新選組隊士・最期の写真 歴史・時代

若き新選組隊士たちの最期の日々。
木谷日向子 8 0 0 09/19
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第一稿

人物

辻村龍生(17)新選組隊士

横田黄太郎(17)新選組隊士

進藤光蔵(17)新選組隊士

土方歳三(29)新選組副長

近藤勇(30)新選組局長

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人物

辻村龍生(17)新選組隊士

横田黄太郎(17)新選組隊士

進藤光蔵(17)新選組隊士

土方歳三(29)新選組副長

近藤勇(30)新選組局長

写真屋の店主(54)

浪士1

浪士2

新選組隊士たち

浪士たち


〇写真屋・中

   写真機の周りを取り囲む横田黄太郎(17)と進藤光蔵(17)。辻村龍生(17)は写真屋の壁に

   並べられた写真を眺めている。

横田「すっげぇ~。これが写真機か。初めて見る」

進藤「こんな真っ黒でドでけえ機械が、あんな写真を写すってえのか?」

辻村「お前ら、あまり騒ぐな。店の者に迷惑がかかる」

   辻村、写真から目を離し横田達を見る。

横田「へいへい。わーってますよー」

進藤「ったくうるせえぜ辻村の旦那は」

   進藤、写真機を切なげに見やる。

進藤「(小声)……でもよ。俺はなんっか怖えぜ。写真って魂を取られるって噂を聞いたことがあってな……」

  辻村が進藤を見る。

   ☓   ☓   ☓

   写真屋の店主(54)が三人に声をか

   ける。

店主「お客様、写真機の準備が整いました」

   店主が辻村の元にやってくる。

辻村「これで頼む」

店主「はい、確かに」

   店主、辻村から金を受け取る。

横田「しっかし、土方さんも太っ腹だぜ。こんな下っ端隊士のオレらに、写真代をくれるなんてさぁ」

進藤「写真代なんざバカ高ぇしな。とても自分の給金からは払えねえ」

横田「進藤、お前土方さんに何か言った?」

進藤「んー。ああそういえば、やり残したことはあるかって聞かれたな……。そんで写真を撮られてみたい

 って答えたんだわ」

辻村「……」

   辻村、2人の会話を聞き、眉をしかめた後、俯く。

店主「お客様、写真機の準備が整いました」

横田「よっしゃー!! 写真だ写真だ!!」

進藤「俺達の時代が到来したぜ!!」

辻村「……お前ら静かにしろ」


〇写真撮影場所

   横田、ぎこちなく腰の刀を触っている。

   進藤、そわそわと手を動かす。

   辻村、2人を交互に睨む。

店主「それではお客様、撮影を始めます」

横田「来た来た来た~!!」

辻村「うるさい!! 静かにしろ」

進藤「やっべぇ。どんな格好で撮るよ?」

   落ち着かない3人。

店主「少し待ちますので恰好を考えておいてください」

横田「わかった! で、おい、どうする? どうする?」

   ギクシャクする横田。

進藤「よし、あれか? やっぱこう……」

   歌舞伎役者のようなポーズを取る進藤。

辻村「……それは無しだな」

   進藤と横田を冷めた瞳で見る辻村。

辻村「普通にしてろ普通に。他の写真を見てみろ。そんなに変な恰好をしている者などいないだろう。こう

 構えてな……、堂々としていればいいのだ」

横田「こ、こうか? ひゃー落ち着かねえ……」

   直立不動で構える横田、進藤、辻村。

店主「お客様、決まりましたか?それではいきますよ……」

   店主、写真機の前に身構え、写真機のボタンを持つ。

店主「いち、にい、さん……!」

   カシャっという写真機の音。

   横田、進藤、辻村の順に並んでいる姿。

   音と共にその姿が灰色になり、横田が右手に持っている写真になる。

横田「すげえー……。これが写真かあ」

   進藤、胸をまさぐる。

進藤「た、魂抜かれてねえよな? 俺、生きてるよな? 写真に入っちまってる俺とこの俺は別々の俺だよ

 な?」

辻村「ふむ……」


〇(回想)新選組屯所・中

   正座して向かい合う土方歳三(29)と辻村。

土方「……そうか。写真、撮ってこい。代金は俺が出してやる」

辻村「はい」

辻村の心の声「土方さん……オレらに死ねって言ってるんですか」

   俯き皮肉に笑う。

   辻村、横田から写真を取り上げ、見つ

   めるとゆっくりと微笑する。

辻村「思っていたよりずっといい」

横田「あっ! 龍生てめえ人の物勝手に取り上げてんじゃねえ!」

   横田、辻村から写真を盗ろうとする。

   辻村、横田の手を除けて目を閉じなが

   らするりと動く。

辻村「ただし私だけだ。お前らの無様な姿は写真でも隠せなかったようだがな」

   不敵に笑みを浮かべる辻村。

横田「てんめ~……」

進藤「ちょっと顔が良いからって調子乗ってんじゃねえぞ!」

   横田、怒りながら辻村から写真を取り

   上げようとする。

   辻村、颯爽とそれをかわす。

辻村「ふははは。見てみろこの横田の顔! 鼻の穴のでかさが一層際立って居るわ」

横田「うるせー! これでも撮られる瞬間に精一杯鼻の穴を小さくしようと努力したんだよ! なめんな

 や!」

辻村「ふっ……、まあ実物よりもまだ写真の方が男ぶりが上がっておるか」

横田「はあ!? てめえそれ以上愚弄する気なら容赦しねえぞ、おらあ!」

進藤「うるっせえなあ! せっかく念願の写真撮った後だってのによ。喧嘩してんじゃねえよ!」

横田「てめえもさっきまで喧嘩に加わってたじゃねえかよ!」

   辻村、二人の事を見ながら薄く微笑み  

   遠い目をする。

辻村の心の声「副長がオレたちの望みを聞き、オレたちに写真を撮らせたのは、きっと明日以降にオレ達の

 命に関わるような何かがあるからだ。最期の記録として、オレ達に写真を撮らせたのだ」

   手元の写真を見る。

辻村の心の声「この命がいつか消えようとも、こうして写真だけはこの世に残り続けていく。人間が子孫を

 残すのとはまた違った形で生きた証が残っていくのだな……」

   写真を胸の袷にしまうと、2人を残し

   歩き出す辻村。

横田「あ、龍生てめえ待たねえか!」

進藤「オレらにももっとじっくり写真見せろよ~!」

   横田と進藤、辻村を追いかけていく。


〇池田屋・中

     勢いよく蹴破られる扉。

     反応し、立ち上がる浪士たち。

     近藤勇(30)を真ん中に、池田屋に入る新選組隊士たち。

近藤勇「御用改めである!!」

   刀を抜き、立ち上がる浪士たち。

   刀を抜き、近藤を先頭に池田屋の中に入っていく隊士たちと、辻村、横田、進藤。

   皆殺気に満ちた顔をしている。

   辻村に斬りかかる浪士。

   辻村、刀で受け止める。

   鍔迫り合い。

   横手、浪士に斬りかかる。

   浪士、居合の構えを取り、刀を抜くと、

   横手の腹を斬る。

横手「ぐわああ!」

   倒れる横田。腹から大量の血が床に流れる。

   辻村、険しく瞠目し、横目で倒れた横田を見る。

辻村「横田!!」

浪士1「てめえの相手は俺だろ!」

   力強く刃を押す浪士。

辻村「(浪士の方を向いて)くっ!!」

   辻村、更に力を増し、浪士と刀で押し合う。

   進藤、涙を流しながら屈んで横手を触っている。

進藤「横田……」

   進藤の背後に迫る刀を抜いた浪士。

辻村「(横目で進藤を見て)危ない!!」

   鍔迫り合いから体を離し、進藤を護ろうとする辻村。

   辻村、進藤の背後の浪士を切り倒す。

進藤「(辻村を見上げて)辻村!!」

辻村「まったく世話の焼ける!」

浪士1の声「後ろががら空きだぜ色男!」

     はっとして後ろを振り返り構えようとする辻村。

     不敵な笑みを浮かべ、辻村の背をばっさりと斬る浪士1。

辻村「(目を見開き)はっ……」

   血を流し、倒れる辻村。

   辻村の着物の袷から、一枚の写真がひらりと舞い落ちる。

   笑顔の3人の写真。

進藤「(泣きながら)龍生……。お前、写真持ってたのか」

   怒りの形相で立ち上がり、浪士1に斬りかかる進藤。

進藤「うわあああああ!!」

     

〇京都の町・俯瞰(昼)

   町民や女子供が楽し気に暮らす様子。

ナレーション「1864年7月8日、京都池田屋に潜伏していた長州藩、土佐藩などの

 尊王攘夷派志士を新選組が襲撃。死闘が行われる。戦死者の中には横田黄太郎、進藤光蔵、辻村龍生の名

 前あり」

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