カーツ惑星調査団♯11『宇宙探偵 in 小惑星ヌシ』 SF

宇宙探偵・矢浦(26)。カーツ惑星調査団の謎を追い、もう1人の影の巨人でもある男。そんな彼の最期の1日が、始まろうとしていた……。
マヤマ 山本 55 0 0 09/01
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第一稿

<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父 ...続きを読む
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<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
 
矢浦(26)宇宙探偵
田尾(22)矢浦の世話係、女性型アンドロイド
 
寄生獣・コレザ



<本編>
○矢浦号・シャワールーム
   シャワーを浴びている矢浦。最初は顔がわからないが、胸元の痣から徐々に顔が映っていく。
   シャワーの湯を止め、鏡を見る矢浦。胸の痣に軽く触れる。

○同・洗面所
   シャワールームに隣接した洗面所。バスローブを身にまとう矢浦。
   美容室のような椅子に座り新聞を読む矢浦。その後ろでドライヤーを手に矢浦の髪型を整える田尾。
   新聞を閉じ、立ち上がる矢浦。

○同・矢浦の部屋
   ゲストルームと同じ構造。
   バスローブ姿で服を選ぶ矢浦。クローゼットの中にそれぞれ大量にあるスーツ、ワイシャツ、ネクタイ、ハットの中から、一着ずつ選んで行く。
    ×     ×     ×
   ワイシャツに腕を通し、ネクタイを締め、スーツを着て、最後にハットを被る矢浦。

○同・撮影スタジオ
   カメラを構える田尾の前で、三ポーズほど写真を撮る矢浦。フィルムを確認し、頷く。

○同・生活スペース
   入ってくる矢浦。テーブルの上には既に食事が並んでいる。
   田尾が椅子を引き、そこに座る矢浦。
    ×     ×     ×
  ナイフとフォークを使い食事する矢浦。
   グラスにワインを注ぐ田尾。
   まず香りを楽しんでからワインを飲む矢浦。
田尾「お口に合いましたか」
矢浦「とてもよく合う、この料理に」
    ×     ×     ×
   テーブルの上にタイプライターを置き、書類を作成している矢浦。
   その周囲で矢浦の体温や血圧の測定、採血する田尾(と、それでも平然と作業を続ける矢浦)。
    ×     ×     ×
   タイプライターで作成した書類を確認し、封筒に入れる矢浦。そのタイミングで二種類の書類を矢浦に手渡す田尾。
田尾「コチラが本日の検査結果、そしてコチラが頼まれていた資料です」
矢浦「仕事が早いね、田尾は。(後者の資料に目を落とし)では、この小惑星としよう、次の着陸地点」
田尾「承知致しました」
   部屋を出て行く矢浦。

○同・矢浦の部屋
   レコードに針を落とす矢浦。
   流れる音楽に耳を傾けながら、ワインを口に運ぶ矢浦。
   窓辺に映る宇宙空間。

○同・生活スペース
   掃除や電球の交換等の雑事を行い、最後に、出来上がった先ほどの写真を、前日までの服装の矢浦の写真と入れ替える。
    ×     ×     ×
   コクピット前に座る田尾。
田尾「目的地、確認しました」

○小惑星ヌシ・外観
   向かって行く矢浦号。
   T「小惑星ヌシ」

○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
   T「♯11 宇宙探偵in小惑星ヌシ」

○小惑星ヌシ・岩場A
   ずっと岩場が続いている。
   停泊している矢浦号。

○矢浦号・撮影スタジオ
   服装が替わり、写真撮影をしている矢浦。撮影者は田尾。
   何か物音に気付く二人。
田尾「矢浦様……」
矢浦「気付いているよ、田尾」
   最後の一枚を撮り、フィルムを確認する矢浦。
矢浦「田尾もどうかな、記念に一枚」
田尾「私はアンドロイドですので」
矢浦「写真を撮る事に関係はないだろう、人もアンドロイドも」
田尾「……わかりました」
    ×     ×     ×
   田尾を撮影する矢浦。
   三ポーズ撮るも、表情は全て一緒の田尾。
    ×     ×     ×
   フィルムを確認する矢浦と田尾。
矢浦「二枚目が良いと思う、小生は」
田尾「承知致しました。早速現像を……」
矢浦「その前にお願いしたい、あと一枚」

○同・生活スペース
   食事を終え、席を立つ矢浦。そこにやってくる田尾。
田尾「行かれるのですか?」
矢浦「色々とかけたな、世話を」
田尾「とんでもございません」
矢浦「田尾が側に居てくれて助かったよ、小生は。この状況、一言で現すなら、感謝」
   優しく田尾の後頭部に手を添える矢浦。田尾の背後から見ると、口づけしているように見える。
田尾「矢浦様……」

○小惑星ヌシ・岩場A
   矢浦号から降りてくる矢浦。
   そこに着陸してくるツエーツ号。
   降りてくるタノク・M・イリウス(20)、ナサマチ・F・ダラ(17)、テシ・Y・ケルナー(8)、ナサマチ・F・ルギエバ(46)。
タノク「あれ、矢浦じゃねぇか。奇遇だな」
矢浦「奇遇というよりはこう呼ぶべきだろう、運命と」
テシ「偶然じゃなくて、必然だね」
ダラ「どこで覚えんねん、そんな言葉」
タノク「しっかし、お前こんな星に何の用があんだ?」
矢浦「決まっているだろう、惑星調査に」
ダラ「ここ、小惑星やけどな」
矢浦「では小生からも聞こう、其方達の目的」
タノク「燃料補給に決まってんだろ」
ナサマチ「反応があったんや、怪獣一体分の」
矢浦「疑わしいものだな、その情報」
ダラ「確かに、影も形も見当たらん」
テシ「怪獣さんのご飯になりそうなもの、何もないもんね」
ナサマチ「(無線で)ナサマチからツエーツ号へ。まだエネルギーの反応はありまっか?」
ラヤドケの声「(無線で)はい。比較的近くに」
ナサマチ「だそうや」
ダラ「ほな、片っ端から調べるしかあらへんな」
タノク「じゃあ、頑張ってな」
ラヤドケの声「(無線で)タノクさんも行ってください」
タノク「何で聞こえてんの?」
ナサマチ「ほなとりあえず、それっぽい石から探していくか」
テシ「矢浦さんも一緒に行く?」
矢浦「させてもらおう、遠慮を」
ナサマチ「ほら、時間ないんや。早よ行くで」
   それぞれ逆方向に歩き出すタノク、ダラ、テシ、ナサマチと矢浦。
   四人の中で最後尾を歩くダラ。後方でかすかに足音を聞く。
ダラ「?」

○同・岩場B
   ツエーツ号や矢浦号からはかなり離れた地点。
   一人で歩く矢浦。そのあとをつける何者かの視点。そして、発砲。その銃撃を華麗に回避する矢浦。
矢浦「この状況、一言で現すなら、笑止」
   振り返る矢浦。そこには銃を構えたラヤドケ・S・リオト(33)の姿。
矢浦「気づかれずに出来ると思ったのかい、探偵相手に、尾行を?」
ラヤドケ「構いませんよ。目的は、尾行する事ではありませんから」
   再び矢浦へ数発発砲するラヤドケ。それをやはり華麗にかわしながら徐々にラヤドケに接近する矢浦。
ラヤドケ「ちっ」
   ラヤドケの銃、杖を蹴りで弾き、ラヤドケ本人の体も蹴り飛ばす矢浦。
矢浦「勝てると思ったのかい、手負いの獅子が、一人で、小生に」
   無言で矢浦を睨むラヤドケ。
   ラヤドケの落とした銃を拾い、指で回す等して弄ぶ矢浦。まるで何かを待っている様子。
ラヤドケ「ここまでされて、何故貴方は私を殺そうとしないのですか?」
矢浦「小生に無いからだ、殺す理由が」
ラヤドケ「甘いですね」
矢浦「だが……」
   ラヤドケに銃を向ける矢浦。
矢浦「小生には無いのだ、殺さない理由も」
ラヤドケ「!?」
   ラヤドケに向け発砲する矢浦。
ダラの声「危ない!」
   そこに飛び込み、ラヤドケの体を抱え、間一髪で銃撃をかわすダラ。
ダラ「リオトさんに何すんねん」
ラヤドケ「ダラさん」
矢浦「ふっ」
   逃げるように立ち去る矢浦。
ダラ「待ちぃや。(ラヤドケに杖を渡し)ウチが追います。リオトさんはツエーツ号に戻っといてください」
   銃を手に駆け出すダラ。
    ×     ×     ×
   少し離れた場所。
   駆けつけるダラ。前方には矢浦の姿。
ダラ「見つけたで。一体どういう……」
   ダラの方へ(ラヤドケの)銃を放る矢浦。
ダラ「……どういうつもりや?」
矢浦「無い事を示したつもりだ、戦う意思」
ダラ「そうやない。さっきリオトさん撃った時、何でウチが来るまで待ったんや?」
矢浦「早くて助かるよ、話が」
   不敵に笑う矢浦。

○同・岩場A
   タノクやナサマチが見つけてきた周辺の石を、片っ端から粒子状の光にし、電池のようなものに閉じ込めるテシ。電球は無反応。
タノク「全然ダメだな」
テシ「ねぇ、もう疲れた~」
ナサマチ「しゃあない、一旦休もか」
タノク「賛成」
テシ「ねぇ、ダラちゃんはどこ行っちゃったの?」
タノク「どっかでサボってんだろ?」
ナサマチ「ダラをイリウスと一緒にすなや。(無線で)ナサマチからダラ、聞こえるか? ……応答せぇへんな」
矢浦の声「この状況、一言で現すなら、無駄」
   そこにやってくる矢浦。
タノク「また来たのか」
ナサマチ「『無駄』て、どういう事や?」
矢浦「彼女は今、応答できない状況だ、無線に」
タノク「何?」
ナサマチ「矢浦はん、ダラに何したんや!?」
矢浦「再び招待した、小生の船に」

○矢浦号・廊下
   忍び込むダラ。気配を消しながら進んでいる。
矢浦の声「一体何だと思う、其方たちが小生を殺したい理由?」

○(回想)小惑星ヌシ・岩場B
   対峙するダラと矢浦。
矢浦「小生が握っているからだ、其方達の悪事の証拠」
ダラ「まぁ、そうやな」
矢浦「逆にその証拠さえ取りかえせれば、無くなるハズだ、その理由」
ダラ「何が言いたいんや?」
矢浦「盗み出してみないかい、証拠を?」
ダラ「は?」
矢浦「今、鍵をかけていない、小生の船。入ろうと思えば入れる、其方も」
ダラ「……」
   無線のスイッチに手を伸ばすダラ。
矢浦「止めた方がいいぞ、無線は」
   手を止めるダラ。
矢浦「船の中で田尾が傍受している、其方達の無線。連絡を入れれば筒抜けになる、情報」
ダラ「ウチ一人で忍び込め、て? アンタ、今度は何を交換条件にしようとしとるん?」
矢浦「答えは一緒だ、以前と。先に交換条件を言わなければならないのであれば決裂だ、交渉は」
ダラ「突っぱねるかもしれへんで?」
矢浦「先に言うものではないな、そういう事。だが……」

○矢浦号・廊下
   忍び込むダラ。気配を消しながら進んでいる。
矢浦の声「だからこそ、其方を指名しているのだよ、小生は」
ナサマチ「(無線で)ナサマチからダラ、聞こえるか?」
ダラ「あ~、もう。うっさいわ、オトン」

○同・生活スペース
   ゆっくりとドアを開け、忍び込むダラ。周囲を見回す。
   立っている田尾を見つけ、慌てて伏せる。
ダラ「やばっ」
   物陰から再び田尾を覗き見る。
ダラ「ん……?」
   微動だにせず、立ったままの田尾。
   首を傾げるダラ。立ち上がる。
ダラ「お~い。お~い」
   田尾の前で手を振るダラ。無反応の田尾。
ダラ「動いてへん……。故障? 電池切れ? 何やろな……?」
   テーブルの上の封筒を見つけるダラ。そこには「to ナサマチ・F・ダラ」と書かれている。
ダラ「ウチ宛?」
   封筒を開け、中の書類(遺言書)を取り出すダラ。
矢浦の声「今頃、読んでいる頃だろう、小生からのラブレターを」

○小惑星ヌシ・岩場A
   対峙するタノク、テシ、ナサマチと矢浦。
矢浦「小生の船で、彼女は」
ナサマチ「話にならんわ。娘は返してもらうで。イリウス、ケルナー、ココは任せるわ」
   走り出そうするナサマチ。その進路に向けて(自身の)銃を発砲する矢浦。思わず立ち止まるナサマチ。
矢浦「行かせないよ、ここから先」
タノク「隙あり」
   矢浦に殴りかかるタノク。それを華麗にかわす矢浦。
タノク「団長、今の内に」
ナサマチ「おおきにな、イリウス」
   再び駆け出すナサマチ。しかし、タノクの攻撃をかわす流れでナサマチの進路を塞ぐ矢浦。
ナサマチ「!?」
矢浦「しないでほしい、邪魔を」
タノク「お前が邪魔なんだっての」
   矢浦を羽交い絞めにしようとするタノクと、ソレを見て三度駆け出すナサマチ。しかし同じように攻撃をかわし、ナサマチの進路を塞ぐ矢浦。
ナサマチ「器用な真似を……」
矢浦「するだけ無駄だよ、その抵抗」
タノク「こうなったら、テッシーに行かせっか?」
テシ「え、僕?」
ナサマチ「いや、あかん。ケルナー一人で乗り込ませる方が危ないやろ」
タノク「確かにな」
矢浦「おとなしく待つ気になったかな、ここで。なら、面白いものを見せてあげよう、時間つぶしに」
タノク「時間つぶし?」
ナサマチ「面白いもの?」
テシ「え、何なに?」
   ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外す矢浦。
   矢浦の背中越しに見える、タノクとナサマチの驚いた表情。
矢浦の声「驚かないで聞いてほしい」

○矢浦号・生活スペース
   席に着き、遺言書に目を通すダラ。
矢浦の声「この手紙を一言で現すなら、遺言」
ダラ「遺言……」
矢浦の声「小生は元々別の事件の調査の為に外に出た、故郷の星の。その最中、立ち寄った惑星で寄生されたのだ……」

○小惑星ヌシ・岩場A
   対峙するタノク、テシ、ナサマチと矢浦。
   矢浦の胸元の痣を見て驚くタノク、ナサマチ。
矢浦の声「寄生獣に」
タノク「その痣は……」
テシ「この間の星の人たちとお揃いだね」
矢浦「小生なのだ、其方たちが感知した、エネルギーの正体」
ナサマチ「せやけど、今まで矢浦はんからそないエネルギーを感じた事あらへんで?」
矢浦「近いのだろう、覚醒が」
タノク「なっ……」
矢浦「今の内に用意するといい、サーゼボックスを」
   しばしの沈黙。
   ゆっくりと無線に手を伸ばすナサマチ。
ナサマチ「(無線で)ナサマチからツエーツ号」
矢浦の声「この体で、帰る訳にはいかなくなった、故郷に。流浪の身となり、その中で始まった、カーツ惑星調査団の調査」

○矢浦号・生活スペース
   席に着き、遺言書に目を通すダラ。
矢浦「そして出会った、其方に」

○(フラッシュ)ツエーツ号・共同スペース
   こっそりと矢浦に鍵を手渡すダラ。
矢浦の声「小生は買っている、其方の正義感の強さを」

○(フラッシュ)矢浦号・生活スペース
   食事をする矢浦とダラ。
矢浦「義理堅さを」

○(フラッシュ)惑星メーテキ・オフィス街
   二つ並ぶサーゼボックス。それぞれのサーゼボックスの脇に立つダラと田尾。
矢浦の声「だからこそ、値する、最後の貸しを作る相手に」

○矢浦号・生活スペース
   席に着き、遺言書に目を通すダラ。
矢浦の声「小生は計算した、其方達の船の燃費と惑星カーツまでの距離、必要なエネルギー量を。結果、其方達のエネルギー補給に最適な場所だとわかった、この小惑星が」

○小惑星ヌシ・岩場A
   対峙するタノク、テシ、ナサマチと矢浦。
   矢浦の体から、痣を中心に光が出現する。
矢浦の声「小生が怪獣化した際に発生するエネルギー量が」
   ゆっくりとハットを外す矢浦。
矢浦の声「だから願う」

○矢浦号・生活スペース
   棚の上に置かれた二本の肋骨入りのケースを手にするダラ。
矢浦の声「我が故郷に届けて欲しい、小生の遺影を、遺骨を」
   ケースを手に席に着き、再び遺言書の続きに目を通すダラ。
矢浦の声「これは頼めない、其方にしか」
   遺言書と同じ封筒からUSBを取り出すダラ。
矢浦の声「もしそれでも足りないなら、受け取ってほしい、同封されたUSBを。ここには入っている、其方達の調査に関する全てのデータが。処分しても構わない、其方の判断で」
   USBを握り締めるダラ。
矢浦の声「ただ其方さえよければ、USBも届けて欲しい、故郷に居る小生の家族に」
   地響き。
   窓の外を見やるダラ。コレザが出現している。
ダラ「寄生獣……」

○サーゼボックス・中
   中央に立つタノク。
ナサマチの声「サイズ六〇」

○小惑星ヌシ・岩場A
   サーゼの脇に立つテシとナサマチ
ナサマチ「サーゼシステム、起動」
   出現する影タノク。
テシ「本当に、怪獣さんになっちゃったんだね」
   テシの視線の先、矢浦のハットが落ちている。
影タノク「……もしコレで負けたら、恨むぜ、矢浦」
   戦い始める影タノクとコレザ。

○矢浦号・生活スペース
   田尾を再起動するダラ。
田尾「再起動中です。再起動中です……」
矢浦の声「田尾は譲ろう、其方に。押せば再起動できる、首の後ろの電源ボタンを」
田尾「貴女様のお名前は?」
ダラ「ウチはダラや。覚えてへんのか?」
田尾「初めまして、ダラ様」
ダラ「初めてちゃうやろ」
田尾「私はご主人様であるダラ様に仕える忠実なアンドロイドです」
ダラ「ウチちゃう。アンタのご主人様は矢浦やろ!?」
田尾「矢浦……データにありません」
ダラ「覚えてるやろ?」
田尾「データにありません」
ダラ「思い出しぃや!」
   外での戦いのせいで揺れる船内。
ダラ「あ~、もう。(外に向け)ちょっと静かに戦いや、イリウス!」

○小惑星ヌシ・岩場A
   戦う影タノクとコレザ。コレザの動きには矢浦の面影はなく、ただの怪獣そのもの。戦いを優勢に進める影タノク。
影タノク「何だよ、矢浦。テメェの戦い方はそうじゃねぇだろ。もっとダセェくれぇスマートに振る舞えよ。ウゼェくれぇスタイリッシュに戦えよ」
   怪獣らしく突っ込んでくるコレザ。
影タノク「おい、矢浦。聞こえてねぇのかよ」
   その様子を見ているテシとナサマチ。
ナサマチ「イリウス、もう無理や。そいつは矢浦はんちゃう。ただの怪獣や」
テシ「矢浦さん、かわいそう」
ナサマチ「決めてまえ。それが、矢浦はんの為や」
影タノク「そうは言ってもよ、決めようがねぇんだよ。武器ねぇんだから」
ナサマチ「あっ」
テシ「そうだ、ダラちゃん……」

○矢浦号・生活スペース
   棚の上に二本の肋骨入りのケースを戻すダラ。
ダラ「矢浦、アンタ、怪獣になる未来がわかっとったから、骨抜いとったんやな。何も残らんくなってまうもんな」
   肋骨入りケースの隣にある写真立て。入っているのは矢浦の最新の写真。
ダラ「いつ死ぬかわからへんから、毎日遺影撮っとったんやな」
   その写真立ての脇に置かれた一枚の写真を手に取るダラ。
ダラ「それに……」
   振り返るダラ。無表情で立つ田尾。
ダラ「田尾の事も初期化して、遺言書まで書いて、完璧に準備して。せやのに……」
   再び写真立ての矢浦の写真を見やるダラ。
ダラ「そこまで準備して何で、最期に託す相手がウチなん?」
   先ほど手に取った一枚の写真を田尾に渡すダラ。
ダラ「コレ、持っとき」
田尾「承知いたしました」
   銃にミニサーゼをセットし、窓を開け、放つダラ。

○小惑星ヌシ・岩場A
   矢浦号から発せられる剣の影が、黒い剣となる。
   コレザと戦う影タノク。剣を手に取る。
影タノク「ナイス、ダラ」
   剣を使い、さらにコレザを追い詰めていく影タノク。
影タノク「悪ぃけど、俺もう、お前のそんな姿見たくねぇんだよ、矢浦」
    ×     ×     ×
   戦いを見守るナサマチとテシ。
影タノクの声「お前だって、死にざまくれぇ、綺麗でありてぇだろ?」
    ×     ×     ×
   戦う影タノクとコレザ。
影タノク「だから今ここで、俺の手で、終わらせてやんよ」
   剣でコレザに斬りかかる影タノク。
影タノク「シャドーストライク!」

○矢浦号・生活スペース
   先ほどダラから渡された写真を見つめる田尾。それは矢浦と田尾のツーショット写真。
田尾「矢……浦……」
   写真に落ちる一粒の涙らしき水滴。
田尾の声「様……」
   爆発音。
   窓の外を見やる田尾。

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座り、爆発を見つめるラヤドケ。
ラヤドケ「エネルギー、回収します……」
   爆発に向け、敬礼するラヤドケ。

○小惑星ヌシ・岩場A
   矢浦の墓標を建てるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、田尾。黙祷。
ダラ「悪かったな、こんな縁もゆかりもない星で死なせてもうて」
   矢浦の帽子を置くテシ。
ダラ「矢浦の船、どうします?」
ラヤドケ「惑星カーツに持ち帰りましょう。詳しく調べる必要があります。田尾さんも含めて」
テシ「何を?」
ナサマチ「知らんでええ事や」
ラヤドケ「さぁ、行きましょう」
   ツエーツ号に向かうタノク、テシ、ナサマチ、ラヤドケと矢浦号に向かうダラ、田尾。
   途中で一度振り返るタノク。
タノク「じゃあな、矢浦」
   墓の前に立っている矢浦の霊。
矢浦「小生は少し早いだけ、そう遠くない内にまた会えると踏んでいるよ、其方と」
タノク「奇遇だな、俺もだ」
矢浦「奇遇というより、運命」
   互いに笑い合うと、消えて行く矢浦の霊。
タノク「俺の、運命……」
   再びツエーツ号に向け歩き出すタノク。
    ×     ×     ×
   発進するツエーツ号と矢浦号。
ナサマチの声「さぁ、次の目的地は、いよいよ惑星カーツや。皆、ええか」
一同の声「了解」
              (♯12へ続く)

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