黒ひげサンタクロース コメディ

――クリスマスの深夜。 ある民家へ忍び込む一人の男がいた。 その名も、黒ひげ三世。 自称大泥棒の彼にとっては、容易い盗みのはずだったが……
白石 謙悟 6 0 0 06/05
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第一稿

『黒ひげサンタクロース』

登場人物

黒ひげ三世……黒ひげと派手な色の風呂敷が特徴の泥棒

俊太郎  ……純粋無垢な小学生。サンタの存在を信じている
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『黒ひげサンタクロース』

登場人物

黒ひげ三世……黒ひげと派手な色の風呂敷が特徴の泥棒

俊太郎  ……純粋無垢な小学生。サンタの存在を信じている

俊太郎の父



   明転
   忍び足で黒ひげが登場
   風呂敷に盗品を包み、担いでいる

黒ひげ 「へっへっへ……この家もいただきだぜ。この世紀の大泥棒、
     黒ひげ三世にかかりゃ、チョロイもんよ……ってな」

   しめしめと笑い、家を後にしようとする黒ひげ
   その先に、俊太郎が登場
   2人の目が合い、その場でしばらく静止
   黒ひげ、「やっちまった」という表情

俊太郎 「おじさん……だぁれ?」
黒ひげ 「(目が泳いでいる)…………」
俊太郎 「もしかして……」
黒ひげ 「くそっ、手荒な真似はしたくねぇが、こうなったら……」
俊太郎 「サンタさん!?」

   間。目がキラキラしている俊太郎

黒ひげ 「サンタ……さん?」
俊太郎 「ねぇ、そうなんでしょ!?やっぱりサンタさんはいるんだ!
     僕ね、サンタさんに会いたくて、頑張って起きてたんだよ!」
黒ひげ 「(考える)……なるほど、今日は……クリスマスか」
俊太郎 「ねぇってばー!」
黒ひげ 「ウ、ウオッホン!そうとも!私はサンタクロースさ!紛れもなく!
     決して怪しい者じゃあ、ないよ」
俊太郎 「すっげー!本物だぁぁぁ!」

   慌てて俊太郎の口を塞ぐ黒ひげ

俊太郎 「むぐ!?」
黒ひげ 「こ、こら!大きな声を出してはいかん!いいかい、本来なら、
     サンタは誰にも姿を見られてはいけないんだ。
     君の声で、ご両親が起きてしまったらどうする」
俊太郎 「そ、そっか……。ごめん」
黒ひげ 「君だけは、特別だよ(良い笑顔)」
俊太郎 「うん!」
黒ひげ 「よしよし、良い子だね。それじゃあ、私はこれで」

   その場を離れようとする黒ひげ

俊太郎 「プレゼントは……?」
黒ひげ 「!」
俊太郎 「プレゼント……くれないの……?」
黒ひげ 「プレゼントかぁ〜……。うん、そうだねぇ〜……」
俊太郎 「僕が、良い子じゃないから、くれないんだ……」

   今にも泣きだしそうな俊太郎

黒ひげ 「い、いやいやいや!サンタさんね、うっかりしてただけだよ!
     もちろん、あげるとも!」
俊太郎 「本当!?」
黒ひげ 「え〜っと……(風呂敷を漁る)」
俊太郎 「わくわく!」
黒ひげ 「ほぅら、これとかどうだい?(高そうなネックレスを取り出す)」
俊太郎 「……欲しくない」
黒ひげ 「そ、そうか。そうだな、子どもにあげるようなものじゃないな」
俊太郎 「っていうか、今の、お母さんが同じの持ってたよ」
黒ひげ 「(慌てる)う、う〜ん!じゃあ、これはどうかな!?
     (高そうな腕時計を取り出し)」
俊太郎 「……いらない」
黒ひげ 「あっれぇ!?い、いらないの!?」
俊太郎 「それ、お父さんが同じの持ってる」
黒ひげ 「あぁ、そうかそうか!こりゃぁ、うっかりしてたなぁ……」

   気不味い沈黙が続く

俊太郎 「おじさん、本当にサンタさんなの?」
黒ひげ 「おほっ!?そ、そりゃもう、本物だとも!」
俊太郎 「よく見たら、服も赤くないし」
黒ひげ 「!」
俊太郎 「ひげも黒い!」
黒ひげ 「!(ひげを隠す)」
俊太郎 「おじさん……誰なの?」
黒ひげ 「サンタ……クロース……です、よ?」
俊太郎 「……ママー!パパー!」
黒ひげ 「ままま待って!ちょっと待って!」

   俊太郎の口を塞ぐ黒ひげ

俊太郎 「むぐ!?」
黒ひげ 「いいかい、おじさんのひげや服が黒いのには、ちゃんと訳があるんだ」
俊太郎 「訳?」
黒ひげ 「これはね……汚れちゃったんだ」
俊太郎 「…………」

   大きく息を吸い込んで両親を呼ぼうとする俊太郎
   それを止める黒ひげ

黒ひげ 「サンタさんってのは、煙突を通ってくるだろう!?その時の煤(すす)で、
     汚れちゃったんだよ」
俊太郎 「うち、煙突ないよ」
黒ひげ 「……煙突は、君の心の中にあるのさ」
俊太郎 「僕の心、汚れてるんだぁ!」
黒ひげ 「いや、違うって!そういう意味じゃなくて、ね?と、とにかく、
     これで信じてくれたかな?」
俊太郎 「信じられない」
黒ひげ 「そうか、残念だよ。じゃあ、私はこれで。
     表に鉄のトナカイを待たせているのでね」

   そそくさと逃げようとする黒ひげ

俊太郎 「まだプレゼント貰ってないいい!びええええ!」
黒ひげ 「泣かないでー!本当、お願いだから!」

   俊太郎の口を塞ぐ黒ひげ

俊太郎 「んんんー!」
黒ひげ 「プレゼントはちゃんとあげるから!泣かないで!ね?」

   無言で頷く俊太郎

黒ひげ 「(手を離す)よしよし、良い子だね」
俊太郎 「ぶはっ!……プレゼントくれるの!?」
黒ひげ 「ああ、あげるとも!何が欲しいんだい?」
俊太郎 「圭祐(けいすけ)!」
黒ひげ 「はいはい、圭祐ね。(風呂敷を漁る)……あちゃー、ソリに忘れてきた。
     すまん、ちょっと取ってくるよー(棒読み)」

   意気揚々と出て行こうとする黒ひげ
   しかし、途中で立ち止まる

黒ひげ 「圭祐……?」

   俊太郎に向き直る

黒ひげ 「圭祐って、何だ?」
俊太郎 「ちょっと前に、眠ったまま、起きなくなったんだ」
黒ひげ 「兄弟……か?」
俊太郎 「うん、僕の弟」
黒ひげ 「…………」
俊太郎 「圭祐、ずっと起きないんだ。僕、寂しいよ。でも、今日までちゃんと
     良い子にしてたよ。だから、サンタさんが新しい圭祐をプレゼントして
     くれるんだ。そうでしょ?」

   無言で俊太郎に近づき、肩に手を置く黒ひげ

黒ひげ 「悪いが、その願いには応えられん」
俊太郎 「どうして……?僕が、悪い子だから?」
黒ひげ 「違う。……坊主、名前は何だ」
俊太郎 「俊太郎」
黒ひげ 「いいか、俊太郎……。俺は、お前に圭祐をプレゼントすることはできねぇ」
俊太郎 「だから、どうしてなの!?」
黒ひげ 「圭祐は、もう死んだんだ」
俊太郎 「死んだ……?」
黒ひげ 「ああ、そうだ。死んだ奴は、生き返えらねぇ。
     サンタさんだって、神様じゃないんだ。
     死んだ奴をプレゼントすることなんざ、無理だ」
俊太郎 「嘘だ……」
黒ひげ 「圭祐は、世界で一人しかいねぇ。もう戻っちゃこねぇんだよ」

   泣きそうな俊太郎

黒ひげ 「泣くな」
俊太郎 「ううっ……」
黒ひげ 「俊太郎、お前は男だろ。そんな簡単に泣いちゃいけねぇ」
俊太郎 「(うつむく)……」
黒ひげ 「実は……俺にも弟がいてよう」
俊太郎 「サンタさんも……?」
黒ひげ 「ああ。もう何年も会ってねぇ。あいつ、何してんのかな……。
     俺がこんなことやってるって知ったら、悲しむかな……」
俊太郎 「悲しまないよ!サンタさんのやってることって、良い事じゃない!」
黒ひげ 「ん……?あ、ああ、そうだな。……うん」
俊太郎 「今度、会ってあげなよ。きっと喜ぶよ」
黒ひげ 「へへっ……それも、いいかもな」
俊太郎 「うん!」
黒ひげ 「俊太郎、兄弟ってのは、いいもんだ。辛いことも楽しいことも、一緒に経験
     して……。そんな大切な奴を失って、一番悲しいのはお前だってのも、
     よくわかる。だがな、強く生きろ。そいつの分まで、お前が強く生きていく
     んだよ!」

   俊太郎の肩をガッと掴む黒ひげ

俊太郎 「…………」
黒ひげ 「それが、俺からの……サンタさんからの、お願いだ」
俊太郎 「サンタさん……顔、近いよ」
黒ひげ 「(離れる)ん、すまん……。駄目だな、義理人情に厚いのが、黒ひげ
     一族の悪い癖だぜ……」
俊太郎 「……ありがと」
黒ひげ 「うん?」
俊太郎 「僕を励ましてくれたんだよね」
黒ひげ 「まぁ……昔からお節介が信条でよ」
俊太郎 「ちょっと怖かったけど……僕、もう寂しくない。
     圭祐とは会えないけど、代わりに僕が強く生きるよ」
黒ひげ 「ああ、偉いぞ。それでこそ、兄貴ってもんだ」
俊太郎 「うん。……ねぇ、サンタさん」
黒ひげ 「何だ?」
俊太郎 「プレゼントなんだけど……」
黒ひげ 「プ……!?ああ、すっかり忘れてた……!」
俊太郎 「圭祐が一番好きだったものをお願いしちゃ、駄目かな」
黒ひげ 「!お前のプレゼントはいいのか?」
俊太郎 「うん。僕は我慢する。圭祐のお墓にお供えしてあげたいんだ」

   俊太郎の健気さに、心打たれる黒ひげ

黒ひげ 「……こんな純粋無垢な童(わらべ)の頼みを断ったとあっちゃぁ、
     義賊の名が廃るってもんだ。よし、何が欲しいんだ?」
俊太郎 「ササミの猫缶」

   間

黒ひげ 「……うん?」
俊太郎 「圭祐の大好物なんだ」
黒ひげ 「……猫缶?」
俊太郎 「そうだよ」
黒ひげ 「ササミの、ねぇ……」

   間

黒ひげ 「…………猫かよッ!」
俊太郎 「え!?どうしたの、サンタさん」
黒ひげ 「いや!何でもねぇ!そうさ、同じ尊い命……。
     命の重さに、不平等なんてあっちゃいけねぇ」
俊太郎 「サンタさん?」
黒ひげ 「皆まで言うな!よし、わかった。俺も男だ!
     一度言ったことは、二度と曲げねぇ!ササミの猫缶、くれてやる!」
俊太郎 「サンタさん、声大きいよ」
黒ひげ 「!(慌てて口を塞ぐ)」
俊太郎 「へへっ(嬉しそうに笑う)」
黒ひげ 「いかんいかん……つい熱くなっちまった」
俊太郎 「お父さんとお母さんには、見つかっちゃいけないんでしょ?」
黒ひげ 「ああ……。お前は、特別だからな」
俊太郎 「大丈夫、誰にも言わないから」
黒ひげ 「そうしてくれると助かる。さ〜て、猫缶買って来ねぇと……」
俊太郎 「今から買ってくるの?」
黒ひげ 「っていうのは冗談で!あれだよ、ソリに積んであるから、
     取ってくるんだ」
俊太郎 「うん。僕、静かに待ってるからね」
黒ひげ 「お、おう、良い子にしてろよ。じゃあ、行ってくる」

   部屋から出ようとする黒ひげ

黒ひげ 「……全く、天下の大泥棒である俺様がガキんちょのお使いとは……。
     どうも、あの目には弱いな……。まだまだ俺も青いぜ……」

   黒ひげが風呂敷を忘れていることに気付く俊太郎

俊太郎 「サンタさん」
黒ひげ 「ん?」
俊太郎 「(風呂敷を指さす)これ、置いといていいの?」
黒ひげ 「うおおおお!う、うっかりした!」

   慌てて風呂敷を担ぐ黒ひげ。恐る恐る俊太郎を見る
   笑顔の俊太郎

俊太郎 「誰にも、言わないってば」
黒ひげ 「お、おう……」

   再び、部屋を出て行こうとする黒ひげ

俊太郎 「あのね、お父さんもお母さんも、お金遣いが荒いんだ」
黒ひげ 「え?」
俊太郎 「だから、ちょっぴり、いい気味かもって思ってるんだよ」
黒ひげ 「お、お前、何言って……」
俊太郎 「ササミの猫缶、よろしくね!」

   顔色が悪くなっていく黒ひげ
   後ずさり、急いで逃げようとする
   そこへ、サンタクロースに扮した俊太郎の父が登場
   黒ひげとばったり対面する
   唖然とした表情の俊太郎の父

俊太郎 「あ、お父さん」

   いたたまれない雰囲気のなか、棒立ちの黒ひげ
   俊太郎と顔を合わせ、その後、ゆっくりと俊太郎の父の方へ向き直る

黒ひげ 「メリークリスマース……」

   暗転


                               完

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