きっかけは何でも 日常

財布の中のプリクラをめぐった男女の絡み。
橘ゆづは 39 0 0 07/28
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第一稿

人物
中野ありさ(21)大学生
酒井聖治(29)美容師

〇居酒屋・レジ(夜)
   女性店員がレジを打っている。
   酒井聖治(29)、その前で財布を取り出し、横に ...続きを読む
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人物
中野ありさ(21)大学生
酒井聖治(29)美容師

〇居酒屋・レジ(夜)
   女性店員がレジを打っている。
   酒井聖治(29)、その前で財布を取り出し、横にいる中野ありさ(21)に向かって、
酒井「俺払うよ」
ありさ「ありがと」
   ありさ、出していた財布をしまう。
   財布を開き、小銭を数える酒井。
   ありさ、財布の中を覗き込むと、プリクラのシートが何枚か入ってることに気付く。
〇同・外~道路(夜)
   夜風を受けて気持ちよさそうに伸びをする酒井。
   ありさ、不機嫌な顔。
   酒井、歩きながら、
酒井「あー、やっぱ好きな人と飲む酒はうまいねえ。さ、うちにする?ありさん家にする?」
   と、振り向くとありさはついてきておらず、まだ店の前で突っ立っている。
ありさ「プリクラ。財布に」
酒井「ん?」
   酒井、ありさの元まで戻る。
ありさ「財布にプリクラ入れてんでしょ。何枚も」
酒井「ああ。歴代の元カノとの」
ありさ「は?」
酒井「え?」
ありさ「はあ?」
酒井「……ええ?」
   ありさ、酒井を睨むが、酒井はきょとんとしている。
ありさ「元カノとの写真を捨てないのは、今カノに失礼じゃないんですか?」
酒井「……いやいやいや。関係ないでしょ」
ありさ「関係ない?」
酒井「むしろ感謝しなきゃ。今までの彼女があっての今の俺だから」
ありさ「感謝?何その論理舐めてんの?」
酒井「全く。超真面目。大真面目」
ありさ「あきれた」
   ありさ、スタスタと酒井を置いて歩きだす。
   追う酒井。
酒井「待ってよ。送るよ!」
   ありさ、前を向いたまま、
ありさ「ついてこないで」
酒井「わかった。わかったよ」
   ありさ、素早く振り返り、
ありさ「何がわかったの?」
酒井「ありさが嫉妬してるってこと」
ありさ「しっと?」
酒井「大丈夫。俺が今好きなのはありさだけだし、大丈夫だよ。もうかわいいなあ」
   ありさ、肩にかけていたショルダーバックを外し、酒井に向かって思い切り投げる。
   酒井、見事にキャッチする。
酒井「俺が持っとくよ」
ありさ「(叫ぶように)違う!」
   ありさ、酒井に近づき、バックを奪い返す。
   酒井、バックを指さし、
酒井「え、今自分で投げて……」
ありさ「怒りの表現!説明させないで!」
   酒井、戸惑いながらも楽しそう。
   ありさ、目に涙が溜まっている。
ありさ「帰る!」
酒井「送るよ」
ありさ「来ないで!」
酒井「じゃあ俺んち」
ありさ「行かない!」
酒井「じゃあタクシー」
ありさ「呼んで!」
酒井「お、おう。そこはいいんだ」
酒井、スマホを取り出し電話をかける。
酒井「もしもし?あ、タクシー一台。えっとはなの舞の前ですね。北駅の近くの」
   ありさ、酒井のポケットから財布を抜き取る。
   プリクラを取り出すが、暗くてよく見えず街灯にかざす。
   酒井とともに映っている女を見て目を見開く。
ありさ「うっそ」
酒井「はい。名前、酒井です。お願いしまーす」
   酒井、電話を切る。
酒井「すぐくるって!」
ありさ「ねえ!」
   と、酒井にプリクラを突き付ける。
ありさ「だれこの人」
酒井「……中野美穂」
ありさ「お姉ちゃんだよねあたしの!」
   酒井、ひるむ。
酒井「はい……」
   ありさ、まくしたてるように、
ありさ「付き合ってたの?え、いつ?どうやって?どのくらい?」
   酒井、俯く。
酒井「美穂が学生の時。お客さんとして店に来て」
ありさ「お客さんに手出したの?サイテー。もしかしてそういうこと、いくらでもして」
酒井「してない!本気でまじめに付き合ってた!一週間だけ」
ありさ「いっしゅうかん?」
酒井「うん。なんかすぐ振られて」
ありさ「……はは。ばかみたい」
   と、その場にしゃがみ込む。
ありさ「ねえもう情報量多すぎて意味わかんないよ」
   酒井、駆け寄り、ありさの肩に手を置く。
酒井「俺が整理してあげるよ。まず……」
ありさ「ちがう、ちがうよ!」
   と、酒井の手をはねのける。
   酒井、驚いて黙る。
   ありさ、泣きながら、
ありさ「なんでいつもそうなの?あたしがしてほしいことと全然違うじゃん!まだ好きなの?お姉ちゃんのこと」
酒井「まさか」
ありさ「じゃあなんで」
酒井「それは……。消えるのが怖いから、かな」
ありさ「消える?」
酒井「過去をなかったことにしたら、自分を否定してるみたいで」
ありさ「……何それ」
酒井「…だよな」
   居酒屋から老夫婦が出てくる。
   ありさ、泣き止んで老夫婦をじっと見つめる。
   酒井、それを見て老夫婦に気が付く。
酒井「知り合い?」
   ありさ、首を振る。
ありさ「……いいなあって」
酒井「え?」
ありさ「あの年になっても、夫婦で仲良く、飲みに行くのが、いいなあって」
酒井「……そうだな。俺らもそうなろうよ」
   と、さわやかな笑顔でありさの腕を引き、立たせようとする。
   ありさ、立とうとして我に返り、酒井の手を振りほどいてしゃがむ。
ありさ「え?」
酒井「え?」
ありさ「今さ、サラッといいこと言ったみたいな顔してさ」
酒井「してないです」
ありさ「ケンカ、なかったことにしようとしてない?」
酒井「してないです」
ありさ「うそだ。嘘つくときいつもそうやって鼻の孔少しだけ膨らませるのあたしは知ってるよ」
   酒井、黙る。
   ありさ、得意げに、
ありさ「過去があって今があるんじゃなかったっけ?ん?」
酒井「……ありさ」
ありさ「なに」
酒井「さっきからずっと上目遣いじゃん?位置的に。めっちゃかわいいなあと思って」
ありさ「(強くはっきりと)話そらさないでくれる?」
酒井「ごめんなさい」
   と、うなだれる。
   ありさ、腕を掻いている。
酒井「ごめんなさい」
ありさ「もういい。蚊に刺された」
   酒井から反省の表情が消え、嬉しそうに、
酒井「俺んちムヒあるよ?どう?」
ありさ「そんなへたくそなナンパのセリフみたいなの言わないで。みんな見てるよ」
   酒井、きょろきょろと見渡し、
酒井「割と誰もいな」
ありさ「あ、あれ?」
   と、嬉しそうに指さした先に、『予約』の文字が光るタクシー。
酒井「そういえば呼んだの忘れてた」
ありさ「ね、あたしも」
   タクシー、こちらに向かってきて、道路脇に止まる。
   ありさ、タクシーに駆け寄ると、ドアが開く。
   ありさ、そそくさと乗り込む。
   酒井、タクシーの横に立ち、ありさを見ている。
ありさ「え、乗らないの?」
酒井「え、いいの?」
   ありさ、赤くなった腕を指し、
ありさ「ムヒ、必要」
酒井、にやりと笑ってタクシーに乗ろうとし、頭をぶつける鈍い音。

<終わり>

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