カーツ惑星調査団♯1『影の巨人 in 惑星テンボシ』 SF

「各惑星の生態系調査」という名目で、惑星カーツを出発した「カーツ惑星調査団」。 記憶喪失の団員、タノク・M・イリウス(20)は、自らの影を巨人化させて怪獣と戦っていた。 怪獣の生命エネルギーを、宇宙船の燃料とするために。
マヤマ 山本 16 0 0 07/29
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第一稿

<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20) カーツ惑星調査団団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46 ...続きを読む
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<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20) カーツ惑星調査団団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
 
矢浦(26)宇宙探偵
 
村長(70) #1ゲスト
渡り獣・デノン
門番獣・アガーボ   



<本編>
○惑星マスカ・外観
   宇宙空間に浮かぶ緑色の惑星。
   T「惑星マスカ」

○同・洞窟・前
   周辺に人工物のない山の中。

○同・同・中
   体長四〇メートル程の四つ足の怪獣が通れる高さ。
   掌サイズの鉱石を手に持ってやってくる女性、ナサマチ・F・ダラ(17)。ライト付きのヘルメットや防具付きの戦闘服など、男性陣と同様の服装。
   T「ナサマチ・F・ダラ 団員」
ダラ「ケルナー。これ、どや?」
   ダラから鉱石を受け取る少年、テシ・Y・ケルナー(8)。両手で包むように鉱石を握ると、鉱石から粒子状の光が発生し、その下にある乾電池のような物に吸い込まれるように鉱石が消えて行く。その乾電池のような物を懐中電灯にセットするテシ。灯りが付く。
   T「テシ・Y・ケルナー 団員」
テシ「うん、大丈夫。使えるよ、ダラちゃん」
   今度は乾電池のような物を握りしめるテシ。逆流するように粒子状の光が発生し、再び鉱石が出現する。
ダラ「ほな、この一帯の鉱石は使えるんやな。となると……」
   そこにやってくるひげ面で恰幅の良い男、ナサマチ・F・ルギエバ(46)。
   T「ナサマチ・F・ルギエバ 団長」
ナサマチ「あの怪獣が邪魔いう事やな」
   三人の視線の先、体長四〇メートル程の四つ足の怪獣、アガーボが眠っている。
テシ「怪獣さん、倒しちゃうの?」
ダラ「安心しぃ。ちょっとどいてもらうだけや。な、オトン?」
ナサマチ「(ヘルメットに内蔵された無線のボタンを押して)ナサマチからツエーツ号へ。プランBに移行」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピットや作戦机等がある広い部屋。
   作戦机に突っ伏して眠っている団員服の男、タノク・M・イリウス(20)。この時点ではまだ顔はわからない。
ナサマチの声「イリウスにもスタンバイするよう言うといてや」
   コクピットに座る男、ラヤドケ・S・リオト(33)。
   T「ラヤドケ・S・リオト 副団長」
ナサマチの声「サイズは……四〇って所やな」
ラヤドケ「ツエーツ号からナサマチ団長、プランBならびにサイズ四〇、了解。ご武運を」
   作戦机の方に振り返るラヤドケ。
ラヤドケ「タノクさん、出番ですよ」
   その声で目を覚まし、大きく伸びをするタノクの後ろ姿。
   再びコクピットに向き直るラヤドケ。
ラヤドケ「それではツエーツ号、発進します」

○惑星マスカ・森
   木々の間から浮上する巨大な円盤・ツエーツ号。

○同・洞窟・中
   レーザー銃を構えるダラ。腕時計で時刻を確認する。
ダラ「ほなプランB、スタートや」
   アガーボに向けレーザー銃を放つダラ。目を覚ますアガーボ。
ダラ「おはようさん。早よせな、遅刻するで?」
   逃げながらレーザー銃を放ち続けるダラ。怒り、ダラを追いかけるアガーボ。
   アガーボがいなくなった隙を見計らい、鉱石を回収するナサマチとテシ。
テシ「ダラちゃん、大丈夫かな?」
ナサマチ「心配せんでも、ワイの娘がそない美味いハズないやろ?」
    ×     ×     ×
   アガーボから逃げつつ、合間に銃撃するダラ。ちょっとした(アガーボにとっては段差程度の)崖はフック付きのロープを使ってあっという間に登る。
ダラ「ほらほら、コッチやコッチや」
   ダラの前方、出口から光が差し込む。

○同・同・外
   外に出てくるダラ。その前方、体長四〇メートル程の巨人、影タノクがいる。服装、装備等はダラ等と同一だが、まるで影のように全身が黒い。
   脇道に逃げるダラ。後方から現れたアガーボの突進を受け、投げ飛ばす影タノク。
影タノク「(ダラを見て)ったく、遅ぇよ。こちとら待ちくたびれちまったっての」
ダラ「うっさいわ。ソッチこそ、戦闘中によそ見して、負けても知らんで?」
影タノク「そん時は、そん時だろ。ほら、ダラもとっとと自分の仕事しろっての」
ダラ「はいはい」
   その場を後にするダラ。
   対峙する影タノクとアガーボ。
影タノク「さて、と。何して遊ぼうか?」
   アガーボと戦う影タノク。力は明らかに影タノクの方が上だが、決して倒そうとはせず、時間を稼ぐような戦い方。
   その間に大量の鉱石が入ったカゴを抱えて洞窟から出てくるナサマチとテシ。
ナサマチ「イリウス、もういいで~」
影タノク「了解。ダラ、寄越せ」
   影タノクの前方に剣の形の影が浮かび、実体化する。その黒い剣を手に取ってアガーボを攻撃し、後退させる。
影タノク「今だ」
   剣で地面に叩く影タノク。衝撃波と土煙が発生し、怯むアガーボ。
影タノク「ミッション終了。……邪魔したな」
   土煙が晴れ、アガーボが顔を上げると、そこには誰もいない。
   先ほどまで影タノクが居た場所の先、立方体の物体が置いてある。
    ×     ×     ×
   側面にダイヤルとスイッチ、反対側にはドアが付いた四畳半×六面程の大きさの立方体・サーゼボックスが置いてある。
   ドアの脇に立つダラ。影タノクの姿を探すように周囲を見回すアガーボの様子を見ている。やがてドアが開き、だるそうなタノクが出てくる。
タノク「あ〜、よく寝た」
ダラ「変な時間に寝ると、夜寝られへんで?」
   ここでようやくタノクの顔がわかる。
   T「タノク・M・イリウス 団員」
タノク「そん時は、そん時だろ」
   グータッチするタノクとダラ。
ダラ「ほな、早よ帰ろうや」
   二人の側、すぐにでも発進せんとするツエーツ号。

○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
   T「♯1 影の巨人in惑星テンボシ」

○航行するツエーツ号
矢浦N「カーツ惑星調査団」

○ツエーツ号・エンジンルーム
   採掘した鉱石を機械でエネルギーに変換している。
矢浦N「『各惑星の生態系調査』という名目で、惑星カーツを出発したこのチーム」

○同・共同スペース
   コクピットに座りタッチパネルを操作するラヤドケの他、思い思いに過ごすタノク、ダラ、テシ。皆、防具等は外している。
矢浦N「しかし、その実態は……」
   そこにフリフリのエプロンを着け、料理を持ってやってくるナサマチ。
ナサマチ「お〜い、ご飯出来たで~」
タノク「よっ、待ってました」
   作戦机に集まるタノク、ダラ、テシ。机の中央に料理を置くナサマチ。
ナサマチ「副団長。ソッチ持っていきまっか?」
ラヤドケ「いえ、ご心配には及びませんよ。ナサマチ団長」
   立ち上がり、杖をつきながら歩いてくるラヤドケ。右足を引きずっている。
タノク「いっただっきま〜す」
   ラヤドケを待たずに食べ始めようとするタノク。
ダラ「リオトさん来るまで待ったれや」
タノク「いいじゃねぇかよ。惑星マスカでの俺の大活躍、忘れちまったのか?(と言いつつ箸を置く)」
ダラ「何日前の話や?」
ナサマチ「まぁまぁ。そのおかげでこの何日か分のエネルギーを確保できたんやないか」
   その間に席に着くラヤドケ。
ラヤドケ「お待たせ致しました」
ナサマチ「ほな、いただきます」
一同「いただきます」
   料理を食べ始める一同。タノクのみ、他者の十倍近い量を食べている。
ダラ「なぁ、オトン。次の星にはいつ頃着くん?」
ナサマチ「あと二四時間くらいらしいで」
タノク「何、もう燃料切れ?」
ダラ「やっぱり、怪獣ぶっ倒してエネルギーに代えた方が早いんちゃう?」
テシ「ダメだよ。怪獣さんがかわいそう」
ナサマチ「そういう事や。それはあくまでも最終手段なんやからな」
タノク「で、次の星はどんな所なの?」
ラヤドケ「はい。惑星テンボシ」

○惑星テンボシ・外観
   宇宙空間に浮かぶ橙色の惑星。そこに向かって行くツエーツ号。
   T「惑星テンボシ」
ラヤドケの声「過去の調査報告書によりますと、まだ文明のあまり発達していない星のようですが……」

○同・村
   簡素な家が建ち並ぶ村。それぞれの家の庭に鶏小屋や畑があり、自給自足の生活を思わせる。
ラヤドケの声「非常に大きなエネルギー反応を関知しました」
   停泊しているツエーツ号。
   ナサマチと村長(70)を囲むように向かい合うタノク、ダラ、テシと村人達。村長も村人達も簡素な服装。
村長「カーツ惑星調査団さん、ですか。この星の調査に見えた、という事ですかな?」
ナサマチ「いや、帰路を急いでましてな。エネルギーの補給をさせてもらえれば、と」
村長「そうでしたか。しかし残念ながら、この星はご覧の通りです。宇宙船のエネルギーなんぞ、とてもとても」
テシ「渋ってもいい事ないよ。この星にエネルギーがあるのはわかってるんだから」
タノク「どこで覚えんだよ、そんな台詞」
村長「そう言われましてもな……」
ダラ「何でもええんですよ。鉱石でも、自然エネルギーでも、それから怪獣でも」
村長「怪獣?」
   周囲の村人達の目の色が変わる。
ナサマチ「え、えぇ。怪獣の生命エネルギーも、宇宙船のエネルギーに変換出来るので」
村長「という事は、あの怪獣を駆除していただける、という事ですかな?」
タノク「あの怪獣?」

○同・山の上
   体長七五メートル程の怪獣・デノンが翼をはためかせ、飛んでいる。
ラヤドケの声「この怪獣は、デノン。人間を主食とする怪獣です」

○ツエーツ号・共同スペース(夜)
   作戦机を囲むタノク、ダラ、テシ、ラヤドケ、ナサマチ。(タノクのみ、食事をしながら)モニターに映るデノンの映像を観ている。
ラヤドケ「様々な惑星で姿を確認されており、渡り獣の一種であると考えられています」
ナサマチ「実際、『これまで怪獣なんて影も形もない星だった』って言うてたしな」
テシ「ねぇ、渡り獣って?」
タノク「何?」
ダラ「一つの星に定住するんやなくて、色んな星を転々として行く怪獣の事や」
テシ「さすがダラちゃん、物知りだね」
タノク「だね」
ダラ「(タノクに)うっさい」
テシ「でも、怪獣さんを他の惑星に連れて行くのって、ダメなんじゃなかったっけ?」
ダラ「せや。人間が怪獣を他の惑星に連れて行くのはあかんで」

○(イメージ)宇宙
   人間が惑星から惑星へと怪獣を運ぶ様子に重なる大きなバツ印。
ダラの声「生態系も壊れてまうし『エネルギー源の密猟』やしね。それを禁止した法律が、惑星間怪獣流通禁止法、って訳や」

○ツエーツ号・共同スペース(夜)
   作戦机を囲むタノク、ダラ、テシ、ラヤドケ、ナサマチ。
ダラ「せやけど、所詮は人間の法律。怪獣が勝手に行き来してまう分には関係あらへんわ」
タノク「わかったか、テッシー?」
テシ「うん、ありがとう」
ダラ「(タノクに)横取りすなや」
ラヤドケ「話を戻しましょう。気になるのは渡り獣が百日以上、一つの星に居続けている、という点です」
ダラ「やっぱり、繁殖?」
ラヤドケ「おそらく」
ダラ「うわ~、厄介やな~」
タノク「ちょっと待った。話が勝手に進んでっけど、他には何も見つかってねぇの?」
ダラ「他のエネルギー源、いう事?」
ラヤドケ「それらしき反応は見受けられませんでしたね」
ダラ「それに、あの怪獣倒せば、ウチらはエネルギー、この星の人は安心安全な生活をゲットでウィンウィンやん?」
テシ「だからって怪獣さん倒しちゃうの?」
ダラ「人喰う怪獣相手に、同情なんていらへんやろ?」
テシ「かわいそう」
ナサマチ「こら、ダラ。忘れたらあかんで。怪獣倒すんは、あくまでも最終手段や」
ラヤドケ「ですが、ナサマチ団長。今回は他に手がない以上、その最終手段しか残されていないと思われます。ご決断を」
ナサマチ「……仕方あらへん。明日、プランCの実行及び、プランEの準備や」
ラヤドケ「了解しました」
ダラ「ほな、頼んだで、イリウス」
タノク「……ごちそうさん」
   席を立つタノク。
ダラ「?」

○同・タノクの部屋・中(夜)
   棚に多くのボトルシップが飾られた室内。部屋の灯りを付けず、ベッドに横たわるタノク。ドアをノックする音。
タノク「どうぞ」
   入ってくるダラ。
ダラ「何や? 電気も付けんと」
   部屋の灯りを付けるダラ。机の上にある作りかけのボトルシップを見つける。
ダラ「捗ってへんな~」
タノク「疲れんだよ、ソレ。っていうか、何が面白ぇの?」
ダラ「それ、そっくりそのまま、昔ウチが言ったセリフや」
タノク「あ、そ。……で、何の用?」
ダラ「明日の作戦、乗り気やないみたいやからな。何でや? 『疲れるから』とか言うたら、怒るで?」
タノク「別に、何か嫌だってだけだよ」
ダラ「『何か』って何や?」
タノク「わかんねぇよ。ただ……」
ダラ「ただ?」
タノク「多分『記憶を失くす前の俺が思ってた事を、体が覚えてて』って感じ」
ダラ「ふ~ん。昔は『いつか俺も怪獣倒せるようになるんだ』って言うてたのにな」
タノク「だから覚えてねぇんだっての」
ダラ「……で、明日はどうするん?」
タノク「心配すんな。チームとして作戦が決まっちまったんだ」
ダラ「『そん時は、そん時』?」
タノク「飯代分くらいの仕事はすっから。わかったら、もう寝かしてくんねぇか?」
ダラ「……明日、寝坊するんやないで?」
   部屋を出て、ドアを閉めるダラ。
タノク「……電気消せよ〜」

○同・同・前(夜)
   ドアの前に立つダラ。寂しそうな表情。
ダラ「……いつになったら、思い出すねん」

○惑星テンボシ・丘の上(夜)
   高い丘の上に立つ男、矢浦(26)。おしゃれなハット、スーツ、ネクタイを身にまとっている。この時点ではまだ顔は分からない。
ダラの声「イリウスのアホ」
   矢浦のいる場所から見える、停泊したツエーツ号。
矢浦「カーツ惑星調査団」
   同じ場所から見える、デノンの巣。
矢浦「相対するは、渡り獣・デノン」
   踵を返す矢浦。
矢浦「まずは拝見するとしよう、お手並みを」

○同・同(朝)
   朝日に照らされるツエーツ号。

○ツエーツ号・共同スペース(朝)
   並んで防具、武器等を準備するタノクとダラ。
ダラ「昨日はよう眠れたか?」
タノク「おかげさまで」
ダラ「頼りにしてるで?」
タノク「勝手にしな」

○惑星テンボシ・山の麓(朝)
   ツエーツ号から降り、フル装備で並び歩くタノク、ダラ、テシ、ナサマチ。
ラヤドケの声「では、作戦内容を確認します」

○同・共同スペース
   コクピットに座るラヤドケ。
ラヤドケ「まず、巣を攻撃して渡り獣を誘い出します」

○惑星テンボシ・山の麓
   山の頂上に向けて銃撃するタノク、ダラ、テシ、ナサマチ。
ラヤドケの声「繁殖中であれば、すぐに反応があるでしょう」
ダラ「早速お出ましみたいやな」
   タノク達の元へ、飛んでくるデノン。
ナサマチ「プランC、開始や」
タノク&ダラ&テシ「了解」
   レーザー銃を構え、一斉に放ち始めるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ。一瞬怯み、着陸するデノン。着陸時は二足歩行。
タノク「うわ、デカっ。引くわ~」
ダラ「こら、イリウス。無駄口叩く暇あったら、攻撃しいや」
   レーザー銃を放つタノク、ダラ、ナサマチ。嫌がってはいるが歩みを止めないデノン。
テシ「効いてないね」
ダラ「バラバラだとダメやな。同時に同じ場所狙うで?」
   レーザー銃を同時に放つタノク、ダラ、テシ、ナサマチ。四本のレーザー光線が一点に集中し、デノンが思わず足を止める程のダメージを与える。
ナサマチ「(ヘルメットに内蔵された無線のボタンを押して)副団長、今や」
   付近に停まっているツエーツ号、先端から巨大なレーザー砲が伸びている。(尚、頂点部分にはアンテナの様なパーツも付いている)。

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピットに座るラヤドケ。
ラヤドケ「了解。プワツナー砲、発射」

○惑星テンボシ・山の麓
   ツエーツ号から伸びるレーザー砲が強大なエネルギーを収束し、放つ。砲撃を浴び、その姿が煙に包まれるデノン。
ナサマチ「やったか?」

○同・村
   煙が晴れ、悠然と歩くデノンの姿。それを見ている村長や村人達。
村長「あれ程の攻撃が効いておらんとは……」
   動揺する村人達。

○同・山の麓
   ツエーツ号の脇に置かれたサーゼボックス。ドアの前に立つタノクとダラ。
ダラ「やっぱり、やな」
ナサマチの声「(無線から)ナサマチから各位、プランEに移行や」
ダラ「了解」
タノク「結局、いつもこうなんだもんな〜」
ダラ「イリウス、ごちゃごちゃ言わ……」
タノク「わかってっから。疲れんのも嫌だし、怪獣と戦うのも嫌だけど、俺だってこんな所で死にたかねぇっての」
ダラ「なら、えぇ」
   ダラとグータッチをし、サーゼボックスの中に入って行くタノク。

○サーゼボックス・中
   四畳半程の真っ暗な室内。一息ついたタノクが部屋の中央に立つと、一気に室内が明るくなる。

○同・山の麓
   サーゼボックスからタノクの影が伸びている。サーゼボックスのダイヤル側に立つダラの元にやってくるテシとナサマチ。
ダラ「オトン、サイズは?」
ナサマチ「せやな……七五って所やな」
ダラ「サイズ七五、了解」
   ダイヤルを調節するダラ。それに合わせてタノクの影が七五メートル程に伸びる。(地肌の露出した崖にその影が映り、デノンと同じ高さになる)。
ダラ「サーゼシステム、起動!」
   ダイヤル脇のスイッチを押すダラ。起動音が流れ、タノクの影に沿って走る電流。

○サーゼボックス・中
   タノクの体にも走る電流。
タノク「はぁぁぁあああ!」
   一瞬強さが増し、それを最後に止む電流。同時に意識を失い倒れるタノク。

○惑星テンボシ・村
   村長や村人達が見守っている。一瞬増した強さのままタノクの影を走る電流。すると影が実体化し、影タノクとなる。村人達からあがる感嘆の声。
村長「な、何と……。影が、巨人に……?」

○同・山の麓
   対峙する影タノクとデノン。
影タノク「よぉ。どっちが勝っても、そん時は、そん時。恨みっこ無しでいこうぜ」
   戦い始める影タノクとデノン。喧嘩のような戦い方だが、デノンを圧倒する影タノク。不利を悟り、飛んで逃げようとするデノン。それを力づくで引きずり下ろす影タノク。
影タノク「飛ぶなって。俺、飛べねぇんだから」
   再び対峙する影タノクとデノン。
影タノク「しゃあねぇ、逃げられちまう前にとっとと決めっか。おい、ダラ。寄越せ」
   サーゼボックスの脇で戦況を見上げているダラ。
ダラ「はいはい。そろそろ来る思うてたわ」
   一辺一〇センチメートル程のミニチュア版サーゼボックス(=ミニサーゼ)を取り出し、レーザー銃の先端に取り付けるダラ。そのさらに先端に剣が描かれたフィルムを差し込む。ダラがレーザー銃の引き金を引くと、巨大な剣の影が浮き出る。側面のダイヤルを回して影の大きさを調節するダラ。
ダラ「サイズ七五。ミニサーゼシステム、起動!」
   ダイヤル脇のスイッチを押すダラ。電流が走り剣の影が実体化、黒い剣となる。その黒い剣を手に取り、攻撃する影タノク。デノンにさらなるダメージ。
影タノク「悪ぃな、これで終わりだ」
   必殺技の構えをとる影タノク。
影タノク「シャドーストライク!」
   剣でデノンの胴体を真っ二つに斬る影タノク。爆発四散するデノン。
影タノク「副団長、あとはよろしく」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピットに座るラヤドケ。
ラヤドケ「エネルギー吸収、開始致します」

○惑星テンボシ・山の麓
   ツエーツ号の頂点部分にあるアンテナのような機械でデノン爆発によるエネルギーを吸収する。ゲージがみるみる間に溜まって行く。
   その様子を見ている影タノク。
影タノク「いただいた命、無駄にはしねぇよ。じゃあな」
   巨人の姿から影に戻って行く影タノク。その影も徐々に短くなっていく。

○サーゼボックス・中
   真っ暗な室内に、うつ伏せで倒れているタノク。目を覚ます。仰向けになり、天井を見つめ、一息つき、立ち上がる。

○惑星テンボシ・山の麓
   サーゼボックスから出てくるタノク。ドアの脇に立つダラ。
ダラ「お疲れ。村長さんが、怪獣倒してくれたお礼に食事会開いてくれるんやて」
タノク「じゃあ早速、一食分稼いだって事か」
ダラ「そういう事やな」
   グータッチの構えを見せるダラ。それに気付きながらも応じないタノク。
ダラ「(様子を察し)手洗い場、アッチやで」
タノク「……洗いきれりゃいいけどな」
   歩くタノクの背中を見つめるダラ。

○同・村(夕)
   多数のテーブルや空の食器が並んでおり、盛大な宴があった事が伺える。
    ×     ×     ×
   ツエーツ号の周囲に集まるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、村長、村人達。
村長「本当に、この度は何とお礼を申し上げたら良いか……」
ナサマチ「いえいえ。こちらこそ、ごちそうさんでした」
村長「(村人に)皆、我が村を救ったヒーローを万歳で送り出すとしよう」
   万歳する村長、村人達。
タノク「止めてくれ」
村長「え?」
ダラ「イリウス……?」
タノク「俺は、俺達は……」

○(フラッシュ)同・山の麓
   デノンを倒す影タノク。
タノクの声「俺達が生きていく為だけに、俺達の都合で、俺達の勝手で、あの怪獣の命を奪ったんだ」

○同・村(夕)
   ツエーツ号の周囲に集まるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ、村長、村人達。
タノク「悪者扱いされんならともかく、ヒーロー扱いされんのは、筋違いだっての」
   気まずい空気が流れる。
ナサマチ「えっと……」
矢浦の声「少しだけよろしいかな、カーツ惑星調査団の諸君?」
   村人達の間を割って入ってくる矢浦。
テシ「誰?」
矢浦「失礼。小生、名を矢浦という者」
タノク「矢浦……?」
   顔を見合わせるタノクとダラ。「誰?」「さぁ?」というジェスチャー。
ナサマチ「で、矢浦さんとやら。何の用で?」
矢浦「其方達の状況、一言で現すなら……」
   レーザー銃を構える矢浦。
   驚く一同。
矢浦「油断」
   レーザー銃を発砲する矢浦。
              (♯2へ続く)

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