別人格の居場所 ドラマ

202X年以降、分断された東都と離京。 Cウイルスの感染爆発により、人々の行動は変わらざるを得なかった。 人々が消えていく「神隠し現象」という謎の現象を追って、東都の宮内穂鷹(25)が動く。東都と離京の人々の思惑が交錯する。※直し等、なんなりとお申し付けください。
いちろく2345@脚本家志望 90 0 0 10/07
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第一稿

登場人物

・宮内 穂鷹(みやうち ほたか)(25):本社東都newm社員
・倉田 優二(くらた ゆうじ)(42):離京にある、コーヒーショップ店長・サックス奏者
・利休( ...続きを読む
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登場人物

・宮内 穂鷹(みやうち ほたか)(25):本社東都newm社員
・倉田 優二(くらた ゆうじ)(42):離京にある、コーヒーショップ店長・サックス奏者
・利休(5):倉田の飼い猫。雌。人に変わる
・白岩 正輝(しろいわ まさき)(42):本社東都newm専務
・高島 満(たかしま みつる)(40):子会社離京newmの専務
・外堀 数文(そとぼり かずふみ)(25):闇サイト管理人
・溝口 功一(みぞぐち こういち)(40):子会社離京newmの課長
・寺門 邦彦(てらかど くにひこ)(58):株式会社newm社長(本社・子会社共通)

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〇 イメージ(人が消失するイメージなど)
  テロップ「202X年」
利休N「神隠し。近年見られる人体消失現象の、総称です。突然人体が燃えてしまう、人体発火現象というものがあります。それとは異なり、発火ではなく忽然と人が消えてしまう現象を指します」

〇 東都・newm本社内(夜)
  勤務時間外。
  社内のパソコンの一つが点いている。
  そのパソコンの前に座り、残業で一人作業をしている宮内穂鷹(25)。
  画面には人名が羅列されたリストが映っている。
  「神隠し被害者一覧」の文字。
穂鷹「なんで、こんなものが…」
  ふいに、ゴトッと音がする。
  直感で身の危険を感じ、席を立とうとすると、穂鷹は何者かに頭部を殴られる。
  穂鷹、意識が薄れて、倒れる。
  走り去っていく何者か。

〇 離京・道(早朝)
  穂鷹、倒れている。
  高島満(40)が声を掛ける。
高島「おい、大丈夫か?」
  穂鷹は体を揺すぶられ、上半身を起こす。
  周りには大勢の人だかり。
  辺りにはコンビニや居酒屋などがあり、ごちゃごちゃしている。
穂鷹「??居酒屋がある…」
高島「何言ってんだ。お前、飲んでぶっ倒れたんだろう?」
  野次馬連、笑う。
  穂鷹、首の後ろをおさえる。
穂鷹「(痛そうに)酒飲んでたように見えます?」
  高島、穂鷹の首の後ろを見る。頭から首にかけて、あざを見つける。
高島「いや。でもとりあえず起きたし。歩けるか?」
  穂鷹は高島に支えられて、“Café-KURATA”へ向かう。

〇 離京・Café-KURATA(倉田のコーヒーショップ)
  穂鷹はテーブル席へ案内される。
  アイシングを持ってくる高島。
穂鷹「(状況を整理できない様子)」
高島「しばらく冷やしてろ。痛かったら病院に行け」
  高島は、コーヒーを淹れる道具の準備を始める。
  奥から猫の利休(5)と、倉田優二(42)が出てくる。
  利休は穂鷹の足にすり寄る。
優二「早いなあ、満。それと開店前に一番客か。おはようございます」
穂鷹「!」
  優二の顔をまじまじと見つめる穂鷹。あまり顔には出さないが、ふと嬉しそうな表情になる。
高島「そいつ、誰かと喧嘩したらしい。表にぶっ倒れてたんだ」
  穂鷹の首を見る優二。
優二「相当強く殴られたな。喧嘩じゃなくて、一発KOだ」
高島「ほい、朝のミルクと、コーヒー」
高島は利休の手前にミルクの入った皿を置き、テーブルにはコーヒーカップを置く。
利休はミルク、穂鷹はコーヒーをいただく。
穂鷹「…。こういう店でコーヒーをいただくの、何年かぶりです」
高島「変な奴だな、居酒屋があるー、とか、コーヒーが何年かぶりだー、とか」
穂鷹「だって、分断があってから、目に見えて減っていきましたよ。こういう店は」
優二「君、どっから来たの?」
穂鷹「僕は会社に居たんです。いきなり殴られたんです。そしたら今はこんなとこにいる。どこですか?夢ですか?」
優二「ここは離京だよ。表のタブーのね。(猫を指して)ちなみにこいつは利休。いい名前だろう」
穂鷹「そういうギャグ、いらないです」

〇 イメージ(分断、混乱など)
利休N「202X年、世界にCウイルスが蔓延しました。
Cウイルスは今も変異を続けており、医療だけでは足りず、人々はウイルスと共存する形をとって生活しています。
ウイルスを感染させ合わないための、新しい生活様式も定着しました。
ですが、この新しい生活様式に対応したくない人たちも出てきました。
そんな人々が作り上げたコロニーが、いつの間にか街となり、“離京”と呼ばれるようになりました。
東都からすれば離京は不穏分子であるため、その翌年、“一都二制度”として、東都と離京は分断されました。
東都から外食産業はほぼ姿を消し、わずかにしか残りませんでした。
逆に離京は今まで通りの街並みを保っています。
離京は東都にとってのタブーであり、離京もまた東都のCウイルス感染者を差別しています」

〇 メインタイトル

〇 離京・Café-KURATA
穂鷹「僕は東都から出たことないんですよ。なんで、タブーなんかに!?」
優二「聞きたいのはこっちだ。どうやって来たんだ?幽体離脱でもしたか」
高島「一旦死んだんじゃねえか!?」
  笑う優二と高島。
優二「東都と離京をつなぐ道は封鎖されてるからね。体が電子になるとかしないと。行き来は」
穂鷹「…」
  サックスを手にする優二。
優二「では早速お弔いに一曲」
穂鷹「冗談はいい加減に…!」
優二「分かった、分かった。真面目に聞くが、東都はまだ感染者がいるのかい」
穂鷹「…。ひと時よりかは、多くありませんけど」
高島「密。密。密になるな。皮肉だよな。そんなとこにまだ感染者がいるなんて。こっちはゼロだよ。普通に生活してて、一人も出てないなんてさ」
  サックスを吹き始める優二。
  ジョン・コルトレーンの「マイ・フェイバリット・シングス」。
  穂鷹の頭に店のロゴがよぎる。
穂鷹「あの…夢じゃなければ。倉田さんですよね?」
高島「カッフェ・倉田だからな」
穂鷹「ジョン・コルトレーンで倉田って言ったら…」
高島「え?そっち?」
穂鷹「自費出版CDの時から、ずっとファンでした」
  吹きやめる優二。
優二「そりゃ、ありがたい」
高島「物好きがいるんだな」
優二「サックス、やってるのか」
穂鷹「ちょっとかじってます。13歳くらいから」
  優二、握手を求める。
優二「じゃ、開店前の一番客じゃなくて、大事な一番客だ。今日の売り上げは、君の分だけで満足」
穂鷹「それはないでしょ…(ためらいつつ、手を差し出す)」
  握手する二人。
優二「幽霊じゃないな」
穂鷹「(笑)倉田さんこそ、本物なんですか?分断の後から行方不明だったから、東都にとっては幽霊みたいな感じですよ。僕も死んだと思ってました」
優二「俺は東都に戻る気はないね。名前は」
穂鷹「宮内穂鷹です」
優二「俺のことは優二でいいよ。そいつは従弟の高島満だ」
  穂鷹、握手した手を気にする。
  ふいに穂鷹のスマホが鳴り出す。
穂鷹「…(スマホを取り出す)」
  見ると、画面には「白岩正輝専務」の文字。
  覗き込む優二、少し顔をしかめる。
  穂鷹が電話に出ようとしたとき、突然利休がうなり始める。
  利休の体には電子的なノイズが走り、消えかかっている。
  慌てる穂鷹、優二、高島。
白岩『(電話越しに)おい!聞こえてんのか宮内!』
穂鷹「(耳を押さえて)…っ!(電話口で)おはようございます専務、今、電話どころじゃなくて」
白岩『(電話越しに)なんだその口の利き方は?』
穂鷹「(また耳を押さえ)申し訳ありません。猫が大変なんです」
白岩『(電話越しに)猫!?』
  苦しむ利休。体の消失は止まりそうもなく、オロオロする優二と高島。
高島「これってまさか…」
優二「神隠し一歩手前だ」
穂鷹「この店に、パソコンはありますか?」
高島「え!?あ、ああ、あるけど」
穂鷹「お借りしたいのですが」
高島「こんな時にパソコンやってる場合か!?」
穂鷹「いいから!早く対処しないと!」
  顔を見合わせる優二と高島。
  高島が急いでノートパソコンを持ってくる。
  穂鷹は手早く自分の管理画面にアクセスする。
高島「それ…不正アクセス…?」
  穂鷹は気にせずプログラムコードを打ち込んでゆく。

〇 東都・newm本社(回想)
  newm本社内のパソコン。
  画面に映る、神隠し被害者一覧表。

〇 同(回想戻り)
穂鷹「倉田さん、SNSの、newmというアプリ、使ってますか」
優二「ああ」
穂鷹「…(やっぱりな、という顔)」
高島「お前、社員か!?」
穂鷹「(構わず作業を続ける)」
  利休は、床に膝をついた優二の腕に、抱かれている。
  その利休が、少しずつ女の子の姿に変わっていく。
  穂鷹が熱心にコードを打ち続けていくうちに、利休の体は12歳くらいの少女の姿になる。
高島「神隠しじゃなくて、化け猫変化(へんげ)か」
優二「そうじゃない。そうじゃないが…」
  穂鷹の方を見る優二。
穂鷹「神隠しの一時的な応急処置です。体が消えないための」
高島「アバターかよ」
  優二、newmのアプリを開く。
  そこには利休の写真への悪口が書き込まれ、今も増えている。
優二「気持ち悪いな」
高島「猫にまで誹謗中傷するんだな」
優二「こんなのは今日が初めてだが」
白岩『(電話越しに)宮内!いい加減にしろ!今日出勤じゃないのか!?』
穂鷹「(電話に出る)専務申し訳ありません。
今対処終わりました。神隠しが起こったんです。人ではなく、猫に」
白岩『(電話越しに)さっきから猫、猫って何言ってんだ?猫にかまけて無断欠勤か!?』
穂鷹「猫に神隠しが起こったんです。電子化して、消えそうになった。それを食い止めました」
  優二、話を聞きながら「電子化」という言葉に反応する。
白岩『(電話越しに)神隠しと電子化。面白いな。会社にいない方が冴えてるな』
穂鷹「すみません。今日は出社できそうにありません。今、僕離京におりまして」
白岩『(電話越しに)…。冴えてるんじゃなくて、頭がおかしくなったんだな』
穂鷹「おそらく僕も電子化して、たまたま消えずに、こっちに来てるんじゃないかと」
優二「(ぼそっと)幽体離脱の方が、夢あるけどな」

〇 東都・newm本社・会議室(昼)
  テロップ「東都newm」。
  密対策が取られている。
  テレビ会議仕様になっている。
  スクリーンには高島の顔と、社員他、離京novel(ノベル)の会議室が映っている。
  政府の大臣の顔もある。
  スクリーンすぐ下には白岩と、寺門邦彦(58)がおり、会見仕様にテーブルが置いてある。
  社員たちはそのテーブル向かいの椅子椅子に座っている。マスク姿。
  離京novel側と違って、人数はまばら。
  席にいない社員たちは、リモートで参加している。
白岩「えー。うちの社員の宮内が今朝、神隠しに遭った」
  ざわめく衆。
高島『白岩さん違いますよ、こっち、離京に移動して来ちゃったんですよ』
  またざわめく衆。

〇 東都・どこかの建物
  newm本社内会議の様子を、外堀数文(25)が盗聴している。

〇 東都・newm本社・会議室(昼)
  一つ咳払いをする白岩。
白岩「とにかくだ。東都で起こっている神隠し現象だが、今離京でも起こりつつあるようだ。身体の電子化が関係しているらしい」
寺門「白岩さん声が大きいです。そういうわけで、電子化に関してはうちのような企業の協力が必要とのことで、政府からも要請を受けました。
当面は、この東都本社、および離京子会社でもこの問題に一丸となって対処することになりました」
大臣「Cウイルスの問題に加え、今後神隠しは全国に拡がっていく恐れがあります。
なんとしても東都と離京の中で、ここで食い止めなければなりません」
高島「対策本部を立ち上げます。詳細は追ってご連絡します」
白岩「よろしく頼む」
寺門「(ぼそっと)それ。僕のセリフ」
大臣「長らく東都と離京は分断していましたが、今は分断ではなく協力するときです。
お互いに融和し、国難に立ち向かって行きましょう。
封鎖網を本日より解除いたします」
  おおー、と、ざわめく衆。
  「そんなことして大丈夫か?」「あのタブーだぞ?」「また感染者が増えるんじゃ」との小声も。

〇 東都・どこかの建物
  機器を手早く片付け、去っていく外堀。
  ニヤついている。

〇 イメージ(分断から融和)
利休N「Cウイルス禍で起こった一都二制度状態の、東都と離京の分断は一時取りやめになりました。
果たして融和はずっと続いていくのでしょうか。
そして私は、猫に戻ることが出来るのでしょうか」

〇 離京・Café-KURATA(夜)
利休「(穂鷹に)リーダーは君でしょ」
穂鷹「おい。無責任なこと言うな、猫のくせに」
利休「猫で悪いの?」
優二「利休の神隠しを防いだんだ。宮内くん一択だな。俺も」
高島「猫も人間も勝手にいろいろ言ってんじゃないよ!こいつはここの人間じゃないんだぞ!本社に戻って仕事すりゃあいいだろうよ!」
穂鷹「僕はいずれにしても戻る気ですけどね」
利休「そうなの?」
優二「今度、俺のCDやるからさ」
穂鷹「!」
優二「離京に来てから新しくレコーディングしたやつだ。東都では見られないシロモンだぞ」
穂鷹「…」
優二「無事に対策出来たら、一緒にセッションしないか?」
穂鷹「(決めかねている)ていうかカフェで話し合うのは間違ってません?」
  高島、付き合ってられないという感じ。
優二「(呼び止める)満。今、離京では、神隠しに対処出来るのは宮内くんしかいないんだ。それ以外に誰が出来る。
お前、出来るのか?」
高島「う…」
優二「下手したら大勢の人間が消えるんだぞ。
俺もお前も、消えるとも限らない。今消えたら、お前も未練たらたらだろう?」
高島「…」
  穂鷹、電話を掛けている。
穂鷹「白岩専務。社員の宮内です。もう少しこちらに滞在するのを、許可いただけますでしょうか」
白岩「対策リーダーの話か?まぁ、今そっちで対処できるのはお前しかいないしな。上手くやってくれ。そっちのクラウドにファイル送っておくから」
  高島、穂鷹を見る。
高島「白岩さん、声でかいな」
優二「リーダーは」
穂鷹「僕…ですか」
利休「そうね」
  高島、離京newm社長に電話を掛ける。

〇 東都・newm本社・オフィス(夜)
  閑散としたオフィス。
寺門「それ、よろしく」
白岩「了解です」
  白岩、資料を作成。
  フォルダに何か余計なものまで入れている。(という素振り)
  離京newm子会社のクラウドへアップロード。

〇 離京・Café-KURATA(深夜)
  店の奥の部屋。穂鷹、優二、利休。
  甘いもの、お酒類がいろいろ出ている。
  穂鷹は食べるのに遠慮がち。
優二「ところで、病院には行かないの?」
穂鷹「ああ、大丈夫かなと思ってますが」
利休「また、ケガして店に来たりしないでよね」
穂鷹「不吉なこと言わないでくれる?猫のくせに」
利休「猫は勘が鋭いのよ」
穂鷹「優二さんも、なんで離京なんかに住んでるんですか?」
優二「言い方…。まぁ、俺は新しい生活様式にうんざりしてたのもあるけど、白岩と合わなかったんだよ」
穂鷹「声がでかいからですか」
優二「(笑)あいつは正しいやつだよ。でも、なんか合理的になりすぎててつまんなかったんだよ。そっちばっかり目が向いてるだろう?
仕事は楽しかったけど、俺には合わなくてね」
穂鷹「でも。新しい生活様式をしないってことは、密にもなるんですよね。危険だとは考えなかったんですか」
優二「危険だと分かってても、経済だけ押し進めようとするだろう?東都は。こっちの人間は、そうじゃない。
もっと大事なことを見てる奴が多いんだ。
経済だけ回してれば、自分の余計な欲望だけ満たせれば、Cウイルスに感染しようが何しようが後はどうでもいい。東都はそういう人間だらけだ」
穂鷹「離京だって感染リスクは高いですよ。居酒屋とかもこっちに移ってて、東都には今ほとんどないですよ」
優二「それでも、こっちは今感染者ゼロだよ」
穂鷹「…」
優二「経済だけ見てるわけじゃないんだよ。無駄に集まったりもしないし。
離京の奴らはみんな自分の好きなことをやって生きてる。
余計な欲望とかじゃなくてな。
金に豊さを求めるのはもう飽きた奴ばっかりだ。
こっちの方が、環境にも、エコだと思わないか?」
穂鷹「金がなくてもいいんですか」
優二「そら金は欲しいよ。でも有り余るほどはいらないかな。必要最低限あればいい。
このまま合理的に開発だけ進めば、またウイルスは増えてくだろ。そしたら、こっちに住んでた方がどれだけ安全か」
穂鷹「分かり合えそうにはないですね」
優二「そうだな。分断解除にはなったけどな」
利休「ねぇねぇ。穂鷹も、サックスやればいいのに」
穂鷹「え?」
利休「サックス好きなんでしょ。優二とセッションすればいいと思う」
穂鷹「ん…」
利休「それで分断は解除されるよ。たぶんね。少なくともここだけはね」
穂鷹「…」

〇 離京・novel(newmの子会社)・オフィス(日替わり)
  テロップ「novel(newm子会社)」。
  やって来る穂鷹。
  先に来ていた高島が席を案内する。
  ノートパソコンを指して
高島「白岩さんからファイル来てたからな。これ」
穂鷹「了解です」
  席に着くと、隣に溝口功一(40)がやって来る。
溝口「宮内くんだっけ?」
穂鷹「あ、はい。宮内穂鷹といいます。お世話になります」
溝口「大変だよなぁ対策リーダーだなんて。東都の本社の人なんだろ?いやいや頭が上がらんなぁ。よろしく頼むよ」
穂鷹「よろしくお願いします」
高島「ああ溝口、また本社からデザイン案件来てたんだけど、頼めるか?」
溝口「ええ、今日中には上げます」
高島「助かる。宮内、こいつは課長の溝口だ。困ったことがあったらこいつを頼ってくれ。俺は少し席を外す」
穂鷹「了解です」
  高島、去る。
溝口「こんな中でもデザイン仕事はあるのねー。平和なのか有事なのか分からんわ」
  などぶつくさ言って作業に取り掛かる。
  穂鷹、パソコンをいじりだす。
  「対策リーダー用資料」というフォルダをクリック。
  寺門からのビデオメッセージも入っている。
穂鷹「?」
  思わず開く。
寺門『(ビデオメッセージの中で)神隠しの件だが、実は本社パソコンから“神隠しリスト”などのデータが見つかった。
こんなリストは作った憶えがない。
ハッキングの可能性もあるし、神隠しは人為的に操作されている現象かもしれん。どうか心して掛かってくれ』

〇 東都・newm本社・オフィス(回想)
  冒頭の、何者かに殴られた瞬間。
  神隠しリストの画面。
  去っていく者の後ろ姿。

〇 同(回想戻り)
穂鷹「…」
  対策リーダー用ファイルの中身に次々に目を通していく。
穂鷹M「(自分を殴った相手を思い浮かべて)
アイツはうちの社員なのか?
ハッキングされるほどシステムは甘くないはず。だとしたら社長だってこんなん撮って、呑気に構えてる場合じゃないのに」
  溝口がぶつぶつ言いながら作業をしている。
  それを横目に、穂鷹は資料を作成しながらEnterキーを押す。
社員A「あれ、溝口さん、どうしたんですか?」
溝口「え?」
  穂鷹も溝口の方を見ると、溝口の体は消えかかっている。
穂鷹「!」
社員B「きゃあ!」
溝口「はっ!?え、あ、どうなってんだこれ!?」
  溝口のパソコンを見ると、何やらプログラムの羅列が延々と起動している。
穂鷹「攻撃されてる…」
  穂鷹は溝口のパソコンと対決を始める。
穂鷹「こっちの手を読んでいる…?」
  高島、戻って来る。
高島「おい!どうした!」
社員A「み、溝口さんが…」
  溝口の電子ノイズは少なくなっているが、体は消えそうだ。
穂鷹「高島さん、ウイルスです。ハッキングです」
高島「発信元は?」
穂鷹「本社です」
高島「なに!?おい、連絡しろ!」
  溝口は社員の腕に抱かれ、息苦しそうである。
  徐々に体の透けもなくなってくる。
  社内は東都newm本社と連絡を取ろうとしどろもどろ。
社員B「元に戻りました…」
穂鷹「え、でもこっちはまだ止まってませんよ」
高島「(電話口で・やっと繋がった)もしもし!緊急です!」
  溝口の容態は安定しているが、パソコンのウイルスは延々続いている。
  穂鷹、考え込む。

〇 同(夜)
  溝口のパソコンの異常は止まっている。
  穂鷹は椅子にもたれかかって、ぐったりしている。
溝口「宮内くん、すまなかったね」
穂鷹「いえ、溝口さんも」
溝口「課長のくせにさ、こういう分野一番苦手なんだよね(笑)ハッキングとか。だから狙われたのかもな」
  高島、やって来る。
高島「本社でもウイルスの出処が掴めなかったそうだ。一体どうなってんだ!」
穂鷹「(ぐったりしながら考え込む)」
高島「溝口、お前病院行ったんじゃなかったのか」
溝口「宮内くんがこんなんなっちゃってたら、心配でオチオチ行けませんよ」
高島「優先すべきはまずお前の体だろーが。もう帰れ、明日は病院行け」
溝口「すみません。ご迷惑お掛けします」
  溝口のスマホに着電。溝口、出る。
  電話に出ながら歩きだす。
穂鷹「僕ちょっと、途中まで送ってきます」
高島「おう」
  溝口と穂鷹、一緒に歩きだす。
  電話をしまう溝口。歓談。
  カウンターでは受付嬢が忙しそうである。
  出口に差し掛かったとき、入れ替わりで外堀が入って来る。
  穂鷹は気付かない。

〇 道(夜)
  溝口をタクシーに乗せる穂鷹。
溝口「ありがとう、明日はたぶん休むよ。
案件は保留。病院行けって言われたし(笑)」
穂鷹「その方が良いです。お大事にしてください」
溝口「今度、飲み行こーな」
穂鷹「(苦笑)」
  溝口を乗せたタクシー、去る。

〇 離京・novel・オフィス内(夜)
  穂鷹、オフィスに戻って来る。
  すると高島と外堀が揉めている。
高島「なんなんだ、お前は!」
外堀、穂鷹に気が付く。
外堀「おーおー、久しぶりだなぁ。元Cウイルス患者さん。元気みたいだな」
穂鷹「外堀…」
外堀「(穂鷹を指さし、高島に)Cウイルスだよ、Cウイルス。巷で噂の。オタクらの嫌いな、元患者さんですよ」
高島「!」
穂鷹「やめろ」
外堀「元患者で、元犯罪者。だろ?」
穂鷹「!」
高島「ちょっと待て!おい、どういうことだ宮内!?」

〇 東都・穂鷹のアパート(回想・5年前)
  自宅で一人、寝込んでいる穂鷹。
  大学生くらいである。
  ベッドの傍らにノートパソコンを置き、作業をしている。
  プログラムの構築をしているようだ。
  その時、警察が対ウイルス防具服を着て押し入ってきた…

〇 同(回想戻り)
穂鷹「(頭を振って)高島さんには関係ないです」
高島「おい!!」
外堀「こいつは俺の友達なんですよ。しかも、昔々逮捕されたことがある、ね。バイトにも行けなくて、小遣い稼ぎのはずが、さあ大変…!」
穂鷹「…」
外堀「神隠しは、コイツが起こしてるも同然なんですよ」
穂鷹「いい加減にしろ」
外堀「構築したのはお前だろ?あのウイルス?離京でも悪いことしたいんだろ?ん?」
  外堀、穂鷹に詰め寄る。
  耳元でささやく。
外堀「神隠しには、お前のウイルスが一役買ってんだよ」
  穂鷹、外堀を引き離す。
外堀「Nウイルスとでも言おうかね。構築ご苦労さんでした」
穂鷹「あれはもうこの世にはないはずだ。残ってないはずだ!俺が消した!全部!」
外堀「じゃーなんで神隠しは起こってるのかなー?昔の悪い癖がうずいちゃったんじゃないのー?」
穂鷹、外堀に向かっていくが、逆に蹴倒される。
高島「宮内!」
外堀「いい子ちゃんヅラしてんじゃねえよ!気に食わねんだよ!お前みたいなのがのうのうと生きてんのが」
高島「警察呼ぶぞ!(スマホを取り出す)」
外堀「呼べ呼べ!ついでにコイツも再逮捕だろ。あっはっは!」
  去っていく外堀。
  穂鷹、また傷が出来ている。
高島「宮内…」
穂鷹「…」

〇 離京・Café-KURATA(夜)
利休「やっぱりまたケガしてきた」
穂鷹「…」
優二「さすが俺の猫だな。勘が鋭い」
高島「言ってる場合か」
  高島は穂鷹を手当てしてやる。
高島「離京に来る前、殴ってきたのもアイツか?」
穂鷹「憶えてないんです。一度も社内で見たことないし」
高島「アイツとどういう関係なんだ」
穂鷹「知り合いです」
  しばし沈黙。
高島「お前、本当は何者なんだ」
穂鷹「!」
優二「満!」
高島「…いや。なんでもない。忘れてくれ。すまん」
穂鷹「…」
優二「今日は、とにかく休め。な?」
  穂鷹、うなずく。

〇 同
  静まり返った店内。
  店の奥の生活スペースで、優二、利休、穂鷹が寝ている。
  高島は一人、店内のカウンターで検索を掛けている。
  「外堀」「宮内穂鷹」。
  検索結果に顔がゆがむ高島。
  そっと起きて、その様子をうかがう穂鷹。

〇 離京・ novel・オフィス(数日後)
  テロップ「数日後」。
  社内は宮内の話題で持ちきりである。
  「アイツ、元Cウイルス患者なんだって」「そんな奴を対策リーダーにするなんて、頭おかしい」
  社員たちの、穂鷹に対する誹謗中傷が飛び交っている。
  穂鷹がオフィスに入って来ると、音量は小さくなるものの、ヒソヒソは続いている。
  出社していた溝口が高島に近寄る。
溝口「高島さん、宮内くんてば元Cウイルス患者だったらしいですよ。知ってましたか?」
  高島、狼狽する。
溝口「またいつ感染するとも限らないですよ。大丈夫ですか、こんなのをリーダーにしてて。いつうつされるか分かったもんじゃない」
  ヒソヒソは続く。
  穂鷹、耐えきれず、高島に
穂鷹「逮捕のことも、言ったんですか」
  高島、ぎょっとする。
  穂鷹、オフィスを飛び出す。

〇 同・廊下
  足早に歩く穂鷹。
  追う高島。
高島「おい、待て」
穂鷹「僕、やっぱり帰ります。東都に」
高島「そんな急に言われても、対策リーダーはどうなる?」
穂鷹「東都に戻ってもそれは出来ます。元患者の僕には、この街は合わないんですよ」
高島「合う合わない言ってる場合じゃないだろ!」
穂鷹「こんな街、早く出ればよかった。こんなに酷い街だとは。言いふらされるとは」
高島「俺が言ったっていうのか!?」
穂鷹「逮捕っていうのはね、外堀に利用されたんです。意志を持って動くウイルスというのを作ってしまったんです」

〇 東都・穂鷹のアパート(回想・5年前)
  警察に連行される穂鷹。
  ノートパソコンから様々なプログラムを取り出されている。
警察官「このウイルス、自分で動いてるぞ…」

〇 同・廊下(回想戻り)
穂鷹「俺は元犯罪者です。こんな俺がnewmに入社できたのは白岩さんのお陰だけど、でも事実が知れたら、退社するしかないでしょう。別の人にやってもらうしかないんじゃないですか。リーダー」
高島「ふざけるなよお前!丸投げするってのか!」
穂鷹「(苦笑)僕が、神隠しのウイルスの根源を作ったんですよ。そんな奴、信じられますか、今更。ねぇ、高島さん」
  穂鷹、去る。

〇 離京・Café-KURATA
  穂鷹、荷物をまとめている。
利休「ねぇ」
  穂鷹、答えない。
利休「ねぇってば」
  やっぱり無視の穂鷹。
優二「出て行くのか、お前」
穂鷹「はい」
利休「リーダーはどうするの」
穂鷹「俺は元々東都の人間だから」
利休「それは知ってるよ」
優二「俺たちを見捨てるのか」
  穂鷹、一瞬動きが止まる。
穂鷹「あっちへ戻っても、神隠し対処には協力しますよ」
優二「辞めるつもりなんだろ、会社ごと」
穂鷹「…(なんで分かるんだ、という顔)」
優二「元患者だってことは気にしなくていいじゃないか。今は感染してないんだし」
穂鷹「…」
優二「俺たちが差別してたとしても。お前は俺たちを助けてくれただろう。東都のお前が、離京の俺たちを差別していても」
穂鷹「でも、俺は元犯罪者なんですよ。俺が神隠しの原因を作ったかもしれないんですよ?そんなこと、白岩さんに言えない」
優二「お前は作っただけで、何もしてないじゃないか。逃げるのか」
穂鷹「…」
優二「不起訴だったんだろう。一応まともに生きてるじゃないか。ウイルスだって削除したんだろう。お前が残しておくわけない」
穂鷹「残ってたんですよ」
優二「だったら、また消せばいい。リーダー」
穂鷹「…」
優二「リーダーが消えたら、どうしようもない。仕事終わったら俺のCD聞くんだろう。セッションするんだろう」
穂鷹「…そっち?」
利休「そっち」
優二「約束破るのか。破って殴られて終わりなのかお前は」
穂鷹「…」
優二「殴られるために来てるようなもんだからな、今は。この店には、セッションのために来てほしい。これ以上ケガしたら本当に、ここじゃなくて病院行けよ」
利休「人間なのに、猫より病院行かないよね」
  穂鷹、少し笑う。

〇 離京・novel・オフィス(日替わり)
  テロップ「翌日」。
  出社する穂鷹。
  ざわつく社内。
高島「来たのか。東都に帰ったんじゃないのか」
穂鷹「ハイ」
高島「対策リーダーを他の社員にやってもらおうと思ってたんだが」
溝口「(穂鷹に)お前じゃなくても、代わりはいくらでもいるよ。技術はお前のを真似ればいいんだろう?俺は無理かもしれないけどな」
  笑う社員たち。
穂鷹「ええ。でも、俺倉田さんとセッションするまでは、ここにいると決めました」
高島・溝口「セッション!?」
穂鷹「対処できるのは、僕しかいませんし」
高島「そりゃそうだけど、セッションってなんだよ」
穂鷹「いろいろ責任もあるんで。落とし前つけないと」
高島「お前、俺がいろいろ噂広めたと思ってるんだろう。そんな奴と仕事できるのか」
穂鷹「いえ。高島さんは変な噂を流すことはないはずです」
高島「…」
穂鷹「高島さんじゃないです。広まったとすれば、別の人間の口からです。仕事に瑕をつけたくないはずだ、あなたなら」
  少し考える高島。ざわつきは収まらない。
高島「分かった。大丈夫そうだな」
溝口「!?」
高島「続投。よろしく頼むぞ。もう辞めるとか言うな。迷惑だからな。それだけだ。以上」
穂鷹「ハイ」
  ざわざわするなかで、席に着く穂鷹。
  資料を出しながら
穂鷹「神隠しは、人為的に起こる。僕が以前作ったウイルスがベースになっていることは間違いないです。あとはそれを、どう作用させて、人々を消すに至るのか。前々から思ってたんですが、下手をするとnewm全体が関わっている問題です」
高島「さすがだな。そうこなくちゃ」
  小言も聞えるが、徐々に対処に当たり始める社員たち。
穂鷹「人体の電子化現象も関わってきます。不可解な点は何一つ掴めていない」
高島「(社内全体に)今回のウイルスの構造と作用、ならびに、人体電子化に関して、徹底的に調査!」
一同「ハイ!」
  少しずつ団結を始めるなか、溝口だけは納得いかない表情。
  その時、高島の体に電子ノイズが走り始める。
  高島、自分で異変に気付く。
高島「!!」
社員C「高島さんが!!」
  全員、対処に当たるも、止まらない。
  穂鷹、動揺の中で考えを巡らせる。

〇 穂鷹の頭の中のイメージ(回想)
  「神隠しには、お前のウイルスが一役買ってんだよ(外堀のセリフ)」
  「体が電子になるとかしないと無理だ(優二のセリフ)」
  「人為的」など、いろんなことを言ったり言われたりする過去の記憶が浮かんだりしながら、利休が神隠しに遭ったときのイメージが浮かぶ。
  SNSである「newm」のページに、利休への誹謗中傷があったこと。

〇 同(イメージ戻り)
穂鷹「高島さん!newmです!」
高島「(苦しみながら)え?」
穂鷹「アプリのnewmを開いてください!早く!」
  社員が高島の代わりにアプリを開く。
  するとそこには、高島への大量の誹謗中傷が。
  秒で増え続けている。
社員A「な、なんだこれ…」
  誹謗中傷が増えるごとに、高島の体にノイズが増えていく。
穂鷹M「人間にアバターは使えない」
  誹謗中傷を片っ端から消しにかかる穂鷹。
  プログラムを駆使する。
  だが、それに追いつかないくらいどんどん誹謗中傷は増えていく。
  間に合わない。
溝口「(思わず)削除しろ!アカウントを!」
穂鷹「?」
溝口「早く!」
  穂鷹はプログラムからハッキングし、高島のnewmアカウントを強制削除。
  すると高島の体のノイズは消え、高島は社員の腕の中でぐったり気を失った。
社員一同「止まった…」
  穂鷹、溝口の方を見るが、彼の姿はない。
社員C「おい!高島さんのパソコンから、ウイルスが見つかったぞ!」

〇 離京・novel(回想・数日前)
外堀「Nウイルスとでも言おうかね。構築ご苦労さんでした」

〇 同(回想戻り)
穂鷹「Nウイルス…newm…」
  何か、掴んだ様子。
社員C「高島さんが、ウイルスを仕込んでたんじゃないのか?」
  ざわざわする社内の中で、一人黙考する穂鷹。

〇 離京内の病院(日替わり)
  高島が、病院のベッドで寝ている。
  穂鷹と優二が、病室に見舞いに来ている。
高島「(弱々しく)病院、お前より先に来ちゃったな、俺」
穂鷹「高島さん…」
  高島、体力が続かず、目を閉じる。
優二「先を越されたな。お前にとってはよかったかもしれないが。満にとっては最悪だ」
穂鷹「いま、高島さんが首謀者じゃないかって、疑いで持ち切りなんです」
優二「どいつもこいつも」
穂鷹「でもそれなら、高島さんが自分で自分に神隠しを起こしたことになります。
必ず外部的な要因があって神隠しは起こっていた。
プログラム起動がどこかで起こっていないとおかしいですから。
高島さん自身が自分で起こしたとは考えにくいんです」
優二「利休の時もそうだったしな」

〇 離京・novel(回想)
溝口「お前じゃなくても、代わりはいくらでもいるよ。技術はお前のを真似ればいいんだろう?俺は無理かもしれないけどな」
  × × ×
溝口「課長のくせにさ、こういう分野一番苦手なんだよね(笑)ハッキングとか。だから狙われたのかもな」

〇 同(回想戻り)
穂鷹「まだ、予想の範疇ですが。犯人が少し分かってきたかもしれません」
優二「!」
穂鷹「神隠しの、犯人」

〇 東都内の個人バー(夜)
溝口と外堀が来て、飲んでいる。
    外堀が溝口をたしなめている。

〇 離京・Café-KURATA(夜)
  穂鷹、優二、利休。
  店の奥に集まっている。
  寝巻で会議である。
穂鷹「利休が神隠しに遭ったとき、今回の高島さんのときも、誹謗中傷が出ていました。ウイルスが稼働するのは、誹謗中傷が出ているときだと思うんです」
優二「newmのアプリを使ってる奴らは感染する可能性があるってことか」
穂鷹「そうですね。高島さんのnewmアカウントを削除したときに、神隠しも止まりましたから」
優二「じゃあ…」
穂鷹「おそらく」
優二「いよいよ合理が悪になってきたな」
穂鷹「倉田さん、俺と組んでくれますか」
優二「サックスじゃないセッションだな。いいよ」
利休「じゃあもうサックスではセッションしなくていいんじゃない?」
  穂鷹と優二、苦笑。

〇 東都newm本社・オフィス
  歩いている人間たちが、突然大量に消え始める。
  辺りの景色に動揺する者、素通りする者、嘆く者。
  パソコンからスクリーンにそれらの映像が映し出されている。
  それを茫然と見ている白岩、社長、社員たち。

〇 東都と離京の間に置かれた、封鎖網の前
  穂鷹と優二が、防護服とガスマスクに身を包んで立っている。
穂鷹「一応、解除はされてますね」
優二「行き来が可能ってことだな。今は」

〇 東都・newm本社・オフィス
  一人の社員が、駆け込んでくる。
社員「大変です!」
白岩「?」
受付嬢「ちょっと、ちょっと困ります…!」
受付嬢に止められながら、乗り込んでくる防護服姿の穂鷹と優二。
  二人は呼吸がかなり荒い。
穂鷹「僕はここの社員ですから、怪しい者ではありません」
優二「怪しいはともかく、暑い」
寺門「ちょっと!なんなんだ君たちは!」
  穂鷹、ガスマスクを取る。
穂鷹「社長、白岩専務、お久しぶりです」
寺門「!」
白岩「おお!宮内!そんなご大層な恰好で
  帰って来るとはな。でも、対策リーダーはどうしたんだ?」
穂鷹「今は緊急事態なんで」
白岩「気が付いてたか。見ろ、今、神隠しがどんどん起こっている」
  映像を指し示す白岩。
白岩「対策になんとか努めてきたつもりだ
ったが、ここまで拡がってはどうしようもないのかもな」
穂鷹「…」
白岩「(苦笑)諦めるつもりはないよ。ところで…」
穂鷹「ああ、こちらは」
  ガスマスクを外す優二。
優二「白岩、久しぶりだな」
白岩「!!」
優二「いやはや、専務さんに成りおるとは、それもまたご大層な話だな」
白岩「…」
穂鷹「緊急事態なので、手短に説明します」
  穂鷹、持ってきたノートパソコンを開いて、起動する。
穂鷹「対策リーダーとして離京でいろいろ調べていましたが、この神隠しはどうやら、当社由来のものであることが分かりました」
  オフィスの影の方から、外堀が出てくる。
穂鷹「newm由来のウイルス、だからNウイルス。
Nウイルスは、僕がかつて作ったウイルスが元になっています。
僕の作ったウイルスは、意志を持ったものでした。
ウイルスというよりは、AIみたいなものですね」
  外堀、じりじり近づいてくる。
  誰も気にしていない。
穂鷹「改良されたこのNウイルスは、体を電子化させる作用を持っています。
感染すれば体が電子化し、誹謗中傷によって稼働するんです。こんな風に」
  穂鷹、Enterキーを押す。
  すると後ろから近付いていた外堀の体が消え始める。
  ざわめき動揺する社内。
外堀「やめろ宮内!何する気だ!」
  寺門、動揺している。
穂鷹「(外堀を振り返り)大丈夫です。これはダミーですから」
  それでも外堀の体のノイズは消えない。
穂鷹「Nウイルスは、SNS上の別人格に作
用します。
今回は、このnewmアプリをインストールした人がターゲットになった。
別人格というのは、アカウントを作った時点で出来るものであり、その人の周辺も影響を受けます。写真でも、動画でも」
優二「別人格が誹謗中傷を受ける。すると現実の自分の、心も傷つくだろう?無意識に。
内容を見ようが見まいが、誹謗中傷がそこに載った時点で、別人格には傷が付く。そこをウイルスは狙っている」
穂鷹「体が電子化されてしまうと、誹謗中傷が載った時点で、現実の体を蝕むようになるんです」
  newmアプリを開く穂鷹。
  外堀の鍵アカウントへ、大量の誹謗中傷が書かれたページが映っている。
穂鷹「そもそも、どこからNウイルスに感染するのかというと。
それは、newmにアカウントを作った時点で、感染するんです。
つまり、僕たちのほとんどは、感染していることになります」
  動揺し、一人一人怯え始める社内。
穂鷹「アカウント作成時点で感染させる。そんなことが出来るのは」
寺門「わ、わたしは何も知らない!君たちは!何の根拠があってこんな…!」
  優二、社長を通り越し、白岩の肩に手を置く。
  白岩、硬い表情を崩さない。
優二「一緒に起業したときよりも、更に合理的になったな。残念だよ」
  穂鷹、なにやら打ち込み、Enterキーを押す。
  すると外堀への誹謗中傷は消え、外堀の体は元に戻る。
穂鷹「さっき、ダミーと言いましたが、こっちが本番のダミーなんですよ」
  穂鷹が何か打ち込むと、人々が消える映像が徐々に乱れ、プツンと消える。
白岩「!」
  寺門、呆気に取られる。
穂鷹「無作為に、大量に誹謗中傷を送り込んで、Nウイルスを稼働させたつもりだったみたいですが、先回りして、ダミーとすり替えておきました。
実際には、この大量神隠しは起こっていませんよ。白岩さん」
  寺門、白岩を見る。
白岩「…」
  外堀、逆上して穂鷹に飛び掛かる。
  穂鷹も食って掛かる。
  その様子を横目に
優二「落ちたな、白岩」
白岩「落ちちゃあいないさ。俺は正しいことをやってるに過ぎない。一緒に起業したときだって、正しかっただろう?本当は、newmだってお前と一緒にやりたかったんだ」
優二「正しいことなんて、善かどうか分からないだろう」
白岩「(笑いながら)馬鹿な奴らが多すぎるんだよ!だから、そんな無駄な奴らは消えた方が、いいに決まってる」
  白岩の大声に、穂鷹と外堀も動きが止まる。
優二「お前…」
白岩「Cウイルスはなくならない!感染者
は増える一方だ!
Cウイルスにかかる馬鹿野郎たち、SNSの別人格でしか人の揚げ足を取れない馬鹿野郎たち、馬鹿ばっかりだ!
無能だらけだ!
そんな奴らを手っ取り早く排除できるSNS型ウイルスなんだよ。俺のnewmはな」
寺門「白岩くん!」
白岩「経済を回すのに、そんな奴らが居れば効率だってダダ下がりだ。効率的な奴だけが生き残ればいい。あとはどうでもいいんだよ!」
  優二、白岩を殴りつける。
優二「人間として落ちたってことだな。これだから東都は嫌いなんだ!俺は絶対離京を離れないからな!」
白岩「ああ!こっちだって絶対融和なんかしたくないさ!なぁ!社長もそうでしょう!」
  社長、社員たち、どうしていいか分からない。
白岩「分断でもなんでもしろってんだ。だがな、俺も盲点だったことがある。外堀に神隠しリストの管理を任せたことだ。お陰で宮内に見つかる羽目になっちまった」

〇 東都・newm本社・オフィス(夜・回想)
  神隠しリストを見つけた穂鷹。
  入って来る外堀。
  穂鷹が慌てて去ろうとすると、遠慮なく殴りつける。

〇 同(回想戻り)
  穂鷹、もう一発外堀を伸して、立つ。
穂鷹「白岩さん。そんなに合理的なことが、大切なんですか」
白岩「当たり前だ。お前も離京に行って、馬鹿どもに染まってきたのか」
穂鷹「でもそれで、人々を消すっていうのは、正しいことなんですか」
白岩「ああ」
穂鷹「…」
白岩「大詰めは失敗したが、実際に神隠しは今も起こってるよ。ほら」
  白岩、起き直り、ダミー出ない方の映像を出す。
  大量ではないものの、人々が消えかかり苦しそうにしている。
寺門「や、やめてくれ…!」
穂鷹「これが、正しいことなんですか。人々が苦しむのを見ることが」
白岩「…」
  溝口がいつの間にか来ている。
溝口「離京の奴らはのうのうと生きてて我
慢ならなかったんだよ!だから…」
穂鷹「…」
溝口「俺は世界を変えたかったんだ」
  白岩の元に近寄る溝口。
穂鷹「その割に、僕にヒントを与えてくれましたね」

〇 穂鷹の頭の中のイメージ(回想)
  溝口が神隠しに遭った時の一幕。
  穂鷹のプログラム攻撃をかいくぐり、負けじとキーボードを打っているのは、白岩である。
穂鷹「あれは、セキュリティ突破のためだったんですね。(溝口に)あなたを囮に使って」
  × × ×
  高島が神隠し手前になった時の一幕。
溝口「(思わず)削除しろ!アカウントを!」
穂鷹「?」
溝口「早く!」

〇 同(回想戻り)
溝口「本社の白岩さんなら、世界を変えてくれると思ったんだ。でも、人が消えるのは怖くて…」
穂鷹「まだ正常な心があったんですね。あなたには」
  外堀、天井を仰いだまま穂鷹をにらみつける。
穂鷹「人間、のうのうと生きてて、何が悪いんですか。
合理的なものしか見えないアンタらの方がよっぽど我慢ならない」
  穂鷹、溝口を殴りつける。
  白岩が俯いている。
  外堀、フッと笑う。

〇 東都内の個人バー(回想)
  外堀と溝口が飲んでいると、3人目が入って来る。白岩だ。
  白岩、外堀、溝口の三人で酌み交わす。
  グラスを合わせ、チンッと音がする。

〇 同(回想戻り)
利休N「SNSアプリnewmのアカウントを持つ人は、相当数存在しました。
それは、体が電子化してしまった人も相当数いたことを意味します。
世界的なSNSではなく、国内中心のものであった為、このSNS型ウイルスnewmは、アプリのみならず企業ごと姿を消すことになりました」
  白岩、警察に連行されている。
  外堀、溝口も後に続く。
利休N「白岩は、外堀から穂鷹が作ったウイルスの原型を得て、SNS型ウイルスnewmの製作を決意しました。
ちょうど、東都と離京が分断し、一緒に起業し相棒だった優二が、白岩の元から離れていった、少し後に」
  穂鷹と優二、そして大勢の社員が、警察に連行される三人を見送っている。
利休N「体の電子化は、治すにも解明されていない点が多いとされています。
その為に特別な対策が取られました。
それは、とにかくSNSをやらないで、体を休ませること。
東都と離京の人々は、子供も大人も、長い夏休み期間を設けることとなりました。ある一部を除いて」
  オフィスは、片付けでごった返し、穂鷹と優二も手伝っている。
  寺門、目が潤んでいる。

〇 離京・Café-KURATA(日替わり)
  人がまばらな店内。
  穂鷹と高島が接客や皿洗いなどに立ち回り、優二がコーヒーを淹れている。
年配の男性客「どこも休みで、ここしか開いてなくてねぇ」
優二「うちも年中開店休業みたいなものですからねぇ」
  年配の男性客と優二は笑っているが、作業をしている穂鷹と高島は少々ムッとしている。
  利休は、客の隣の座席で丸まっている。猫の姿に戻っている。
年配の男性客「利休ちゃんは、良い猫だねぇ」
優二「ついこの間まで、こいつ人間だったんですよ」
年配の男性客「?」
高島、カウンターから
高島「あれあれ、電子化が治ってきたって意味です!」
年配の男性客「あー、そういうことなの」
  穂鷹、思わず微笑。

〇 同(夜)
  穂鷹と優二、店の奥でサックスを持って語らっている。
穂鷹「わざわざ開店する必要あるんですか?折角給付金だって継続して出てるし、政府も大盤振舞いなのに」
優二「開店するのが趣味みたいなもんだから。この札束はもうすぐ紙切れになるだろうな」
穂鷹「(趣味かよ…と、ちょっと怪訝な顔になりつつ)まぁ…インフレもインフレですからね」
優二「紙切れよりも、俺はジョン・コルト
レーンだな」
  優二はサックスで、ジョン・コルトレーンの「ラブ・シュプリーム」のフレーズを吹く。
  穂鷹、一緒に吹こうとするが、難解なメロディと吹き方になかなかついていけない。
  優二は吹くのを止めて
優二「これが好きなんて、それでよく白岩の会社にいたな」
穂鷹「白岩さんとは真逆だから好きなんです。離京に染まっちゃったのかもしれません」
  優二、笑う。
  二人、一緒にサックスを吹く。

〇 同(日替わり)
  穂鷹と優二は一緒にサックスで演奏をしている。
  曲目はジョン・コルトレーン作品。
  看板には「無料ライブ」の文字。
  店内は密ではないが、店外で演奏を聴く人も。
  静かに、拍手で盛り上がっている。
穂鷹N「僕は、離京に残ることになりそうです。
利休は猫に戻ったので、僕が説明しますが、東都と離京の分断は、再び閉じられ、今後も続きそうです。
離京は全然合理的じゃないし、経済的にも東都に比べたら劣っています。
ですが、一応立派な都会ですし、この街の人は心が豊かなので」

END

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