マザコン成長記 ドラマ

マザコン気味の大学生亀山大貴は就活のために地元へ帰ってくる。卒業後は地元で母親遥香と暮らそうと考えていたからだ。久しぶりの家族水入らずの食事……と思った矢先、中学の頃の同級生野沢英治が訪ねてきて大貴に告げる。 「俺、お前の母さんと結婚しようと思ってるんだ」 マザコン大学生は自分の母親と自分の同級生の結婚を受け入れられるのか……。
ビル・ローゲン 132 0 0 09/11
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第一稿

【登場人物表】
・亀山大貴(22)都内の私立大学に通う四年生。
・亀山遥香(44)大貴の母親。
・野原英治(22)大貴の小中学校時代の同級生。自動車整備工場勤務。
・望月麻 ...続きを読む
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【登場人物表】
・亀山大貴(22)都内の私立大学に通う四年生。
・亀山遥香(44)大貴の母親。
・野原英治(22)大貴の小中学校時代の同級生。自動車整備工場勤務。
・望月麻衣(22)大貴の恋人。
・亀山四郎(26没)大貴の父親。大貴が四歳の時に亡くなっている。
・幹雄、和馬、理沙(22)大貴の地元の友人。



1コーポ所山・206号室(夜)
  亀山大貴(22)と望月麻衣(22)がベッドでセックスをしている。
大貴「ごめん、イキそう」
麻衣「ああ、うん、うん」
大貴「うん……」
  大貴、目をつぶり、喘ぐ。
  腰の動きを止める。
  息切れしながら麻衣の横に仰向けに寝転ぶ。
  麻衣を見つめる。 
  麻衣も息切れしながら大貴を見つめる。
  二人、キスする。
  その瞬間、ベッド脇に置いてあったスマートフォンが震える。
  キスをしながら麻衣の後ろに手を回しスマートフォンを取る大貴。
  キスをしながら画面を見て、
大貴「(唇を離し)あ、ごめん」
  大貴、体を起こす。
大貴「(電話に出る)はい、もしもし」
麻衣「(しかめっ面で)ちょっと~」
  大貴、人差し指を鼻にあて「しーっ」のポーズ。
麻衣「だれ?」
大貴「(スマホから口を離し)母さん」
麻衣「ええ……」
  むくれ顔になる麻衣。
大貴「うん……。そう、たぶん、夕方くらいには……」
麻衣「ねえ、ちょっと~!」
  麻衣、起き上がり大貴を軽く小突く。
大貴「(スマホから口を離し)静かにしろよ!」
  大貴の声に身をすくめる麻衣。
麻衣「(小声で)……マザコン」
大貴「(電話で)ごめん、またあとでかけなおすわ。……うん。じゃあ、また」
  電話を切る大貴。
大貴「静かにしてろよ」
  大貴を睨む麻衣。
麻衣「……大くんが悪いんじゃん?」
大貴「はあ?」
麻衣「もういい」
  麻衣、サイドテーブルに置いてあったタバコを手に取り、火をつける。
麻衣「(タバコをふかし)なに、また実家帰るの?」
大貴「うん、就活」
麻衣「(呆れ顔)へえ」
  大貴、スマホに夢中。
麻衣「なんで大くんがそんな地元にこだわるのかわかんないなあ。東京の方が働き口たくさんあるでしょ」
大貴「いや……母さんの傍にな、うん……」
  煙をふかす麻衣。
麻衣「……大くんってほんと、マザコンだよね」
  麻衣の方を見る大貴。
大貴「……んなことねえよ」
麻衣「(大貴の口調を真似て)んなことあるよ」
大貴「片親なんだから仕方ないだろ」
麻衣「……じゃあ私とお義母さん、どっちが大切?」
大貴「はあ?」
  言葉に詰まる大貴。
大貴「それは……」
麻衣「……うそうそ。ごめん、今のなし。ほら、ぎゅーしとこ」
  麻衣、両手を広げる。
  大貴と麻衣、抱きしめ合う。

2亀山家・仏間(夜)
  亀山遥香(44)が、仏壇の前に座っている。
遥香「……」
  仏壇には四郎の遺影が飾られている。
遥香「明日、大貴帰ってくるって」
  遺影に話しかける遥香。
遥香「あの子、こっちで就職する気なのかな?」
  しばらく四郎の写真を見つめる。
  ピンポーン。
  家のチャイムが鳴る。
遥香「あ、はいはい……」
  部屋を出て行く遥香。

3新幹線・車内
  座席に座り、手帳に何かを書き込んでいる大貴。
  地元で受ける会社を羅列している。
大貴「……」
  スマホをとりだし、写真フォルダを見る大貴。
  大貴と麻衣の写真。
  スワイプすると大貴と遥香の写真。
  微笑む大貴。
大貴「(窓の外に目を向けて)……二世帯住宅か……」

4亀山家・台所
  料理をしている遥香。
  掛け時計をちらりと見る。
  また料理を始める遥香。
  今度は腕時計を見る。
  また料理。
  次はスマホの時計を見る。
  落ち着かない様子。
  玄関の開く音がする。
大貴の声「ただいま~」
遥香「あ」
  体がこわばる遥香。

5同・居間
  大貴が荷物を持って居間に入ってくる。
  ケージに入っていた老犬(モモ)が起き上がり、のそのそと大貴に近づいてくる。
大貴「(モモを撫でて)おお、モモただいま~」
  遥香が台所からやってくる。
遥香「おかえり。早かったね」
  大貴、荷物を置く。
大貴「新幹線使っちゃった」
遥香「あ、そうなの。なんで?」
大貴「え? ……早くうちに帰りたくて?」
  笑う大貴。
大貴「(遥香を見つめ)ただいま」
遥香「はい、おかえり」
  そのまま寝転ぶ大貴。
大貴「俺、就活ついでに一週間くらいこっちいるからさ、母さん行きたいところとかあったらいってよ。俺運転する」
遥香「いいのに、そんなの」
  遥香、台所の方へ向かう。
遥香「もうちょっと遅いと思ってたからまだ夕飯できてないけど……」
大貴「母さんのご飯たべたーい」
遥香「はいはい」
  エプロンを締め直し、台所に入っていく遥香。
大貴「母さーん。俺、絶対こっちで就職決めるから」

6同・台所
大貴の声「そしたらまた毎日飯作ってよ」
遥香「いいのよ。(つぶやくように)……無理に帰ってこなくても」

7同・居間
大貴「(寝ながら)うん」
  一瞬、目を閉じるがすぐに開ける。
大貴「(上半身だけ起こし)ん? 今のどういうこと?」
  ピンポーン。
  チャイムが鳴り響く。
遥香の声「あ、誰か来たみたい」
  怪訝な表情で玄関の方を見る大貴。
遥香の声「大貴、出てくれる?」
  大貴、遥香の方を怪訝な顔のまま見返す。
大貴「あー、うん」
  大貴、起き上がり、玄関に向かう。
  
8同・玄関
  大貴、遥香のものであろう婦人用のサンダルを履き、ドアノブに手をかける。
大貴「はーい」
  ドアを開ける大貴。
大貴「うお」
  ドアを開いた先には固い笑顔の野原英治(22)。
  ビニール袋を持っている。
英治「お、大貴」
大貴「お、おう、英治」
英治「久しぶり」
大貴「ああ、うん、久しぶり……」
  固い笑顔を崩さない英治。
  話す声もこわばっている。
  怪訝な表情になる大貴。
英治「あ、これ。潮干狩りにいって……」
  英治、袋を大貴に渡す。
大貴「おー、ありがとう」
  袋を受け取り、中を確認する大貴。
  大量のあさり。
大貴「おーあさり、俺も母さんも大好きなんだわ」
英治「うん、知ってる」
大貴「うん」
英治「うん」
大貴「……」
  引きつった笑顔で微笑み合う二人。
大貴「ごめん、正直久しぶりすぎてどう対応したらいいか困ってるわ、俺」
英治「俺も」
  ぎこちなく笑い合う二人。
  家の奥から遥香の足音が聞こえてくる。
  遥香、玄関に入ってきて、
遥香「あ、英くんだったの」
英治「こんにちは」
大貴「これもらった」
  袋を差し出す大貴。
遥香「えー、ありがとう! あさり大好き!」
  袋の中を覗いて跳ねるように喜ぶ遥香。
  しかし、その笑顔は緊張している。
大貴「……なんかテンション高くない?」
英治「いつもお世話になっているので……」
  うつむきがちに喋る英治。
  それを見た遥香、英治の肩をバシバシと叩き
遥香「やだー、英くん、なんか緊張してるの? どうした!」
英治「やめてよ、遥香さん……」
  少し口角をあげ、照れるように遥香の手を払いのける英治。
  それを見ている大貴、一瞬、顔をこわばらせたあと、すぐに笑顔になり、
大貴「おーい、イチャイチャすんな、気持ち悪いから」
 大貴の言葉に急に真顔になる英治と遥香。
英治「ご、ごめん」
大貴「え、いや、冗談、冗談……」
英治「(真顔)ごめん」
大貴「……」
遥香「……あ、じゃあ私、ご飯の支度があるから」
  家に入っていこうとする遥香。
大貴「ああ、うん」
  遥香、途中で止まり、振り返り、
遥香「英くんもどう? 夕飯」
大貴「え?」
英治「いただきます」
大貴「ええ?」
遥香「なに、なんかダメ?」
大貴「いや、ダメじゃないけどさあ」
英治「僕、なにか手伝いますよ」
  靴を脱ぎ、家に上がる英治。
遥香「えー、いいのに」
英治「いえいえ」
遥香「英くんは本当に昔からよくお手伝いしてくれるよねえ」
  二人、台所の方に行ってしまう。
大貴「……ええー……」
  大貴も家に入る。

9亀山家・居間
  ちゃぶ台の前に座る大貴と英治。
  ちゃぶ台の上にはご飯、味噌汁、刺身、おひたしなどが並んでいる。
  二人、一瞬、目を合わせ、気まずそうに会釈する。
大貴「……え、英治ってそんな静かだったっけ?」
英治「あー、いや……」
  遥香の足音が聞こえてくる。
遥香「ごめんごめん、食べててよかったのに」
  エプロンを外しながら居間に入ってくる遥香。
遥香「じゃあ、食べようか」
大貴「ああうん」
遥香「いただきます」
英治「いただきます」
  無言で箸を動かす三人。
  三人ともお互いの顔色を伺っている様子。
三人「あの……」
  同時にしゃべりだし、同時に言葉を止める三人。
大貴「なに?」
英治「あ、大貴こそ、なに?」
遥香「うん、どうした?」
大貴「あー……醤油……」
英治「あ、うん、醤油な。うんそうだな、俺とってくる!」
大貴「え?」
  遥香も腰を上げようとするが、英治が素早く立ち上がり台所の方へ行く。
大貴「……」
  ドタバタと台所へ向かう英治の足音。
  冷蔵庫の開閉音。
英治の声「あれ? 遥香さん、もう醤油ないよ。新しいの出していい?」
遥香「ああ、うん、いいよ、洗面台の下の」
英治の声「いつものとこね」
  ドタバタという足音と戸棚を開ける音。
  大貴、遥香を睨みながら
大貴「(小声で)いつものとこってなによ……」
  ドタバタと足音をたてて英治が戻ってくる。
英治「(笑顔)はい、醤油」
大貴「(受け取る)ああ、うん、ありがとう」
  醤油さしに醤油をさす。
  英治、座る。
英治「遥香さん、それとって」
  煮物の器を指差す英治。
遥香「ああ、うん」
  煮物の器を英治に渡す。
英治「ありがとう。……遥香さんも取る?」
遥香「ああ、うん、じゃあもらおうかな」
  遥香の皿に煮物をよそう英治。
  それを無言で咀嚼しながら見つめる大貴。
  再び沈黙。
三人「……あの」
  また同時に喋りだしてしまう。
英治「あ、なに? ごめん」
大貴「いや……」
  二人を交互に見つめる大貴。
大貴「人の母親のこと名前で呼ぶなよ」
英治「……」
大貴「なんかキモイ」
  大きめの大根の煮物を口に放り込む大貴。
  遥香と英治、視線を合わせる。
  咀嚼を続ける大貴。
  英治と遥香がゆっくりと大貴の方に目を向ける。
大貴「……なに」
英治「話があるんだ」
大貴「話?」
  正座に座り直す英治と遥香。
  大貴はまだ咀嚼を続けている。
大貴「(咀嚼しながら)なんだよ、かしこまって。結婚の挨拶かなにか?」
英治「(心ここに在らずといった表情で)うん」
大貴「え?」
英治「(目を見開く)え?」
大貴「え、なに、どういうこと?」
英治「あ、いや……」
  明らかに動揺している英治。
遥香「英くん」
  真剣な面持ちのまま、英治のももを軽く小突く遥香。
英治「ああ、うん」
  英治、深呼吸をして、
英治「あんまり驚かないでくれよ?」
大貴「だからなんだよ」
英治「実は……遥香さんと……付き合ってるんだ」
  大貴、口の中の物を飲み込む。
大貴「……」
英治「もう一年くらいになる。真剣に、交際させてもらってる」
大貴「……」
英治「それで……結婚を……したいと思ってるんだ」
大貴「……あ、うん、ごめん、なに? あんま聞いてなかった」
英治「(呆れ顔)だから……俺と遥香さんが付き合っていて……結婚をね」
大貴「ふーん」
  大貴、刺身を箸でつまみ、口に入れる。
遥香「大貴、話を……」
大貴「あ、今日、モモの散歩行った?」
遥香「……え?」
  庭の方を見る大貴。
大貴「あいつおばあちゃんになったからなあ……。あれ? モモって俺がいくつのときから飼ってるんだっけ?」
遥香「ちょっと、大貴……」
英治「大貴」
  大貴、まだ庭の方を見つめている。
大貴「そろそろ散歩コース短くした方がいいんじゃない?」
英治「……大貴」
  大貴、無視。
英治「大貴!」
大貴「(やっと振り返る)ん?」
英治「……俺は……遥香さんと」
  ダン!
  突然、ちゃぶ台を叩く大貴。
  英治と遥香、体をこわばらせる。
  大貴、立ち上がり
大貴「遥香って呼ぶなって言ってんだろ、気持ち悪い」
  大貴、出て行ってしまう。
二人「……」

10亀山家・前
  大貴が玄関から出てくる。
  ポケットからタバコとライターを取り出し、火をつけようとする……が中々つかない。
大貴「くそ!」
  大貴、ライターを投げてしまう。
  大貴の携帯が鳴る。
大貴「んだよ、こんなときに……」
  携帯を取り出し、出る。
大貴「あ?」
幹雄の声「あ、大貴? お前こっち帰ってきてるんだろ? 今理沙とかとカラオケいるんだけどこねえ?」
大貴「今それどころじゃねえんだよ……」
幹雄の声「えー、来いよ~」
大貴「行かねえよ、歌う気分じゃないんだよ!」

11カラオケ・外観
大貴の声「あああああああああ」
  大貴の野太いデスボイスが聞こえてくる。

12同・103号室
  頭を激しく振りながら大貴がデスボイスで歌っている。
  周りには大貴と同年代の男女三人(幹雄、和馬、理沙)がマラカスやタンバリンを手に持ったまま、大貴を見ている。
  呆気にとられている様子の三人。
理沙「なんか、大貴荒れてない?」
  大貴の声にかき消されないよう、隣に座る幹雄の耳に口を近づけて話す理沙。
幹雄「だな」
和馬「彼女寝取られでもしたんじゃねえの?」
  きっ! と和馬を睨む大貴。
大貴「(マイクを通して大声で)彼女じゃねえ! 彼女以上だ!」
三人「お、おう……」
大貴「うおおおおおおおお!!!!!」
  歌い上げる大貴。
理沙「ねえ、彼女以上ってなに?」

13夢
  公園の砂場で遊ぶ大貴(3)とそれを微笑みながら見ている遥香(25)と四郎(26)。
  砂山を作っている大貴。
  四郎がふっと消える。
  大貴、驚き、不安そうに遥香を見つめる。
  遥香、大貴に微笑む。
  大貴、寂しそうにしながらも砂山作りを続行。
  公園に英治(22)が入ってくる。
  遥香と手をつなぐ英治。
  遥香、照れながら英治に微笑む。
大貴「お母さん」
  大貴の言葉は遥香に届かない。
  手を繋いで歩き出してしまう遥香と英治。
大貴「お母さん!」
  大貴、追いかける。
  しかし、追いつけない。
大貴「お母さん!!!」

14カラオケ・103号室
  ガバっと起き上がる大貴。
  息切れし、汗をかいている。
  幹雄、和馬、理沙がソファで寝ている。
理沙「なにー?」
  目をこすりながら起き上がる理沙。
大貴「いや……」
理沙「今何時?」
  理沙、散らかったテーブルの上から携帯を探す。
  腕時計を見る大貴。
  八時十五分。
大貴「! ヤバイ、いかないと!」
  急いで身支度を整え始める大貴。
理沙「大丈夫だよ、ここフリータイム、九時までだから」
大貴「九時から面接があるんだよ! うちにスーツとりに帰らなきゃいけないし……」
理沙「ふーん」
  理沙、テーブルに置いてあったポップコーンをパクリ。
理沙「大貴って東京で就職するもんだと思ってた。なんでこっちなの?」
大貴「なんでって……」
  理沙の言葉に動きを止める大貴。
大貴「……」
  ソファに横になる。
理沙「あれ? 寝るの? 面接は?」
大貴「やっぱ、いかない」
理沙「ふーん」
  大貴の横に座り直し、頭をポンポンと撫でる理沙。
理沙「ねえ、今度東京連れてってよ」
大貴「あーうん……」

15亀山家・前(夕)
  トボトボと歩いて帰ってくる大貴。
  玄関の前までやってきてため息をつく。
  ドアノブに手をかけ、中に入っていく。
 
16同・居間
  大貴が入ってくる。
  奥の台所で料理をしている様子の遥香。
  後ろ姿のみが見える。
大貴「(小さく)ただいま」
  遥香には聞こえない。
大貴「(先程より大きな声で)ただいま!」
遥香「(振り返り)あ……おかえり」
大貴「んー……」
遥香「もう夕飯できるから」
大貴「わかった」
  遥香を見つめる大貴。
    ×    ×    ×
  ちゃぶ台の前に座る大貴。
  ちゃぶ台の上には、二人分の夕飯が並んでいる。
大貴「……」
遥香の声「お味噌汁よそっちゃうから先食べてて」
大貴「……一緒に食べようよ」
遥香の声「……うん、わかった」
  味噌汁をのせたお盆を持った遥香が居間に入ってくる。
  遥香、自分の前と大貴の前にお味噌汁を並べる。
  遥香、大貴の対面に座る。
大貴「いただきます」
遥香「はい、いただきます」
  数秒、黙って食事をする二人。
  大貴、肉じゃがを食べ、
大貴「うん、おいしい」
遥香「よかった」
  微笑む遥香。
大貴「うん……おいしい」
  大貴、味噌汁をすする。
大貴「これも……」
  味噌汁を見つめる大貴。
  味噌汁の具はあさり。
大貴「……」
  大貴、味噌汁を置く。
大貴「……俺、やっぱり母さんと英治のこと受け入れられないわ」
遥香「……」
  遥香、持っていた食器と箸を置く。
遥香「……そうよね、いきなりそんなこと言われたらびっくりするよね」
大貴「……うん」
遥香「時間をかけて、少しずつ、許してもらえるよう努力するね」
  大貴、ため息をつき、
大貴「時間が解決するような問題じゃないから」
遥香「……そっか……」
  俯いてしまう遥香。
大貴「ダメだ、俺、もう夕飯いいや。部屋戻る」
  大貴、立ち上がり、居間から出ていく。
遥香「ごめんなさい……」
  
17同・廊下
  歩く大貴。
  廊下の途中にある仏間が目に入る。
  仏間に入っていく。

18同・仏間
  仏壇の前に立つ大貴。
  四郎の写真が置いてある。
大貴「どうすんだよ、父さん……」
 大貴、乱暴に四郎の写真を倒す。

19亀山家・外観(夜)
麻衣の声「へえ~」

20同・大貴の部屋
  大貴がベッドの上に座り、電話をしている。
大貴「へえって。めっちゃキモイだろ」
麻衣の声「大貴のお母さんっていくつだっけ?」
大貴「今年で四十四……」
麻衣の声「若いねえ」

21コーポ所山・206号室
  部屋着の麻衣が足の爪にマニキュアを塗りながら電話をしている。
  笑顔。
麻衣「いいんじゃん? 四十四とか今の時代、まだまだイケル歳でしょ」
大貴の声「そういう問題じゃないだろ」
麻衣「私はお義母さんの気持ち応援したいけどなあ。大くん、マザコン気味なところあったから、これを機に直してくれると私的にも嬉しいし」

22亀山家・大貴の部屋
大貴「……当事者じゃないからって適当なこと言うなよ」
麻衣の声「へ? 思いっきり当事者なんですけど」
大貴「は?」

23コーポ所山・206号室
麻衣「だってその英治って人、私の義理のお父さんになるわけでしょ」
  照れるように笑う麻衣。
  大貴、喋らない。
麻衣「ん? 大くん?」

24亀山家・大貴の部屋
大貴「……笑えない」
麻衣の声「え、ごめん……」
大貴「言っとくけど。俺、結婚とかまだ全然考えてないから。変なタイミングで変なこと言うなよ」

25コーポ所山・206号室
麻衣「はあ? なにそれ、結婚の話が『変なこと』なわけ?」
 マニキュアを塗る手を止める麻衣。

26亀山家・大貴の部屋
大貴「……」
麻衣の声「なんかすごく気分悪い」
大貴「……悪かった」
麻衣の声「もういい。私今日もう寝る。おやすみ」
  電話が切れる。
  携帯を見つめる大貴。
大貴「……ああ、もう……」
  ベッドに倒れこむ大貴。

27亀山家・居間(朝)
  台所で遥香が食器を洗っているのが見える。
  ジャージ姿の大貴が居間に入ってくる。
遥香「(食器を洗いながら)おはよう」
大貴「……おはよう」
遥香「ご飯食べる?」
大貴「母さん」
遥香「なに?」
  遥香、振り返る。
  大貴が遥香を見つめている。
大貴「ドライブにいこう」
遥香「……ん?」

28亀山家・駐車場
  軽自動車の運転席に座る大貴。
  遥香も乗り込んでくる。
遥香「大ちゃんの運転でドライブなんてはじめてじゃない?」
  微笑む遥香。
大貴「ちゃんとシートベルト締めろよ」
遥香「はいはい」
  シートベルトを締める遥香。
大貴「よし……じゃあ、いこうか」
  車が動き出す。
  駐車場出口の柱ギリギリのところを走る車。
遥香「あ、こっちギリギリだよ」
大貴「(少し焦って)わ、わかってるって……」
遥香「危なっかしいなあ」
大貴「大丈夫だから」
  車が道路に出る。

29国道四一四号
  信号で止まっている大貴と遥香を乗せた車。
遥香「どこいくの?」
大貴「んー……」
  ハンドルにもたれかかり、しばし悩む大貴。
大貴「小さい頃さ、よく連れてってもらった公園。ほら、でっかい滑り台がある」
遥香「ああー、せせらぎ公園かな?」
大貴「そう、そこ。そこ行こう」
遥香「いいけど」
  思わず笑ってしまう遥香。
大貴「途中でコンビニよってさ、おにぎりとか食べようよ」
遥香「いいね」
  信号が青に変わる。
  車が動き出す。
遥香「でもなんで急に公園?」
大貴「ん? んー、懐かしいから?」
遥香「浸りたくなっちゃったの?」
大貴「まあ」
遥香「ふーん」
  しばし、沈黙。
  赤信号により再び止まる車。
大貴「なんか」
遥香「ん?」
  大貴の方を向く遥香。
大貴「思い出して欲しくて。俺と母さんだけでも、幸せだったじゃん」
遥香「幸せ……」
大貴「うん」
遥香「今も幸せなんだけどな……」
大貴「……あ、青だ」
  車が動き出す。

30コンビニ駐車場
  大貴がタバコを吸っている。
  コンビニから遥香が出てくる。
遥香「おにぎり買ってきたよ~」
  大貴、遥香の方をみて、
大貴「ありがとう、金払うよ」
遥香「いいから。いつも払わないでしょ、どうしたの」
大貴「まあ……そうだけど……」
  大貴、タバコの火を消す。
遥香「お金払わなくていいから、タバコやめなさい」
  遥香、助手席に乗り込む。
大貴「うーん」
  大貴も車に乗り込む。
  大貴、鍵を回す。
  しかし、エンジンがかからない。
大貴「あれ?」
  もう一度鍵を回してみる。
  しかしかからない。
大貴「おかしいな」
遥香「どうしたの?」
大貴「エンジンがかからない」
遥香「え? なんでだろう?」
  大貴、ガスメーターを見る。
大貴「うわ、ガス欠だ……」
遥香「うそ、急に? 昨日いれたばっかりだけど」
大貴「ちょっと俺、ガソリンスタンドまで走って行ってくるわ」
遥香「え!?」
  驚き、大貴の方を見る遥香。
  大貴は既にドアを開け、外に出てしまっている。
大貴「母さんはここにいて!」
遥香「ええ……」

31ガソリンスタンド・外観
  大貴が必死に走ってやってくる。

32コンビニ・駐車場
  車の横に立つ遥香。
  誰かに電話をかけている。
  通りのむこうに何かを見つける遥香。
遥香「あ、きた」
  遥香、笑顔になる。
遥香「おーい」
  手を振る。

33道路
  ポリタンクを持って歩く大貴。
  重たそう。
  大貴の額から汗がつたう。
大貴「……ん?」
  大貴、通りのむこうのコンビニを見る。
  大貴の軽自動車の横に先程までなかったワゴン車が止まっている。

34コンビニ・駐車場
  遥香と英治が仲睦まじげに話している。
英治「公園かあ。いいなあ、俺も行きたいな」
遥香「仕事は?」
英治「今日はもう終わりでいいって」
  ポリタンクを持った大貴が不満げな顔で近づいてくる。
遥香「(大貴に気づき)あ、大貴!」
英治「おお。重かったでしょ」
  ぎこちないながらも笑いかける二人。
大貴「……ああ」
  大貴、ポリタンクの蓋を開け、ガソリンを入れようとする。
英治「あ、ガス欠じゃなかったよ。エンジントラブル。もう直しといたから動くよ」
大貴「……そう」
遥香「自動車整備士はこういう時、便利よねえ」
英治「(笑って)便利ってなに」
  大貴、それでもガソリンを入れようとする。
英治「ああ、ほぼ満タンだから入れなくて大丈夫」
大貴「……」
  大貴、乱暴にトランクを開け、ポリタンクをつみこむ。
遥香「大貴~? 『ありがとう』でしょ?」
大貴「うるさいな……」
遥香「なにそれ。お礼はちゃんとしなさいっていつも……」
大貴「(怒声)ありがとう!」
  大貴の声の大きさに呆気にとられる遥香と英治。
英治「あ、いや、いいんだ、うん……」
  数秒沈黙。
  大貴、車にもたれかかりうなだれる。
英治「あー……でさ、遥香さんとも話してたんだけど、俺、今日仕事終わりだから一緒に公園……」
大貴「……」
英治「……とかいけたらいいなあとか、思っちゃったり、思ってなかったり……?」
  大貴、うなだれたまま。
遥香「大貴?」
  うなだれたまま二人をちらりと見たあと、顔をあげ、もう一度二人を見つめる。
大貴「……」
  英治、ひきつった笑顔を大貴に向ける。
大貴「ごめん、ガソリンスタンドの途中で友達にあって、これから遊びいくことになっちゃったんだ」
英治「え?」
大貴「公園は二人で行ってきなよ。英治も車で来てるみたいだしさ」
遥香「友達……? だれ?」
大貴「んー、なんか高校の頃の……」
  大貴の声が、聞き取れないほど小さくなっていく。
  大貴、運転席に乗り込む。
遥香「大貴」
  エンジンをかける大貴。
  窓を開ける。
大貴「二人でよろしくやってくれよ、たく……」
 大貴、車を走らせ、行ってしまう。
 残された二人。
二人「……」
  大貴の車を目で追う。
  悲しそう。
遥香「あー、ダメだ、泣きそう」
英治「遥香さん……」
  遥香、英治の胸に顔をうずめる。
  英治、遥香を抱きしめる。
英治「大丈夫、大丈夫……」

35道路
  走る大貴の軽自動車。
  ミラーで二人を見る大貴。
大貴「……気持ち悪……」

36裏通り(夕)
  通りの路肩に大貴の軽自動車が止まっている。
  携帯の呼び出し音が鳴り響いている。
  車内で、ハンドルにうなだれながら電話をかけている大貴。
  片手にはビール缶が握られている。
  電話が繋がる。
麻衣の声「……もしもし」
大貴「麻衣……」
麻衣の声「ちゃんと謝る気になった?」
大貴「麻衣ぃ……」
麻衣の声「なに。もしかして酔ってる?」
大貴「酔ってない」
  ビールを一口飲む大貴。
麻衣の声「そう……」
大貴「俺って器ちいさいのかなあ」
麻衣の声「お義母さんのこと?」
大貴「……うん」
麻衣の声「うーん、大貴の気持ちもわかるんだけどねえ……」
大貴「……だろ?」
麻衣の声「でも」
大貴「え?」
麻衣の声「認めてあげるのが……大人なのかもね」
  顔をあげる大貴。
大貴「大人かあ……」
麻衣の声「うん」
大貴「……大人にならなきゃいけないのかな」
  ぼーっと外の景色を見る大貴。
麻衣の声「うーん……」
大貴「え」
麻衣の声「ん?」
  信号で止まっている英治の車が見える。
  遥香と英治が乗っている。
  信号が青に変わり、車が動き出す。
大貴「え、いや、嘘だろ……」
麻衣の声「なに? どうしたの?」
  英治の車がラブホテルの駐車場へ入っていく。
  大貴、クラクションを鳴らす。
麻衣の声「大貴?」
  一心不乱にクラクションを叩く大貴。
  駐車場に入った車はもう見えない。
  それでも鳴らし続ける大貴。
麻衣の声「一回落ち着いて、大貴!」
  大貴、クラクションを鳴らすのをやめる。
麻衣の声「……大貴?」
大貴「俺……別に大人にならなくてもいいや」
  セレクトレバーを操作し、アクセルをふむ大貴。
  車が動き出す。
  携帯から手を離す大貴。
  蛇行運転をする大貴の車。
  大貴、ビールを飲み干し、缶を放る。
  目がイっている。
  二台の車とぶつかりそうになる。
  ラブホテルに近づいていく。
  ドカン!!
  時速20キロほどの速度の大貴の車が、ラブホテル駐車場入口の柱にぶつかる。
  白い煙を出す大貴の車。
英治「大丈夫ですか!!」
  英治が走ってやってくる。
  遥香も心配そうな顔でそれについてくる。
遥香「事故!? ……ってその車……」
英治「え、あ……」
  運転席側のドアが開く。
  大貴がフラフラの足取りで車から出てくる。
  小さく唸り声を上げている大貴。
英治「大貴……」
遥香「大ちゃん……」
  大貴、顔をあげ、二人を見つめる。
大貴「……俺は……あんたらのセックスを……みとめねえ……」
  大貴の額から一筋の血。
大貴「キモイ! あんたらキモイよ! すんげーキモイ!!」
英治「だ、大貴……」
大貴「だっておかしいだろ! 同級生と自分の母親がラブホに入っていくなんて!」
英治「大貴! 血!」
大貴「え?」
  大貴、自分の額を触る。
  それがきっかけで傷口が開いたのか、ドクドクと血が溢れ出す。
大貴「あれ?」
  ばたりと倒れる大貴。
  遥香、叫ぶ。
英治「大貴! 大貴!」
  大貴に駆け寄る英治。
英治「救急車!!」
遥香「うん! うん!」
  慌ててカバンから携帯を取り出す遥香。
英治「大貴! 大貴、しっかりしろ!」
  大貴を抱き抱える英治。
大貴「くそ……こんなんで死ぬのか」
英治「馬鹿なこと言うな」
大貴「うわー、ここで死んだら邪魔者がいなくなってお前ら結婚しちゃうじゃん。やだー……」
英治「お前に認めてもらうまで結婚しない。お前も含めて家族になりたいんだ」
大貴「……」
  何かを言おうと口を動かす大貴。
英治「なんだ?」
  大貴に耳を寄せる英治。
大貴「……母さんを頼んだ……とか絶対言わねえ、バーカ」
  ガクっと意識を失う大貴。
英治「大貴―――!!」

37病院・大部屋
  頭と右腕に包帯を巻いた大貴が寝ている。
大貴「……ん……」
女の声「あ、大貴」
大貴「う……ん」
女の声「目、覚めた?」
  女性の手が大貴の頬に添えられる。
  大貴、目を開ける。
  視界がぼやけている。
大貴「かあさん……」
女の声「(優しく)……なに?」
大貴「……ん?」
  段々と視界が定まってくる。
  目の前には麻衣。
大貴「……麻衣……」
麻衣「お義母さんは今、着替え取りに行ってくれてるよ」
大貴「え、いや、お前なんでここに……」
麻衣「大貴が事故起こしたっていうからとんできちゃった」
 笑う麻衣。
大貴「そっか……」
麻衣「ちょっと切っちゃっただけで、すぐに退院できるみたいだよ。よかった、大事にならなくて」
大貴「……」
麻衣「よかったあ……よかった、よかった……」
  笑顔が歪み、涙を流す麻衣。
大貴「ごめん……」
麻衣「ばかあ……」
  麻衣、大貴に抱きつく。
大貴「麻衣……」
  病室のドアが開き、ペットボトルを数本抱えた英治が入ってくる。
英治「あ」
  抱き合う大貴と麻衣を見る英治。
英治「あ、飲み物、買ってきて、それで。大貴、目覚めたんだね、あ、俺一回、外出た方が……」
 話しながら振り返り、病室から出ようとする英治。
 しかし、閉まろうとするドアにぶつかり、ペットボトルを落とす。
英治「あ、あーあー……」
  ペットボトルを慌てて拾う英治。
  全て拾い終わった英治が二人の方を見て、
英治「(固い笑顔で)ご、ごゆっくり」
  病室から出ていき、ドアが閉まる。
大貴「……」
麻衣「あ、そうだ……」
  大貴から体を離す麻衣。
麻衣「こんなときにあれなんだけど……ちょっと大貴に付き合って欲しいことあるんだ……丁度病院だし、一人でいく勇気なくて……」
大貴「ん? なに?」
麻衣「あのね……」
  自分のお腹をさする麻衣。

38病院・診察室
医者「おめでとうございます」
  診察室、医者と対面して座る大貴と麻衣。
医者「……お父さん、どうして怪我してるんですか?」
大貴「……え、あ、いや……」
医者「五週目です」
麻衣「そうですか……」
  不安そうな顔で大貴を見る麻衣。
  大貴、心ここにあらずといった表情。
麻衣「……だ、そうですが……」
大貴「あ、うん」
  麻衣を見つめる大貴。
大貴「……」
麻衣「私は産みたい。大貴の赤ちゃん、産みたい」
大貴「……うん」
  沈黙。

39病院・大部屋(夜)
  大貴がベッドの背もたれをあげ、腰掛けている。
  横で、大貴のシャツをたたんでいる遥香。
遥香「明日には退院できるし、よかったね、大怪我じゃなくて」
大貴「うん……」
遥香「私より先に死んだら承知しないから」
  微笑みながらシャツをカバンにつめる遥香。
大貴「……」
  遥香、大貴のTシャツを広げてみる。
遥香「当たり前だけど……おおきくなったねえ……」
大貴「うん……」
  Tシャツをたたみ、カバンに入れる遥香。
大貴「……麻衣が」
遥香「ん?」
大貴「あ、麻衣。俺の……彼女」
遥香「わかってるわよ。いい子ね、あの子。わざわざ東京から来てくれたんでしょ? 大切にしなきゃ」
大貴「うん……。で、その麻衣が……妊娠したって」
  一瞬、遥香の動きが止まる。
遥香「……そう」
大貴「うん」
  遥香、残りの衣類を畳みながら、
遥香「じゃあ、大貴もお父さんになるんだね」
大貴「……そうみたい……」
遥香「そうみたいって。(微笑む)実感わかないわよねえ」
  遥香、たたむ手を止めない。
遥香「大貴がどんな人間になっても、その子がどんな人間に成長しても、その子はこれから一生大貴の子供だからね。一生愛しなさいよ」
大貴「……」
  大貴、遥香を見つめる。
大貴「……俺が父親になって、母さんが英治と結婚しても……俺は母さんの子供?」
  遥香、手を止め、大貴を見つめる。
遥香「(笑顔で)当たり前じゃない」
大貴「……」
  大貴、一筋の涙を流す。
大貴「お母さん……!」
  遥香に抱きつく大貴。
  おいおいと声をあげて泣き始める。
大貴「お母さん……お母さん……!」
  遥香、大貴の頭を優しく撫でる。
遥香「……(笑って)もうちょっと大人にならないとね」
大貴「うん……うん……。だから。これが最後だから、お母さん……」
  大貴のすすり泣く声が病室に響き渡る。

40披露宴会場
  五十人ほどの参列者がいくつかのテーブルを囲み座っている。
  司会の女性がステージ前にマイクを持って立っている。
司会「皆様、お待たせいたしました。新郎新婦の入場です。拍手でお迎えください」
  扉にスポットライトがあてられ、ウェディングドレス姿の遥香とタキシード姿の英治が笑顔で入場してくる。
  拍手喝采。
  ステージから離れたテーブルに座っている麻衣も拍手をしている。
  横に座る大貴も笑顔。
  大貴に抱えられた赤ん坊が泣き始める。
大貴「おーごめんなごめんな、びっくりしたな」
  赤ん坊をあやす大貴。
  テーブルに四郎の遺影が置かれている。
  隣の親類の男(良宏)が大貴に話しかけてくる。
良宏「遥香さん、綺麗だな」
大貴「……はい」
  遥香がステージ中央の席に向かい、大貴に背中を向ける。
大貴「……」
  大貴、微笑む。
  遥香と英治、最高の笑顔。

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