石田家と爆音目覚まし 日常

ツッコミはできるけどギリギリで生きてる兄と、しっかりしているけど騙されやすい妹の、貧乏に負けない日常。
橘ゆづは 70 0 0 08/20
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第一稿

人物
石田圭(21)(22)大学四年生
石田美波(18)(19)大学一年生

〇石田家・リビング(夜)
   小さめの木のテーブルに二種類のピザが食べかけで残っている。
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人物
石田圭(21)(22)大学四年生
石田美波(18)(19)大学一年生

〇石田家・リビング(夜)
   小さめの木のテーブルに二種類のピザが食べかけで残っている。
   扇風機の風にあたりながら、石田圭(21)と石田美波(18)、テーブルを囲んでもぐもぐとピザを食べている。
圭「他に何か、ポテトとかないの?」
美波、ごくっとピザを飲み込んで、
美波「いやいやいや。何そんなのんきなこと言ってんの。ピザが二枚あるのだってね、一枚買うと一枚タダだからだよ?一枚しか買えてないの、実質」
   圭、コップの水を飲んで、
圭「だよなあ。ごめんごめん、つい」
   美波、圭のコップを指して、
美波「この水だってね、今日は水道水じゃなくて2リットルの奥秩父の水だから、超豪華じゃん」
圭「確かに。ありがとな。いろいろ俺のために」
美波、にやりと笑い、
美波「まだあるよ」
   と、立ちあがり、床に置いてあるリュックの中を探る。
美波「あれ?時計、どこやったっけ?」
   圭、美波を見て、
圭「時計?」
美波「あ、あった」
   と、中身の見えないきれいな青い袋にリボンのついた包みを取り出す。
   美波、圭に包みを見せて、
美波「じゃじゃーん。何でしょう?」
   圭、真顔で、
圭「え、今言っちゃってたよね?時計って」
   美波、口をとがらせて、
美波「何でしょう?って言われたらちゃんと考えて!」
圭「(棒読みで)え、なんだろうなあ気になるうー」
   美波、軽く咳払いをする。
美波「では、改めまして。石田圭、ようやく内定獲得おめでとーう!」
   美波、両手でプレゼントを圭に差し出す。
   圭、少し照れながら、
圭「ありがとう、美波」
   と受け取る。
   美波、座って、
美波「さ、早く開けて」
   と圭に詰め寄る。
   圭、包みのリボンをほどいて中身を覗く。
圭「目覚まし?」
   圭、包みから中身を取り出すと、小ぶりで文字盤の大きい、少しレトロなデザインの目覚まし時計。
   美波、残りのピザでこぼれたトマトソースをかき集めながら、
美波「100社も落ち続けた敗因は何だと思う?」
   圭、ばつの悪そうな顔で、
圭「せっかくのお祝いのときにそういうこと言うなよ。あと目が笑ってなくて怖いよ」
美波「面接に遅刻しまくったからでしょ?」
圭「まあ、否定はできないけど。内定もらえたからさ、結果オーライ」
   と、目覚まし時計を美波に見せる。
圭「ありがとな、使うよ」
美波「小ぶりな割にすごい音がして絶対に起きれるらしいよ!店員さんのおすすめ」
圭「へえ」
美波「試しに鳴らしてみてよ」
圭「ここ?」
   と時計を裏返す。
美波「そうそう。まわして」
   美波、時計の裏のねじをまわす。
   カチッと音がする。
圭「あ」
   時計が振動したようにジリリリリリッと大きな音がする。
   美波、ビクッとして、
美波「うわ、びっくりした!」
   圭、腰を抜かしながら、
圭「自分でやったんじゃん」
美波「心臓に悪いよこれ」
圭「……でも確実に起きられそうだし、うん」
   と、大事そうに時計を自分の横に置く。
圭「でもこれ、高くなかった?ピザまでもらっちゃって」
美波「美波ももう大学生になったから、バイトしてるし財布とかもっといいもの買おうと思ってたんだけど……」
と、立ち上がりリビングを出ていく。
   圭、ん?と座ったまま待っていると、美波、大きな壺を抱えて戻ってくる。
美波「これ、買っちゃって」
   圭、目を見開いて、焦る。
圭「え、なにそれ?どうしたの?」
美波「最近新しいサークル入ったって言ったでしょ?友達に誘われて」
圭「ああ、バトミントンだっけ?」
   美波、立って壺を抱えたまま、
美波「すごく一体感のあるサークルで、すぐ仲良くなって」
圭「……売りつけられたのか」
美波「ううん。骨董品を使った投資だって」
圭、立ち上がり美波の肩を持って揺さぶる。
圭「美波、それは騙されてるぞ」
美波「え、これ5万の価値ないかなあ?」
圭「たぶんだけど、ないと思う……」
   美波、しょんぼりする。
美波「どうしよ。人生で初めて騙されちゃった……かも……」
   圭、美波を座らせて、
圭「……大丈夫だ。な?俺がいる。父親が蒸発しても、母親が執行猶予中でも、2人で頑張ってきたじゃないか」
   美波、まだ俯いていて、
美波「……5万……美波の5万……」
   圭、美波の肩を叩き、
圭「まあ、元気出せよ。ピザでも食べて」
   と、テーブルを指すが、ピザは食い尽くされている。

〇石田家・玄関
   コートを着込みリュックを背負った美波、ドアを開ける。
美波「ただい」
   圭、靴を履きながら紙の束をトートバックに押し込んでいる。
美波「どうしたの?」
   圭、息を切らしながら、
圭「締め切りなんだよ、卒論の。3時31分の電車に乗らないと間に合わないから」
   と、足をトントンするが靴がうまくはまらない。
   美波、あきれた様子で、
美波「ああ、またギリギリ」
圭「しょうがないだろ。卒論ってのは結構大変なんだ」
   美波、左腕の腕時計を見ると、3時21分。
美波「あと10分しかないじゃん。駅まで間に合うの?」
圭「走れば何とか?」
美波「自転車乗ってったら?」
圭「自転車は、置く時間とか、鍵かける時間とか……とにかくめんどくさいから!」
美波「足遅いじゃんでも」
圭「火事場の馬鹿力だよ!とにかく、急いでるから!」
   と、走り出す。
   美波、ため息をついて叫ぶ。
美波「ダッシュダッシュ!」

〇石田家・リビング
   美波、カバンを置くとテーブルの上にある白い紙が目に留まる。
美波「ん?」
   美波、テーブルに近づき、紙を持ち上げる。
   大きく『奨学金制度利用者の実態と課題』とあり、『石田圭』と名前が入っている。
   美波、青ざめる。

〇石田家・外
   道路脇に停められた自転車に飛び乗る美波。
   籠はさびついている。
   腕時計は3時25分を指している。
美波「6分。いける」
   美波、ペダルを勢いよく漕ぎ出す。

〇駅前
   自転車を止め、駅に向かって走り出す美波。
   駅前の時計は3時半を指している。

〇駅・改札
   圭、自動改札機の手前でトートバックを探っている。
   圭、定期入れを取り出し、改札を通ろうとする。
美波の声「いしだけーい!ひょうし!」

〇石田家・寝室(朝)
   布団に雑魚寝している圭(22)と美波(19)。
   ジリリリリリ、と大きな音。
   目覚ましを止める圭。
圭の声「何とか卒業した僕は、無事就職。この目覚ましをもらってからというものの、僕は寝坊をしなくなった。おかげで会社にも遅刻せずに行けるから、正直妹には頭が上がらない」
   圭、伸びをして起き上がる。
   隣でぐっすり眠っている美波。
圭の声「絶対に起きれる時計をくれた当の本人は、爆音でも目が覚めない」

<終>

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