カーツ惑星調査団♯8『宇宙戦争 in 惑星ヨヨラヤ』 SF

惑星カブニと戦争中の惑星ヨヨラヤに傭兵として雇われたカーツ惑星調査団。タノク・M・イリウス(20)はこの終わらない戦いに辟易していた。そんな中、敵は切り札ともいえる超巨大ロボットを送り込んできて……。
マヤマ 山本 12 0 0 08/22
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第一稿

<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父 ...続きを読む
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<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
 
矢浦/影矢浦(26)宇宙探偵/影の巨人
 
大将(50) #8ゲスト
少尉(35) 同
二等兵(20)同
巨兵機・TO-7
巨兵機・TO-14
大暴獣・クグノワ/影クグノワ



<本編>
○惑星ヨヨラヤ・外観
   青紫色の惑星。
   T「惑星ヨヨラヤ」
   近くに赤紫色の惑星・カブニがあり、そこからいくつもの赤い宇宙船がヨヨラヤに向かっている。

○同・河川敷
   攻撃してくる赤い宇宙船の集団を、青い戦闘機や戦車で迎撃している青い服の軍人達。
   中央で体長七〇メートル程の赤い人型ロボット・TOー7と影タノクが戦っている。影タノクの手には黒いハンマー。
影タノク「これでもくらえ!」
   攻撃を受け、爆発四散するTOー7。
   それを見て撤退する、生き残った赤い宇宙船の集団。
影タノク「ふぅ~」
   消えて行く影タノク。

○サーゼボックス・中
   大の字に寝転がるタノク・M・イリウス(20)。指で数を数える。
タノク「これで……七連戦か」

○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
   T「♯8 宇宙戦争in惑星ヨヨラヤ」

○惑星ヨヨラヤ・軍基地・外観
   広大な敷地。
   戦闘機や戦車が並んでいる。
   「T 6日前」
大将の声「ようこそ、惑星ヨヨラヤへ」

○同・同・食堂
   テーブルを囲むタノク、ナサマチ・F・ダラ(17)、テシ・Y・ケルナー(8)、ナサマチ・F・ルギエバ(46)、ラヤドケ・S・リオト(33)と大将(50)、少尉(35)ら軍人達。
大将「しかし、我が星は今、隣の惑星カブニと戦を行っている最中でな。分けてやれる程のエネルギーはないのだ」
ナサマチ「そうでっか」
大将「ただ、我が軍に協力してくれるというのであれば、話は別だ」
ラヤドケ「協力、とは?」
大将「その通りの意味だ。私達に力を貸して欲しい」
少尉「貴様らが持っている兵器はどれも技術のかなり進んだもの。戦力として期待できる」
ナサマチ「ワイらはええが、他の若い隊員の手を血で汚す事はしたくないんや」
大将「ならば、無人戦闘機の相手のみとするのはどうだろう?」
ダラ「無人戦闘機?」
少尉「その名の通り、相手が遠隔操作で送り込んでくる戦闘機の事だ。数が多くてな」
大将「無人だから、破壊しても人が死ぬ事はないし、そこの相手を引き受けてもらえれば、本隊に人員を割けて、何かと助かる」
ナサマチ「まぁ、それやったら……」
大将「では、(少尉に)君たちはTOー7の相手を」
少尉「承知しました」
テシ「TOー7?」
少尉「相手の軍にそのような兵器があるのだ。体長は七〇メートル程の巨大ロボット。アレに手こずっている」
大将「我が軍には巨大兵器が無くてな。皆さんの宇宙船がもう少し大きければ、ヤツの相手もお願いするのだが……」
ダラ「そういう事やったら……」
   タノクに視線が集まる。
タノク「……ん? 俺?」

○同・河川敷
   TOー7が現れる。
   T「1日目」
   対岸に置いてあるサーゼボックス。
   その脇に立つ二等兵(20)。
二等兵「サイズ七〇、よーし!」

○サーゼボックス・中
   中央に立つタノク。
二等兵の声「サーゼシステム、はじめ!」
タノク「ヤベッ、違和感ハンパねぇ」

○惑星ヨヨラヤ・河川敷
   実体化する影タノク。TOー7と対峙する。
   敵軍のどよめきと、味方軍の感嘆の声。
影タノク「さて、と。どっちが勝っても、そん時は、そん時。恨みっこなしだぜ」

○同・空中
   撃ち合いをする青い戦闘機と赤い戦闘機。
   T「2日目」
   青い戦闘機の後方からやってくるツエーツ号。

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るダラ。
ダラ「プワツナー砲、発射!」

○惑星ヨヨラヤ・空中
   プワツナー砲を発射するツエーツ号。赤い戦闘機が次々と爆発する。

○同・軍基地・医務室
   多くのけが人が運ばれてきている。
   T「3日目」
   けが人の手当てを手伝うテシ。

○同・同・会議室
   大将に作戦を提案するラヤドケ。
   T「4日目」

○同・同・食堂
   料理を運んでくるナサマチ。
   T「5日目」
   嬉々として食べる軍人達。

○同・河川敷
   中央で戦う影タノクとTOー7。
   影タノクの手には黒い剣。
   T「6日目」
影タノク「くらえ、シャドーストライク!」
   攻撃を受け、爆発四散するTOー7。

○サーゼボックス・中
   その場に座り込むタノク。
タノク「いつまで続くんだ、コレ……?」

○惑星ヨヨラヤ・軍基地・外観(夜)
   T「7日目」

○同・同・飛行場(夜)
   戦闘機が多数並んでいる。
   そこに並んで停泊しているツエーツ号。その脇にはサーゼボックスも置いてある。
   サーゼボックスにもたれかかって座るタノク。
タノク「はぁ。夜が明けたら、また出陣か」
   そこにやってくる二等兵。缶コーヒーを差し出す。
タノク「ん? おう、サンキュー」
二等兵「あ、あの、自分も隣失礼してよろしいでしょうか」
タノク「? いいけど?」
二等兵「ありがとうございます」
   タノクの隣に腰掛ける二等兵。
二等兵「あの、タノクさんは正直、どう思われていますか?」
タノク「どうって……何が?」
二等兵「自分は正直、この戦争の意義が分かりません。生まれた星は違えど、同じ人間。何故殺し合わなければならないのか……」
タノク「じゃあ、戦うの辞めちまえば?」
二等兵「え?」
タノク「そうすりゃ、殺し合わなくて済む。その代わり、一方的に殺されっけどな」
二等兵「それは、困ります」
タノク「この世界は、食うか食われっかだ。もちろん、戦わなくて済むならその方がいいけど、向こうから戦いを挑まれたら、そん時は、そん時だろ?」
二等兵「……やはり、宇宙を旅されている方はお強いですね。自分は未だに、敵軍とはいえ、人を殺める事に抵抗があります」
タノク「抵抗、か……。俺は人殺すより、怪獣殺す方が抵抗あんだけどな」
二等兵「そうなんですか?」
タノク「何でだろ?」
二等兵「……自分に聞かれましても」
タノク「だよな」
   笑う二人。
タノク「じゃあ、俺もう帰るわ。(缶コーヒーを指し)コレ、ごちそうさん」
二等兵「貴重なお話、ありがとうございました」
   立ち上がるタノク。
タノク「……さっきの話だけど」
二等兵「何でしょう?」
タノク「殺し合わなくて済む方法。実はもう一個あんだよね」
二等兵「本当ですか?」
タノク「勝ちゃあいい」
二等兵「勝つ?」
タノク「勝って、明日にでもこの戦争を終わらせちまえばいい」
二等兵「そうですね。頑張りましょう」
   後ろ手に手を振るタノク。

○同・同・医務室(夜)
   窓から中を見ているダラ。
   ベッドで横になる多くのけが人。

○(回想)ツエーツ号・共同スペース
   轟音が響き、窓を見るダラ、テシ、ナサマチ。ナサマチはシェフの服装、ダラとテシは私服姿。
   窓の向こう、体長五〇メートル程の怪獣・クグノワ(ここではシルエットしかわからない)が暴れている。
    ×     ×     ×
   窓から外を見るダラ。見える範囲だけでも相当な人数の調査団員が倒れている。テシの目を塞ぐダラ。
テシ「何すんの、ダラちゃん」
ダラ「見たらあかん」

○惑星ヨヨラヤ・軍基地・医務室(夜)
   窓からけが人の様子を見ているダラ。
   そこにやってくる大将。
大将「何をしている?」
ダラ「あ、すみません。すぐ帰ります」
大将「別に構わない。私で良ければ、話を聞こう」
ダラ「……ええんですか?」

○同・同・食堂(夜)
   向かい合って座るダラと大将。
ダラ「惑星間怪獣流通禁止法、って知ってはります?」
大将「知ってはいる。ただ、この近辺の惑星には怪獣の生息実態がないから、我々にはあまり関係のない法律と認識している」
ダラ「あの法律て、もちろん生態系うんぬん言う話もあるんやろうけど、他の惑星からエネルギーを奪う行為として禁止しているて、ウチは解釈してるんです」
大将「同意見だ」
ダラ「せやけどこうやって、エネルギーを巡って人間同士で争う事もある」
大将「この戦争が、まさにソレだな」
ダラ「もしかしたら、怪獣を運ぶ方がまだマシなのかもしれへんな、て……」
大将「自分の正義は、簡単に曲げない方がいい」
ダラ「え?」
大将「人は常に、誰かしらにとっての悪であるものだ」
ダラ「誰かしらの、悪?」
大将「例えば、私が今この地位に就くまでに、私に出世争いで負け、軍を去った同期や先輩は多々居る。彼らにとって私は『アイツさえいなければ』と思われるような、悪しき存在だろう」
ダラ「そんなん、逆恨みやないですか」
大将「それでも、私ではない誰かが今、この地位に居れば、もしかしたらもっといい戦い方を、あるいは戦わずに済むやり方を見つけていたのかもしれない。そんな風に思う日があるのも、事実だ」
ダラ「それが、今日なんですか?」
大将「(答えず)だからこそ、自分が信じる正義は、簡単に曲げない方がいい。それを信じられなくなると、何を信じたらいいかわからなくなる」
ダラ「……大将さんは、ご自分の正義、貫いてはるんですか?」
大将「そんな人間だったら、出世なんてしない」
   笑う大将。つられて笑うダラ。

○同・同・外観(朝)
   T「8日目」

○同・河川敷
   多数の青い戦車がスタンバイしている。
   同じくサーゼボックス前にスタンバイしているタノクと二等兵。
   徐々に赤い宇宙船が姿を見せる。
二等兵「そろそろですね……あっ、来ました」
タノク「ん?」
   赤い人型ロボット・TOー14が姿を見せる。見た目はTOー7と一緒だが、体長は一四〇メートル程。
タノク「……気のせいか? 倍近くデカく見えんだけど」
二等兵「……自分にもそう見えます」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るダラ。
   フロントガラスから見えるTOー14の姿。
ダラ「(無線で)ダラからオトンへ、外見えるか?」
ナサマチの声「おう、バッチリや」

○惑星ヨヨラヤ・軍基地・食堂
   窓から外を見ているナサマチ。TOー14の姿が見える。
ダラの声「どう思う?」
ナサマチ「サイズ一四〇って所やな」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るダラ。
ダラ「デカいと、イリウスの負担も大きいやろ? ちょっと見て来てもええか?」
ラヤドケの声「ラヤドケからツエーツ号へ」

○惑星チョクガ・軍基地・会議室
   大将、少尉らと共に作戦机を囲むラヤドケ。
ラヤドケ「そういう事でしたら、私がツエーツ号に搭乗しましょう」
ダラの声「お願いします」
少尉「勝手に持ち場を離れないでもらおうか」
大将「まぁまぁ」
少尉「貴様が我々と一緒にいるのは、人質という意味もある事を忘れないでいただきたい」
ラヤドケ「私たちが裏切るとでも?」
少尉「保証はない」
ラヤドケ「賢明ですね。では、代わりの人質を連れてきます。いかがでしょう?」
少尉「……わかった。私もサーゼとやらの現場に向かおう。(大将に)よろしいですか?」
大将「許可する」
    ×     ×     ×
   大将と向かい合うテシ。
テシ「……なんか、僕最近留守番が多い気がする」
大将「気にするな。戦うのは、大人の役目だ」

○同・河川敷
   サーゼボックスの脇に立つ二等兵。
二等兵「おそらく、あのロボットは敵軍の切り札と思われます」
タノクの声「って事は、あのロボットをぶっ壊しちまえば」
二等兵「この戦争が、終わるかもしれない……」

○サーゼボックス・中
   中央に立つタノク。
タノク「終わらせてやろうぜ、今日で」
二等兵の声「お願いします」

○惑星ヨヨラヤ・河川敷
   サーゼボックスの脇に立つ二等兵。
二等兵「サイズ一四〇、よーし! サーゼシステム、はじめ!」
   影タノクが出現する。
影タノク「さて、と。どっちが勝っても、今日で終わりだ」
   戦い始める影タノクとTOー14。パンチもキックもダメージを与えられず、劣勢の影タノク。
影タノク「くそっ、やっぱデケェと力入らねぇな」
   ミニサーゼをセットする二等兵。
二等兵「ミニサーゼ、はじめ!」
   黒いハンマーが出現する。それを手にしようとした瞬間、TOー14とは別の方向から攻撃を受け、倒れる影タノク。
影タノク「痛っ。誰だ?」
   落ちた黒いハンマーを拾う影矢浦。
影矢浦「再び使わせてもらおうか、この武器」
影タノク「矢浦、テメェ……」
   TOー14と影矢浦の双方から攻撃を受け、反撃も出来ない影タノク(影矢浦は相変わらず黒いハンマーを逆に持ち棒術のように使う)。
影タノク「こんな所で何してんだよ」
影矢浦「其方達を追って慌てて星を出た故、途中で尽きた、エネルギーが。やむを得ずエネルギー補給に寄った惑星が最中だった、戦の。結果、雇われ仕事の身となった、小生は。まだ必要かな、説明が?」
影タノク「いや、大体わかった」
影矢浦「では続けよう、戦いを」
   TOー14の腹部からキャノン砲が出現する。
影タノク「おいおい、何かヤバそうだぞ?」
   キャノン砲の一撃をまともに喰らう影タノク。
影タノク「ぐあああ!」

○同・道
   影タノクとTOー14の戦いを横目に走っているダラ。キャノン砲の一撃をまともに喰らった影タノクが、消えて行く。
ダラ「イリウス~!」

○同・軍基地・食堂
   窓から戦いの様子を見ているナサマチ。
ナサマチ「そんな、アホな……」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るラヤドケ。
ラヤドケ「あの探偵め……」

○惑星ヨヨラヤ・河川敷
   並び立つ影矢浦とTOー14。
影矢浦「それにしても堪えるな、このサイズ。一旦休ませてもらおうか、小生は」
   消えて行く影矢浦。
   それを見ている二等兵。
二等兵「タ、タノクさん!」
   そこに駆けつける少尉。
少尉「どういう状況だ?」
二等兵「(敬礼をし)お疲れさまです! 攻撃を受け、タノクさんの影が、消えてしまいました」
少尉「(周囲の戦車等に向け)敵の進撃を許すな、総攻撃!」
   戦車がTOー14に向けて砲撃。全く動じないTOー14。
少尉「タノク一等傭兵の様子を確認する」
二等兵「はいっ」
   サーゼボックスに駆け込む二等兵と少尉。

○サーゼボックス・中
   倒れているタノク。
   そこに入ってくる二等兵と少尉。タノクに駆け寄る。
二等兵「タノクさん、大丈夫ですか?」
   目を覚ますタノク。意識はもうろうとしている様子。
タノク「ん……」
二等兵「良かった、無事だったんですね」
少尉「ならば、もう一度戦ってもらおう」
二等兵「そんな、タノクさんは今……」
少尉「貴様の発言は聞いていない」
二等兵「……失礼しました」
少尉「で、タノク一等傭兵。戦えるのか?」
タノク「あぁ……」
少尉「よし、再出撃の準備だ」
   出て行く少尉。
二等兵「本当に大丈夫なんですか?」
タノク「あぁ……」
少尉の声「早くしろ!」
二等兵「はい」
   タノクの事を心配そうに見ながら出て行こうとする二等兵。
タノク「……たまるか」
二等兵「え?」
タノク「エネルギーだか何だか知らねぇが、これ以上、この星を荒らされてたまるか」
二等兵「(嬉しそうに)はい!」
   出て行く二等兵。
   表情がおかしいタノク。

○惑星ヨヨラヤ・河川敷
   サーゼボックスの脇に立つ二等兵と少尉。そこにやってくるダラ。
ダラ「イリウスは!?」
少尉「あぁ、安心していい。無事だ。今からもう一度出撃してもらう」
ダラ「そんな、無茶や」
少尉「本人が『大丈夫だ』と言った。問題はない」
ダラ「せやかて……」
   サーゼボックスから影が出現する。しかしそれはタノクの影ではなく、クグノワの影。
少尉「ほら、本人も……」
ダラ「何でや……何で影の形が怪獣……?」
   サーゼボックスの脇に立つ二等兵。
二等兵「サイズ一四〇、よーし!」
ダラ「あかん!」
   二等兵を止めようとするダラを止める少尉。
少尉「何をするつもりだ?」
ダラ「止めな。イリウスが……」
二等兵「サーゼシステム、はじめ!」
   クグノワの影が実体化し、影クグノワとなる。

○同・軍基地・食堂
   窓から戦いの様子を見ているナサマチ。
ナサマチ「アレは……」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るラヤドケ。
ラヤドケ「まさか……」

○惑星ヨヨラヤ・河川敷
   影クグノワを見上げているダラと少尉。
ダラ「ほんまに……イリウスなんか?」
   その様子を遠くから見ている矢浦。不敵な笑みを浮かべる。
    ×     ×     ×
   戦い始める影クグノワとTOー14。ただただ怪獣のように暴れる影クグノワだが、戦いは優勢に進めている。
   TOー14がキャノン砲を発射し、周囲の赤い宇宙船もレーザー光線で影クグノワを攻撃し始める。その光線全てを吸収するクグノワ。
   背中の無数のトゲを飛ばす影クグノワ。トゲが命中した赤い宇宙船、青い戦闘機が次々と墜落して行く。
二等兵「え? タノクさん、味方にも攻撃が当たってますよ! ダラさんからも……」
ダラ「(恐怖で)あ……あ……」
二等兵「? ダラさん?」
   キャノン砲を撃つTOー14。口から光線を吐き出し、それを相殺する影クグノワ。しっぽで攻撃し、キャノン砲を破壊する。
   無抵抗になったTOー14を嬲り殺すように破壊する影クグノワ。最後に口からの光線で木っ端微塵にする。
二等兵「やった!」
   赤い宇宙船も含め、敵軍はもういないが、まだ戦闘態勢を解かない影クグノワ。ヨヨラヤ軍側に振り返る。
ダラ「あかん」
   サーゼボックスに駆け寄るダラ。
   口から光線を放つ体勢に入る影クグノワ。
二等兵「!? え、タノクさん?」
   間一髪の所でスイッチを切るダラ。影クグノワが消えて行く。
ダラ「間に合うた……」
二等兵「一体、何が……? (無線のイヤホンに手をやり)え!?」

○サーゼボックス・中
   目を覚ますタノク、泣きそうな顔のダラがタノクの体を揺すっている。
ダラ「イリウス? イリウスなんか?」
タノク「疲れてんだから、もうちょっと寝かしてくれよ」
ダラ「よかった、イリウスなんやな。おはようさん」
タノク「……って、ゆっくりしてていいのか? あのデカいロボットは?」
ダラ「……覚えてへんのか?」
タノク「忘れねぇよ。あのキャノン砲まともに喰らって、スゲェ痛かったんだからよ」
ダラ「そうやなくて、その先……」
タノク「ん?」
   そこに駆け込んでくる二等兵。
二等兵「タノクさん、ダラさん。戦争が終わりました!」
タノク「え?」
ダラ「ほんまか?」
二等兵「はい。惑星カブニに攻め込んでいた我が軍が、制圧に成功したそうです」
   顔を見合わせるタノクとダラ。グータッチ。

○惑星ヨヨラヤ・軍基地・外観
大将の声「皆さんの活躍のおかげで、我が軍が勝利を収める事ができました」

○同・同・会議室
   大将らと向かい合って立つタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ、矢浦。
大将「感謝します。ナサマチ殿、ラヤドケ殿、タノク殿、ダラ殿、テシ殿、矢浦殿」
タノク「……って、(矢浦に)何でお前?」
矢浦「今回の小生の仕事は、スパイ。小生の流した情報により惑星カブニの制圧に成功したのだ、惑星ヨヨラヤ軍は」
テシ「さすが」
ダラ「あいかわらず、せこい奴やな」
ナサマチ「まぁ、らしいと言えばらしいわな」
   矢浦を睨むラヤドケ。

○同・同・飛行場
   歩いてくるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、ラヤドケ。周囲を見回すラヤドケ。
ラヤドケ「あっ……」
   既に宇宙に向けて出発している矢浦号。
   ラヤドケの肩に手を置くナサマチ。
ナサマチ「逃げ足の速い探偵やな」
ラヤドケ「今度会った時は、容赦しません」
ナサマチ「まぁまぁ。とりあえず、時間はかかってもうたけど、無事にエネルギー補給できたんやから、良しとしようやないか」
ラヤドケ「そうですね。後はあの探偵をどうするか、それと……」
   二人の視線の先、テシとじゃれ合いながら歩くタノク。
ナサマチ「イリウス、でっか……」
   同じくタノクを見ながら歩いているダラ。
ダラ「イリウス……」

○(フラッシュ)惑星ヨヨラヤ・河川敷
   戦う影クグノワ。
ダラの声「あの姿」

○(フラッシュ)ツエーツ号・共同スペース
   窓の向こう、クグノワが暴れている。
ダラの声「間違いあらへん」

○惑星ヨヨラヤ・軍基地・飛行場
   タノクを見ながら歩くダラ。タノクとクグノワのシルエットが重なる。
ダラ「クグノワ……」
              (♯9へ続く)

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