第二話 抱きしめた、蒼 - 抱きしめた、蒼 ‐ 編 学園

歌手になる。という夢を抱いた少年の物語。 登場人物 主人公 蒼葉未來【15歳】 未來の叔父(父親の弟) 蒼葉美月【37歳】未來と同じ中学校の音楽の先生をしている。
やまさきたかし 28 0 0 02/19
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第一稿

○冬休み。二人の住むマンション。(朝)

リビングで話す蒼葉美月(37)と蒼葉未來(15)。
未來「きょう、やけに寒くない?」
美月「お前は夏産まれだから人一倍、寒がりだも ...続きを読む
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○冬休み。二人の住むマンション。(朝)

リビングで話す蒼葉美月(37)と蒼葉未來(15)。
未來「きょう、やけに寒くない?」
美月「お前は夏産まれだから人一倍、寒がりだもんな」
未來「夏産まれとか関係ないだろ。あっそういえば美月、もうすぐ誕生日じゃん」
美月「そうだったかな……。お前、よく人の誕生日覚えてるな」
未來「忘れられねーよ、1月1日が誕生日の奴なんて」
美月「あはは……そうだな。っで、なにかしてくれんのか?」
未來「お風呂掃除してやるよ」
美月「いい自分でやる」
未來「あっそですか、じゃあなんにもしてやんない。」
美月「お前、今日、晩メシ抜きな」
未來「えっ……ならなにして欲しいんだよ」
美月「ンンー……」
未來「あと10秒以内でお答えください。」
指を折りながら数を数える未來。
未來「5……4……3……」
美月「わかった。なら、ひとつだけお願いしたい事がある……。いいか?」
未來「内容による」
美月「お前が今、作っている歌を1番に聴かせてくれ」
未來「げっ……なんで俺がまた、歌作ってること知ってんだよ」
美月「お前、文化祭の次の日から毎日学校が終わって、
即家に帰って、いったいなにしてるんだ?」
未來「それは……その……」
美月「残ってたぞ。お前が歌を作ってますっていう証拠が」
未來「証拠ってなんだよ」
美月「日に日に、黒ずんでいくピアノの鍵盤だよ」
未來「やべぇ、帰ってピアノ弾く前に手を洗うの忘れてた」
美月「あはは」
未來「なんだよ、その笑い」
美月「それだけが原因じゃないだろ」
未來「……」
美月「お前、俺が仕事から帰ってくるまで相当ピアノ弾いてただろう」
未來「えっあっうっうんーーー……」
美月「惚けたって無駄だ。」
未來「まっ……まぁね。バレてたか...」
美月「バレバレだよ。」
真剣な眼差しで未來を直視する美月。
美月「聴かせろよ」
未來「うーん……」
美月「聴かせてくれ」
未來「別にいいけどさ、まだ完成してないし……それに……」
下を向き迷いながら答える未來。
未來「誕生日に間にあうかどうか」
美月「いいよ、日にちは気にしなくて」
未來「しかも……誕生日に贈るようなハッピーな歌でもない」
美月「どんな歌だって、お前の歌を聴けるなら俺は、嬉しいよ」
未來「…わかった。」
美月「聴かしてくれるのか?」
未來「そこまで言うなら、わかったよ。首を長―くして待ってて」
美月「おうっ、楽しみに待ってるぞ」
雪がパラパラ降っているなか仕事納めに学校へ出掛ける美月。

○ピアノの部屋

ピアノの椅子に座って独り言を言う未來。
未來「あぁー歌詞どうしよっかなー、誕生日に贈るような感じじゃないしな……書き直そっかなぁー」
ピアノの前で悩んでいる未來、次の日も次の日も。
未來「あぁー……」

○誕生日、当日。リビング(夜)

美月「明けましておめでとう!」
未來「明けましておめでとう!アーンド誕生日もおめでとー!」
美月「ありがとうっ!」
未來「カンパーイ!今年もよろしく~」
乾杯する二人。
美月「カンパーイ!(プハ~)よろしくっ」
紅白が流れるテレビを消す未來。
未來「よしっ紅白も終わったところで、そろそろ歌いますか」
美月「オッ出来たのか?」
未來「おうっ!歌詞を誕生日バージョンにしようと思ったけど……やめて、そのままで歌うことにしたからさ」
美月「うんっそれでいい」
未來「じゃあピアノの部屋行こうぜ」

○ピアノの部屋

ピアノの椅子に座る未來。
未來「それでは聴いてください」
美月「ちょっとタイム」
未來「なんだよっ」
美月「電気消そうぜ」
部屋中の電気を全部消し、カーテンを開ける美月。
未來「真っ暗でなんにも見えなくなっちゃったじゃんかー」
美月「大丈夫だっ」
未來「……ほんとかよ」
美月「良い事教えてやろうか、未來。」
未來「なに?」
美月「あと少しもすれば、この暗闇に慣れてきて俺の顔もピアノの鍵盤も見えてくるはずだ。人間っていう生き物はな、生きようとする力が強いんだ。その場、その時の環境に慣れる速さは人それぞれ違うけど、お前はピカイチ速い奴だと、俺は勝手に思ってる。」
未來「俺、そんな人間かな」
美月「お前の 心根 はどんな事が起きようと必死で光(あかり)を探し、前を向いて生きてゆこうとしている事を」
未來「ほんとだ、見えてきた」
美月「覚えておけ」
未來「……うっうん」
美月「さぁそろそろ見えてきただろ、聴かせろよ。」
未來「おう。それではそんな美月の言う俺っていう人間をありのまま、歌にしてみました。聴いてください」
薄暗い部屋の中。
鍵盤を見つめ歌いだす未來。
未來「タイトルは…」
そっと瞳を閉じる美月。

未來「抱きしめた、蒼」--------------

答えの出ない毎日に苛立ちを感じ
自分だけが“悲劇のヒローイン”になったつもりで
傷ついていた

僕だって空の青さに憧れはする
だけど 少し汚れたぐらいじゃないと 戦えない

チェッ…もう迷わない
ずっと ひとりぼっちでもかまわない
チェッ…なんて
開きなおってみたりもするけど

知らぬまに ナミダ いっぱい
いっーぱい溢れてた

僕だって人の青さに憧れはする
だけど 少し穢れたぐらいじゃないと 戦えない

チェッ…もう迷わない
ずっと ひとりぼっちでもかまわない
チェッ…なんて
開きなおってみたりもするけど

知らぬまに ナミダ いっぱい
いっーぱい溢れてた

ずっと
ゴールのない空ばかり泳いでた
息継ぎもしないまま

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

歌い終わり美月の方を見る未來。
美月「お前って奴は……」
未來「えっなに?なに?なんか言った?この歌詞の俺、すげぇ情けない奴でしょ。あはは」
美月「お前って奴は……正真正銘、兄貴の子だよ」
未來「どういう意味だよ」
美月「ただまっすぐで、素直な優しい子だっつー事だよ」
未來「俺ハチャメチャひねくれた性格してると思うんですけど……」
美月「そう思ってるのはお前自身だけだろ」
未來「じゃあもし褒めてくれてんのなら、こんな性格してるのは、たぶん(ニヤリ)美月が育ててくれたおかげだよ」
美月「お前……」
未來「あはは、照れてやんの」
美月「お前からそんな言葉が聞けるとは思わなかったからな」
未來「素直だろ。」
美月「だな。」
未來「あぁーなんかさー、すっきりした感じ……自分を曝け出せる相手が居るっていいな」
美月「その相手が俺でほんとに嬉しいよ」
ピアノの椅子から立ち上がり、ゆっくり背伸びを(アーアァ)とする未來。
未來「なー?美月。」
美月「どうした?」
未來「あと何人くらい、居るんだろうな……弱い自分っていう人間を曝け出せる相手がさ」
美月「それは誰にも分からない。だがな、この広い世界には必ず自分の事を分かってくれる相手がひとりは居る。必ず居る!だから、その誰かのひとりに、いつか お前が なってやれたらいいな」
未來「おっおぅ」
小さく頷く未來。
美月「今年は良いスタートが切れたよ。良い年にもなりそーだ。ありがとな」
未來「俺もそんな気がする。良い出逢いもありそうだしな!」
美月「あははっ」
未來「なんだよ」
美月「お前はほんと、単純でいいなと思ってさ。そういうとこ好きだぞ!」
未來「キモいんですけどー」
美月「うるせーよ」
未來「よし、寝よ」
美月「俺はもう少し飲んでから寝るよ」
未來「りょーかい。」
自分の部屋へ戻る未來。 
ピアノの椅子に移動し夜空を眺めながら酒を飲む美月。

未來「おやすみ。」
美月「おやすみ。」
                   完

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