生意気な眼球を拾った話 SF

私立探偵事務所の所長を勤める小池悠也はある日喋る目を拾う。その目の力を使って依頼を解決していくが…
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第一稿

登場人物
小池悠也…(こいけゆうや)主人公。男、30歳。父親が開いた探偵事務所を継ぐ
眼球・アイ…悠也が拾った喋る目。声帯と性格は男
小池敏樹…(こいけとしき)主人公の父親。 ...続きを読む
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登場人物
小池悠也…(こいけゆうや)主人公。男、30歳。父親が開いた探偵事務所を継ぐ
眼球・アイ…悠也が拾った喋る目。声帯と性格は男
小池敏樹…(こいけとしき)主人公の父親。
作中では亡くなっている。(享年60歳)
泉有紀(女)27歳
泉昭吾(男)有紀の子供、5歳
有紀の父…60歳
有紀の母…58歳
女A
アナウンサー(女)
警官(男)
老人(男)
幹部(男)
●小池探偵事務所・中
小池悠也(30歳)がソファーで寝ている
付近の机の上には筆記用具と小池敏樹(当時45歳)の写真が
悠也M「俺の親父は名探偵だった。」
悠也がテレビのリモコンでテレビをつける
テレビではニュースがやっている。
アナウンサー「次のニュースです。あの連続通り魔事件の時効まで後1ヶ月となりました。」
悠也M「親父は俺がこの事務所を継ぐときに仕事をするときは依頼人や関係者の目を見ろ、目こそが第二の顔だからと言っていた」
悠也が立ち上がり冷蔵庫から牛乳を取り出し飲む
悠也M「未だにその言葉の意味は分からない。
正直、親父が格好つけて言ったんじゃないかと思ってすらいる。」
アナウンサー「警視庁は残された遺族の為にも誠心誠意、捜査を行っていくと発表しています」
悠也M「あの言葉に意味なんてあるのだろうか」
●タイトル「生意気な眼球を拾った話」
●小池探偵事務所・中
事務所の扉をノックする音が響く
悠也が驚き、嬉しがり扉を開ける
悠也「どうぞ!」
女A「ここって探偵事務所ですよね?」
悠也「はいもちろん。お掛けになってください」
女A、ソファーに座り、悠也も向かい側のソファーに座る
悠也「今回はどんなご用件でしょうか?」
女A「えっとその…」
悠也「出来る範囲ならなんでもします!」
女A「じゃあその」
●公園
女Aの猫の写真をもち、猫を探す悠也
悠也「何かと思えば猫探しかよ。久々の仕事で期待したのに」
ゴミ箱や自販機の裏を探す
悠也M「親父の代に来ていた多くの数の依頼だけではなく、世間話や愚痴などをこぼしていた常連客も俺の代になればすぐに消えた」
草むらを探す
そこには寝ている女Aの猫がいる
悠也が写真と見比べる
悠也「やっと見つけた」
寝ている猫の付近に白い球体の物があり、
悠也、それに気づく
悠也、手に取る
悠也「なんだこれ」
悠也、球体を裏に回す
その球体はなんと眼球だった
悠也が驚き、尻餅をつく
悠也「嘘だろこれ…」
悠也、捨てて逃げようとするが腰が抜けて逃げ出せない
眼球「おい待て」
悠也、眼球の声と認識出来ず、辺りを見回す
眼球「いや俺だよ。その目がお前に話してるんだよ」
悠也が悲鳴をあげる
悠也「(震えながら)はあ?どういうことだよ?」
眼球「俺はな喋れるんだよ」
悠也「(震えながら)そんなばかな、言葉を話す目なんて」
眼球「あーやっぱりこの時代にはまだねえのか。たく遅れてんなあ」
悠也「はあ?…意味わかんねえし」
眼球「とりあえず俺をお前の家まで連れてってくんねえか?」
悠也「いやいやいや、いやだよ」
眼球「いや頼むって。(声のトーンを下げ)さもなければお前の身の保証は出来んぞ」
悠也「わ、分かったよ」
●小池探偵事務所・表
女Aに悠也が猫を渡す
女A「ホントにありがとうございました!」
女Aがお辞儀をする
悠也「あーいえいえいいんですよ」
女Aが去る
悠也、笑う。
●小池探偵事務所・中
机に置かれてる眼球に悠也が険しい顔をして向かう
悠也「問題はお前だよ…一体なんなんだ。ドッキリか?でも俺にはそんなことをする友達なんていねえし」
眼球「悲しいやつだな」
悠也「うるせえよ。それよりもお前はなんなんだよ!」
眼球が咳払いをする
眼球「俺様はな、未来から来た人工生命体だ。」
悠也「はあ?」
眼球「お前らの時代はまだらしいが俺の住んでた時代では人間の器官の取り替えが一般化しててな俺はその目の部分に当たるというわけだよ」
悠也「そんなんがなんで感情を持って喋れるんだよ」
眼球、沈黙する
悠也「なんだよ急に黙って」
眼球「喋れんのは年寄りとかの誘導のためだ。実はな俺は失敗作なんだよ。所謂忌み子だ」
悠也「え?」
眼球「本来、俺達は人間の体の一部として有無を言わさずに取り込まれる。俺もその筈だった。でも開発途中のバグで感情を生み出されてしまったんだ」
悠也「…なんでこの時代に来た?」
眼球「俺より先に生み出されたやつがいたんだがそいつも俺と同じ忌み子でな。そいつはスクラップにされた。俺もいずれそうなると思って、寝ぼけてる職員を誘導してタイムマシンを起動し、この時代に逃げてきた。そしたら猫が俺を玩具のように使ってきて散々な目にあった」
悠也「タイムマシンなんてマジであんのかよ…」
悠也が真剣な顔つきになり黙る
眼球「しかし腹減ったな」
悠也、驚く
悠也「飯食うのかよ!」
眼球「あったりめえだろ。生命体だからな。」
悠也、棚に置いてある目薬を見つける
悠也「(目薬を持ってきて)こんなのはいけるかな?」
眼球「なんだそれ?」
悠也「目のくす…いや、栄養剤みたいなやつだ」
眼球「この時代の文明レベルは低いからな。どんな不味い飯でも覚悟して…」
悠也が眼球に目薬をさす
眼球「(大声で)うめええええ!」
悠也「(唖然として)え?」
眼球「こんなうめえ飯初めてだ!まだあるか?」
悠也「お、おう」
悠也、目薬を眼球に注ぐ
あっとゆうまに容器が空になる
眼球「いやーこの時代の技術もあなどれんな」
悠也「誉めていただいて光栄ですよ、と」
悠也が手を叩き、眼球の方に人差し指指を指す
悠也「そうだ、お前の名前決めてやるよ」
眼球「名前って…いらねえよんなもん」
悠也「『目』だったら呼びにくいだろ?」
眼球「まあな」
悠也「そうだな…目は英語でEyeだから…逆さにしてアイとかどうだ?」
眼球、改めてアイとする
アイ「なあそれって女の名前じゃ」
悠也「いいだろ別に」
アイ「…なんか調子狂うがまあいいだろう」
悠也「あとその姿じゃ外も一緒に歩けねえだろ。」
悠也、アイにぴったりの丸い黄色い容器を見つける
容器の中にアイを入れる
アイ「何しやがる」
悠也「半面透明だから目は見えるだろ。一応趣味の悪いグッズ程度にはおさまったな」
アイ「うるせえよ」
悠也がテレビをつける
テレビでは通り魔事件の特集をやっている
テレビで取り上げられている犯人の写真は
犯人によって事前に半壊された監視カメラによって撮られ、人といっていいのか分からない位に不明瞭であった
アイ「さて…せっかくだしなんか借りを返すわ」
悠也「いいよべつに」
アイ「いやむしろさせろ。あんな旨い飯貰っといて対価を支払わないのはなんかムズムズする」
悠也「そうですか」
アイが通り魔事件のニュースを見る
アイ「お前って探偵だよな」
悠也「一応ね」
アイ「もしもこの通り魔事件の犯人の挙げられたら仕事の依頼が来るんじゃないか?」
悠也「確かにそうかもな」
アイ「当ててやるよ」
悠也「え?」
アナウンサー「当時のこの犯人の写真はご覧になって分かるようにとても不明瞭で、防犯カメラも半壊しており、解析がほぼ不可能です」
悠也「(テレビを指差し)あんなこといってるけど」
アイ「俺の目の力をそんなへっぽこ技術と一緒にすんな」
悠也「へ?」
アイ「お前、絵は得意か?」
悠也「まあ上手いとは言われる」
アイ「よしいいだろう」
アイがテレビの犯人の写真を見る
アイの黒目が赤くなる
悠也、それを見て唖然とする
アイ「犯人の特徴を言うからそれを絵にしろ」
悠也「お、おう」
悠也、紙とペンを用意しペンを持つ
アイ「髪はモジャモジャで黒、目は細く鼻が細長い、唇は薄く顔の形は縦長だ」
悠也が特徴を捉え絵にする
悠也「一応人の顔にはなったけど」
アイ「それを警察に持ってけ」
悠也「ええ…こんなん当たってる筈が」
アイ「いいから!」
悠也、アイと共に探偵事務所を出ていく
扉の閉まる音が響く
●小池探偵事務所(3週間後、早朝)・中
ソファーで寝ている悠也
悠也の携帯が鳴る
それに気づく悠也、起きる
電話先は●●県警
悠也、電話をする
悠也「…(眠そうに)はい、はい」
悠也、次の瞬間大声をあげる
それに反応しアイが起きる
アイ「うっせえな」
悠也「(震えながら)お前、3週間前位に俺に通り魔の犯人の絵を書かせたろ?」
アイ「おう」
悠也「あれが手がかりで犯人が見つかり、容疑を認めてるって今連絡が!」
アイ「だからいったろ?借りを返すって」
悠也「なんでそんなことが?」
アイ「俺らの用途はな警察の捜査にも使われることがしばしばある。だからあの程度の解像度なら余裕で見極められる」
●スーパー(夜)・中(数ヶ月後)
悠也N「それからというもの俺の元に依頼が殺到し事務所は大繁盛していた」
悠也、ポケットには容器に入れられたアイが
悠也M「もっともその殺到した依頼も解決したのは大半がこいつだけどな」
悠也、大量の目薬を買い物かごに入れる
買い物かごに入った目薬をアイが見る
アイ「(嬉しそうに)お前、こんなに買ってくれんのかよ!」
悠也「ああ、最近は気分がいいんだ」
●小池探偵事務所(夜)・表
警視庁の警官達が事務所のドアの前で立っている
悠也とアイが彼らに近づく
悠也「どちら様でしょうか?」
警官「私達は警視庁の警官です」
警察手帳を見せる
アイ「(小さな声で)お前なんかやったのか?」
悠也「ねえよ」
警官「実はあなたに協力をお願いしたくてここに来たんです」
●同・中(夜)
ソファーに座り対面する警官達と悠也
悠也「麻薬ですか?」
警官「はい。以前ヤクザの海外からの麻薬輸出ルートの摘発するための潜入捜査をしていたんですがバレて銃撃戦になってしまい、今も幹部の一人を尾行しているのですが尻尾を掴めずにいて…」
悠也「はあ…」
警官「貴方のような一般の方を巻き込むのは警察として失格だとは重々承知しています
…力を貸してくれませんか?」
悠也「分かりました。やりましょう」
●アパートの廊下
幹部がアパートの一室に入っていく
それを見る尾行している悠也
悠也、ズボンのポケットにはアイが入っている
写真を見る
写真には幹部のアパートの部屋が記載されている
悠也「ここだな」
アイ「おいおい大丈夫なのかよ。今回の仕事はあれだぞ下手すりゃ一瞬であの世行きだ」
悠也「分かってるよ。それよりアイ、この部屋の中を見てくれ」
アイ「分かったよ」
アイが視力を最大に調整し部屋の中の状況を見る
アイの目には幹部の男ともう一人部屋に隠れていた男が写る
もう一人の男は幹部の男の替え玉だった
幹部の男は格好を変えかつらを被り変装し
隠し通路からアパートを出ようとする
アイ「隠し通路だ」
悠也「え?」
アイ「今すぐ下りろ!」
悠也、階段を下りる
●繁華街
悠也、幹部の男を探す
悠也「(アイに)おいどこだよ!」
アイ、変装した幹部の男を見つける
アイ「あいつだ!」
悠也「(アイが見ている方向に目を向け)えっあれ違うだろ」
アイ「あれは変装だ」
悠也「信じていいんだな?」
悠也、幹部の男を尾行する
●アジト・表
アジトの中でヤクザ達が話している
それを窓から見る悠也
●アジト・中
ヤクザが麻薬を取り出す
●アジト・表
その瞬間をすかさずスマホで撮る悠也
●アジト・中
幹部「なんか音しなかったか?」
ヤクザ達が勘ぐり始める
●アジト・表
悠也があわててそれに気づき猫の鳴き声の真似をする
そして走って逃げる
●小池探偵事務所・中(一週間後)
警官達が悠也に礼を言い頭を下げる
警官「いやーありがとうございます。上からの家宅捜査状も下りなかったのでアパートの中は調べれずに…我々の無力さが見に染みるばかりです」
悠也「いえいえ色んな事情がありますもんね。仕方ないですよ」
警官達が礼を再び言い出ていく
悠也「ふぅ…」
容器に入れられたアイが机に置かれている
アイ「まーた俺が活躍してしまったなあ」
悠也「いやマジでありがとう。ホントに」
アイ「お前と探偵やってきて結構経つけどやっぱり俺様はいつも大活躍だな」
と胸を張るばかりに言う
そこへノックの音が聞こえる
悠也「どうぞ」
老人(男)が入ってくる
老人「こんにちは」
悠也「どんなご用件で?」
老人「あ、依頼にきたわけじゃないんです」
悠也がきょとんとする
老人「私は敏樹さんがご存命の時に依頼をお願いした者でして、それ以降もよく敏樹さんとは会っていました」
悠也「父のご友人でしょうか」
老人「そうですね。あなたが立派に後を継いでいることを知って嬉しく思いここへ来ました」
と老人、敏樹の写真に気づく
老人「(写真に話しかけ)どうだい?息子さんは。下手したら君よりも凄いんじゃないか?(笑う)」
悠也、顔が曇る
それに気づく老人
老人「どうかしたのかい?」
悠也「(愛想笑いで)なんでもありませんよ…」
●同・中(夜)
老人はすでに帰っている
悠也、椅子に座る
アイ「どうした。さっきから憑き物が憑いたみたいに固まって」
悠也「…ねえ」
アイ「ん?」
悠也「俺、ホントにこんままでいいのかな?」
アイ「(嘲笑して)何いってんだよ。依頼も多いし金も入る。探偵として万々歳じゃねえか」
悠也「…」
悠也、ソファーに倒れこみ寝る
●同・中(日替わり・朝)
有紀の父(60歳)と有紀の母(58歳)が事務所のソファーに腰かけている
悠也も対面のソファーに腰かけている
悠也「虐待ですか」
有紀の父「…はい」
母が有紀(27歳)と子供の昭吾(五歳)が写った写真を机に置く
有紀の母「一年前に離婚してしまって度々娘と昭吾に会いに行くんですけど昭吾の体に多くの傷があって」
有紀の父「昭吾にそのことを聞いても毎回転んだって言ってて」
悠也「警察や児童福祉の役員の人には?」
有紀の母「話は聞いてもらったんですが何も進展はなくて是非先生のお力を貸してもらいたくて」
有紀の父「お願いします!」
有紀の父、母が頭を下げる
悠也「わかりました」
●同・中
有紀の父、母は既に去っている
アイ「で?また俺の力が」
悠也「なあアイ」
アイ「ん?」
悠也「今回の依頼…俺一人でやらせてくれないか?」
アイ「は?」
悠也「俺、このままじゃダメな気がして」
アイ「いやいや今さら何いってんだよ」
悠也「頼む(頭を下げる)」
アイ「お前に何が出来るんだよ」
悠也、黙る
アイ「なんだ?十分金は稼いだからもう俺は用済みだってか?ふざけんなよ!これだから人間は」
悠也「そんなわけじゃないんだ」
アイ「お前ら人間は目だけじゃなく頭も悪いのかよ」
と吐き捨てるように言う
アイ「…いいよ好きにしろよ」
●有紀のアパートの廊下
悠也、ズボンのポケットには容器に入れられたアイが
悠也「…付いてくんのかよ」
アイ「お前の無様な姿を見るためにな」
悠也「好きにしろ」
とドアが開く
悠也、慌てて隠れる
有紀がゴミ袋を持って階段を下りる
悠也、有紀を追う
●ゴミ捨て場
有紀、ゴミ袋をゴミ捨て場に置き去る
悠也、ゴミ袋を見る
ゴミ袋には大量の缶ビールの缶が
悠也、それに気づく
悠也「アル中かもしんねえな…そうだ!」
●有紀のアパートの廊下(日替わり)
悠也、販売業者のような格好をし瓶ビールを持っている
悠也のズボンのポケットには容器に入れられたアイがいる
悠也「(ノックをし)すいません!瓶ビールの訪問販売です」
有紀がドアを開け顔を出す
有紀「どうぞ」
悠也「良かったら試し飲みしてみます?」
有紀「いいんですか?」
●有紀のアパート・中
有紀が瓶ビールを飲み酔っぱらう
昭吾が床に座ってクレヨンで絵を描いている
悠也「さあさあどんどん飲んでください!」
悠也、ポケットから盗聴機を取り出し設置する
アイ「(小声で)早く帰ろうぜ」
悠也、昭吾の絵を見て、唖然とする
アイ「どうした?そんな絵を見て」
悠也「…なんでもねえ」
●小池探偵事務所・中(夜)
悠也、有紀の父、母がソファーに座る
盗聴機の音声をパソコンで聞く
盗聴機からは鈍い音声が
有紀の声「あんたはねえ!いるだけでも鬱陶しのよ!」
さらに鈍い音声が聞こえる
有紀が昭吾を殴っていると察し耳を塞ぎ泣く有紀の母
盗聴機からは昭吾の声は聞こえない
悠也、盗聴機の音声をコピーし、止める
悠也「おそらく予想は的中してましたね…」
有紀の父「どうすればいいでしょうか」
悠也「とりあえずこの音声を警察や役所に持ってきましょう」
●同・中(日替わり・早朝)
悠也、寝ずに分厚い資料を見ている
有紀の父と母は既に去っている
アイ、机に置かれている
アイ「(嘲笑して)そんなうっすい資料見て何になるんだ?」
悠也「お前、これ結構分厚いぞ」
アイ「…ああ、そうだな」
悠也「お前、飯はいいのか?」
アイ「要らねえよ」
●有紀のアパートの廊下
悠也、悠也のズボンのポケットに容器に入れられたアイ、有紀の父、母、そして警察と児童福祉課の役員が数名
悠也「すいません。またまたビールの訪問販売です」
有紀がドアを開けるが、他の人々に気づき閉めようとする
悠也達がドアをこじ開ける
●有紀のアパートの一室・中
悠也「息子さんを虐待してますよね?」
悠也が盗聴機の音声を流す
有紀が取り押さえられる
有紀「アンタ!騙したのね!」
昭吾、困惑する
悠也、昭吾の元へ行く
昭吾の足元にはクレヨンでかかれた絵が
悠也「なあ君。その絵誰だい?人の絵っぽいけど」
昭吾、少し黙る
昭吾「…おかあさんの絵」
有紀、有紀の父、母が驚く
悠也「なあ有紀さん。こんな小さな子供がアンタみたいな大の大人に殴られても泣かないでいたなんておかしいと思わないか?」
有紀「どういう意味?」
悠也「これはあくまでも俺の推測だけど、昭吾君はあんたに好かれようと殴られてたんじゃないのか?」
有紀「え?」
悠也「あんたは酒を飲むことと昭吾君を殴ることでしか快感を得られなかった。それを悟った昭吾君は泣くんじゃなくて黙って殴られたんだ。あんた専用の都合の良いサンドバッグになるためにな」
昭吾、黙る
有紀、泣き始める
有紀「そんな…そんな」
有紀、昭吾に抱きつく
有紀「ごめんね…ごめん」
昭吾も泣き始める
●小池探偵事務所・中(日替わり)
悠也が座り、アイが机に置かれている
アイ「…おい」
悠也「なんだよ」
アイ「…良かったじゃねえか」
悠也「…そうだな」
アイからノイズの混じった音がし始める
悠也、驚く
悠也「おい!どうした!」
アイ「そりゃあ機械だからよ。寿命はお前らより短けえさ」
悠也「冗談だろ?」
アイ「マジだ」
悠也「どうにかして治そう」
アイ「無茶だ。出来るわけない」
悠也、黙る
アイ「むしろこのまま死なさせてくれ」
悠也「え?」
アイ「せめて死ぬときだけでも綺麗に死なせてくれ」
悠也「おい!」
アイ「悠也、もう大丈夫さ」
悠也「…え?」
アイ「お前は俺なんかよりもずっと目が良いさ」
悠也「んなわけねえよ」
アイ「いや良いよ。お前みたいな人間に最後出会えてよかったよ」
悠也「そんな柄でもないこと言うんじゃねえよ!マジで死んじまいそうで嫌だよ!」
アイ「ありがとな」
アイがしゃべらなくなり停止する
悠也、泣き叫ぶ
●繁華街(数年後)
人でにぎわっている
●小池探偵事務所・中
悠也がソファーに座り資料を見ている
悠也M「俺の親父は名探偵だった。」
悠也、あくびをする
悠也M「親父は俺がこの事務所を継ぐときに仕事をするときは依頼人や関係者の目を見ろ、目こそが第二の顔だからと言っていた」
悠也、コーヒーを入れる
悠也M「今ではその意味は理解できた気がする。人の目は下手したら顔以上にものを言う」
悠也、コーヒーを飲む
悠也M「これは俺の持論だが俺たち探偵はいつ目を見られてもいいように真っ直ぐな目付きをするのも良いことだと思う。それは依頼人に信用されるためだ」
悠也がコーヒーを置く
悠也M「後、この持論は俺が一から考えたわけじゃない。一つの生意気な眼球が学ぶ機会を俺にくれた」
事務所にノックの音が響く
悠也、行こうとするが立ち止まりアイが愛用していた目薬を手に取りさす
悠也「どうぞ!」
悠也、目薬を机に置く
その机には容器に入れられた動かなくなったアイが置かれている

終わり

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コメント

  • 今回が初投稿になります。出来ればストーリーの批評などを頂けたら嬉しいです。脚本を執筆するのは初心者なのでたくさん学んでいきたいです。
    07/26
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