<登場人物>
タノク・M・イリウス(20)団員
ナサマチ・F・ダラ/影ダラ(18)同/影の巨人
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
田尾(22)女性型アンドロイド
アツネグ・A・ルナイル(31)軍人
タノク・M・クツルス(60)軍の司令官、タノクの父
テシの叔母(31)
大暴獣・クグノワ
<本編>
○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
T「♯13 調査団in惑星カーツ」
○惑星カーツ・ハク市街地
体長八五メートル程のクグノワが街を破壊し始める。その姿に目を見張るナサマチ・F・ダラ(18)。
ダラ「イリウス~!」
サーゼボックスの入口の扉を叩くダラ。
ダラ「イリウス、起きろ。イリウス~!」
そこにやってくるテシ・Y・ケルナー(8)とナサマチ・F・ルギエバ(46)。
ナサマチ「何しとるんや、ダラ」
ダラ「スイッチ切られへんねん。オトン、ドア突き破るん手伝ってや」
ナサマチ「お、おう、わかった」
ドアに体当りするダラとナサマチ。ビクともしない。
ダラ「くそ」
テシ「(指差して)ダラちゃん、団長」
テシの指差す先、クグノワがサーゼボックスに向かってきている。
ナサマチ「あかん、来る」
ダラ「急がな」
再びドアを破ろうとするダラ。
ナサマチ「何してんねん、ダラ。逃げな」
ダラ「せやけど、イリウスが。イリウスがまだ中に」
ナサマチ「わかっとるけど、今は自分の命優先せい」
ダラ「(聞かず)イリウス、イリウス~!」
あと一歩という所までクグノワが迫る。
ナサマチ「あかん」
ダラを庇うように抱きかかえるナサマチ。
その時、背後から攻撃を受けるクグノワ。
振り返るクグノワ。そこには多数の戦車や戦闘機。
アツネグの声「怪獣の進撃を食い止める!」
○戦車・車内
助手席から指揮を執るアツネグ・A・ルナイル(31)。
アツネグ「総員、攻撃準備」
○惑星カーツ・ハク市街地
クグノワに向けて一斉に砲撃する戦車、戦闘機。
アツネグの声「放て!」
砲撃を受けながらも、構わず戦車、戦闘機側へ進撃を続けるクグノワ。それに合わせて戦車や戦闘機も徐々に後退する。
その様子を見ているダラ、ナサマチ、テシ。ナサマチを振り切り、再びサーゼボックスのドアを破ろうとするダラ。
ダラ「今のうちや」
テシ「(スイッチを操作し)これ、どうなってるの?」
ダラ「さっきのデノンの攻撃でイカれてもうたみたいや」
ナサマチ「それより、ワイらは逃げた方がええ」
ダラ「イリウスを見殺しにせえ、言うんか?」
テシ「じゃあさ、コレごと持って行こうよ」
ナサマチ「あのな、ケルナー。持って歩けるような重さとちゃうねんで?」
ダラ「……いや、ソレや」
テシ&ナサマチ「え?」
ダラ「(無線で)田尾ちゃん、まだ船に居る?」
○戦車・車内
砲撃する戦車や戦闘機に向けて進撃するクグノワ。アツネグの乗る戦車にあと一歩の距離。
アツネグ「くっ……無念」
目を瞑るアツネグ。しかし何も起こらず、恐る恐る目を開くと、そこから先に進めずにいるクグノワ。
アツネグ「一体、何が……?」
アツネグの視線の先、矢浦サーゼボックスを乗せ、クグノワの進撃方向の真逆へ飛んでいる矢浦号。
○矢浦号・生活スペース
操縦する田尾(22)。ある地点から矢浦号が進まなくなる。
田尾「(無線で)ダラ様、ここが限界のようです」
○惑星カーツ・ハク市街地
矢浦サーゼボックスを積んだ矢浦号の真下にいるダラ、テシ、ナサマチ。離れた場所で、動けずにいるクグノワを見る。
ダラ「やっぱり、まだサーゼシステムは有効や。これ以上、サーゼボックスから離れられへん」
テシ「ダラちゃん、頭いい!」
ナサマチ「あとはスイッチさえ切れれば、やな」
ダラ「せや。(無線で)田尾ちゃん、一旦降ろして……」
アツネグの声「(無線が混線し)この機を逃すな、総員準備」
ダラ達の視線の先、戦車や戦闘機がプワツナー砲を発射体制。
ダラ「なっ……」
○戦車・車内
助手席で指揮を執るアツネグ。
アツネグ「プワツナー砲、同時発射だ」
○惑星カーツ・ハク市街地
クグノワに向けプワツナー砲を発射する戦車や戦闘機の様子を見ているダラ、テシ、ナサマチ。
アツネグの声「(無線が混線し)行け!」
ダラ「あかん!」
全てのプワツナー砲のエネルギーを吸収するクグノワ。
ダラ「クグノワには通じひん。むしろ逆効果や」
背中のトゲを一斉に発射するクグノワ。ビルや戦闘機、戦車が次々と破壊される。そして一部のトゲはダラ達の元へと飛んでくる。
ダラ「きゃああ!」
その中の一つが矢浦サーゼボックスに直撃、破壊される。
それに合わせて消えて行くクグノワ。
× × ×
田尾の声「ダラ様、ダラ様……」
田尾に起こされ、目を覚ますダラ。
ダラ「ん……」
田尾「お気づきですか、ダラ様」
ダラ「田尾ちゃん……あっ、せや」
体を起こすダラ、周囲を見回す。倒れているテシ、ナサマチ、破壊されたビル、戦車、戦闘機、矢浦号など。
ダラ「どこや……あっ」
破壊された矢浦サーゼボックスの所に倒れているタノク・M・イリウス(20)を見つけるダラ。
ダラ「イリウス! (テシとナサマチを指し)田尾ちゃんは二人を頼むわ」
タノクの元に駆け寄り、抱き起こすダラ。
ダラ「イリウス、イリウス!」
目を覚ますタノク。
ダラ「イリウス!」
起き上がるタノク。
ダラ「大丈夫なんか? イリウス……」
タノク「ダラ……?」
ダラ「よかった……イリウスなんやな」
クツルスの声「イリウス」
そこにやってくるタノク・M・クツルス(60)。
ダラ「イリウスの親父さん……。ウチらは大丈夫です。あっちに……」
イリウスに銃を向けるクツルス。
タノク&ダラ「!?」
銃声。
田尾と銃声に起こされるテシとナサマチ。
ナサマチ「今度は何や?」
テシ「あ、あれ……」
クツルスの持っていた銃を狙撃したラヤドケ・S・リオト(33)。クツルスの銃はタノクとダラの足元に転がる。
クツルス「どういうつもりだ、ラヤドケ?」
ラヤドケ「タノク司令官こそ、どういうおつもりですか。ご自分の息子に銃を向けるなど」
クツルス「こやつは愚息ではない。ただの、一匹の野良怪獣だ」
ラヤドケ「しかし、彼は……」
もう一丁の銃を取り出し、ラヤドケの杖を撃つクツルス。杖が弾かれ、転倒するラヤドケ。
クツルス「立場をわきまえろ、ラヤドケ」
再びタノク達に向き直るクツルス。クツルスの落とした銃を拾い、クツルスに向けているダラ。
クツルス「何のつもりだ?」
ダラ「走れるか、イリウス?」
タノク「は? 無茶言うなよ」
ダラ「走れんくても走り。逃げるで」
クツルスに銃を向けたままタノクを連れて駆け出すダラ。
クツルス「待て……」
タノク達に銃を向けるクツルスの前に立ちふさがるテシ。
ナサマチ「ケルナー!?」
テシ「イリウス君は、怪獣さんなんかじゃない。イリウス君は、イリウス君だよ」
ナサマチ「……せやな」
テシの隣に立つナサマチ。
ナサマチ「ワイは団長や。部下は守るで」
クツルス「素人が。既にこれほど甚大な被害を産んでいるのだ。一刻を争うのだ」
ナサマチ「そうやとしても、親が子を撃つ姿を見たないし、見せたないんや」
クツルス「だから、既に愚息ではないし、愚息であるなら尚更、父親としての責任がある」
ラヤドケの声「それでも、です」
足を引きずりながらやってきて、クツルスの銃を下ろさせるラヤドケ。
ラヤドケ「貴方にソレをやらせる訳にはいきません、タノク司令官」
クツルス「だから、立場をわきまえろと……」
ラヤドケ「立場をわきまえるのは貴方だ、タノク司令官」
クツルス「何?」
ラヤドケ「軍の司令官、という立場ではない」
○同・ハク駐屯地・司令室
司令官席に置かれたボトルシップ。
ラヤドケの声「一人の、息子を愛する父親としての立場だ」
○同・ハク市街地
クツルスを押さえるラヤドケと、前に立ちふさがるテシ、ナサマチ。
ラヤドケ「そして貴方は『責任』と言った。それならば、私達にもあります」
テシ、ナサマチと並ぶラヤドケ、田尾。
ラヤドケ「もし、タノクさん……イリウスさんを撃つのなら、その時は、私達にやらせてください。散々彼を利用してきた、私達に」
無言で、テシ達に背を向けるクツルス。
ラヤドケ「ダラさん達を追いましょう」
テシ&ナサマチ「了解」
○同・山林
駆け込んでくるタノクとダラ。
ダラ「この辺まで来れば、平気やろ」
その場にへたり込むタノク。
ダラ「大丈夫か、イリウス?」
タノク「大丈夫じゃねぇよ。デカブツにボコられて、目ぇ覚ましたら銃向けられて、いきなり走らされて」
ダラ「しゃあないやろ。文句多いヤツやな」
タノク「それに……」
ダラに向けて腕を伸ばすタノク。少しずつ光の粒子が出現している。
ダラ「これ……」
タノク「殺せ」
ダラ「……何や、いきなり」
タノク「もうわかってんだろ? 俺がタノク・M・イリウスじゃねぇって事くらい」
ダラ「ほな、何でボトルシップくれたん?」
タノク「は? 別に、ただ何となく……」
ダラ「前にイリウスが言うてたんや。あのボトルシップ、完成したらウチにくれるて」
タノク「だとしたら、たまたま……」
ダラ「ウチはそうは思わへん。きっと、イリウスの中にイリウスの記憶があんねん。それに……」
タノク「それに?」
ダラ「アンタがその体ん中入ってから、今まで、一緒に過ごしてきた時間は嘘やない。ウチらは、仲間や」
しばし沈黙。
タノク「……だから、俺の事は殺さねぇって?」
ダラ「そうや」
タノク「じゃあさ、死んでくれんのかよ」
ダラ「え?」
タノク「俺の体は、もうすぐ限界。今度こそ、本物の怪獣として動き出す。そしたらもう、テメェらには勝つ術はねぇ。違ぇか?」
ダラ「それは……」
タノク「思い出せよ、矢浦を」
○(フラッシュ)小惑星ヌシ・岩場A
影タノクと戦うコレザ。
タノクの声「人間だったアイツですら、怪獣になっちまったらあの様だ。人間の時の雰囲気の欠片も残っちゃいねぇ」
○惑星カーツ・山林
対峙するタノクとダラ。
タノク「俺はアレ以上だ。さっきの見てわかんだろ?」
ダラ「……せやな」
タノク「だったら、今だろ。今なら、ダラの持ってるその銃で、俺の事殺せんだろ?」
ダラ「せや」
タノク「殺れよ」
ダラ「……」
タノク「生きていくためだって、割り切れよ」
ダラ「……」
タノク「そん時は、そん時だろ!」
ダラ「せやったな」
タノクに向け銃を構えるダラ。
ダラ「そうやっていつも、イリウスにばっかり十字架背負わせてたんやったな」
そこにやってくるテシ、ナサマチに肩を借りたラヤドケ、田尾。
ダラ「ウチも、背負うわ」
タノクに発砲するダラ。
ラヤドケ「タノクさん」
テシ「イリウス君」
ナサマチ「ダラ」
田尾「ダラ様」
銃撃を受け、倒れるタノク。
タノク「ダラ……ありがとな」
ダラ「イリウス……」
タノク「でも……」
タノクの体からあふれ出す光の粒子。
タノク「ちょっと、遅かったみてぇだ」
ダラ「え?」
光の粒子が奥地に向かっていく。
○同・奥地
光の粒子が集まり、体長五〇メートルの怪獣・クグノワが出現する。
○同・山林
暴れるクグノワの様子を呆然と見つめるダラの元にやってくるテシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。
テシ「ダラちゃん?」
ダラ「間に合わへんかった」
田尾「ダラ様……」
ダラ「ウチがやらなあかんかったんや」
ナサマチ「ダラ……」
ダラ「だってアイツは、イリウスはきっと、ウチに殺されようとしてたんやから」
ラヤドケ「かもしれませんね」
テシ「え?」
ダラ「きっと、これ以上誰かを傷つける前にて。それなのに、ウチ……」
轟音。
ナサマチ「何や?」
○同・奥地
クグノワを攻撃する新たな戦車、戦闘機の一団。
○同・山林
クグノワを攻撃する新たな戦車、戦闘機の一団の様子を見ているダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。
テシ「また来たね、戦車さん」
ナサマチ「こんだけ居んのに、何でデノンと戦うた時には一台も出て来ぇへんかったんや? そしたら、イリウスは……」
ラヤドケ「出てくる事が出来なかったのでしょう。エネルギー不足、という話がありましたから」
テシ「じゃあ、何で今動いてるの?」
田尾「先ほどの、渡り獣・デノンの生命エネルギーを取得したため、と思われます」
ダラ「……そうや。まだイリウスが残してくれてたもんがあったんや」
ラヤドケ「え?」
ダラ「エネルギーがある言う事は」
テシ「あっ、ツエーツ号が動かせる」
ナサマチ「サーゼシステムが使える」
ラヤドケ「ですが、システムに耐えられる人が居ません。タノクさんも、矢浦さんも」
ダラ「……いや、手はある」
○同・ハク駐屯地・司令室(夕)
クグノワを攻撃する戦車、戦闘機、そしてそこにやってくるツエーツ号の様子を窓から見ているクツルス。
ラヤドケの声「(無線で)ツエーツ号、現着しました」
○ツエーツ号・共同スペース(夕)
コクピット前に座るラヤドケ。
ラヤドケ「サーゼボックス、降下します」
○惑星カーツ・奥地(夕)
ツエーツ号から降りてくるサーゼボックス。その脇に立つダラ、テシ、ナサマチ、田尾。
田尾「ダラ様、ご武運をお祈りしております」
ダラ「おおきに」
田尾とグータッチをするダラ。
ナサマチ「すまんな、ダラにこない危ない役割押し付けてしもうて」
ダラ「構へんて。それより夕飯、たんまり用意しといてや」
ナサマチとグータッチをするダラ。
テシ「僕、何の心配もしてないからね」
ダラ「どこで覚えんねん、そんな台詞」
テシとグータッチをするダラ。
クグノワを見上げるダラ。グータッチをするように拳を掲げる。
サーゼボックスの中に入って行くダラ。
○サーゼボックス・中(夕)
入ってくるダラ。
ポケットから何かを取り出し、左手で握る。中央に立ち、光に包まれる。
○惑星カーツ・奥地(夕)
サーゼボックスから伸びて行くダラの影。その脇に立つテシ、ナサマチ、田尾。
ナサマチ「サイズ五〇。サーゼシステム、起動!」
スイッチを入れる田尾。
○サーゼボックス・中(夕)
体に電撃が走るダラ。
ダラ「はああああ!」
意識を失い、倒れるダラ。
○惑星カーツ・奥地(夕)
ダラの影が実体化し、影ダラが出現する。
対峙する影ダラとクグノワ。
影ダラ「さぁ、どっちが勝っても、そん時は、そん時。恨みっこなしやで」
戦い始める影ダラとクグノワ。左手こそずっと拳を握ったままながら、影タノクよりは正統派な格闘スタイルで戦う影ダラ。しかしパワー不足は否めず、クグノワに押され気味。
影ダラ「くっ……」
尻尾攻撃を受け、吹っ飛ばされる影ダラ。
影ダラ「あぁっ」
タノクの声「何だ、そんなもんか?」
影ダラ「え?」
○(イメージ)同・同(夕)
クグノワがタノク、影ダラがダラの姿に変わっている。
タノク「来いよ、ダラ」
ダラ「ナメたらあかんで、イリウス」
戦い始めるタノクとダラ。お互い手の内を知り合っており、なかなか攻撃がクリーンヒットしない両者。
タノク「やんじゃねぇか」
ダラ「お互い様やな」
一旦距離を置く両者。再びタノクに向け駆け出すダラ。
ダラ「行くで」
タノク「来いや」
足がもつれるダラ。その際、偶然にもタノクの回し蹴りをかわす。
タノク「なっ!?」
大きくバランスを崩すタノク。
ダラ「いただきっ」
その隙にタノクに猛攻を仕掛けるダラ。
タノク「ぐっ、がっ」
ダラ「これでもくらいぃや」
両足で踏み切るダラ。
○同・同(夕)
再び姿が入れ替わるタノクとクグノワ、ダラと影ダラ。クグノワにドロップキックを決める影ダラ。倒れるクグノワ。
サーゼボックスの脇に立ち、その戦いを見守るテシ、ナサマチ、田尾。
テシ「ダラちゃん、凄~い」
ナサマチ「せやけど、妙やな」
田尾「妙とは?」
ナサマチ「クグノワの強さはこんなもんやない。まだ本気やないのかも……」
ラヤドケの声「(無線で)あるいは、本気が出せないのかもしれませんよ」
○ツエーツ号・共同スペース
タノクの死体の脇に立つラヤドケ。
ラヤドケ「タノクさんのご遺体から、無視できない量のエネルギーが感知できます。おそらくクグノワは完全な状態で復活できていないのでしょう」
○惑星カーツ・奥地
クグノワと黒い剣を手に戦う影ダラ。
ラヤドケの声「(無線で)ダラさんのおかげで」
両者に疲れが見える。
影ダラ「イリウス、これほんま疲れるな。ようやっとったわ」
剣を握り直す影ダラ。
影ダラ「そろそろ、終わらそか」
クグノワに斬りかかる影ダラ。
影ダラ「シャドーストライクや!」
○(イメージ)同・同(夕)
姿が入れ替わるタノクとクグノワ、ダラと影ダラ。ファイティングポーズをとるタノクに斬りかかるダラ。
タノク「来いよ、ダラ」
ダラ「うああああ!」
一瞬、笑みを浮かべるタノク。ファイティングポーズを解く。
ダラ「!?」
○同・同(夕)
姿が入れ替わるタノクとクグノワ、ダラと影ダラ。無抵抗で影ダラに斬られるクグノワ。
影ダラ「イリウス……」
ダラの方へ一瞬顔を向けるクグノワ。直後、爆発四散する。
影ダラ「イリウス~~~!」
○同・同(夜)
クグノワが爆発した場所で黙祷を捧げるダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ。
ラヤドケ「それにしても、ダラさんは何故サーゼシステムに耐えられたんですか?」
ダラ「あぁ、これです」
ダラが取り出したのは矢浦の遺骨。ただし一本無くなっている。
ラヤドケ「これは……?」
ナサマチ「矢浦はんの遺骨だそうや」
ダラ「ほんまは二本あったんやけど、今ので一本無うなってしもた」
ラヤドケ「なるほど、ここに寄生獣のエネルギーが残っていた、という事ですか。……でも、何故これをダラさんがお持ちなんですか?」
ナサマチ「それもそうやな」
ダラ「え、それは……」
テシ「田尾ちゃんが持ってたんじゃないの?」
ダラ「え、あ~、そう、そうやで」
ラヤドケ「……そういう事にしておきましょう」
○ツエーツ号・共同スペース(夜)
掃除をしている田尾。くしゃみをする。
田尾「アンドロイドの私が、くしゃみをするなんて……」
棚にバースデーパーティー時の写真を飾る田尾。その中にいる笑顔のタノク。
○惑星カーツ・首都ユサチ
復興作業が行われている。
T「3ヶ月後」
その一画にレストランがある。
○同・レストラン
レジを打つシェフ姿のナサマチ。
ナサマチ「おおきに」
出て行く客。入れ違いで入ってくるテシとテシの叔母。テシの叔母はテシ・Y・カムミ(33)と瓜二つ。
ナサマチ「いらっしゃい……おぉ、ケルナーやないか」
テシ「団長、久しぶり」
ナサマチ「(叔母を見て)コチラの方は……?」
テシの叔母「はじめまして、ケルナーの叔母です。その節はケルナーがお世話になりまして」
ナサマチ「あぁ、いえいえコチラこそ。いや~、カムミはんにうり二つでんな」
テシ「ねぇ、団長は何時に行くの?」
ナサマチ「(時計を見て)もうぼちぼちやな」
○同・ハク駐屯地・飛行場
停泊している矢浦号。そこに出入りする多数の軍人。
○同・同・司令室
クツルスと向き合う車椅子姿のアツネグ。
アツネグ「証拠品や映像データの類は、全て押収しました」
クツルス「ご苦労。だが、バックアップの類が見当たらない、というのが気になるな」
アツネグ「まだ調査の途中だったから、バックアップをとっていなかった、という事では?」
クツルス「どう思う、ラヤドケ?」
部屋の奥に立つラヤドケ。杖なしで歩く。
ラヤドケ「あの男の性格から考えて、無いとは思えないのですが」
クツルス「(アツネグに)引き続き、調べろ」
そこにやってくる田尾。
田尾「ダラ様の出発の準備が出来ました」
ラヤドケ「了解しました。すぐ向かいます」
○同・同・飛行場
矢浦号の隣、同サイズの宇宙船が停泊している。その脇に立つダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。
ナサマチ「ほんまに行ってまうんやな」
ダラ「あぁ、ちょっとした一人旅や」
ラヤドケ「てっきり、調査団に入っていただけるものだと思っていたのですが」
ダラ「リオトさんがその状態なら、ウチが入らんでも平気やないですか」
テシ「寂しくなるね」
ダラ「いい子にしとるんやで、ケルナー」
田尾「私はいつまでも、ダラ様のお帰りをお待ちしております」
ダラ「安心しぃ、なるべく早めに帰ってくるわ」
× × ×
離陸する小型宇宙船に向け手を振るテシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。
ダラの声「ほな、な」
○小型宇宙船・中
コクピット前に座るダラ。
ダラ「さて、と。忘れもんは無いな」
矢浦の遺骨と遺影、USBメモリ、タノク達の写真とボトルシップ。
ダラ「しっかし(遺書を手に)矢浦の故郷って、よう知らん星やねんけど、コレ遠いんかな? まぁ、そん時は、そん時やな」
遺書に書かれた「惑星 地球」の文字。
○航行する小型宇宙船
ダラの声「どんな星なんやろな、惑星・地球て」
(完)
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