遠出はこれだけ 日常

年に一度の家族行事。うんざりだけど、悪いことばかりでもなかったり。
橘ゆづは 42 0 0 10/13
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第一稿

人 物

大倉晴子(9)小学4年生
大倉陽子(11)晴子の姉
大倉太一(6)晴子の弟
大倉和男(47)晴子の父
大倉文子(40)晴子の母

〇山道(朝)
山道を走 ...続きを読む
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人 物

大倉晴子(9)小学4年生
大倉陽子(11)晴子の姉
大倉太一(6)晴子の弟
大倉和男(47)晴子の父
大倉文子(40)晴子の母

〇山道(朝)
山道を走る五人乗りの白い車。
空は快晴。

〇車内(朝)
   運転席に大倉和男(47)、助手席に大倉文子(40)、後部座席に大倉陽子(11)、大倉晴子(9)、真ん中に大倉太一(6)。
   車内には男性アイドルグループの若い声が流れている。
   晴子、シートベルトに首を預け、外を眺めている。
   太一、前に身を乗り出して、
太一「ねえ父ちゃん今年もまた?」
   和男、バックミラーをチラッと見て、
和男「なんか文句あんのか」
太一「たまにはせめて海とかさあ」
和男「海は泳げねーよ。お前海の怖さを知らないな?父さん昔」
陽子「それ何回も聞いたー」
和男「……とにかく」
太一「はるちゃん音楽変えていい?」
晴子「だめ!」
文子「まあまあ」
太一「姉ちゃんだって飽きたでしょ?」
   と、陽子を見る。
陽子「次私の番だかね。太一は帰りまで我慢して」
和男「おい運転してるのは父さんなんだぞ?父さんの好きな曲かけようとかないのか」
晴子「父さんこそバリエーションなさすぎじゃん」
文子「まあまあ、休憩でもしますかそろそろ」
和男「うるさい」
   と、むすっとしてオーディオ機器をいじる。
   音楽が途切れ、昭和歌謡曲が流れる。
晴子「あー!」
   と体を揺らす。
   太一、肩をすくめる。
   陽子、ため息をつく。

〇琵琶湖・畔
   サンバイザーをかぶった文子、地面にシートを敷いて座っている。
   太一、文子のそばで砂をいじっている。
太一「泥団子ピカピカにする競争知ってる?」
   と、文子を見上げる。

〇琵琶湖・湖中
   じたばたとした我流のクロールで泳ぐ和男と、スクール水着を着た陽子がその後に続いて危なっかしく泳いでいる。
   水につかって立ち尽くし、和男と陽子を見ている晴子、ひらひらの水着を着ている。
   陽子、ぷはっと水から顔を出して、
陽子「晴子―!早く!」
   晴子、手を振る陽子を見て、目を閉じてその場に潜る。
   ぶくぶくと泡が上がってくる。
   そのままその場で強く目をつむった晴子、すぐに顔を出す。
   手で顔を拭くと目を開け、湖畔に向かって歩き出す。

〇琵琶湖・畔
   湖から上がってきた晴子、太一に近づき、
晴子「代わりに」
太一「え?」
   と、顔を上げる。
晴子「代わりに行ってきて、ほら」
   と陽子の方を指す。
太一「何の代わり?」
   太一、手の砂を払い立ち上がる。
   湖に向かって走りながら、
太一「僕あれやりたい!飛び込み!」
   文子、ほほえましく太一を見ている。
   太一、水辺に着くと立ち止まり、飛び込みのポーズをとる。

〇琵琶湖・湖中
   和男、水中を太一の方に向かって歩いている。
和男「太一!飛び込めるほど深くないぞそこ!」

〇琵琶湖・畔
   飛び込みのポーズをした太一、ジャンプして足から水につかる。
陽子の声「太一それただのジャンプ!」
太一「うっせー」
   太一、バシャバシャと水をかき分ける。

〇琵琶湖・湖中
   和男、陽子に向かって、
和男「もう一本いくぞ」
陽子「えー」
和男「太一、ついてこいよ」
   と、声をあげ、潜って泳ぎだす。
陽子「んな無茶な」
   と潜る。

〇琵琶湖・畔
   晴子、バスタオルで体をくるんでスケッチブックを手に、文子の隣に腰掛けている。
   晴子、スケッチブックを開きながら、
晴子「どこがよかったの?父ちゃんの」
   文子、晴子を見るが、また湖に視線を戻す。
晴子「なんで結婚したん?」
文子「……なんでかなあ」
晴子「ええ、そんなもん?」
   と、目を見開く。
文子「たぶん自信がなかったんだろうなあ。母さん」
晴子「あ、鉛筆」
   と、立ち上がり車の方に走っていく。
   風で文子の髪が揺れる。

〇琵琶湖・湖中
   陽子、太一の腕を取り、クロールの手の動きを教えている。
   太一、真剣な表情。
   和男、太一と陽子のもとに泳いでくる。
和男「晴子は?」
太一「はるちゃんの代わりー」
   陽子、湖畔の方を指さす。

〇琵琶湖・畔
   鉛筆で湖の風景をスケッチしている晴子。
   文子、微笑みながらその絵を覗く。
   ビショビショの和男、晴子に近づいてきて、
和男「何してんだ、お前」
   晴子、とっさに絵を体に寄せて隠す。
和男「泳がないと書けないだろ、夏の思い出」
晴子「……後で泳ぐもん」
和男「絵なんか描けたってな、生き残れやしないんだ。何のために来てると思ってんだ」
   文子、詰め寄る和男を制して、
文子「晴子は私に似て運動音痴なのよ。ごめんねー、はるちゃん」
晴子「……別にいいよ」
   と、スケッチブックを脇に置く。

〇琵琶湖・湖中
   陽子、太一のそばに立ち、足の動きを見ている。
   太一、がむしゃらに足をばたつかせるが、全く進まない。
   陽子、太一の足を持って、
陽子「もっとこう」
   太一、がばっと顔を上げる。
太一「くるしーい」
陽子「休憩する?」
   太一、首をぶんぶん振る。
太一「まだやる!」
陽子「休憩しよっか」
   と、太一の頭を触る。
太一「大丈夫!」
   陽子、文子に向かって叫ぶ。
陽子「お母さーん!チューペット!太一が食べたいってー」
   太一、陽子の真似をして叫ぶ。
太一「ちがうよー!お姉ちゃんだよー」

〇琵琶湖・畔
   文子、立ち上がり、
文子「はいはーい」
   と車に向かう。
   シートの上に晴子の描きかけの絵が残る。

〇車内(夕)
   ダンスナンバーが流れている。
   頭にタオルを巻いた太一、すやすやと眠っている。
   ハンドルを握る和男、疲れた表情。
   晴子、シートベルトに首を預け、外を眺めている。
陽子「(小声で)おかあさん!」
   文子、顔だけ後ろを向く。
陽子「変えちゃって、ゆずに。寝てるから」
   文子、くすっと笑い、オーディオ機器をいじる。
晴子「あ、ずるーい」

〇ファミリーレストラン・テーブル席(夜)
   おいしそうにちゃんぽんをすする晴子。
   太一、陽子の隣でお子様ランチをぐしゃぐしゃに食べながら、
太一「琵琶湖よりもでっかい湖作ってやるんだ」
陽子「そんなん作ってどうすんのよ」
   晴子、くすっと笑う。

<終>

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