祈りと雨音 日常

2011年作品。 単位が足りずに教授に泣きついた美大生が 堅物ステンドグラス職人の元に修行に出される 作:竹田行人
竹田行人 28 0 0 11/24
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第一稿

「祈りと雨音」


登場人物
飯島青(22)公務員
赤井達郎(62)ステンドグラス職人
赤井義雄(30)ステンドグラス職人


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「祈りと雨音」


登場人物
飯島青(22)公務員
赤井達郎(62)ステンドグラス職人
赤井義雄(30)ステンドグラス職人


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○聖ニコラウス教会・礼拝堂(夜)
   祭壇と長椅子だけの教会。
   赤井達郎(62)、祈っている。

○国立(くにたち)美術大学・外観
   「国立美術大学」の看板。

○同・教授室
   世界各国の仮面が飾られている。
   教授・村崎、デスクに座っている。
   飯島青(22)、土下座している。
青「どうか私めにご慈悲と単位を!」
村崎「飯島青くん。だったね。君は、どうして私の講義に受講生が多いと思う」
青「それは。村崎教授が天下に名だたる文化芸術史の大家だからであります」
村崎「私の講義は代返とレポートで単位が取れるからです」
   青、顔をあげる。

○バス停
   田園地帯の真ん中にあるバス停
   青、大きなボストンバッグを肩から掛け、周囲を見渡す。
村崎の声「私の友人のところで修行してきてください。それを単位とします」
   「ステンドグラス工房・赤井」のネーム入りのバンが止まる。
   赤井義雄(30)、バンから顔を出す。
義雄「よろしこ」
   青と義雄、目を見合わせる。

○タイトル「祈りと雨音」

○バン・車内
   義雄、ハンドルを握っている。
   青、助手席に座っている。
義雄「村崎先生の単位落とすって、宇宙人か友だちいないかどっちかだよね」
青「宇宙人に友だちはいないんじゃ」
義雄「いるでしょ。だって言うじゃん。ワレワレハ宇宙人ダって。ワレワレってことは、仲間いるでしょ」
青「発想が子どもですね」
義雄「友だちいなそー」
青「ものづくりは孤独が伴侶。腕は確かですから。窓アート。お手伝いしますよ」
義雄「窓アート。なるほどね。着いたよ」
   バン、停車する。

○ステンドグラス工房赤井・外
   壁にツタの絡まった古い工房。
   「ステンドグラス工房 赤井」の看板。
   バンが止まっている。
   青と義雄、バンから降りてくる。
義雄「親父。青ちゃん来たよ。飯島青ちゃん」
青「青ちゃん」
   達郎、工房から顔を出す。
達郎「いいじまあお」
   青と達郎、目を見合わせる。
青「あの」
   達郎、ひっこむ。

○同・作業場
   大きな作業台が二つ並んでいて、工具や銅のテープが置かれている。
   一番奥にパソコンの置かれたデスクがある。
   青と義雄、入ってくる。
   達郎、奥の作業台でガラスをカットしている。
   青、達郎に近づき、背後から作業を見つめる。
   青いガラスが円形にカットされていく。
青「フリーハンド一発で完璧な円」
達郎「どけ。気が散る」
   義雄、青に近づく。
義雄「さ。青ちゃんはこっち」
義雄、青を奥のパソコンデスクに座らせる。
   義雄、パソコンの横の原画を見せる。
   青、達郎の作業を見ている。
義雄「原画をこのスキャナで読み取って、原画にある配色通りに色を付ける。そしたら」
達郎「義雄。働け」
義雄「はい」
   義雄、入口側の作業台に向かう。
     ×  ×  ×
   西日が差している。
   青、作業をしている。
   達郎、ガラスをカットしている。
   義雄、奥の部屋から顔を出す。
義雄「お茶淹れたから休憩しよう」
青「はぁい」
   青、立ち上がる。
   達郎、パソコンの画面を見る。
達郎「なんだこれは」
義雄「え。なになに」
   義雄、入ってきてパソコン画面を見る。
義雄「なるほど」
   パソコン画面には、すべてが青に配色された原画。
青「ステンドグラスの概念をぶち破りたいと思いまして」
義雄「青ちゃん。さすがにこれは」
青「こういうの新しくないですか? 伝統と前衛のコラボレーション」
義雄「いや。コラボレーションって」
青「表現は自由であるべきでしょ」
達郎「でていけ」
青「え」
達郎「お前はいらない。出ていけ」
青「待ってください。どういう意味ですか? ちゃんと説明して」
達郎「お前は何にもわかってない」
   達郎、奥の部屋に入る。
青「なにそれ」
   青、バッグを抱え、出ていく。
義雄「青ちゃん」
達郎「義雄。茶」
義雄「あー。もう」
   義雄、奥の部屋に入る。

○バス停(夕)
   青、時刻表を見ている。
   最終バスは午後4時台。
   青の腕時計、午後5時を回っている。
   腕時計に水滴が落ちる。
   青、空を見上げる。
   雨が降ってくる。
   青、バス停の屋根の下に入る。
   バス停の前にバンが止まる。

○聖ニコラウス教会・外(夜)
   雨が降っている。
   バンが止まっている。

○同・礼拝堂(夜)
   雨音が静かに響いている。
   達郎、祈っている。
   青、長椅子に腰かけている。

○赤井家・作業場(夜)
   雨が降っている。
   義雄、ハンダで銅線を溶かしてガラス同士をくっつけている。

○聖ニコラウス教会・礼拝堂
   雨音が静かに響いている。
   青と達郎、長椅子に並んで座っている。
達郎「娘の結婚式も。ウチのの葬式も。この教会でやった」
   達郎、壁のステンドグラスを指差す。
達郎「あれも。うちで作った」
   「受胎告知」をモチーフにしたステンドグラス。
   青、ステンドグラスを見つめる。
達郎「1500年続くステンドグラスの歴史は、教会とは切り離せない」
   雨音、止んでいる。
達郎「ステンドグラスは、存在そのものが祈りだ」
   青、ステンドグラスを見つめている。
達郎「祈りってのは、一人じゃできない。守りたい何か、救いたい誰かがいて、初めて生まれる」
   雲が切れ、月の光が入ってくる。
達郎「何百、何千ってガラスが、誰かの。たった一つの祈りのために繋がって、ステンドグラスは生まれる」
   ステンドグラス、輝いている。
   青、ステンドグラスを見つめている。

○国立美術大学・教授室
   青と村崎、向かい合っている。
村崎「無事。卒業ですね」
青「ご迷惑をおかけしました」
村崎「いえ。私はなにも。ただ。飯島さんは啓進舎の内定を辞退されたとか」
青「あ。はい」
村崎「啓進舎は国内最大手の広告会社です。飯島さんの力が発揮できる場所も多いのではないでしょうか」
青「ああ。はい。でも。無理なんで」
村崎「無理」
青「はい。私。世界で一番美しいものを見てしまったので」
村崎「そうですか」
青「はい」
   青と村崎、微笑み合う。

○ステンドグラス工房赤井・作業場
   達郎と義雄、作業をしている。
   青、入ってきて、一礼。
青「よろしくお願いします」
義雄「青ちゃん。よろしこ」
   青と達郎、目を見合わせる。
達郎「原画」
青「あ。はい。すぐに」
   青、奥のPCに向かう。

          〈おわり〉

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