似ている ファンタジー

妖怪退治を生業とする組織に属する新山と馬場。新山は自分を庇い負傷した上司、馬場を治療する。多くの傷跡がある馬場の体を見ていると、かつて自分を守って死んだ兄の姿が重なって見える新山。今でも「生きるべきは僕ではなく兄の方だった」と深い自責の念を抱えている新山はこの壁をどう乗り越えていくのかーー
松岡奈々 15 0 0 10/11
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

○人物
新山 蓮人(18)退治人
馬場 義成(27)退治人


 
○洞穴(夜)
寝ている馬場義成(27)の額に滲む汗。
馬場の腹の傷から血が溢れ出す。
新山蓮人 ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

○人物
新山 蓮人(18)退治人
馬場 義成(27)退治人


 
○洞穴(夜)
寝ている馬場義成(27)の額に滲む汗。
馬場の腹の傷から血が溢れ出す。
新山蓮人(18)が馬場の腹に手を当て傷を治している。
新山「馬場さん、馬場さん! 死んじゃだめ
です!」
新山の目から涙が溢れ出す。
×  ×  ×
暗い洞穴を照らす焚火。
血だらけの馬場の服と布切れが散らばっている。
馬場の眠っている。
壁にもたれかかり、三角座りをしている新山。
新山「(呟き)治れ治れ治れ治れ治れ」
馬場が目を覚ます。
馬場「……う」
新山「ば、馬場さん?!」
新山が馬場に駆け寄る。
馬場「新山くん」
馬場が体を起こそうとする。
新山「ダメです、まだ寝ててください。傷が
塞がったばかりですから」
馬場「……あぁ。やつらは?」
新山「逃げました。やつらが馬場さんに一撃
を喰らわせた後、何故か山の方へ」
馬場「そうですか。新山くんは無事ですか」
震えている新山。
新山「はい、僕は大丈夫です。馬場さんに守
ってもらいましたから」
馬場は深く息を吐く。
馬場「朝になったら、ここから移動しましょ
う。新山くんも今のうちにしっかり休んでおいてください」
新山「でも、馬場さんがまだ」
馬場「大丈夫、問題ありません。この傷は新
山が治してくれたんですよね?」
新山「……はい」
新山に笑いかける馬場。
馬場「なら朝にはもう完治してるはず、で
すよね?」
新山「おそらく」
目を瞑る馬場。
馬場「ありがとう、新山くん、あなたがいて
くれて良かった」
新山は俯く。
馬場「今日はもう休みます」
流れる沈黙。
新山「あの……馬場さん」
馬場「何ですか?」
新山「本当にすみません」
馬場「何がですか?」
新山「僕のせいで馬場さんが死にかけまし
た」
馬場「あなたのせいではありません」
新山「僕のせいです。僕がいたから」
馬場「違います。誰といても、やつらがいる
限り、常に危険は伴う」
震えている新山。
新山「もう僕を守らないでください!」
馬場「何を言ってーー」
新山「僕なんかより、あなたの方が生きるべ
き人間なんですよ」
馬場「……何を言い出すかと思えば」
新山「あなたの体にはたくさんの傷跡があり
ました」
馬場「それとなんの関係があるんですか?」
新山「あなたが強くて優しい人だからです。あなたは似ているんです。僕の兄と」
馬場「……君の兄」
馬場は腕で顔を覆う。
新山「あなたと同じで、兄は最強で、何より
も優しい人でした。それなのに僕を守って死んでしまったんです。兄はいつもいじめっ子たちから僕を守ってくれました。悪に立ち向かう兄の後ろ姿は頼もしく、輝いて見えました。ある日、地の妖怪が僕たちの村を襲ったんです」
震える手を握る新山。
新山「村中の人々が逃げ惑う中、足が遅い僕
はついにあいつに追いつかれてしまった
んです」
新山の影に激しく燃える焚火の影が重なる。
新山「もうだめだと思ったその瞬間、あの見
覚えのある後ろ姿が僕の目の前に現れた
んです。そして、兄は僕を庇って死にました」
馬場が体を起こす。
新山「気が付くと、僕は血だらけの兄の体を抱いていました。放心状態の僕は兄を見つめることしか出来ませんでした。すると、あることに気づいたんです。兄の体が全身傷痕だらけだったことに」
馬場の傷痕だらけの体を見る新山。
新山「その痕は決して妖怪にやられたもので
はなく、いじめっこ達から僕を守るために負った傷痕だったんです」
溢れ出す新山の涙。
新山「僕は知らなかった。負け知らずの兄が
本当は傷ついていたことを。僕に心配をかけないようにと、いつも気丈に振舞っていただけ、だったんだと」
馬場が新山を見つめる。
新山「もし、あの時、兄が死んでいなけれ
ば、今でも気づけていなかったかもしれない。そんなバカな僕が生き残った。あの時、死ぬべきだったのは兄ではなく、自分だったと」
泣いている新山。
馬場は新山の隣に座る。
馬場「新山くん。私は今生きています。あな
たのおかげで」
新山「僕がいなければ、怪我すらしなかっ
た」
馬場「確かにそうかもしれません。ですが、
私はあなたがいなければ退治人をやめていました」
新山「……は?」
馬場「あなたがいなかったら、今ごろ日本は
壊滅状態ですね」
新山「なんで、僕がいなければ……」
馬場「11年前、私はまだ新米でしたが、
すでに日々の戦いに疲弊していました。当たり前のように仲間が死んでいく。悲しんでいる暇もなく、次の戦いへ向かわされる。もう、肉体も精神も限界でした。そんな時、君達に出会ったんです」
新山「君達?」
馬場「新山くんの兄を殺した妖怪、そいつを
退治したのは私です」
新山、驚いている。
新山「まさか」
馬場「私は別の任務中だったのですが、地の
妖怪が現れたと聞き、現場へ向かいました。私が着いた頃すでに、村は壊滅状態でした。私はなんとか妖怪を退治し、基地へ戻ろうとしていました。すると、林の方に、君達を見つけたんです。君は私と目が合った途端、意識を失った」
新山「……」
馬場「君たちを基地へ連れて行く途中、私は
退治人をやめようとしたことを酷く悔いました。もしやめてしまえば、彼らのように小さな命を見捨てることになる。私の到着が遅かったせいで君の兄は死んでしまった」
新山「そ、そんなことは」
馬場「いいえ。私はそこで気づいたんです。
私の行動一つで生きる命と死ぬ命があると」
新山「……」
馬場「すべての物事には意味があります。も
ちろん、人にも。君が生きていることには意味がある。その意味を見つけてください。そして、私は君に生きていてほしい。だから、君を守ります」
馬場、笑って、
馬場「もし、守られたくないならば、強くな
ってください、それしかありません」
新山は膝を強く抱く。
新山「僕なんかが強くなれるのかな」
馬場「君は何のためにこの仕事に就いたんで
すか?」
新山「……妖怪を全滅させるためです」
馬場「なら頑張るしかないですね」
新山、ゆっくり頷く。
馬場「私も初めから強かったわけではないで
すから。いや、そんなこともないか。最初から最強だった、か」
新山、驚いて馬場の顔を見る。
馬場「今のは笑うところです」
新山、少し笑って、
新山「馬場さんが言うと冗談に聞こえませ
ん」
馬場「すみません」
新山「……馬場さん」
馬場「何ですか?」
新山「この任務が終わったら、稽古つけてく
ださい」
馬場「冴島くんより厳しいですけど、私」
新山「大丈夫です。強くなります、僕」
馬場は新山の頭を撫でる。
頬を赤らめる新山。
馬場「君もある人に似ているんです」
新山「誰ですか?」
馬場「……それはまだ秘密です」
新山「は、はい。いつか教えてくださいね」
馬場「えぇ。ではもう一休みしましょう」
馬場が壁にもたれる。
新山「はい」
新山は微笑む。

この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。