アイ ガット ユー ホラー

学生時代、映研で共に過ごした会社員の健太、映画監督となった直人、女優となった温子の3人で久しぶりに旅行に行くことになった。山奥のロッジに到着した3人は旅行を楽しむことに。しかし、誰もこのロッジで起こることを予期してはいなかった。
湊本 佳孝 7 0 0 02/09
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第一稿

人物
久保健太 (28)会社員
坂井温子 (28)女優
佐藤直人 (28)映画監督
ベンケイ (32)ロッジの
従業員

〇森 (夜)

鬱蒼と木々が茂 ...続きを読む
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人物
久保健太 (28)会社員
坂井温子 (28)女優
佐藤直人 (28)映画監督
ベンケイ (32)ロッジの
従業員

〇森 (夜)

鬱蒼と木々が茂る森。

鎖でつながれた死んだ犬を引きずって歩く、図体は大きいが顔は子供のようなベンケイ(32)。首輪に『こ うちゃん』の札。

〇高速道路 全景

走る一台のワゴン。

〇ワゴン車内 中

運転する佐藤直人(28)と助手席に座る坂井温子(28)。

  後部座席でス マホを温子に向け話す久保健太(28)。

久保「今は大人気女優となった坂井温子さん、
 新進気鋭の監督佐藤直人さんと結婚を控え
 た今の感想は?」

温子「もう直人、バカやんないでよ」

笑いに染まる車内。

シフトレバーに置かれた佐藤の左腕には古ぼけた時計。

  時計を見る久保。

〇森 

首輪だけになった鎖を引きずり歩くベンケイ。首輪に『こうちゃん』と書かれた札。

〇ロッジ 外観 

丸太で作られたロッジ。

〇ロッジ前 

横づけされるワゴン。

ワゴンから降りてくる久保、温子、佐 藤。

  ワゴンの鍵を久保に投げる佐藤。

鍵をポケットに入れる久保。

温子、大きく背伸びをして、

温子「さいこー空気が新鮮!あれっ鍵は?」

佐藤、タバコを取り出し火をつける。

久保「持って待ってるって言ってたけど」

温子「そっか、でも三人で旅なんて久しぶり。
 直人ありがとう、私たちの結婚祝いにこん
 な素敵なとこ招待してくれて」

久保「いいでしょ?俺たち映画研究会の仲間
 同士が結婚だもんな、それも超有名人」

温子「ふふーん、羨ましいでしょう」

佐藤「お前も続けてりゃよかったんだよ」

久保「・・・」

佐藤「まっツメが甘いからなお前の脚本」

久保「うっせ、ベッタベタな映画のくせに」

佐藤、吸っていたタバコをピッと久保に投げつけ追いかける。逃げる久保。

三人の背後にニタニタして立つベンケイ。

  温子、ベンケイに気付き驚く、

温子「ちょ、ちょっと、二人とも」

じゃれあいを止めベンケイを見る久保と佐藤。

ベンケイ「べ、ベンケイ、鍵」

ベンケイ、ロッジの鍵を差し出す。

〇ロッジ リビング 中

小奇麗でソファなどの家具が並ぶ。

温子、スマホをいじりながら、

温子「なんか、さっきのキモくなかった?あ
 ーもう、ここ圏外なんだぁ」

久保「デジタルデトックス、よくね?」

佐藤「良いよ、もうSNSとか大っ嫌い」

温子「えー、でもまっいっか、のんびりしよ」

久保「よし、じゃあ、久々に三人で朝まで飲
 みますか?」

 × × ×

朝の光が射しこむ。

ソファで寝る温子。床で寝る久保。

久保を蹴る佐藤の足。

久保「ん?ああ、直人。どした?」

佐藤「健太、ちょい外いかね?」

ドアを開け外に出る佐藤。

  目をこすりながら後に続く久保。

〇ロッジ前 外

ドア前に立つ久保と佐藤。

あくびをしながら背伸びする久保。

  ゴトッという音。

  佐藤が久保の足元を見るとワゴンの鍵が落ちている。

佐藤「相変わらずずぼらだなぁ、ポケット破けたジーンズ履いてんの?買えよ新しいの」

久保「いいんだよ、気に入ってるんだから、物持ちがいいって言えよ」

佐藤「変わらねぇな」

久保、鍵を拾い森の方へ歩く佐藤に続く。

○森の小道 (朝)

横並びで歩く久保と佐藤。

  佐藤の左腕には時計。

  久保、時計を見ながら、

久保「まだしてんだその時計、学生のころ温子にもらったやつだろ?」

佐藤「ああ、まあな、このほうが体裁がいい」

久保「ん?」

佐藤「お前さぁ、今でも温子のこと好きなんだろ?」

久保「な、なんだよいきなり」

佐藤「図星、だろ?おれはいいよ、身を引いてやっても」

立ち止まる久保。

佐藤「いや、俺さぁ売れちゃったじゃんか、いい女いっぱい寄ってくんだよ、だから、わかるだろ?男同士」

久保、独り言のように、

久保「なんだよ、それ」

佐藤、小道の脇に目をやると乱れた字で『こうちゃんのはか』と書いた立て 札が地面に刺さっている。

佐藤「なんだこれ?キモっ」

立て札を蹴飛ばす佐藤。

佐藤「そういうことで、よろしく」

歯を食い縛る久保。

森の中から二人を見つめるベンケイ。

○ロッジ 風呂場前廊下 中

ドアが開きバスタオルだけの温子が出てくる。

  ドアの前に立つ久保。

温子、驚き風呂場に戻り半分ドアを閉め、

温子「健太、何やってんの」

健太「ゴメンゴメン、あれ?直人は?」

温子「えっ、知らない一緒じゃないの?」

健太「あっそっ先に戻るって言ってたけど」

立ち去る健太。不審げな温子。

〇同 リビング (夜)

外では激しい雨の音。

ソファに座る久保と温子。

温子「ねー絶対おかしいよ、帰ってこないよ」

久保「大丈夫だよ、子供じゃないんだし」

温子「私ちょっと探してくる」

久保、ソファを立とうとする温子の腕を握る。

久保「そんなに直人がいいの」

温子「は?当たり前じゃん結婚するんだし」

久保「あいつのどこがいいの?ねぇ」

温子「健太おかしいよ」

久保「俺の方が絶対・・・」

外からドサっという音。

温子「えっ何?」

慌てて窓に駆け寄る二人。

猛烈に降る雨の中に立つベンケイ。

ベンケイの足元には泥だらけの佐藤。

温子「あれって、直人?」

窓の外、左腕を切り落とされた佐藤の腕。

  久保と温子、ソファに戻り体を寄せ合う。

久保「なんだよ、あいつ」

温子「死んじゃってんのかな直人、腕がなかった」

久保「大丈夫、大丈夫落ち着け」

温子「警察、警察」

温子、スマホを取る。

  スマホ画面、『圏外』の表示。

  温子、スマホを投げ捨てる。

  けたたましくドアを叩く音。

  泣き叫ぶ温子。

久保「大丈夫、温子は俺が守るから」

ドアの音が一瞬やむ。

温子「行ったの?」

恐る恐るドアの方へ歩く久保。

  蹴破られるドア。

  ドアに押され飛ぶ久保。

ずぶぬれで立つベンケイが叫ぶ。

泣き叫ぶ温子。

ベンケイ、入ってきて温子の手を取りドアの方へ引きずる。

温子「健太!助けて」

久保、ベンケイの背後に飛びつく。

ベンケイ、温子の手を離し久保を振り払い、持っていた首輪のついた鎖で久保の首を絞める。

  温子、おびえながら部屋を見回し大きな花瓶を見つけ手に取り、もみ合うベンケイの頭めがけて振り下ろす。

動きが止まるベンケイ。

ベンケイ、振り返り温子の方へ迫り腕を取る。

  久保、咳き込みながら首に巻かれた鎖を取る。

  ベンケイ、温子を引きずりドアへ向かう。

久保、ベンケイの背後から持っていた鎖でベンケイの首を絞める。

倒れこむベンケイ。

  首を絞める久保。

動かなくなるベンケイ。

久保「行こう」

久保と温子、ドアへ向かう。

  ゴトっという音。

  床に転がる血まみれの直人の時計。

  温子、時計を取り、

温子「これ直人の、健太これ、どうしたの」

久保「・・・」

温子、横たわったベンケイを見る。

久保「あーあ、せっかく埋めてきたの掘り出すんだもんなぁ、こいつ。やっぱ、ツメが甘いんだよなぁ俺の脚本」

温子「健太?」

久保「温子・・・お前はもう俺のものだよ」

激しい稲光が久保の顔を照らす。

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