ガラス割り ドラマ

もうすぐ卒業。今だけは私たち自由なの。行き場所のないこの気持ち、窓でも割ったらマシになるかも。
橘ゆづは 94 0 0 09/29
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第一稿

人 物

浅野舞奈(15)中学三年生
貫井まどか(15)中学三年生
松浦一俊(15)中学三年生
園田清子(45)中学校教師
山田楓太(15)名前のみ。中学三年生

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人 物

浅野舞奈(15)中学三年生
貫井まどか(15)中学三年生
松浦一俊(15)中学三年生
園田清子(45)中学校教師
山田楓太(15)名前のみ。中学三年生

〇日高中学校・教室
   窓際の席で机に肘をつき、窓の外を眺めている浅野舞奈(15)。
   舞奈の目の前の窓は割れていて、くもの巣状にひびが入っている。
   園田清子(45)、教壇に積み重なった教科書やテスト用紙をどんと置く。
   清子、ちらりと舞奈の席を見やる。
   舞奈、じっと窓を見つめているように見える。
清子「みなさん受験でストレスが」
   生徒たち、各々内職をしていたり寝ていたりして、誰も清子を見ない。
清子「みなさん受験で、ストレスがたまるのはわかりますが、また、割れてます」
   と、舞奈の席の窓を指す。
清子「直しても直しても毎回うちのクラスのあの窓が。こうも続くと先生たちだって、犯人捜しをしないわけにはいきません」
   舞奈、ゆっくりと視線を清子のほうに移す。
清子「こんな後味の悪い卒業、嫌ですよね?もしこの中に、そういうことを繰り返してる人がいるなら、もうやめにしませんか?」
   一番前の席にいる貫井まどか(15)、テストの束を見て、
まどか「ねえ先生テストするなら先にやっちゃいましょうよ。さっき覚えたこと忘れちゃうじゃん」
清子「もし、と言いましたが、先生はこのクラスの誰かじゃないかと思っています」
   舞奈、再び窓の外に視線を戻す。

〇日高中学校・下駄箱(夕)
   家路を急ぐ生徒たちで賑わっている。
   舞奈、真っ白なスニーカーを取り出して床に置く。
   革のスクールバックを背負ったまどか、後ろから来て舞奈の背中を叩く。
舞奈「って」
まどか「残ってかないの?」
   舞奈、振り向く。
舞奈「塾……」
まどか「残ってかないの?」
   舞奈、まどかをまっすぐ見ると、床に置いたスニーカーに手を伸ばす。

〇日高中学校・教室(夕)
   がらんとした教室にはまどかと舞奈だけ。
   足を開いて背もたれを体の前側に、座っているまどか。
   数学の問題集を広げて頭にのせている。
   舞奈、まどかの後ろの席で、英単語帳に蛍光ペンをひいている。
まどか「英語はもう余裕でしょ」
   舞奈、まどかをちらりと見て、また視線を落とす。
舞奈「だからだよ」
まどか「あ、苦手な教科は避けちゃうやつね。わかるーその気持ち」
   舞奈、顔を上げる。
舞奈「私って帰国子女じゃん?英語できるじゃん?」
   まどか、口を大きく開けて笑う。
まどか「うわー。自分で言っちゃうんだー。うちが英語できないの知っててー」
舞奈「できて当たり前なの。だから、一問も落とせないの。満点で当たり前だから」
まどか「……ふーん。そういうもん?」
舞奈「そういうもん」
まどか「ねえツッコんでよ」
   と、頭の上の問題集を取る。
   舞奈、微動だにせずに、
舞奈「ごめん良いツッコミが思い浮かばなくて」
まどか「絶対わざとじゃん」
   舞奈、にっこり笑う。
   まどか、むすっとするが、すぐに思い出したように、
まどか「犯人、松浦くんて噂知ってる?」
舞奈「犯人?」
まどか「まどの」
舞奈「松浦くんはないでしょ」
   まどか、ニヤニヤと、
まどか「やっぱりかばうんだ」
舞奈「いや、かばうとかじゃなくて。松浦くんは、そういうことする感じじゃないと思うよ」
まどか「好きだから?」
舞奈「……何?何言ってるの?」
まどか「ねえうちら、自由なんだよ、今だけ」
舞奈「内申もこないだ出しに行ったしね」
まどか「でしょ?だから卒業までの間だけは、成績も気にしなくていいし、今更先生とかみんなとか、どう思われたって別にいいわけ。だから」
   まどか、カバンについているネズミのキーホルダーを取って、窓を全開に開ける。
   舞奈、単語帳を閉じる。
舞奈「え」
   まどか、勢い良く立ってキーホルダーを思いっきり外に投げる。
   舞奈、立ち上がり、
舞奈「なんで?」
   舞奈、窓から身を乗り出す。
   まどか、舞奈を引っ張って座らせる。同時にまどかも座る。
まどか「別れてきた。他に好きな人がいますって」
   舞奈、まどかの手を握る。
舞奈「……泣かれた?」
まどか「さすがにうちの前では」
舞奈「楓太ぞっこんだったもんね。うん」
まどか「責めないでよ、わたしだって」
舞奈「わかってる。好きでもない人と付き合うの、案外きついもん」
   と、ゆっくりと窓の外に目を向ける。
   まどか、つられて外を見て、
まどか「ありがと」
舞奈「うん?」
まどか「言っちゃおうと思うんだよね、松浦くんに」
舞奈「何を」
まどか「……」
舞奈「え。あ、え。あ、え。そういうこと?」
まどか「一緒に舞奈も告っちゃおうよ」
   舞奈、放心している。

〇浅野家・舞奈の部屋(夜)
   黒の多いシックな部屋でスエットを着て机に向かっている舞奈。
   画面の割れたスマホを脇に置き、ルーズリーフに殴り書きをしている。
   『松浦なんか全然好きじゃない』と繰り返し何行にもわたって描き続けている。
   スマホが光り、新着メッセージが来る。
   『楓太「電話してい?」』とある。
   舞奈、スマホを手に取る。

〇日高中学校・体育館裏(夕)
   細い体に中身のほとんど入っていないリュックを背負った松浦一俊(15)を前にしてまどか、舞奈の順に並んでいる。
   松浦、慣れた様子で、まどかを見下ろしている。
   まどか、一歩前に進み出て、松浦の顎あたりを見ながら、
まどか「好きです。付き合ってくだ」
松浦「ごめん」
   まどか、ハッとして、手で顔を覆い、そのまま横にずれる。
   舞奈、松浦に見つめられ、恥ずかしそうに一歩前に進む。
舞奈「あの、好きです」
松浦「うん、ごめん」
   強い風が吹いて、まどかと舞奈の長い髪が顔に張り付く。
   めくれるスカートを必死に抑える舞奈に松浦は見向きもせず、立ち去る。

〇日高中学校・校舎裏(夕)
   背伸びして一階の窓から中を覗いているまどかと舞奈。
まどか「いる?」
舞奈「いなさそう……」
まどか「よね!」
   舞奈、背伸びをやめる。
舞奈「昨日楓太から電話あってさ」
   まどか、舞奈に向き直り、
まどか「え、楓太?なんで?」
舞奈「なんでって……。いつも相談受けてたんですけど、まどかとのこと」
まどか「わーー、知らなかった。なんか、ごめんね」
舞奈「もう楓太でもいっかなーこの際」
まどか「それだけはやめなよ」
   舞奈とまどか、笑う。
   まどか、二階を見上げるとちょうど真上に割れた窓がある。
   舞奈、まどかの視線の先を見て、
舞奈「爽快だよ」
まどか「知ってるみたいに」
   と笑い、こぶしを握る。
   まどか、こぶしを見つめて、
まどか「怪我するかな?」
舞奈「うまくやれば、無傷」
まどか「緊張するね」
舞奈「自由なんでしょ?」
まどか「そっか、そうだった」
   と笑う。
まどか「せーのでいく?」
舞奈「うん」
   舞奈とまどか、こぶしを握って窓に向かって構える。
舞奈とまどか「せーの!」
   と、同時にこぶしを突き出す。

<終>

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