抱きしめた、蒼 -Listen‐リッスン‐ 編 学園

歌手になる。という夢を抱いた少年たちの物語。
やまさきたかし 226 0 0 02/07
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第一稿

登場人物
主人公
蒼葉未來【15歳】

蒼葉美月【37歳】未來の叔父(父親の弟)
        未來と同じ中学校の音楽の先生をしている。



○未來の教室・文 ...続きを読む
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登場人物
主人公
蒼葉未來【15歳】

蒼葉美月【37歳】未來の叔父(父親の弟)
        未來と同じ中学校の音楽の先生をしている。



○未來の教室・文化祭当日(現在)
 教壇に立つ3年A組担任(男・59)
担任「おはようございます。」
全生徒「おはよーございます。」
 未來の席だけ空いている机。
担任「今日は待ちに待った文化祭の日ですね。放課後の練習の成果を、出し切りましょう。」
全生徒「オォー!!」
担任「私たちクラスの発表は2年B組の後ですので、その演目が終わる15分前には舞台袖に集合しておいて下さいね」
全生徒「はーい」
担任「えーそれと、今年は皆さんにも音楽を教えて下さっている蒼葉先生の意向によりサプライズ演目があるそうです。」
男子生徒B「なに?なに?なにやんだ?」
担任「楽しみにしておいて下さいね。」
男子生徒C「どーせ、くっだらねぇーことだろ!」
全生徒「アハハッ」
担任「それでは、会場に向かいましょう」

○同日・屋上(朝)
未來「やっべ緊張しすぎてお腹痛い……。」



○タイトル【抱きしめた、蒼】
        -Listen‐リッスン‐ 編



○教室 中3・2学期 (回想)
 数学の授業中、蒼葉未來(15)机の前。
先生「コラーッ!」
 何度も未來を怒鳴り立っている先生。
先生「コラーッ!!」
未來「……」
 真っ赤なipodで大好きな音楽を大音量で聴いている來來。
先生「おいっ!聞いてるのか?」
 イヤホンをしたままボーっと窓越しの空を眺めている未來。
先生「なんなんだ!その態度は!!」
未來「……」
先生「おいっ いい加減にしろ」
 未來の両耳からイヤホンをシュッと引っぱり取り上げる先生。
未來「イッテーよ」
 先生を2つの目で睨みつける未來。
未來「うるせぇな、ちゃんと聞えてるよ。それ、返せ。」
先生「聞えてるなら、返事ぐらいしろ」
未來「それ返せっ」
 シュッと先生からイヤホンを取り返す。
未來「真面目に授業出てんだから、これくらい、いいじゃん」
 小さく呟く未來。
先生「どこが真面目にだ!(即答)」
未來「あー……、じゃあもう帰るね」
 真っ赤なipodでもう一度、曲を大音量で流し席を立ち
先生「待ちなさい!!」
 怒鳴る先生の言葉をまた無視したまま
 颯爽と教室から出て行く未來。
男子生徒A「あいつ何がしたいの?廊下にでも立ってろ!」
男子生徒B「バーカッ」
男子生徒C「帰れっ帰れっ!!」
全生徒「あはは」
 授業を邪魔された生徒たちで教室がざわつく。

○同日・廊下(昼)
 ため息をつく未來。
未來「(ハァー)またやっちゃってる……今、帰ったら美月に怒られるだけだしなぁ……。屋上で時間つぶして帰ろ」
 チラッと明日の給食のメニューを廊下の掲示板で確かめる。
 そして屋上に続く階段をのぼる未來。

○ 同日・屋上(昼)
 立ち入り禁止と書かれたA4用紙の紙が貼られている扉を悪びれもなく開ける。
未來「やっぱ、屋上はキッモチイイーー」
 両手を雲ひとつない空へ突き上げる未來。
未來「フゥー」
 深呼吸ひとつ、鞄を置き寝っ転がり寝る。

○同日・屋上(夕方)2時間後
 最終下校のチャイムで目を覚ます未來。
未來「やっべ、爆睡しちゃった」
 屋上へ未來を探しに蒼葉美月(37)がやってくる。
美月「やっぱり、ここに居たのか」
 声の聞こえてくる方に目をやる未來。
 すぐに寝たフリをする。
美月「なにやってるんだ!」
未來「……」
 未來は寝たフリを続ける。
美月「なにをやってるんだと聞いてるんだ!授業はどうした?起きてるんだろ、未來っ!」
 ヨイショと起き上がりながら答える未來。
未來「ほんっと……どいつもこいつも、うるさいな。なんか俺に用でもあんの?」
美月「よっ……用はないが……」
 ウーンと背伸びをする未來。
未來「用がないなら職員室戻れよ」
美月「お前だって用もないのにここに居るだろがっ」
未來「えっ……まぁそうだけど……」
美月「なぁ未來、お前にとって屋上は楽しい思い出なんか一つもないだろ。一年の時は、上級生に目をつけられ、ここでボコボコにされて、2年の時は担任の先生と……」
未來「もういいよ……それ以上言わなくて」
 悲しげな表情へ変わる未來。
 そして、口を大きく開き言い返す。
未來「なーんにも……」
 空を見上げる未來。
未來「なーんにもないけどさ、空が近くに見えるから……」
 ゆっくりと風が未來のサラサラな前髪を揺らす。
美月「未來、大丈夫か?」
未來「また、なんだよいきなり。気持ち悪いなぁ」
美月「お前の両親が、二人とも突然逝なくなった夏の終わり……この時期になるとお前はいつも悲しげな顔するだろ」
未來「えっ」
美月「お前は必死でそんな顔を見せないようにと強がって平気な顔してるけどな、バレバレなんだよ」
未來「そんな顔してねーよ」
美月「なー未來、もっと素直になれ。」
未來「だから、そんな顔……」
美月「悲しい時には悲しい顔して、寂しい時には寂しい顔を見せればいいだろ。」
未來「そんな事、簡単に言うなよ」
美月「簡単な事だろ」
未來「俺は男だぜ。誰かに弱音吐いて、おもいっきり人前で泣けるわけないだろ。そんなのダセーよ。」
美月「ダサくなんかない。」
未來「……だったら、だったら俺だってほんとは、そうなりたいって思ってるよ」
美月「そうか」
未來「なーんちゃって、ウソだよ。」
 ニヤリ笑う未來。
未來「そんな姿、誰にも見せたくない。」
美月「そうか」
未來「ってか、なんの話してんだよ。もう帰る。」
 鞄を持って歩き出す未來。
美月「わかった、もうなにも言わないし、なにも聞かない。ただ……」
未來「ただ……なんだよ」
美月「お前の母さんがまだ生きていた時、いつも優しい微笑みを浮かべながら、嬉しそうに俺に話してくれたぞ。」
未來「なにをだよ」
 立ち止まる未來。
美月「未來は人懐っこくて、よく笑い、よく泣く、音楽が大好きな子なのよ。って」
未來「……ふ~ん。」
 勢いよく話し続ける美月。
美月「音楽が好きなところだけは変わってないみたいだけどな」
未來「じゃあいいじゃん」
美月「良くないだろ。今のお前は」
未來「なんだよ」
美月「今のお前は音楽に逃げてるだけだ。」
未來「はっ」
美月「人の作った歌に都合の良いところだけ自分を重ね、共感し慰められて、現実から目を逸らして、安心してるだけだ。」
 また帰ろうとする未來の腕を掴む美月。
美月「そうだろ、俺が言ってること間違ってるか?」
未來「そんな……こと……」
美月「けどな、未來。お前が聴いてる歌の主人公は、お前じゃない。」
未來「あんたになにがわかんだよ」
美月「なにもわからないさ。」
 未來の腕を強く握る美月。
美月「お前、ほんとは誰よりも伝えたい事があるんじゃないのか?自分の事、もっとわかって欲しいと思ってるんじゃないのか?」
 未來をガン見する美月。
美月「ちゃんと伝えろよ。」
 美月から目を逸らす未來。
未來「もういいよ……」
美月「なにがいいんだ?」
未來「もうわからないんだ。」
 美月から腕を払いのける未來。
未來「俺だって……自分の事がわからないんだ。」
美月「嘘つくな」
未來「はっ」
美月「お前はちゃんと自分の事、わかってるはずだ。」
 嫌がる未來の腕をギュっと掴み直す美月。
未來「なにすんだよ。」
美月「いいから、ちょっとこい。」
 未來の教室へ向かう二人。
未來「嫌だよ、もう帰るんだっつーの」
美月「いいから」

○未來の教室(夕方)
 未來の机の中からプリントや教科書、ノートを取り出す美月。
美月「このノート見せてみろ。」
 ノートを未來へ手渡す美月。
未來「嫌だよっ。なにも書いてないの、バレんじゃん」
美月「いいから見せてみろ、お前はちゃんと書いてるだろう」
未來「どこにだよ、ほらっよく見ろよ。」
 表紙からゆっくりパラパラ、ノートを捲る未來。
美月「反対側から見せてみろ」
未來「えっ」
 顔があわてる未來。
未來「お断りします。」
美月「ダメだ。」
 ノートを未來から取り上げる美月。
 すぐさま美月からノートを取り返す未來。
 仕方なさそうにノートの裏側から捲る。
未來「ほらよっ」
 猛スピードで捲り始める未來。
美月「はやすぎだ、もう1回」
未來「はい、はい。」
 堪忍した未來はゆっくりページを捲る。
 殴り書きのような字でなにか書いているページが見えた瞬間
美月「ストップ!」
 ノートを指差す美月。
美月「これはなんだ?」
未來「ゲッ……」
 たくさんの感情や想いがノートに書かれてあるページを開いたまま
美月「ちゃんと書いてあるじゃないか」
 『ずっと知っていたぞ。』という表情で言う美月。
未來「これは……」
美月「お前はこんなにもたくさんの感情をどうして隠してる?」
未來「いつから知ってたんだよ?」
美月「ここに書いてあるお前が本当の未來なんじゃないのか」
未來「だから、いつから知ってた……」
 未來の目を逸らさず話し続ける美月。
美月「誰かが痛みや苦しみを感じている時、自分も同じように……」
未來「……」
美月「その誰かと同じように、感じられる心があるんじゃないのか」
未來「……」
美月「逆に誰かと一緒に笑い合えたりもするんじゃないのか、どうしてそんな自分を隠そうとする」
未來「俺は誰ともツルむきないからね」
美月「いつからそんなふうに一歩引いて人と関わるようになった」
未來「俺はいつだってひとりだ。」
美月「未來、そうじゃない。お前だけが孤独な人間なんだと、ひとりを抱え生きてるわけじゃない。」
未來「なんで、わかんだよ」
美月「わかるさ」
未來「さっきはわからないって言ったろ」
美月「わかるんだ、よしっ証拠見せてやる」
未來「どうやってだよ?」
美月「お前、そのノートに書いた感情や想いを繋いで歌を作れ、自分の言葉でだ」
未來「はぁーー!!」
 最終下校のチャイムが鳴る。
美月「どんな歌になってもいい、お前のまっすぐな言葉で歌を作れ」
未來「そんなムチャクチャなこと言うなよ」
美月「お前が聴いてる歌にいつも自分を重ねているように 未來が作った歌を聴いた誰かが自分を重ねるはずだ。」
未來「そんなこと……」
美月「確かめてみるか?」
未來「無理だね。」
美月「俺は知ってるぞ」
未來「また、なにをだよ」
美月「お前の父さんが生きていた時、ピアノを買ってもらい教えてもらっていた事ぐらい」
未來「ゲッ」
美月「そして、俺の部屋にあるピアノを勝手に使って遊んでいる事ぐらい」
 ニヤリ笑う美月。
美月「やるか?」
未來「やんねぇーよ。もし、作ったところでどうすんだよ」
美月「今度行われる文化祭で披露するんだ」
未來「絶対 嫌ッ!!」
美月「お前がそのノートに書いた感情や想いが音に乗り、誰かのもとへ届く時、その時、涙する人がいる。その光景こそが自分だけじゃないという証拠になる。」
未來「俺の書いた歌で……か?」
美月「そうだっ」
未來「だからって出来ねーよっ」
美月「ほんとに出来ないのか?」
未來「うん出来ない。」
美月「そうか、なら仕方ないな。」
未來「どうする気だよ」
美月「そうだな、お前の両親が……いや兄貴夫婦が亡くなってからお前を引き取り面倒をみてきたが今日で終わりにする」
未來「おっおい……」
美月「明日、俺のマンションから荷物まとめて施設へ戻れ。」
未來「ちょっと待ってよ……そんな急に」
美月「じゃあやるか?」
未來「勘弁してくれよ……」
美月「俺は本気だぞ。」
 ノートを見つめる未來。
未來「もう……わかったよ、やればいいんだろ……やれば……」
美月「よし!よく言った!決まりだな!」
 ニヤリ笑う美月。
未來「チェッ」
 舌打ちをする未來。
美月「じゃあもう遅いから、暗くならないうちに帰れ」
未來「はーい。」
 ノートだけを鞄に入れ、教室を出て行く未來。
美月「すこし……言いすぎたかな」
 未來の帰る背中を見る美月。

○同日・美月と未來の住むマンション (夕)
未來「たっだいまーって誰も居ないかぁ」
 玄関を開けすぐ自分の部屋に鞄を置く。
 楽な服に着替えノートを持ってリビングのソファーに寝っ転がる。
未來「やってみるだけ、やってみるか…」
 ノートを見ながら独り言を言いつつ、ピアノがある美月の部屋に向かう。
未來「ド……ミ……ソ……ファ……」
 ピアノの鍵盤の音を口に出す。
未來「ウーーーーン……やっぱ無理だーー」
 21時を指す時計、集中する未來。
未來「美月、遅いな。なにしてんだよ」
 ピアノの音で玄関の開く音が消され、突然部屋に入って来る美月に驚く未來。
○同日・未來の部屋のドアの前。(夜)
美月「ただいまーー」
未來「おっおかえり。びっくりしたー」
 驚く未來。
美月「おぉやってるな」
 ニヤリ笑う美月。
未來「やってるよ。それより腹減った。」
美月「すまん、すまん、遅くなったな。すぐ晩飯にするから、待ってろよ。」
未來「うん。」
美月「ところで、調子はどうだ?」
未來「帰ってきてからずっと、やってみてるんだけどさ、やっぱ出来ねーよ」
美月「じゃあ、諦めて俺とはサヨナラだな」
未來「……」
美月「まぁ歌の作り方なんてネットで調べればいくらだって出てくるだろうけど自由でいいんじゃないか、色々試してみろ」
未來「なんだよ、それ」
 台所へむかう美月。
未來「音楽の先生なんだからもっとマシなアドバイスしてくれよ!!」
美月「晩飯、親子丼でいいか?」
未來「なんでもいいよ。って話し変えるな」
美月「そうだな、最初はまずノートに書いたひとつひとつの言葉をまとめて文にして声に出し て何度も何度も読み返してみろ。いつか自然にメロディーが浮かんでくるはずだ、お前なら大丈夫だ。」
未來「ほんとかよ」
美月「いいからやり続けてみろ、その前に休憩だ。晩飯出来たぞ。」

○同日・リビング (夜)
 リビングに向かう未來。
未來「リョーカイ。ってもう出来たの?」
美月「温めるだけだからな、たまにはインスタントも良いだろ。」
未來「いつもだろ」
美月「バレてたか。」
未來「バレバレだっつーの」
未來「アハハハ、温めるだけで簡単だけど美味しいだろ。ほらっ、サラダも食え」
 晩飯を食べ終えピアノに戻る未來。
未來「ごちそう様でしたーー」
 後片付けをする美月。
美月「風呂、先入るぞ」
未來「どうぞ」
 ノートを片手に何度も声に出して読んでいる未來。
 風呂からあがる美月。

○ピアノの部屋 (夜)
美月「風呂あがったぞ、お前どうすんだ?」
 バスタオルで髪を拭きながらピアノの椅子(未來の横)に座る美月。
未來「ドーミーソー・ソー」
 歌作りに集中している未來。
美月「聞こえてんのか?」
未來「……聞こえてる」
美月「じゃあ、入れ」
未來「うー……ん」
美月「なに?どうした?」
未來「うーん、かるくは出来たんだけど」
美月「はっ?!もう出来たのか?」
未來「ある程度ね」
美月「お前、すごいな」
未來「だってこれぐらい、誰にでも出来るんだろ」
美月「バッカ、出来るわけないだろ」
未來「そうなの?」
美月「インスタントみたいにチーンって簡単に美味しく出来るモンじゃない。」
未來「その例えあんまりよく分かんないぞ」
美月「まぁいい、ちょっと聴かせてみろ」
未來「じゃあ」
 ピアノを弾き一小節歌う未來。
美月「すごい」
 口を開け驚きを隠せない美月。
美月「すごいぞ、未來。」
未來「だ・か・ら、これぐらい誰にでも出来るんだろ?」
美月「未來、よく聞け」
 急に真剣な顔で話し出す美月。
美月「誰にでも出来ることじゃない。お前には特別な音楽の才能があるのかもしれないな。」
未來「マジで?!」
美月「指揮者だったお前の父親に似たのか、ピアニストの母親に似たのか、どちらにせよ、お前はすごい奴だ。」
未來「マジで?二回目ッ」
美月「マジだ!」
未來「じゃあ俺には音楽の才能があるってことかっ?」
美月「そうだな、認めてやるよ。」
未來「やったぜっ」
美月「よし今日はもういいだろ、風呂入れ」
未來「おうっ」
 ノートを片手に思いふける美月。
美月「アイツの集中力、半端ないな」

○同日・風呂場(夜)
 湯船に浸かり自分の歌を口ずさむ未來。
未來「フ・フ・フーン♪」
 バスタオルを持って来る美月。
美月「おっなんだ、気分良さそうだな。バス
タオルここに置いとくぞ。」
未來「いつもとかわんねーよ。サンキュ」
美月「そうか?」
未來「そうだよ!」
美月「ふーん……、今日は寒いな、もういちど風呂でも入るとするかな」
 ニヤリ笑う美月。
未來「やめろよ、絶対入ってくんな」
美月「もう遅い。たまには一緒に風呂入るのも悪くないだろう。アハハ。」
未來「狭いッつーの!」
美月「放課後の事、謝らないとな」
湯船に浸かる未來の目の前に座る美月。
美月「はぁ~気持ち良いなー」
未來「ほんとに入ってくんなよ」
美月「たまにはいいだろ。」
未來「まぁたまにはいいけど」
美月「なぁ未來、今日はすまなかったな。心にもない事を言ってしまった。」
未來「えっ……なんの話?」
美月「放課後、俺のマンションから出て行けと言ってしまった事だ……」
未來「いいよ別に、気にしてないし。」
美月「そうか……」
未來「そうです。」
美月「それならいいんだけどな……ほんとすまなかった」
 湯船から出る美月。
美月「未來と風呂入るのも、さしぶりだな~
ちょっと背中流してくれよ。」
未來「しょーがないな、いいよ。」
美月「サンキュ」
 美月の背中を洗い始める未來。
未來「なー美月?」
美月「んっ?」
未來「聞いてもいい?」
 美月は振り向く。
美月「なにをだ?」
未來「今までにさ、俺の存在が邪魔だと思ったこと、一度もないのかなって……」
美月「あるよ(即答)」
未來「えっ……」
美月「そりゃ、あるさ」
未來「やっぱり」
美月「……お前、ほんとは放課後の事、気にしてんだろ?」
未來「いや、それはない。ただ、ふと聞いてみたくなっただけ」
美月「ふーん」
未來「なら、なんで美月は一緒に居てくれんだよ?俺を施設へ戻せば……」
美月「聞きたい事って、その事か?」
未來「うん。」
美月「俺が未來と暮らす理由かぁ?うーん、家族だから。」
未來「それだけ?」
美月「それだけ。」
未來「だけど……」
美月「なんだ、今のじゃ説明不足か?」
未來「いや……」
美月「顔が似てる似てない。性格が合う合わない。血のつながりがあるない。そんな事どうでもいい。俺と未來は家族なんだ。蒼葉って苗字も確か未來と同じだしな、だからって一緒に居るワケでもないけどな、アハハ」
声を出して笑う美月。
美月「だから未來、お前は俺にたくさん迷惑かけて、いっぱい心配させたっていいんだぞ」
未來「……うん」
美月「いや、お前はかけすぎ、させすぎ、だから少しは遠慮しろ。」
未來「うるせぇー……って言いたいけど、ごめんな……さ……」
美月「急にどうした?お前らしくないな。」
未來「えっ……」
美月「いつもは強気なくせに」
未來「うるせぇー」
美月「アハハ、それでいい」
未來「あっ!」
 湯船に浸かりなおす二人。
美月「なんて言えばいいのか、愛し合ってる恋人が居たって信じ合ってる仲間が居たって、それに本当の親子だって、たまには誰も居なくなれーって思う事、正直あるんじゃないのかな」
未來「そうなのか?」
美月「うん、けど本気でそう思ってる奴は少ないと思うぞ」
未來「へー」
美月「まっ俺はここ数年、恋人も居なければ仲間と呼べる奴らも少ない、家族は未來、お前しか居ないから俺の言う事なんてあてにはならないけどな」
未來「なんだよ、それっ」
美月「アハハ、さしぶりに未來と二人で風呂に入れて俺はしあわせだ。大きくなったな……」
未來「そうか?身長あんまり伸びてないみたいだけど」
美月「まぁまぁ生えてるみたいだし、立派になったな」
未來「おいっどこ見てんだよ!!」
美月「アハハ。」

   × × ×

○屋上(昼)
 火曜もその水曜も朝から屋上で歌を作っている未來。
 金曜に心配する美月が屋上へやってくる。
美月「今日もここに居たのか?」
未來「そうだけど……もう少しで完成するんだ……ダメ?」
美月「歌を作ってるなら、許す!」
 ニヤリ笑う美月。
未來「あとタイトルがなかなか決まらなくてさ」
美月「歌は完成したのか?」
未來「キュウワリね。」
美月「お前っ……あんなに小さかったのに兄貴から教わってた事、覚えてたのか?」
未來「まさか……覚えてるわけないだろ。いろいろ試行錯誤?っていうのか、自分なりに試してみただけ。」
美月「お前、ほんっとすごいな。」
未來「へへへっ」
 自信ありげに笑う未來。
美月「なんか良いな、最近のお前の顔。」
未來「そうか?」
美月「そうだ、俺がその歌のタイトル決めてやるよ。」
未來「なに?どんなの?」
美月「Listen-リッスン-」
未來「Listen-リッスン-?」
美月「どうだ?」
未來「そのままじゃん!」
美月「だからいいんだよ!」
未來「じゃあ、採用です!」
美月「よしっ、じゃあそろそろ昼飯の時間だから、飯食ったら後の授業はちゃんと出ろよ。」
未來「へーい。」

   × × ×

○未來の教室・文化祭当日(現在)
 教壇に立つA組担任。
担任「おはようございます。」
全生徒「おはよーございます。」
 未來の席だけ空いている机。
担任「今日は待ちに待った文化祭の日ですね。放課後の練習の成果を、出し切りましょう。」
全生徒「オォー!!」
担任「私たちクラスの発表は2年B組の後ですので、その演目が終わる15分前には舞台袖に集合しておいて下さいね」
全生徒「はーい」
担任「えーそれと、今年は皆さんにも音楽を教えて下さっている蒼葉先生の意向によりサプライズ演目があるそうです。」
男子生徒B「なに?なに?なにやんだ?」
担任「楽しみにしておいて下さいね。」
男子生徒C「どーせ、くっだらねぇーことだろ!」
全生徒「アハハッ」
担任「それでは、会場に向かいましょう」

○同日・屋上(朝)
未來「やっべ緊張しすぎてお腹痛い……。」

○同日・体育館(昼)
 パチパチパチと拍手が起きている会場。
 最後の演目が終わり幕が閉じる。
 体育館の端で司会進行を勤める男子生徒と女子生徒がアナウンスする。
司会男「1年A組の皆さん、とても素晴らしい演技を披露して頂き、ありがとうございました!!」

○同日・体育館・入り口(昼)
 入り口付近にいる美月。
 屋上から降りて来た未來が話しかける。
未來「もうそろそろ出番?」
美月「おう。準備はいいか?」
未來「たぶん、大丈夫なはず」
美月「お前は3番目だからな。」
未來「他にも居るのか?」
美月「あぁ」
未來「やっぱ俺、無理かも。帰る。」
美月「なに言ってるんだ。ここまで来て逃げる気か?」
未來「誰も聴きたくねーよ、俺の歌なんか」
美月「そう思うんだったら、自分で確かめてこい。」
 サプライズが始まるアナウンスが流れる。

○同日・体育館内 アナウンスの席(昼)
司会男「最優秀賞、各賞の発表の前に1年A組の澤村愛(13)さん。2年C組の吹奏楽部の仲間で結成されたバンドCATSさん」
司会女「3年A組の蒼葉未來さんによる歌の披露があります!!」
全観客「オオォーーー!!!!」
男子生徒B「これが朝礼で言ってた、蒼葉先生のサプライズか!」
男子生徒C「面白そうじゃん!!」
全観客「イエェーーーイ!!!!!」
司会女「それではまず、澤村愛さんお願いします!」
 パチパチパチと拍手が起きる会場。
 壇上に上がる超ミニスカの愛。
 小さな手で太いマイクを持つ愛。
愛「はじめまして!私は1年A組の澤村愛っていいます。ずっと、歌手になる夢があって今日は度胸試しだと思い、皆さんの前で私の大好きな歌を歌わせていただきます!」
全観客「イェーイ!!」
男子生徒D「歌はいいからパンツもっと見せろー」
 叫ぶ男子生徒D
女子生徒A「愛―ッ!ガンバレー!!」
 叫ぶ女子生徒A
愛「それでは、聴いてください。」
 歌い終え、一礼をする愛。
愛「ありがとございました。」
司会男「澤村愛さん、ありがとうございました!皆さん大きな拍手を」
 パチパチパチと拍手が起きる会場。
司会女「つづきまして、CATSの皆さんお願いします。」
 パチパチパチと拍手が起きる会場。
CATS(ボーカル)「こんにちは!僕たちは2年C組の吹奏楽部の仲間だけで結成したバンド、CATSといいます。」
CATS(ギター)「今日は僕たちの演奏を聴いてもし気に入ってくれたら、ぜひ、吹奏楽部へ遊びに来てくださーい!」
CATS(ドラム)「待ってまーっす!」
CATS(ベース)「待ってまーっす!」
CATS(ボーカル)「それでは聴いてください」
 歌うCATS。

○同日・バックステージ (昼)
 CATSの歌うバックステージで話しをしている未來と美月。
美月「なに、緊張してるんだ」
未來「だってさ」
美月「大丈夫だ。」
未來「けどさ」
美月「自分を信じろ。そして俺を信じろ。」
 未來の肩を軽く2回叩く美月。
美月「さぁ準備しろ」
未來「……わかった。」
 舞台袖にスタンバイする未來。
 CATSが歌い終わる。
CATS(ギター)「アディオーッス!」
 舞台から手を振って降りるCATS。
司会男「CATSの皆さん、ありがとうございました!緊張のせいかちょっと音がハズれてしまってましたね。」
 アッハハハハと笑いが起きる会場。
司会女「そして、最後は3年A組の蒼葉未來
さんです!」
 ぎこちなく壇上のド真ん中にセッティングされたスタンドマイクに向かう未來。
 マイクを掴む。
未來「やっべぇー緊張で声がでない」
 心の声が無意識のうちに声に出てしまう未來。
観客A「お前の声、一番後ろの席まで聞えてるぞ!!」
 小さな声はマイクを通し大勢の観客(生徒や保護者)へ聞こえ、
全観客「あはは」
観客B「ガンバレ~!!」
 と、笑いや声援が飛び交う会場。
男子生徒A「あいつなんか出来んのか?」
司会男「ここで蒼葉さん本人も知らないサプライズがあります。」
未來「えっ?」
 司会者の方を見る未來。
司会男「今から披露してくれる歌は、なんとご自身が作詞作曲された歌だそうです」
男子生徒A「へー」
司会男「ピアノを弾きながら披露して頂く予定でしたが、歌うことに集中してほしいとのことで、ピアノの演奏は僕たちにも音楽を教えて下さっている蒼葉先生が弾いて下さるそうです!」
全観客「オォー」
未來「そんなこと、聞いてねーぞ」
 未來は壇上の端に居た美月を見る。
 目が合う美月と未來。
未來「マジかよ……」
 観客に軽く頭を何度も下げながら未來の方に向かって行く美月。
美月「歌詞覚えてるか?」
未來「いっ、一応。」
美月「ノート貸してくれ。」
 楽譜と歌詞が書かれてあるノートを美月に渡す未來。
未來「うん」
美月「ピアノは俺に任せろ。」
 ニヤリ笑う美月。
美月「はやく、挨拶しろっ」
司会女「蒼葉さん、準備はいいですか?」
未來「えっあっはい。」
司会女「それでは、お願いします」
 前を向く未來。
未來「こんにちは、蒼葉未來って言います。はじめましての人も、そうじゃない人も聴いてください。」

男子生徒B「それだけ?あいさつ短っ!」
男子生徒C「メッチャ緊張してんじゃん」
 パチパチパチと拍手が起きる会場。

 目を瞑り未來がいう。

未來「タイトルは…Listen-リッスン-」ーーーー

聞いて… あっという間に流れてゆく
時間(トキ)のなかで 僕ら いったい
なにを得ようとするのだろう
聞いて… あといくつ夜空に咲く 星を数えていれば
世界で1番 輝く 星になれるのだろう
聴いて… あなただけの音に乗せた
僕の言葉たちを

くずれ落ちた夜もあった 泣き叫んだ夜もあった
ちいさな頃 感じてた
淋しさや悲しさは いつか 消えていくものだと
想ってたのに
まだ 無理みたい

聞いて… あっという間に流れてゆく
時間(トキ)のなかで 僕ら いったい
なにを知ろうとするのだろう
聞いて… この街の日陰に咲く 花を数えていれば
世界で1番 綺麗な 花になれるのだろう
聴いて… あなただけの音に乗せた
僕の気持ちたちを

くだけ散った夢もあった 昨日無くした愛もあった
ちいさな頃 感じてた
ドキドキやワクワクは いつか 消えていくものだと
想ってたのに
まだ 駄目みたい

もう 今のままじゃ
明日はない。ってわかってる

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 未來の歌が響く会場。
 隣の方と話すことをやめた観客。
 トイレに行こうとしてやめた観客。
 ポケットからハンカチを出した観客。
男子生徒A「未來って、すげぇ……」
男子生徒B「俺、泣きそう…」
 目を開ける未來。
 泣いてる観客に気づく。
観客X「良い歌だな。」
観客Z「良い歌ですね。」
 大きな拍手と歓声が飛び交う会場。
未來「終わりまーす。ありがとうございました。」
 歌い終わり、一礼する未來。
男子生徒A「グッときたんだけど」
男子生徒B「俺も。」
男子生徒C「俺も。俺も。」
 隣同士で歌の感想を言い合う生徒・観客。
 未來はピアノの方を見る。
 手を目に当て壇上から降りる美月。
司会男「それではこれで、サプライズ演目を終わりたいとおもいます。」
 パチパチパチと拍手が起きる会場。
司会男「蒼葉さんの歌、とっても良かったですね。まるで僕の隠してる感情を歌ってくれてるみたいでした……」
司会女「そうですね。私もです。」
 ざわざわする会場。
司会男「ここからは、各章の発表を……」
 壇上から降りる未來。
 美月を探すため会場の中を歩きまわる。
未來「あの~美月……いや、蒼葉先生知らない?」
男子生徒E「知らないよ。」
未來「そっか」
 左右に首を振り美月を探す未來。
未來「どこいったんだよ」
男子生徒E「なーさっきの歌ってほんとに自分で作ったのか?」
未來「そーだけど、なんで?」
男子生徒E「なんていうか……」
未來「なんだよ」
男子生徒E「俺もあの歌のように思うことあるからさ」
未來「えっお前もあの歌のように思うことあんの?」
男子生徒E「あるよ……ありありだよ」
未來「そうなんだ」
愛「私も感動しちゃいました!!あっ急にすみません」
 未來を見つけ、突然、話しかけてくる愛。
未來「えっ……あぁ」
愛「蒼葉先輩と1度お話してみたくって。」
 ニコリ笑う愛。
未來「あっ……はぁー」
男子生徒E「やっべ、俺まだ片付け残ってるんだった。蒼葉先生見つけたらお前がさがしてたこと伝えといてやるよ。」
未來「ほんとに?ありがと。」
 バックステージに走る男子生徒E。
愛「ところで、あの歌ってご自分で作られたんですよね?」
未來「うん。」
愛「すっごーい」
未來「ありがと。」
愛「私もたまに思うんですよね、あの歌の歌詞のように……」
未來「ふーん、女の子でも思うんだ。」
 不思議そうな顔をする未來。
愛「女の子とか男の子とか子供とか大人とか関係ないですよ」
 愛の話を真剣に聞く未來。
愛「蒼葉先輩が歌ってる最中、会場に居る皆が泣いてるように私には見えました。」
未來「ほんとに?」
愛「ほんとにですよ、私ももう……」
未來「そうなんだ」
愛「他にもあるんですか?ご自分で作られた歌って?」
未來「あの歌しかないよ」
愛「そうなんですかぁ残念だなー。じゃあもし新しい歌が出来たら一番に聴かせてもらえませヌか?」
未來「あはは、噛んだでしょ?武士かっ」
愛「(エヘッ)噛んじゃった」
 舌を出す愛。
未來「いいよ。」
愛「やった、やった。じゃあ約束っ!」
未來「わかった。約束する。」
女子生徒B「(声のみ)アイー!なにしてんの?もう教室戻るよー」
 愛を呼ぶ女子生徒B。
愛「はーい、ちょっと待ってー。未來先輩それでは失礼します。」
未來「それじゃあ。」
 愛は友達の方へ向かう。
 未來は屋上へ向かう。
未來「美月の奴、どこ行ったんだよ。話したいことあったのに」
 屋上の扉を開ける未來。

○同日・屋上(夕方)
 未來は屋上に寝っ転がる美月を見つける。
未來「なにやってんだよ。」
美月「うん?」
 未來の方に目をやる美月。
未來「ここは俺の場所だぞ」
美月「おっ未來か?」
 あくびをしながら起き上がる美月。
未來「おう」
美月「今日も良い天気だな」
未來「うん」
美月「風も気持ちいいし、サイコーだな」
未來「うん」
 風で髪がなびく美月。
未來「美月っ」
美月「んっ?」
未來「さっきはありがと、ピアノ弾いてくれて」
美月「そんな事、お安い御用だ」
未來「あとさ……」
美月「なんだ」
未來「歌、歌ってる時さ、歌いはじめは怖くて会場が見えなくて」
美月「そうだったのか?」
未來「そう。だけど最後の方で目を開けて観客のほうを見たんだ。」
美月「どうだった?」
未來「俺だけじゃなかった、ひとりじゃなかったよ」
 ニコリ嬉そうに未來を見る美月。
未來「俺の歌を聴いてさ、泣いてる人たちがいた」
美月「そうか」
未來「自分でもびっくりした。」
美月「そうか、そうか……俺の言った通りだっただろ」
未來「うん。」
 うなずく未來。
美月「お前がひとりを感じてるって事はさ、ずっと、ずーっと俺はお前の傍にいても透明人間だったって事だろ」
 フェンス越しにグランドを見下ろす美月。
未來「そんなこと……」
美月「正直、ずっと悲しかったぞ」
未來「ごめん……」
美月「どうして、謝る」
未來「だって……」
 未來の方を見る美月。
美月「謝らなければならないのは俺の方だ。やっぱり、俺は未來本人じゃないからすべてをわかってあげられない。」
未來「そんなこと……」
美月「お前の事、誰かになにを言われても信じ抜きたい。味方でいてやりたい。そう決めたはずなのに『またアイツは……』って心のどこかでお前を疑っていた。ずっと、ひとりを感じさせてしまっていたのは、俺の弱さのせいだ。すまない。」
未來「もういいよ。」
 右手で目を伏せ、頭を下げる美月。
未來「俺だってほんとは、参観日も運動会もぜんぶ美月が来てくれたから寂しくなんかなかったし悲しくもなかった。それなのに素直にありがとって言えない自分がいた。素直に喜べよな、メチャクチャ失礼な奴だよ、俺は。」
美月「それは違う。」
未來「えっ?」
美月「そう思う事は仕方ない事だ。俺はお前の本当の父親でもなければ母親でもない……ただの叔父さんだからな。どう足掻いたところで二人には敵わない。だけどな、未來」
 突然、グランドに叫び出す美月。
美月「俺は未來が大好きだー」
未來「なに言ってんだよ」
美月「この気持ちだけは、これからも変わらない。」
未來「バッカじゃねーの」
美月「その事だけは忘れないでいてくれ。」
未來「……わかった、……ありがと。」
美月「おうっ」
 後ろのポケットから筒状に丸めて入れたノートを手に取る未來。
未來「俺さ、むかしからアオ色が好きだったんだ。」
美月「知ってるよ。」
未來「この前、たまたま新聞読んでたら」
美月「お前、新聞なんか読まないだろ」
未來「読まないけど、たまたまって言ったろ。その時、漢字の面白さっていう記事があってさ。そこに書いてあったんだけど」
美月「なにをだ?」
 ノートを広げる未來。
未來「アオっていう漢字は3つくらいあるんだって、この青と、自分の苗字の蒼、それとこの藍の3つ……あっ……この碧もだっけ……」
 ノートに書かれたアオという漢字をひとつひとつ美月に指差し見せる未來。
美月「それがどうした?」
未來「ひとつ、ひとつ、の意味は知らねーけどさ、この蒼っていう字が一番好きなんだ」
 ノートに書かれた蒼を指差す未來。
美月「どうしてだ?」
未來「この蒼って字、俺の勝手なイメージなんだけど……」
美月「どんなイメージだ?」
未來「美月のイメージって感じ。」
美月「はっ?」
未來「空のアオさでもなければ、海のアオさとも違う。自然から感じるやわらかな優しさっていうより、人間から感じる深くて物静かな優しさって感じ。この蒼って字、美月にぴったりじゃない?」
美月「お前の勝手なイメージだろ。」
未來「そうだけど、それに……」
美月「それに?」
未來「それに、そんな美月と同じ蒼って字、俺の名前にも付いてた。」
 ニヤリ笑う未來。
美月「そうだったなぁ。」
 ニヤリ笑う美月。
未來「そして今日、より一層この蒼って字を好きになりました。」
美月「そうか」
 急に未來の方へ歩み寄り未來の腕を掴み、なにも言わず引き寄せ両手で抱きしめる美月。
未來「イッテーよ、気持ちワリーな」
 身体を引き離す未來。
美月「ありがとな。」
未來「そうだ、俺は決めたぜ。」
美月「なにをだ?」
未來「美月が見つけてくれた、音楽の才能を信じて、俺、プロの歌手になる。」
美月「そうか」
未來「音楽を通して、自分と似てる奴らに言ってやるんだ。お前だけじゃないぞって。俺が大好きな歌に自分を重ね、慰められていたように、俺も誰かの慰めになりたい。誰かの逃げ場所になりたい。なんならあんな奴になっちゃダメだと言われる反面教師でもかまわない。」
美月「あはは」
 声を出して笑う美月。
未來「なに笑ってんだよ」
美月「お前ならきっと、いや絶対なれるよ。ど・ち・ら・に・で・も・な」
未來「だろう。」
 ニヤリ笑う未來。
美月「さぁ帰るか」
未來「あっ」
美月「また、なんだ?」
未來「もしかして、美月も俺の歌を聴いて泣いたりした?」
美月「(ゲッ)泣くわけないだろ。」
未來「そっか」
美月「俺はそう簡単に、泣かないんだ」
未來「へぇーこの嘘つきヤローめっ」

美月「そうかもな」
未來「えっ」

美月「しかし、リッスン良い歌だったな」
未來「天才ですから!!」
美月「あはは、そうだったな。」
未來「おいっそこ否定しろよっ!恥ずかしいだろ。」
美月「また、歌を書いた時には、聴かせてくれよ。」
未來「気が向いたらね。」
美月「楽しみに待ってるぞ!」
未來「おうっ」

美月「今日の晩飯、親子丼でいいか?」
未來「またー?」
美月「今回は手作です。」
未來「あはは、なんでもいいよ。」
  「さぁ教室 帰ろ。」
美月「おうっ」

 屋上から教室へ戻る美月と未來。


                   完

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