・イタリアの家前
門の前に立っている哲平
永久の表札を確認して中に入っていく
玄関前でインターホンを鳴らすが誰も出てこない
哲平 「……」
恵 『お願い。ちーに顔みせてやって』
哲平 「……」
二階の窓を見上げるが、人の気配がしない
哲平 「……」
急にハーモニカの音が聞こえてくる
哲平 「っ?」
音のする方を見ると庭のベンチに誰かが座っている
哲平 「ちー……?」
こちらを向いて微笑んでいる
哲平M「じゃない……」
***
・庭
ベンチに座っている男をぼーっと見つめていると
またハーモニカを吹き出す
左手薬指の指輪に夕日が反射して一瞬目がくらむ
哲平 「あの……」
男 「ふふっ。てっちゃん、おいで」
哲平 「なんで……俺の名前……?」
男、微笑んでいる
その笑顔につられてゆっくりと近づいていく
男 「ちーを迎えに来てくれたんでしょう?」
哲平 「え、あの……どうして?」
男 「ちーはね、今海にいるよ。君が来るのを待ってる」
微笑む男
哲平 「どうして知っているんですか……? あなたは……」
男 「君がちーを幸せにしてくれるって信じてるよ。僕が出来なかった分、君があの子を大切にしてあげて」
哲平 「でも俺」
男 「ふふふっ、何を不安になっているのー? 大丈夫、君ならできるよ」
男、哲平の手を取り微笑む
指輪を見て疑問を抱く
哲平M「この指輪……どこかで……」
男 「君はこの手をずっと繋いでいてあげてね」
哲平 「手……」
千尋 『その手がね、僕の知ってる手だった。僕はその手を二つ知ってる。恵ちゃんと、パパの手。その手は一生懸命に僕を守ろうとしている手。それが同じだった』
哲平 「恵ちゃんと……パパの……っ──」
哲平、男の顔を見る
微笑んでいる男
哲平 「あなたは──」
男、立ち上がる
男 「さぁ、僕はもう行かなくちゃ。ちーは転びやすいから、早くしないと海に落ちちゃう」
笑いながら門を出て行こうとする
哲平 「待って! あなたはちーの──!」
男、振り返り微笑む
男 「恵ちゃんによろしくね。それと……」
哲平 「え……?」
男 「ありがとうって」
男、去っていく
哲平 「待って! 待ってください!」
哲平、追いかけて門を出るが、去っていった方向には誰もいない
哲平 「そんな……」
立ち尽くしていると、遠くからハーモニカの音が聞こえてくる
それを聞いて微笑む哲平
哲平 「海か……」
走っていく
***
・リビング
哲平、千尋と二人でソファに座っている
哲平 「なぁ、ちー」
千尋 「ん? なぁに?」
哲平 「春さんってどんな人だった?」
千尋 「え? パパ? ふふっ、すっごく優しくてね、かっこよくて、ハーモニカが上手くって、それで恵ちゃんが大好きなの」
笑いながら答える千尋
哲平 「そっか」
千尋 「どうしたのー? 急に」
哲平 「ううん、なんか知りたいなって思って」
千尋 「そうだ! アルバム、見るー?」
哲平 「うん」
微笑むと、戸棚からアルバムを持ってくる千尋
***
・リビング
ソファに座って二人でアルバムを見ている
哲平M「写真の中で笑っている春さんが、庭で会った人なのか、俺にはよくわからなかったけど、それでも俺はあの人の言ったことを守ろうと思う」
ソファに置いてある手にそっと重ねる
それに気づいて微笑む千尋
笑い合う二人
恵 「ただいまー!」
恵、大きな荷物を抱えて帰ってくる
千尋 「おかえりー」
恵 「あ、何、上手くいったんだな?」
恵、笑う
千尋 「ふふふっ」
恵 「やっぱお前は笑ってるのが一番いいよ」
千尋 「恵ちゃんのおかげだよ」
恵 「なーに言ってんだよ! さっ、荷物運ぶの手伝え哲平!」
哲平 「はいはい……何買ってきたんですかこんなに沢山……」
恵 「いろいろだよいろいろ! って……何、アルバム見てたの?」
恵、ソファに座って写真を見る
恵 「懐かしいー」
懐かしげに笑う恵
その手を見て、あの指輪を思い出す
哲平 「……」
恵の左手薬指にはめられている二つの指輪
写真の中で笑っている春を見て
微笑む哲平
恵 「何笑ってんだよ? あ、俺様のカッコよさにビックリしたんだろ?」
哲平 「はははっ」
恵 「? なんだよ気持ち悪ぃな……まぁ春には負けるけどなっ」
千尋 「ねぇ、この時さ……」
哲平 「え?! ほんとに?!」
恵 「違う! この時は!」
三人で笑い合っている
哲平M「あの人が離したくなかったこの手を、ずっと繋いでいよう」
コメント
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。