呪われた報復 アクション

姉を死なせた組長への復讐を画策する兄弟の話。
ライトフック賭場 88 0 0 02/03
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第一稿

◯居酒屋の個室(*画面は真っ暗な状態)

森の石松の浪曲が流れている。

ヘビ(36)とタツ(38)がさし呑みしながらくだを巻いている。

ヘビ「だいたい ...続きを読む
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◯居酒屋の個室(*画面は真っ暗な状態)

森の石松の浪曲が流れている。

ヘビ(36)とタツ(38)がさし呑みしながらくだを巻いている。

ヘビ「だいたいナルシストって言葉が嫌いなんだよ。全員ナルシストだろ?そらレベルはピンキリだけどよ。みんな自分が可愛いんだからよ。ナルシストなんて当たり前の事じゃねーか。なあ?」
タツ「そんな事ねーだろ」
ヘビ「あ?何でだよ?」
タツ「じゃあ無償の愛ってのは何なんだよ?」
ヘビ「あれも結局、自分のためだろうが」
タツ「あ?何でだよ?自分のガキが川で溺れたり車に轢かれそうなった時に命を賭してガキ守る親は、あれどうなんだよ?」
ヘビ「いいか?あんなもん自分の分身がてめえより先に死ぬことにてめえが耐えられねえからてめえのタマやることで可愛いてめえを守ってんだよ」
タツ「あ?何でだよ?」
ヘビ「いや、だからな、ガキ守る方がてめえが死ぬより気が楽なんだよ。助けねえで後悔する方がつれーだろ?てめえのガキは、てめえより長く生きるてめえなんだよ。ガキ守ってんじゃねんだよ。てめえを守ってんの!」
タツ「お前よお、突き詰めんなよ」
ヘビ「あ?何でだよ?」
タツ「突き詰める手前で泳げよバカヤロー。極論なんて野暮でしかねーんだよ」
ヘビ「まあな…でも、それはそれでつまらねえな。例えばSとMで分ける奴いるだろ?」
タツ「もういいよお前。それは今度相手してやるよ」
ヘビ「そうだな」

ヘビとタツ、小声で話し始める。

タツ「そんでみつかったんだろ?」
ヘビ「ああ、みつかったよ。3人なんだけどよ」

大学ノートをテーブルから取り上げる。

真っ暗な画面が明るくなり、テーブルから見たヘビの顔が現れる。(ここから居酒屋の個室の映像カットに切り替わる)

ヘビ、大学ノートに貼り付けた殺し屋の写真と経歴をタツに見せる。

タツ、ノートに写された3人の殺し屋をサッと見て

タツ「おう、良いツラ構えじゃねえか」
ヘビ「だろ?」

タツ、ロシア人の殺し屋ポポフの写真を指さし

タツ「こいつが一番ヤバそうだな」
ヘビ「元ロシアの特殊部隊らしいぞ」
タツ「じゃあ、こいつにするか」
ヘビ「うーん」
タツ「どうした?」
ヘビ「それがここ数日連絡取れなくて居場所分かんねんだわ」
タツ「都合付かねえのか?」
ヘビ「まあ取り敢えず、また連絡して確認してみるわ」
   
タツ、オランダ人の殺し屋の写真を指差し

タツ「じゃあこいつか」
ヘビ「あ、こいつは、つい数日前に」

タツ、親指で首を切るポーズ。

タツ「これか?」
ヘビ「ああ。地元でバウンサーやってた時にやられたらしいわ」

タツ、3人目の細身のイギリス人を指し

タツ「これ、大丈夫か?」
ヘビ「何か気に食わねえのか?」
タツ「面構えがなあ。英会話の講師みてーだな」
ヘビ「腕は確かだ。素手ゴロも強えらしいぞ」
タツ「へえ。まあ、こんなかじゃ一番目立たねえから、かえって良いかもな」
ヘビ「だろ?この2人は、どう見ても怪しいからな」
タツ「じゃあこいつに依頼しとけ」
ヘビ「了解」

(再びヘビをテーブルの下から見上げるようなカットに戻る)

ヘビ、ノートを元の場所に戻し閉じる。
(*再び画面が真っ暗になる)

タイトル「呪われた報復」

(店内に流れている森の石松のボリュームが上がっていく)


◯新宿駅南口(日変わって夕方)

柴谷(60)、「貧民の党」とマジックで書かれた汚いボロボロの旗を立て、使い古された拡声器(堀崎町地区センターと書かれたテープが貼ってある)で小声で演説をしている。

柴谷「なぜ、これだけの格差社会が生まれるのか?それはざっくり言いますと貨幣制度が原因であります。収入が0でも生きていける社会を私は目指しております。そのためには国民の皆さん、いや世界中の皆さんが自給自足で生活出来る社会、60億人総原始時代への回帰を目指しております」

柴谷の隣へダンボールを持った男、加藤(22)が来る。

加藤、ダンボールを置き、その横へリュックを置く。ダンボールの中から広告ティッシュを取り出し、通行人に配る。

加藤「新しいマンションのご案内でーす」

柴谷、加藤を横目でチラチラと見ながら演説を続ける。

柴谷「かつて原始人は、穴を掘り、斧を持ち、マンモスをその穴に追い込んで見事に捕らえました。一族が一丸となってマンモスを追い込む。楽しいじゃありませんか。石の斧一つで人は変わる。火が起こせれば楽しく暮らせる。原始回帰、原始回帰の社会を目指そうじゃありませんか」

柴谷、加藤がティッシュを配っている隙に加藤のリュックを盗み走り去る。

加藤、気づき柴谷を追いかける。

加藤「おい、待てジジイ!」

◯新宿中央公園(夕方)

ヘビとタツが喫煙しながら辺りを見回す。2人とも無地ポロシャツにチノパンのカジュアルな服装。

公園の脇にワンボックスカーを路駐している。

タツ「まだか?」

ヘビ、時計を見ながら

ヘビ「もうそろそろだな」

その横を柴谷と加藤が走り去る。

タツとヘビ、走り去る2人を険しい顔で見る。

2人の背後から殺し屋のマイケル(32)が来て声をかける。

マイケル「こんにちは〜」

タツとヘビ振り向く。

ヘビ「おう、マイケルさん。どーもヘビです」

マイケル、頭を下げ

マイケル「よろしくお願いします」

ヘビ、タツを指差し

ヘビ「アニキのタツだ」
マイケル「タツさん、よろしくお願いします」

マイケル、頭を下げる。

タツ「よろしく」

タツ、マイケルに握手をする。

3人の横をマッチョな外人が横切る。

タツ「マイケル君は腕っぷしはかなりのもんなの?」
マイケル「うん。銃の扱いより得意かもしれない」
タツ「マジか?そうは見えねえなあ」
ヘビ「おい」

タツ、今横切った外人を指差し

タツ「じゃあさ、あそこのマッチョな外人にケンカ売ってTシャツ取って来てよ。なんかカッコイイTシャツ着てたから」
ヘビ「おい、そんなくだらねえことやってる場合じゃ…」
マイケル「良いですよ。ギャラくれますか?」
タツ「おう。勝ったら1本やるよ」

マイケル、ニヤリとしてマッチョな外人の所へゆっくりと歩く。

ヘビ「アニキ何考えてんだよ。こんなとこで警察沙汰になったら実行前にオジャンじゃねーかよ」
タツ「ただのひ弱な外人だったらそれこそ実行の邪魔になっからよ」
ヘビ「チャカの扱いが上手けりゃ良いだろうが」
タツ「チャカよりケンカの方が得意つってたぞ」
ヘビ「ったく」
タツ「おっ、始まった」

タツとヘビ、マイケルを遠くから見る。

マイケル、マッチョな外人に声をかける。マッチョな外人が少し声を荒げマイケルをつき飛ばそうとした瞬間、マイケルが腕を取り、顔面を蹴りコメカミに掌底を打ちKOする。

タツ、口をあんぐりさせ

タツ「‥‥マジか」

ヘビ、嬉しそうに

ヘビ「こりゃ1本やんなきゃな」

マイケル、マッチョな外人から剥ぎ取ったTシャツを着ながらゆっくりと二人の所へ戻って来る。

◯同・公園のトイレ(夕方)

加藤が柴谷とホームレスの集団に袋にされている。

◯ワンボックスカーの車内(夜)

ヘビが運転し、後部座席でタツとマイケルが話している。

マイケル、外人から奪ったケネディとマーヴィン・ゲイと坂本龍馬とジョンレノンの顔がプリントがされたTシャツを着ている。

タツ、マイケルにターゲットの写真を見せる。

タツ「これがターゲットのジジイだ」
マイケル「OK」
タツ「最近の写真だが、他の写真もあるからよく顔を覚えといてくれ」
マイケル「うん、OK」
ヘビ「マイケルは記憶力も凄いからな」
タツ「そうか。そりゃ良かった。外人は日本人の顔全部一緒に見えるらしいから、それ聞いて安心したわ」
マイケル「まあね。でもどこかで見た事ある顔だね」
タツ「同じに見えてるじゃねーかおい。大丈夫かよ?」
マイケル「OK、OK」
タツ「OKは一回で良いんだよ」
マイケル「このおじさんはボス?」
タツ「もちろん。岩ヶ丘組の組長だ。こいつが俺らの姉貴を殺したんだ」
マイケル「なぜ?」
タツ「元々、俺らはここの組に居たんだよ。でも、ある時、組の幹部が俺らの姉貴が結構なべっぴんだって知って悪いようにはしねえからっつって姉貴を岩が丘に紹介するように圧かけて来たんだよ。その頃の俺らじゃとても断れなくてな。そんで姉貴は、岩が丘の愛人になった。それだけならまだいい。問題は、組のシノギが悪くなって来たら、岩が丘は姉貴をVIPのバイタにして稼ぎをテメエのモンにしたんだよ」

マイケル、無表情。

タツ「毎晩、財界の大物やフィクサーの相手させられてよお、それでもこいつは姉貴に稼ぎの1%しか渡さなかったんだよ。そのうち姉貴は精神的に参っちまった。そんで別れ話を切り出したら岩が丘に殴られ蹴られシャブを打たれたんだよ。やっと別れた時ゃもう手遅れでよ。自宅で泡吹いてそのまま逝っちまった」
ヘビ「…もうすぐ姉貴の三回忌なんだよ」

マイケル、無表情。

タツ「ピストルに弾は全て込めた。そろそろ弔いの時が来たって訳よ」
マイケル「え?何?とむらい?」
タツ「ヘビ。英語でなんて言うんだ?」
ヘビ「うーん…リベンジか?」
マイケル「ああ、復讐ね」
タツ「そう。‥‥復讐だよ」

◯道路(夜)

黒い高級セダンが走っている。

◯同・車内

岩ヶ丘組組長、岩ヶ丘 清(62)と、愛人の青山里奈(32)が後部座席に座っている。

助手席に幹部の奈良島 明(42)、構成員の中山 久(36)が運転している。

岩ヶ丘、着物の襟から扇子を出し仰ぐ。

岩ヶ丘「暑いなあ」

奈良島、後部座席へ振り向き

奈良島「組長、エアコン下げまひょか?」
岩ヶ丘「いや、丁度ええわ。それより喉乾いたなあ」

奈良島、無言でうなづく。

中山「組長、まだ口付けてないペットボトルの水おますねんけど」

奈良島、中山の腕を叩く。

中山、慌てた表情で

中山「え?」

奈良島、右目を瞬かせる。

青山、哺乳瓶に入ったミルクを岩ヶ丘に渡す。

青山「はい、組長さん!」
岩ヶ丘「里奈ちゃん、ありがとな」

岩ヶ丘、ミルクをゴクゴク飲む。

岩ヶ丘「ほんまはそのまま里奈ちゃんに吸い付きたいんやけどな。エチケットがあるさかいの」
青山「もう組長ったら」
岩ヶ丘「着いたらヒーヒー言わせたるさかいに」
青山「イヤだもう」

2人イチャつく。

中山、ミラーでチラと見ながら無言でうなづく。隣を見ると奈良島がスマホを耳に当て何やら話を聴いている。

スマホから女性の喘ぎ声が聴こえる。

スマホから聴こえる声「はあはあ、明、あん、いやん、はああん、あん、ああん、はああん、あっ!あっ!あっ!」
奈良島「やかましわ」

奈良島、電話を切って舌打ちする。

中山、おそるおそる

中山「彼女さんでっか?」
奈良島「いやQ2や」
中山「え?Q2ってダイヤルQ2でっか?」
奈良島「おう」
中山「まだあったんでっか?」
奈良島「そやで。こないだこさえた女が小銭稼ぎでやっとんねや」
中山「今の声でっか?」
奈良島「そや。次会う時は、もうちょい声抑えて喘ぎのレパートリー増やせゆうたろ」

中山、うなづく。

◯ファミレス(夜)

ヘビ、タツ、マイケル、一番奥のテーブル席に座っている。

周りには若いカップルや大学生のサークルなどが多く居て騒がしい。

3人のテーブルには、スパゲティやフライドポテト、ワイン、アイスコーヒーなどが並んでいる。

3人が各々のスマホの画像で岩ヶ丘組事務所の部屋の図面を見ている。

ヘビ「たまに毘沙玄町のクラブの前に車で乗り付けて、店に入る瞬間くらいしか岩ヶ丘が生身を晒す事は無えんだよ」
タツ「そん時もガッチガチに若い衆が囲んでるしな。てめえは大統領かっつんだよ」
マイケル「岩ヶ丘の部屋は?」
ヘビ「3階上がって左側にある洋間。2つ目の所だ」
マイケル「10帖のとこ?」
ヘビ「イエス」
マイケル「OK」
ヘビ「誕生日会の4日前に部屋の清掃を依頼してるらしい」
マイケル「へえ。そこはミステイクだね」
タツ「一応、警戒して今まで依頼してた業者と違うとこに頼んでんだよ」
マイケル「なるほど。僕はそのハウスクリーニングに紛れれば良いの?」
ヘビ「いや、それは目立つからダメだ」
マイケル「うん、分かってる」
ヘビ「岩ヶ丘の居場所が分かった時点で舎弟の目をうちらの方に向けさせっから、その隙に岩ヶ丘をやってくれりゃ良い」
マイケル「うーん」
タツ「どうした?」
マイケル「バースデイパーティを狙った方が良い気がするね」
ヘビ「ん?」
マイケル「この地下のリビングでパーティやるんでしょ?」
ヘビ「まあ、そうだろうな」
マイケル「みんな酔っぱらってダウナーになったタイミングで、そのまま」
タツ「全員いっちまうってか?」

マイケル、うなづく。

タツ「出来るのか?」
マイケル「イージーね」
タツ「エグいな」
ヘビ「いや、ちょっと待ってくれ」
マイケル「何?」
ヘビ「出来れば岩ヶ丘だけをやってくれ。もちろん向かって来るやつは潰して良いが」
マイケル「OK」
タツ「じゃあマイケルの言う通り誕生日パーティに決行するか?」
ヘビ「そうだな。とりあえず今のところは、それで行こう」
タツ「そういえば、あのロシアのヤツはどうなった?」
ヘビ「ああ、ポポフか。まだ連絡ねえわ。失敗して消えたかもな」
マイケル「ポポフ?」
ヘビ「知ってんのか?」

マイケル、小声で

マイケル「うん。レッドアイを全滅させた人だよね」
タツ「へえ。有名だったんだな」
ヘビ「な?俺のリストアップすげえだろ?」
タツ「おう。てっきりパブの用心棒に声かけただけかと思ってたわ」
ヘビ「なめんなよ」
タツ「じゃあとりあえず、トラとマサが来たらまた作戦会議だな」

◯毘沙天町の高級クラブ「club 誉」外観(深夜)

◯同・クラブ内

岩ヶ丘が両手にホステスをはべらせ、幹部や若い衆と飲んでいる。

岩ヶ丘、タバコを咥える。

右側のホステス、麗子(25)が素早く火をつける。

左側のホステス、さやか(25)が膨れつらをし

さやか「もう麗子早いー。私が着けようとしてたのにー」
麗子「あんたがボーッとしてるだけでしょ」

岩ヶ丘、麗子に

岩ヶ丘「麗子ちゃん。今晩どうや?」
麗子「本当ですか!?組長さん!めっちゃ嬉しい!」
さやか「ずるーい!組長さん私も相手してくださーい!」
岩ヶ丘「ワシも年やからのう。2人がけは厳しいわ。次来た時相手したるわ」
さやか「やったー!」

岩ヶ丘、ブランデーを一口飲みタバコを灰皿で消した後、立ち上がり

岩ヶ丘「ちょっとションベンしてくるわ」

ホステス、席を外して道を開ける。

岩ヶ丘の後ろを若い衆が付いて行く。

岩ヶ丘「お前ら来んでええわ」

岩ヶ丘、奈良島を手招きし

岩ヶ丘「奈良島。ちょっと」
奈良島「はい」

◯クラブのトイレ

岩ヶ丘と奈良島、小便をしながら

岩ヶ丘「今度のパーティーの準備はどうや?」
奈良島「ええ。ちゃんと手配してますわ」
岩ヶ丘「何か嫌な予感すんねん」
奈良島「え?嫌な予感でっか?」
岩ヶ丘「パーティで若い衆が気い抜いてるとこを誰かが襲撃に来るんちゃうか思てな」
奈良島「まあ‥‥確かにありえない事も無いですね。当日、若い衆入り口に立たせときますわ」
岩ヶ丘「頼んだで」
奈良島「はい」

◯公道(日変わって昼)

「タラヤマ清掃」と書かれたハッチバックの車が走行している。

◯車内

運転している杉山(45)のスマホから「山田」の着信が来て出る。

杉山「もしもし。タラヤマ清掃の杉山です」
岩ヶ丘組の構成員「もしもし。岩ヶ丘組のもんですが」
杉山「はい。お世話になっております」
構成員「申し訳ないんすけど、今日の清掃キャンセルでお願いしますわ」
杉山「え?キャンセルですか?」
構成員「キャンセル料は払いますんで」
杉山「そうですか。了解いたしました」
構成員「じゃあ、そういう事で」
杉山「はい。また宜しくお願い致します。失礼します」

杉山、ヘビに電話する。

◯商店街の路地裏(昼)

ヘビ、無地のポロシャツに無地のキャップに短パン姿で歩いている。杉山の着信に出る。

ヘビ「もしもし。どうした?」
杉山「ヘビさんすか?」
ヘビ「おう」
杉山「岩ヶ丘に今日の清掃ドタキャンされましたわ」
ヘビ「何で?」
杉山「いや分かりません」
ヘビ「理由は言わなかったんか?」
杉山「そうですね。こっちも細かくは聞けないですし」
ヘビ「そうだよな。分かった、OK。また連絡するわ」
杉山「はい、お願いします」

ヘビ、電話を切る。不安げな表情。

子分のマサに電話する。

◯コンビニ・外観(昼)

◯同・店内

男性店員、鈴本(48)がレジの会計をしている。

後輩の男性店員、林田(21)がホットスナックを補填している。

鈴本「はい、お釣り30円とレシートになります。どーもありがとうございました」

客が買い物袋を持って店を出る。

鈴本「あ、林田君、トイレの方綺麗かどうか見て来てくれる?」
林田「はい」

◯同・男女兼用トイレ

ドアの鍵の部分が青色になっている。

林田、ドアを開ける。

マサ(32)が丸めた紙幣でコカインを鼻から吸っている。

林田、ビクッとしながら

林田「あ!す、すいません!」

林田、急いでドアを閉める。

マサ、ドア越しに

マサ「にいちゃん、ちょっと」
林田「は、はい。な、何でしょうか?」
マサ「ドア開けろよ」
林田「え?い、いや」
マサ「良いから」
林田「は、はい!」

林田、ゆっくりとドアを開ける。

マサ、鼻からコカインを吸いながら

マサ「タバコじゃねーから良いだろ?」

林田、トイレの壁に貼ってある禁煙ステッカーを見て

林田「そ、そうですね」
 
マサ、怖い目でニヤリと微笑む。

T「マサ」

マサ、スーツのポケットから着信音が鳴る。

マサ、スマホを取り出し画面を見る。

マサ「おっ、ヘビ兄からだ」

マサ、トイレから出て早足で店を出る。

林田、その後ろ姿を動揺しながら見ている。

◯繁華街(昼)

マサ、スマホでヘビと話している。

マサ「ヘビ兄、大丈夫っすよ。警戒してるっつったってやつら全員チキンすから」
ヘビ「お前の腕と度胸は信頼してっけどな、油断はすんなよ」
マサ「分かってますって」
ヘビ「じゃあまた連絡すっから」
マサ「はい、よろしくっす」


◯山道(夜)

山道の脇に黒いワゴン車が止まっている。

◯車内(夜)

ヘビ、タツ、マイケルが後部座席に座っている。

タツ、小型のジュラルミンケースを開ける。トカレフ3丁、サイレンサー銃が1丁入っている。

タツ、マイケルにサイレンサー銃を渡し

タツ「よろしく」

マイケル、サイレンサー銃を触りながら

マイケル「試しても良い?」
タツ「え?ああ、まあ。あんまり弾使わねーでくれよ」
マイケル「OK」

マイケル、車を出て、森に向けて銃を2発放つ。しばらくして車内に戻る。

ヘビのスマホにマサから着信が来る。

ヘビ、電話に出る。

ヘビ「もしもし。おう、マサ。トラは、準備出来てんのか?おう、おう分かった。今行くわ。30分くらいだな」

ヘビ、電話を切る。

ヘビ「タツ兄、トラが来れるってよ」
タツ「よし。じゃあ最後の打ち合わせするか」

ヘビ、運転席に移動し、エンジンを付けて車を走らせる。

マイケル「この車、GPSついてる?」
ヘビ「え?(笑う)当たり前じゃねーか」
タツ「カーナビ知らねえのか?」
マイケル「いや、カーナビ以外のGPS」
タツ「はあ?」
ヘビ「ん?どういうことだ?」

◯山道(日変わって朝)

森の茂みに作業着を着た男2人が眉間を撃たれ死んでいる。

◯岩が丘組事務所・外観(日変わって昼)
  
構成員たちが辺りを伺いながら事務所へ出入りしている。

T「暗殺決行の日」

〇同・事務所地下一階
  
長いテーブルに特上寿司や日本酒、バースデーケーキなどが置かれている。

袴を着た組長が上座に座り、12人程の幹部が座っている。

岩が丘「まあ今日は1つ、めでたい日やさかい、肩の力抜いて楽しんでくれや」
全員「へい!」
奈良島「ちゅう事は親分、今日は無礼講ちゅう事でよろしいでっか?」
岩ヶ丘「(笑顔で)それは、あかんでなんぼなんでも。限度っちゅうもんがあるさかい」
奈良島「そりゃそうですわな!(笑う)‥‥お前ら笑えや(笑う)」

幹部、構成員、無理やり笑う。

◯道路(昼)

業務用のハッチバック車が走っている。

◯車内

ヘビが運転している。助手席にマイケル、後部座席にタツとマサが座っている。

マイケル、タバコを吸いながら胸を強く叩く。

ヘビ、横目でチラチラ見ながら

ヘビ「何してんの?」
マイケル「ファイティングスピリッツね。2つの事を同時にやると頭がニュートラルになる」
ヘビ「体に悪くねえか?」
マイケル「メンタルには良いの」

マサ、スーツのポケットから「偉人の名言」というタイトルの文庫を出す。

途中のページに錠剤が入ったパッケージが挟まっている。

タツがそれをチラチラ見る。

マサ、タツに気づき

マサ「いや、これは只の安定剤っすよ」
タツ「飲むなよ。寝ちまうから」
マサ「大丈夫っす。こんなの効かないんで」
ヘビ「ところでトラは行けそうか?」
マサ「はい。余裕っす」
ヘビ「ちゃんと確認しとけよ」
マサ「はい!」

◯事務所・外観(夕方)

入り口に構成員が2人立っている。

◯事務所地下1階(夕方)

組長がカラオケで演歌を歌っている。

ホステス4人が組長に抱きついたり、キスをしたり、パーティーグッズの帽子を被せたりして盛り上げる。構成員達も手拍子や掛け声で盛り上げる。

◯事務所・外観(夕方)

構成員2人が怠そうに立っている。

その30メートル程離れた所からヘビ達の車が止まる。

車のドアが開く。

そこから首に爆破装置を付けたニホンザルの「トラ」が飛び出る。

T「トラ」

トラ、事務所の入り口に向かって一直線に走る。

構成員が気付く。

構成員A「何やあれ?」
構成員B「‥‥エテ公や」

トラ、構成員を襲う。

構成員、ピストルを取り出す。

構成員A「こいつ爆弾ぶら下げてっぞ!」
構成員B「クソッ!」

◯事務所地下1階

組長、歌い終わる。

全員が拍手する。

外から爆発音と銃声が聴こえホステスが悲鳴を上げる。

奈良橋「ん?なんや今の音?クラッカーちゃうよな?おい!お前ら見てこい!」

若い構成員達が一斉に地下室を出る。

岩ヶ丘「やっぱりあいつら来たみたいやな」

奈良橋「取り敢えず移動しまひょか!」

◯事務所・玄関

地下室の階段から上がって来た構成員達をマサとヘビがピストルで乱射する。

静かになった所でトラが来る。

マサ「まだ居ますわ」

マサ、トラを地下室へ行くように指示する。

トラ、地下室へ走る。

暫くして地下室から銃声が聴こえる。

◯事務所1階

タツがピストル片手に壁際に張り付きながら、じわりじわりと移動し、構成員が居ないか確かめる。

トイレに近づくとホステスの泣き声が聴こえる。

タツ「姉ちゃん。大人しく出て来たらなにもしねえぞ」

ホステス、嗚咽し震えながら、ゆっくりとトイレのカギを開け出て来る。

タツ、ホステスを抱き寄せ、頭を撫でる。

タツ「姉ちゃんは関係ねえからな」

タツの後頭部に構成員Cがゆっくりとピストルを突きつける。

構成員C、引き金を引く。その瞬間、タツがホステスを盾にして素早く振り向き銃を撃つ。乱れ撃ちになり3人とも倒れる。

◯事務所3階

マイケルがピストルを構えながら組長の部屋のドアを蹴って開ける。

正面の机に「組長」と書かれたタスキを掛けた岩ヶ丘が座っている。

マイケル「ビンゴ」
 
岩が丘、慌てふためき

岩ヶ丘「ち、ちが!」

マイケル、岩が丘の眉間を撃ち抜く。

岩ヶ丘、ゆっくりと前のめりに倒れる。

マイケル、岩ヶ丘のタスキの肩口に「1日」と書かれている事に気付く。

マイケル「1日?」

ドアの裏から奈良橋が現れマイケルを撃つ。

マイケルも即座に撃ち返す。

マイケル「シット!」

奈良橋とマイケル倒れる。

クローゼットから岩ヶ丘が出て来る。

岩ヶ丘「ア、アニキ!おい!アニキ!」

岩ヶ丘、泣きながら死んでいる双子の兄を抱きしめる。

マイケル、倒れながら岩が丘を撃つ。

岩が丘、倒れる。

マイケル「ミッション…ク…」

マイケル、目を開けたまま死ぬ。

◯事務所・地下1階

マサとヘビ、頭を撃ち抜かれ死んでいる。その周りをトラが走り回る。

F・O

◯事務所(夜)(真っ暗な画面のまま)

パトカーのサイレン、野次馬の騒ついた話し声が聴こえる。

刑事Aの声「どうやらこいつら組長と間違えて双子のアニキ撃っちゃったみたいだな」
刑事Bの声「売れない演歌歌手の岩龍三か。茶店のポスターで見た事あるな」
刑事Aの声「それにしてもこいつら逆ギレがヒドいよな」
刑事Bの声「この弟2人が姉ちゃん売り飛ばして上がり貰ってたんだろ?」
刑事Aの声「それを知った岩ヶ丘がカタギを売るなってクビにしたら逆怨みだもんな」
刑事Bの声「まあ岩ヶ丘の古い任侠道が仇になっちゃったのかね」

◯ハンバーガーショップ・外観(日変わって夜)

◯同・店内

汚れたワイシャツを着た中年、畑中(65)がテーブル席で競艇新聞を読んでいる。

隣のテーブルで佐奈子(25)と翔太(26)のカップルが向かい合わせ、取り留めもない話をしている。

畑中、ガラケーに来たメールを見て1人ブツブツと話す。

畑中「ふーん、そんなにあんのか、このブルジョワこのやろー。まったく冗談じゃねっつーの」

翔太、時計を見て

翔太「そろそろ出ようか?」

佐奈子「うん」

翔太、佐奈子、トレーを持ってゴミ箱へ。

翔太「今日はほんとありがとね」
佐奈子「いや、こちらこそ。すっごい楽しかったよ」
翔太「ほんとに?」
佐奈子「うん!」

2人、店を出る。

畑中、ため息をつきながら競艇新聞を読む。

しばらくして佐奈子が1人で戻って来て、畑中の隣のテーブルに座る。

佐奈子、前を向きながら畑中に話しかける。

佐奈子「今のが御曹司よ」

畑中も前を向いたまま手で口を隠し

畑中「あれを始末すればいいのか?」
佐奈子「うん」

畑中、ズボンのポケットからピンクのうさぎ柄のメモ帳を出して、佐奈子に向けて写真が貼ってあるページを見せる。

畑中「こいつがやるから」

ページにはがロシアの殺し屋ポポフの写真が貼ってある。

佐奈子、横目でチラッと見て

佐奈子「大丈夫なの?この人」
畑中「レッドアイを全滅させたらしいぞ」
佐奈子「それなら信用出来るわ」

ポポフの写真がゆっくりとズームアップで映る。

C・O

(おわり)

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