HERO-1グランプリ アクション

「第2回HERO-1グランプリ開催」の一報を受け、意気揚々と参戦した菊地スコーピオンこと菊地正義(26)。しかしその裏で、恐ろしい作戦が進行していた……。
マヤマ 山本 21 0 0 02/18
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第一稿

<登場人物>
菊地 正義/菊地スコーピオン(26) 大会出場者/変身後のヒーロー
守村 レイ/凍結の戦士・氷河(26)同/同
守村 ダン/太陽の戦士・日向(25)故人、レイの ...続きを読む
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<登場人物>
菊地 正義/菊地スコーピオン(26) 大会出場者/変身後のヒーロー
守村 レイ/凍結の戦士・氷河(26)同/同
守村 ダン/太陽の戦士・日向(25)故人、レイの兄で現守護霊/同
光木 陽菜/魔法少女ルナ(14)同/同
桃太郎(22)大会出場者
イデアの民(17)同
小野 航(19)同
千葉 猛人/ひでお君(42)同/変身後のヒーロー
赤田 真/オトレッド(32)同/同
黄 羽元/オトイエロー(27)同/同
青山 誠二/オトブルー(30)同/同
緑川 一生/オトグリーン(38)同/同
桜井 知花/オトピンク(28)同/同
オトシルバー 赤田らの仲間
戦闘用アンドロイド39号(25)大会出場者
ザ・ガンバルマン(37)同
黄金巨人ゴルディナン 同
ビリー・ルース/メタルマスク(55)同/変身後のヒーロー

軽井沢 奈津/メタルマスクレディ(33)ルースの秘書/同
守村 ヒロ(5)ダンの息子
守村 カナ(27)ヒロの母
ジャングル仮面(20)ヒーローショーのヒーロー
警備員(64)
ポストマン(35)郵便配達員
洋子・ルース(45)故人、ルースの妻
死神
斎東 映二/斎東マンティス(29)菊地の同僚/変身後のヒーロー
黒田 鉄男/クロガネ(46)菊地の上司/同



<本編>
○神祀山・入口
   山の麓に仮設された闘技場。
   「第2回HEROー1グランプリ」と書かれた看板。
菊地M「この世界はヒーローで溢れている」

○同・闘技場
   いずれの戦いも、大観衆が見守る。
   それぞれの色の戦闘スーツを着た演奏戦隊オトレンジャーの五人(オトレッド、オトイエロー、オトブルー、オトグリーン、オトピンク)がカンフー使いと戦っている。
    ×     ×     ×
   空中を派手に旋回しながら甲冑の男を銃撃する戦闘機(スカイアックス)。
    ×     ×     ×
   身長四〇メートルを超える黄金巨人ゴルディナンを、空を飛びながら剣で斬りつけて倒す桃太郎(22)。絵本の姿そのままの衣装だが、女性。
    ×     ×     ×
   対峙する菊地正義(26)と覆面姿の戦士、ザ・ガンバルマン(37)。ガンバルマンは矛と盾を持っている。
奈津の声「(事務的な口調で)赤コーナー、東日本ヒーロー協会所属、ガンバルマン選手」
ガンバルマン「ガンバルマンではない、ザ・ガンバルマンだ」
奈津の声「青コーナー、鉄男ファクトリー所属、菊地スコーピオン選手」
   ヘルメットを頭上に掲げる菊地。
菊地「変身!」
   ヘルメットを着用すると、戦闘用スーツを身に纏った戦士、菊地スコーピオン(以下、菊地ス)の姿になる菊地。その姿は地方のローカルヒーローレベルのクオリティ。
菊地ス「スコーピオンのピオンはチャンピオンのピオン。菊地スコーピオン!」
奈津の声「Hブロック一回戦、レディ……」
   ゴングが鳴る。
   次々と攻撃を繰り出す菊地スと、その全てを盾で防ぐガンバルマン。
ガンバルマン「吾輩の盾に防げぬ物なし」
菊地ス「ちっ」
   一歩引く菊地スに、矛で攻撃を繰り出すガンバルマン。避け続ける菊地ス。
ガンバルマン「吾輩の矛に貫けぬ物なし」
   距離を取りにらみ合う両者。
菊地ス「ねぇ、ガンバルマンさんさぁ」
ガンバルマン「ガンバルマンではない、ザ・ガンバルマンだ」
菊地ス「そのアンタの盾にアンタの矛を突き立てたら、一体どうなっちゃう訳?」
ガンバルマン「(不敵な笑みを浮かべ)知りたいか? なら、試してしんぜよう」
   盾を菊地スに渡し、矛を構えて向かってくるガンバルマン。
ガンバルマン「刮目せよ!」
   盾を遠くへ放り投げる菊地ス。
ガンバルマン「!? 貴様、何をする!?」
菊地ス「簡単に引っかかりすぎ。コレでアンタの防御力はゼロになっちゃったって訳」
   再び攻勢に出る菊地ス。
ガンバルマン「貴様、正義の味方にあるまじき卑怯者である!」
菊地ス「その台詞は、俺に勝ってから言え」
   ガンバルマンの矛を奪い取り、遠くへ放り投げる菊地ス。
菊地ス「終わりだ。スコーピオンキック!」
   ガンバルマンに飛び蹴りを喰らわせる菊地ス。倒れるガンバルマン。
菊地ス「どうやら正義は、俺に味方したらしいな」
   ゴングが鳴る。
奈津の声「勝者、菊地スコーピオン選手」
   大歓声。それに応える菊地ス。
菊地M「このヒーロー達が、何故今戦い合っているのか」

○鉄男ファクトリー・外観
   寂れた電器店。
菊地M「話は、少しだけ遡る」

○同・店内
   店内の掃除をする菊地。
   ドアが開き、ベルが鳴る。
菊地「いらっしゃいませ」
   菊地に歩み寄るポストマン(45)。
ポストマン「菊地スコーピオンだな?」
菊地「(警戒し)アンタ、何でそれを(知っている)? まさか……」
ポストマン「郵便だ」
   封筒を差し出すポストマン。
菊地「……あ、どうも。いや、でも何でココが……」
ポストマン「心配には及ばん。手紙と秘密は守る主義だ」
   店から出て行くポストマン。
菊地「何だ、アイツ……?」
   封筒に目を移す菊地。「招待状」と書かれている。
   店の奥、地下へ続く階段がある。
黒田の声「第2回HEROー1グランプリ、ですか」

○同・地下室
   計器類や司令官席等、いかにもヒーローの秘密基地な室内。サソリやカマキリも飼育されている。
   司令官席を挟んで向かい合う菊地と黒田鉄男(46)。黒田の手には先ほどの封筒。
菊地「あの伝説の大会が、二〇年ぶりに復活しちゃうんスよ!」
黒田「菊地君、『伝説』は少々言いすぎではありませんか?」
菊地「何言ってんスか、鉄男さん。俺も斎東さんも、あの大会を見てヒーロー目指したんスよ?」
   そこに松葉杖をついてやってくる斎東映二(29)。
斎東「そうですよ。特にあの決勝戦は凄かったよな。片や新進気鋭のジャパニーズヒーロー、クロガネ。片や……」
菊地「アメリカから来た刺客、百戦錬磨の大ベテラン、メタルマスク」

○(回想)某所・闘技場
   超満員の観客。
斎東の声「圧倒的優勝候補に挑む地元の雄」
   ロボットのような戦士・メタルマスクと黒い戦闘スーツの戦士・クロガネが戦っている。メタルマスクの胸には印象的なエンブレム。倒れているクロガネ。立ち上がる。
菊地の声「そんな、漫画の主人公のようなクロガネに期待する大観衆の声援もむなしく」
   メタルマスクに一定の距離まで近づくと、勝手に吹き飛ばされるクロガネ。
斎東の声「メタルマスクの伝家の宝刀『マグネット』の前に」
   再び立ち上がるクロガネ。その間にメタルマスクが掌サイズのリモコンを操作すると、手元にキャノン砲(メタルキャノン)が転送されてくる。メタルキャノンの砲撃を受け、倒れるクロガネ。
菊地の声「最後まで触れる事すら出来ず……」

○同・地下室
   司令官席を挟んで向かい合う菊地、斎東と黒田。
斎東「でも、倒れても倒れても何度も立ち上がるクロガネの姿に痺れた訳ですよ。俺、断然クロガネ派でしたから」
菊地「俺もっス。やっぱ、そうっスよね」
斎東「その大会が復活か〜。今度はこの俺、斎東マンティスが伝説になる番だな」
黒田「そのケガで、出るおつもりですか?」
斎東「あ……。くっ……俺は何でこんな大事な時にケガなんて……」
黒田「『カッコ付けて高い所からジャンプして着地に失敗した』という報告を受けていますが?」
菊地「捻挫程度かと思ったんスけど、意外に重症だったみたいっスね」
斎東「……ちくしょう!」
   悔しげに机に拳を叩き付ける斎東。やがて、腕を押さえる。
斎東「う、腕が……」
黒田「(無視して)では、今回の出場は菊地君のみという事で。よろしいですね?」
菊地「いいっスけど、その間この街は誰が守るんスか?」
斎東「安心しろ、いざという時には俺がいる(と言って胸を張る)」
   動かなくなる斎東。
斎東「こ、腰が……」
菊地「(無視して)まぁ、何とでもなるか。この世界は、ヒーローで溢れてる」
黒田「そうですね。それに、当日モンスターが出なければ、何の問題もありません」
菊地「でも、そういう話をしちゃうと……」

○市街地
   T「大会当日」
   モンスターと戦う菊地ス。苦戦気味。
菊地ス「出ちゃうんだもんな〜」
   モンスターと距離を取る菊地ス。
菊地ス「おい、お前。一ついい事を教えてやるよ。ヒーローと戦う時はな、後ろからの攻撃に気をつけた方がいいぞ?」
   驚き、後ろを振り返るモンスター。そこには誰もいない。
菊地ス「スコーピオンキック!」
   その隙をつき、モンスターの背中に飛び蹴りを喰らわせる菊地ス。
菊地ス「だから、言ったじゃん。後ろからの攻撃に気をつけて、って」
   爆発四散するモンスター。
菊地ス「どうやら正義は、俺に……」
   後ろから攻撃を受ける菊地ス。振り返ると、そこにもう一体のモンスター。口元にエネルギーが収束している。
菊地ス「なっ、もう一匹!?」
   モンスターが口から放つ光線が菊地を直撃する。
菊地ス「ぐあっ!」
   激しいダメージを受け、菊地スから菊地の姿に戻ってしまう。
   その菊地の元に歩み寄るモンスター。
菊地「くっ、ヤベェ……」
   菊地とモンスターの間に入り、モンスターを攻撃する守村レイ(26)。一瞬怯むモンスター。
菊地「? 誰だ……?」
レイ「お前か? 俺を呼んだのは」
菊地「え? いや、呼んではねぇけど……」
レイ「そうか。なら、用はない。失せろ」
菊地「なっ……。アンタこそ、素人は下がって……」
   ブレスレットを着けた左手を高く掲げるレイ。
レイ「氷転化(ひょうてんか)」
   菊地の元にやってくる守村ダン(25)。幽霊だが、レイ以外の人物にはその姿は見えている。
ダン「説明しよう。守村レイが『氷転化』のコードを口にすると、腕のブレスレット・マイナスドライバーに蓄積された特殊合金アイスモンドが体の表面に定着し、凍結の戦士・氷河が誕生するのだ!」
   戦闘用スーツを身に纏った凍結の戦士・氷河に変身するレイ。その姿は映画の主人公レベルのクオリティ。
菊地「何、アンタ?」
ダン「俺の名前は守村ダン。生きてた時はコイツの兄貴で、今は守護霊やってます。よろしく」
菊地「なんだ、ナレーションの人かと思った」
ダン「じゃあ、まぁ、そういう事にしておくか」
   モンスターに向かっていく氷河。
氷河「お前か? 俺を呼んだのは」
   首を傾げるモンスター。
氷河「なら、用はない。失せろ」
   モンスターを攻撃する氷河。圧倒的な強さ。
菊地「強ぇ……」
   モンスターの口元にエネルギーが収束していく。
菊地「アレはさっき俺がくらった……あの技はヤベぇぞ」
ダン「何!?」
   氷河に向けて光線を放つモンスター。氷河を庇うように立ち塞がるダン。
ダン「危ない! (光線をくらい)ぐあっ」
   光線の全てはダンに当たっている。
氷河「ふん、全然効かねぇな」
ダン「いや、結構効いてんだが……まぁ、そういう事にしておくか」
氷河「今度は、こっちの番だ」
   (某『かめはめ波』や某『波動拳』のように)両の掌をモンスターに向ける氷河。
氷河「ブリザードブースト!」
ダン「説明しよう。ブリザードブーストとは……痛たた」
菊地「説明しろよ」
   掌から冷凍光線を発する氷河。それを受けて凍結し、氷ったまま砕け散るモンスター。
   一息つく氷河。変身を解き、レイの姿に戻る。
菊地「強ぇな、アンタ。(握手しようと手を出し)菊地スコーピオンだ。よろしく」
レイ「(手を無視して)『失せろ』と言ったハズだ」
菊地「なっ!?」
   代わりに菊地と握手するダン。
ダン「いや〜、スミマセンね。コイツ、口悪くて。根は悪い奴じゃないんですけど」
菊地「どこが」
ダン「ところで、菊地さんも出られるんですか? HEROー1グランプリ」
菊地「あ〜、出るハズだったんスけどね」
ダン「ハズだった?」
菊地「(腕時計を見せて)今から行っても、もう受付時間に間に合わないっスよ」
ダン「(腕時計の時間を見て)げっ! こんな時間!? おい、レイ〜。お前が二度寝するから……」
菊地「あ〜あ、もう最悪だ……」
ルナの声「イベント発動、音速体験」
   服を掴まれる菊地。
菊地「ん?」

○超高速で移動する菊地・レイ・ダンら
菊地「うわ〜〜〜!?」
ダン「し、死ぬ〜〜〜!」

○神祀山・入口
   着地する菊地、レイ、ダンと魔法少女ルナ(14)。ルナは高校の制服風の服装で、杖を持っている。
菊地「ここは……?」
   「第2回HERO―1グランプリ」の看板を見る菊地。
ルナ「イベント発動、素顔(すっぴん)公開」
   光木陽菜(14)の姿に戻るルナ。
陽菜「もう、あんな所で何してるんですか。受付時間過ぎたら失格なんですよ?」
菊地「ルナちゃんじゃん。ありがとう、助かったよ。でも、何で(わかったの)?」
陽菜「この子のおかげですよ」
   スマホの画面を菊地に見せる陽菜。そこには大型犬のような怪獣・花子と陽菜の2ショット写真が映っている。
菊地「あ〜、花子って言ったっけ? この犬っころ。デカくなっちゃって」
陽菜「犬じゃなくて、カニスザウルスですけどね。今は、もっと大きくなってますよ。えっと、その写メもどっかに……」
   陽菜がスマホを操作している間に立ち去ろうとするレイ。
菊地「おい、氷河とやら。アンタもお礼くらい言って行ったらどうだ?」
レイ「興味がない」
   そのまま歩いて行くレイ。
菊地「興味、って話じゃねぇだろ」
ダン「あ〜、本当スミマセンね。あの、凄く凄く感謝していたと、陽菜ちゃんに伝えといて下さい。じゃ。おい、レイ〜」
   レイを追いかけて行くダン。
菊地「ったく、何だよアイツ。ルナちゃんからも何か言ってやった方が……」
   振り返る菊地。そこには誰もいない。
菊地「あれ? ルナちゃん?」
   少し離れた場所、ヒーロー風二頭身ゆるキャラ・ひでお君の元にいる陽菜。
陽菜「ひでお君だ〜。ブログ用に写メ、いいですか?」
ひでお君「好きにしたまえ」
   自撮りでひでお君と2ショット写メを撮る陽菜。
菊地「……あいかわらずだな〜」
   陽菜の元へ歩いて行く菊地。ひでお君の元から戻ってきた陽菜と合流する。
陽菜「いや〜、いい大会ですよね。色んなヒーローさん達と写メ撮れるし」
菊地「目的違う気がするけど」
陽菜「あとは氷河さんとも撮れれば良かったんですけど、まぁ、仕方ないですよね」
菊地「さすが、ヒーローオタ。氷河って奴の事も知ってんだ」
陽菜「え、菊地さんはご存知なかったんですか? 今大会の優勝候補筆頭ですよ?」
菊地「え、アイツってそんな有名なの?」
陽菜「そうですよ。(トーナメント表を取り出し)でも、菊地さんはHブロックで、氷河さんはEブロックだから、会うとしたら本戦行ってからですかね」
菊地「ふ〜ん。で、ルナちゃんは?」
陽菜「私はAブロックなんですけど、何と……(何かに気付き)キターッ!」
   振り返る菊地。人並みを分け入り、メタルマスクのエンブレムが付いたトレーラーがやってくる。
菊地「あのエンブレム、まさか……」
奈津の声「この男未だ現役。この男、未だ無敗。メタルマスク!」
   停車したトレーラーから降りてくるメタルマスク。周囲にいた人々から大歓声がわき起こる。
菊地「え、マジ本物のメタルマスク?」
陽菜「そうなんですよ、出るんですよ。あの伝説の大会のチャンピオンが」
菊地「やべぇ、テンション上がっちゃうぜ、コレ! ……って、ルナちゃんって第一回大会の時、まだ産まれてないよね?」
陽菜「DVDで観たんで。それより、メタルマスクさんも同じAブロックだから、私、戦えるかもしれないんですよ」
菊地「うわ〜、超羨ましい。……って、いやいや、勝てんの?」
陽菜「ソレはソレ、コレはコレですよ。あ、写メ写メ」
菊地「あ、俺も……」
   菊地の肩をつかむ戦闘用アンドロイド39号(25)。見た目は人間の女性そのもの。
菊地「ん? 何、アンタ?」
39号「解析終了。受付未通過。回収」
   菊地を担ぎ上げ、連れて行く39号。
菊地「うわっ、おい、何だよ、降ろせよ!」
陽菜「その人はアンドロイド39号さん。職務に忠実だから、融通とか利きませんよ」
菊地「そんな〜、せっかくの生メタルマスクなのに〜。おい、アンタ。覚えとけよ。この怨み、いつか晴らしてやるからな!」

○同・闘技場
   対峙する菊地スと39号。
奈津の声「Hブロック決勝戦。赤コーナー、JHE所属、戦闘用アンドロイド39号選手」
39号「解析中、解析中……」
奈津の声「青コーナー、鉄男ファクトリー所属、菊地スコーピオン選手」
菊地ス「思ったよりも早く会えちゃったな。さっきの怨み晴らさせて貰うぜ。スコーピオンのピオンはチャン……」
   ゴングが鳴る。
菊地ス「まだ途中だろ。ちくしょう」
   39号を攻撃する菊地ス。
菊地ス「硬っ。マジでアンドロイドなんだ」
   菊地スが一方的に攻撃している。
菊ス地「おらおら、どうした? 言っておくが、まだ全然怨みは晴らせて……」
39号「解析終了。破壊」
菊地ス「ん?」
   39号の攻撃を受け吹っ飛ぶ菊地ス。ここから攻勢に出る39号。菊地スも応戦するが攻撃の全てを避けられる。
菊地ス「ちくしょう。俺の全てを解析した、ってか? だったら、コレでどうだ」
   彼方を指差す菊地ス。
菊地ス「あ! アレは何だ!?」
   無視して攻撃を続ける39号。
菊地ス「通じねぇか。だったら、コレだ」
   一旦、距離を取る菊地ス。そこから、意味のない無駄な動きをし始める。
菊地ス「どうだ、この動き。アンドロイドには解析できまい。意味なんてないからな」
   腕を銃型に変形させる39号。
菊地ス「え?」
39号「破壊」
   菊地スを銃撃する39号。
菊地ス「そんなのもアリ、か、よ……」
   倒れる菊地ス。とどめを刺そうと近づいてくる39号。
菊地ス「ちくしょう。万事休す、か……」
   菊地スに向け腕を振りかざす39号。その瞬間、動きが止まる39号。
39号「ギ……ガガ……」
菊地ス「?」
   明らかにおかしい動きをする39号。
39号「解析中、解析中……解析不能……」
   倒れる39号。動かない。
菊地ス「え? え?」
   ゴングが鳴る。
奈津の声「勝者、菊地スコーピオン選手」
菊地ス「どうやら正義は……って、一体何がどうなってんだ?」

○同・救護テント
   数台のベッドが並んでいるだけの簡易な設備。その一画のベッドに横になる39号と、その脇に立つ菊地。そこに陽菜がやってくる。
陽菜「39号さんの具合、どうですか?」
菊地「あぁ。先生が言うには、異常な磁場か何かが発生して、計器類が狂っちゃっただけだろう、って」
陽菜「そうですか。良かった〜」
菊地「ところで、ソッチはどうだった?」
陽菜「完敗です。さすがは伝説のチャンピオンというか」
菊地「まぁ、そりゃそうか」
陽菜「もうファイナリストの人達、集まり始めてましたよ? 39号さんは私が連れて行きますから、菊地さんもソッチに行った方がいいんじゃないですか?」
菊地「そうだね、そうする。……ん? 連れて行くって、どこに?」
陽菜「何か、負けた人も負けた人で、一カ所に集まらなきゃ行けないみたいで。敗者復活戦でもあるんですかね?」
菊地「ふ〜ん」

○同・広場(草地)
   山を少し登った所、周囲を森林地帯に囲まれた中にある、木のない一画。
   そこにやってくる菊地。
菊地「集合場所はこの辺のハズだけど……」
   後ろから肩をつかまれる菊地。振り向くと、そこにはイデアの民(17)。
   見た目はどう見ても四〇歳代男性。
イデア「イデアだ」
菊地「……はい?」
   イデアの傍らにやってくる桃太郎。
桃太郎「下がるべきだ、と言っている」
   目線を上に向ける桃太郎。釣られて上を見上げる桃太郎。スカイアックスがアクロバットな低空飛行をしている。
菊地「うわっ、危ねっ!」
    ×     ×     ×
   着陸したスカイアックスから降りてくる小野航(19)。軍隊の服装。
小野「予選通過者の方々ですよね? 初めまして、小野と申します」
桃太郎「桃太郎だ、よろしく」
菊地「桃太郎? でも……女の子だよね?」
桃太郎「女が桃太郎で、何が悪い?」
菊地「いや、悪いとは言ってないけど……」
イデア「イデアだ」
菊地「……はい?」
桃太郎「男女差別は反対だ、と言っている」
菊地「何でわかんの?」
桃太郎「逆に聞くが、何故わからない?」
イデア「(小野に)イデアだ」
菊地「……(桃太郎に)今度は何て?」
桃太郎「名前を名乗っただけだ」
菊地「名前もイデアかよ」
小野「(菊地に)で、えっと……」
菊地「あ〜、菊地だ。よろしく。それにしても小野君、いくつ?」
小野「一九歳です」
菊地「若いな〜。ルナちゃんは負けちゃったし、この中じゃ最年少じゃない?」
桃太郎「あいにくだが、イデアは一七歳だ」
菊地「は? どう見ても四〇過ぎでしょ」
小野「(イデアに)なら、タメ口でいい?」
イデア「イデアだ」
菊地「飲み込むの早っ」
桃太郎「まぁ、今の時代で言えばそうなのだろうが、イデアは一万年の眠りから目覚めたらしいからな。歳の取り方は、私たちとは違うのだろう」
菊地「一万年? 何でまた、そんな長い眠りから目覚めちゃった訳?」
桃太郎「さぁ? 大方、この大会に出るためじゃないのか?」
菊地「いやいや、この大会そんな大事か?」
小野「ところで、なんですけど。皆さん、何か感じませんか?」
イデア「イデアか」
桃太郎「邪気のような物か、と言っている」
菊地「邪気? 俺は感じねぇけど……」
桃太郎「あいにくだが、私もだ」
小野「僕、霊感とかそういうのに強くてですね……。あ、何か近づいてきてます」
菊地「え、何だよ、何だよ〜」
小野「すぐ後ろです!」
   振り返る菊地と桃太郎。そこにダンがいる。
ダン「なぁ、皆アッチに集まってるぜ?」
菊地「アンタかいっ!」
    ×     ×     ×
   集まる菊地、ダン、レイ、桃太郎、イデア、オトレンジャーの五人、小野、千葉猛人(42)、メタルマスク。その前にリクルートスーツ姿で立つ軽井沢奈津(33)。
奈津「では、人数確認がてら、各ブロック通過者のご紹介からさせて頂きます。まずはAブロック通過、メタルマスク選手」
   リモコンを操作して変身を解き、ビリー・ルース(55)の姿になるメタルマスク。
ルース「めたるますくコトびりー・るーすデス。オ見知リ置キ下サイ」
奈津「続いてBブロック通過、演奏戦隊オトレンジャーの皆さん」
レッド「燃えるドラム、オトレッド!」
イエロー「痺れるギター、オトイエロー!」
ブルー「流麗のキーボード、オトブルー!」
グリーン「堅実なベース、オトグリーン!」
ピンク「甘いボーカル、オトピンク!」
レッド「勝利のビートを響かせる」
五人「(ポーズを決めて)演奏戦隊オトレンジャー!」
   しばしの沈黙。
奈津「そういうのは結構です」
イエロー「……あ、そうなん?」
   変身を解除し、それぞれが赤田真(32)、黄羽元(30)、青山誠二(27)、緑川一生(38)、桃井知花(28)の姿になるレッド、イエロー、ブルー、グリーン、ピンク。
知花「だから言ったじゃん。止めようって」
青山「まさか、今ので減点とか?」
緑川「多分、大丈夫だろう」
黄「やってもうたんは仕方ないやんか」
赤田「とりあえず、お手柔らかに!」
奈津「では、続けます。Cブロック通過、小野航選手」
小野「よろしくお願いします」
奈津「Dブロック通過、桃太郎選手」
桃太郎「桃太郎だ、よろしく」
奈津「Eブロック通過、凍結の戦士・氷河選手」
レイ「……」
ダン「すみませんね、無愛想で。あ、俺はコイツの守護霊なんで、おかまいなく」
奈津「Fブロック通過、イデアの民選手」
イデア「イデアだ」
奈津「Gブロック通過……」
千葉「オイラは、千葉ちゃんだよ!」
   しばしの沈黙。
奈津「そしてHブロック通過、菊地スコーピオン選手」
菊地「菊地っス。よろしく」
奈津「改めまして。私は本大会実行委員の軽井沢と申します。以後、皆様の案内役を務めさせていただきますので、よろしくお願い致します。では、第2回HEROー1グランプリ、本戦ファーストラウンドのルール説明を行います」
   白い大きな杭の写真を見せる奈津。
奈津「この森の中に、このような白い大きな杭が七本、打ち込まれています。この杭を見事破壊した方が、決勝トーナメントへ出場する事が出来ます」
知花「え、それだけ?」
緑川「って事は、ここで脱落するのは一組だけって事?」
青山「いや、正確には最低一組」
小野「そうか、一人で七本全部破壊してしまえば……」
千葉「そこで優勝決まりだよ!」
奈津「その通りです。このラウンドは、最大七組の選手が脱落する、サバイバルバトルなのです」
黄「何や、面白そうやないか」
赤田「あぁ、やってやろうぜ」
イデア「なるほど、イデアだな」
桃太郎「良いアイデアだな、と言っている」
菊地「奇跡的に略語みたいになってんな」
   ニヤリと笑う菊地。
菊地M「でもコレ、上手くやれば……」
奈津「氷河選手。何かご意見は?」
氷河「……さっさと始めろ」
菊地M「メタルマスクや氷河を、戦わずに蹴落とせる可能性がある、って訳か」
ルース「デハ、皆サン。遠慮セズ、ふるぱわーデ戦イマショウ」
菊地M「だけど、俺一人で七本全て破壊するのは、きっと無理だ」
    ×     ×     ×
   菊地ス、氷河、メタルマスク、オトレンジャーの五人は変身を完了させる等各々準備を終えている。
菊地M「となると、残しておいても勝てそうな奴と手を組むのが現実的だ」
   作戦会議をするオトレンジャー。
菊地M「オトレンジャーは……五人まとめて相手とか無理だし、落としておきてぇな」
   スカイアックスに乗り込む小野。
菊地M「小野ちゃんは……あの戦闘機とタイマン張るとか無理だし、以下同文」
   準備運動をする千葉。
菊地M「千葉ちゃんとかいう人は……」
菊地ス「何か、組みたくない」
菊地M「となると、残りは……」
   桃太郎とイデアの元へ歩み寄る菊地。
菊地ス「そこのお二人さん。ちょいと提案」
桃太郎「何だ?」
菊地ス「この場は、手を組まない? 俺達三人で残りの五組を蹴落としちゃえば、決勝トーナメントが楽になると思うんだけど」
イデア「ほう、イデアだな」
菊地ス「良いアイデアだな、って?」
桃太郎「卑怯者だな、と言っている」
菊地ス「ちぇっ。じゃあ、交渉決裂?」
桃太郎「いや、私は構わない」
菊地「え、マジで?」
桃太郎「お供を連れて行くのは慣れている。さすがに、サソリは初めてだがな」
菊地ス「じゃあ、同盟成立って事で(と言いながら、握手をしようと手を差し出す)」
イデア「イデアだ」
   握手する菊地スとイデア。
   ブザー音。
奈津「時間です。それでは、ファーストラウンド、スタートです」
   一斉に走り出すヒーロー達と離陸するスカイアックス。
菊地ス「よし、俺達も杭探しに行きますか」
イデア「そのイデアとは、アレの事か?」
   遠くを指差すイデア。一見すると、森が広がっているだけ。
菊地ス「……ん? 『アレ』って、どれ?」
桃太郎「あいにくだが、イデアの視力は八・〇だ。私達に見えはしない」
菊地ス「は、八・〇!?」
   弓矢を構えるイデア。
イデア「イデア!」
   矢を放つイデア。しばらくすると、矢を放った先で爆発が起こり、緑色の光の柱が天に伸びる。
菊地ス「おぉ、やったんじゃね?」
桃太郎「さすが、イデアだ」
菊地ス「じゃあ、この調子でじゃんじゃんやっちゃおうぜ」
イデア「イデアだ……ぐあっ!」
   突如痛みに苦しみだすイデア。その腕には謎の腕輪がはめられている。
イデア「このイデア、何だ!?」
桃太郎「この腕輪は何だ、と言っている」
菊地ス「今のは、さすがにわかった」
桃太郎「この腕輪、杭の破壊の影響か?」
菊地ス「誰か他のヒーローの技、って可能性もあるっちゃあるよな」
イデア「イデアはいい。イデアはイデアだ」
桃太郎「わかった。イデアもこう言っている。私達は先へ行くぞ」
菊地ス「今のは通訳してくれよ」
   走り出す桃太郎を追いかける菊地ス

○同・森林地帯
   移動している菊地スと桃太郎。
レッドの声「とりゃあ!」
   振り向く菊地スと桃太郎。共通武器の剣(エンソード)を使って千葉と交戦するレッドとイエロー。尚、エンソードは鍔部分を一回叩くと「フォルテ」、二回叩くと「フォルティシモ」、三回叩くと「フォルティッシッシモ」と音声が流れ、攻撃が強力になる仕様。
イエロー「早よくたばれや」
千葉「そうは行かないよ!」
菊地ス「ちっ、あちこちで……」
桃太郎「おい、来るぞ」
   菊地スと桃太郎に襲いかかるブルー、グリーン、ピンク。持っている武器はやはり全員エンソード。
菊地ス「うわっ!?」
ピンク「手を組んだんだ。賢いじゃん」
グリーン「でも悪い。先に倒させて貰うよ」
ブルー「悪く思わないでね」
   交戦するも苦戦する菊地スと桃太郎。
菊地ス「こうなりゃ、この場は一旦……」
   近くの木を蹴り倒す菊地ス。
菊地ス「スコーピオンキック!」
   ブルー、グリーン、ピンクの行く手を遮るように倒れる木。
菊地ス「今だ!」
   桃太郎の手を引き、その場を後にする菊地ス。
    ×     ×     ×
   走ってくる菊地スと桃太郎。
桃太郎「なかなかの判断だったな」
菊地ス「だろ? 一個貸しって事で」
桃太郎「(何かに気付き)危ない!」
   菊地スを無理矢理伏せさせる桃太郎。上空から爆撃するスカイアックス。
菊地ス「うわぁ〜!?」
   過ぎ去って行くスカイアックス。
桃太郎「これで貸し借り無しだな」
菊地ス「だな。けど、どうするよ? さっさと杭見つけねぇと、埒が明かねぇぞ?」
桃太郎「ならば、コレだ」
   団子を取り出し、食べる桃太郎。
菊地ス「何? こんな時に飯?」
桃太郎「コレはイヌ団子だ。食べる事で、イヌの力を借りる事ができる。今の時代のお供の形、という奴だ」
菊地ス「へぇ。例えばキジ団子だと『空が飛べちゃう』みたいな?」
桃太郎「その通りだ。そしてイヌ団子を使えば、その匂いで目的の物を探し出す事が出来る。(匂いを嗅ぎ)コッチだ」
    ×     ×     ×
   やってくる菊地スと桃太郎。そこに一本の杭が刺さっている。
桃太郎「あった。コレだな」
菊地ス「へぇ、思ってたよりも細いんだな。コレに矢当てたイデアって凄くね?」
桃太郎「達人だ、と自負していた」
菊地ス「でもまぁ、簡単に壊せそうだな」
   杭を殴る菊地ス。びくともしない杭。
菊地ス「ん? これならどうだ」
   杭を抱え込んで折ろうとする菊地ス。びくともしない杭。
菊地ス「どうなってんだ、コレ?」
桃太郎「どけ、菊地」
   剣を振りかざす桃太郎。杭の所で刃先が止まる。
菊地ス「そんな、剣でも切れねぇのか?」
桃太郎「いや、違う。よく見てみろ」
菊地ス「え?」
   杭の少し手前で止まっている刃先。
菊地ス「剣が、届いてない?」
桃太郎「どうやら、何かに守られた杭のようだな。なら話は早い。この杭を守る謎のエネルギーを上回る力をぶつければいい」
菊地ス「でも、どうやって?」
桃太郎「最大の技を放つしかあるまい」
菊地ス「最大の技……ふるぱわー?」
   剣を構える桃太郎。
桃太郎「くらえ。鬼斬り!」
   破壊される杭。爆発が起こり、藍色の光の柱が天に伸びる。
菊地ス「スゲェ。……でも、何か食い物みてぇな技だな」
桃太郎「気にするな。……うぐっ」
   痛みに苦しみだす桃太郎。その腕にはイデアと同じ腕輪がはめられている。
菊地ス「桃太郎ちゃん? (腕輪に気付き)またこの腕輪……やっぱ原因はこの杭か」
桃太郎「くっ……あいにくだが、しばらくまともに動けなさそうだ。菊地は先に行け」
菊地ス「え、でも……」
桃太郎「アレを見ろ」
   空を指差す桃太郎。既に六色の光の柱がほぼ等間隔で天に伸びている。
桃太郎「おそらく、残る杭は一本。場所はアソコだ」
   桃太郎の指差す先。一カ所だけ光の柱の間隔が不自然に空いている。
桃太郎「急げ。先を越されるぞ」
菊地ス「わかった。決勝で会おう」
   走り出す菊地ス。
    ×     ×     ×
   走ってくる菊地ス。杭を見つける。
菊地ス「見つけたぜ、ラスト一本」
   杭に向けて飛び蹴りをする菊地ス。
菊地ス「スコーピオンキック!」
   菊地スの後方からやってくるダン。
ダン「やめろ!」
   杭を破壊する菊地ス。爆発が起こり紫色の光の柱が天に伸びる。
菊地ス「どうやら正義は、俺に味方したらしいな。……ぐっ」
   痛みに苦しみだす菊地ス。その腕には皆と同じ腕輪がはめられ、強烈な電撃が流れる。
菊地ス「ぐあぁぁぁ〜っ!」
   変身が解除され、倒れる菊地。そこに駆け寄るダン。
ダン「おい、しっかりしろ!」
   地響きが起こる。

○同・敗者部屋
   檻のような部屋。陽菜やガンバルマンらが収容されている。眠っていた39号が目を覚ます。
39号「……解析中、解析中……」
陽菜「あ、起きました? 今ここに、予選で負けた人がみんな集められてるんですよ。私の予想ではこの後、敗者復活戦が……」
39号「……解析終了。避難!」
陽菜「え?」
   突如鋼鉄のような壁で檻の四方を囲まれる。
陽菜「何、これ……?」

○同・森林地帯
   倒れている菊地を介抱するダン。目を覚ます菊地。
菊地「うっ……」
ダン「お、気がついたか?」
菊地「一体、何が……?」
   そこにやってくる桃太郎と知花。知花にも同じ腕輪。
知花「多分、この腕輪のせいね」
桃太郎「私やイデアは動けない程度だったが変身組は変身解除するまでのダメージを受けたらしいな」
   そこにやってくる小野、黄、青山。三人にも同じ腕輪。
黄「こっちもや。兄ちゃん、大丈夫か?」
小野「僕は大丈夫ですけど……」
   近くに墜落しているスカイアックス。
青山「自分の体が無事だっただけありがたいと思わなくちゃ」
   そこにやってくる千葉と赤田、緑川。三人にも同じ腕輪。
千葉「オイラも無事だったよ!」
赤田「これで五組か。全員、あの杭破壊したんだよな?」
ダン「あと、レイもクリアしてる」
桃太郎「イデアもだ」
緑川「って事は、メタルマスクが脱落?」
黄「何や、あのおっちゃん大した事なかったんやな」
青山「それより、さっきの地響きは何?」
知花「この腕輪の謎もわかんないままだし」
赤田「じゃあ、どうする?」
菊地「一旦、最初の広場に戻ろう」

○同・広場(草地)
   呆然と立ち尽くすイデアとレイ。そこにやってくる菊地ら。
菊地「無事だったみたいだな、イデア」
イデア「あのイデアは何だ?」
菊地「あん?」
   イデアの指す先にある巨大な棺。その脇に立つルースと奈津。菊地らに気付くルース。
ルース「Thank you very much。HEROノ皆サン」
一同「?」
ルース「皆サンノ協力ノオカゲデ、封印、解ク事、出来マシタ」
   棺から出てくる死神。
死神「我が名は死神。生と死を司る神なり」
   驚く菊地ら。
菊地「なっ!?」
ダン「死神!?」
桃太郎「どういう事だ!?」
ルース「Easyナ話デス。私、私ノ愛スル妻、生キ返ラセタイ、思ッテマシタ。ソノ方法、探シニ探シ、ツイニ見ツケマシタ。コノ国ノコノ地ニ眠ル、死神ノ存在」
小野「さっき感じた邪気は、アイツだったんですね」
ルース「But、カツテ死神、コノ地封印シタ神々、封印、簡単、解カレヌヨウ、二ツノ枷、作リマシタ」
死神「一つは、正義のヒーローの必殺技でしか破壊できない杭を七本打ち込む事」
ルース「モウ一ツハ、杭、破壊シタHEROノ変身ト必殺技、使用、制限スル事」
赤田「この腕輪は、そういう事か」
ルース「ツマリ、私一人デハ不可能デス。七組ノ、ソレモアル程度力アル正義ノHERO、仲間、加エネバナリマセン。ソレ、Very Very難シイ事デス。ダカラ、考エマシタ。HERO達、集メル方法」
ダン「それがこの大会……」
千葉「つまり、この大会自体が」
桃太郎「私達を集め、死神を復活させるための」
イデア「イデア、という訳か」
菊地「ややこしいから、今入ってくんな」
   一歩前に出るレイ。
レイ「つまり、お前か。俺を呼んだのは。(ブレスを付けた手を掲げ)氷転化!」
   氷河に変身するレイ。しかしすぐに体中に強烈な電撃が流れ、レイの姿に戻ってしまう。倒れるレイ。
レイ「う……ぐっ……」
ダン「レイ!」
   レイの元に駆け寄るダン。
ルース「言イ忘レテイマシタガ、変身ヤ必殺技ノ制限、マダ続イテイマス。皆サン、対抗スル手段、持ッテイマセン」
   ルースに向かって駆け出す桃太郎。
桃太郎「あいにくだが、私に変身は不要だ」
   間に割って入る奈津。
奈津「させませんよ」
桃太郎「やはり、お前もグルか」
奈津「その通り。私こそ、ルース様の忠実なる秘書……」
   メタルマスクと同型のリモコンを操作し、メタルマスクレディに変身する奈津。その姿はメタルマスクに酷似。
レディ「メタルマスクレディ」
   戦う桃太郎とレディ。
   その様子を見ているルース。
ルース「ミス桃太郎、ココマデ残ルノ、予想外デシタ。変身セズ、戦エルHERO、皆予選、負ケルヨウ仕向ケタンデスガネ」
菊地「……なるほどな、合点がいったよ。39号の突然の異変。やっぱりアンタが絡んでたって訳か。『磁場』って事は、マグネットの応用とか?」
ルース「ソンナ所デス。ココ、居ルHERO達、皆、変身出来マセン。ソシテ、予選、負ケタHERO達モ……」

○同・敗者部屋
   鋼鉄のような壁に手を当てる39号とその様子を見守る陽菜らヒーロー達。
39号「解析終了。破壊……不能」
陽菜「そんな……」

○同・広場(草地)
   菊地らを前に勝ち誇るルース。
ルース「ツマリ、モウ誰モ私達、止メル術、持ッテイナイノデス」
赤田「そうはさせるか」
   エンソードを手に持ち前に出る赤田、黄、青山、緑川、知花。
黄「自分らも、変身せんと戦えるか?」
イデア「イデアだ」
千葉「オイラもだよ!」
小野「僕はただのパイロットなので……。マシンの操縦なら誰にも負けない自信があるんですけど」
菊地「……ねぇ、何しちゃう気?」
赤田「決まってんだろ。今の戦力だけで、奴と戦うんだよ」
菊地「真っ正面から? 無敗のメタルマスクに? 変身できない俺達が?」
赤田「だったら何だ? 諦めるか? ここで諦めて、正義のヒーロー名乗れんのか?」
菊地「負けちゃったらさ、正義もクソもねぇだろ」
赤田「んだと?」
   菊地の胸ぐらを掴む赤田。それを慌てて引き離す青山。
青山「ちょっと、止めなって」
知花「そうだよ。彼の言う事も一理ある」
黄「ほな、どないすんねん」
ダン「……菊地君、何かいい作戦ある?」
赤田「なっ、コイツに頼んのかよ」
ダン「この中で一番小賢しい……あ、失礼。弱者の戦い方に長けているのは、菊地君だと思うんだ」
緑川「多分、そうだね。じゃあ、一時的にリーダーをお願いするって事?」
ダン「まぁ、そういう事にしておくか」
知花「どう? 何かある?」
菊地「そうだな……。じゃあまず、優先順位から変えちゃおうか」
赤田「優先順位?」
   腕輪を指す菊地。
ダン「そうか、その腕輪さえ壊せれば」
千葉「また変身できるようになるよ!」
黄「けど、ほんまに壊せるんか?」
緑川「多分、あの杭と同種の物だから、ヒーローの必殺技をぶつければ壊せると思う」
青山「でも、その『必殺技を使える人』が今いないよ?」
ダン「くそっ、俺が生きていた時の力さえ使えれば……」
菊地「いるじゃん、まだ一人だけ」
赤田「? 誰だ、そいつは?」
菊地「それは……」
   ダメージで立ち上がれず、体を半分だけ起こすレイ。
レイ「なるほど、奴か」
菊地「あれ、気付いちゃった?」
ダン「おい、レイ。『奴』って……(レイの視線の先に気付いて)あっ」
菊地「そう、今唯一必殺技が使えるヒーロー、それは……」
   その視線の先、メタルマスク。
菊地「メタルマスクだ」
    ×     ×     ×
   話し合いをする菊地らの様子を見ているメタルマスクと死神。
死神「あの者どもは、何故諦めないのだ?」
メタルマスク「ソレガHEROトイウ生キ物デス。ソレヨリ、早クYouのPower、見セテ下サイ」
死神「ふむ。では一つ試してみるとしよう」
   持っていた鎌を振るう死神。周囲にモンスター数十体と巨大モンスター数体(体長四〇メートル程)が出現する。
    ×     ×     ×
   レディと戦っている桃太郎。
桃太郎「むっ!?」
   モンスターの出現に気付き、菊地らの元へ戻って行く桃太郎。
桃太郎「何だ、あれは?」
赤田「何もない所から、何で!?」
緑川「多分、生き返らせたんじゃないか?」
黄「どないする? ザコ言うても、あの数や。相手するだけで骨折れるで?」
ダン「その上、メタルマスクに必殺技を使わせなきゃならねぇのか……」
菊地「大丈夫、策はある」
   ニヤリと笑う菊地。
    ×     ×     ×
   メタルマスクと死神の元に戻ってくるレディ。
レディ「調子はいかがですか?」
死神「やはり、まだ本領とはいかないようだな。しばし待て」
   メタルマスク達の元へ駆け出してくる千葉、桃太郎。
千葉「行くよ!」
レディ「残念ながら、おとなしく待っていてはもらえないようですね」
メタルマスク「Yes。(死神に)時間、稼グカラ。心配、イラナイヨ」
死神「ふむ。では、行くが良い」
   駆け出すメタルマスク、レディ、数十体のモンスターと数体の巨大モンスター。巨大モンスターの前にオトレンジャーロボ(体長四〇メートル程)が立ちはだかる。
レディ「あれは、オトレンジャーロボ!?」
メタルマスク「気ニスル必要、アリマセン。ムシロおとれんじゃーノ五人抜ケル、彼ラノ戦力、Downシテ……」
   モンスターと戦う赤田、黄、青山、緑川、知花。
赤田「とりゃあ!」
メタルマスク「!? Why!?」
菊地の声「まずアンタらはオトレンジャーロボを呼んでくれ。あのデカブツの相手は、他じゃ無理だ」
   エンソードを使い、モンスターを次々となぎ倒す赤田。
赤田の声「けど、俺らが抜けたら人数的にキツくなるんじゃ……」
菊地の声「いや、オトレンジャーの役目はあくまでもザコの一掃だ。よろしく」
   オトレンジャーロボを見上げるメタルマスク。
知花の声「じゃあ、ロボは誰が?」
菊地の声「それは、もちろん……」

○オトレンジャーロボ・コクピット
   全部で席が五つある室内。
   中央の席で操縦する小野。
菊地の声「小野ちゃんだ」
小野の声「僕ですか?」
青山の声「でも、オトレンジャーロボの操縦を一人じゃ……」

○神祀山・広場(草地)
   巨大モンスター達と戦うオトレンジャーロボ。
菊地の声「マシンの操縦なら、誰にも負けないんだろ?」
小野の声「わかりました。頑張ります」
    ×     ×     ×
   それを苦々しく見上げるメタルマスクとレディ。
メタルマスク「無駄ナ抵抗ヲ……」
桃太郎「覚悟!」
   飛び込んでくる桃太郎。その攻撃を受け止めるレディ。
レディ「貴女の相手は、私よ」
   レディと戦い始める桃太郎。徐々にメタルマスクからは離れて行く。
菊地の声「桃太郎ちゃんは、引き続きメタルマスクレディの相手をしておいて」
桃太郎の声「構わないが、いいのか? メタルマスクではなくて」
菊地の声「この作戦で一番恐ぇのは、最後の最後にあのレディに邪魔されちゃう事だ。精一杯引き付けちゃって」
桃太郎の声「いいだろう」
レディ「何度やっても同じ事。必殺技すら使えない貴女の剣では、この私に勝つ事など出来ないわ」
桃太郎「かもしれないな」
   剣を納める桃太郎。
レディ「? 何のつもり?」
   団子を取り出す桃太郎。
桃太郎「戦い方を変えよう。サル団子だ」
   団子を食べる桃太郎。再びレディに向かって行き、今度は格闘戦で挑む。
レディ「なるほど。目には目を、格闘戦には格闘戦を、という事ね。でも、所詮は猿真似。どこまでもつかしら?」
    ×     ×     ×
   何者かの気配に気付くメタルマスク。
ダンの声「で、メタルマスクの相手は?」
   メタルマスクと対峙する千葉。
菊地の声「千葉ちゃんさん、出番っス」
メタルマスク「ナルホド。私ノオ相手、おとれんじゃート生身デヤリ合エルYouデスカ。イイデショウ」
   戦い始める千葉とメタルマスク。
千葉の声「うん、オイラ勝ってみせるよ!」
   攻撃よりも守りに徹する千葉。
メタルマスク「ドウシマシタ? 逃ゲテルダケ、勝テマセンヨ?」
菊地の声「勝つ必要はないっス。千葉ちゃんさんは、メタルマスクの注意を引き付けておいてくれれば充分っス。その隙に……」
   メタルマスクの背後に忍び寄る菊地。
菊地の声「俺が、奴のリモコンを奪う」
   メタルマスクの腰のホルダーに付けられたリモコン。
ダンの声「狙いは、リモコン?」
菊地の声「メタルマスクの武器は、全てあのリモコンを使って、転送させている。つまりリモコンさえ奪えば、メタルマスクの必殺武器、メタルキャノンをコッチに転送する事も出来ちゃうハズだ」
   リモコンに手を伸ばす菊地。あと少しという所で、その手をメタルマスクに掴まれる。
メタルマスク「Good ideaデシタネみすたー菊地。私ノりもこん狙ウ、めたるきゃのん使イ腕輪壊ス……作戦、ソンナ所デショウカ? But……」
   菊地を締め上げるメタルマスク。
メタルマスク「ソウハ問屋ガ卸シマセン」
菊地「ぐっ……」
   メタルマスクに飛びかかる千葉。
千葉「コッチにもいるよ!」
メタルマスク「フッ」
   メタルマスクの攻撃を受け、吹っ飛ばされる千葉。
メタルマスク「The endデスネ」
   ニヤリと笑う菊地。
菊地「まだ作戦は終わってねぇよ」
   腕輪を付けた方の手でメタルマスクの腕を掴む菊地。
菊地「俺を掴んじゃった事、後悔しな」
   もう片方の手でヘルメットを掲げる菊地。
メタルマスク「ナッ……」
菊地「変身!」
   菊地スに変身する菊地。直後、菊地スの体中に流れる電撃が、腕を通してメタルマスクにも伝わる。
菊地ス「ぐあああ〜!」
メタルマスク「No〜! 離シナサイ」
菊地ス「離さねぇよ。我慢、比べだ!」
メタルマスク「ウゥ……付キ合イキレマセンネ。ナラバ……」
   リモコンを取り出すメタルマスク。
メタルマスク「まぐねっと On!」
菊地ス「今だ!」
   マグネットによる磁力で吹き飛ばされ電撃によるダメージも相まって菊地の姿に戻る菊地ス。
菊地の声「おそらく、メタルマスクは電撃に耐えかねて、マグネットを発動させるためにリモコンを取り出す」
   離れた場所で弓を構えるイデア。
菊地の声「その瞬間、イデアがリモコンを弾く。弓の達人なら、出来るだろ?」
イデア「イデアだ!」
   弓で石を放つイデア。メタルマスクが持つリモコンを弾く。
メタルマスク「Shit」
   弾かれたリモコンを追うも、電撃によるダメージで崩れ落ち、ルースの姿に戻るメタルマスク。
黄の声「で、その転送させたメタルキャノンを撃つんは誰や?」
   リモコンを拾い、投げる千葉。
菊地の声「決まってるでしょ。この中で唯一腕輪を付けてない……」
千葉「ダン、任せたよ!」
   リモコンを受け取るダン。
ダン「よっしゃ。来い、メタルキャノン」
   ダンの手元に転送されてくるメタルキャノン。
    ×     ×     ×
   桃太郎と戦いながら、それに気付くレディ。
レディ「させない!」
   その前に立ちはだかる桃太郎。
桃太郎「あいにくだが、お前の相手は私だ」
レディ「くっ……」
    ×     ×     ×
   メタルキャノンを構えるダン。
ダン「メタルキャノン、発射!」
   メタルキャノンから光線を放つダン。その弾道上に腕輪を翳すヒーロー達。次々と腕輪が壊されて行く。
   最後にメタルキャノンをオトレンジャーロボに向けるダン。反動で吹っ飛ばされて倒れ、リモコンとメタルキャノンを手放すダン。

○オトレンジャーロボ・コクピット
   操縦しながら腕輪を翳す小野。腕輪が破壊される。
小野「やった! 壊れました!」

○神祀山・広場(草地)
   喜び合うヒーロー達。
千葉「やったよ、これで変身できるよ!」
赤田「あぁ。もう思い通りにはさせねぇ」
イデア「イデアだな」
桃太郎「あぁ」
   倒れているダンの元に駆け寄る菊地。
菊地「大丈夫っスか? ダンさん」
ダン「生身で撃つもんじゃねぇな。反動がハンパじゃねぇ。死ぬかと思ったぜ」
菊地「そう思ったから、ダンさんにお任せしちゃったんスよ。作戦通りっス」
ダン「この野郎……まぁ、そういう事にしておくか」
   笑い合う菊地とダン。足音に気付き、振り返る。転がっているリモコンとメタルキャノンを拾う奈津。
奈津「コレは、返していただきます」
ダン「ちっ」
   拍手の音。再び振り返る菊地とダン。拍手をしているルース。
ルース「Great。皆サンノ奮闘ブリ、驚キマシタ。敬意ヲ表シマス。But……」
   ルースの隣にやってくる死神。
ルース「私ノ目的、達成サレマス」
赤田「何っ!?」
   ルースの傍らにやってくる奈津。リモコンを操作する。
ルース「Good bye」
   姿を消すルースと奈津。
死神「これが我の真の力である。であっ!」
   鎌を地面に突き刺す死神。死神の足下から植物が枯れ始め、その範囲が死神を中心にどんどん広がって行く。
菊地「一体、何が……?」
シルバーの声「皆、飛ぶんじゃ!」
   何者かに抱えられ、飛んで行く菊地らヒーロー達(ダンを除く)。
菊地「うわっ!?」

○同・広場(荒野)
   それまで草地や森林地帯だった場所が荒野に変わってしまう。
    ×     ×     ×
   着地する菊地らヒーロー達(ダンを除く)と銀色の戦闘スーツを着たオトシルバー。
桃太郎「(周囲を見て)これは一体……」
菊地「何が起きたんだ?」
シルバー「アレこそが死神の技じゃ。生けるものの命を奪い、死したものを蘇らせる」
菊地「何だって? ……って、え、そもそもアンタ誰?」
赤田「生きていたのか、オトシルバー!」
黄「じいさんのおかげで助かったで」
青山「あのままあの場所に居たら、僕達は死んでいたって事?」
緑川「多分な」
死神「汝ら、よく避けたと褒めてやろう。しかし、残念だったな。一人、逃げ遅れた者が居たようだぞ?」
知花「え? ……あっ」
   一人、倒れているダン。
シルバー「ワシがもう少し早く、ここに着いておれば……」
菊地「あぁ、大丈夫。あの人は……」
   菊地を押しのけ前に出るレイ。尚、レイはここで初めてダンの姿が見える。
菊地「っ痛ぇな、オイ」
レイ「(驚いて)兄貴……!?」
   ゆっくりと起き上がるダン。
死神「!? 汝、何故……?」
ダン「簡単な事だ。俺は守護霊。アンタの技を喰らえば、生き返れると思ったぜ!」
   ダンの腕に、レイと色違いのブレスレットが出現する。
ルースの声「Congrats!」
   姿を現すルースと奈津。
ダン「何だ、皮肉か?」
ルース「No。皮肉、違イマス。生キ返ルノ私ノ妻ダケ、不公平デス。ダカラ皆、生キ返ル、OKネ」
ダン「まぁ、そういう事にしておくか」
菊地「皆?」
   周囲で次々と蘇るモンスター数百体と巨大モンスター十数体。
菊地「なっ!?」
黄「えらいぎょうさん居るやないか」
緑川「多分、数百体って所だな」
赤田「デカブツも増えてやがる」
死神「それだけではない」

○同・闘技場
   何体ものモンスターが蘇る。
死神の声「既に各地でモンスターが蘇り」

○同・入口
   何体ものモンスターが蘇り、街へ向かおうとしている。
死神の声「街に向かおうとしておる」

○デパート・屋上
   ヒーローショーが行われている。ステージには怪人役のみ。
死神の声「そして、既に街でも……」
子供達「助けて〜、ジャングル仮面〜!」
   現れるジャングル仮面(20)。あくまでもヒーローショーのキャラクターであり、役者。
ジャングル仮面「森の平和は俺が守る。ジャングル仮面、見参!」
   そこに現れるモンスター達。
ジャングル仮面「うわっ、本物のモンスター!?」
   慌てて逃げるジャングル仮面や怪人役。それに気付き逃げ出す客と、避難誘導する警備員(64)。
警備員「皆さん、落ち着いて! コチラへ避難して下さい!」

○市街地
   並んで歩く守村カナ(27)と守村ヒロ(5)の元に現れるモンスター達。
ヒロ「うわっ!?」
   ヒロを守るように抱えるカナ。
カナ「来ないで! 誰か、助けて〜!」

○鉄男ファクトリー・前
   モンスター達の前に姿を見せる斎東。松葉杖片手にヘルメットを掲げる。
斎東「お前等の好きにさせるか。変身!」
   菊地同様、ヘルメットを着用すると斎東マンティス(以下、斎東マ)の姿に変身する斎東。菊地スと良く似た姿。
斎東マ「マンティスのティスはジャスティスのティス。斎東マンティス!」
   ポーズを決める斎東に、モンスターの放った光線が直撃する。
斎東マ「ぐあっ、あばらが!」

○同・広場(荒野)
   死神、ルース、奈津と対峙するヒーロー達。
死神「我の力はまだ続いておる。故に、まだモンスターは蘇り続けるであろう」
知花「本当だ。また大きいのが……」
   遠くから、首輪を付けた犬のような巨大怪獣・花子が近づいてくる。写メと同じ首輪を着けている。
菊地「? あの首輪……」
ダン「(死神を睨み)お前の目的は何だ?」
死神「決まっておろう。かつて我を封じ込めたこの世界の神々への報復である」
ルース「私ノ妻、イツ生キ返ル?」
死神「焦るでない。人間の魂を呼ぶのはモンスターより時間がかかるだけの事。これでも我は神だ。約束は守る」
ルース「ナラ、OKネ」
死神「しかし、汝の作戦は良かったぞ。この世界のヒーローどもはこの地に集まっておる。故に、この者達は街が破壊されていく様を、何も出来ず、ただ黙って見ておる他ない。我らにとって、最善の状況なり」
ダン「悪いけど、俺たちは諦めてねぇぞ?」
死神「ほう」
千葉「きっと何とかなる、ううん、オイラ達が何とかするよ!」
イデア「イデアだ」
桃太郎「思い通りになると思ったら大間違いだ、と言っている」
シルバー「ワシらも微力ながら力を貸そう」
青山「でも、さすがにこの数、僕達だけじゃ厳しいんじゃない?」
赤田「な〜に、俺らには小賢しい策士が付いてるじゃねぇか。なぁ、菊地。何か作戦考えついたか?」
   笑い出す菊地。
赤田「……何笑ってんだ?」
黄「おい、まさか諦めたんやないやろな」
菊地「いや、ただの思い出し笑いっス」
ダン「こんな時に何を……」
レイ「いい作戦でも思いついたか?」
ダン「え?」
菊地「作戦って訳じゃねぇな。それに実際俺達だけで、こんだけの数の相手とか、街まで助けるとか、無理だと思うし」
黄「やっぱり諦めて……」
菊地「けど、別に俺達だけで何とかする必要もねぇんだよ。なぜなら、この世界はヒーローで溢れてるからだ!」
   菊地の背後に現れるゴルディナン。
ゴルディナン「ゴルディナン!」
桃太郎「あれは、予選で負けた……」
   巨大モンスターを攻撃するゴルディナンと花子。

○オトレンジャーロボ・コクピット
   操縦する小野。
小野「え……あの怪獣も、味方?」

○神祀山・広場(荒野)
   ゴルディナンと花子を見上げ、戸惑う菊地、レイ以外のヒーロー達。
ルナの声「あ、いた〜」
   ヒーロー達の元にやってくるルナ。着地と同時に陽菜の姿に戻る。
陽菜「もう、探しちゃいましたよ」
ダン「陽菜ちゃん? え、どうして?」
陽菜「イベント発動、敗者復活です」
菊地「まったく、あの首輪なかったら気付かずに攻撃しちゃう所だったよ?」
陽菜「え? (花子を見上げ)あ〜。花子、大きくなったでしょ?」
菊地「大きくなりすぎだから」
奈津「何故? あの鋼鉄の檻から抜け出せるハズが……」
   麓を指す陽菜。

○同・入口
   カンフー使いや甲冑の男など、予選敗退者が続々と街へ向けて駆けて行く。彼らに向けてモンスター達が放った光線を盾で受け止めるガンバルマン。
ガンバルマン「吾輩の盾に防げぬ物なし」
   矛を取り出すガンバルマン。
ガンバルマン「吾輩の矛に……」

○(回想)同・敗者部屋
   鋼鉄のような壁を貫くガンバルマンの矛。
ガンバルマンの声「貫けぬ物なし」
陽菜「凄い、さすがガンバルマンさん!」
ガンバルマン「ガンバルマンではない。ザ・ガンバルマンだ」

○同・入口
   街へ向けて駆け出すガンバルマン。
ガンバルマン「吾輩達は街の救援に向かうのである!」
   後を追いかけようとするモンスター達の前に立ちはだかる39号。
39号「出入口封鎖、任務開始」
   モンスター達を次々と銃撃していく39号。
39号「解析終了、破壊」

○同・広場(荒野)
   安堵するヒーロー達。
知花「これなら、いけるかもしれない」
死神「甘いわ。あの者達が着く頃には、街の一つや二つ既に亡きものに……」
菊地「だーかーら、この世界はヒーローで溢れてんだ。俺みたいな小賢しい卑怯者ですらヒーロー名乗っちゃってんだぞ? その気になりゃ、誰だってヒーローになれる」

○デパート・屋上
   逃げる客達と誘導する警備員。そこに襲いかかるモンスター。
警備員「危ない!」
   警棒を武器にモンスターと戦う警備員。年齢を感じさせない華麗な立ち振る舞い。モンスターを一旦退かせる。
警備員「さぁ、皆さん。コチラです」
   客集団の後方、一人の少女が落としたぬいぐるみを拾いに列から離れる。そこに襲いかかるモンスター。
   悲鳴を上げる少女。
   そこに飛び込み、モンスターを撃退するジャングル仮面。
ジャングル仮面「ジャングル仮面、見参!」

○市街地
   カナを守るように前に出るヒロ。
カナ「ヒロ?」
ヒロ「ママは、僕が守るんだ。パパと、約束したんだ! うわ〜!」
   モンスターに体当りするヒロ。一旦怯むも、再び襲いかかるモンスター。
カナ「ヒロ!」
   そこにバイクで颯爽と現れるポストマン。バイクでモンスターに体当りし、カナの前で停止する。
ポストマン「守村カナだな。郵便だ」
   カナに手紙を差し出すポストマン。
カナ「え、あの、今そういう状況じゃ……」
   ポストマンに襲いかかるモンスター。
ポストマン「むっ」
   華麗なバイクアクションでモンスターを退けるポストマン。
カナ「あ……ありがとうございます……」
ポストマン「心配には及ばん。手紙と秘密は守る主義だ」

○鉄男ファクトリー・前
   倒れている斎東の元に近づいてくるモンスター達。
斎東「くそっ、万事休すか……」
   斎東を庇うように現れる黒田。
斎東「? 鉄男さん?」
黒田「だから休むように言ったでしょう、斎東君? それが、傷ついたヒーローのすべき事ですよ」
斎東「でも、そしたら戦える人が……」
黒田「覚えておいて下さい。この世界は、今まで何人ものヒーローが生まれてきた、そしてこの先も何人ものヒーロが生まれてくる、そんな素晴らしい世界なのです。斎東君もいつか、託す日が来ますよ。かつての私のようにね」
   服の下のベルトを見せる黒田。
斎東「そのベルト……」
黒田「では、変身させていただきます」
   ベルトを操作する黒田。クロガネに変身する。
斎東「鉄男さんが、クロガネ……?」

○神祀山・広場(荒野)
   対峙するヒーロー達と死神、ルース、奈津。街の方を見ているイデア。
イデア「イデアだ」
桃太郎「街で多くの人がモンスターと戦っているのが見える、と言っている」
死神「ぐっ……愚か抵抗なり」
菊地「愚かなのはアンタの方だろ」
死神「何?」
菊地「まず、街では多くのヒーローがモンスターと戦っている。その街へ、今多くのヒーローが増援に向かっている。そして何より、一番の元凶であるアンタの元には、その中でも飛びっきりのヒーロー達が、もう既に集まっちゃってる」
   並び立つヒーロー達。
菊地「俺達にとって、最善の状況だ。皆、ここから先は、言わなくてもわかっちゃってるよな!」
一同「おう!」
   並び立つダンとレイ。
ダン「久しぶりに、一緒にやろうぜ」
レイ「……」
ダン「あ、そうか。お前は知らなかっただろうけど、実は俺は死んでからもずっとお前達の側に……」
レイ「気付いていた」
ダン「え?」
レイ「姿も見えないし、声も聞こえないが、感じていた。ずっとな」
ダン「そうだったのか……」
レイ「兄貴だったんだろ? ずっと俺を呼んでいたのは」
ダン「まぁ、そういう事にしておくか。行くぜ、レイ!」
   ブレスレットを掲げるダンとレイ。
レイ「氷転化」
ダン「炎転化(えんてんか)!」
   氷河に変身するレイ、氷河と色違いのヒーロー、太陽の戦士・日向に変身するダン。
氷河「凍結の戦士、氷河」
日向「太陽の戦士、日向!」
    ×     ×     ×
   並び立つ赤田、黄、青山、緑川、知花、シルバー。シルバー以外、携帯電話型変身アイテムを手に持っている。
オトレン「演奏チェンジ!」
   携帯電話型変身アイテムを操作する五人。それぞれレッド、イエロー、ブルー、グリーン、ピンクに変身する赤田、黄、青山、緑川、知花。それぞれ楽器型の専用武器(レッドはスティックのみ)を手にしている。
レッド「燃えるドラム、オトレッド!」
イエロー「痺れるギター、オトイエロー!」
ブルー「流麗のキーボード、オトブルー!」
グリーン「堅実なベース、オトグリーン!」
ピンク「甘いボーカル、オトピンク!」
シルバー「シニアのDJ、オトシルバー!」
レッド「勝利のビートを響かせる」
六人「(ポーズを決めて)演奏戦隊オトレンジャー!」
    ×     ×     ×
   掌サイズのひでお君のぬいぐるみを掲げる千葉。
千葉「トランスフォーム!」
   ひでお君の姿に変身する千葉。
ひでお君「正義の使徒、ひでお君!」
   その姿を見て驚く菊地と陽菜。
菊地&陽菜「そうだったの!?」
    ×     ×     ×
   並び立つイデアと桃太郎。
イデア「イデア!」
桃太郎「変身する、と言っている」
菊地「え、アンタも?」
   イデアの全身を光が包む。光が消えると、髪飾りが一つ増えている。
イデア「イデア!」
菊地「ほとんど変わってねぇから」
桃太郎「そして私が、一〇四代目、桃太郎」
    ×     ×     ×
   ステッキを掲げる陽菜。
陽菜「イベント発動、臨戦態勢」
   ルナの姿に変身する陽菜。
ルナ「魔法少女、ルナ!」
    ×     ×     ×
   ヘルメットを掲げる菊地。
菊地「変身!」
   ヘルメットを装着し、菊地スの姿に変身する菊地。
菊地ス「スコーピオンのピオンはチャンピオンのピオン。菊地スコーピオン!」
    ×     ×     ×
   並び立つ変身後のヒーロー達。
菊地ス「行くぜ。HEROー1グランプリ、決勝戦だ!」
一同「おう!」
   一斉に駆け出すヒーロー達。
    ×     ×     ×
   並び立つ死神、ルース、奈津。
ルース「モシ、Youヤラレタラ、私ノ妻、ドウナル?」
死神「我の力で蘇りし者、全て消える」
奈津「ルース様、迷う必要などありません」
ルース「ソウデスネ。参リマショウ」
   それぞれリモコンを操作しメタルマスクとレディに変身するルースと奈津。
メタルマスク「皆サン、Go!」
   駆け出すメタルマスク、レディと数百体のモンスター達。
    ×     ×     ×
   モンスター達と戦うひでお君、イデア、レッド、シルバー。
    ×     ×     ×
   ベース型の武器でモンスター達と戦うグリーン。
グリーン「ウッドベース!」
   ツタのような物が出現し、モンスター達を縛って行く。
   そこにギター型の武器を持ったイエローがやってくる。
イエロー「エレキギター!」
   ツタを伝って流れる電撃でモンスター達を攻撃する。
   そこに高台から飛び込むピンク。
ピンク「ボーカルダイブ!」
   モンスター達にボディプレス攻撃をするピンク。そこにオルガン型の銃を持ってやってくるブルー。
ブルー「オルガン!」
   モンスターを銃撃していくブルー。
    ×     ×     ×
   モンスター達と戦うルナ。
ルナ「このっ、このっ! (前方に何かを見つけ)あ〜! イベント発動、交通整理」
   光の一本道が出現し、周囲のモンスター達が近づけなくなる。一本道の先、レディがいる。
ルナ「メタルマスクレディさんですよね? 写メ、いいですか?」
レディ「……ふざけているのですか?」
ルナ「そんな事ないですよ。だって、倒しちゃったら撮れないじゃないですか」
   ルナの後ろからやってくる桃太郎。
桃太郎「あいにくだが、奴の相手は私だ」
ルナ「あ〜、横入りはズルいですよ。私の方が先です。いくら桃太郎さんとはいえ、何で命令されなきゃいけないんですか?」
桃太郎「お前が、予選で負けたからだ」
ルナ「う……それは……。もう、桃太郎さんの馬鹿! (モンスター達に八つ当たりするように)馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!」
   その場を去って行くルナ。
レディ「さて、決着をつけましょうか」
桃太郎「望む所だ」
    ×     ×     ×
   一人佇む死神。
日向「見つけたぜ、死神!」
死神「む?」
   モンスター達を飛び越えて死神の元にやってくる日向と氷河。
死神「あえて我に挑もう、と言うのか?」
氷河「せっかく兄貴が生き返ったんだ。ザコ相手じゃつまらないだろ」
日向「あぁ、死ぬ気で行くぜ!」
    ×     ×     ×
   モンスター達と戦う菊地ス。そこを分け入ってやってくるメタルマスク。
菊地ス「げっ、メタルマスク!?」
メタルマスク「探シマシタヨ。マズハYouニりべんじデス」
菊地ス「こん中で一番弱い俺を相手に選んじゃうなんて、Youも中々卑怯者ですね」
    ×     ×     ×
   矢を放ったり、弓で斬りつけたりしてモンスターを倒して行くイデア。
イデア「イデア、イデア、イデア!」
    ×     ×     ×
   口上を述べ、見栄を切りながら、モンスター達と戦うひでお君。
ひでお君「ヒーローたるもの正義の為に、
 出来うる全ての力を捧げ、
 お助けしよう命の花を、
 君のその声聞こえる限り」
    ×     ×     ×
   爪型の武器を両手に装着し、モンスター達と戦うシルバー。そこに、両手にスティック型の武器を持ったレッドがやってくる。
レッド「ドラムスティック!」
   シルバーと背中合わせに戦うレッド。
レッド「……あれ、他の四人は?」
シルバー「皆、アッチに行っておるぞ」
   オトレンジャーロボを指すシルバー。
レッド「あ〜! アイツら、俺抜きで!」

○オトレンジャーロボ・コクピット
   小野を中心に操縦席に座るイエロー、ブルー、グリーン、ピンク。
小野「さぁ、行きますよ、皆さん」

○神祀山・広場(荒野)
   巨大モンスター達と戦うオトレンジャーロボ、ゴルディナン、花子。
   剣で次々と斬りつけて行くオトレンジャーロボ。それをサポートするように戦うゴルディナン、花子。
    ×     ×     ×
   その様子を見上げているルナ。
ルナ「いいぞ〜、花子〜!」
   向き直り、モンスター達と戦うルナ。
ルナ「よ〜し、私も負けないぞ。イベント発動、被害甚大」
   ステッキを振るうと、足早にその場を後にするルナ。時間差で尋常ではない量の爆発が起きる。
ルナ「やったね!」
    ×     ×     ×
   一進一退の攻防を繰り広げる桃太郎とレディ。一旦離れる。
レディ「もう貴女の剣は見切りましたよ」
桃太郎「ならば、コレでどうだ。鬼斬り!」
   桃太郎の攻撃を受け、アーマーの一部が破損するレディ。
レディ「さすがの威力ですね。でも、大事な必殺技をこんな所で使ってしまうなんて、追いつめられている証拠では?」
桃太郎「まだ手はある。次は、コレだ」
   団子を取り出し、食べる桃太郎。
レディ「困った時のお供頼み、ですか。でも犬だろうと雉子だろうと、私の相手ではありませんよ」
桃太郎「あいにくだが、お供が三匹というのは昔の話だ」
   再びレディに切り掛かる桃太郎。
レディ「どうしました? 先ほどまでと何も変わらないように思えますが」
桃太郎「先に一つ聞かせてもらおう。お前は何の為に戦っている?」
レディ「何の為、とは?」
桃太郎「あの男の妻が生き返ろうと生き返るまいと、お前には関係ないだろう?」
レディ「そんな事はありませんわ。ルース様に仕える事が私の務め、ルース様の理想実現の為の力となる事が私の喜び。全てはルース様の為であり、私自身の為でもあるのです」
桃太郎「理解に苦しむな」
レディ「そういう貴女こそ、どうなんです? 名も知らぬ者達の為に命をかけて、何故戦うのですか?」
桃太郎「決まっているだろう。それは私が、桃太郎だからだ」
レディ「そのような理屈……うっ」
   フラフラし始めるレディ。
レディ「一体、何が……?」
桃太郎「どうやら、効いてきたようだな。ヒツジ団子の効果が」
レディ「羊……眠気を誘う技でしたか」
桃太郎「この機は逃さん。(剣撃が当たる度に)羊が一匹、羊が二匹……」
    ×     ×     ×
   死神を圧倒する日向、氷河。吹っ飛ばされ、転がる死神。
死神「くっ、何故だ。神である我が、何故汝ら人間ごときに……」
氷河「俺達が、死神ごときに負ける訳がないだろう?」
死神「何たる侮辱、万死に値する」
日向「『万死に値する』? それはコッチの台詞だ」
死神「何?」
日向「お前が命を奪った草達はな、踏まれても踏まれても懸命に生きて、やっと花を咲かせようって所だったんだ! アソコに生えてた大木は、俺たちが産まれるよりもずっと前から、この地に根を張って支えてくれた、偉大なる先人なんだ! そんな者達の命を簡単に奪ったお前を、俺は絶対に許さない!」
   しばしの沈黙。
氷河「……暑苦しい」
日向「そんな言い方ないだろ!?」
死神「しかし我は、同時に命も与えておる。汝も、その一人ではないか」
日向「それは……」
氷河「面倒な事しやがって」
日向「冷たいな」
   駆け出す氷河。死神と戦う。
氷河「俺達はもう、兄貴を見送った。俺達の中で、ケリはつけた。あんな思い、一度で十分だ」
日向「レイ……。そりゃ、悪かったな」
   駆け出す日向。死神と戦う。
日向「という訳だ、とどめ刺させて貰うぜ、命の恩人さんよ」
死神「良いのか? 我を倒せば、汝は再び命を落とす事になるのだぞ?」
日向「だからこそだよ。こんな役目、他のヒーローにやらせられる訳ねぇだろ!」
   氷河のブリザードブーストと同じように両の掌をモンスターに向ける日向。
日向「バーニングバースト!」
   掌から火炎光線を発する日向。それを受け、吹っ飛ばされる死神。
    ×     ×     ×
   一定の距離を取って対峙する菊地スとメタルマスク。メタルキャノンによる砲撃を必死に避けている菊地ス。
メタルマスク「ドウシマシタ? 攻撃、シテコナイノデスカ?」
菊地ス「仕方ねぇだろ。俺、武器とか持ってねぇんだから。この距離じゃ無理だ」
メタルマスク「ナラバ何故、近ヅカナイ?」
菊地ス「近くに寄ったら、マグネットで吹っ飛ばされちゃうだろ」
メタルマスク「ソレ、降参スル、ソウイウ事デスカ?」
菊地ス「そうだな。諦めた方がいいかもな」
メタルマスク「諦メル人、ソンナ事言ワナイ。マダ何カ作戦、アルミタイデスネ」
   ニヤリと笑う菊地ス。
メタルマスク「ナラバ私モふるぱわー……」
洋子の声「ビリー……」
   声に気付き振り返るメタルマスク。そこには半透明な洋子・ルース(45)の姿。
メタルマスク「Oh、洋子……ヨウヤク、ヨウヤク会エマシタ。ズット、ズットコノ日待チワビテイマシタ。洋子……」
   (洋子を抱きしめるため)メタルキャノンを転送し、洋子に歩み寄るメタルマスク。そこに向かって駆け出す菊地ス。
菊地ス「今だ。うおおお!」
メタルマスク「邪魔スル気デスカ? 今、コノ場、近ヅケサセマセン」
   リモコンを手に取るメタルマスク。
菊地ス「いいのか? マグネット使っちゃって。奥さん、どうなっちゃうのかね?」
メタルマスク「ウッ……」
   洋子の方を振り返るメタルマスク。リモコンをホルダーにしまう。
メタルマスク「ナラバ、力ヅクデス」
   戦い始めるメタルマスクと菊地ス。
メタルマスク「みすたー菊地、噂通リ、卑怯者デスネ」
菊地ス「そいつはどうも」
メタルマスク「私、全テノ行動、妻ノ為。Youヨリヨッポド、正義ノ味方ラシイ、思ウネ」
菊地ス「言っとくけど、俺は自分が『正義の味方』だなんて思ってねぇぞ?」
メタルマスク「Why?」
菊地ス「そもそも、こんだけヒーローが溢れた世界だ。何が正義で何が悪か、誰が決める? 俺か? アンタか? 神様か? 俺は思う。正義を決めるのは『正義』だ」
メタルマスク「……日本語難シイネ」
    ×     ×     ×
   人文字で「イデア」の形に倒れるモンスター達。
イデア「イデアだ!」
   爆発するモンスター達をバックにポーズを決めるイデア。
菊地スの声「正義って奴は、悪い奴の味方はしねぇ」
    ×     ×     ×
   体から謎の液体を放出し、周囲のモンスターを攻撃するひでお君。
ひでお君「ヒーロー汁ブッシャー!」
   爆発するモンスター達をバックにポーズを決めるひでお君。
菊地スの声「正義が味方しねぇ奴は、勝ったりしねぇ」
    ×     ×     ×
   背中合わせに戦うレッドとシルバー。
シルバー「DJスクラッチ!」
レッド「ドラムスティック、乱れ打ち!」
   爆発するモンスター達をバックにポーズを決めるレッドとシルバー。
菊地スの声「確かに俺は小賢しい卑怯者だ」

○オトレンジャーロボ・コクピット
   小野を中心に操縦席に座るイエロー、ブルー、グリーン、ピンク。
五人の声「クレッシェンドクラッシュ!」

○神祀山・広場(荒野)
   剣を振るうオトレンジャーロボ。
   口から炎を放つ花子。
   クロスさせた手から光線を放つゴルディナン。
ゴルディナン「ゴルディウム光線!」
   爆発する巨大モンスター達をバックにポーズを決めるオトレンジャーロボ、ゴルディナン、花子。
菊地スの声「大した力も無ぇ弱者だ」

○同・入口
   モンスターを倒していく39号。
菊地スの声「けど、少なくとも今までは勝ってきた」

○デパート・屋上
   モンスターを倒していくジャングル仮面、警備員、カンフー使い、甲冑の男。
菊地スの声「正義は俺に味方してくれてたんだ」

○市街地
   カナとヒロを守るようにモンスターを倒していくポストマンとガンバルマン。
菊地スの声「逆に言うと、こんな俺がヒーローであり続けるためには」

○鉄男ファクトリー・前
   斎東を守るようにモンスターを倒していくクロガネ。
菊地スの声「俺はどんな手を使ってでも、勝ち続けなきゃならねぇんだ」

○神祀山・広場(荒野)
   戦っている菊地スとメタルマスク。菊地スはメタルマスクにボコボコに殴られており、クリンチしている状態。
菊地ス「スコーピオンのピオンはチャンピオンのピオン。勝ち続けている以上、俺はヒーローだ!」
メタルマスク「モウイイデス。私トYou、キット永遠ニ分カリ合エマセン。話スダケ無駄デスネ」
   菊地スを振りほどき、一旦距離を取るメタルマスク。
メタルマスク「モウコレデ決メマス。Come on メタルキャノン……」
   ホルダーの中にリモコンは無く、空振りするメタルマスクの手。顔を上げるとリモコンを手に得意げに顔の菊地ス。
メタルマスク「ナッ……イツノ間ニ」
菊地ス「こっちもリベンジ達成だな」
メタルマスク「重ネ重ネ、卑怯ナ……」
菊地ス「さぁ、決着つけちゃおうぜ。卑怯な俺と、奥さんの為に戦うアンタ。どっちが勝つか。正義が、どっちに味方すんのか」
メタルマスク「OK。負ケナイヨ」
   リモコンを放り投げ、飛び蹴りを繰り出す菊地ス。
菊地ス「スコーピオンキック!」
    ×     ×     ×
   桃太郎の攻撃を、足下をふらつかせながらも避けているレディ。
レディ「お見受けするに、攻撃を受ける度に眠気が増す仕組みのようですね」
桃太郎「わかった所で、どうする?」
レディ「今は避ける事に徹します。既に貴女の剣は見切っていますから、それくらい雑作もない事で……」
ルナの声「イベント発動、集中豪雨」
   レディにのみ大量の雨粒が降り注ぐ。桃太郎の隣にやってくるルナ。
ルナ「ザコ退治終了。ここからは私も……」
レディ「……無念」
   変身が解除され、倒れて眠る奈津。
ルナ「あれ? え? 何で?」
桃太郎「……まぁ、良しとするか」
    ×     ×     ×
   日向の攻撃で吹っ飛ばされた死神、その先に氷河がいる。
氷河「終わりだ」
死神「汝こそ、良いのか? 我を倒せば、汝の兄は……」
氷河「失せろ」
   両の掌をモンスターに向ける氷河。
氷河「ブリザードブースト!」
   掌から冷凍光線を発する氷河。それを受ける死神。
死神「ぐああああ!」
    ×     ×     ×
   メタルマスクに向けて飛び蹴りを繰り出す菊地ス。
メタルマスク「ソノ程度ノ技、避ケル事、Easyデスネ」
菊地ス「避けちゃっていいのか?」
メタルマスク「ム?」
   メタルマスクの真後ろ、徐々に実体化しつつある洋子の姿。
メタルマスク「Shit」
菊地ス「終わりだ!」
   菊地スの蹴りをモロに受けるメタルマスク。
メタルマスク「グアアア!」
   変身が解除され、膝をつくルース。
ルース「(振り返り)無事デスカ、洋子」
   徐々に消えて行く洋子の姿。
洋子「ビリー……ビリー……」
ルース「洋子!? Why、洋子〜!」
   ひん死の状態でルースの元に転がって くる死神。
死神「人間の力、これほどまでとは……」
   後ろ手に縛られた状態でルースの元にやってくる奈津。
奈津「ルース様、申し訳ございません……」
   足音に気付き顔を上げるルース。並び立つ一三人のヒーロー(菊地ス、日向、氷河、ルナ、桃太郎、レッド、イエロー、ブルー、グリーン、ピンク、シルバー、ひでお君、イデア)。
菊地ス「ふっ、どうやら、正義は……」
一同「俺達に味方したらしいな!」
死神「くっ……」
菊地ス「さぁ、コレで終わりだ!」
   駆け出す一三人のヒーロー達。
                 (完)

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