかったもの!」

ポンド 「羽化ってなんだ。」

グラム 「だとすればあれを作り出したイケメンの吸血鬼がいるはずよ!探し出さなきゃ。」

ポンド    「待て待て、吸血鬼見つけてどうするつもりなんだ。殺されるか、最悪お前も吸血鬼にされるぞ。」

グラム    「それでも良い、イケメンの貴公子と結ばれるためなら吸血鬼になっても構わない!」

突然ポンドの顔色が変わる


ポンド    「あっそ。好きにすれば。」


ポンド去る。


グラム 「急にどうしたのかしら、あの子?あ!あの子も吸血鬼ハンターだって言っていたわね。殺されちゃう前にイケメンの吸血鬼を見つけ出さないと。」


グラム、駆け去る。



ランスの屋敷:展示室


ジョー 「なんとか巻いたか?でも、ここどこだ?え〜っと、出口はあっちの方だったかな。」


ジョーが扉を開けると人形が倒れてくる


ジョー 「うぎゃーーーーー! なんだ人形か。なにこれ?俺の顔貼ってあるんだけど。の、呪いの類?え、俺なんかしたかな。」


ランス登場


ランス 「見たな。」

ジョー 「うわー!出たー!」

ランス 「見たな。」

ジョー 「み、見てない見てない。」

ランス 「見たよね。」

ジョー 「見て…ない…です。」

ランス 「好きです!」

ジョー ?

ランス 「好きです。」

ジョー 「す、隙だらけです?そんなもんねぇーどっからでもかかってこい!おらあ!」

ランス 「いえ、我は、あなたのことが好きなのです!」

ジョー ??

ランス   「と、突然こんなこと言われても困るよね。でも、我はあなたがこの屋敷にやってくる前からずっと好きだったのです。」

ジョー   ???

ランス 「我はずっと見ていた。あなたが吸血鬼退治のふりをしているのを。」

ジョー   「なんだと!?」

ランス   「最初は偶然だった。でも、寝ても覚めてもあの笛の音色が耳から離れなくて。気づいたら我はあなたのことをずっと見つめていた。」

ジョー   「はあ。」

ランス   「そして我は気づいた。笛だけではなく、いつの間にかあなたに夢中になっていたことに。」

ジョー 「本気ですか?」

ランス 「本気です。」

ジョー 「いやぁ、ちょっとその愛は受け止めきれないかな」

ランス   「どうしてダメなのだ。我が吸血鬼だからか?そうなのか、いや、すまぬ。突然吸血鬼から告白されたらびっくりするよね…。」

ジョー 「いや、種族以前に超えなきゃいけない壁あるよね。」

ランス   「そうか、君にはもう相手がいるんだな!あのドレスの女か?あの女だな!?」

ジョー   「そうじゃなくて!お前おっさんじゃん。俺たち男同士じゃん。」

ランス   「は!」

ジョー   「“は!”じゃないよ。なんで今気付いたみたいな顔してるの?」

ランス   「しかし、されども!吸血鬼と恋愛すること考えたら男同士とかそういうのたいした問題ではないのではないだろうか!」

ジョー 「おう?おう…。」

ランス   「本当はずっと我慢しようと思ってた。だが、あなたが我の屋敷に来るとなると、我慢仕切れなくなってしまったのだ。」

ジョー   「へー、そうなんだ。」


時間が止まり、ジョーの脳内シーン


ジョー   「いやまてよ、こいつが俺のことを好きっていうならうまく誘導すれば俺の思い通りに動かせるかもしれないな。あのお嬢様は吸血鬼を直接倒す姿をご所望だ…。ということは、こいつをうまく言いくるめてやつの目の前で倒してしまえば、賞金は俺のものだ。」


ジョーの脳内終了。


ジョー   「なぁるほど!お前の気持ちはよくわかった。が!俺も吸血鬼ハンターの端くれだ。やっぱり敵であるお前と愛し合うのは難しい。」

ランス  「どうすれば心を開いてくれるのだ?」

ジョー  「一つ条件がある。もしこれを達成することができればお前の気持ちを信じてやらないでもない。」

ランス  「その方法って。」

ジョー  「俺の村の伝説でな、エンゲージ手鎖というものがある。」

ランス  「エンゲージ手鎖。」

ジョー  「そうだ。その伝説を再現すれば恋人の前に立ちふさがる壁は取り除かれ、二人は結ばれると言われている。」

ランス  「どんな話なんだ。」

エンゲージ手鎖物語のシーンイメージ映像を流すのもあり

ジョー  「昔々。俺の村には高貴で大層美人なお姫様がいたらしい。村のみんなからも人気があって何不自由ない生活を送っていた。だがしかし彼女には一つだけ悩みがあった。彼女は村の農民ジャックに恋をしてしまったのだ。身分違いの恋に悩む彼女!」

ランス  「身分違い!まるで我のことじゃないか!」

ジョー  「お姫様はジャックとの婚約を許してもらうよう王様に掛け合ったが王様は首を縦に振らなかった。」

ランス  「おお!なんといたわしい。」

ジョー  「悩みのあまりやつれた彼女を見かねた妖精が現れこう言った。"この魔法の手鎖を使いなさい。これをあなたの想い人に巻きつけてもらうのです。そして三日間外さずに過ごしなさい。そうすればこの手鎖が二人を結びつけるでしょう。"お姫様はそれを信じ、ジャックに手鎖をつけてもらい三日三晩過ごした。」

ランス  「それで!」

ジョー  「すると彼女の背中から翼が生えてきた。そして彼女ははジャックとともに天空の世界へ飛び去った。そうして二人は仲良く天空の世界で暮らしたとさ、めでたしめでたし。」

ランス 「なんと素敵な話なんだ。」

ジョー 「その伝説になぞらえて、俺の村では誰か好きな人が出来た時、その人に手鎖をつけてもらう風習がある。」

ランス 「なるほど!」

ジョー 「そしてその手鎖がこちらになります。」

ランス 「でもお高いんでしょ?」

ジョー 「本来ならば三日間レンタル70ポンドのところ30ポンドでレンタルいたします。」

ランス 「安い!」

ジョー 「さらに!こちらの目隠しもおつけしてお値段据え置き30ポンドで貸出しいたします。」

ランス 「おおお!」

ジョー 「さらにさらに!今から一時間以内にお買い上げ頂いたお客様にはこちらエンゲージ手鎖をもう一本おつけします。」

ランス 「買った!」

ジョー 「お買い上げありがとうございます。では早速取り付けさせていただきますね。」


ジョー、ランスに手鎖と目隠しを装着する


ジョー 「じゃあこのまま大人しく待ってるんだぞ。」

ランス 「うん、我待ってる!」


ジョー、こっそりとグラムを探しに行く。一人取り残されるランス


ランス 「なんか、すごいドキドキする。これが恋。」


しばらく目隠し状態でそわそわしているランスの様子が映し出される。


ランス 「あ、なんか背中のあたりかゆい。ちょっと翼生えてきたかも。」


そこに警官が現れる。


警官 「ふう、危ない。近くに廃墟があって良かった。今日は一晩ここでやり過ごさせてもらおう。」


警官、あたりを伺っていると拘束されたランスを発見する。


警官 「君、君!大丈夫か。誰に拘束されたんだ。今助けるぞ!」

ランス 「やめろ!我が眠りを妨げる気か!?」

警官 「びっくりしたぁ。君、急に大きい声出さないでくれないか?」

ランス 「君などではない。我は吸血鬼。高貴なる闇の一族であるぞ。」

警官 「何を言っているんだ。」

ランス 「今我は重大な儀式の最中なのだ。邪魔をすると容赦はせんぞ。」

警官 「かわいそうに、身動きが取れない恐怖で混乱してしまったのだな。すぐに助けてやるぞ。」

ランス 「ええい!触るなというのがわからんのか。」

警官   「落ち着いてからゆっくり話聞くからね。まずは目隠しから外そうか。」

ランス 「ええい!話のわからんやつめ。我が眷属の餌食となるがよい。」


ランスが口笛を吹くとカラットが登場


カラット 「チュッパー!」

警官 「うわー!化け物!」

ランス 「我が眷属よ、その愚かな男を食らってしまえ!」

カラット 「チュッチュパチュ!」

ランス 「眷属よ。さっきからその耳障りな叫び声はなんだ。」

カラット 「チュパ、チュチュパ。チュパカブール。」

ランス 「人の言葉で話せ。」

カラット 「私、決めたんです。立派なチュパカブラになるって。」

ランス 「話が飛躍しすぎてわからん。」

警官 「き、君しゃべれるのか。」

カラット 「はい、チュパカブラを目指して言語を封印する修行をしていたのですが。」

ランス 「どういうことなの?」

警官 「そうか、修行の身なのか。」

カラット 「はい。一人前のチュパカブラになるためにランスさんの元で特訓してるんです。」

ランス 「初耳だぞ。」

警官 「そうか、おじさんそのチュパカブラっていうのは知らなけれど、夢を追いかけるのは良いことだ。」

カラット 「でも、私がチュパカブラになるのを反対している人がいて。」

警官 「親御さんかな。」

カラット 「みたいなもんです。」

警官 「まあ、親ってのは子供のことはいつまでたっても心配なものだからな。」

カラット 「あんまり心配されてる気がしないのですが。」

警官 「いいや、なんだかんだ言って親御さんはいつでも君のことを気にかけているよ。」

カラット 「そんなもんですかね。」

警官 「そんなものさ、僕が警官になるって言った時も両親はすごく心配した。お前が警察になったら人様に迷惑をかけるんじゃないかってね。」

カラット 「なるほど。」

警官   「まあ、親が心配する理由もわからんではなかったのだけどね。僕のことを知っている人たちもみんな反対していたから。」

カラット 「でも、ちゃんとおまわりさんになったんですね。」

警官   「そうさ。たとえそれがどれほど困難に見えても諦めなければきっと夢はかなう。」

カラット 「か、格好良い。私も諦めなければなれますかね?チュパカブラ?」

警官   「ああ、きっとなれるさ。君がチュパカブラになるためには、きっといくつもの困難が待ち受けているだろう。だが、それに負けちゃいけない。」

カラット 「はい。」

警官 「辛くて挫けそうになった時、思い出すんだ。君がなぜチュパカブラになろうと思ったのか。」

カラット 「はい!師匠!」

ランス 「師匠?」

警官 「いろいろ大変だとは思うけど、立派なチュパカブラになれよ!」

カラット 「はい!」

警官 「返事は“チュパ”だろ。」

カラット 「チュパ!」


二人、熱い抱擁


警官 「じゃあ、達者でな。」


警官、去っていく


ランス 「何しに来たんだ、あいつ。」

カラット 「憧れるなぁ。あ、そうだ。手鎖とっときますね。」


あっさりと手鎖を解いてしまうカラット。しばしの沈黙の後。


ランス 「アーーーーーー!エンゲージ手鎖が!なんてことだ、彼と結ばれる最大のチャンスだったのに。」

カラット 「チュパ☆」(なんか可愛いポーズ)

ランス 「それで許されると思ったら大間違いだぞ。」

カラット 「でもおかしいです。せっかくランスさんが手鎖をされているのを助けたのに、どうして私怒られてるんですか。」

ランス 「これはただの手鎖ではない。エンゲージ手鎖だ。」

カラット 「エンゲージ手鎖?」

ランス 「そうだ。あれをつけたまま3日過ごせば想い人と結ばれるはずだったのに。」

カラット 「じゃあつけ直しますね。」

ランス 「違ぁうの!その想い人につけてもらわないと意味がないんだよこれは。」

カラット 「えぇ、なんかめんどくさい。」

ランス 「ああ、もうおしまいだ。この6年間2ヶ月と14日彼を見守り続けてようやっと巡ってきたチャンスなのに。もう我は運命の人と結ばれることはないのだ。」

カラット 「ランスさん…。歯ぁ食いしばれ!」


カラット、強烈なビンタ。

ランス  「え?」

カラット  「お前の愛は、そんな手鎖一つで吹き飛んじまううようなくだらないものなのか!お前の6年間はその程度のものだったのかよ!?」

ランス  「でも、我吸血鬼だし。」

カラット  「吸血鬼だからなんなんですか。ランスさんの意気地なし。」

ランス  「エンゲージ手鎖がないと自信が…」

カラット  「ランスさん、そんな手鎖なんかよりも恋はアタックあるのみです。本気で思いを伝えればきっと相手にも伝わるはずです。」

ランス  「で、でも。」

カラット  「それに告白するなら今日は大チャンスなんですよ。」

ランス  「大チャンス?」

カラット  「そうです。今夜は満月でしょ。満月の夜に告白をすれば成功する確率が上がるんですよ。」

ランス  「それは誠か!」

カラット  「はい、科学的なデータです。新聞に書いてありましたから!だから今日決めちゃうしかありませんよ!」

ランス  「今日、決めるのか…緊張して倒れそうだ。もうダメかもしれない。」

カラット  「辛くて挫けそうになったときは思い出すんです。なぜ彼を好きになったのか?」

ランス  「はい、師匠!」

カラット  「いろいろ大変だと思うけど、立派に恋を実らせろよ。」

ランス  「はい!」


二人、熱い抱擁


第三場

ランスの屋敷:廊下



ジョー 「さぁて、せっかく吸血鬼の動きも封じたんだ。グラムを見つけ出さないと。(腹痛)そしてその前にトイレを見つけなければ。今日なんか変なもん食ったかな。」


警察官、登場。


警官 「いやぁ、夢を追いかけるっていいなぁ。まだまだ若者も捨てたものではいな!」


ジョーと警官が背中合わせでぶつかる


警官 「うわぁ!」
二人 「あ、どうも。」


ジョーが去ろうとするが


警官 「おい、お前待て!」

ジョー 「なんでしょう。」

警官 「お前の顔、どこかで見たことがあるな。」

ジョー 「さ、さあ、なんのことでしょう?あ、あれでしょう?僕アルパカに似てるって周りからよく言われるんですよ。」

警官 「アルパカ?確かに似ているが…。あ!わかった!お前多額の詐欺事件で指名手配されている…。」


ジョー、逃げようとするが警官逃がさない。


ジョー 「なんですか。僕は指名手配犯なんかじゃないですよ。」

警官 「じゃあ、なんで逃げようとした。」

ジョー 「ちょっとトイレ。」

警官 「バカ、そんな言い訳が通用するか。」

ジョー 「いや、本当にお腹が」

警官 「話は署で聞かせてもらおうかジョー=マクレーン。詐欺の容疑で逮捕する。」


ランス登場


ランス 「ジョー!やっぱり我…」


ジョーに手錠をかける警官。その瞬間をランスが見てしまった。


ジョー 「あ。」

ランス 「それは、エンゲージ手鎖!あなた、その男と!?」

ジョー 「いや、待て違うんだ。これには訳があって。」

ランス 「言い訳なんか聞きたくない!」
 
ランス、泣きながら走り去っていく。


ジョー 「ああ、行っちゃった。(腹痛)うわぁ、本当にお腹が」

警官   「貴様まだ言っているのか。」

ジョー 「後生だから、逮捕されてあげるからトイレにだけ行かせてください!」

警官      「そう言って逃げ出すつもりだろう。」

ジョー    「これが嘘をつく人間の目に見えますか。」

警官      「見える。」

ジョー    「このォ!薄情者め!だったらここで漏らしてやる。どうなっても知らんぞ!」

警官    「わかったわかった。わかったから、…が、どこにトイレがあるんだ?」

ジョー  「一緒に探してください。」

警官    「しょうがないな。」


そこにポンドが現れる。


ポンド 「この辺りからさっきの吸血鬼の気配がする…。うわ、こんなところにあの警官。」


ポンド、隠れようとするがすっころぶ


ポンド   「にゃっ。」

警官   「おや、君は…なんでこんなところにいるんだ。夜は危ないって言っただろう。」

ポンド 「うるせえ!私は仕事に来たんだって言ってるだろ!」

警官      「仕事って一体なんなんだ。」

ポンド  「信じないから言いたくない。」

警官    「いいからおじさんに言ってごらんなさい。ほら。」

ポンド  「…吸血鬼ハンターよ。」

警官    「ハハハ。かわいいハンターさんだね。そういえばおじさんの娘の夢は魔法少女だったなぁ。悪いやつらをやっつけるって言ってたよ。」

ポンド  「てめえの娘とか知らねえし。」


二人が口論している間にジョーがこっそりと逃げ出す。


警官    「すまんすまん。夜道は危ないから送ってあげたいところだが、おじさんちょっと今外に出られないからな…どうしたものか。」

ポンド    「なんだ、お前も仕事か?」

警官      「え?ああ、まあそんなところだ。今しがた…あれ?いない。しまった!君、とにかく早くお家に帰るんだよ。」


警官急いでジョーを探しに行く。


ポンド    「だから子供じゃねえっつの!

ポンド、吸血鬼の気配を察知しようとするができない。


ポンド    「ああもう!あいつのせいで見失った。吸血鬼め、どこに行きやがった?」


ポンド、ランスを探すために部屋から出て行く。


ランスの屋敷:書斎


グラム 「イケメン。イケメン吸血鬼はどこなの?」


奥の部屋からうめき声が聞こえる。


グラム 「何?この不気味な声は?ひょっとしてこれが吸血鬼の唸り声?」


ランスが号泣しながら登場


ランス 「うあああああん。」

グラム 「キャア。ってあんた、さっきの吸血ゴリラじゃないの!」

ランス 「あ、あんたは。あの時の…。」


ランス、同情の眼差しでグラムを見つめる


ランス 「どんまい。」

グラム 「何が?」

ランス 「彼は、その…ああ、言えぬ!」

グラム 「何よ?さっきから気持ち悪いわね。」

ランス 「いや、そのちょっと…。やっぱり言えぬ。」

グラム 「わかったわよ。それよりどうしたの?そんなに泣いて。」

ランス 「我は、裏切られたのだ。」

グラム 「裏切られた?」

ランス 「この人だと決めた男がいて、相思相愛になったと思っていたのに浮気されたのだ。」

グラム   「ちょっと待って。浮気も聞き捨てならないんだけど、その前にあんた男が好きなの?」

ランス   「普通に女性が好きだし、血もだいたいうら若き乙女からいただいていたが、彼だけはなぜか。」

グラム   「ふうん。で、その相手の男が女に走っちゃったってわけか。仕方ないわ。男っていうのは女のケツを追いかけるしか能のない生き物なんだから。」

ランス   「それが、浮気相手も男で…。」

グラム   「何!?じゃあその男はあんたというものがありながら別の男といちゃついてたっていうの。」

ランス   「うむ。」

グラム   「最低ね!やっぱり男なんて最低よ!」

ランス   「でも、ひょっとしたら彼もまた振り向いてくれるかもしれない。」

グラム   「そうやって煮え切らない女が泣きを見るのよ。あんた男だけど!そうよ…マイクもチャップもケビンも、ハディソンだって私の元に帰ってこなかったわ」


ランス   「誰?」

グラム   「もう許せない!間男はどんな奴だったの?」

ランス   「警察官みたいだった。やっぱり収入の安定している公務員の方が良いのかな。」

グラム   「その男警官だったの?ふーん。あら、そう!だったらパパに言って首にしてもらうわ。こう見えて私警察庁長官の娘なのよ!」

ランス   「良い。復讐なんて虚しいだけだ。」

グラム 「あんた、人間できてるわね。私なら地の果てまで追い詰めないと気が済まないけど。」

ランス 「それだけの執念があるお前が羨ましい。」

グラム   「あら、褒めてるの?こういうこというと大体の男はビビるんだけど。」

ランス   「そんなことで臆する我ではない。それにその活力は我には眩しい。まるで太陽のようだな。」

グラム 「ふふふ、そう?面白いこと言うわね。あんた気に入ったわ。今夜は飲みましょう。飲んでパアーっと忘れるのよ!」

ランス 「あ!だったらこの屋敷に良いワインがあるぞ!」


二人ワイワイしながら去っていく。



ランスの屋敷:トイレ前廊下


ジョー 「やばい、警官から逃げられたは良いが限界だ…。あ、あった!」


トイレへと駆け寄るジョー。しかしトイレのドアは開かない


ジョー 「すいません!開けてください。」

カラット   「あ、あとちょっとなんで待ってください。」

ジョー 「うおお!早く!」


流水音、カラット出てくる。


カラット   「お待たせしましたー。」

ジョー 「どうもすみません。…え!カラット?お前生きてたのか。てっきり…」(腹痛)

カラット   「それより早くトイレ行った方がいいんじゃないですか。」

ジョー 「とりあえずそこ動くなよ。」


ジョー、トイレに入る


カラット    「そういえば先輩。猫よけに置いていた水持って行ったでしょ。」

ジョー  「なんのことだ。」

カラット    「先輩今夜の準備の時に聖水の準備をしたでしょ。その時に猫よけの水持って行きましたよね?」

ジョー  「いや、聖水は冷蔵箱に入っている水を使ったぞ」

カラット    「それですよ!私、毎晩猫よけ用の水は冷蔵箱に入れるようにしてるんです。」

ジョー  「なんで猫よけの水を冷蔵箱に入れておくんだよ。」

カラット    「先輩知らないんですか?猫よけの水も鮮度が大事なんですよ!科学的なデータです!新聞に書いてありました。」

ジョー  「その鮮度が落ちきっていたから今俺はこうしてトイレに居るわけなんだけどな!」

カラット     「なるほど、どおりで最近効果が落ちてきていると思ったんです。」

ジョー     「納得すんな!」

カラット     「今度から鮮度の管理は気をつけますので!」

ジョー   「てめぇ、覚えてろよ。」


警官現れる


カラット     「あ、師匠!」

警官     「おお、君か。今指名手配犯を探しているんだが、見かけなかったか。」

カラット     「どんな特徴ですか。」

警官     「そうだなぁ。顔が長くて。」

ジョー   「おい、カラット誰と話しているんだ。」

警官     「おい、今ジョーの声がしたぞ。」

カラット     「あ、知り合いなんですか。ここに」

ジョー   「アーーー。(声色を変えて)ワシはジョージじゃが何か?」

警官     「ジョージ?いや確かにジョーの声だったぞ。」

ジョー   「ジョーなんて知り合いはいませんのう。」

カラット     「こいつです。私がチュパカブラになることを反対していたのは。」

警官       「…という事は中にいるこのは君の親御さん?」

カラット    「え」

ジョー     「そうです!何?あんたうちのカラットの知り合いなの?」

警官       「はい、娘さんからお話を伺っています。あなた、娘さんの夢に反対しているそうですね。」

ジョー     「はい?」

警官       「娘さんは立派なチュパカブラになろうとしているのに反対していると聞きました。どうして娘さんの夢を応援してあげないんですか。」

ジョー     「え?え?」

警官       「僕は最近の職業とかには疎いんでチュパカブラっていうのはよく知らないんですけど、何かに一生懸命になるってことはとても尊いことだと思うんです。」

カラット     「そうだそうだ!」

ジョー     「バカモン!お前にチュパカブラはまだ早い。あれがどんな危険な職業か知っているのか。父さんはほら〜あれ、夜のお仕事だって聞いたぞ。そんな世界に娘を行かせるわけにはいかんのじゃ。」

警官     「え?チュパカブラって夜のお仕事なの。」

カラット     「はい、主に夜行性です。」

警官     「僕、一応公務員だからそれは応援できないな。」

ジョー   「そうじゃ、おまわりさんからも何とか言ってやってくだされ。」

カラット     「そんな、師匠!チュパカブラのこと応援してくれていたじゃないですか。」

警官     「いや、しかし…。」

ジョー     「おまわりさんや、今夜この子はこの館で客と逢瀬をする予定だったのじゃ。」

警官       「なんと破廉恥な!」

ジョー     「そんな娘が心配でこの館まで追いかけてきたというわけですじゃ。」

警官       「心中お察しいたします。君、お父さんも心配している。今日のところは」

カラット     「師匠!私師匠のことを信じていたのに。どんな夢でも応援してくれるって。それがただ夜行性なだけでなんです。師匠はそんなに小さな人間だったんですか?」

警官       「カラットちゃん。」

カラット     「私、がっかりです。師匠も夢のない大人たちの一人だったんですね。」

警官       「カラットちゃん。俺、間違っていたかもしれない。そうだよな。大人が偏見で若者の夢をしばっちゃあいけない。お父さん、カラットちゃんのチュパカブラ、認めてあげてくれませんか。」

ジョー     「おーいおいおい。カラット、知らない間に大人になったのう。わしも考えを改めねばならんようじゃ。おまわりさん。ここからは親子二人で話させてくれんかの。」

警官       「そうですね。差し出がましいことをしました。それでは本官はこれにて失礼いたします。…よかったな!カラットちゃん」

カラット    「はい!」



警官去る。ジョーがトイレから出てくる


ジョー   「ふう、なんとかごまかせたな。あの警官がアホでよかった。」

カラット     「先輩。私のチュパカブラ、認めてくれるんですね。」

ジョー   「チュパカブラだろうがなんだろうが勝手にしろ。」

カラット     「やったあ!」

ジョー   「っていうかお前生きてたんだな。てっきりあの吸血鬼にやられたものと思ってた。」

カラット     「先輩、それが実は私…」


銃声、窓ガラスが破壊される。ポンド登場


ポンド   「よくかわしたな。」

ジョー   「なんだお前。」

ポンド   「私はポンド=エバーロング、吸血鬼ハンターよ」

カラット     「おお!本物ですか!」

ポンド   「なんのこと?」

ジョー   「いえ、こっちの話です。そんなことよりなんでその吸血鬼ハンター様がいきなり俺たちに銃をぶっ放してきたんだよ。」

ポンド   「しらばっくれても無駄よ。そこのふざけた格好のやつが吸血鬼だってことはお見通しなんだから。」

ジョー   「は?」

ポンド   「そして吸血鬼と何やらこそこそと話していたお前。吸血鬼ではなさそうだけど何をしていた?」

ジョー   「ちょっと待って!ついていけない!カラットが吸血鬼ってどういうこと?」

ポンド   「まだしらを切るつもりなの。」

カラット     「先輩。私本当に吸血鬼になっちゃったみたいです。」

ジョー   「えええええ!そんなことさらっと言っちゃう?」

カラット     「だからさっき言おうと思ったんです。シリアスに。」

ポンド   「茶番は終わりよ。」

ポンド、カラットに銃をつきつける

ジョー   「いや、待って!殺すのはやめよう?」

ポンド   「へえ、吸血鬼をかばうんだ?あなたやっぱりこいつとグルなのね。」

ジョー   「そういうことじゃなくて…。」

ポンド   「じゃあどういうことなの?私に吸血鬼を野放しにしろと?」

カラット     「先輩。私、チュパカブラとして死ねるなら本望です。だから、逃げてください。」

ポンド   「覚悟は出来てるってわけね。」

ポンドが引き金に指をかけたその時。

ジョー   「待って!僕は…その子を…人間にしてあげようとしているんです!」

ポンド   「はあ?何を言い出すかと思えば。」

ジョー   「僕はこう見えて実は医者でね。吸血鬼を人間に戻す薬を研究開発しているんだ。」

ポンド   「吸血鬼は吸血鬼よ。人間になれたりなんかしないわ。」

ジョー   「いいや、私の研究によると吸血鬼というのは病原菌によって変化してしまった人間だ。原因さえ取り除いていけばきっと人間に戻れるはずなんだ!」

ポンド   「嘘よ!そんなの。」

ジョー   「本当だ。これが今私が開発している新薬。“チヲスワナインV”だ。」

ジョー、聖水を取り出す。

ポンド     「本当にそんなものが…。」

ジョー     「ああ!僕は吸血鬼と殺しあうんじゃなくて分かり合いたい。」

ポンド     「それを飲めば…普通の人間になれるっていうのか。」

ジョー     「そういうことだ。ほぼ日常生活に問題がない患者もいる。」

ポンド     「本当に?」

ジョー   「ああ、本当だ。まだ実験中ではあるがな。」

ポンド     「…それって、余ってたりしない?使いたい相手がいるの。」

ジョー     「ああ、いいとも。貴重な材料を使っているから手持ちは少ないが…。吸血鬼ハンターの君ならきっと有効に使えるだろう。」

ポンド     「ありがとう。その子も、早く人間になれると良いわね。」

ジョー     「ありがとう。じゃあ、この子を寝室で休ませてあげないといけないから、私はここで失礼するよ。」


ジョー、カラット去る。


ポンド     「吸血鬼を治す薬…か。」


ポンド、聖水の入った瓶を見つめて飲もうとした瞬間、ランスとグラム登場


グラム     「うえ〜。頭痛い〜。これも全部男どものせいだ!」

ランス     「ちょっとグラちゃん。のみすぎだ!」

グラム     「グラちゃんかぁ〜。あんたはゴリラだから二人合わせてゴリとグラね。へへへ。」

ランス     「何を言ってるんだ、グラちゃん」


ポンド、慌てて聖水を隠しながら。


ポンド     「てめえは!さっきの吸血鬼!」


ポンド、銃を構える。


グラム     「くおら〜!あんた!ゴリちゃんになんてことしてんのよ!」

ポンド     「どけ!そいつは吸血鬼だぞ!邪魔をするならあんたも撃つ。」

グラム     「吸血鬼だからって何よ!ゴリちゃんは今泣いてるのよ!そんな彼を撃って格好悪いと思わないの?」

ポンド     「吸血鬼が泣こうが喚こうが関係ねえ。」

グラム     「あんただって失恋の一つや二つしたことあるでしょ!そんな子をいじめたらかわいそうでしょ!」


ランス、こらえていたが再び泣きだす。


ランス     「う、うわあああん。あんな男が良いだなんて!」

グラム     「ほら、泣かないのゴリちゃん。さっきも言ったでしょ。その男の浮気相手が男なんだったら、男であるあんたにもチャンスはあるわよ。」

ランス     「そうだ。そうだよね!」

グラム     「ということだ!わかったかチビ!」

ポンド     「どういうことだよ。」

グラム     「あんた頭の中もお子ちゃまなのね。彼、恋をしているのよ。」

ポンド     「それはわかったんだけど、今登場人物が男しかいない気がするんだけど。」

グラム     「そうよ!男が男を好きになって男に告白したけど男には別の男がいて男が失恋したのよ!」

ポンド     「さっぱりわからん。」

ランス     「もういい、我を殺すが良い。」

グラム     「え?」

ランス     「もう彼とは結ばれないだろう。人間の、それも男に恋をするなんて初めから無理な話だったのだ。」

グラム     「そんなことないよ!」

ランス     「いいや、この呪われた体で誰かを愛するなど無理な相談だったのだよ。」

ポンド     「その通りだよ。吸血鬼。魔物が人を愛するなんて許されるもんじゃない。」

グラム     「あんた!」

ランス     「良いのだグラちゃん。この女の言うことは正しい。」

グラム     「でも…でも悔しいじゃない。自分がそう生まれたってだけで何もできずに諦めるなんて!」

ランス     「我とて吸血鬼でなければこんなに簡単には諦めはせぬ。」

グラム     「ゴリちゃん。」

ランス     「我は、望んで吸血鬼に生まれてきたわけではない!」

ポンド     !

ランス     「そう、ただ人の子として生まれてきたかった。」

グラム     「で、でも吸血鬼って人間を魅了できたりするんでしょ。その力があれば…」

ランス     「そんなものを使っても虚しいだけだ。我は彼を奴隷にしたいわけじゃない。」

グラム     「そっか。」

ランス     「さあ殺せ、ハンターの女よ。この諦めるだけの余生に終止符を打たせてくれ。」

ポンド     「…お前、本当に人間になりたいと思ってるのか。」

ランス     「ああ。」

ポンド     「吸血鬼の力に未練はないんだな。」

ランス     「愛さえあれば、そんなものはいらない。」

ポンド     「ったく…。ん。」


ポンド、聖水をランスに突き出す。


ランス   「なんだこれは?」

ポンド   「吸血鬼が人間になれる薬だってよ。」

ランス   「え?」

ポンド   「本当は別のことに使おうと思ってたけど、てめえにやるよ。」

ランス   「いいのか?」

ポンド   「なんども言わせんな。じゃあな!」


ポンド、去る。


ランス 「これで、人間に…。」

グラム 「信じていいの?あの子あなたを殺そうとしていたし、毒かもしれないわよ。」

ランス 「構わぬ、この恋が叶わぬくらいなら我は死んでも構わない。」

グラム 「ゴリちゃん。」

ランス 「グラちゃん。やはり我はまだ諦めたくないのだ。」


ランス、聖水を一気飲み。


ランス    「うえっ」

グラム 「大丈夫?」

ランス 「腐った魚の味がしたが大丈夫だ。これで、もう一度彼に告ってくるぞ!」

グラム   「頑張りなさいよ!」

ランス   「ああ。ありがとうグラちゃん」


ランス、去っていく。


グラム 「一途ねぇ。さ、ゴリちゃんの恋の成就を祈願して飲み直すか!」


ジョー、カラット登場


ジョー 「おおグラムさま!探しましたよ!」

グラム 「あらぁ、くるくるぱあじゃないの!」

ジョー 「うわ!酒臭。ごほん、なんとか吸血鬼を殺す算段がつきそうですので…」

グラム 「いや、吸血鬼を殺すのはやめよ!」

ジョー 「え、でも。」

グラム 「警官よ!この屋敷に警官がいるはずなの。そいつを連れてきなさい。」

ジョー 「警官をですか?それはちょっと面倒な…」

グラム 「あんた指名手配されっぱなしで良いの?」

ジョー 「それは困ります。」

グラム 「じゃあやりなさい。」

ジョー 「ええと、そのぉ警官なんか連れてきてどうするつもりなんですか。」

グラム 「ふふふ、決まっているわ。首をきるのよ。」

ジョー 「く、首を…。」

カラット   「先輩。この人吸血鬼よりもやばいですよ。」

グラム 「早く行きなさい!」

ジョー 「は〜い!わっかりました!」


ジョーとカラット、グラムの殺気を感じて逃げさるが、カラットだけ捕まる。


グラム 「あれ?あんた。」

カラット   「は、はい。なんでしょう?」

グラム 「吸血鬼の幼虫じゃない。」

カラット   「幼虫…?はい、まだまだ半人前です。」

グラム 「そっか〜。てっきりもう羽化したもんだと思ってたわ。」

カラット    ?

グラム 「そうだ!まだ羽化していないっていうことは、今のうちに私好みに育ててしまえば。完璧な吸血鬼が仕上がるはずよ。」

カラット   「どういうことですか?」

グラム 「こっちの話よ。うふふ、今からあなたを完璧な吸血鬼に調教してあげる。うふふふふ。」

カラット   「完璧なチュパカブラに…!是非よろしくお願いします。」

グラム 「うむ!良い返事ね。じゃあ早速行くわよ!」


二人、どこかに向かって走り去っていく。

ランスの屋敷、廊下

ポンドがとぼとぼと歩いてくる。


ポンド 「あ〜あ、なんであそこで格好つけちゃったんだろうな。あれがあったら人間に…。あの医者、また会えるかな?」


警官登場


警官     「あれ?君は?」

ポンド   「げ、お前は。」


ポンド立ち去ろうとする。


警官     「こらこら待ちなさい。」

ポンド   「やだよ。どうせまた家に帰りなさいとか言うんだろ。」

警官     「もう言わないよ。どうしたんだ元気がなさそうじゃないか。」

ポンド   「うるさい。お前には関係ないだろ。」

警官     「いや、少し娘を思い出してね。魔法少女を目指してるんだけどね。」

ポンド   「それ、さっきも聞いたぞ。もうほっとけよ。」

警官     「君の仕事を笑ったのは謝るよ。吸血鬼ハンターだって立派な仕事だ。」

ポンド   「なによ、急に。」

警官     「僕、さっき怒られちゃってね。少し普通じゃないくらいで人の夢を否定するなって。だからすまない。君の夢を笑ったりして。」

ポンド   「別にいいわよ。こんな仕事してるのも成り行きだし。」

警官     「そうなの?てっきり…」

ポンド   「私はね、もっと普通の人生を送りたかった。さすらいのハンターなんかじゃなくって、家庭を持ってご飯でも作りながら旦那の帰りを待っているような。」

警官     「普通の人生が良かった、か。若いのに達観してるね。」

ポンド   「だから私はもう28だって」

警官     「ごめんごめん。でもその気持ちは少しわかるなぁ。」

ポンド   「見るからに普通の人生送ってそうなあんたに何がわかるのよ。」

警官     「ハハハ、そう思うかい。おじさんは普通の人生を送るために必死だったよ。仕事も人付き合いもいくらやってもなかなか人並みにはなれなかった。」

ポンド   「でも、娘がいるんだろ。」

警官     「ああ、これがまた可愛くてね。…でも、無理して掴んだものっていうのは長続きしないね。今ではバツイチ。娘とも別居中だよ。」

ポンド   「どうして。」

警官     「まあ、なんていうか呪いみたいなもんかな。いくら普通に生きようと思っても絶対に追いかけてくる呪い。」

ポンド   「呪いか…。あんたも苦労してんのね。」

警官     「そうだね。でもそいつと上手くやっていくことも僕の人生の一部なんだよきっと。だから僕は、自分が不幸とか思ってない。」

ポンド   「…そんな簡単に割り切れないわよ。」

警官     「え、何か言った?」

ポンド   「いいえ!それよりもおまわりさんがこんなところで道草食ってて良いの?」

警官     「それもそうだ。じゃあ僕も仕事に戻ろうかな。そういえば、この屋敷で指名手配犯を追いかけている最中なんだけど、君見かけなかったかい。」

ポンド   「何?どんなやつ?」

警官     「これ。多額の詐欺で指名手配されてるんだ。」


警官、ジョーの指名手配書を見せる。


ポンド   「これは…。」


ポンド指名手配書をひったくり凄まじい形相ではけていく。


警官     「え?ちょっと君?どうしたんだ?おい、待ちたまえ。」


警官、ポンドを追いかけて去る


ランス 「あなたに想い人がいるのはわかっているだが、やはり我は諦めきれぬ!我は引かぬ、我は媚びぬ、我は省みぬ!う〜んこれじゃあ重すぎるか。もっと未来を感じさせる感じがいいか。未来…そうだな、人間になったら…そう、人間になったら一緒にペペロンチーノを食べに行こう。これだ!爽やかだし将来性がある!うん、ペペロンチーノ食べに行こう、ペペロンチーノを食べに行こう。あれ、緊張したせいか?お腹が…。」


ランス、トイレに行こうとしたところでジョー登場。


ジョー 「あの女一体どうしたんだ。っていうかカラット置いてきちまったし。あいつ無事かな?」


目が合う二人。ランス、腹痛のせいですごい形相。


ジョー 「うわ〜、めっちゃ睨んでる。怒ってる?怒ってるのかな。」


ジョー、なんとなく会釈。ランスも会釈を返すがぎこちない。


ランス 「そ、その、お花摘んでくるから待ってて!」


ランス駆け去る


ジョー 「なんだ?一体どうしたんだ。」


警官の声だけ聞こえてくる


警官   「おうい、吸血鬼ハンターさん。どこに行ったんだ。」

ジョー 「ゲッ、警官だ。」


ジョー、物陰に隠れる。


警官   「今そこに隠れたのは誰だ?」

ジョー 「…。」

警官   「いるのはわかっている。出てこい。」

ジョー 「おまわりさん、わしはジョージですじゃ。」

警官   「え、カラットさんの親御さんですか。なぜ隠れたんです。」

ジョー 「それは…この部屋でカラットがそ、その、今夜の客と逢瀬をすると聞いたので、いてもたってもいられず、こうやって隠れて見ておこうと。」

警官      「なるほど、しかしお父さん、そんなものを見ればより辛いんじゃないですか。そっとしておいてあげた方が…。」

ジョー    「いやじゃ、わしは見守るんじゃ。これは家族の問題なのですじゃ。おまわりさん。ここは立ち去ってくれんかの。」

警官      「なるほど、しかしカラットちゃんはこのことを知っているのですか?」

ジョー    「知らん。」

警官      「さすがに無断でそういう現場を見るっていうのは…。」

ジョー    「いいや、わしは見るぞ!カラットの初めての客を見ずには帰れん。」

警官      「そうですか。確かにあんな奇妙な格好での逢瀬がお好みの客ってのは本官も気になりますね。一体どんな男なのか…」


ランス、トイレから帰ってくる。


ランス 「お待たせ!」


しばし沈黙。


二人   「アーーーーーー!」

警官   「お前がカラットちゃんの最初の客か!」

ランス 「お前はジョーの男!答えよ。ジョーをどこに隠した?」

警官     「何を言っているんだ?お前の目当てはカラットちゃんだろ。」

ランス   「我が眷属がどうかしたか。」

警官      「けんぞく?何かわからんがそういう形から入っていくタイプの奴なんだな。なるほど、さっき目隠しや手錠をしていたのもそういうプレイということか。」

ランス    「何を訳のわからぬことを言っている。早くジョーを出せ。そうしなければ命はないぞ。」

警官      「何を言っているんですか。照れ隠しなら結構ですよ。あんたも好きねぇ。」

ランス    「ええい、お前は毎回話の通じぬやつだ。いでよ!我が眷属。」


ランス、口笛を吹くとカラット登場。


カラット    「ご指名ありがとうございます。ナンバーワンチュパカブラのカラットです。」

ランス    「…。」

警官      「これがチュパカブラ…。」

カラット    「子猫ちゃん、今夜は何をお望みかな。」

ランス  「子猫ちゃんというのは我の事で良いのか。というかそのキャラは何だ?」

カラット    「俺、姫に教わったんです。」

ランス    「姫?」

カラット    「これがチュパカブラのあるべき姿だって。さあ子猫ちゃん。俺に身を任せて熱い夜を楽しもうぜ。」

警官       「ああ、なるほどなぁ。チュパカブラってこういうことか。」

ランス     「何の納得してるんだお前は?そんなことより眷属よ、ジョーを探すんだ。」

カラット     「もう見つけたよ。子猫ちゃん。」

ランス     「え、いつの間に?」

カラット     「お客様の欲しがっているものは、口に出す前に察してあげるのが一流だって姫が言っていたからさ。」


カラット、ジョーを引っ張り出す


ジョー     「バカ、お前何やってるんだよ!」

二人       「見つけたぞ、ジョー!」

ジョー     「うわあ、最悪だ。」

警官       「私と一緒に来てもらおうか。」

ランス     「いいや、あなたには伝えたいことがあるのだ。我といこう。」

ジョー     「いやぁ、え〜っと…。」

カラット     「お兄さんもてるね。ちょっと妬けちゃうな。」

ジョー     「うるさい!なんなんだお前は!」

ランス     「いつからなんだ。いつからその男とできていたんだ。」

ジョー   「あのな、お前は誤解をしてるんだよ。」

ランス   「気づかなかった、いつもあなたのことをスト…見守っていたのに。」

ジョー   「え?」

ランス   「ゴホン!一体なぜだ?その男のどこがいいのだ。」

ジョー   「いいか、落ち着いて聞けよ。俺はこの男とはそういう関係じゃない。」

ランス     「そんな、見え透いた嘘で私を騙そうとしても無駄だ。」

ジョー     「ランス!お願いだから信じてくれよ。」

警官       「何これ?何が始まったの?」

ランス     「じゃあ、さっきその男にエンゲージ手鎖をつけられていたのは何なのだ。」

ジョー     「それは…その、」

警官     「あの、何でも良いからこいつ連れて行かせてくれないかな。」

ランス   「なんて強引な…そうかぁ。そういうところが良いのか。」

警官       「さあ、ジョー=スロープオリジン。私と同行してもらおうか。」


時間が止まり、ジョーの脳内


ジョー     (どうする。どうする俺。このまま警察に捕まってしまえば俺は詐欺師としてブタ箱行き、失った信用を取り戻すチャンスもない。だったらこの吸血鬼にかけてみるしかない!)


ジョーの脳内終了。


警官       「こら、さっさと動け!」

ジョー     「ええい!ままよ! 」


ジョー、ランスにキスをする。


ランス   「え。」

ジョー   「俺、お前のことがめっちゃ好きやねん。何でわかってくれへんねや?手鎖はこの男に無理矢理させられただけや!俺が思っているのはお前だけやったんやー。」

ランス     「本当か?なぜか訛っているけど本当に信じていいのか?」

ジョー     「ええんやで。せやから、一緒に行こで!」

ランス     「しかし」

カラット     「行きなよ。ハネムーン」

ランス     「ハネムーン!い、行ってきます。」


ランス、ジョーを連れて去る。


警官       「こら待て。」


カラット、警官の前に立ちふさがる。


カラット     「いくら師匠でもここを通すわけにはいきません。」

警官       「何を言っているんだ。あいつは犯罪者だぞ。」

カラット     「古人曰く、人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて地獄へ落ちろ。」

警官       「どういうことかな。」

カラット     「しつこい男は嫌われますよ。師匠。」


グラム登場。


グラム     「こらあ!特訓中に逃げ出すってどういうことよ。」

カラット     「姫!これは失礼いたしました。指名がかかっちゃったもので。」

グラム     「指名?」

警官       「この若者はお仕事の最中だったようです。っていうかどなたですか。」

グラム     「あんた警官なのに私のことを知らないの?覚えておきなさい。私はグラム=フォワード。警察庁長官の娘よ。」

警官       「なんと、フォワード氏のご息女でしたかこれは失礼いたしました。」

グラム     「で、あんたこんなところで何をやってるの。」

警官       「いや、ちょっと、そのォ。」

グラム     「へー。言えないんだ。あんた名前は」

警官       「はっ、本官はジミー=ベイヤーと申します。」

グラム   「ジミーか、あんた明日からクビね。」

警官     「え、どういうわけでありますか。」

グラム     「自分の胸に手を当てて考えてみなさい。」

警官       「まさか…あれがバレたっていうのか。」

グラム     「そういうことよ。」

警官     「そんな、まさか僕が狼男だってことがばれていたなんて…」

グラム   「え?」

警官     「え?」


口笛の音。


カラット     「あ、また指名が入ったので行ってきます。」


カラット去る。


グラム   「あ、コラ!待ちなさい。」

警官     「待ってください!このことだけはどうかご内密に。」


カラットを追いかけて去るグラムとそれを追いかける警官


ランスの屋敷:リビング

げんなりした様子のジョーとウキウキのランス


ランス   「嬉しい!夢が叶うなんて!どこでデートしようか?廃墟がいい?お城がいい?それともは・か・ば?」

ジョー   「もっと明るいところがいいかな。海岸とか、植物園とか。」

ランス   「もう、いけずだなあ。なら間をとって樹海にしよう。」

ジョー   「それって間取れてんのか?」


銃声。ポンド登場。


ポンド 「見つけたぞ。ジョー=マクレーン。」

ジョー 「また吸血鬼ハンター、今取り込み中だから待って。」

ポンド 「ふざけるな!」

ジョー 「おい、なんでそんなに怒ってるんだよ。」

ポンド 「お前、詐欺師だそうだな」

ジョー 「いやぁ、私は医者ですよ。」

ポンド 「ごまかすんじゃねぇ!じゃあこれは何だ?」


ポンド、指名手配書をジョーに見せる。


ジョー 「げ。」

ポンド 「やっぱりこれはてめえなんだな。あの薬とやらも嘘ってわけだ。」

ジョー 「違う、それは陰謀だ。私の研究をよく思っていない警察が私を消そうとしているんだ。」

ポンド 「ほお、じゃあ隣の吸血鬼に聞いてみようか。お前の薬に効果があったかどうか。」

ジョー   「え、お前あの薬飲んだの?」


ランス頷く。


ポンド   「私が渡した薬を飲んで何か体に変化はあったか。」

ランス   「その…腹の具合が悪いな」

ポンド   「やはりあの薬は偽物みたいだな。」

ジョー   「え〜と、効果には個人差が…」

ポンド 「御託はもういい!よくも私の気持ちを弄んだな!」


ポンド、ジョーに銃を向ける


ジョー 「待て、ちょっと落ち着け。とりあえずそれを下ろしてから話し合おう。」

ポンド 「うるさい。少しでも期待した私がバカだった。呪われた血から逃れられる方法があるって。」

ジョー   「何?呪われた血って。」

ポンド   「あんたには関係のない話よ。」

ランス   「まさか…貴様ダンピールか。」

ジョー   「それって吸血鬼と人間のハーフの?」

ポンド   「ああそうだよ。この体には穢れた血が流れてるんだよ。」

ジョー   「ええええ!」

ポンド 「私は吸血鬼と人間のハーフ。そのせいでいろんな苦労をしたわ。父は昼間寝てばっかで働きもしないからずっと貧乏だったし、不老不死の力のせいで容姿はいつまでたっても子どものまま。しかも日光に当たるとふらつくし、何もないところで転ぶ体質になってしまったわ。」

ランス   「最後のは吸血鬼関係ない。」

ポンド   「だまらっしゃい!全部吸血鬼が悪いのよ!」

ジョー 「まあ、落ち着いて。」

ポンド 「そしてこの秘密を知った以上お前もここで殺す。」

ジョー 「ちょっとお!」

ランス 「ごめん。」

ポンド 「死ね!」


ランス、ジョーをかばって撃たる。


ジョー 「ランス!」

ポンド 「なんでそんなやつをかばう。嘘ばかりついて人の気持ちを弄ぶようなやつだぞ。」

ランス 「それでも、そんな彼だが。嫌いになれない。確かにいい歳してうだつも上がらないし、やなことがあったらすぐ逃げる。だが、なぜかわからないが彼を好きなことををやめられない。それが恋ってものだから。」

ポンド   「そんなあやふやなもののために命まで掛けるのか?」

ランス 「あやふやだからこそ命をかける!そうすれば、いつか確かなものになる日が来るかもしれない。事実なんて後からついて来ればいい。」

ジョー 「無茶苦茶だ。」

ランス 「ジョー、あなたが囁く愛が嘘なのはわかっていた。だが、嘘でも好きと言ってくれて嬉しかったよ。」

ジョー 「お前。」

ポンド 「ばっかばかしい。吸血鬼と人間の恋なんて、悲しい結果を生むだけよ。」

ランス   「確かに人間と吸血鬼の恋は難しいのかもしれない。でも我はもう諦めたくないのだ。 」

ポンド   「諦めなくっても結果は同じよ。あんたたちはここで死ぬんだから。」

ジョー   「“たち”ってやっぱり僕もですか。」

ポンド   「当然よ。」

ランス   「ジョーを殺すとあっては黙っているわけにはいかんな。」

ポンド 「威勢は良いけど、そんな体で私を倒せると思っているの。」

ランス 「確かに私だけでは厳しいかもな。だが、これならどうだ!」


口笛を吹くとカラット登場。


カラット   「ご指名ありがとうございます。ナンバーワンチュパカブラのカラットです。」

ポンド   「そうか、てめえはこの男の眷属だったか。」

ランス 「これで二対一だ。ここで貴様を八つ裂きにしてくれる。」

カラット   「ランスさん、その傷?」

ランス 「なんでもない。この小娘に吸血鬼の恐ろしさを見せつけてくれる。」

ジョー 「ランスやめろ!」

カラット   「…わかったぜ子猫ちゃん。」

ポンド 「そんなに死にたいならてめえから地獄に送ってやる!」


ランスとポンドの戦い!カラットは呆然としているジョーを連れて逃げる。次第にランス押されて行く。


ランス 「ぐっ。」

ポンド 「啖呵を切った割には大したことなかったな。お前の負けだ。」

ランス 「いいや。我の目的は果たした。」

ポンド 「負け惜しみを…まさか!お前奴を逃がすために。」

ランス 「そういうことだ」

ポンド 「ちい!」


ポンド、ジョーを追いかけようとするが、ランスがそれを捕まえる


ランス 「貴様にはもう少し私に付き合ってもらうぞ!」


二人、戦いを見せながら場面転換


ランスの屋敷:物置


ジョー 「はあはあ、おい、なんで俺を逃した?」

カラット   「言われなくてもお客様の望みを察するのが一流のチュパカブラなんで。」

ジョー   「でもあいつ一人じゃやられちゃうぞ。」

カラット   「ランスさんなら大丈夫ですよ。あんなちびっこに負けるはずがありません。」

ジョー 「お前、嘘ついてるだろ。」

カラット   「そんなこと。」

ジョー 「俺は嘘つきだからな、人の言うことは信じないんだよ。」

カラット   「…先輩にはかないませんね。で、どうするんですか。」

ジョー   「あ〜あ、ただいつも通り仕事して帰りたかったのになぁ、あんなこと言われたら置いてけないじゃんかよ。」

カラット   「じゃあ、あのハンターさんと一戦交えるのですか。」

ジョー 「それは論外。」

カラット   「じゃあ、泣き落とし?」

ジョー 「なんか負けた気がして嫌だ。」

カラット   「じゃあどうするんですか。」

ジョー 「俺に考えがある。ちょっと耳かせ」

カラット   「ふむふむ…」


ランスの屋敷:トイレ前廊下

グラムと警官が口論をしている


警官   「ですから…」

グラム   「だってあんた警察で犬なんでしょ!臭いで追跡とかできないの?」

警官     「狼です。っていうか変身しなければ普通の人とは変わらないので…。」

グラム   「何よ、役に立たないわね。」

警官     「ですから本官が警察官としての能力を最大限に発揮してフォワードさまの人探しをお手伝いいたします。」

グラム   「え〜、警察なんてあてにならないわよ。」

警官     「ご心配なさらず、見ててください僕の鮮やかな捜査手腕を。古来から言われている格言にこんなものがあります“犯人は現場に戻る。”僕の警官としての勘が先ほど彼女と会ったこのトイレ付近の部屋が怪しいと囁いています。」

グラム   「こんなトイレの近くなんかにいるのかしら。」

警官     「きっといます!そしてもし彼女を見つけたら。約束通り僕の正体、フォワード長官には黙っておいてくださいね。」

グラム   「わかったわよ。私に二言はないわ。でも今日は満月なのに平気なんだから大丈夫なんじゃないの?」

警官   「僕、直射月光がダメなんです。だから曇ってたり窓ガラス越しなら大丈夫なのですが…。」

グラム 「あらそうなの。でもこの部屋窓ガラス割れてるみたいだけど」

警官、窓ガラスを確認する。窓ガラスはポンドによって割られていた


警官    「あ。」

グラム  「え。」


警官、にわかに苦しみだす。徐々に狼男に変化していく


グラム    「きゃあああああ」


グラムの悲鳴とともに場面変化


ランスの屋敷:リビング

防戦一方のランスとそれを追うポンド


ポンド 「往生際が悪い」

ランス 「まだだ、まだ諦めぬ。」


そこにジョーの来ていた服に着替えたカラット登場


カラット    「待てい!」

ポンド !?

ランス 「誰だ?」

カラット   「私は吸血鬼ハンター、オーレリア=ポラードだ!」

ポンド 「オーレリア=ポラードだと?」

ランス 「また吸血鬼ハンターか。」

ポンド 「その気配。てめえもダンピールか。生憎だがこの吸血鬼は私の獲物だ。」

カラット   「いや、私が追っているのはその吸血鬼ではない。」

ポンド 「は?ここにはこいつとその眷属しか…。」


チュパカブラの格好をしたジョーががポンドに襲いかかる。


カラット   「危ない!この!吸血鬼め!」


カラットがジョーにおもちゃの杭を突き刺しジョーが倒れる


ジョー 「チュパーーー」

カラット   「危なかったな、お嬢さん。」

ポンド 「そんな、この私が吸血鬼の存在を感知できなかったなんて。」

カラット   「その様子だとお嬢さんは知らないようですな。」

ポンド 「何?」

カラット   「こいつは、我々ダンピールの感知をすり抜けてしまう新種の吸血鬼、チュパカブラです。」

ポンド 「チュパ…カブラ?」

ランス 「チュパカブラだと?」

ポンド 「知ってるのか!?」

ランス 「ああ、まあ。」

カラット   「そして私はそのチュパカブラ専門の吸血鬼ハンターなのです。」

ポンド 「ほう。」

カラット   「しかしまずいですな、チュパカブラに対応できないハンターがこんなところに来てしまっているとは。ここはチュパカブラの巣窟ですぞ。お嬢さん、他にも奴らを見かけませんでしたか。」

ポンド 「あ!見かけた。だが、さっきのやつは感知できたぞ。」

カラット   「それは運が良かった。奴らは成長するにつれて我々の感知をすり抜ける能力を身につけていく。そして今この屋敷には成長しきったチュパカブラがうようよいるのです。」

ポンド 「なんだと!?」

カラット   「さっきは単体で襲いかかってきたから良かったようなものの、群れで襲いかかってきたら今度は助けてあげられませんぞ。」

ポンド 「そんなにいるのか!?」

カラット   「この屋敷にざっと20匹くらいは。」

ポンド 「お前には感知できるのだな?」

カラット   「ええ、この聖水を飲むことによって一時的にですが。」

ポンド 「なるほど。」

カラット   「ここで吸血鬼ハンターに出会ったのも何かの縁ですな。私のを少し分けてしんぜよう。」

ポンド 「しかし。」

カラット   「私も一人では心細い。これを飲んでチュパカブラ退治に協力してくれいないか。」

ポンド   「わかった。そういうことなら手をかすわ。」


ポンド、猫よけの水を飲んでしまう


ポンド 「うえ、なにこれ?腐った魚の味がする。」


ジョー、起き上がり


ジョー 「だあっはっはっは。ひっかかったな!」

ポンド 「お前は…ジョー=マクレーン!」

カラット   「やりましたね先輩!」

ポンド 「先輩?お前…まさかさっきのふざけた格好をした女?」

カラット   「そういうことです。」

ポンド 「てめえら一体どういうつもりだ?」

ジョー 「どういうつもりって一芝居打ったんだよ。お前にその猫よけの水を飲んでもらうためにな!」

ポンド 「何を?う…」(腹痛)

ジョー 「どうやら効いてきたようだな。」

ポンド 「ちい!」

ジョー 「カラット!」


ポンド、ジョーを撃とうとするがカラット、手鎖でドアを閉める



ジョー 「おっと、俺を殺しちまっていいのか?手錠の鍵を持っているのは俺だけだぞ。」

ポンド 「お前を殺してから鍵を奪い取ればいいだけだ!」

ジョー 「俺が立っている場所がわかるか?」

ポンド 「窓際、まさか!」

ジョー 「そうだ。俺を殺したらこの手から鍵は離れる。鍵は永久に見つからず、ジ・エンドだ。」

ポンド 「ぐ…ぐぬぬ。なにが望みだ。」

ジョー 「その銃とこの鍵を交換だ。お前がなにもせずにここを立ち去ってくれればそれでいい。」


ポンド、腹痛で苦しそうである


ジョー 「さあどうする?早く決めろ。俺の言う条件を聞き入れて解放されるか。それとも俺を殺してお前も社会的な死を迎えるか」


ポンド、しぶしぶ鍵と銃を交換。


ジョー 「ありがとな!」

ポンド 「おのれぇ!ジョー=マクレーン!!」


ポンド、腹を抱えながら去っていく。


ジョー 「よっしゃ!じゃあこんなところさっさとおさらばしようぜ。」


帰ろうとするジョーとカラット。ランス、動かない


ジョー 「どうした、お前も一緒に逃げよう。」

ランス 「でも、我吸血鬼だし。」

ジョー 「だからって、怪我してるお前をここに置いてけないだろ。いいからついてこい」

ランス 「え、じゃあ我と結…」

ジョー 「それは、まだあれだけど、友達からなら考えてやらんこともない。俺のために命張ってくれるやつなんて人間にもそういないしな。」

ランス   「ジョー!」


ランス、ジョーを抱きしめる。


ジョー   「痛い痛い!本当に痛いからやめて!」

カラット   「先輩、イチャイチャするのもいいですけど早くしないとあの吸血鬼ハンターさん帰ってきちゃいますよ。」

ジョー   「そうだ、ランス。早くここから逃げよう。」


三人帰ろうとしたところにグラムが逃げてくる。


グラム   「ちょっと!あんた助けなさい!」

ジョー   「どうしたんですか。」

グラム   「あいつが、あの警官が変身しちゃったのよ。」

ジョー   「え、どういう?」

警官   「ワオ〜ん。」

ジョー 「げ。」

ランス   「あれは、狼男!」

ジョー   「とにかくドア閉めて!」


グラム、ドアを閉める。ドアを叩く音が鳴り止まず、今にも壊れてしまいそうだ。


カラット   「すごい!本物でしたよ先輩!」

ジョー   「今、盛り上がっている場合じゃないでしょ。」

グラム   「どうすればいいの?」

ジョー   「ランス!お前吸血鬼なんだろなんか倒し方とか知らないのか。」

ランス   「ええっとなんだったっけ。」

グラム   「ゴリちゃん早く。」

ランス   「そうだ、やつらも銀の銃弾に弱いはず。」

ジョー   「銀の銃弾?そんなもん都合よく…あった。グラムさん。321の合図で開けてください。」

グラム   「わかったわ。」

ジョー   「3・2・1!」


ジョーが発砲した球が見事警官に命中。


警官     「キャイン!」


警官倒れる


グラム  「あれ、死んだの?」

ランス  「いや、銀の銃弾を受けた狼男は人間に戻るはずだ。」

ジョー  「ふう、助かった。」

カラット  「先輩格好いい!」

ジョー  「へへん。どうだ、見直したか!」

警官    「あれ、本官は…。」

カラット  「師匠、すごいですね。まさか変身能力を持っているとはさすが師匠です。」

警官    「変身…?まさか、僕はやってしまったのか。あ、あの〜やっぱり狼男ってこの仕事クビですかね?」

グラム  「まあ、ちょっと警察官にするには危険かもね…。」

警官    「とほほ。」

ランス 「くっ。」


ランス、そのばにへたり込む


グラム 「ちょっと、ゴリちゃん大丈夫?怪我してるじゃない。」

ランス 「平気だ!運命の人と結ばれた今、我に怖いものなどない!」


ランス、ジョーに抱きつく


ジョー 「痛い痛い。」

グラム 「あんたの想い人ってまさか。」

ランス 「そう!我はジョーと結婚します!」

ジョー 「そんなこと言ってない。」

グラム 「そう、良かったわね!仲人なら任せなさい。」

ジョー 「俺の話聞いて!」

カラット 「先輩。私なんか忘れてる気がするんですけど。」

ジョー 「あ!そうだ!あのハンターのこと忘れてた。早くこの館から脱出するぞ!」


ポンド、ふらふらと登場する


ジョー 「しまった!あの、え〜っと。」

ポンド 「…。」

ジョー 「ふん!丸腰のお前に何ができる?こっちにはお前が持ってた銃もあるんだからな。」

ポンド 「さっきは不意をつかれたが、まともにやればあんたに勝ち目はないわよ。」

ジョー 「へへん。狼男を退治した俺がそう簡単にやられると思うなよ。」


ポンドvsジョー。ポンド圧勝。たやすく銃を奪い取る。


ジョー 「すいませんでした!!許してください!」


ポンド、ジョーに銃口を向けるがやがて外して


ポンド 「やめた。こんな男に一杯喰わされるなんて私も焼きが回ったわ。ハンターも廃業かしらね。」

ジョー 「いろんな意味でスッキリしたみたいだな。」


ポンド、笑顔で銃口をジョーに向ける


カラット 「先輩、今のは余計でしたね。」

警官 「君、仕事やめちゃうのか。奇遇だね。おじさんも明日から仕事がなくなりそうなんだ。仲間だね。あはは。」

ジョー 「なんか、切ないな。」

ランス 「ではこれからどうするのだ。ダンピールでは他の吸血鬼の元へ行くことも難しかろう。」

ポンド 「そうね、行くあてもないし、このままどこかに姿を消すわ。」

カラット 「行くあてがないなら、私とチュパカブラ目指しませんか?」

ポンド 「は?それはあんたが作った嘘の吸血鬼でしょ。」

カラット 「いいえ!チュパカブラは実在します。新聞に載っていました。今最先端の一番ホットな吸血鬼なんです。」

ポンド 「ホットな吸血鬼ねぇ。私には無理よ。」

カラット 「なんでですか!」

ポンド 「私みたいな半端者がそんな夢なんか追っかけたらバカを見るだけよ。」

カラット 「いいじゃないですか!半端者でも夢を追いかけたら!」

ポンド 「でも、私人間とも吸血鬼とも仲良くできたことないし。」

カラット 「人間や吸血鬼たちに理解がないなら私たちで王国を作って仕舞えばいいんです。チュパカブラの。」

ポンド 「そんなことできるわけ…。」

カラット 「ハンターさん。私たちは世間がまさかいるわけないと思っている吸血鬼なんですよ。そんな私たちなら、世間がまさかできるわけないと思っていることもできるかもしれないじゃないですか。」

ポンド 「ハハ、なんだよそれ。お前の話聞いてると深刻に考えてた自分がバカみたいになってくるわ。」

カラット 「えへへ、よく言われます。」

ジョー 「全くだ。」

カラット 「どうです?私と一緒にナウい吸血鬼を目指しませんか?」

ポンド 「…そうね、あんたと一緒にチュパカブラとやらを目指してみるのも悪くないかもしれない。」

カラット 「やったー!あ!知ってますか?新聞によるとチュパカブラの本場は南アメリカなんです。やはり修行をするならそこだと思うのですが。」

ポンド 「南アメリカか、日差しがきつそうね。大丈夫かな。」

ジョー 「そんなあなたにこちら!サンブロック!」

ポンド 「もうあんたには騙されないわよ。」

ジョー 「わあってるよ。冗談だ。カラット、本当に行くのか。」

カラット 「はい、今度会うときは究極のチュパカブラになって帰ってきます。」

警官   「ああ、夢を叶えろよ若者たち。」

カラット 「チュパ!ほら、ハンターさんも!」

ポンド 「ちゅ…チュパ。」

グラム 「照れちゃって、かわいい。」

ポンド 「うっさい!さあ、とっとと行くわよ!」

カラット 「はい!」


ポンド、カラット去る。


ジョー 「さあ、一件落着したところで俺も帰るか。」


ジョー、帰ろうとするがグラムに捕まる。


グラム 「何言ってんのよ、メインイベントはここからでしょ!」


グラムが扉を開けると手錠を持ったランスが立っている。グラム結婚式の歌を歌い始める。ジョー、力づくでは逃げられない。


ジョー 「うわぁ、け、結婚式ですかぁ。だとしたらこんな格好じゃ彼に失礼にあたるな。うん。お色直しをしてきます。」

グラム 「なるほど、それもそうね。」


ジョー、いそいそと立ち去る。


警官   「今のやつの目、ありゃ体よく逃げただけじゃないですかね?警官の、いや野生の勘がそう言っています。」

グラム 「なんですって!追いかけるわよ!あいつを捕まえたら首もなかったことにしてあげるわ!」

警官    「アイアイマム!」



グラム、警官、ジョーを追いかけるランスも楽しそうに追いかける


ホーカスコープス FIN

閉じる
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントをするには会員登録・ログインが必要です。