ヴァンパイドル ホラー

「アイドルなんて、虚像だ」 始まりは、新人アイドル・佐野琴里(17)が、10代と変わらぬ美を保ち続ける現役地下アイドル・藤島千花(34)と初めて出会った対バンライブ。琴里は「他のアイドルの若さを吸い上げる事で永遠の若さを保ち続けるアイドル(=ヴァンパイドル)」という都市伝説を耳にする……。
マヤマ 山本 3 0 0 09/15
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第一稿

<登場人物>
藤島 千花(17)(34)アイドル
佐野 琴里(17)新人アイドル
長谷川 美月(20)琴里の先輩アイドル
内田 若葉(32)(49)元アイドル
山口 綾奈 ...続きを読む
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<登場人物>
藤島 千花(17)(34)アイドル
佐野 琴里(17)新人アイドル
長谷川 美月(20)琴里の先輩アイドル
内田 若葉(32)(49)元アイドル
山口 綾奈(20)(37)ダンス講師

夏美(20)アイドル
マリエ(24)同
アスカ(22)同
シェリー(20)同
吉川(39)(56)オタク

スタッフ
幻聴A~C 声のみ



<本編> 
○ライブハウス・外観(夜)

○同・ステージ(夜)
   アイドルのライブが行われている。

○同・廊下(夜)
   蛍光灯が点滅する等、薄暗い。
   控室に向かって歩く何者かの視点。

○スマホの画面
   夏美(20)のSNS。控室の様子の写真付きで更新されている。
千花M「恋愛しない、トイレ行かない」

○ライブハウス・控室(夜)
   スマホで自身のSNSを確認する夏美。
千花M「そんな人間、存在しない」

○同・ステージ(夜)
   ステージ上で歌うアイドル達。
千花M「アイドルなんて、都市伝説」

○同・廊下(夜)
   控室に近づく何者かの視点。
千花M「ホラー映画だ、迷信だ」

○同・控室・中(夜)
   スマホをいじる夏美。室内に居たスタッフが部屋を出る。
千花M「名前は芸名、年齢詐称」
夏美「(スタッフに)お疲れ様です」

○同・同・前(夜)
   控室から出てくるスタッフ。
   扉の前までやってくる何者かの視点。
千花M「顔は整形、口パク上等」

○同・同・中(夜)
   スマホをいじる夏美。ノックの音。
夏美「?」
千花M「アイドルなんて、虚像だ」
   恐る恐る扉を開ける夏美。そこに立つ藤島千花(34)。千花の見た目は未成年と間違うほどの若さと、左右にある八重歯が特徴的。
夏美「あ、千花さん。お疲れ様です」
千花「お疲れ~。聞いたよ、夏美ちゃん。先週誕生日だったんだって? (小さな紙袋を渡し)おめでとう」
夏美「え、いいんですか? やった、ありがとうございます」
千花「夏美ちゃん、二十歳だっけ? いいな~、若いって」
夏美「いやいや、千花さんこそ、何なら私より若く見えるじゃないですか」
千花「見えるだけだからねぇ~。夏美ちゃんの若さ、ちょっと貰っちゃおうかな?」
   と言って夏美の体を触る千花。
夏美「ちょっと、千花さんセクハラ~」
千花「え~、いいじゃん……」
   背後に回る千花。
千花「ちょっとぐらいさ……」
夏美「もう、ちょっとだけですよ?」
千花「ありがとう。いただきます」
夏美「?」
   目つきが変わる千花。吸血鬼のように口を開き、八重歯が光る。
千花M「ホラ見ろ見事な、作り笑い」

○メインタイトル『ヴァンパイドル』

○ライブハウス・外観(夜)

○同・ステージ(夜)
   ライブをする佐野琴里(17)、長谷川美月(20)らアイドル達。全員、歯は普通。
    ×     ×     ×
   物販中。琴里と握手する吉川(56)。
吉川「はじめまして。ヨシって言います。新人さんだって?」
琴里「はい。佐野琴里と言います。対バンライブは初めてで……」
吉川「じゃあ、あの噂は聞いた事ないかな?」
琴里「噂?」
吉川「このライブハウス。出るんだって」
琴里「出る? まさか、幽霊とか?」
吉川「ううん。ヴァンパイドル」
琴里「ヴァンパイドル……?」

○(イメージ)同・同(夜)
   ブリブリのアイドル衣装を着てステージに立つマリエ(24)、アスカ(22)、シェリー(20)。
マリエ「マリエです」
アスカ「アスカです」
シェリー「シェリーです。三人揃って」
三人「ヴァンパイドルです」
吉川の声「違う、違う」

○同・同(夜)
   吉川と握手する琴里。
吉川「そういうグループ名のアイドルが出る、って話じゃなくて」
琴里「あ、そうなんですか?」
吉川「むかーしむかし、このライブハウスで……」
   逃げる足音と息遣い。

○(回想)同・廊下(夜)
   逃げるように走る山口綾奈(20)と、歩きながら綾奈を追う内田若葉(32)。両者とも服装はアイドルのステージ衣装。綾奈は年相応な外見、若葉の見た目は未成年と間違うほどの若さと八重歯が特徴的。若葉の顔は、千花によく似た口元の八重歯以外、この一連のシーンではわからない。
若葉「待ってよ~」
綾奈「止めて、来ないで……」
  尚も逃げ続ける綾奈。時折、近くの扉に手をかけるも全て鍵がかかっている。
綾奈「お願い、もう止めて……」
   笑みを浮かべ追い続ける若葉(ただし決して走らない)。
   転倒するも、必死に立ち上がり、また逃げる綾奈。「備品室」と書かれた部屋の扉に手をかけると、開く。
綾奈「!」
   逃げるように中に入る綾奈。

○(回想)同・備品室・中(夜)
   掃除用具やロッカーなどがある、倉庫のような部屋。
   入ってくる綾奈。扉の鍵をかけようとするが、鍵自体の不具合か、綾奈の焦りのせいか、とにかく鍵がかからない。
若葉の声「隠れてないで、出ておいで~」
   若葉の足音が近づき、さらに焦る綾奈。周囲を見回す。
    ×     ×     ×
   扉が開き、入ってくる若葉。周囲を見回すも、誰もいない。笑みを浮かべ、出ていく若葉。
   扉が閉まり、足音が遠ざかると、ロッカーの中から姿を見せる綾奈。
綾奈「……行った?」

○(回想)同・同・前(夜)
   恐る恐る扉を開ける綾奈。誰もいない。
綾奈「(息を吐き)助かった……」
   扉を閉める綾奈。いつの間にかその背後に姿を現す若葉。
   気配を察し、恐る恐る振り返る綾奈。笑みを浮かべる若葉。顔が引きつる綾奈。
綾奈「(叫び声)」

○同・トイレ(夜)
   洗面台の前に並んで立つ琴里と美月。
美月「(叫び声)」
   耳をふさぐ琴里。
美月「っていうのが、このライブハウスに伝わるヴァンパイドル伝説」
琴里「それで、血吸われちゃうんですか?」
美月「ううん。吸われるのは血じゃなくて、若さだって」
琴里「若さ?」
美月「そう。吸われた側は一気に老け込んで、吸った側は永遠に若くいられる。ヴァンパイア×アイドルで、ヴァンパイドル」
琴里「それって、本当の話なんですか?」
美月「信じるか信じないかは、琴里次第」
琴里「なんだ、都市伝説ですか」
美月「……でもね、琴里。ダンスの綾奈先生って、何歳だと思う?」
琴里「え?」

○(回想)ダンススタジオ
   綾奈(37)のレッスンを受ける琴里、美月らアイドル達。綾奈は実年齢より一〇歳近く上に見える。
綾奈「5、6、7、8。ほら、琴里。遅れてるよ」

○ライブハウス・トイレ(夜)
   洗面台の前に並んで立つ琴里と美月。
琴里「え? 四〇代半ばか……後半くらいですか?」
美月「今年三七歳」
琴里「え!?」
美月「何でも昔、ヴァンパイドルに襲われて、一気に年取っちゃったとか」
琴里「……」
美月「(意地悪そうに笑いながら)琴里は若いから、気をつけなよ~」
琴里「もう、止めて下さいよ~」
   と言って出ていく琴里。

○同・控室・前(夜)
   歩いてくる琴里。
琴里「もう、あんな話されたら、恐くて一人でトイレにも行けな……」
   扉を開ける琴里。千花が夏美から若さを吸い上げる場面に出くわす(尚、千花と夏美は扉に背を向けている状態だが、鏡越しに正面の様子は琴里から見える)。
琴里「あっ……」
   鏡越しに千花と目が合う琴里。不敵に笑う千花。
琴里「(驚き)!?」
   慌てて扉を閉める琴里。
美月の声「あ~、それ千花さんだね」

○ダンススタジオ
   並んで座る琴里、美月らアイドル達。
琴里「千花さん?」
美月「そう。初代“& graff”の元メンバー・藤島千花さん」
琴里「初代“& graff”って、綾奈先生が居たっていう? え、あの人何歳?」
美月「ああ見えて三四歳なんだって。驚きだよね」
琴里「三四……?」

○(回想)ライブハウス・ステージ(夜)
   ライブをする千花。
美月の声「地下アイドル界のレジェンドオブレジェンド、生きる伝説、永遠の一七歳」

○ダンススタジオ
   並んで座る琴里、美月らアイドル達。
美月「ちなみに、趣味はセクハラ。その千花さんが、どうかした?」
琴里「いや、その……この間話してた、ヴァンパイドルの話なんですけど」
美月「うん」
琴里「だから、その、千花さんがヴァンパイドルって事は……?」
美月「え?」
   笑い出す美月らアイドル達。
琴里「え? え?」
美月「いや、そんな訳ないじゃん。だって、千花さんだよ?」
琴里「え、理由になってない……。それに、見ました? コレ」
   スマホの画面を見せる琴里。そこには夏美のグループ脱退を報告するツイッターの文面。
琴里「この間対バンした“おもボク”の夏美さん、辞めるって」
美月「それが、ヴァンパイドルのせいって? そもそもソレ、随分昔の都市伝説だから」
琴里「でも千花さんって、随分昔からアイドルやってる方なんじゃ……」
美月「それに千花さん、他のアイドルから若さ吸う必要ないくらい、若いじゃん」
琴里「だから、その不自然に若い理由が……」
美月「とにかく、また今度の対バンでも一緒になるんだから、間違ってもそんな失礼な事、言わないようにね」
琴里「え、でも……」
   そこにやってくる綾奈。
綾奈「さぁ、始めるよ」
美月「はーい」
   綾奈に続く美月らアイドル達。
琴里「え、ちょっと……」

○公園
   ベンチに座る琴里。手には琴里らのグループや千花らが出演する対バンライブのチラシ。
琴里「何で誰も疑問に思わないんだろう? ……あっ」
   風に飛ばされるチラシ。そこにやってきた若葉(49)がソレを拾う。尚、若葉は白髪頭に曲がった腰、手には杖を持つ等、老婆といった雰囲気。そして、歯は普通。
若葉「おっと」
琴里「あ、すみません」
   若葉からチラシを受け取ろうとする琴里だが、若葉はチラシを凝視する。
琴里「あの……」
若葉「藤島千花……」
琴里「え、ご存知なんですか?」
若葉「貴女、この女と一緒にライブ出るの?」
琴里「あ、はい。良かったら是非……」
若葉「なら、せいぜい気を付けな」
   琴里にチラシを渡す若葉。
若葉「この女に関わると、人生滅茶苦茶にされるから」
琴里「あの、それって……」
   ニヤリと笑い、その場を後にする若葉。
   その後姿を見送る琴里。

○マンション・外観(夜)

○同・琴里の部屋(夜)
   ベッドに横になる琴里。
若葉の声「藤島千花……」

○(フラッシュ)公園
   ニヤリと笑う若葉。
若葉の声「この女に関わると、人生滅茶苦茶にされるから」

○マンション・琴里の部屋(夜)
   ベッドに横になる琴里。
琴里「あれ、どういう意味なんだろう? やっぱ、ちゃんと聞けばよかった……」

○ライブハウス・外観(夜)

○同・控室・中(夜)
   テーブルを囲む琴里、美月らアイドル達。緊張した面持ちの琴里。
   扉が開き、入ってくる千花。
千花「おはようございま~す」
美月「あ、千花さん。おはようございます」
   千花に群がるアイドル達。
   その様子を遠巻きに見ている琴里。

○(フラッシュ)同・同・前(夜)
   千花が夏美から若さを吸い上げる場面に出くわす琴里。

○同・同・中(夜)
   千花に群がるアイドルたちの様子を遠巻きに見ている琴里。
   千花と目が合う琴里。不敵に笑う千花。
琴里「あの……私、ちょっとトイレ」
   逃げるように席を立ち、出ていく琴里。その後姿を見やる千花。

○同・トイレ(夜)
   洗面台の前に立つ琴里。
琴里「ダメだ、やっぱり頭から離れない……」
   千花と美月の話声が聞こえる。
   扉が開き、入ってくる千花と美月。
琴里「あっ……」
美月「あ、琴里。トイレ長いね。便秘?」
琴里「いや、その……もう、戻るんで」
   出ていこうとする琴里の肩を掴む千花。
千花「そんな逃げなくても。せっかくだし、ちょっと話そうよ」
琴里「(体を強張らせ)えっ……」
美月「もう、千花さん。琴里まだ一七歳なんですから、あんまりセクハラしちゃダメですよ?」
千花「じゃあ、美月ちゃんならいいの?」
   と言って美月の体を触りながら背後に回り込む千花。
美月「ちょっと、私もダメです~」
千花「でも琴里ちゃん、一七歳なんだ。いいな~」
   舌なめずりする千花。
琴里「あ……あ……」
千花「私もその若さ、分けて欲しいな~」
   琴里に見せつけるように、美月に向けて口を開く千花。
美月「琴里? どうしたの?」
   恐怖で言葉にならず、首を横に振り続ける琴里。
千花「いただきます」
   千花の八重歯が光る。

○同・外観(夜)
   琴里の悲鳴。

○ダンススタジオ
   綾奈のレッスンを受ける琴里。他に人は居ない。
綾奈「はい、5、6、7、8」
綾奈の声「聞いたよ、解散って」
    ×     ×     ×
   並んで座る琴里と綾奈。
綾奈「琴里以外の全員が、アイドル辞めたんだって?」
琴里「……はい」
綾奈「で、琴里はどうすんの? 一人でもアイドル、続けるの?」
琴里「『やりたい』って気持ちは、もちろんありますけど……さすがに一人じゃ無理かな、って」
綾奈「そっか」
琴里「せっかくアイドルになれたと思ってたのに……」
綾奈「実は私の知り合いに、琴里とユニット組みたい、って言ってる人が居るんだけど。興味ある?」
琴里「え、本当ですか? あります!」

○喫茶店・前
   一人で歩いてくる琴里。
琴里「待ち合わせ場所は……うん、ココだ」
   窓から中を覗き見る琴里。
琴里「もう来てるのかな……?」
   客席に千花を見つける琴里。
琴里「!?」
   驚き、窓からは見えない場所に隠れる琴里。
琴里「何で千花さんが……」
   来た道を引き返す琴里。スマホに着信。立ち止まり、恐る恐るスマホを手に取ると、非通知の番号からの着信を示す画面。通話ボタンを押し、恐る恐るスマホを耳に当てる琴里。
琴里「……もしもし?」
千花の声「何で逃げるの?」
琴里「!?」
   通話を切り、走って逃げる琴里。

○マンション・外観

○同・エントランス
   息せき切ってやってくる琴里。スマホを見ると、非通知からの着信が多数。
琴里「何で、私の番号……」
   ポストから郵便物を取り出す琴里。その中に紙切れが一枚。
琴里「?」
   紙切れには「何で逃げるの?」の文字。
琴里「!?」
   思わず紙切れを床に落とし、そのままオートロックを解除して中に入っていく琴里。その姿を見送る千花の影。

○同・琴里の部屋
   入ってくる琴里。
琴里「何で? 何でウチまで……?」
   インターホンの鳴る音。
   恐る恐るモニターを確認すると、エントランスに立つ綾奈の姿。
琴里「(安堵して)綾奈先生……」
    ×     ×     ×
   玄関の扉を開ける琴里。そこに立つ綾奈。
綾奈「お疲れ」
琴里「お疲れ様です。どうしたんですか?」
綾奈「どうしたもこうしたも、琴里が千花に会わずに帰った、って聞いたから」
琴里「それは……」
綾奈「千花みたいな大ベテランが、琴里みたいな新人と組んでくれるなんて、そうそうないチャンスだよ?」
琴里「綾奈先生こそ、何で千花さんを紹介してきたんですか?」
綾奈「何でって、同じ時代を戦った同志だし、実は今、シェアハウスで一緒に……」
琴里「そうじゃなくて。綾奈先生は昔、ヴァンパイドルに襲われたんじゃないんですか?」
綾奈「そうだけど? それと千花が、何か関係あるの?」
琴里「え、だって……」
綾奈「とにかく、何か誤解があるみたいだから、ちゃんと二人で話しな」
琴里「二人、で……」
   綾奈の背後から姿を現す千花。
千花「こんにちは」
琴里「!?」
綾奈「じゃあ、私は他の子のレッスンがあるから、コレで」
千花「うん、ありがとう」
琴里「いや、ちょっ……」
   扉を閉めながら、琴里と共に中に入る千花。
千花「(笑顔で)やっと二人っきりになれたね、琴里ちゃん」
琴里「いや……」
   琴里に迫る千花。腰を抜かす琴里。
琴里「来ないで……」
   そのまま後ずさりする琴里。
琴里「何で……」
千花「だって琴里ちゃん……(真顔になり)見たでしょ?」
琴里「!?」
   走って逃げようとする琴里。その瞬間、千花に背中を見せてしまう。背後から千花に抱きしめられる琴里。
千花「何でみんなが、私に若さを吸われた事を覚えてないか、知ってる? 年取ると、若い頃の記憶ってどんどん薄れていっちゃうからだよ?」
   涙目で首を横に振る琴里。
千花「アイドルなんて、虚像。一瞬の夢幻。……まぁ、琴里ちゃんは短すぎたからちょっと心苦しいけど」
   口を開く千花。八重歯が光る。
千花「いただきます」

○同・外観
   琴里の叫び声。

○公園
   ベンチに座る若葉。にやりと笑う。

○シェアハウス・外観(夜)

○同・浴室(夜)
   シャワーを浴びる千花。
    ×     ×     ×
   鏡に映る自身の顔を見る千花。肌つやを確認し、満足げに笑う。

○同・リビング(夜)
   やってくる風呂上りの千花。数個の段ボール箱が置かれていることに気付く。
千花「? 何これ?」
   そこにまた別の段ボール箱を抱えてやってくる綾奈。
綾奈「あ、ちょうど良かった。千花の分、自分の部屋に運んどいて」
千花「あ~、コレ、確か物置用の部屋に置いといた奴だ」
綾奈「そう。今度、あの部屋もシェアハウス用に貸し出す事になったから。整理整頓、よろしく」
千花「へぇ、新しい子か……若い?」
綾奈「若い。イジメちゃだめだからね」
千花「セクハラならいいの?」
綾奈「こら」
   段ボール箱を開く千花。そこには若い頃の千花の写真。歯は普通。

○(回想)ライブハウス・外観(夜)

○(回想)同・ステージ(夜)
   並んで立つ千花(17)、綾奈(20)、若葉(32)らアイドル達。一〇人ほどいる。
綾奈「私達」
全員「& graffです」
    ×     ×     ×
   ライブをする千花、綾奈、若葉らアイドル達。千花の表情は硬い。
    ×     ×     ×
   物販中。綾奈や若葉といった他のアイドル達は笑顔で対応しているが、千花はそっけなく、やがて列が途切れる。
千花の声「やっぱり私、向いてないですよね」

○(回想)同・控室(夜)
   並んで座る千花と綾奈。
千花「アイドル」
綾奈「まぁ……もうちょいやり方変えてみるのはありだと思うけど」
千花「例えば?」
綾奈「若葉さんみたいに、もっとSNS更新してみるとか」
   二人の視線の先、部屋の端でSNS用の写真を自撮りする若葉。
千花「タダ働きをしろ、と?」
綾奈「じゃあ、もうちょっと笑顔増やすとか」
千花「作り笑いをしろ、と?」
綾奈「言うよね~」
千花「ごめんなさい……」
綾奈「っていうかさ、千花は何でアイドルやろうと思ったの?」
千花「単純に、歌が好きで……」
綾奈「なるほど。なら、そのキャラを推していけばいいんじゃない? グループの曲、作詞してみるとか」
千花「作詞……」

○(回想)アパート・当時の千花の部屋(夜)
   机に向かい、作詞する千花。

○(回想)ライブハウス・ステージ(夜)
   並んで立つ千花、綾奈、若葉らアイドル達。
綾奈「次の新曲はなんと、千花が作詞した曲です」
千花「聞いてください。タイトルは……」
    ×     ×     ×
   物販中。千花と握手する吉川(39)。千花の前には長蛇の列だが、若葉の前は閑散としている。
吉川「初めまして。『ヨシ』って呼んで」
千花「ヨシさん……」
吉川「いや~、千花ちゃん。良かったよ、新曲。俺、若葉ちゃん推しだったけど、今日から推し変するわ」
千花「ありがとうございます」
吉川「でも気を付けてね、ヴァンパイドル」
千花「ヴァンパイドル?」
スタッフ「はい、時間です」
   スタッフによって千花から引き離される(剥がされる)吉川。
千花「え、あ、ちょ……」
   誰にも気づかれぬよう、千花を睨む若葉。

○(回想)同・控室(夜)
   並んで座る千花と綾奈。
綾奈「あ~、最近話題の都市伝説ね」
千花「そうなんですか?」
綾奈「でも実際、急激に劣化したとかで辞めるアイドル最近多いんだよ。“フトガ”のちひろとか、“サマサマ”の奈緒ちゃん、マコちゃん、“ブルベ”の中島ちゃんも」
千花「ふ~ん……」
綾奈「千花って、あんまりこういうの信じないタイプでしょ?」
千花「まぁ、そうですね」
   と言って笑う千花。
   その様子を、わずかに開いた楽屋の扉から覗き見る若葉の目。

○(回想)喫茶店・外観

○(回想)同・中
   向かい合って座る千花と綾奈。綾奈は一〇歳ほど老けている。
千花「……」
綾奈「あの噂、やっぱり本当みたい」
千花「えっと……」
綾奈「これじゃ、アイドル出来ないや」
千花「……そうですか」

○(回想)ライブハウス・ステージ(夜)
   ライブをする千花、若葉らアイドル達。七人程いる。
    ×     ×     ×
   ライブをする千花、若葉らアイドル達。五人程いる。
    ×     ×     ×
   ライブをする千花と若葉。二人だけ。

○(回想)事務所・外観
   小さな建物。
千花の声「とうとう、二人だけになっちゃいましたね」

○(回想)同・会議室・中
   窓のない部屋。並んで座る千花と若葉。
千花「スタッフさんから『解散しろ』って言われても、仕方ないですよね」
若葉「でも、千花ちゃんは続けるよね? せっかくグループの曲作ったんだし」
千花「私は……いずれは一人で歌やろうと思ってたので。どうしようかな……?」
若葉「え……? それは困るな」
   ゆっくりと千花の背後に回る若葉。
千花「それにしても、ヴァンパイドルなんて本当にいるんですかね? 私、未だに信じられない……」
   千花に向け八重歯を向ける若葉。その様子に、鏡越しに気付く千花。
千花「!?」
   振り返る千花。何もなかったような表情の若葉。
若葉「? どうしたの?」
千花「……若葉さんが、ヴァンパイドル?」
若葉「何言ってんの、千花。そんな訳ないじゃん」
千花「ですよね」
   笑う千花と若葉。
   しばしの沈黙。
   隙を見て駆け出し、部屋の外に出る千花。それを追う若葉。

○(回想)同・同・前
   逃げるように出てきて扉を閉め、開かないように押さえる千花。扉の向こうでは扉を開けようと必死にドアノブを回そうとする音や扉を叩く音。
千花「誰か、誰か来て~!」
   誰もいない。激しく扉を叩く音に震えながら、必死に扉が開かないように押さえる千花。涙目。
    ×     ×     ×
   扉を押さえる千花。激しく扉を叩いていた音が、急に止む。
千花「え?」
   恐る恐る、ドアノブから手を離す千花。扉の向こうからは一向に反応がない。
千花「若葉……さん?」
   恐る恐る扉を開ける千花。

○(回想)同・同・中
   恐る恐る扉を開ける千花。電気は消えており、人の姿は見当たらない。
千花「え、何で……?」
   恐る恐る中に入る千花。
千花「消えた? まさか……」
   突然、足を掴まれる千花。
千花「(恐怖で顔が引きつり)!?」
   恐る恐る足元を見ると、床下に隠れた若葉の姿。笑う若葉、八重歯が光る。
若葉「千花ちゃ~ん」
千花「(悲鳴)」

○(回想)アパート・外観(朝)

○(回想)同・当時の千花の部屋(朝)
   目を覚ます千花。飛び起きて、洗面台に向かう。鏡に映る千花、老化は一切していない。
千花「あれ……変わってな……!?」
   八重歯が出来ている事に気付く千花。
千花「あれ、歯が……?」

○シェアハウス・千花の部屋・中
   部屋の隅に置かれた段ボールの上には八重歯になる前の千花の写真。
   鏡を見る千花。八重歯。
綾奈の声「千花~。新しい入居者の子、来たよ~」
千花「今行く~」

○同・リビング
   向かい合う千花と琴里、綾奈。一見、琴里の外見に変化はない。
琴里「佐野琴里です」
   驚き、言葉を失う千花。
綾奈「いや、ちょっと驚きすぎじゃない?」
千花「あぁ、うん……」
琴里「よろしくお願いします、千花さん」
   笑う琴里。八重歯。
千花「!?」

○同・千花の部屋・中
   ベッドに腰掛ける千花。手にはスマホ。
千花「琴里ちゃん、何で変わってないの? それにあの八重歯。まさか……」
   スマホから通知音。LINEの画面が開き、千花から若葉への「会えませんか?」というメッセージに、若葉から「OK」という返事が来ている。

○喫茶店・外観

○同・中
   テーブル座る千花。そこにやってきて千花の正面に座る若葉。
千花「あ、すみません。ここ、待ち合わせで……」
若葉「あらあら、自分から呼び出しといて、随分ひどい事言うね、千花ちゃん」
千花「え?」

○(フラッシュ)事務所・会議室
   並んで座る千花と若葉。

○喫茶店・中
   ベンチに並んで座る千花と若葉。
千花「若葉、さん……?」
   ニヤリと笑う若葉。
    ×     ×     ×
   向かい合って座る千花と若葉。
若葉「ヴァンパイアに噛まれると、その人もヴァンパイアになる、って話は?」
千花「聞いた事あります」
若葉「それと一緒。ヴァンパイドルに噛まれた人は、ヴァンパイドルになる。ごくまれに、だけどね」
千花「私が聞きたいのは、その後です」
若葉「今の私を見て、わからない? ヴァンパイドルとしての力を失っただけじゃない。それ以降は大体、四倍くらいの速さで年老いていっているよ」
千花「四倍……」
若葉「もちろん、それは私の話だからね。私よりも長い事ヴァンパイドルやってた千花は、もしかしたらもっと反動が大きいかもしれないね」
   二人の前を歩く二〇歳程の女性。
若葉「来年には二〇代の体になって」
   二人の前を歩く四〇歳程の女性。
若葉「五~六年で体が年齢に追いついて」
   二人の前を歩く六〇歳程の女性。
若葉「そこからは、年老いていく一方」
千花「でも(八重歯を見せ)私まだ、ヴァンパイドルの能力が消えた訳じゃ……」
若葉「私もそうだったよ。しばらくは使えた。でも徐々になくなっていくよ」
千花「そんな……」
若葉「『もういいじゃないですか』」
千花「!?」
若葉「『十分やったでしょ?』」

○(フラッシュ)公園
   一七年前。
   ベンチの前で対峙する千花と若葉。

○喫茶店・中
   向かい合って座る千花と若葉。
若葉「今の内に、アイドルとしての終活、しておく事をオススメするよ」
   ニヤリと笑い、立ち去る若葉。
千花「嫌……」
   立ち上がる千花。
千花「今の内に、もっと若さを……」

○ライブハウス・控室(夜)
   談笑するアイドル達。その背後から姿を現し、八重歯を光らせる千花。

○同・トイレ(夜)
   洗面台に並んで立つアイドル達。その背後から姿を現し、八重歯を光らせる千花。

○同・ステージ(夜)
   物販中。ファンと握手するアイドルの背後に姿を現し、八重歯を光らせる千花。

○シェアハウス・外観(夜)

○同・浴室(夜)
   鏡の前に立つ千花。さらに若返ったような肌つやを見て満足そうにうなずく。
千花「これで大丈夫。こうやってもっと若さを貯金して……」
琴里の声「私のために?」
   その背後に姿を現す琴里。
千花「!?」
琴里「いただきます」
   琴里の八重歯が光る。

○同・外観(朝)
   千花の悲鳴。

○同・千花の部屋・中(朝)
   鏡を見る千花。しわが一本出来ている。
千花「そんな……。あっ!?」
   さらに八重歯が片方だけになっている事に気付く千花。
千花「力が、無くなっていく……」

○同・同・前(朝)
   部屋から出てくる千花。扉の前で待ち構える琴里。
千花「!?」
琴里「おはようございます、千花さん」
千花「お、おはよう……」
   逃げるようにその場を立ち去る千花。
琴里「何で逃げるの?」
千花「!?」
琴里「そんな、二日連続で若さ吸い取るような事、しないですよ」
   と言って笑う琴里。八重歯の鋭さが増している。
琴里「でも、まだ思ってたより若いですね。もう一回くらい頂けそう」
千花「嫌……」
   逃げるようにその場を立ち去る千花。

○同・玄関
   出発準備をする千花。背後からやってくる琴里。
琴里「千花さん、充電器忘れてますよ?」
千花「あっ、ありが……(振り返り、声の主が琴里だと気づいて)!?」
   琴里の持っていた充電器を奪うように受け取り、逃げるように出ていく千花。
琴里「行ってらっしゃ~い」

○同・洗面所(夜)
   鏡の前に立ち歯を磨く千花。うがいをし、再び鏡に目をやると、背後に立つ琴里の姿。
千花「!?」
琴里「捕まえた~」
   後ろから千花を抱きしめる琴里。
琴里「千花さん。今夜はお互いのアイドル論について夜通し語り合いましょう」
千花「嫌、触らないで……」
   必死にもがき、琴里の腕の中から逃げ出し、出ていく千花。
   千花の行方を見送りながら、居なくなった千花に見せつけるように八重歯を磨く琴里。
琴里「歯が命、歯が命」

○(夢の中)同・千花の部屋・中(朝)
   ベッドで寝ている千花。目を覚ます。この時点では顔は映らない。
千花「ん……」
   顔に触れ、違和感に気付く。
千花「え……?」
   飛び起きる千花。

○(夢の中)同・洗面所(朝)
   鏡の前に立つ千花。実年齢以上の外見と化している。
千花「(悲鳴)」

○同・千花の部屋・中(夜)
   ベッドで寝ている千花。悲鳴と共に飛び起きる。息が荒い。
千花「夢……?」
   スマホを鏡代わりに自身の顔を見る千花。相変わらず未成年と思しき外見。
千花「良かった……」
   ドアをノックする音。
琴里の声「千花さん? どうかしました?」
   体を強張らせる千花。尚もノックの音。
琴里の声「何か悲鳴みたいなの聞こえましたよ?」
   止まらないノックの音。後ずさりしながら耳をふさぐ千花。
琴里の声「千花さ~ん」
千花「嫌、来ないで……」

○同・リビング
   向かい合う千花と綾奈。
綾奈「え? 琴里を?」
千花「お願い。追い出してよ」
綾奈「何で? 特に問題起こしてないじゃん」
千花「聞いて、綾奈。あの子、ヴァンパイドルなの」
綾奈「またその話? 前に琴里にもされたな。何、二人とも、仲いいじゃん」
千花「そうじゃなくて……」
   そこにやってくる琴里。
琴里「何の話ですか?」
綾奈「あ、いや……」
千花「……何でもない」
綾奈「あ、そうだ。琴里、リンゴいる? 実家から大量に送られてきて」
琴里「いいんですか? (千花を見て)いただきます」
千花「(恐怖に顔が引きつり)……ちょっと出てくる」
   席を立つ千花。

○繁華街
   一人で歩く千花。
千花「どうしよう……どうすれば……」
   千花とすれ違うカップルが笑う。それを、自分の顔を見て笑っているように錯覚する千花。
千花「(顔に触れ)え?」
   その後もすれ違う人すれ違う人が自分の顔を見て笑うような錯覚に陥る千花。
千花「止めて……」
   さらにすれ違う人すれ違う人の言葉として幻聴が聞こえ始める千花。
幻聴A「うわっ、おばさん」
千花「!?」
幻聴B「あれでアイドルなんだって?」
幻聴C「いやいやいや、無理でしょ」
千花「(耳をふさぎ)嫌……」
   すれ違う人が美月や夏美や吉川に見えはじめる千花。
夏美「人のアイドル人生奪っといて、タダで済むと思うなよ?」
千花「それは……」
美月「千花さん。アンタもう、アイドルとして、死んだんだよ」
千花「死……」
吉川「……俺、琴里ちゃんに推し変するわ」
千花「(狂ったように叫びだす)」
   目の前に女子高生の後ろ姿を見つける千花。
千花「若さ~!」
   女子高生に八重歯を向ける千花。それに気づき振り返る女子高生もまた、八重歯。
千花「!?」
   驚き、慌てて引き返す千花。後ろから歩いて生きた女性にぶつかる。
千花「ごめんなさ……」
   その女性もまた、八重歯。
千花「!?」
   腰を抜かし、うずくまり、震える千花。
美月の声「大丈夫ですか?」
   恐る恐る顔を上げる千花。いつの間にか周囲を大勢の女性が囲んでいる。その中に美月や夏美もいる。全員が同時に笑う。全員八重歯。
千花「(悲鳴)」
   叫び、逃げ出す千花。

○公園
   逃げるようにやってきて、ベンチにもたれかかる千花。
千花「一体、何が……? お願い、夢なら醒めて……」
琴里の声「これが現実、リアルですよ?」
   顔を上げる千花。そこにやってくる琴里。
千花「あ……」
琴里「千花さん、もう一七年もアイドルやってたんですよね? もういいじゃないですか」
千花の声「もういいじゃないですか」

○(回想)同
   一七年前。
   ベンチの前で対峙する千花と若葉。
千花「若葉さん。ホラー映画のヒロインにアイドルが多い理由、考えた事あります?」
若葉「何、急に? ないけど」
千花「アイドルって虚像じゃないですか。都市伝説。見える人にしか見えない」
若葉「?」
千花「アイドルっていう存在そのものが、ホラーなんですよ。存在しない存在、亡霊であり生霊」
若葉「自分だって……」
千花「まぁ、私はバイトですから。短期間で稼ぐバイト。そんなものにいつまでしがみついてるつもりですか?」
若葉「うるさい!」
千花「もう十分やったでしょ?」

○同
   ベンチの前で対峙する千花と琴里。
千花の声「いい加減、現世に戻りましょうよ」
琴里「千花さん、もうヴァンパイドルの能力。消えかかっているんですよね?」
千花「……」
琴里「もう、これからは劣化の一途。商品価値も下がる一方。千花さんの分まで私がアイドルやりますから、安心して引退してくださいよ」
千花「嫌だ。まだ、まだ出来る」
琴里「だましだまし、続けるつもりですか? まだ、ファンの方々をだまし続けるつもりですか?」
千花「……何が悪い?」

○(回想)同
   一七年前。
   ベンチの前で対峙する千花と若葉。
若葉「嘘をついて、何が悪い?」
千花「開き直りですか?」
若葉「ふんっ。小娘にはまだわからないでしょうね。この嘘の、その先に何があるか」
千花「?」
千花の声「確かに、アイドルは虚像」

○同
   ベンチの前で対峙する千花と琴里。
千花「アイドルなんて嘘つきだよ。でも世の中、嘘をついた事ない人なんている? 世の中なんて、全部嘘」

○ライブハウス・外観
千花の声「だったら嘘だって、一つの現実」

○同・ステージ
   並んで立つマリエ、アスカ、シェリー。
千花の声「確かに、アイドルは存在しない存在。でも幽霊じゃない。天使だよ」
マリエ「マリエです」
アスカ「アスカです」
シェリー「シェリーです。三人揃って三代目」
三人「& graffです」
   盛り上がる客たち。
千花の声「誰かを救う存在だよ」

○公園
   ベンチの前で対峙する千花と琴里。
千花「この嘘はきっと、誰かを救う。少なくとも、私は救われる。それは一つの真実」
   近くを若い女性が通りかかる。
千花「その為なら、私は……」
   若い女性に向け、駆け出す千花。

○ライブハウス・ステージ
   並んで立つマリエ、アスカ、シェリー。
   以降、千花らのシーンと適宜カットバックで。
マリエ「次の曲は、先代から代々と歌い継がれてきた曲です」
アスカ「生きるレジェンド、藤島千花大先輩が作詞したこの曲」
シェリー「聞いてください。タイトルはL・I・A・Rで『Liar(リアル)』」
琴里の声「アイドルは天使、か……」

○公園
   ベンチに腰掛ける琴里。
琴里「さすが作詞家、いい言葉ですね。でも、だったら、千花さんは……」
   ニヤリと笑う琴里。

○繁華街
   駆けてくる千花。狂ったように手あたり次第の女性を襲っていく。
琴里の声「堕天使ですね」

○ライブハウス・ステージ
   歌い踊るマリエ、アスカ、シェリー。
   以降、千花らのシーンと適宜カットバックで。
   尚、歌詞は以下の通り。
   「恋愛しない トイレ行かない
   そんな人間 存在しない
   アイドルなんて 都市伝説
   ホラー映画だ 迷信だ

   名前は芸名 年齢詐称
   顔は整形 口パク上等
   アイドルなんて 虚像だ
   ホラ見ろ見事な 作り笑い

   一度でも嘘をついた人は
   問答無用で嘘つきですか?
   一度でも真実を言えば
   その人は正直者ですか?

   L・I・A・R
   みんなLiar(ライアー)
   L・I・A・R
   それがLiar(リアル)
   L・I・A・R
   みんなLiar(ライアー)
   この世に真実は たった一つ
   人類は皆 嘘つきだ

   嘘つきな僕が 嘘つきの歌を
   嘘つきな皆に 届けよう

   やる気や美貌は 必要ですが
   夢や希望は 必要ないです
   アイドルなんて 商品です
   大事なのは お金です

   握手のために CD出して
   搾取できれば DD歓迎
   運営なんて ヴァンパイア
   身ぐるみはがすぜ 骨の髄まで

   嘘をついて何が悪いの?
   嘘裁くための法律あるの?
   それがないからいつまで経っても
   ピノキオ達の鼻伸びないまま

   L・I・A・R
   それがLiar(リアル)
   L・I・A・R
   みんなLiar(ライアー)
   L・I・A・R
   それがLiar(リアル)
   正直者が 馬鹿を見るなら
   誰だってなるさ 嘘つきに

   嘘がまかり通り 嘘が嘘を呼び
   嘘つきが嘘で 支配する

   脚本家(ペテン師)の描いた 作り話
   女優の嘘泣き 名シーン
   ドラマなんて フィクションだけど
   ソレ観たお前に 芽生えた感情
   ソイツはきっと……

   L・I・A・R
   みんなLiar(ライアー)
   L・I・A・R
   それがLiar(リアル)
   L・I・A・R
   みんなLiar(ライアー)
   L・I・A・R
   それがLiar(リアル)
   L・I・A・R
   みんなLiar(ライアー)
   L・I・A・R
   それがLiar(リアル)
   アイドルなんて ヴァンパイア
   でも信じてみよう 試しに(トライアル)
   人を救う嘘 殺す嘘

   嘘に嘘重ね 嘘で嘘隠し
   嘘がいつしか 現実(リアル)になる」

○繁華街
   警察に取り押さえられる千花。その様子を遠くから見ている琴里。笑顔。

○スマホの画面
   SNS上、千花の凶行がネットニュースとなり、真偽不明の情報も行き交うなど、炎上している。

○刑務所・外観

○同・中
   独房に一人の赤ん坊。笑うと、八重歯。
                  (完)

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