Dried flower アクション

荒廃した世界。 キャンピングカーを改造した『移動診療所』で各地を巡る、一組の男女がいた。 無免許医者のロブと、片目の看護師サヤカだ。 これは、二人の旅と、サヤカの復讐の物語。
神吉亜美 5 0 0 07/05
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第一稿

『登場人物』

○ロブの移動診療所
  サヤカ(推定20代前半)
  ロブ(27)

○バー・ロドリゲス
  ノノ(14〜15位)
  マスター(38)
  常連 ...続きを読む
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『登場人物』

○ロブの移動診療所
  サヤカ(推定20代前半)
  ロブ(27)

○バー・ロドリゲス
  ノノ(14〜15位)
  マスター(38)
  常連のオヤジ
  その他、常連たち

○ヤクザたち
  雑魚ヤクザ
  雑魚ヤクザの子分A・B
  蛇タトゥーの男(32)
  斎藤(48)
  ナイフのヤクザ
  その他、子分たち

○ノノの家族
  ノノの父親(42)
  ミイ(7)

○ラジオDJ
  ファンキー・ジョージ

その他




〇回想、曇天
土砂降りの雨。
女性の苦しそうな息遣い。
仰向けに倒れ、空を見上げる女性。
その女性の目線。自分を取り囲む無数の人影。
(人影の正体は陰になっていてよく見えない)
女性は助けを求めるように、空に向かって力なく手を伸ばす。
その女性の、見開いた瞳のアップで。
荒くなる息遣い。
暗転。回想終わり。

〇現在、バー・ロドリゲス店内(早朝)
暗闇。
シャッターを上げるノノ(14)。
暗かった部屋に光が差し込み、そこが小さなカウンターバーだった事が解る。
店の前で朝日を浴び、大きく伸びをするノノ。
再び店内、ラジオのダイヤルを回すノノ。
ラジオDJ「……ザ……ザザ、のプログレ・ロックバンド『ゴブリン』で『フェノミナ』をお送りいたしました! と言う訳で、今日も無事に朝を迎える事の出来た、そこの君! おはよう!『シックスストリングス・モーニングショー』のお時間です! お相手は私、毎度おなじみのファンキー・ジョージが、ゲリラ放送にてお送りしております! いやあ、それにしてもさ……」
ラジオの音をバックに、手際よく開店の準備を進めていくノノ。
ラジオDJ「それじゃ、ちょっと気分を変えて、ポップなナンバー、行ってみようか!」
ラジオの音が大きくなり

〇同、街の様子
ラジオの音楽に乗せて
立ち並ぶ、落書きだらけのボロ屋。
廃墟になったビル。
道路はヒビ割れ、雑草が揺れている。
漂う終末の雰囲気。
その中を走る、一台のバイク。
乗っているのは、フェイスマスクをした巨体の男。
男は店のシャッターが開いているのを見てバイクを降りる。
ライフルを構えて店に近づき、中を覗き込む男。
店内にノノ。
ため息をつく男。

〇バー・ロドリゲス店内
店へ入って来る男、マスター(38)。
ノノ「(グラスを拭きながら)あ! おはようございます、マスター!」
マスター「(フェイスマスクを外し)何だ何だ、こんな時間から。昼間の営業でも始めようってのか?」
そう言いながら、カウンターにドカンと年代物のウイスキーを置く。
ノノ「おおっ!?」
ノノは拭いていたグラスを置き、カウンターの椅子にピョンと飛び乗る。
ノノ「(ウイスキーを覗き込み)なんか、すごそう」
マスター「久々の新入りだ(上着を壁に掛け)ったく、あの頑固ジジイめ。こいつと引き換えに溜め込んでおいたハイオクを、全部持って行きやがった。
(ボルトを手に取り)どうだ、お前も一杯いってみるか?」
ノノ「え? えっと……あたし、まだ子供だし」
マスター「(大笑いし)どうしたどうした、お前らしくもない。まさか、まだ引きずってんのか?」
ノノ「ベッ! 別に引きずってなんか。ただちょっと、飲まない方がいいかなって」
マスター、ウイスキーを注ぎながら
マスター「ま、確かにありゃ考えもんだぜ。あの斎藤さんに喧嘩を売るとはな」
ノノ「(ボソッと)『さん』なんて、いらないよ。あのエロジジイ」
マスターはウイスキーをグイッと呑み干し
マスター「ッカアー!」
空になったショットを、カウンターにガンッと叩きつける。
ノノ「あたし、本気で心配したんだよ。この店、無くなっちゃうんじゃ無いかって。絶対やだもん、そんなの」
マスター「(ニコッと笑い)心配すんな、ここは無くなんねえよ」
ノノの背中をパシンと叩くマスター。
ノノ「痛っ!」
マスター「何だ……どうした」
ノノ「何でもない(椅子から飛び降り)さて、仕事仕事!」
ノノ、逃げ込むようにカウンター奥の倉庫へ。
マスターは何かを察した顔で。

〇バー・ロドリゲス、倉庫
倉庫の奥、鏡に映るノノの脇腹に大きな火傷跡。
火傷は化膿して腫れ上がっている。
マスター「また、親父さんか?」
ビクリと反応するノノ。
ノノ「ビックリしたあ、覗きだ! 覗き!」
マスター「いいから、ちゃんと見してみろ」
ノノ「(目をそらし)別に、何でもないよ」
シャツをたくし上げるノノ。
マスター「ああ、こりゃ、酷いな」
ノノ「水で冷やしたら、こうなった」
マスター「水って、どこの」
ノノ「水は、水だよ」
マスター「(ため息をついて)こりゃちゃんと、医者に診てもらった方がいいと思うぞ」
ノノ「医者なんて(笑って)そんなの何処にいるんだよ」
マスター「何だ、お前知らなかったか?」
「?」となる、ノノで。

〇同時刻、どこかの小さな部屋(キャンピングカー車内)
扉に書かれた「関係者以外立入禁止」の文字。
化粧台に積まれた、汚い化粧品や香水の数々。
その中には消臭スプレーや防腐剤の姿も。
鏡の前で男物の白衣に袖を通す、女性の後ろ姿。
白衣から黒い髪を搔き出す。
チラリと見えた首元には、大きな縫い目跡。
顔を上げ、鏡を見る女性。サヤカ(23)。
右目は前髪で隠れている。
ジッと鏡を見つめるサヤカ。
表情が険しくなる。
鏡には、白目を剥いた、もう一人の自分の姿(幻覚)。
鏡の中のサヤカは、何かを訴えかける様に手を伸ばし、内側から鏡に手を当てる。
その手に、吸い寄せられるように触れようとするサヤカ。
ロブの声「……カ……ヤカ……サヤカ!」
ふと我に帰る。
振り向くと、白衣姿の青年、ロブ(27)が扉を開け顔を覗かせている。
ロブ「そろそろだよ」
心ここに在らずのサヤカ。
ロブ「大丈夫かい?」
サヤカ「……ああ(眼帯の紐を耳に掛け)すぐ行く」(眼帯の中の目は見せない)
硬くなった手をほぐす様に、2〜3度グーパーを繰り返すサヤカで。

〇同、街外れの広場
駐まっている一台のキャンピングカー。
車から出てきたロブ。
タープが伸びて、何やら店開きの様な雰囲気だ。
『ロブの移動診療所』と書かれた看板を立て「フウッ」と汗を拭う。
広場で待つ人々。ロブはその中の一人の少年と目が合う。
母親の背中に隠れる少年。
その少年に笑顔で手を振るロブで。

〇同日、街外れの広場へ向かう道
街を取り囲む有刺鉄線。
その内側を、沿う様に歩くノノ。
右手には荒野が静かに広がっている。
そして、左手には鉄骨で組まれた櫓が立ち並ぶ。
上からの声「よお、ノノちゃん」
櫓を見上げるノノ。
櫓から身を乗り出し、荒野を眺める中年男性(常連のオヤジ)。
ノノ「あ! おはよう、おっちゃん! 今度はどうしたんだ?」
常連のオヤジ「(照れ笑いし)いやあ、カミさんとちょっとな(遠くを見つめ)ここは静かなもんだ」
ノノ「(荒野を見て)奴ら、昼間はあんまり歩いてないんだね」
常連のオヤジ「どうだかな……それよりノノちゃん。今日もいるんだろ? 後で顔出すからよ」
ノノ「(笑顔で)はいはい」
広場へ向かおうとするノノ。
常連のオヤジ「ん? もしかしてノノちゃん、広場の診療所にでも行くのかい?」
ノノ「(振り返って)え? うん、まあそんなとこ」
常連のオヤジ「だったら今は、ちょっとタイミングが悪いかもしんねえよ」

〇同、キャンピングカー、タープ内、診療スペース
蹴り飛ばされるトレー。
雑魚ヤクザの声「痛えな!」
胸ぐらを掴まれ、壁に叩きつけれられるサヤカ。
サヤカは雑魚ヤクザの後ろのロブに目線を送る。
ロブ、小さく首を横に振る。
面倒臭そうな顔をするサヤカ。
雑魚ヤクザ「何だ? その目は」
サヤカ「……」
雑魚ヤクザ、歯をギリッと噛み。

〇同、広場、キャンピングカー前
雑魚ヤクザに突き飛ばされ、タープから転がり出てくるサヤカ。
続けて、子分たちと出て来た雑魚ヤクザ。
起き上がろうとするサヤカの髪を掴んで、持ち上げる雑魚ヤクザ。
睨むサヤカ。
雑魚ヤクザ「だから、その目は何だって聞いてんだ、よ!」
サヤカを地面に叩きつける雑魚ヤクザ。

〇サヤカの回想1(イメージ)
叩きつけられた瞬間、地面を突き破り、そのまま暗闇に落ちるサヤカ。
ロブの声「待ってくれ!」
回想終わり。

ハッと我に帰るサヤカ。
倒れたサヤカに覆いかぶさっている、雑魚ヤクザ。
サヤカは自分を押さえつけた雑魚ヤクザの腕を掴んでいる。
サヤカの手に違和感を感じ「何だ?」と、眉間にシワを寄せる雑魚ヤクザ。
ロブ「待ってくれ。ここは人を治す場所だ。怪我人は出したくない」
雑魚ヤクザ「(気を取り直し)知らねえなあ。てめえの教育が悪いからこういう事になるんだろうが。そうだろ先生」
ロブ「やめてくれ(頭を下げ)頼む!」
雑魚ヤクザ「(ニヤリと笑い)まあまあ先生、顔を上げてくださいよ。俺がしっかり教育してやっからよ」
雑魚ヤクザは、サヤカの口に指を何本かねじ込み
雑魚ヤクザ「この使えねえ女。(ニヤリと笑い)お前、臭えんだよ」
「あちゃー」という表情のロブ。
ピクリと眉間にしわを寄せるサヤカ。グッと拳を握る。
SE「バリーン!(突然、ガラスの砕ける音)」
突然飛び散るガラスの粉。
唖然とし、口を開けたまま固まる子分たち。
雑魚ヤクザの下で真顔のままビショビショになっているサヤカの頬に、ポタリと血が落ちる。
ロブも唖然とする。
見ると、割れたシャンパンボトルを持って立っていたのは、ノノだ。
ノノ「その人を放せ!」
雑魚ヤクザ「(振り返り)て、ててててめえ! お、俺様が斎藤一家のもんだって事、知っての上で」
子分A「(遮る様に)いや、兄貴! (小声で)この子はちょっとやべえっす」
雑魚ヤクザ「ああ!?」
子分B「あ、あの店のガキか!」
雑魚ヤクザ「あの店ってどの店だ!」
子分B「ロドリゲスっすよ、ほら!(小声で)斎藤さんの」
雑魚ヤクザ「ああ(少し考え)チッ」
サヤカを解放し
雑魚ヤクザ「ちっきしょう、ベトベトじゃねえか。(子分たちに)おい」
子分たち「へい!」
雑魚ヤクザ「行くぞ」
帰る雑魚ヤクザたち。去り際に振り返り
雑魚ヤクザ「この続きはまた今度な、かんごふさん」
去って行く雑魚ヤクザ。
それを見つめるサヤカ。
ノノ「あの、大丈夫ですか?」
その声に振り向くサヤカで。

〇タープ内、診察室
ノノの腹に包帯が巻かれている。
ロブ「……はい」
ノノ「ありがとうございます」
ロブ「お代はいりませんよ。助けてくれたお礼です」
ノノ「いえ! そんな訳には行きませんよ!(カバンを開け)……あれ?」
空っぽのカバン。
ノノ「ん? あっ!」

〇ノノの回想
店を出ようとするノノ。
マスター「ノノ!」
振り返るノノ。
マスター「治療費だ、持ってけ」
シャンパンを手渡すマスター。
回想終わり。

ノノ「ああああ!」
「やっちゃった」いう顔をするノノで。

〇同日、バー・ロドリゲス店内(夜)
マスター「ッハハハハハハ! 飲め飲め、素面でも結局おめえのやることは変わんねえ」
ノノ「うるへいろ!」
カウンターに座っているロブとサヤカ。
奥の円卓には常連のオヤジ達。
ベロベロに酔っ払っているノノ。
ロブ「(苦笑いで)マスター。医者の前で未成年に酒を進めるのは、さすがにどうだろうか」
マスター「何言ってやがんだい先生。こんなご時世、健康も何もあったもんじゃねえだろ!(サヤカに)なあ姉ちゃん」
ストローでオレンジジュースを飲んでいるサヤカ。
ロブ「まあ、一応ね」
マスター「お、(空になったサヤカのグラスを見て)姉ちゃんどうする?」
サヤカ「同じもの」
マスター「あいよ」
サヤカの前のグラスにオレンジジュースを継ぎ足すマスター。
サヤカ「(ロブに小声で)何故止めた」
ロブ「(小声で)お前の相手は、あんな雑魚じゃないだろ?」
サヤカ「……」
ロブ「(ノノを見て)それにしてもノノちゃん」
ノノ「んにゃ?」
ロブ「あんな事して、よく無事だったね。驚いたよ」
ノノ「んあ? ああ、あいつらあたいにあ、てえらせらいんら! ヒック(しゃっくり)」
ロブ「えっと……何かな?」
マスター「この街を仕切ってる斎藤一家の頭さ」
ロブ「斎藤さん?」
グラスを見つめるサヤカの表情が、少し険しくなり
マスター「ああ。やつぁ、こいつをモノにしたいのさ。ノノにイカれちまってる」
ノノ「(手酌しながら)『さん』らんて、いららい! あろ、ロリロンやろう。ばか、ばあか!」
常連のオヤジ「俺も好きだぜ! ノノちゃん」
他の常連「俺も好きだ!」
他の常連「あ、俺も俺も! 結婚してくれや!」
ノノ「うるへえ! ろいつもこいつも、みんなきらいら!」
常連のオヤジ「そんなこと言うなよノノちゃん。俺らがこんなシケた店に通ってんのは、ノノちゃんがいるからだろ? なあ」
他の常連「ああ、その通りだ!」
ノノ「(顔を赤く染め)ら、らまれらまれ!」
マスター「おい! シケた店で悪かったな!」
笑う一同。
※ ※ ※
カウンターに突っ伏し眠っているノノ。
ノノを見ているロブ。
ノノ「(寝言で)ママ……」
寝言を言いながら、うっすら涙を浮かべるノノ。
マスター「こいつも色々と背伸びしてるつもりだろうが、こうやって見ると、まだまだ小せえガキだぜ」
ノノの頭を撫でてみるサヤカ。
店にはロブとサヤカが残っている。
目を醒ますノノ。
ノノ「んん……あれ、ママ?」
マスター「なに寝ぼけてんだ。他の奴らは、みんな帰ったぞ」
ノノ「ん、あたしも帰んないと。ミイがご飯待ってる」
ノノはうっすらと浮かべた涙を、指で拭き
ノノ「お姉さん、いい匂いするね。あたし何か、色々と思い出しちゃった」
※ ※ ※
ノノ「お疲れ様です」
ドアの前で振り返り、手を振るノノ。
手を振るロブと、真顔のサヤカ。
マスター「おい、これ持ってきな!」
缶詰を投げるマスター。
それをキャッチし、店を出るノノ。

〇同、バー・ロドリゲス前
一瞬立ち止まり、ため息をつくノノ。
顔を上げて歩き出し。

〇夜中、ノノの自宅
部屋から出て来る斎藤の右腕、蛇タトゥーの男(32)。
蛇タトゥー「お邪魔しましたあ」
蛇タトゥーは玄関で、ノノと擦れ違う。
彼の首には大きな蛇のタトゥーが。
その後を厳つい子分たちが続く。
下を向いてシカトするノノ。
蛇タトゥー「(去り際に振り返り)可愛い娘さんですね! 大事にしてください!」
台所の床、流しに寄りかかる様にしゃがみ込んだ、ノノの父親(42)。
殴られた顔は、晴れ上がり血だらけだ。
ノノの父「(廊下に立ったままのノノを見て)なんだ、遅かったじゃねえか」
ノノの父「なあノノ、ちょっとこっち来てとーちゃんを励ましてくれねえか」
下を向いたまま、その場を動かないノノ。
ノノの父「チッ、また反抗期か。もういい」
そう言ってヨッコラセと立ち上がり
ノノの父「ミイ、何処だあ」

〇ノノの家、奥の部屋の押入れ内
壊れたおもちゃなどが並び、隠れ家の様になっている。
妹のミイ(7)が膝を抱え、震えながら隠れている。
ノノの父「ミイ!」
部屋の奥へ向かう父親。
意を決して父の元へ駆け寄るノノ。
ノノ「(父の服を掴み)パパ!」
ノノの父「何だ」
ノノ「その、ごめん……なさい」
手を上げる父親。
歯を食いしばり目を瞑るノノ。
父親はノノの頭をそっと撫でる。
「え?」となり、目を開けるノノ。
不意にビンタが飛んで来る。
ゴミだらけの万年床に倒れ込むノノ。
ノノは悔しさとショックが入り混じった様な顔で、父を睨みつける。
ノノの父「だから、何だ。何だって聞いてるんだよ」
押入れの中でうずくまる、ミイの腕には火傷の跡。
SE 殴られる音など。
ミイは耳を塞ぐ。
押入れの外から響く虐待の音。

〇数時間後、街はずれの広場、キャンピングカー前
車内から一人出てくるサヤカ。
何かを探るように、辺りを見て回る。
サヤカ、街の境界で、ふと有刺鉄線の向こう側に目をやる。
櫓に灯された松明が荒野の数メートル先を照らしている。
その先に広がる先の見えない暗闇。
暗闇の中にうごめく何かの気配。
その時、サヤカの後ろの方から、パラパラと砂の落ちる音。
サヤカ「(バッと振り向き)誰だ」
櫓の、更にその向こう側。
高台になった岩場の上に人影が。

〇高台の上の墓場
人影の元へやってくるサヤカ。
高台は墓場の様だった。
墓の前に立っていた、ノノの後ろ姿。
ノノ「(背中を向けたまま)助手の、お姉さん?」
ノノ「(振り返り)直ぐに解ったよ。いい匂いがしたから」
ノノの横へ立つサヤカ。
ノノ「お母さんのお墓なんだ。でもね、きっともう、ここにはいない」
サヤカ「それは『奴ら』に……」
ノノ「(首を横に振り)あのね、あたしが小さい頃、お母さんが教えてくれたんだ。昔の人はね、生前に強い思いを残して死ぬと、その場所とか物とかにね、魂が宿るって信じてたんだって」
サヤカの髪が風になびき、眼帯が顔を出す。
ノノ「でもね。ちゃんと旅立つことができると、その人の魂は風に乗って空へと上がって行くんだって。だからお母さんは、もう空の上にいてくれたらいいなって、そう思ったんだ」
サヤカ「そうか」
ノノ「うん……お母さん、会いたいよ(声が震え出し)会いたいよ」
ノノの肩に手を置いてみるサヤカで。

〇同、街はずれに駐められた黒いワゴン車
車内には身ぐるみを剥がされ横たわる女性。
雑談する子分たち。
神妙な面持ちで自分の手を見つめている雑魚ヤクザ。
子分A「ねえ兄貴、兄貴?」
雑魚ヤクザ「ん? ああ、すまねえ」
子分A「ったく、どうかしたんすか? 兄貴」
雑魚ヤクザ「いや、あの看護婦に腕掴まれた時よう、何となく嫌な感じがしてな」
子分A「ってえと、何すか?」

〇同、キャンピングカー内
ベットに蹲り、頭を抱えてうなされているサヤカ。
雑魚ヤクザ(N)「妙に、冷てえんだ、まるで死体に触ってるみてえだった」
サヤカ「(震える様に)来るな、やめろ……やめて……」

〇翌朝、バー・ロドリゲス、店内
冒頭と同じ様にシャッターを開けるノノ。
顔には青痣がある。
入ってくるマスター。
マスター「何だ何だ、今日も早いじゃないか」
ノノ「(笑顔で)昼間の営業でも始めようかなって」
マスター、ノノの顔の痣を見て
マスター「そうだった! 今日はいいもん持って来たぞ」
マスター、テーブルにカバンをドンッと置き
マスター「リバーシゲームだ。知ってるか?」
マスターの気遣いに、笑顔を見せるノノで。

〇同日、バー・ロドリゲス店内(夕方ごろ)
カウンターの上に置かれたオセロの石がどんどん黒色に変わって行く。
ノノ「へっへえ! もしかして3勝0敗行けちゃう!?」
ノノの相手をしていたのはサヤカ。
二人はカウンター席に並んで座っている。
丸テーブルには相変わらず、常連のオヤジが3人程。
少しムッとした顔のサヤカ。奥で飲んでいたロブに目線を送る。
サヤカの目線に気付き、こちらを見るロブ。
サヤカ「(席を立ち)後、お願い」
ロブ「(ため息を付き)どれどれ」
サヤカと入れ替わり、石を置くロブ。
※ ※ ※
石の置かれたボードは、いつの間にか白だらけになっている。
ノノ「(楽しそうに)ああ! だめだめえ!」
サヤカはカウンターの奥でジュースを飲んでいる。
ノノにニコリと笑うロブ。
SE 店の外にバイクと車の音。
グラスを見つめているサヤカ。耳のアップ。
入り口の方をチラリと見るロブ。
ドアが開き、ぞろぞろと入ってくる男たち。
マスター「(険しい顔で)らっしゃい」
静まり返る常連のオヤジたち。
ノノはオセロのボードを見て「ンムムムム」と悩んでいる。
誰かがノノの代わりに石を置く。
ノノ、「え?」となり
ロブ「これは、やられたな」
手の主を見上げるノノ。
蛇タトゥーの男だ。
彼はノノの隣に座り、子分達はその周りを取り囲む。
蛇タトゥー「水、頼めるか」
マスター「旦那、悪いがここは酒場なんでね。飲まねえなら帰ってくれ」
蛇タトゥー「そうか、そうするよ。だがその前におっさん。悪いが俺は、こちらのジェリービーンズに用があるんだ」
ノノの肩にパンと手を置く蛇タトゥー。
ノノは不安げな顔で目を伏せる。
蛇タトゥー「よう、シンデレラ。すまねえが一緒に来てもらうぜ」
ノノ「行くって、どこにだよ」
蛇タトゥー「なあに心配すんな。これからお前は、でっかい城で幸せに暮らすのさ。悪いもんじゃねえだろ?」
動かないノノ。
蛇タトゥー「ほら、行くぜ」
蛇タトゥーはノノの腕を掴んで連れて行こうとする。
ノノ「いやっ!」
常連のオヤジ「ちょ、ちょっと待ってくれ」
恐る恐る立ち上がる常連のオヤジ。
蛇タトゥー「何だジジイ」
常連のオヤジ「いや、あの、その子が、嫌がって……」
SE 「バン!(銃声)」
子分の一人が常連のオヤジを撃ち殺す。
ノノ「おっちゃん!」
ロブとサヤカの目、アップ。
蛇タトゥー「悪いがチェリーパイ。親父さんとは話がついてんだよ。お前さん頂く代わりに年貢は当分頂かねえ。その上貸しも全部チャラって話だ。大特価じゃねえか」
ノノ「おっちゃん……」
蛇タトゥー「なあ、これ以上手間かけさせないでくれねえか。早くしねえと、斎藤の叔父貴が迎えに来ちまう」
SE 「パリン!(グラスの割れる音)」
『斎藤』の名前を聞いたサヤカ。持っていたグラスを握り割ってしまう。
蛇タトゥー「何だ?」
サヤカの方を見る蛇タトゥー。
SE 「カチャッ(銃を構える音)」
隙を見て蛇タトゥーにライフルを向けるマスター。
マスター「おい、その手を離してもらおうか」
蛇タトゥー「ああ、面倒臭え」
蛇タトゥーの後ろから、一斉に銃を取り出す子分達。
一瞬即発。静まり返る他の客たち。
蛇タトゥー「ウィンチェスターか。そんな物騒なもん、どうやって手に入れた」
マスター「あの頑固ジジイさ」
蛇タトゥー「あ?」
マスター「なに、こっちの話さ。こいつのおかげで愛車が2台も消えちまった。高い買いもんだったが、どうやら正しい判断だったようだ」
蛇タトゥー「いや、悪いがそいつは間違った判断だったと思うぜ」
マスター「良いから黙って、その手を離しな! 悪いがそいつはうちの看板娘なんだ。連れて行かれると商売あがったりなもんでね」
ノノの手を離し、ゆっくりと両手を上げる蛇タトゥー。
蛇タトゥーから離れるノノ。
SE 「シャコン!」
突然、蛇タトゥーの袖から飛び出すデリンジャー。
SE 「パン!」
マスターが撃つよりも早く引き金を引く蛇タトゥー。
撃たれた反動で思わず発砲するマスター。
それに反応し、一斉に発砲する蛇タトゥーの後ろの子分たち。
ノノ「マスターッ!」
客は飛び散ったガラスを浴び、ロブは地面に伏せ、サヤカはその場で顔に手を翳し目を守る。
ノノ、マスターに駆け寄り
ノノ「マスターッ!」
マスター「……に、逃げろ」
ノノ「いやッ!」
マスター「逃げろっ!」
ノノに手を伸ばす子分。
掴まれた手に噛み付くノノ。
子分「いででででで!」
子分から逃れ、店を飛び出すノノ。
蛇タトゥーはため息を付き、マスターの頭にもう2発食らわせる。
街を走るノノ。
店から転がり出てきた子分達が次々とバイクにまたがり、ノノを追う。
蛇タトゥーは水を一杯飲んで
蛇タトゥー「ごちそうさん」
出て行く蛇タトゥー。
サヤカはロブに駆け寄る。
ロブ「僕は大丈夫だ。そんな事より行けよサヤカ」
サヤカ「(辺りを見て)しかし」
ロブ「ここは俺が診るから。(ロブ、サヤカの前髪を耳にかけ)お前は、本業の時間だろ?」
前髪で隠れ気味だった眼帯が、姿を表す。
サヤカ、凛々しい表情になり。

〇同時刻、街
広い通りを走って逃げているノノ。
ノノは狭い路地へ入る。
前方に、バイクに乗った子分が現れる。
慌てて来た道を戻るノノ。
再び大通りに出た瞬間、行く手を遮るように黒いワゴン車が駐まる。
降りてきた子分達に車内へと連れ込まれるノノ。
ノノを押し倒す蛇タトゥーの男。
それを取り囲む数人の子分たち。
蛇タトゥー「ったく、手間とらせやがって」
ノノ「放せ! 放せこの!」
首を振って抵抗するノノ。
蛇タトゥーが首元にドスを突き立て、ノノは大人しくなる。
蛇タトゥー「さて、一つ質問だハニーマスタード。お前税金って知ってるか」
ノノ「(顔をそらし)知らない」
蛇タトゥー「(ドスで身体を撫で回し)この街で最後に『奴ら』が出たのは、一体何年前だと思う?」
ノノ「(首を振り)知らない! 知らない!」
蛇タトゥー「6年だ、6年だよ! お前らがこの6年間普通に生活してこれたのは、俺たちのおかげなんだよ(ドスでほっぺをペチペチと叩きながら)ま、恨むんならてめえの親父を恨みな」
その時、突然急停車するバン。
蛇タトゥー「クソッ、どうした!」
車の前にユラリと立つサヤカ。
運転していた男「看護師の女でさあ。あっぶねえな(サヤカに)おい! どけ!」
サヤカはそのまま動かない。
運転していた男は、舌打ちをして車を降りる。
運転していた男「おい」
サヤカに掴みかかる。
すかさず男をいなし、首に注射器を突き刺すサヤカ。
慌てる車内。
サヤカ「死にたくなければ、大人しくしていろ」
運転していた男「くっ!」
男を人質にとり、バンの横に回り込むサヤカ。
サヤカ「(耳元で)開けろ」
スライドドアを開ける人質の男。
サヤカ「その子を放しなさい」
蛇タトゥー「(焦ったように)ちょっ、待とうぜ、おい」
サヤカ「早く!」
蛇タトゥー「わ、解った解った!」
ノノ「お姉、さん?」
ゆっくりノノを引き渡そうとする蛇タトゥー。
蛇タトゥーは、ジッとサヤカのことを見る。
ノノ「あ、危ない!」
ハッとするサヤカ。
サヤカの後ろから近づいていた、別の子分。
サヤカの後頭部目掛けて、持っていた鈍器を大きく振りかぶる。
暗転。

〇サヤカの回想イメージ2(1の続き)
暗闇に落ちて行くサヤカ。
群がる人影。
サヤカ、人影に飲み込まれていく。
その中から、手を伸ばすサヤカ。
誰かがサヤカの手を掴んで引き上げる。
引き上げたのは、もう一人のサヤカだ。
回想終わり。

〇同日、廃ビルの最上階(夜)
スッと目を覚ますサヤカ。
ノノ「あ、お姉さん! 良かったあ、気がついた」
サヤカは壁の鉄パイプに手錠で繋がれている。
近くで縛られているノノ。
サヤカ「すまない」
ノノ「何で謝るの? お姉さんが謝ることなんて何もないよ」
サヤカ「……そうか」
ビルの外観。
敵襲に備え、下からライトアップされている廃ビル。
蛇タトゥーと数人の子分達が現れ、繋がれたサヤカたちを取り囲む。
その中には診療所で問題を起こした、あの雑魚ヤクザの姿も。
蛇タトゥー、サヤカを覗き込み
蛇タトゥー「(鼻で大きく息を吸い)ジャスミンか」
サヤカ「……」
蛇タトゥー「お前、喧嘩売る相手を間違えたんじゃねえか?」
下を向いたまま黙っているサヤカ。
サヤカを見て生唾を飲み、ニヤリと笑う雑魚ヤクザ。
ノノ「(雑魚ヤクザに)その人に、手を出さないで」
雑魚ヤクザ「(イラっとし)ああ?」
睨むノノ。
斎藤の声「おうおう、景気はどうだ(ご機嫌に)タラララッタター、チュッチュ(鼻歌)」
火のついていないタバコを咥えながら、太った男、斎藤(48)が姿を表す。
子分「あ、斎藤さん! お疲れ様っす!」
姿勢を正す子分たち。
斎藤「おう」
斎藤の声を聞き、下を向いたまま目の色を変えるサヤカ。
斎藤「(ご機嫌に)ノーノちゃん、チュッチュ」
目をそらすノノ。
斎藤、ノノに顔を近づけ
斎藤「(ボソッと)ったく、顔殴ってんじゃねえよクソオヤジが」
斎藤に頬を撫でられ、唾を吐きかけるノノ。
斎藤は気持ちよさそうに深呼吸し
斎藤「いいね、これだよ。ノノちゃんはこうでなくちゃ、攻略し甲斐がねえってもんだ!(サヤカを見て)んで、こいつは?」
蛇タトゥー「(斎藤のタバコに火をつけながら)おまけです」
斎藤「(フッと鼻で笑い)おまけってか」
斎藤はサヤカの顔を覗き込み、タバコの煙を吹きかける。
そして彼女の顎をグイッと持ち上げ、顔を確認する。
斎藤を睨みつけるサヤカ。
斎藤は一瞬「ん?」となるが、直ぐ思い出した様に「そんなバカな」といった表情で驚愕し

〇回想(サヤカの断片的なフラッシュバック)
斎藤に押さえつけられ、数人から暴行を受けているサヤカ。
彼女は高台から、人混み(ゾンビ)の中に突き落とされる。
囲まれるサヤカ。
天を仰ぐサヤカ(冒頭シーン)
回想終わり。

冷たい目で斎藤を睨みつけるサヤカ。
斎藤、汗を垂らし
斎藤「わ、悪いが、今日は直ぐに帰らなくちゃなんねえ」
蛇タトゥー「こいつはどうしますか」
斎藤は、拘束を解かれたノノの腕を掴み
斎藤「(去り際に振り返り)そいつは殺せ。遊びは無しだ」
ノノ「そんな! いや、ダメっ、お姉さん!」
叫びながら連れて行かれるノノ。
蛇タトゥー「(ため息をつき)まあ、そういうことだ。すまねえな、ジャスミン」
サヤカ、黙って下を向いている。
雑魚ヤクザ「兄貴、俺、こいつもらってもいいっすか?」
蛇タトゥー「あ?」
雑魚ヤクザが「にひひっ」っと笑い、ベルトを外し出す。
蛇タトゥー「おい、遊びは無しだ」
雑魚ヤクザ「別に、問題ないっしょ」
蛇タトゥー「言われたろうが」
雑魚ヤクザ「はあ? 大丈夫っすよ、こんなの」
蛇タトゥー「チッ、勝手にしな」
呆れて立ち去る蛇タトゥー。
雑魚ヤクザはサヤカに近づき
雑魚ヤクザ「よう。続きをしようや、かんごふさん」
顔を背ける彼女の顎を掴むと、無理やり股間を押し付ける。
雑魚ヤクザ「ほら!ちゃんと口開けろや!」
「おいおい」と笑いながら見ている他の子分たち。
雑魚ヤクザ「臭え口しやがって、掃除してやっからちゃんとしゃぶれや! ほら!」
サヤカ、力強く拳を握り
SE 「ゴリッ」と何かを食いちぎる音。
雑魚ヤクザ「いっ! くあああああああああっ!」
「何だ!?」となり、一斉に雑魚ヤクザの方を見る周りの男達。
叫びながら振り向く雑魚ヤクザ。
股間から吹き出す、大量の血しぶき。
驚く男達。
蛇タトゥー「(駆け寄り)おい、どうした!」
叫びながら蹲る雑魚ヤクザ。
顔に返り血を浴び、モグモグと口を動かしているサヤカ。
「ごくん」と飲み込み
サヤカ「まずいな」
地面でもがいている雑魚ヤクザ。
子分達が駆け寄る。
蛇タトゥー「てめえ、何てことを!」
サヤカの髪の毛を掴み、首にドスを突き立てる。
蛇タトゥー「こいつは、とんでもねえ間違いだぜ!」
子分Aの声「お、おい、嘘だろ……」
子分Bの声「(蛇タトゥーに)あ、兄貴、ちょっと」
蛇タトゥー「(サヤカを見たまま、子分たちに)ちょっと待ってろ(サヤカに)悪いがエンジェル『遊びは無し』はやはり無しだぜ。楽に死ねると思うなよ」
子分A「(被せ気味に)兄貴! やべえっす!」
蛇タトゥー「だから! ちょっと待ってろって……」
振り向く蛇タトゥー。
目の前に立っていたのは、白目を剥いた雑魚ヤクザ。
突然ゾンビ化した雑魚ヤクザが吠える。
蛇タトゥー「(ボソッと)……マジかよ」
次の瞬間、蛇タトゥーに襲いかかる雑魚ヤクザ。
ガードして腕に噛みつかれる蛇タトゥー。
覆いかぶさる雑魚ヤクザ。
蛇タトゥーはデリンジャーを全弾撃ち込み、怯んだところを蹴り飛ばす。
離れた雑魚ヤクザに集中砲火を浴びせる子分たち。
その隙にサヤカは、自分の親指をメリメリと噛みちぎる。
子分の一人に噛み付く雑魚ヤクザ。
子分の声「あ、ああああ!」
蛇タトゥー「(傷口を押さえ)畜生、この野郎感染していやがった!」
蛇タトゥーは、すかさず噛まれた方の腕にベルトを巻きつけ、ギュッと締める。
子分の声「お、女がいねえ!」
パイプにぶら下がっている手錠。サヤカがいない。
蛇タトゥーは歯を食いしばり、ドスで自分の腕を切り落とす。
痛みに顔を歪める蛇タトゥー。
子分たち「兄貴!」
蛇タトゥー「クッ、俺は大丈夫だ! それより女を探せ!」
蛇タトゥー、腕に引きちぎった布を巻きつけながら
蛇タトゥー「おいテメエら! 久々のゾンビ狩りだ! 存分に楽しめ!」」
子分たち「ッシャア、オラ!」
銃やドスを構え散っていく子分たち。
蛇タトゥー「この腕、しっかりと弁償してもらうぜ」

〇同、廃ビル、真ん中辺りの階
斎藤に手を引かれ、螺旋階段を降りていくノノ。
SE 上の階から銃声が聞こえてくる。
階段の上を振り返り、舌打ちする斎藤。
ノノ「(手を引っ張りながら)放して!」
斎藤は無理やりノノを引っ張っていく。
目の前の踊り場にゾンビが落ちてくる。
ノノ「うそ……何で?」
斎藤「こっ、こっちだ!」
フロアへ逃げる二人。
すると天井が崩れ、砂煙の中から2体目のゾンビが現れる。
挟まれる2人。
斎藤「折角……(舌打ちをし)クソッ」
拳銃を構える斎藤。
吠えるゾンビ。
斎藤「悪いがノノちゃん。親父さんとの契約は取消しだ」
「!?」となるノノ。
ノノの足を撃ち抜く斎藤。崩れ落ちるノノ。
ノノ「ウッ! ま、待ってよ!」
ノノを囮にし、手を振って一人で逃げる斎藤。

〇同、廃ビル、最上階
蛇タトゥーの声「セア!」
ゾンビ化した子分を切り捨てる蛇タトゥー。
蛇タトゥー「(歯を食いしばり)済まねえ、ショウタ」
後ろから突っ込んでくる、別のヤクザゾンビ。
振り向き様に、首をはね飛ばす蛇タトゥー。
一方、数人の子分に囲まれているサヤカ。
その中の一人のモブヤクザがナイフを取り出す。
ナイフのヤクザ「追い詰めたぜ、雑菌野郎。おい、てめえらは手え出すなよ」
ナイフのヤクザ、クルクルと巧みなナイフさばき。
一方、メスを構えるサヤカ。
周りの子分達はサヤカに銃を向け、二人を取り囲む。
斬りかかる両者。

〇同、廃ビル、真ん中辺りの階、フロア
足を引きずり逃げるノノ。
飛びつくゾンビ。
ノノはビルから落下する。

〇同、廃ビル、最上階、サヤカたちの場所
避けるナイフヤクザ。
腕で受けバッサリ傷を負うサヤカ。
後ろへ飛び、距離を取って体勢を低く構えるサヤカ。
サヤカは傷口を咥える様に舐める。(本当は自分の血を口に溜めている)
再び斬りかかるナイフヤクザ。
飛び出すと同時に、メスを投げ捨てるサヤカ。
ナイフヤクザに掴みかかり、首に手を回すと、グググッと相手の顔に顔を近づける。
「プシュー!」と毒霧のように、自分の血をナイフヤクザの顔に吹きかけるサヤカ。
ナイフのヤクザ「(両目を押さえ)うああっ! 目があああ!」
怯む周りの子分達。
ナイフのヤクザ「(歯をむき出し)ウウウウウウウ!」
ナイフヤクザの目に血管が浮き出始める。
子分たち「うわああああ!」
ナイフヤクザを中心に、お互いに撃ち合いを始めるヤクザ達。
クルリと背を向け、その場を去るサヤカ。
※ ※ ※
壁にもたれ、息も絶え絶えな蛇タトゥー。
蛇タトゥーは顔を上げる。
目の前に立っているサヤカ。
蛇タトゥー「お前、何もんだ。何で兄弟たちは突然感染しなきゃなんねえ」
斎藤を追うため立ち去ろうとするサヤカ。
蛇タトゥー「(去っていくサヤカに)おい、待てよジャスミン、俺には興味ねえってか。目的はオヤジの首か? まさか、捕まったのもわざとか! 待てよ! てめえ何もんだ!」
足を止め、背を向けたままスッと振り返るサヤカ。
キリッとしているが、何処かに悲しみを浴びた目。
その姿を目にしながら気を失う蛇タトゥーの男。

〇廃ビル前、大きな野外駐車場
ビルから出てくる斎藤。
最上階から顔を出すサヤカ。斎藤を発見する。
自分の装甲車に向かう斎藤。
辺りを見渡すサヤカ。
サヤカ「また、怒られるな」
サヤカは木片と釘打ちマシンを掴むと、助走をつけてビルからダイブする。
三点着地のサヤカ。「バキンッ!」と、折れた骨が膝から突き出す。
斎藤は装甲車のドアを開け、乗り込み際にビルの方を振り返る。
顔を上げるサヤカ。
斎藤と目が合う。
タバコを投げ捨て、車に乗り込む斎藤。
サヤカはその場で「バサっ」と白衣を脱ぎ捨て、裸になる。
大きく息を吸い、自分の腹の縫い目に両手を当てがうサヤカ。
エンジンをかける斎藤。
歯を食いしばるサヤカ。
同時に車を発車させる斎藤。
サヤカ「ングッ、アアアアアアアアアアア!」
サヤカは顔を歪め、ブチブチと傷口を開き始める。
開いた傷口から血が溢れ出す。
サヤカ「ハア……!」
傷口から手を入れるサヤカ。
サヤカ「ングッ!」
サヤカは腹の中から3つほどのパーツに分かれた、手製の小型ライフルを穿り出し、それを一気に組み立てる。
一方、駐車場の出口でドリフトUターンし、サヤカを轢き殺そうと狙いを定める斎藤。
駐車場の端と端で向かい合う二人。
目を閉じて眼帯を外すサヤカ。

〇回想、サヤカのフラッシュバック(冒頭映像の続き)
ゾンビ(冒頭シーンでサヤカを取り囲んでいた人影)に襲われ、天を仰ぐサヤカ。
サヤカの瞳のアップ。
その目に浮き上がってくる血管。瞳が白く変色し始め。
回想終わり。

「バッ」っと目を開けるサヤカ。
青白くなった右目が姿を表す。
斎藤「チッ、バケモンが!」
一気にアクセルを踏み込む斎藤。
装甲車が突っ込んでくる。
斎藤「もっかい死んどけや!」
サヤカは体に埋め込まれた弾をズルリと抜き取り、血を舐め取って、ライフルに装填。
青白い方の右目で狙いを定める。
近づく装甲車。
サヤカ、一発発射。
タイヤを貫かれた装甲車は、サヤカの脇スレスレを過ぎて、派手にクラッシュ。
回転してビルにぶつかる。
サヤカは突き出した骨を押し込み「バチン! バチン!」と足に釘を撃ち込んで、固定する。
ハンドガンを手に、フラフラと車から出てくる斎藤。
斎藤「ハア、ハア……」
足を引きずり逃げる斎藤。
立ち上がったサヤカは、歩いて近づきながらライフルをコッキングし、斎藤の足にもう一発放つ。
斎藤「ウガアアア!」
足が吹き飛び、倒れる斎藤。
斎藤「こんの!」
振り向き様にハンドガンを向ける斎藤。
近付いていたサヤカ。斎藤の手からハンドガンを蹴り飛ばし、斎藤の胸を踏みつける。
斎藤を押え付けたまま、すぐさま次の弾を取り出す。
斎藤「ハア、ハア、この、この!」
ナイフを取り出し、自分を押さえつけているサヤカの足を何度も刺す斎藤。
サヤカ、気にせず弾を込めてコッキングし、斎藤の頭に銃口を向ける。
斎藤「(両手を上げ)ちょ! ちょっと待って! 一旦落ち着こう! (笑顔で)な?」
サヤカ「お前も……」
斎藤「ん?」
サヤカ「お前も、地獄で彷徨え。クズが」
斎藤の頭を吹き飛ばすサヤカ。
雨が降り出す。
サヤカは首元の縫い目からカミソリを取り出し、腕に刻まれた『斎藤』の文字にリストカットの様に線を引く。
刻まれた名前は全部で5人。斎藤は2人目で、腕にはあと3人の名前が刻まれている。
腕に線を引くと、健康な方の左目に血管が走り出す。
歯を食いしばり、それをグッと堪えるサヤカ。
グッと目を閉じ、開くと侵食は治っている。
息を整えたサヤカがふと横を見ると、そこにはノノが倒れていた。
ノノは瀕死の状態で、微かに息をしながら天を仰いでいる。
ノノの前に立つサヤカ。ノノは力なく手を伸ばす。
サヤカ「まだ、生きたいのか」
サヤカを見上げるノノの目。
サヤカは彼女に人工呼吸の様にキスをする。
立ち上がったサヤカの背中を、ヘッドライトが照らす。
車から降りてきたロブがサヤカの肩に上着をかける。
痙攣し始めるノノ。
サヤカ「運が良ければ、またどこかで」

〇キャンピングカー内
シャワーで血を流すサヤカ。
ロブの声「食料、何体かバラしておいたよ」
シャワーから上がるサヤカ。
ロブと目が合い
※ ※ ※
治療台の上で横になっているサヤカ。
ロブ「……ったく、あんまり無理してると、僕でも手が負えなくなるよ」
ロブはサヤカの身体に手術用のシートをかけ、傷を塗っている。
「んっ!」と痛そうな顔をするサヤカ。
ロブ「済まないね。ここはまだ感じるんだった」
サヤカ「気をつけて」
ロブ「そうだサヤカ、一つ新しい言葉を教えてやろう。『自業自得』っていうんだけど」
サヤカ「(遮る様に)もういい、解った。次からはもっと気をつける」
ロブ「(フッと笑い)……(気を取り直して)なあ、サヤ」
サヤカ「……何だ」
ロブ「覚えていないんだろ? 死ぬ前のこと」
サヤカ「まあ、な」
ロブ「だったら復讐なんて止めてさ、看護師として、その……」
サヤカ「私には、これしかないんだ」
ロブ「そうか、そうだよな。済まない。口は出さない約束なのに」
サヤカ「私が守り、お前が手入れする。そういう契約だ」
ロブ「『守る』?『壊す』の間違いじゃないのか?(足にメスを入れ)うわ、もう、グッチャグチャだよ」
サヤカ「(ムッとした顔で)……」
ロブ「……あ、そう言えば、親指どうした?」
サヤカ「……あっ!」
飛び起きて、泣きそうな目でロブを見るサヤカ。
ロブ、目をそらし
ロブ「な、何だよ」
サヤカ「……食べちゃった……」
頭を抱えるロブで。

〇翌日、廃ビル前(早朝)
目を覚ますノノ。雨は上がっている。
記憶がない様子のノノ。ぼんやりと思い出すサヤカのシルエット。
サヤカの声「運が良ければ、またどこかで」
ノノは立ち上がると、恐る恐る歩き出す。
朝日が昇り始めている。
ノノは白く濁った右目で朝日を見つめ。

〇エンディング
ゾンビの徘徊する荒野を走る、一台のキャンピングカー。
運転しているのはロブ。助手席にはサヤカ。
ラジオDJ「……お相手はこの私、毎度おなじみのファンキー・ジョージがお送りいたしました! そう言えば、聞いてくれ! 実はこの前、近くの廃墟でヤバイもんを見つけちまった! なんと、古い無線機を発見したんだ! これが修理出来れば番組中に連絡を取り合うことが出来るかもしれない。俺にも新しい目標が出来たって訳だ!思えば世界に『奴ら』が溢れてから、早いもんで、もうかれこれ20数年位か? 誰かが聞いてくれていると信じて、曲をかけ続けているが、いい加減新しい曲をかけたいもんだぜ!……」
サヤカ、窓ガラスを下ろし
サヤカ「ラジオの音、ちょっと小さくしてくれないか」
ロブ「ついていると、気がまぎれるんだけどな」
サヤカ「お願い、今はちょっと余韻に浸りたい気分なんだ」
ロブ「(フッと鼻で笑って)お前らしくないじゃないか」
ボリュームを落とすロブ。
外を見ながら、ジャーキーの様な物をかじるサヤカで。


END

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