魔法騎士冒険譚ルチェリールタ【第2話】 ファンタジー

 ルチェリールタは、クレーディーを探すために旅をすることに。  ゲドン工場なるものがあることを聞かされる。そこで見た惨状とは。出会った科学者シャーニューニダの目的とは──!?
みなぎし すい 13 0 0 11/11
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第一稿

【人物一覧表】
ルチェリールタ(30)...騎士団長

シャーザベスラ...皇女
カイン...皇太子
ギル皇帝...皇帝
チビィ(年齢不詳)...魔族
シャーニューニ ...続きを読む
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【人物一覧表】
ルチェリールタ(30)...騎士団長

シャーザベスラ...皇女
カイン...皇太子
ギル皇帝...皇帝
チビィ(年齢不詳)...魔族
シャーニューニダ...科学者の魔族
ゲドーナ...ゲドン族首領

ゲドンワーム...芋虫型ゲドン族

〇ラフドナ王都付近の平原(夕方)
   虚ろな目で遠くを見つめるルチェリー
   ルタ(30)。
シャーザベスラ「ルチェリールタ」
ルチェリールタ「はい......?」
シャーザベスラ「僕はきみについていくよ」
ルチェリールタ「それは聞きました......なん
 でですか?ギル皇帝やカイン様は大丈夫な
 のですか?」
チビィ「そういえばそうだぜ、なんでだ?」
シャーザベスラ「騎士団なら2人に護衛つけ
 てるだろ」
ルチェリールタ「そうですね」
シャーザベスラ「僕には、旅の目的があるの
 さ」
   シャーザベスラ、チビィを撫でる。
   チビィ、かわいいまんまるの体を撫で
   られ震える。

〇(回想)ラフドナ城・王室(夜)
   立っているカイン。ベッドに座ってい
   るシャーザベスラ。
カイン「予言の時が来たら、旅に出るつもり
 なのか......?」
シャーザベスラ「ああ」
   シャーザベスラ、自分の手のひらをじ
   っと見つめる。
   手のひらから小さな水が出現する。
シャーザベスラ「ちょっと本調子じゃなくて
 ね......僕の仲間たちも同じだからさ」
カイン「例の、王族の子たちってやつか?」
   カインの言葉ののち、少しの間。
シャーザベスラ「ああ」
カイン「やれやれ。俺と父上はあと何年演技
 すればいい」
シャーザベスラ「ごめんね。でも僕は信じて
 るよ。いつか予言の時が来たら、例え神に
 認められた英雄が現れずとも、力と高潔な
 精神を併せ持った救世主が現れるってこと
 をね」
   シャーザベスラ、目を細める
   (回想終わり)

〇ラフドナ王都付近の平原(夕方)
シャーザベスラ「僕の知り合いの、王族の子
 たちが危ないんだ。だから今一度みんなに
 会って無事を確認する必要がある。だから
 ──」
   シャーザベスラ、ルチェリールタに向
   かって深くお辞儀する。
シャーザベスラ「騎士団長。英雄にも匹敵す
 るだろう力。僕に貸してくれないかい?」
ルチェリールタ「断る理由などありません、
 皇女様」
シャーザベスラ「助かるよ!」
ルチェリールタ「皇女様。もうすぐ夜になり
 ますので、宿を探しましょう」

〇シーキサラ村・広場(夜)
T「シーキサラ村」
チビィ「ここはなんとか無事みたいだな」
   ルチェリールタ、シャーザベスラ、チ   ビィ、村を見渡す。
シャーザベスラ「奴らも賢いから、こんな辺
 境の村にまで攻めてこようとは思わなかっ
 たんだ。王都を効率的に破壊しに来た」
ルチェリールタ「......」

〇シーキサラ村宿・受付(夜)
   受付を済ませる。

〇同・部屋(夜)
   ルチェリールタ、扉を開け中に入る。
   ベッドに座る2人。
シャーザベスラ「ねえルチェリールタ。本当
 は、君はカインとの結婚に乗り気じゃなか
 っただろう?」
ルチェリールタ「えっ」
   不意の言葉にビクッとするルチェリー
   ルタ。
シャーザベスラ「図星みたいだね」
ルチェリールタ「えっとその、申し訳ありま
 せ──」
   ルチェリールタ、焦る所作を見せる。
シャーザベスラ「大丈夫、怒っちゃいないよ
 。きみも、自由に恋愛くらいしたいだろう
 ?」
ルチェリールタ「っ......」
シャーザベスラ「きみとカインが結婚するこ
 とになったのも、僕のせいなんだ」
ルチェリールタ「......え?」
   ルチェリールタ、目を見開く。
シャーザベスラ「予言の災厄が来た時のため
 に、僕がパパに言って政略結婚を取り付け
 てもらったんだ。君は現代最強の騎士だか
 ら、より僕たち皇族の近くにいた方がいい
 と思ったんだ」
ルチェリールタ「そうだったんですか......」
シャーザベスラ「だからその......謝るよ」
   申し訳なさそうな表情のシャーザベス
   ラ。
ルチェリールタ「いえ、いいんです。ただ、
 わたしは政略結婚なんてなくても協力はす
 るつもりでしたよ」
シャーザベスラ「その通りだね。無意識のう
 ちに君のことを見くびっていたのかもしれ
 ない......」
   シャーザベスラ、ベッドから立ち上が
   る。
シャーザベスラ「さ、ディナーを食べたら寝
 ようか」

〇宇宙空間
   多数の飛行物体が、キペル・シャレイ
   アのはるか上空に浮かんでいる。
   その中に、一際大きな飛行物体がひと
   つ。

〇飛行物体・司令室
   ゲドーナ、司令室の椅子に座って機械
   と向かい合っている。
ゲドン族A「ゲドーナ様」
ゲドーナ「何?」
ゲドン族A「先日の大規模侵攻で、大幅にエ
 ネルギーを消費してしまいました。奴らの
 王都が壊滅したりなど戦果はありましたが
 、まだ決定的とはいえないかと」
ゲドーナ「そうね......」
ゲドン族A「次の大規模侵攻まであとどのく
 らいかかるか。それに、あの星は神なるも
 のが存在すると聞きます。五神とは──」

〇シーキサラ村・広場(朝)
シャーザベスラ「五神とは、五王国の各国に
 存在すると言われる神のことさ。民たちの
 信仰にもなってる。もちろん神だから、め
 ったに謁見することはできないだろうね。
 実際、パパとカインだって神を見たことが
 ないんだから」
   シャーザベスラ、チビィに説明する。
チビィ「(少し得意気に)ルチェリールタが
 英雄と神の本いっぱい持ってるから、神の
 ことなら知ってるぜ! 会ったことないけ
 どな」
   チビィ、勢いよくぷるぷると震える。
チビィ「それで、神に認められたら英雄にな
 れるんだよな! どう認められるかはわか
 んないけど......」
ルチェリールタ「そうだね」
   ルチェリールタ、寂しそうににっこり   とする。
シャーザベスラM「チビィ。君はそれでいい
 、その明るさでルチェリールタの傍にいる
 んだ」
   と、心の中でチビィに声をかける。
ルチェリールタ「っていうか皇女様。あんな
 強い魔法を扱えたんですか?」
シャーザベスラ「まあ......ね」
   ※※※
   (フラッシュ)
   シャーザベスラ、手をかざして結婚式   参列者たちを水魔法で守る。
   ※※※
ルチェリールタM「すごい......わたしでもあ
 んな強い魔法できるかどうか......」
村人A「すみません! 騎士団長様、少し村
 長のご自宅まで御足労いただけないでしょ
 うか?」
   急に声をかけられ、振り向く3人。

〇シーキサラ村長宅・居間(朝)
   村長と3人が、机をはさんで向かい合
   っている。チビィはルチェリールタの
   肩に乗っている。
村長「急に呼び出してすまんかったの」
ルチェリールタ「いえ、お構いなく。それで
 、わたしを呼び出した理由をお伺いしても
 よろしいでしょうか?」
村長「この村から少し離れたところに工場が
 あるんじゃ。そこがゲドン族の工場になっ
 ておる」
ルチェリールタ「え?」
村長「村のみなを危険に晒したくはないんじ
 ゃ。どうか、その工場を壊してきてくれん
 かの」
ルチェリールタM「騎士団は人手不足......そ
 の情報は知ってはいたけど、手が回らなか
 ったところだ」
村長「既に、何人も連れ去られておるのじゃ
 ! 頼む! 助けてくれ!」
   懇願する村長。
   少しの間ののち、
ルチェリールタ「もちろん、引き受けます」
   ルチェリールタ、頷く。
村長「おお! ありがとうございます騎士団
 長どの!」

〇ゲドン工場・外観(朝)
   そびえ立つ大きな工場。
   工場周辺に生い茂る、ゲドン族の体色
   と同じ青い木。
ルチェリールタ「っ......!」
   絶句するルチェリールタ。
   青い木から、人の顔だけが出ている。
   木の幹が工場に向かって伸びている。
ルチェリールタ「ひどい......」
チビィ「なんだよこれ......」
シャーザベスラ「エネルギーだ。人間の精気
 を吸い取ってるんだ......!」
ルチェリールタ「行きましょう皇女様。中に
 入って黒幕を直接叩きます」
   ルチェリールタ、工場をギッと睨む。

〇同・内部通路(朝)
   鉄製の壁や天井の至るところに管があ
   る。
   管の中を液体が流れている。
ルチェリールタ「これ全部......人間の精気
 ?」
   ルチェリールタ、呆然とする。
シャーザベスラ「これは、破壊していいもの
 か迷うね。何が起こるかわからない」

〇同・最奥部屋(朝)
   シャーニューニダ、椅子に座ってモニ
   ターを見つめている。
シャーニューニダ「......侵入者か」
   椅子をくるりと回転させ、ゲドンワー
   ムの方を向く。
   ゲドンワームの尻尾が壁に埋まって枝
   分かれしている。
ゲドンワーム「ウォァァァァ......」
   ゲドンワーム、10メートル以上の体を
   ふるわせ唸る。

〇同・最奥部屋前(朝)
   扉の前に立つルチェリールタと、肩に
   チビィ。
ルチェリールタ「!」
   ルチェリールタ、ドアノブに触れた瞬
   間ぴたりと止まる。
ルチェリールタ「中にとんでもなく強い魔族
 がいます。気をつけてください。チビィも
 、傍を決して離れないで」
チビィ「おう......」
シャーザベスラ「わかった」

〇同・最奥部屋(朝)
   シャーニューニダ、扉を見つめる。
   ゆっくりと扉が開けられる。
   広い部屋に、3人が入ってくる。
   見つめ合うシャーニューニダと3人。
チビィ「な、なんだよあの化け物......芋虫か
 ?」
   チビィ、ゲドンワームを見ておびえ震
   える。
ルチェリールタ「あなたが......ここの主?」
シャーニューニダ「そうだ、と言ったら?」
   ルチェリールタ、顔を怒りで歪める。
ルチェリールタ「はぁっ!」
   叫び、剣を抜いてシャーニューニダに
   向かって飛ぶ。
   バチンと大きな音が響く。
   シャーニューニダ、両腕を交差させて
   剣の攻撃を受け止める。
シャーザベスラ「孤鮫軍艦(ロンリーシャー
 ク)!」
   水の鮫が顕現する。シャーニューニダ
   に向かって水の鮫が直進する。
シャーニューニダ「ぐぅっ」
   呻きながらも水の鮫を受け止める。
ルチェリールタ「せぁぁぁぁっ!」
   ルチェリールタ、大きく叫び斬りかか
   る。
シャーニューニダ「ちぃっ!」
   シャーニューニダ、舌打ちして攻撃を
   弾く。
   しばらくの間、激しい戦闘が繰り広げ
   られる。
   ルチェリールタとシャーザベスラ、チ
   ビィのもとへ下がり守るように立つ。
ルチェリールタ「こいつ......強い」
   ルチェリールタ、剣を構える。
シャーニューニダ「......待て!」
   シャーニューニダ、両手を上にあげる
   。
シャーニューニダ「降伏だ」
ルチェリールタ「降伏?」
シャーニューニダ「お前たちと闘ってもらち
 があかない。お前たちも消耗はしたくない
 だろう。もとより、お前たちを殺すことに
 こだわっていない」
   シャーニューニダ、腕を下げる。
ルチェリールタ「っ......ふざけるな!じゃあ
 この工場はなんだ!」
   と、怒りの言葉を発する。
シャーニューニダ「我の名前はシャーニュー
 ニダ。わかってはいると思うが魔族だ。我
 がここにいるのは、兄を探すためにゲドン
 軍に潜入していたからだ」
ルチェリールタ「......」
シャーニューニダ「いいだろう。ならばこれ
 はどうだ」
   シャーニューニダ、手をかざす。
   ルチェリールタ、とっさに防御魔法陣
   を展開。
ルチェリールタ「!?」
   シャーニューニダ、ゲドンワームに魔
   素弾を発射する。
   ゲドンワーム、塵になって消える。
ルチェリールタ「な、何を......」
シャーニューニダ「我にとって、こんな工場
 などどうでもいいということだ。それはい
 いが、お前たちはそうもいくまい。早く外
 の人間を助けに行くんだな」
ルチェリールタ「!」

〇ゲドン工場・外観(朝)
   木の幹が消え、人間が地面に倒れてい
   る。
   騎士たちが、人間を介抱している。
ルチェリールタM「木の正体はあの芋虫だっ
 たのか......」
女騎士A「この人たちをを王都まで連れ帰れ
 ばよろしいのでしょうか?」
ルチェリールタ「うん」
男騎士A「ですが団長様は今何を?」
ルチェリールタ「要注意人物が失踪した。だ
 から、それを追って旅をすることになった
 の」
男騎士A「そういうことでしたか」

〇シーキサラ村長宅・居間
   ルチェリールタ、シャーザベスラ、シ    ャーニューニダ、机をはさんで村長と
   向かい合う。
ルチェリールタ「──というわけで、救えな
 かった人もいましたが村人たちは責任を持
 って介抱いたしました。そして、工場も破
 壊しました。」
村長「おお、そうか!本当にありがたい......
 ! 充分すぎる成果じゃ、わざわざわしの
 村のために時間を割いてくれて本当に感謝
 する......!」
ルチェリールタ「はい......」
   と、少し俯きながら答える。
   その様子を、シャーザベスラが横から
   見つめる。

〇シーキサラ村・広場
シャーザベスラ「何はともあれ、これで一件
 落着だな......といきたいところだけど」
   シャーザベスラ、水の鮫を顕現させシ
   ャーニューニダの喉元にあてがう。
シャーザベスラ「(ドスの効いた声で)シャ
 ーニューニダくん。君の旅の目的を話して
 もらおうか」
   と、シャーニューニダを睨む。
シャーニューニダ「我の目的は、失踪した兄
 を探すことだ」

〇(回想)とある研究所・研究室
   シャーニューニダ、机の研究資料を手
   に取る。資料には『オメガ・リブラ』
   の文字。
シャーニューニダ「オメガ・リブラ......?な
 んの研究をしているのだ?」
   兄、シャーニューニダに背中を向けて
   いる。
シャーニューニダN「しかし、兄は研究内容
 を教えてはくれなかった」

〇同・外観
シャーニューニダ「どこに行くんだ?」
   兄、シャーニューニダに背中を向けて
   いる。
シャーニューニダN「兄が言うには、ゲドン
 軍に潜入するとのことだった」
   (回想終わり)

〇シーキサラ村・広場
シャーニューニダ「しかし、帰ってくること
 はなかった」
ルチェリールタ「(納得といった様子で)そ
 ういうことだったのね......わたしと似てる
 ......」
シャーニューニダ「信じるかは自由だが、我
 はあそこの番を任されていただけだ。それ
 でも信用できないのなら、お前たちの旅に
 同行しよう。我にとって、お前たちに協力
 することになんの不利益も存在しない」
   と、冷静に言い放つ。
ルチェリールタ「......わかった、信じよう」
シャーザベスラ「騎士団長様がそう言うなら
 僕もわかったよ」
シャーニューニダ「なるほどな、どおりで強
 いわけだ」
   と、ルチェリールタをじっと見回す。
チビィ「いつもおまえは正しかったもんな!
 ボクはおまえの判断を信じてるぜ!」
   チビィ、ルチェリールタにくっつく。

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