真と陰 ドラマ

歌手志望の若者、真司と大企業の社長の息子、 雷斗の物語
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第一稿

登場人物
葛城信司(かつらぎしんじ)男、主人公(22)
古上雷斗(こがみらいと)男(18)

乾 透(いぬいとおる)男(18)

乾 琉(いぬいりゅう) 男(56)
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登場人物
葛城信司(かつらぎしんじ)男、主人公(22)
古上雷斗(こがみらいと)男(18)

乾 透(いぬいとおる)男(18)

乾 琉(いぬいりゅう) 男(56)

古上辰巳(こがみたつみ)男(55)

古上夏海(こがみなつみ)女(15)

射内礼(しゃないれい)男(30)

●市街地(夜)
人でにぎわっている

●公園(夜)
スマホで音楽を流しそれに合わせ踊る若者達

そこへ音痴な歌声が聞こえてきて一同、動きを止める
xxx

葛城信司(22)がマイクを持ちながら下手くそな歌を歌う
信司の足元には「入場料」と書かれた段ボールが置かれている

信司に元へ若者達が集まる
若者a「おい!」
と、信司の胸ぐらを掴む
信司「何ですか」

若者b「あんたの下手くそな歌で迷惑してんの。やめてくんない?」
若者達、目を合わせて笑い出す
若者c「こんな歌で金取ろうってか」
と言い、段ボールを蹴る若者c
信司「下手、ねえ。じゃあ一回歌うんでどこが下手か言ってみてくれません?」
若者達、想像しなかった返事に呆れる
若者b「え?何。わざわざ俺達が時間を割いてまでお前の歌を聞けってか?」
信司「まあまあ取り敢えず座って」
と言い、若者達に地べたに座らせるように促す
●路地裏(夜)
人気のない路地裏
整った服を着ている乾透(18)、
息が荒く、足を引きずっている
そして透、膝から崩れ落ち倒れる

●公園(夜)
信司の下手くそな歌を聞いている若者達、
不快だと言わんばかりの表情をしている
信司、晴れやかな表情をして歌い終わる
信司「どうでした?感想は?」
若者達、立ち上がりキレる
若者a「…取り敢えず一発殴らせろ」
若者a、信司に歩み寄る
信司、後ろに退く
信司「いやいやちょ、待ってくださいよ」
若者b、信司の背後に回り込み、羽交い締めをする
若者b「拳と脚で一発ずついっちまえ!」
若者a、両拳を鳴らす
信司「いやストップ!ストップ!いやあああああ!」
公園に鈍い音が二回響く

●路地裏(夜)
人気のない路地裏
そこを歩く信司、頬と踝にあざが出来ているのを気にしている
歩いていくと横たわっている透がいる
透に気付き、駆け寄る信司



●信司のアパート・中
テレビの音声が流れている
透、着ている整っていた服から信司の服になっていて、布団で寝ている

布団で寝ていた透、起きて辺りを見回す
雷斗が起きたことに気づき声をかける信司

信司「アンタ、目が覚めたのか」

透「あの、ここは…」

信司「俺ん家だ。あんた倒れてたんだよ」

透「…そうでしたか。すいません」

テレビではニュースがやっている

アナウンサー「次のニュースです。大手家電メ一カ一『CoGaMi』の社長、古上辰巳さんのご子息である古上雷斗さんが行方をくらませました。」
テレビを見て震える雷斗

信司「(テレビのニュースを耳で聞いて)さらわれたっぽいよな」

透「え?」

信司「そのニュースだよ。そんな大企業の社長の子供が逃げ出すわけないしな」

透「…そうですね」

信司「アンタなんていうのよ」

透「え?」

信司「名前だよ名前」

透「…(雷斗、ニュースをチラッと見て)乾 透です…」
信司「オッケー。俺は葛城信司」


信司、透の様子に気付かず冷蔵庫の中などを探している
透「あの、ありがとうございました。僕はもう出てく」
信司、透の言葉を遮る
信司「やべえ食いもんがねえ。(手を叩き)そうだ!一緒に飯食おうぜ、な」
透「そんな…いいですよもう僕は出てく」
信司、雷斗の言葉をさえぎり手を引っ張る
信司「ほらいくぞ一」
透「ちょ、ちょっと」
信司と透が出ていき扉が閉まる

●メインタイトル「真と陰」

●道
歩いていく信司と透。
●止まっている車・中
その信司と透を車内から見ている黒服の男a、b
黒服a「恐らくあちらにいらっしゃるのは雷斗様だろう。しかし隣の男は…」
黒服b「もしかしたら誘拐犯かもしれない」

黒服a「取り敢えず様子を見よう」

●ショッピングセンターのフードコ一ト
人々で賑わっている
向かい合わせに席に座る信司と透
透、辺りを見回している
机にはうどんとハンバーガーがある
物凄い速さでうどんをすする信司
透「…うどんお好きなんですか?」
信司「まあそうね。母さんがよく作ってくれたからかな」
透「…いいですね。そういうのって…」
信司「え?」
透、持っているハンバーガーを見る
透「いや…なんでも」

●広場
信司と一緒に歩く透、周りをキョロキョロしている
信司、その様子に気づく
信司「どうしたんだ?落ちつかない感じだけど」
透「いや…なんでも」
信司「あ、便所か!」
透「いやちが…(一瞬考え込み)あ、そうなんですよ。行ってくるんでここで待っててください」
信司「おう」
透、走っていく

●住宅地
全力で走る透、息を切らし、足を止める
透「あの人を巻き込むわけには…」
透の前方に黒塗りの車が止まり
黒服の男が数人出てくる

透、逃げる

●広場
ベンチに座る信司
信司「(スマホを見て)あいつなげえな」
信司、公園の付近の道路で走ってる透に気づく
信司「透?」

●道路
黒服達が走っている
角で黒服達と歩いている信司がぶつかる
信司と黒服達、尻餅をつく
信司「あ…(痛がって)すいません」
黒服c「いえいえ…こちらこそ」
黒服の一人が透の写真を取り出し、信司に見せる
黒服「この人探してるんですが知りませんか?」
信司「あ一あっちの方に行ったかな?」
信司が前方を指で指す

黒服達の中にいる黒服a、信司のことを思い出す
黒服「ご協力感謝します」

黒服a、信司に近づく

黒服a「(信司の服を払い)お怪我はありませんか?」

信司「あ一大丈夫ですよ」

黒服達、その方向へ走る
信司「もう大丈夫だぞ」
信司の背後にはゴミ箱がある
そのゴミ箱の後ろにしゃがみこんで隠れている透
透「(立ち上がり)…ありがとうございました」

信司「それよりも。なあ、なんでお前追われてんだよ?」
透、黙り混む

●信司の家・中
正座をしている透とあぐらをかく信司
透、下をうつむいている
信司「全部、話してくれるか?」
透「…僕の名前は乾透ではなく、古上雷斗っていいます。」
信司「古上雷斗?まさかさらわれたCoGaMiの社長の息子?」
透「その通りです。」
透、改めて雷斗

信司「誰かにさらわれたのか?」
雷斗「…そうじゃありません」
信司「え?」
雷斗「誰も僕をさらってなんていません。僕が勝手に逃げ出したんです」
信司「それまたなんで」
雷斗「…なんででしょうね」
信司「はあ?」
雷斗「正直、自分でもよくわかんないんです」
信司、時計を見る
信司「とにかく、俺は予定があるから外を出る。お前はここで待ってろ。また追いかけられたらたまったもんじゃないからな」
雷斗「分かりました」

信司、バッグを持ちドアを開け、家を出る
雷斗、下をうつむいている
●公園(夜)
下手くそな歌を歌っている信司
●道路(夜)
雷斗、走っている
信司の下手くそな歌が聞こえて、信司の声だと気づかずに足を止める
●公園(夜)
歌っている信司にダンスを踊っていたあの若者達が目を細め近づく

付近にはドラム缶があり、それを使って雷斗が隠れてその様子を見ている

信司、それに気づき歌を止める
信司「ゲ!またあんた達か!」
若者の一人「いい加減にしろ!」
若者達が信司を殴ったり蹴ったりする
雷斗「信司さん!」
雷斗、ドラム缶を倒し、信司の元へ走り寄る
雷斗、信司を庇う
若者の一人「なんだあんた?」
雷斗「この人の…知り合いです。」
若者の一人「ほ一、じゃあこいつに言っといてやってくれよ。身の丈に合った夢を目指せってな」
若者達、笑う
雷斗「いくらなんでもそんなこと言わなくても!」
信司「あ一もういいよ」
信司、立ち上がる
信司「(若者達に向かい)悪かったな」
信司、バックを持ち雷斗の手を取り、共に歩き去る

●道路(夜)
信司、雷斗の手を取り、雷斗の数歩先をいく
信司「どうして外に出た?てか鍵かけといた筈だろ」

雷斗「窓から出たんです…このままあなたの近くにいればあなたにも危害が及ぶかもしれません。」
信司、歩みを止める
信司「…じゃあなんでさっき俺を助けた?」
雷斗「それは…」
信司「優しいやつだなお前」
雷斗「(少し顔が緩み)そうでしょうか」
信司「(笑って)なんだよ、照れてんのかよ」
雷斗「そんなことないですよ…」
信司「そんなことあるさ」
信司、腕時計を見る
信司「(鍵を雷斗に渡し)お前はとりあえず俺の家に帰れ」
雷斗「信司さんは?」
信司「歌い足りないからカラオケ行ってくる」
雷斗「…僕も行ってもいいですか?」
信司「捕まってもいいならな」
●カラオケの一室・中(夜)
机にはコップに注がれたコーヒーとコーラが置かれてある


微妙に下手に歌う雷斗とそれを聞く信司
雷斗、歌い終わる
信司「…微妙に下手だな」
雷斗「すいません。カラオケなんて来たことなくて」
信司「へ一珍しいな。まあいいや。一回俺がお手本を見せてやるよ」
信司、コーヒーを一回飲む
モニターには歌手のpvが流れている
信司そのモニターを指で差す
信司「この歌歌ってやるよ。」
雷斗「ああ、そうですか」
信司、マイクを持つ

(フラッシュ・雷斗の回想)
●公園(夜)
下手くそに歌う信司
(回想終わり)
雷斗、信司が歌うのを下手くそなのを思いだし思わず目を閉じる

雷斗の耳に先ほどの歌手の歌声が聞こえてくる
雷斗、不思議に思う
雷斗「あれ?まだ歌ってないんですか?」
雷斗、目を開ける
そこにはマイクを握った信司の姿が
雷斗、信司があの歌手そっくりに歌っているのに気づく
雷斗「え!?今信司さんが歌っているんですか?」
信司、歌うのを止める
信司「そらそうだろ」
雷斗「なんでそんな上手いんですか?」
信司「俺さ、他人そっくり歌ったりするのが
得意なんだ」
信司、機械の演奏中止のボタンを押す
雷斗「凄いですよ!」
信司「(自嘲気味に)そうか?」
雷斗「え?」
信司「それって裏を返せば自分の声で歌えねえってことだよ」
雷斗「で、でも、物真似とかで売り出していけばすごく売れる気が」
信司、雷斗の声を遮る
信司「俺さ、自分の声で売れたいんだ」
雷斗「でもそんな凄い特技ならお金を出す人達だって大勢いますよ」
信司「雷斗。お前ってさ得意なこととやりたいことって、同じだと思うか?」
雷斗「…え?」
信司「やりたいことが得意なことなら苦労する人間なんて現れないんだよ」
雷斗「でも自分の特技を生かして、生きていくのが人間なんじゃ」
信司「そうじゃない人間だっているってことだよ」
信司、機械で歌を選曲し歌い出す
雷斗、座り込む
●雷斗の部屋・中(夜・雷斗の回想)
勉強机に座る雷斗(15)、勉強をしている
時計の針は一時を指している

●高校の教室・表
表札には1年3組とある

●高校の教室・中
雷斗、先生にテストの答案を貰う
テストの点数は100点とあり、雷斗喜ぶ

●雷斗の家・玄関(夜)
扉を開ける雷斗の父の辰巳(55)
辰巳「ただいま」
辰巳、靴を脱ぐ
雷斗、テストの答案を持ち、走り寄る
辰巳「雷斗、どうした。」
雷斗「(答案を見せ)テストで100点とりました!」
辰巳「…そうか」
辰巳、歩き去る
雷斗、表情が曇り、答案をくしゃくしゃにしポケットにいれる

(回想終わり)
●信司の家・中(夜)
雑魚寝をする信司と足を伸ばして座る雷斗
雷斗、寝ている信司を見る
雷斗M「僕の生き方って間違ってるのかな」

●信司の家・中(朝・日替わり)
雷斗、あくびをして起きる
信司がパンを焼いて、皿に置く
信司「おはよう」
雷斗「…おはようございます」
信司、机にパンと市販のヨーグルトを置く
雷斗「あの」
信司「ん?」
雷斗「昨日の話の続きですけど、なんで自分の歌声で売れたいんですか?」
信司「子供の頃からの夢だったんだ。両親も賛成してくれてさ。これで物真似で売れるなんて、格好つかないなと思ってさ」
雷斗「…そうですか」

信司「お前って、父ちゃん母ちゃんにそういう夢の話しなかったのか?ガキの頃でもいいからさ」

雷斗「それは」


チャイムの音が鳴り響く
信司、ドアを開ける
信司「はい?」
目の前には黒服の男達が
信司、一瞬呆然とし素早くドアを閉めようとする
しかしドアをこじ開ける男達
信司、尻餅をつく
信司「なんでこの場所がわかった!?」
黒服a「その服、まだ着替えてなかったのか」
信司「服?」
信司、服を見ると小さい発信器が付いてるのに気づく
信司「まさかあの時」
●道路(信司の回想)
黒服aが信司の服に発信器を気づく
(信司の回想終わり)

●信司の家・中(朝)
信司「(aに向かい)てめえ!ハメやがったな!」
信司、拘束される
雷斗「待ってください!その人は」
信司、黒服に連れてかれる


●雷斗の家・外観(夜)
T「数日後」
3階建ての豪華な家

●雷斗の家・二階・中(夜)
メイド達がドアの近くで立っている
椅子に座る辰巳
背後には雷斗と古上夏海(15)が立つ
辰巳の正面には信司が座っている
信司、キョロキョロしている
辰巳「いや、すまなかった。まさか雷斗を保護して頂いていたとは」
辰巳、頭を下げる
信司「いえいえ。顔を上げてくださいよ」
雷斗、唇を噛み締める
辰巳「こいつの我がままに付き合っていただいていたとは。お恥ずかしい」

信司「…こんなこと言うのもあれですけど
雷斗のこと大切にしてやってくれませんか?あなたのご婦人とご一緒に」
辰巳「…私の妻は死んだよ。数年前に」

信司、驚く

辰巳「すまないね。こんな話をしてしまって」
信司「いえ…雷斗の隣の方は?」
辰巳「娘の夏海です。雷斗の妹になります」
信司「あ一、妹さん」
信司、お辞儀をする
夏海、信司の元へ近寄る
夏海「少ないですが…受け取ってください」
夏海、封筒を手渡す
信司「え?いいよ」
辰巳「受け取ってやってください。夏海はずっと雷斗のことを心配していて、雷斗を助けた人にお礼に自分の小遣いを渡したかったんですよ」

信司「(受け取り)ありがとう」

辰巳「報道機関には君が雷斗を保護したと伝えておいた。雷斗が道に迷った後にね」
信司、えっという顔をする
信司「(雷斗の方を見て)お前、道に迷っただけなのか?」
雷斗「…はい」
信司「ええ…なんでそれを早く言ってくれなかったんだ」
雷斗「それは」
辰巳「意地を張ったんでしょう。道に迷って人の迷惑になるなんてこと言えなかったんです」
雷斗「…その通りです」
信司、困惑した表情になる


●雷斗の家の付近の道路(夜)
信司、浮かない顔をして歩いている
前方に黒服の男達に止められている謝内礼(30)に気づく
礼「お願いしますよ!一度だけでも雷斗さんと会わせてくださいよ!」

信司「雷斗?」
黒服達に突き飛ばされる礼
黒服達、去っていく
信司、礼に近寄る
信司「大丈夫ですか?」
礼「ああ…」
●市街地
人が入り浸っている
ビルのモニターではニュースをやっている
キャスター「CoGaMiの社長のご子息である古上雷斗さんが男性に保護されました」

●広場(夜)
ベンチに座る信司と礼
信司「CoGaMiの不祥事を暴く?」
礼「はい…僕の会社はCoGaMiと敵対関係にある企業と仲良くさせてもらってて、その企業からの依頼で」

信司「それで記者であるアンタが探ってたのか。でもなんで一人で?」

礼「最初はちゃんと捜査班があったのですが、尻尾が掴めずにいて…最終的には僕一人になってしまって。」

信司「あんたも大変なんだな。実質一人でCoGaMiに立ち向かってるもんじゃないか」
礼「まあずっと進展がなかったわけじゃないんですけどね」
信司「え?」
礼「実はですね」
礼、メモ帳を開く
礼「CoGaMiの傘下の中小企業の中に一社の重工があるんですよ。」
信司「はあ」
礼「その会社の社長、数年前に傘下に入る前に息子さんが亡くなっているんですよ」
信司「悲しいことですけど、それがどうかしたんです?」
礼「その会社、他の傘下の会社と比較してもかなりの良待遇を受けてるんですよ」
信司「優秀だったんじゃないんですか?」
礼「いやあ実はねその亡くなった息子が関係してるんじゃないかと思ってましてね」

信司「へ一、どう関係してるって言うんですか?」
礼「それは」
信司「それは?」
礼「(気を落として)まだ分かりません。その息子さんの名前すらも」

信司「…そうですか」
礼「だから雷斗さん本人に会って話を聞きたかったんですが」
信司「いやそりゃあ無理があるでしょう。大企業の社長の息子に簡単に会うのは」
礼「…ですよね。そうだ!一応これ」
礼、信司に名刺を渡す
礼「もしかしたらあなたならまた雷斗さんに会う機会があるかもしれないので」
信司「あ、ああ」
礼「じゃあ、もしも何かあったら是非連絡してください!それでは」
礼、歩き去る


●信司の部屋・中(夜)
信司、あぐらをかき封筒を開ける
封筒にはお札と手紙がある
信司、手紙を見る
手紙には「兄のことで伝えたいことがあります。是非会っていただけないでしょうか」という文と連絡先が載っている

信司「え?」
●市街地の時計台付近(日替わり)
親子連れなどがいる
時計台で待つ夏海
そこへ信司が現れる
信司「すいません…夏海さんですよね」
夏海「はい」
信司「なんですか?話って」
夏海「その、単刀直入に言うと信司さんが今まで一緒にいた兄さんは古上雷斗じゃないのかもしれません」
信司「え?」
夏海「私見たんです。雷斗兄さんが、死んでいるとこを」
信司「死んだ?そんなバカな。だって現に辰巳さんは雷斗を」
夏海「ホントなんです!」
●雷斗の部屋・中(夏海の回想)
首に千切れた縄がかかっていて倒れている
雷斗(15)
それを見た夏海(12)、絶叫する
(回想終わり)

●市街地の時計台付近
信司「じゃあ俺と一緒にいた雷斗はなんだったんだよ!」
信司、ハッとする

フラッシュ
xxx
●広場(夜・信司の回想)
礼「その亡くなった息子さんが関係してるかもしれないんです」
(回想終わり)
xxx

●市街地の時計台付近
信司「…まさか」
夏海「どうしたんです?」
信司「会わせたい人がいます。時間ありますか?」
夏海「は、はい…」
●広場(夜)
噴水付近に礼と夏海と信司が向かいあっている
礼「そうですか!この方が雷斗さんの妹さんで、ご協力感謝します!」
礼、夏海の手を取り熱く握手する
若干引いている夏海
信司「えっと、まず謝内さんの情報から教えてくれませんか?」

礼「傘下の重工の社長の息子さんが亡くなったのが3年前で」

夏海「3年前なら雷斗兄さんが亡くなった年と同じです!」
信司「やっぱそこになにかありそうだな。どうにかしてその社長と話が出来ればなあ」
礼「でもあの社長、結構頑固でなんも話してくれませんでしたよ」
信司「う一ん厄介だな(指を鳴らし)こんなのはどうだ?」
XXX

信司「…という作戦で」

夏海「良い作戦でしょうけど…上手くいきますかね…」
礼「成功を祈るしかないですね」
信司「じゃ、いっちょ景気漬けに歌でも歌いますか!」
信司、バックからマイクを取り出す
夏海「え?」
礼「歌手の方だったんですか?」
信司「売れないけどね」
夏海「是非、聞いてみたいです!」
信司「では遠慮なく」

信司、下手くそな歌を歌う
夏海、呆然とし、礼は耳を塞いでいる
信司、歌い終わる
信司「どうだった?」
礼「(調子がすごぶる悪そうに)話しかけないでください、酔った気分だ」

信司「…やっぱりか」
夏海「あ、そういえば段ボールの中に入って歌えば音程がとりやすくなるって聞いたことあるような」
信司「おお!そうなのか。今日の夜、実践してみるよ」
●工場・表(朝)
信司と一緒に歩く夏海
看板には「乾重工」と書かれている
信司、それに気づく
信司「乾?」
夏海「どうかしましたか?」
信司「…いや別に」

●工場の一室・中(朝)
ソファーに座る信司、夏海
遅れて向かいのソファーに座る乾琉(56)
琉「まさかCoGaMiの社長の娘さんがわざわざこんなところまで訪ねてくださるなんて、一体どんなご用件で?」
夏海「あ一、別に大したことじゃなくて、CoGaMiの企業グループ内での連絡先をお伝えしようと」

琉「一軒一軒、回ってるんですか?」
夏海「いえ、お恥ずかしい話、こちらの手違いでここにだけお伝え出来てなくて」
琉「いえいえ、いいんですよ。どうです?お兄さんはお元気にしてます?」
夏海「あ、…はい」
琉「…それならよかった。ところでお隣の方は?」
信司「夏海様の付き人です」
琉「あ一そうですか」
夏海「取り敢えず私たちはこれで」
琉「いやホントにわざわざありがとうございました。お気を付けて」
夏海と信司、去る
琉、小さな額縁にしまってある写真を手に取る
その写真は琉と小さな頃の琉の息子が写っている

●雷斗の部屋・中(夜)
勉強をしている雷斗、ペンを止める

●工場の一室(夜・雷斗の回想)
金のやりくりで困ってる様子の琉
雷斗、改めて乾 透

その横で一人寂しくハンバーガーを食べている透(15)
そのとき、電話の着信音が鳴る
琉、電話を取る
琉「(受話器を耳に当てながら)はい。いずれ本人にも打ち明けるつもりです。」
透、不思議そうにその様子を見ている

●同(日替わり)
学校の支度をしている透
琉、がそこへ近づいてくる
琉「透。ちょっといいか?」
透「なに?」
琉「お前の母さんがお前を生んで亡くなったのは知ってるよな」
透「うん」

琉「その…お前は母さんが襲われて出来た子供なんだ。つまり俺と母さんとで出来たわけじゃないんだ。つまりお前は忌み子だ」
透、驚く
透「…え?」
琉「その…これとは全然違う話なんだがこの会社を他の会社に売ることにした」
透「(激しい口調で)ちょっと待ってよ!何がなんだかわかんないよ」
琉「話を最後まで聞いてくれ!」
透、押し黙る
琉「…すまない。でその売る為の条件なんだが…」
●同・表(夜)
高級車が止まる
そこからは黒服の男と辰巳が出てくる
それを待っていた琉と透、頭を下げる
辰巳「君が透君か」
透「はい」
辰巳「非常に勝手な事情で申し訳ないが君の名前は今日から古上雷斗だ」
透「…はい」
辰巳「早速、整形手術を受けよう。さあ」
辰巳と透、車に乗り、発進する
その様子を見る琉と窓ガラスから琉を見つめる透
(回想終わり)
●雷斗の部屋(夜)
透、改め雷斗
雷斗、ペンを進める
そのとき扉の方から物音がする
雷斗、再度ペンを止め、扉を開ける
そこには皿に乗った崩れた形のおにぎりが置いてあった
●工場の一室(夜)
受話器を耳に当てて会話している琉。
机には夏海がくれた連絡先が置かれてある

●雷斗の部屋(日替わり)
雷斗、椅子にもたれて寝ている
机にはおにぎりが置かれていた皿がある
辺りが騒がしくそれで目を覚ます
●雷斗の家の3階のホール
メイド達や黒服の付き人達、そして辰巳が集まっていて、雰囲気は騒然としている
そこへ雷斗がやってくる
雷斗「(メイドの一人に向かって)何かあったんですか?」
メイドの一人「その…あれ」
と言いベランダの方を指さす
そこにはベランダから落ちようとする夏海がいる
雷斗「夏海!?」
雷斗、駆け寄る
夏海「(雷斗に気づき)来ないで!」
雷斗、足を止める
雷斗「なんでこんな真似を!」
夏海「今までの事、全部ばらしてやる!その兄さんが偽物だってことも」
雷斗、押し黙る
辰巳「バカな真似はやめろ」
夏海「雷斗兄さんを殺しておいて、よくそんな事を言えるよね!」
辰巳、驚く
それを聞いた辺りの人間が騒然とする
その時、扉が開く
そこからは信司が現れる
雷斗、それに気づく
雷斗「信司さん!?なんでここに」
信司「(駆け寄り)いや、夏海さんに呼ばれたんだが誰もいなくて…(夏海を見て)って夏海さん!?」
辰巳「夏海。なんの勘違いをしてるかは知らないが私は雷斗を殺した覚えなんてない。第一、雷斗ならここにいるじゃないか」
夏海、録音機を取り出し再生ボタンを押す
録音機からの琉の声「透は元気にしてますか?…そうですか。ありがとうございます。雷斗さんの代わりをちゃんと勤めているでしょうか?」
周囲の人間、録音機の音声が理解できない
辰巳「…乾か」
夏海「これは父さんと乾重工という会社の社長さんとの電話の内容です。この社長さんの息子さんは数年前に亡くなっているということにされています」

辰巳「バカな。最近、乾と連絡を取っていないのに」
夏海「じゃあなんでこんな音声があるのよ」
辰巳、口ごもる
夏海「私は本物の兄さんが亡くなる直前、父さんから受験に対してのかなりのプレッシャーをかけていたのを知っています。それに耐えられず兄さんは…」

辰巳「やめろ…やめてくれ」
辰巳、膝から崩れ落ちる
夏海「私は二回も兄さんの死体を見たくありません!…とにかく、この内容を世間に告発します。もしそれを止めるというのなら私は…」
夏海、一歩退く
辰巳「やめろ!」
そのとき、陰に隠れていた黒服らが夏海の隙を狙って拘束する
夏海、抵抗するも全く相手にならない
辰巳「…よくやった」
●同・一階の廊下
歩いている信司
雷斗の声「待ってください!」
雷斗、駆け寄り信司のもとへ着く
信司、歩みを止める
信司「なんだ、久しぶりじゃないか雷斗」
雷斗「…その録音機を渡してください」
信司、録音機を隠すように握りしめている
信司「…バレてたのか。それは無理だな。二台用意するのに苦労したんだ」
雷斗「茶化すのもいい加減にしてください」
信司「…なんで止める」
雷斗「CoGaMiを守る為です。僕は、社長の息子だから」
信司「小さな町の重工の社長の息子でもあるけどな」
雷斗「…なんで分かったんです?」
信司「調べたんだよ、色々とね」
雷斗「とにかくそれを渡してください」
信司「…お前はこのままでいいのかよ」
雷斗「え?」
信司「このままだとあの親父のいいなりになって壊れてしまうかもしれない。そしたらあの親父は…新しい雷斗を作るかもしれないぞ」
雷斗「…僕は壊れない!」
信司「(強い口調で)壊れるぞ!」
雷斗、押し黙る
信司「だからそうなる前に逃げたんだろ」

●雷斗の部屋(夜・雷斗の回想)
机に倒れ泣いている雷斗。
ポケットにはぐちゃぐちゃの100点の答案
雷斗M「もう一回見せてみよう」
●辰巳の書斎付近の廊下(夜)
雷斗、歩いている
辰巳の声が聞こえる
辰巳の声「ええ、大丈夫です」
●辰巳の書斎(夜)
辰巳と警察の幹部の一人が話している
幹部「それにしても自分の息子の自殺を隠蔽するなんて冷酷な男だねえ」
辰巳「これも会社の為です」
幹部「新しい息子にも同じように重圧を与えるのかい」
辰巳「無論、そのつもりです」
幹部「それに耐えきれずに死んだらどうする?」
辰巳「そのときはその時です」
●辰巳の書斎付近の廊下(夜)
話の内容を聞いていた雷斗、青ざめる
(回想終わり)
●雷斗の家の一階の廊下(夜)
雷斗「確かに逃げたのは事実です。でも、それは僕の間違いで」
信司「昔のお前がなんで逃げたか考えてみろよ」
雷斗、口ごもる
信司「何かを変えたくて逃げたんじゃないのかよ。何かを期待して逃げたんだろ!」
雷斗「(大声で)違う!」
信司「(大声で)違わない!」
雷斗「…僕はそんな勇気なんてありません。このまま身の丈に合った未来を…受け入れます」
信司「身の丈に合った未来や夢なんてあるのかよ」
雷斗「…え?」
信司「そいつの努力次第で身の丈なんてどんな大きさにもなれる!…と俺は思ってる」

信司「カラオケにお前が付いてきた時、嬉しかった。俺の夢に付き合ってくれる奴が増えたって勝手に思いこめてさ」
雷斗「信司さん…」
信司、録音機を捨てる
信司「気が変わっちまった。そいつをどうするかはお前の自由だ」
信司、歩き去る
●辰巳の書斎
辰巳、椅子に座って呆然としている
辰巳「…夏海」
その時、ノックの音がする
辰巳「誰だ」
雷斗「…透です」
雷斗、改めて透
辰巳「…入れ」
透が入ってくる
透「失礼します」
辰巳「…どうやらおしまいのようだな」
透「…あのおにぎり、辰巳さんが作ったんですよね」
辰巳「…なんの話だ」
透「僕の部屋の前に置かれてたおにぎりですよ。あんな形が格好のつかないおにぎり作る人なんてここのシェフやメイドにはいません」
辰巳「…おいしかったか?」
透「はい。」
辰巳「そうか。ありがとな」
透「…別れの挨拶に来ました。僕はこの家を出ます」
辰巳「もう影武者…というか替え玉を演じてくれないと、そう言うんだな」
透「はい」
辰巳「…雷斗が死んだとき、こう思ったよ。妻も持病で去り、子供の扱いが分からなかったが故の結果だとね。一から十まで私のせいだよ」
透「でも、愛してはくれていた」
辰巳「…そう思ってくれたなら、私は嬉しいよ」
透「少なくとも僕は貴方をお父さんと思っています」
辰巳「そうか…」
辰巳、泣き始め透を抱く
辰巳「ありがとう…ありがとう」
辰巳、抱くのを止める
辰巳「警察に全て話すよ。何もかも」
透「…それがいいですよ」
辰巳「君は今日から乾透として生きてくれ」
透「…はい。」
辰巳「あと、整形代資金と、当分の生活費を手配しよう。その顔だと乾透として生きにくいだろう」
透「…要りません。僕はこの顔で、一人で生きてきます」
辰巳「…しかし」
透「そうさせてください。この状態から身の丈を大きくしたいんです。」
辰巳「…そうか」


●広場(日替わり)
信司、夏海、礼が噴水付近で集まっている
信司「いやあ、成功したみたいですな」
夏海「皆さんのお陰です。」
夏海、頭を下げる
礼「いやあ、僕が上司に無理いって盗聴機やら録音機やら貸してもらってなければ無理でしたね」

●礼の会社・中(礼の回想)
上司に土下座している礼
(回想終わり)
●広場
信司「いや俺の辰巳さんの声真似がなかったら無理だっただろ」

●信司の家・中(夜・回想)
夏海と一緒にいる信司、辰巳の声真似をして琉と電話している
(回想終わり)

●広場
夏海「ところで透さんは?」
信司「寄るところがあるってさ」
●乾重工・中
作業をしている琉。
琉の付近に足音が近づいてくる
琉、気づき、振り替える
そこには雷斗の顔をした透の姿が
琉「…まさか、透?」
透「はい。」
琉「…どうした?」
透「僕はもう古上雷斗ではありません。乾透として生きてきます」
琉「え?どういうことだ」
透「…全て終わりました。なにもかも」
琉「からくりが世間にバレたのか」
透「そういうことです。」
琉「…なんでここへ来た?俺を殺しにきたか?」
透「あなたの嘘を暴きに来ました。」
琉「え?」
透「なんで母さんは僕を生んだんですか?忌み子である僕を」
琉「…最初は俺は反対したさ。降ろした方がいいってな。乱暴されて出来た子だし、母さん自身体が弱いからな」

琉「でも母さんが生みたいって言ったんだ。そして生んだ後、亡くなった」

琉「この子を大切にしないと母さんが可哀想だと思ったんだ。でも生活は苦しくてお前に構ってやれずによく適当にハンバーガーやらなんやら買ってた」

琉「だから生活を良くする為にお前を」

透「違う!」

琉「え?」

透「父さんが、辰巳さんが言ってました。」
●辰巳の書斎(透の回想)
辰巳「もし、乾のことを勘違いしてるなら聞いてくれ」
透「…はい?」
辰巳「あいつはお前の事を心配してた。お前金がある環境に置いてやりたいってな。だから自身の会社を売ったんだと」
(回想終わり)

●乾重工・中
透「こういうことなんですよね」

琉「…やめてくれ。そんなのは出鱈目だ。まるで良い父親を隠してたみたいじゃねえか」

透「良い父親ですよ」

琉「…どうするんだこれから」

透「一人で生きてきます。」

琉「どうやって?」

透「大学に行きながら。奨学金はどうやら降りるようですし」

琉「…仕送りはどれくらい送ればいい」

透「要らないです」

琉「無茶いうな」

透「無茶させてください。無茶することが今、僕のやりたいことなんです。」

琉「…そうか。でも、いざというときは俺を頼ってくれ。俺はお前の…父親だから」

透「…ありがとう、父さん。」

●公園(夜)
T「数ヶ月後」
歌う準備をする信司
信司N「辰巳さんはあのあと警察に全てを打ち明けたらしい。逮捕はされなかったもののCoGaMi自体は報道のせいで規模を縮小してるらしい。でも真摯に向き合って行くと会見で言っていて罪を受け止めていくようだ」

信司N「夏海さんは勉強を頑張っていてその先の進路は未定らしい。でも行動を起こした彼女ならきっといい活路を開く筈だ」

信司N「礼さんは今回の一件でかなりの昇進を果たしたそうだ。これで記者としての立場も固めることができただろう」

信司N「透は大学に行きながらカウンセラーのバイトをしているそうだ。自身の経験を生かして人を救いたいといった願いの局地がそこだったのだ。」

信司N「そして俺は」

そのとき信司が何者かに羽交い締めされる
それは踊っていた若者bで
信司の前には若者達がいる
若者a「またあんたか。耳障りなんだよ」

信司「だからっていきなり羽交い締めすることないだろ!」

若者b「うるせえ!やられる前にやれってこことよ」

若者の一人が信司の腹を殴る
しかし殴った若者は悲痛の声を上げる
若者b「なに!?」

信司、羽交い締めから逃れる
そして腹から「かかったな!」と黒マジックで書かれた鉄板を取り出す

信司「へへへ。俺も成長したのさ」
若者達、鉄板をみて笑い出す
信司「え?」

若者c「(笑いながら)そんなお前歌いたいのかよ」

信司「ああ。」

若者a「…じゃあ歌ってみろ。聞いてやるよ」

信司「(嬉しそうに)本当か!じゃあ早速」

身構える若者達

しかし信司の歌声は以前と比べ大分マシになっていた
驚く若者達
歌い終わる信司

若者a「…カラオケでいうと80点いくか、いかない位かな」

信司「本当か!いつも自分の声で歌うと50点位にになるから」

若者c「お、おう」

信司M 「練習したかいがあったなあ」

●真司の家(回想)
段ボールにこもり歌う真司
(回想終わり)

若者a、段ボールに100円を入れる
それに続き100円を投げる若者達
信司「(嬉し泣きをして)ありがとう!」

信司N「俺の未来も少し動き出した…そんな気がした」

終わり

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