【登場人物表】
俺(17)不良少年
担任(31)俺のクラスの女先生
センセー(37)保健室の先生
天井(17)保健室の天井
【本文】
〇学校の廊下
教室の窓ガラスが割れて、破片が飛び散る。
と、俺(17)が割れた窓ガラスから飛び出る。
俺「やってられねぇんだよ! 死ね! クソ担任っ!」
俺、廊下を走る。
と、担任(31)が俺を追うように出てきて、
担任「待ちなさいっ! まだ授業中ですっ!」
〇保健室
俺、ガラッとドアを開けて入ってくる。
俺「センセー、献血希望~」
と、センセー(37)が、ガラスの破片で血が出ている俺の腕を見て、
センセー「うわっ! お前…ガラス修理でまた校長が泣くぞ」
俺「学校が流れるくらい泣けばいい」
センセー「じゃあ保健室も流れて、お前が隠したエロ本も出てくるな」
俺「え! 何で俺がエロ本隠してるの…」
センセー「男同士だからな…さ、止血するから手出して」
俺「…」
× × ×
センセー、俺の傷の手当てをしている。
俺「…エロ本の隠し場所変えるからな!」
センセー「ここはお前の部屋じゃないんだぞ」
と、保健室に近づく誰かの足音が聞こえる。
俺「!?」
俺、急いでベッドに潜り込む。
と、担任が入ってくる。
担任「先生! あの子、ここにいますよね!?」
センセー「…ガラス片が腕に刺さって、血が多量に出てました…今は少し休んでます」
担任「嘘です! また授業サボって…ねぇっ! 聞こえてるんでしょっ!」
俺「うるせぇーんだよっ! 死ねっ! クソばばあっ!」
担任「死ね死ねと、汚い言葉使うんじゃありませんっ!」
担任、ベッドへ行こうとして、センセーに止められる。
センセー「まあまあ、先生…興奮させると、治療になりませんから…ここは私に任せてくださ い」
担任「…」
と、担任、渋々出ていく。
俺「…」
〇保健室(別日)
ベッドで寝転ぶ俺と、センセーがいる。
センセー「ちょっと出ていくけど…大丈夫だよな?」
俺「エロ本読んでるから、その方が都合いい」
センセー「へいへい」
と、センセーが出ていく。
俺、眠気で瞼を下す。
俺「(寝ている)…」
× × ×
俺、寝ているが、どこからか声が聞こえて目を覚ます。
声「ちょっと! 寝たふりしてんじゃないわよ!」
俺「…あ? 何だ…?」
声「だから、あんたの左耳のピアス、どこで買ったのって聞いてんじゃん」
俺「…え? 誰かいんの?…おいっ! 姿見せろよ!」
俺、声の主をキョロキョロと探す。
声「ここだって!」
と、俺、声がする方を見るとーそれは、ベッド上の天井である。
俺「いやいやいや…天井は喋んねぇから!」
と、俺、ベッドから起き上がり、部屋中を歩き回る。
声「同じようなやつ、前にあたしも持ってたんだけど…担任に没収されてさ…マジ最悪」
天井は、ずっと喋り続けている。
俺「おいおい…いよいよ頭が狂っちまったか…」
声「あんたが担任から逃げる気持ち…あたし、分かる!」
俺「…」
〇保健室(別日)
俺、ベッドに寝転がり、天井と話している。
天井「…でさ、髪を金ぱにしてガッコ行ったら、即停学」
俺「あはは!…そりゃそうだろ! 俺でもまだ赤髪止まりだよ」
天井「でも、せっかく金ぱにしたからさ、金髪記念写真を撮ったの!」
俺「…なんだそれ」
天井「だよね~…あたしも、ずっと保健室のベッドで寝てた…天井のシミは、238個ある」
俺「245個だよ」
天井「嘘…あたしは天井なんだから、分かる」
俺「(笑う)」
天井「(笑う)」
俺「…お前、可愛いんだろうな…顔が分からなくて残念」
天井「…口説いてんの? 悪いけど、あんたタイプじゃない」
俺「うるせぇ(と笑う)」
天井「(笑う)」
〇教室(別日)
俺、担任に椅子を投げる。
俺「なっんで、俺が停学なんだよっ!!!」
椅子、担任には当たらずに、黒板にぶつかる。
担任「鏡を見なさいっ! 何ですか、その金髪はっ!」
俺「俺の魂だよっ!」
と、担任、俺をビンタする。
俺、担任に掴みかかる。
俺「女だからって容赦しねぇからなっ!!!」
担任「…っ!!!」
と、大勢の先生が入って来て、俺を羽交い絞めにする。
担任、その隙に俺から離れる。
俺「逃げんなよっ! クソ担任っ!」
〇保健室
俺とセンセーがいる。
センセー「…お前は、不良少年としては優等生なんだけどな」
俺「オール5くれる?」
センセー「少しは反省という言葉を知れ。そうそう…お前のエロ本、俺はまた見つけたぞ」
俺「はぁ!? エロ本ハンターかよ」
センセー「(笑う)…あと、お前にそっくりな古い写真も見つけた」
俺「あ?」
と、センセーが古い写真を差し出す。
センセー「たぶん、お前のように隠してたんだろ。金髪不良少女が写ってる…だけど、問題は…」
俺「(写真を見て)…っ!?」
センセー「…」
写真には、制服を着た、若い頃の担任が写っている。
俺「…これ、クソ担任じゃん」
センセー「…」
〇俺の家・外観(数日後)
二階建ての一軒家。
T「数日後」
〇同・俺の部屋
俺、ベッドでうずくまっている。
俺N「…天井は、担任だった。担任で、金髪不良少女で…俺が、好きになった子…そんなことって、あるのか…?」
と、俺の母親が、部屋をのぞく。
母親「…ちょっと! 表に担任の先生が来てるよ」
俺「!?」
母親「会わなくていいの…?」
俺「…」
〇同・表
担任、じっと立っている。
担任「…」
と、俺が玄関から出てくる。
担任「…!?」
俺「…」
担任「…」
俺「…」
担任「…体調は、どう?」
俺「…ただ、自主停学してるだけなんで」
担任「勉強に遅れないように、プリント持ってきたの」
俺「…なんでセンセーになってんの?」
担任「…え?」
俺「左耳にいかついピアスつけて、授業サボって、保健室の天井のシミを238個も数えてる金髪不良少女がっ!…なんで、センセーになってんの?」
担任「…」
俺「俺…あんたのことを…、クソ担任のことを…好きに…」
担任「もう、先生じゃないから」
俺「…」
担任「ほんとはね、プリントを渡しに来たんじゃなくて…お別れを言いに来たの」
俺「…え?」
担任「先生、結婚するから学校を辞めるの」
俺「え…だ、誰と…?」
担任「…保健室の先生」
俺「は…?」
担任「先生、保健室の先生と長い付き合いだから…そう、金髪不良少女の時からね」
俺「そんなことって…」
担任「…」
俺「…」
担任「…さようなら」
俺「…」
と、担任、去っていく。
俺N「…そんなことって…あるのか?」
俺の両の拳が、行き場のない思いを握りしめる。
(終わり)
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