ダイヤモンド・プレリュード ドラマ

芸能事務所に入所して半年の夏坂は元人気子役・冬月を含めた4人組の男性アイドルユニット「4seasons」のリーダーに抜擢される。デビューから順調に人気を伸ばす「4seasons」だったが、周囲の評価に反して冬月はなかなかメンバーに心を開こうとしない。ある日夏坂はトイレで冬月が抗不安薬を多量に着用しようとする場面に遭遇する。ショックと混乱の中で、夏坂は冬月についての過去を知るのだった。
播磨つな 7 0 0 07/26
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第一稿

〇人物
 夏坂陽斗(16)アイドルグループ「4seasons」のリーダー
 冬月怜央(16)「4seasons」のメンバー
 秋元楓(17)「4seasons」のメンバー
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〇人物
 夏坂陽斗(16)アイドルグループ「4seasons」のリーダー
 冬月怜央(16)「4seasons」のメンバー
 秋元楓(17)「4seasons」のメンバー
 春川千早(16)「4seasons」のメンバー
 女性司会
 男性司会
 男子A
 男子B
 テレビ局スタッフ


〇テレビ局・スタジオ
   歌番組の収録が行われているスタジオ。
   ステージの前にはうちわやペンライトを持った沢山の女性ファンが立っている。
   ステージの端に立つ女性司会と男性司会、カメラに向かって話す。
女性司会「次はデビューしたばかりのアイドルグループ『4seasons』の登場です!」
   歓声を上げるファン。
女性司会「『4seasons』は現役高校生で結成されたグループ。子役時代から莫大な人気を誇る冬月怜央さんと事務所のオーディションを勝ち抜いた三人をメンバーに迎え、結成当初から大きな話題を呼びました」
男性司会「何てったってあの怜央君がいるからねえ。お互い年齢も近くて仲も良さそうだし、この調子だと今年の新人レコード大賞も狙えるんじゃない?」
   女性司会、男性司会の方を向いて頷く。
女性司会「今後の活躍にも期待が集まりますね。それでは『4seasons』から新曲『ダイヤモンド・プレリュード』、どうぞ!」
   ステージの中央でスタンバイをしている夏坂陽斗(16)、冬月怜央(16)、春川千早(16)、秋元楓(17)。
   スポットライトが四人を照らす。
   大きな歓声と共に音楽が流れ、踊り出す四人。

〇同・楽屋(夕)
   ドアを開けて楽屋へ戻る4seasonsの四人。
   室内には軽食が用意されている。
   テーブルに駆け寄る夏坂と春川。
春川「お、今日ピザじゃん! すげー!」
夏坂「とりあえず今日のステージも上手く行ったし、乾杯でもしよっか」
冬月「上手く行った・・・・・・?」
   夏坂に冷ややかな視線を向ける冬月。
冬月「レッスンで注意された所は直ってない、ステップもずれてる。そんなんでよく上手く行ったとか言えるな」
夏坂「で、でも。歓声は今までで一番大きかったし、ファンの皆は喜んでくれたと思う」
   小さく舌打ちをして呟く冬月。
冬月「これだから素人と組むのは嫌なんだよ。こんな奴をリーダーにした事務所の気が知れねえ」
春川「おい! 同じグループの仲間にそんな言い方はないだろ」
秋元「千早、落ち着いて」
   激昂する春川を慌ててなだめる秋元。
冬月「甘いんだよ。そんな寝言言ってられんのも最初の一ヵ月だけだ」
   冬月、夏坂の正面に立って睨み付ける。
冬月「偶然デビューできたラッキーさんは一生ステージの端で踊っとけ」
夏坂「・・・・・・」
   荒々しくドアを閉めて立ち去る冬月。
   夏坂、ショックで立ちすくむ。

〇道(夜)
   車の行き交う大通り。
   夏坂、春川、秋元が並んで歩いている。
春川「あー! 冬月の奴、ほんとむかつく」
   地団駄を踏む春川をなだめる秋元。
秋元「怜央君は僕達よりずっと芸歴が長いですし、思う所があるのかもしれません」
春川「にしても言い方ってもんがあんだろ! これからずっと一緒にやって行かなきゃいけないってのによ・・・・・・。なあ陽斗?」
夏坂「そうだね。でも・・・・・・」
   ふと立ち止まる夏坂。
夏坂「今日の冬月君のダンス、完璧だった。ファンの子達、俺のソロパートでも冬月君のことずっと見つめてたもん」
夏坂の肩に手を置く秋元。
秋元「彼の『おまけ』でデビューできた僕達も、早く怜央君のレベルに追いつかないとですね」
夏坂「うん・・・・・・」
   夏坂、再びとぼとぼと歩き出す。

〇芸能事務所・トイレ
   トイレのドアを開ける夏坂。
夏坂「はあ、お昼ご飯食べ過ぎちゃったな」
   夏坂の声に驚いて振り返る冬月。
   冬月の掌の上に大量の錠剤が握られていることに気付き、夏坂は凍りつく。
夏坂「冬月君・・・・・・?」
   弾かれたように冬月に飛びかかる夏坂。
夏坂「飲んじゃだめ!」
   ぶつかった衝撃で薬の瓶が床に落ちる。
   瓶に貼られた『抗不安薬』のラベル。
夏坂「何してんの、冬月君」
   壁を背に座り込み、俯いたままの冬月。
夏坂「何か不安なことがあるの? 薬、そんなに沢山飲んだら体に良くないよ」
冬月「分かんねえよ、お前には!」
   声を荒げる冬月に怯む夏坂。
冬月「入所半年でちゃっかりデビューできて、テレビ関係者にも愛されて。好きでやってるお前に俺の苦しみなんか分かるかよ!」
夏坂「・・・・・・そうだよね。分かんないよね」
   小さく呟く夏坂に、少し驚いた表情を浮かべる冬月。
夏坂「勝手なこと言ってごめん。皆にはお腹壊してトイレに籠ってるって言っておくから。落ち着いたら戻って来て」
   薬の瓶を拾い、冬月から視線をそらして立ち去る夏坂。
夏坂「でも、自分を追い込むことはしないで」
   ドアが閉められ、冬月は舌打ちをする。

〇同・廊下(夜)
   帰宅する所属タレントが行き交う廊下。
   レッスン室のドアがわずかに開いており、中で男子Aと男子Bが話している。
男子A「『フォーシー』って仲悪いんだろ」
   帰宅しようと前を通りかかった夏坂、ぎくりと立ち止まる。
男子B「フォーシーが、って言うか冬月がだろ? あいつデカい移籍金でアイドルに転向したからって調子乗ってるよな」
男子A「子役も家の借金返済するためにやってたみたいだし。父親いない癖に兄弟は沢山いて、この前の収録でも『俺が一家の大黒柱なんです』とか言っちゃって」
男子B「てことはフォーシーが上手く行かなかったらマジで路頭に迷う感じ?」
男子A「うーわ。かわいそ」
   笑いさざめく二人。
   夏坂、怒りでリュックの肩紐を握りしめ、その場を走り去る。

〇テレビ局・野外ステージ舞台袖
   出番を待つ4seasons。
秋元「じゃあ、今日も頑張りましょうね」
   無視する冬月。
   ぼんやりと立っていた夏坂、慌てて頷く。
夏坂「え? あ、うん! 頑張ろう!」
春川「大丈夫かこいつら・・・・・・」
   困惑して顔を見合わせる秋元と春川。
   傍に立っていたスタッフ、ステージを指さす。
スタッフ「4seasonsさん、お願いします!」
   それぞれにステージへ走って行く四人。

〇同・野外ステージ
   客席で歓声を上げるファン。
   音楽と共に踊り出す4seasons。
   冬月、ステージ前方のカメラへ近付く。
冬月「『君がくれるもの、俺が』・・・・・・っ!」
   強い日差しによろける冬月。
   隣の夏坂、咄嗟に冬月の腕を引っ張った弾みでステージから落下する。
冬月「夏坂!?」
   ファンの悲鳴。
   冬月、夢中でステージから飛び降り、下で倒れる夏坂を抱き起こす。
   曲が止まり、静まり返るステージ。
夏坂「良かった、冬月君が落ちなくて」
   苦しそうに息をしながら微笑む夏坂。
夏坂「だって皆のアイドルでいなくちゃいけないのは、俺じゃなくて冬月君の方だから」
   意識を失う夏坂。
冬月「夏坂! おい! 起きろ、夏坂!」
   ステージ上から心呆然と二人の様子を覗き込む春川と秋元。
   冬月、必死に夏坂の肩を揺する。

〇病室
   ベッドの上で目を覚ます夏坂。
   冬月、春川、秋元が心配そうな表情で枕元のパイプ椅子に座っている。
夏坂「あれ、皆・・・・・・」
   泣き腫らした冬月の顔に噴き出す夏坂。
夏坂「冬月君、酷い顔。イケメンが台無しだね」
冬月「うっせ」
   夏坂に頭を下げる冬月。
冬月「本当に、その・・・・・・悪かった。俺のせいで、お前がこんな目に遭って」
夏坂「気にしないで。先生は一ヵ月もすれば治るって言ってたし。でも・・・・・・」
   春川と秋元をちらりと見る夏坂。
夏坂「俺のお願いは聞いてもらおうかな」
冬月「ああ。治療費なら勿論払う。それにお前が望むなら・・・・・・4seasonsも脱退するつもりだ」
夏坂「そうじゃなくて」
   ため息をつく夏坂。
夏坂「あのね、これから悩みごとは何でも俺達に相談して。だって俺達は同じグループのメンバーで、冬月君の味方なんだから」
冬月「・・・・・・俺に抜けろって言わないのか?」
夏坂「何でそんなこと言うの。冬月君は誰にも代えられない俺達の仲間。そうだよね?」
   頷く春川と秋元。
冬月「・・・・・・俺の負けだな」
   驚いた表情の冬月、やがて苦笑する。
冬月「お前がリーダーに選ばれた理由が、今なら何となく分かる気がする」
   冬月の肩に腕を回す春川。
春川「そしたらまずは恋バナだな! 冬月、俺がお前の恋愛の悩みを聞いてやるよ」
冬月「何で急にそんな話になんだよ・・・・・・」
秋元「恋愛相談って寝る前にするのが楽しいんですよね。じゃあ陽斗君が退院したら、早速怜央君の家でお泊り会をしましょう」
冬月「断る! ていうか4seasonsは恋愛禁止だ」
   嫌がりながらも笑顔の冬月。
   三人の様子を見て、夏坂は笑う。

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