新浜恋物語 ドラマ

十月の愛媛県新居浜市は祭りの季節。 新居浜太鼓祭りを題材にした、故郷の物語。 登場人物表 塩崎仙太郎(二五) 主人公。鉄工場勤務。庄内町の太鼓台を担ぐ。 三好恵理(二五) 仙太郎の幼なじみ。現在東京の新聞社に勤務。 中上貴一(二五) 仙太郎の幼なじみ。 近藤啓介(二五) 仙太郎と貴一の元同級生。久保田町の太鼓台を担ぐ。佳乃の旦那。 近藤佳乃(二五) 恵理の親友。啓介の妻。妊娠三ヶ月。 塩崎貫太郎(五〇) 仙太郎の父親。太鼓台の指揮者。 他
辻本央 39 0 0 08/17
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第一稿

◎十五日・新居浜市(昼)
電光掲示の日時は十月月十五日
町中のそわそわした空気。
張り巡らされた新居浜太鼓台祭りのポスター。

◎新居浜市警察・外(昼)
並ばされた機動 ...続きを読む
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◎十五日・新居浜市(昼)
電光掲示の日時は十月月十五日
町中のそわそわした空気。
張り巡らされた新居浜太鼓台祭りのポスター。

◎新居浜市警察・外(昼)
並ばされた機動隊員。
前に立つ隊長。
隊長「いよいよ明日から祭りが始まる。毎年 の事ながら怪我人を出さないよう、今年も 努めて欲しい。」

◎某中学校(昼)
教室で話している女子生徒。
中学生1「明日からだよぉ。」
中学生2「何日に行く?」

◎某高校(昼)
廊下で話をする生徒ら。
高校生3「俺ら久保田のけんのう。」
高校生4「え、大丈夫なん?」
高校生5「新居浜ッ子だったらやっとかんと。 のう。」

◎歩道(昼)
下校中の小学生低学年。
太鼓をかく真似事をする。
小学生1「そーりゃえいやえいや」
小学生2「よいやっさのさっさ」
小学生1・2「そーりゃそーりゃ、そーりゃ そーりゃ!」

◎庄内町太鼓台倉庫・外(昼)
倉庫を開ける仙太郎と貫太郎。
貫太郎「いよいよ明日からじゃの。お前もわ ざわざ工場の仕事有給取ったんじゃけん、 頑張れや。」
倉庫の中に潜んでいた太鼓台が姿を現す。
満足げな仙太郎。
そこへ貴一が走ってくる。
貴一「仙ちゃん!」
仙太郎「おう、貴一。相変わらず肥えとるの う。どした?」
貴一「帰ってくんだって。」
仙太郎「誰が。」
貴一「恵理ちゃんが。」
仙太郎「!」

◎新居浜駅・ホーム(昼)
電車から降り立つ恵理。

◎庄内町太鼓台倉庫・外(昼)
仙太郎「・・・・恵理が・・・」
 胸を押さえる仙太郎。
貫太郎「恵理ちゃん帰ってくんのか。祭りの 時期になるといろんなとこからみんな帰っ て来るのう。んで、いつ?明日か?」
貴一「いや、それがどうも今日らしくて。」
仙太郎「今日だと?」
貴一「佳乃ちゃんのとこに電話があったんだ って。十五に帰るって。」
仙太郎「ほうか・・・。」
貫太郎「よかったのう。勇姿を見てもらえる チャンスじゃ。」
仙太郎「うるさいわ。別に恵理なんかもうし ばらく帰ってこんでも・・・」
恵理「言ってくれるわね。幼なじみが二年ぶ りに帰ってきたっていうのに。」
貴一「恵理ちゃん!」
ゆっくり振り返る仙太郎。
いたのは微笑む恵理。
恵理「ただいま。」
太鼓の音がして、仙太郎の胸を打つ。
太鼓の音と鼓動がシンクロしていく。

タイトルイン

◎三好家・居間(夜)
三好一家と貫太郎ら近所連中が宴会をしている。
貫太郎「しかし、また女っぽくなったな、恵理ちゃん。」
達也「いやいや、まだまだ子供じゃけん。」
貫太郎「そんなこと言って、たっちゃんも気が気でないじゃろ。」
達也「わかるか、貫ちゃん?東京なんかで就職なんかするけん、心配でのう。」
大丸「じゃけど、もう彼氏とかおるんじゃろ。」
恵理「おじちゃん、セクハラ。」
大丸「なんじゃぁ。恵理ちゃんがこんなちっさい時からしっとんぞ。裸なんか見慣れたもんよ。」
淳也「おじちゃん、ホントそれセクハラ。」
恵理「ん?淳也、そういや仙太郎は?」
淳也「まだ来てないよ。姉ちゃん呼んできたら?食うもんなくなっちまうって。」
恵理「うん。」
貫太郎「あ、恵理ちゃん。ついでにお酒持ってきてくれん?台所においとるけん。」
恵理「はいはい。あ。」
テーブルの上の唐揚げを一つくわえる。
昭子「これ、恵理。」
恵理「唐揚げ好きだもん。じゃ、ちょっと行って来ます。」
恵理、出ていく。

◎塩崎家・仙太郎の部屋(夜)
ベッドで仰向けに寝ている仙太郎。
目に入る佳乃と啓介の結婚式の集合写真。
佳乃の隣で笑っている恵理。
ドアノックの音。
恵理が入ってくる。
仙太郎慌てて飛び起きる。
仙太郎「お前ノックの意味は?」
恵理「え?」
仙太郎「返事する前に開けるなよ。」
恵理「何を今更。ねぇ、早くこっち来なよ。ご飯なくなるわよ。あんたの好きな唐揚げもあるし。」
仙太郎「え、あ、おう・・・」
恵理「あ、そうだ。佳乃がね、明日みんなで飲もうって。久々に同級生かき集めるって。行くでしょ?」
仙太郎「おう・・・」
恵理、写真を見付ける。
恵理「あ、佳乃と啓ちゃんの結婚式ん時のじゃん。もう二年前かぁ、早いね。」
仙太郎「お前も二年ぶりなんだぞ。帰ってくるの。」
恵理「あぁ、そうか。この結婚式以来だもんね、新居浜帰ってくるの。」
仙太郎「・・・何しに帰ってきたんだよ。」
恵理「ホントにひどい言われようね。」
仙太郎「祭り見に来たってわけじゃ・・・ないんじゃろ?」
恵理「見に来たわけよ。」
仙太郎「新聞社の仕事休んで?」
恵理「これが仕事なの。月に一回お祭りコラムってあって、来月新居浜太鼓台やるのよ。で、私地元だし、行ってこいってことで。」
仙太郎「あぁ、取材か。」
恵理「そゆこと。ほら、行こ。」
仙太郎「あんまし行きたくないんだよな。」
恵理「何で?」
仙太郎「おじさんたちベロベロになって脱ぎ出すじゃろ?俺とかも無理矢理飲ませるし、疲れるんだよな。」
恵理「明日から太鼓かく仲間でしょ。挨拶挨拶。」
仙太郎、恵理に連れて行かれる。

◎三好家・居間(夜)
顔を真っ赤にして酔っている仙太郎。
仙太郎「塩崎仙太郎、新居浜音頭踊ります!」
はやしたてる中年連中、新居浜音頭を歌い出す。
脱いで踊り出す仙太郎。
隅で見ている淳也。
淳也「誰だよ、連れてきたの。」
廊下から恵理と昭子の声。
気づいて部屋からのぞき込む淳也。
昭子「わかってる。お父さんにはもうちゃんと話してるから大丈夫よ。」
恵理「ありがと、お母さん。どうも私からは言えなくて・・・」
昭子「で、何時頃来るの?」
首を傾げる淳也。

◎十六日・庄内町太鼓台倉庫・外(朝)
太鼓台を用意する衆。
頭を抱えてうずくまっている仙太郎。
貫太郎「だらしねぇなぁ、俺の息子が。」
仙太郎をパシンと叩く貫太郎。
カメラのシャッターを切る恵理。
仙太郎「あ、撮るなよ。」
恵理「取材の許可は取りました。」
仙太郎「ンなの関係な」
貫太郎「(仙太郎を羽交い締めにして)じゃんじゃん撮ってくれ、恵理ちゃん。いえーい。」
中年連中がピース。
撮る恵理。
大丸「おい、仙太郎。お前今日は遊んでこいや。」
仙太郎「え。」
貫太郎「貴一も今日と明日は仕事で最終日しか出んって言っとったけんのう。今日明日は引くだけじゃし。」
達也「恵理も行って来い。」
顔を見合わす仙太郎と恵理。

◎一宮神社前(昼)
歩道には多くの出店。
人も多い。
恵理「いやぁ、わくわくするよね祭りの雰囲気って。特にこの新居浜太鼓祭りはさぁ。まぁ祭りの三日間、小学校から高校まで休みになるんだから盛り上がり方が違うわよ、やっぱり。あ、神社寄っていい?写真。」
仙太郎「おう。」

◎一宮神社・境内(昼)
賽銭を入れて手を合わせる恵理。
隣で何もしない仙太郎。
仙太郎「何拝んでんだ?」
恵理「十八日の最終日の宮入に、仙太郎が死にませんようにって。っていうか、あんたもお願いしておきなさいよ。怪我するわよ。」
仙太郎「縁起でもないこと言うなよ。初詣で充分おてて合わせました。」
恵理「ふぅん、初詣・・・彼女と?」
仙太郎「な、何で知ってんだよ。」
恵理「・・・言ってみただけだったんだけど。」
仙太郎「・・・・」
不機嫌に階段を下りる仙太郎。
後を追う恵理。
恵理「で?」
仙太郎「とっくに別れました。」
恵理「ふられたんでしょ?」
仙太郎「(振り返って)そうです、ふられました。仙太郎君て思ってたよりつまんないよね、あんまり笑わないし~とか言われてとっととふられました!」
恵理「仙太郎、怖い。」
仙太郎「腹が減っとんじゃ!」
恵理「唐揚げ買ってくる。そこの肉屋の。」
仙太郎「!・・・・・」
神社の横手から出ていく恵理。
見送って石に座る仙太郎。
仙太郎「・・・唐揚げ、か。」
数分後、唐揚げと駄菓子を抱えて走ってくる恵理。
唐揚げを受け取る仙太郎。
仙太郎「・・・何買ってきたんだよ。」
恵理「あぁ、つい懐かしくて。ほら肉屋の斜め前の駄菓子屋。小学生の時たまにいったじゃん。まだあったんだね。」
仙太郎「ったく。行こうぜ。祭りの楽しみは出店だろ。」
恵理「うん。」
恵理の手を引っ張る仙太郎。

◎綿飴出店(昼)
綿飴を買う。

◎型抜き出店(昼)
型抜きに熱中する仙太郎と恵理。

◎ヨーヨーすくい出店(昼)
すくう仙太郎。
糸が切れる恵理。

◎三好家・居間(夕方)
寝転がって天気予報を見ている淳也。
台所では昭子が夕食の支度をしている。
天気予報の画面は台風情報。
淳也「明日の夜来そうだな。最終日のお宮入大丈夫かのう。」
昭子「え?」
淳也「台風十九号。いつの間にそんなに来たんだ?」
昭子「あんた暇なら手伝ってちょうだいよ。」
淳也「・・・ねぇ、母さん。」
昭子「ん?」
淳也「昨日姉ちゃんと何話してたん?」
昭子「あぁ、聞いとったん?」
淳也「いや、あんまし聞いてはないけど・・・誰か来んの?」
昭子「うん、実は── 」
淳也「・・・えっ」

◎通り沿いのたこ焼き出店(夕方)
買って食べている仙太郎と恵理。
通りに太鼓台がやってくる。
響く太鼓の音と囃子。
はしゃぐ恵理。
隣で恵理の横顔を見る仙太郎、胸を押さえる。
鼓動と太鼓の音が同調していく。
仙太郎「・・・恵理、俺」
恵理「ねぇ!小学校行ってみていい?」
仙太郎「・・・おう。」

◎小学校・正門(夕方)
閉まっている門を乗り越える仙太郎と恵理。
恵理「怒られない?」
仙太郎「見つからんかったらな。」

◎同・運動場(夕方)
運動場に出る仙太郎と恵理。
仙太郎は丸太に腰を掛ける。
恵理はボーっと運動場を見ている。
仙太郎「・・・どうした?」
恵理「ううん。プール新しくなったんだね。」
仙太郎「ん?あ、本当だ。」
恵理「運動場ってこんなに小さかったかな・・・」
仙太郎「俺たちがでかくなったけんのう。」
恵理「あの築山も、小学校の時はホント大きくて高くて・・・登るの楽しかったなぁ。」
仙太郎「登るか?」
恵理「子供じゃないんだから。」
仙太郎「・・・そっか。そうだな。」
恵理「二年前来たときは結婚式出るだけだったからさ、あんまり街とか見てなかったけど・・・ほとんど変わってなくてホッとした。」
仙太郎「変わってない?」
恵理「うん。街もだけど、人も。もちろん仙太郎もね。」
仙太郎「・・・」
恵理「相変わらず馬鹿。」
仙太郎「殴るぞ。」
恵理「きゃああ。あはははは。」
仙太郎「・・・・」
恵理「初恋だった人が、変わらず馬鹿でいてくれるたのは、嬉しかったよ。」
仙太郎「へっ・・・・恵理、俺」
恵理「げっ!飲み会の約束もうすぐだよ。急がないと。行こう、ほら。」
仙太郎「・・・・おぉっ!」

◎居酒屋(夜)
すでに飲んでいる貴一、啓介、佳乃、その他の同級生たち。
貴一、啓介、佳乃のテーブル。
佳乃はオレンジジュースを飲んでいる。
貴一「啓ちゃんは明後日かくんか?」
啓介「ああ。かきくらべ、お前んとこの庄内には負けんけんのう。」
貴一「俺らだって久保田には負けんけん。」
佳乃「二人ともあんまし無理せんでねぇ。あ、でも一番無理しそうなんは仙ちゃんじゃね。」
啓介「ほうじゃのう。」
笑う三人。
ちょうど仙太郎と恵理が入ってくる。
啓介「恵理、久しぶり!」
佳乃「恵理!」
恵理「佳乃、啓ちゃんも久しぶり。」
仙太郎と恵理、席に着く。
テーブルの上の唐揚げはもうほとんどない。
仙太郎「なんだよ、もう食っとるか。おっちゃんザンキちょうだい。」
貴一が仙太郎と恵理のコップにビールを注ぐ。
貴一「乾杯しよ、乾杯。」
恵理「あ、佳乃ビールは?」
佳乃「あ、うん。実はね・・・」
恵理「え。(啓介を見る)」
啓介「うん。」
仙太郎「え。(佳乃を見る)」
貴一「俺もさっき聞いてびっくりよ。」
仙太郎・恵理「ご懐妊?」
唐揚げが運ばれてくる。
あっけに取られている仙太郎、恵理。
仙太郎、我に返って立ち上がる。
仙太郎「みんな、佳乃と啓介がお母さんとお父さんになるんじゃと!乾杯じゃ、乾杯!」
同級生たち「おぉぉぉぉぉぉ!」
仙太郎「おら、啓介、佳乃も立って。では、佳乃のおめでたに、かんぱーい!」
全員「かんぱーい!」
いっきする面々。
座る仙太郎、啓介、佳乃。
仙太郎「しかし、すっげぇよな。悪さばっかりしてたお前がよ、お父さんって。」
貴一「信じられんよなぁ。」
啓介「うるさいわ。俺は役所で出世街道爆進中なんじゃけんのう。」
仙太郎「馬鹿言いよるわ。んで、何ヶ月なん?」
佳乃「五ヶ月よ。」
仙太郎「ほう、あんまし目立っとらんのう。」
貴一「男?女?」
佳乃「まだわかんないわよ。・・・恵理?」
恵理「あ、ん?」
佳乃「どしたの、ぼーっとして。」
恵理「あぁ、うん。みんな変わらないようで変わってるのかなぁって、思って。」
仙太郎「・・・・」
佳乃「そりゃ、みんな歳はとっていくけんねぇ。恵理だってそのうち結婚して」
仙太郎がビールをこぼす。
貴一「(拭きながら)あーあ、何まきよんな(こぼしてるんだよ)。」
啓介が仙太郎にビールを注ぐ。
佳乃「そのうち子供も産んで」
仙太郎がビールを噴く。
啓介にモロにかかる。
啓介「・・・」
貴一「きったねぇなぁ!」
恵理「何やってんの、馬鹿ぁ。」
騒ぎの収まらない飲み会の席。
笑顔の耐えない同級生。
一瞬、恵理から笑顔が消える。
見逃さなかった仙太郎。
すぐに何事もなかったように笑顔になる恵理。
仙太郎は気にする。

◎道(夜)
帰り道。
仙太郎と恵理が並んで歩く。
仙太郎「疲れたか?」
恵理「ううん。楽しかったぁ。」
仙太郎「ならええけど。」
恵理「ん?」
仙太郎「ちょっと上の空だったけん、お前。」
恵理「あ・・・うん。」
仙太郎「ん?」
恵理「知らない間に、時間て過ぎちゃうんだなぁって。それで、いい意味でね、みんな変わっちゃうんだなって。成長するって事で言えば嬉しいことなんだけど、ほら、私は地元離れた人間でしょ。だから大学で上京した七年前で私にとってのこの場所の時間は止まってたんだよね。」
仙太郎「恵理・・・」
恵理「二年前もちらっとは思ったけど・・・今回はひしひしと感じました。」
仙太郎「・・・変わったのは・・・」
恵理「え。」
仙太郎「・・・いや。帰ろうぜ。」
二人並んで帰る。

◎仙太郎の部屋(夜)
電気の消えた部屋。
ベッドで仰向けになっている仙太郎。
再会した今日までの恵理を回想する。

◎回想
帰ってきた恵理。
恵理「ただいま。」
神社での恵理。
恵理「唐揚げ買ってくる。」
小学校での恵理。
恵理「子供じゃないんだから。」
帰り道の恵理。
恵理「時間て過ぎちゃうんだなぁって。」

◎仙太郎の部屋(夜)
回想終わる。
体を起こし、写真の中の恵理を見つめる。
いきなりドアが開く。
入ってきたのは淳也。
淳也「仙太郎!」
仙太郎「おわっ・・・ったく、お前ら兄弟はマナーって言葉を知らんのか?」
淳也「お前知っとったか?」
仙太郎「無視かよ。何が?」
淳也「明日来ることだよ。」
仙太郎「だから何が?台風?」
淳也「彼氏だよ。」
仙太郎「・・・誰の?」
淳也「姉ちゃんのだよ!」
愕然とする仙太郎。
外は風が吹き始めて木々が鳴る。

◎十七日・市役所前大通り(昼)
風が出ている。
庄内町の太鼓台を引いて歩く庄内町衆。
昨夜のショックでぼうっとしている仙太郎。
仙太郎の背中を叩く貫太郎。
貫太郎「今日はたっちゃんがおらんのんじゃけん、しっかりしろや。」
仙太郎「・・・・おっちゃん、何で来んの?」
貫太郎「あぁ、何か客が来るけんて。」
仙太郎「客・・・」
大丸「なんだぁ、仙太郎よ?」
仙太郎「うわ、酒くせぇ・・・」
大丸「んなこっちゃぁ明日の宮入には参加させんぞぉ!命がけじゃけんのう、かきくらべはぁ。」
仙太郎「わかっとる・・・わかっとるけん。」

◎三好家・居間(昼)
達也と昭子、恵理と横田が向かい合う。
挨拶をする横田。
返す達也と昭子。
居間の外で様子を窺う淳也。
一生懸命に挨拶を繰り返す横田。

◎同時刻・小学校横手の通り(昼)
風が強くなってくる。
太鼓台を険しい表情で引く仙太郎。
鳴り続ける太鼓。

◎同時刻・三好家・居間(昼)
和やかな雰囲気。
笑顔を浮かべる恵理。

◎同時刻・小学校横手の通り(昼)
苛立ちを隠すように囃子を叫ぶ仙太郎。
仙太郎・他「ちょぉさぁじゃぁ」
仙太郎「ちょぉぉうさじゃぁ!」
鳴り続ける太鼓。

◎庄内町太鼓台倉庫・前(夕方)
太鼓台を収納する仙太郎と貫太郎たち。
ため息をつく仙太郎。
貫太郎が一発叩く。
貫太郎「何があったか知らんが、明日はホントにマジにやれよ。ま、朝から酒かっくらってから出るからハイにはなるだろうけどな。」
仙太郎「わかっとるわ。」
貴一が走ってやってくる。
貴一「仙ちゃん!」
大丸「貴一、一杯やっていけや。明日の景気付けじゃ。」
貴一「え、いや、俺は。」
仙太郎「何だよ、貴一。」
貴一「あ、うん。恵理の婚約者が」
仙太郎「知っとる。」
貴一「え、そうなん?け、けどお前・・・」
そこへ、恵理が横田を連れてやってくる。
恵理と横田の姿を目の当たりにした仙太郎。
変な空気が流れる。
戸惑う貴一。
貴一「あ、あれ、恵理ちゃん。どうしたの?」
恵理「彼が太鼓台見たいって言って。」
貴一「あ、か、彼。」
恵理「あ。」
貫太郎「恵理ちゃん、もしかしてそいつは・・・」
横田「あ、初めまして。恵理さんとお付き合いさせていただいてる横田信之と言います。来年の春結婚するので、ご挨拶に・・・」
雷が光り、鳴る。
突然降り出す雨。
貫太郎「シャッター閉めろ!ほら、恵理ちゃん、あんた(横田)も車入って。」
仙太郎以外は車へ走る。
立ちすくむ仙太郎。
貫太郎が車から叫ぶ。
貫太郎「何やっとんじゃ、仙太郎!帰るぞぉ!」
仙太郎「先帰れ!走って帰るけん!」
貫太郎「馬鹿か、早く・・・」
貴一「おじさん。仙ちゃんは俺の車で連れて帰るけん、先帰っとって。」
貫太郎「お、おう。」
車を出す貫太郎。
続いて横田。
助手席には心配そうな恵理。
帰っていく恵理を見つめる仙太郎。
車が見えなくなると、肩を落とす。
傘が差し出される。
貴一だった。
貴一「帰ろう。」
仙太郎「・・・ホントお前って気が利くな。」
貴一「こんだけ濡れてたら、意味ないかもしれんけどのう。」
仙太郎「ほうじゃのう。」
苦笑いを浮かべる仙太郎。

◎貴一の車内(夕方)
激しい雨の中、運転する貴一。
助手席で外を見る仙太郎。
貴一「明日中止にならんかったらええのう。」
仙太郎「ん。」
貴一「・・・明日は朝から飲まされるで。おじさんらも好きじゃけん。」
仙太郎「ん。」
貴一「啓ちゃんもはりきりよったけんのう。」
仙太郎「ん。」
貴一「・・・言わんのんか?」
仙太郎「・・・・」
貴一「恵理ちゃんに。」
仙太郎「・・・・」
貴一「ずっと好きだったんじゃろ?」
仙太郎「・・・・」
貴一「・・・すまん。」
仙太郎「・・・・ん。」

◎三好家・外観(夜)
騒ぐ声。

◎同・居間(夜)
騒いでいる貫太郎と大丸と達也。
飲まされている貴一と横田。
席を立つ恵理。
恵理「ちょっとごめんね。」

◎塩崎家・玄関(夜)
台所へあがる恵理。
富士子が三好家に持っていく料理(唐揚げ)をこしらえている。
恵理「おばちゃん、仙太郎は?」
富士子「あ、もう風呂から出たはずだから、部屋じゃない?」
恵理「はーい。」
恵理は仙太郎の部屋へ。

◎同・仙太郎の部屋(夜)
頭にタオルを被ったままベッドに座っている。
写真の中の恵理を見つめ続ける仙太郎。
ドアノックの音。
恵理が入ってくる。
立ち上がる仙太郎。
仙太郎「っ・・・・」
何も言わずに再び座る仙太郎。
恵理「ノックの意味は?って言わないの?」
仙太郎「・・・」
恵理「どうしたの?変だよ、太鼓台から帰ってから。」
仙太郎「・・・お前だって変だろ。東京から帰ってから。」
恵理「え?」
仙太郎「東京から帰ってきて、変わったっつってんだよ。」
恵理「・・・何よそれ、私のどこが変わったっていうのよ。」
仙太郎「全部だ、全部!」
恵理「何なのよ・・・ちゃんと言ってよ!」
仙太郎「何かお前・・・場所だけじゃなく、遠くに行っちまった感じがすんだよ。」
恵理「・・・」
仙太郎「都会で暮らしてんだ、当然だよな。言葉もキレイになっとるし、方言なんかでんじゃろ。」
恵理「何子供みたいなこと言ってるのよ。そんなこと言うなら、みんなだって変わってるじゃない。社会人になって、佳乃なんかお母さんに・・・」
仙太郎「そういう時間の問題じゃないじゃろ!」
恵理「時間の問題よ!」
仙太郎「・・・。」
恵理「帰ってきても、変わってないねって言ってくれると思ってた。仙太郎だけは、変わってないねって言ってくれると思ってた。なのに・・・。」
仙太郎「・・・今のお前を俺は知らん。」
恵理仙太郎に平手。
走って部屋を出ていく恵理。
残された仙太郎。
外は嵐。

◎庄内町太鼓台倉庫・外(夜)
近くの木が大きく嵐に揺れる。
木の根元が盛り上がる。

◎三好家・玄関~居間(夜)
少し濡れて帰ってくる恵理。
昭子「おかえり。あら仙ちゃんは?」
恵理「来ないって。」
昭子「そう。ちゃんと乾かしなさいよ。」
あがる恵理。
居間の入り口。
居間では男たちが盛り上がっている。
かまわず、風呂場へ行く恵理。

◎同・風呂場・脱衣所(夜)
恵理タオルで無造作に髪を拭く。
鏡に映る自分に気がついて見つめ合う。
玄関が開く音。
富士子「お邪魔しますよぉ。」
声に我に返る恵理。

◎同・居間(夜)
大皿を抱えてやって来た富士子。
富士子「ホンマに雨ひどいなぁ。」
昭子「まぁようけ(いっぱい)作ったわね。」
恵理、居間へ。
富士子が大皿を開く。
大皿には大量の唐揚げ。
貴一「ザンキじゃぁ。」
かぶりつく貴一。
見ている恵理。
横田、恵理に気がつく。
横田「恵理、帰ってたの?熱いうちに食べようよ、ザンキ。」
達也「ん?東京でもザンキ言うんか?」
横田「あ、いえ。恵理さんに初めて会ったときに知りました。」
恵理「え?」
横田「恵理とつき合う前に、学食で・・・」

◎回想・学食(昼)
カウンターで並んでいる横田。
前に並んでいる恵理。
恵理「おばちゃんザンキおまけしといてぇ。」
おばちゃん「ザンキ?何、それ。」
恵理「あ、唐揚げ唐揚げ。ね、お願ーい。」
おばちゃん「仕方ないわねぇ。一個だけだよ。」
恵理「やった、ありがとう!」
席へ行く恵理。
目で追う横田。

◎三好家・居間(夜)
絶句の恵理。
横田「その時から気になったっていうか、一目惚れというか・・・いや、恥ずかしいですけど。」
貫太郎「このぉ、なんじゃ。あつあつじゃのう。」
大丸「貫太郎、今はラブラブ言うんじゃ。」
貫太郎「おう!らぶらぶ!」
大丸・貫太郎「らぶらぶ!らぶらぶ!」
横田「ははは・・・恵理?どうした?」
恵理「え、あ・・・ううん。」
貴一「ザンキは仙ちゃんも大好きじゃけんね。持って行こうか?」
富士子「あぁ、いいわよ。何個かは置いてきたけん。」
貴一「ほう?じゃ遠慮せんといただきまーす。」
勢い付く貴一。
恵理、仙太郎のことを思う。
恵理「・・・仙太郎・・・」

◎塩崎家・仙太郎の部屋(夜)
ベッドで仰向けになって恵理を思う仙太郎。

◎三好家・居間(夜)
賑やかな居間の中で、仙太郎を思う恵理。
電話が鳴る。
昭子が出る。
昭子「はい、三好です。あら、神野の・・・えっ、太鼓台が?わかりました。はい。(切る)」
達也「何だ、どうした?」
昭子「台風で、倉庫近くの木が飛ばされたか倒れたかしたんだって。それで倉庫に直撃したらしくて、雨が・・・」
達也「貫ちゃんっ!」
貫太郎「おおっ!行くぞ!」
貴一「あ、俺仙ちゃん連れて行きます!」
男たち出ていく。
立ち上がる横田、その様子を見る。
心配そうな恵理。

◎庄内町太鼓台倉庫・前(夜)
それぞれ車で到着する達也、貫太郎、大丸、仙太郎、貴一。
仙太郎「こりゃ・・・」
大木がシャッターにめり込み、シャッターは変形している。
穴が開いたところから雨風が入っていく。
待っていた組員。
達也「太鼓は?」
組員「無事です。今なんとかブルーシートで覆うようやってますけん。」
仙太郎「手伝います。貴一。」
貴一「うん。」
激しくなる雨と風。
ブルーシートを張ろうとする男たち。
なかなか上手く行かない。
もう一本、木が折れて飛んでくる。
貫太郎「うわっ!」
仙太郎「親父!」
もうひとつ穴ができてしまう倉庫。
達也「くそっ!とにかく中の太鼓を守れ!」
一台の車が到着する。
出てきたのは横田。
驚く仙太郎。
仙太郎「なんだ、てめぇ!」
横田「お義母さんがっ、これ持ってけって!僕も手伝いますから!」
横田が持ってきたのはブルーシート。
横田、男たちの中に入る。
貫太郎「仙太郎!それから貴一!お前らあっちの穴、あいつと塞いで来い!」
仙太郎「えっ。」
貫太郎「早くしろ!絶対守れ!」
仙太郎「おぉ!貴一!」
貴一「うん!」
合流する仙太郎、貴一と横田。
横田、ブルーシートを広げる。
他の仲間とも力を合わせる。
貫太郎らも必死でブルーシートを張る。
またある者は板を打ち付ける。
嵐の中の作業。
真剣な表情の横田。
横田を見る仙太郎。
各箇所ともシートを張り終わる。
ずぶ濡れの男たち。

◎庄内町太鼓台倉庫・前・仙太郎の車内(夜)
見張りで残っている仙太郎と横田。
仙太郎「・・・何もあんたが残らなくても。」
横田「いや、お義父さんたちは明日太鼓台かつぐし。僕は若いから。」
仙太郎「かく。」
横田「え?」
仙太郎「太鼓を『かく』って言うんだよ。」
横田「へぇ。」
仙太郎「・・・・あんたはさ、恵理の・・・恵理の何がよかったん?」
横田「え、何?いきなり・・・。そうだなぁ、かわいいし、明るいし、優しいし・・・一緒にいると楽しいんだよね。」
仙太郎「・・・ああ。」
横田「幼なじみなんだって?君・・・仙太郎君だっけ?仙太郎君と恵理。」
仙太郎「そう・・・だけど・・・」
横田「恵理は、僕が幸せにします。大事にします。」
仙太郎「・・・」
横田「恵理が大切な人は、僕にとっても大切なんだ。だから仙太郎君にもきちんと言っておきたくて。」
仙太郎「・・・・・」
横田「あ、雨止んできたよ。」
小雨になる。
風も止んでいく。

◎三好家・前(深夜)
雨は止んでいる。
仙太郎の車から横田が降りる。
横田「ありがとう。」
仙太郎「いや、礼言うのはこっちだ。」
横田「明日は頑張って。見に行くよ、恵理と。」
仙太郎「・・・・ああ。」
横田、三好の家に入っていく。
見送ってから、仙太郎は車を出す。

◎塩崎家・玄関(深夜)
帰ってくる仙太郎。
仙太郎「ただいま。」
富士子「お帰り。おつかれさま。」
仙太郎「もう大丈夫じゃけん。親父は?」
富士子「達也さんとこで寝ちょる。あんた明日起こしに行ってね。」
仙太郎「まったく・・・」

◎三好家・居間(深夜)
酒の瓶が転がっている床。
さっきより明らかに増えている人数。
泥酔して雑魚寝をしている達也、貫太郎、他大勢。
呆れて立ちつくす淳也。
淳也「誰だよ、連れてきたの。」

◎塩崎家・仙太郎の部屋(深夜)
風呂上がりの仙太郎が部屋に入ってくる。
携帯が鳴る。
仙太郎「はい、もしもし?」
恵理「おつかれさま。」
仙太郎「・・・恵理。」

◎三好家・恵理の部屋(同時刻)
一人で電話している恵理。
恵理「大変だったね、今日は。」
仙太郎「・・・明日だって大変じゃ。あ、横田さんは?」
恵理「今お風呂入ってる。何で?」
仙太郎「・・・いい人だな。」
恵理「・・・うん。」

◎塩崎家・仙太郎の部屋(同時刻)
ギュッと拳を握る仙太郎。
仙太郎「・・・・俺なっ!」
恵理「(聞いてない)あのね。」
仙太郎「お・・・おう・・・」

◎三好家・恵理の部屋(同時刻)
一人電話している恵理。
恵理「私ザンキ、なんて・・・今日まで忘れてた。」
仙太郎「・・・」
恵理「東京に行って、私は学生から社会人になって、田舎者から都会人になって、ザンキは唐揚げになって・・・」
仙太郎「恵理。」
恵理「こっち帰ってくるの、少し怖かったんだ。みんな変わってないかなって。でも、一番変わっちゃったのは私だったんだね。」

◎塩崎家・仙太郎の部屋(同時刻)
仙太郎「・・・そんなこと・・・変わったのはお互い様だ。世の中に変化せんものなんてないんじゃけん。」
恵理「仙太郎・・・」
仙太郎「横田さんにまたお礼言っといてな。お疲れ様って。それじゃぁな。」
電話を切る仙太郎。
少し電話を見つめる。

◎三好家・恵理の部屋(同時刻)
切れた電話。
少し電話を見つめる恵理。
窓を開けて夜空を見上げる。
空の雲が切れて、月が出てくる。

◎十八日・庄内町太鼓台倉庫・前(朝)
晴天。
ガレージを開けて、用意をする庄内町衆。
貫太郎「うぉぉっ!かきくらべじゃのう!」
仙太郎「親父指揮者なんだから、落ちるなよ。」
貫太郎「馬鹿にすんな。」
笑い合う二人。
太鼓台を見上げる仙太郎。
そわそわとした空気。
貫太郎「昔から変わらんなぁ、この空気は。」
仙太郎「え?」
貫太郎「祭りの雰囲気よ。ずっと変わらんじゃろ。」
仙太郎「・・・」
貫太郎「ここ(胸)がクァァァっと熱くなっての、そわそわして。誰かが死んで誰かが生まれて、この街が変わっていっても・・・これだけは変わらねぇ。」
仙太郎「・・・人は?」
貫太郎「はぁ?んなもん、人それぞれじゃろ。ほじゃけど、その人であることは変わりゃせんけん。」
仙太郎「え?」
貫太郎「仙太郎は仙太郎じゃろ?それは一生変わらんことじゃろが。」
仙太郎、改めて太鼓台を見る。
空は高く青い。

◎市役所前大通り~一宮神社(昼)
祭りの見物客でごった返す歩道。
その中にいる恵理と横田。
各太鼓台が各方向からやってくる(宮入り)
鳴り響く太鼓。
活気溢れる通り。
太鼓台をかく仙太郎、貴一、啓介。
少し空いている所で見ている佳乃。
太鼓台が踊る。
紙吹雪が舞い、紙テープが投げられる。
かき棒の上で指揮をする貫太郎。
宮に入っていく庄内町太鼓台。
入ってそうそうかきくらべをする太鼓台たち。
飛びはね始める貫太郎。
熱気に溢れる宮内。
盛り上がる仙太郎。
目に映る紙吹雪。
そしてバランスを崩す貫太郎。
仙太郎「親父!」
仙太郎、貫太郎を受け止める。
貫太郎は留まるが、仙太郎はそのまま倒れていく。
貫太郎「仙太郎!」
貴一「仙太郎!」
庄内町太鼓台が止まる。
仙太郎の祭りが一瞬止まる。
倒れて人の下敷きになった仙太郎。
目に入ってくる陽。
ブラックアウト。
仙太郎(N)「ああ、俺、恵理が好きじゃ。」
鳴り続ける太鼓の音。

◎病院・病室(深夜)
ベッドで目を覚ます仙太郎。
傍らにいたのは富士子。
仙太郎「・・・おふくろ。」
富士子「仙太郎!よかった・・・」
仙太郎「・・・祭りは?」
富士子「もう終わったわよ。あんた肋骨折ったのよ。頭も少し打ったみたい。お父さん支えようとして倒れて・・・覚えてる?」
仙太郎「・・・覚えてるよ。で、そのクソ親父は?」
富士子「あんたが命に別状ないってわかったら、とっとと帰ったわ。今頃飲んだくれてんじゃないの?」
仙太郎「ったく・・・最悪じゃのう。・・・恵理は?」
富士子「うん、帰ったわ。東京へ、横田さんと一緒に。」
仙太郎「・・・ほうか。」
富士子「じゃ、私も帰るけん。明日また来るけんね。」
仙太郎「あぁ。」
出ていく富士子。
天井を見つめる仙太郎。
仙太郎「・・・言いたいことは何も言えず終いか・・・かっこわるいのう。」
苦笑いを浮かべる仙太郎。

◎半年後・東京・結婚披露宴会場(昼)
横田家、三好家の披露宴。
ドレス姿の恵理、隣りの横田と微笑み合う。
友人席の貴一、啓介、佳乃と生まれたばかりの赤ちゃん、そして仙太郎。
司会「それでは、新婦の友人を代表して、塩崎仙太郎様。」
仙太郎立ち上がる。
貫太郎「よっ!仙太郎!」
仙太郎、マイク前へ。
仙太郎「えー、信之さん、恵理、結婚本当におめでとう。心からお祝いします。・・・えー、今日はこの場を借りて、恵理に言い忘れていたことを、伝えたいと思います。」
貴一「えっ、仙ちゃん・・・」
仙太郎「恵理、やっぱり変わらないものはあるよ。貴一はこれからどんなに太ったって貴一だし、啓介はどんなに偉くなったって啓介じゃ。佳乃だって何人子供産んだって佳乃であることには変わりない。俺だって、お前だって。」
恵理「・・・・」
仙太郎「だから、またいつだって帰って来いよ。もちろん、信之さんと。」
恵理、仙太郎と目を合わせる。
仙太郎「じゃ、ここでひとつ新居浜音頭を歌いたいと思います!おらっ!」
新居浜友人席の面々が一斉に立つ。
新居浜音頭を歌う。
達也や貫太郎たちも加入。
そして恵理も。
新居浜音頭に包まれる披露宴会場。
吹っ切るように歌う仙太郎。
外は春の空。

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