クリスタル王国物語 その他

これは猫の話、でもただの猫じゃない。きっとどこかにある猫の世界で繰り広げられるヒューマンドラマ・・・否、キャットドラマ。猫になっても良い?そうそう、良いに決まっている。
滝祭 紺手 20 0 0 07/07
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第一稿

登場する猫

ルチル…クリスタル王国の王子。しかし実態は女性、男装の麗人である。この事を知っているのは、王家一族と重臣のみ。ルチルクォーツの力を持ち、金の針を自在に操る。瞳は薄 ...続きを読む
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登場する猫

ルチル…クリスタル王国の王子。しかし実態は女性、男装の麗人である。この事を知っているのは、王家一族と重臣のみ。ルチルクォーツの力を持ち、金の針を自在に操る。瞳は薄い黄色に金針(ルチルクォーツを連想させる)。年齢は人間に換算すると十八歳くらい。

シトリン…ルチルの妹、こちらは王女として育てられた。パワーストーンは文字通りシトリン。あらゆるものを見通し、心の中を覗く事ができ、さらにそれを発信する事ができる。劇中ではこれを「太陽の力」と呼んでいる。その圧倒的な力はシトリン自身の心に多大な影響を与えてしまい、さらにシトリン自身がまだ成熟していない為、母のセレニテスによって力を抑えてもらっている。瞳はオレンジに近い黄色、年齢は十五歳くらい。

クリスタル大王…本名はモリオン、黒水晶の力の持ち主。守りの石、邪気払いの力を持つ。ルチルとシトリンの父親。王国を守る重責は、彼に色々な秘密を作る原因となった。瞳は黒。わりと遅い結婚だったのか、年齢は六十過ぎくらい。

セレニテス…またの名をムーン。ブルームーンストーンの力を持つ。シトリンの太陽とは正反対である、月の力。彼女の月光のような癒しは、シトリンの力と心の安定に不可欠だが、月が太陽を抑えるのは難しく、エネルギーの殆どを使っている。瞳は白だが、暗闇では青く輝く事も。年齢は四十より少し下か。

ファイアー将軍…クリスタル王国の重臣のひとり。ルチル・シトリンの御付きであるジャスパー兄弟の父親。祖父は十四代クリスタル大王の弟であり、その男子直系である事から、現在の王家が滅びた際は王位継承権が与えられる。ファイアークォーツの力を持ち、戦闘時は炎を扱う戦闘タイプ。覚醒時は全身が燃え盛るが本人は平気らしい。瞳は普段は白、石の力を使う時は赤色が混ざる。年齢は六十過ぎ、クリスタル大王とほぼ同じ。

オパール…正確にはピンクオパールの力の持ち主。ファイアー将軍の妻であり、ルチルとシトリンの教育係であり、ジャスパー兄弟の母。子供達の立居振舞は彼女の教育の賜物である。またセレニテスの良き理解者。瞳はミルキーピンク、年齢は四十台半ば。

ジャスパー…正しくはレッドジャスパーだが、長男である為か皆『ジャスパー』という名で呼ぶ。ルチルの御付きだが主従関係は表向きで、実際は兄弟に近い距離間。ジャスパーの力は大地、覚醒時は父を彷彿とさせる燃えるような姿になるが、性質は異なる。その特性故、力を使うことに慎重(逆に災害をもたらす恐れがある)。瞳は赤、年齢は二十歳くらい、気持ちルチルより上。

オーシャン…兄と同じくジャスパーなのだが、こちらはオーシャンジャスパーの力を持つ為『オーシャン』と呼ばれている。シトリンの弟的な存在なのだが、年齢よりもしっかりした印象がある。父や兄と同じく戦闘タイプで、ポセイドンを彷彿とさせる鉾を使い水を操るが、その力はまだ覚醒していない。こげ茶と白のオッドアイ。年齢は十三、四といったところ。

エメラルド大臣…重臣の中でも最長老であるが、やや弄られキャラ感がある。黒猫で、若い時は美しいエメラルドの瞳をしていたが、現在は退色してしまい、薄い緑となってしまっている。エメラルド本来のパワーを(劇中で)見せる事はなく、その点では普通の猫。また、クリスタル系列ではない為、王族との血縁関係も無いようだ。謎が多いものの、クリスタル王国の中核を担っており、王族以外の将軍達からの信頼も厚い。年齢は七十過ぎか。

ライト将軍…ファイアー将軍と並びクリスタル王国軍人の双璧をなす。パワーストーンはライトニングクォーツ。水晶系列は王家との繋がりを示唆する可能性があるが、当人も周りもあまり気にしていない。戦闘時は専用のハンマー(トール神を彷彿とさせる)を使い、超強力な雷を自在に操る。天気が悪ければ悪い程戦いやすい。瞳は白が基調で、部分的に茶色が見られる。年齢は五十歳程度。

カーボン元帥…クリスタル王国の隣国、ダイヤ帝国の元帥。彼はパワーストーンではなく、カーボンナノチューブの力を使う。戦闘時には鎧に覆われ剣を使うが、特性上すべて真っ黒である。それとは別に黒い槍を作りだしたり、カーボンの力を自在に操る。才能と能力に恵まれた故に若くして元帥となったらしい。義理の息子モリオンとの出会いは明かされないが、モリオンの秘められた才能を認め息子とした。瞳は黒、年齢は四十歳程度。

モリオン…黒水晶の力は戦闘タイプではない。が、しかしそれを補って余りある剣の才能を持っている。クリスタル王国出身であると推察されるが、詳しい事は不明。カーボン元帥とは義理の親子関係を結んでいる。あまり自分の事を話したがらない、過去と関係があるのだろう。瞳は黒、年齢は十八歳程度か。

カルセドニー…北の山脈から続く、城の堀代わりの谷にも繋がる川を下った先にある森、通称『カルセドニーの森』に住む。社会のはぐれ者の面倒を見る親分的存在である。民衆に恐れられており、社会的に好ましいとは言えない集団である。その名の通りカルセドニーの力を持ち、人との繋がりを深める力を持つ。その力故なのか、あるいはカルセドニーが水晶系列だからなのか、何かしら王家との繋がりがあるようだ。事実、ファイアー将軍やライト将軍とは面識がある模様。瞳は薄いブルーで、年齢は六十代か。

マラカイト(アズライト)…謎だらけの予言者。アズライト・マラカイトのパワーは『予言』。過去ではアズライト、現在ではマラカイトと名前を変えているが、それは彼のパワーストーンが時間と共に変化したから。普段はフードを被っており神出鬼没、誰もその行動を読む事はできない。過去では青と緑のオッドアイ、現在は緑単色の瞳を持つ。年齢は不詳だが、若くはない。




―――本編―――


一匹の透き通るような青い目をした猫が登場。辺りをキョロキョロ見回した後、にゃあと一声鳴く。クルッと回転ジャンプをすると獣人型に変身する。
ならず者達の親分『カルセドニー』。こちらの視線に気付く。

カルセドニ「なんだ、見つかっちまったのか・・・。そんな驚いた顔をしなさんな。昔から言うだろ、猫は化けるってな。普段見ないだけで、こうやって二本足で立って喋る猫はいるんだぜ?おっといけねぇ、また部下達がやらかしてるみたいでね、急いでるんだ。せっかくだ、俺たちの世界を覗いていったらどうだい?俺達の・・・猫の猫による猫の為の世界にね!」

走っていくカルセドニー。視線が後を追っていき開けた場所に出る。そこは猫の世界。
市。ごった返している。不慣れな、挙動不審な動きをするシトリン。服装も周りの猫に比べて高価で浮いている、ただしシトリン自身は合わせたつもり。

シトリン 「わぁ!可愛い!」
店主   「お嬢さん、この変じゃ見かけない子だね。」
シトリン 「えっと・・・ちょっと遠くから。」
店主   「ひょっとして城下町の子かい?」
シトリン 「そ、そうなの!」
店主   「へぇ~!珍しい。こんな貧乏な市なんかよりあっちの方がいろんな綺麗な物があるだろうに!」
シトリン 「あの辺のものはお城でも見られ…」
店主   「えぇ?」
シトリン 「じゃなくて!えっと!綺麗なのより可愛いのが欲しいの!ね、おじさま、この貝はどこから来たの?」
店主   「これはね、ずーっと南の海にある島でな、ここから何か月も陸路、それから船に…あれ?(シトリンは既にいない)」

市から外れた暗い道。

シトリン 「ハァハァ・・・危なかった。」

気付いたらゴロツキ数名に囲まれている。

ゴロツキA「お嬢さん、迷子かい?」
シトリン 「え・・・私(わたくし)ですの?」
ゴロツキB「わたくし、だってよ!やっぱり金持ちの子か。」
シトリン 「ううん!うちは貧乏よ。」
ゴロツキC「嘘は良くないな、貧乏暮らしでそんな立派な服買えるもんか。」
シトリン 「あれれ?(小声で)一番ボロを選んだつもりだったんだけど。」
ゴロツキA「ここはお嬢さんみたいな子がうろついちゃ危ない、お兄さん達が送ってあげよう。」
シトリン 「いえ、結構ですの。」
ゴロツキD「遠慮する事は無いんだよ?」
シトリン 「いえ、本当に結構です。(目が少し光る、石の力)あっ・・・えっと、私を誘拐するつもりですね?やめておいた方が良いと思いますの。」
ゴロツキD「(小声で)おい、見ろよ首にかけてる宝石。」
ゴロツキC「あぁ。」
シトリン 「これはダメ!」

ごろつき達、心のなかで『こいつは金になりそうだ』という心持。シトリンはそれを探知する。

シトリン 「嫌!えっと…(適当な方向を指さし)あーっ!」
ゴロツキB「えっ!(指さされた方を見るが何もない)あっ!逃げやがった!」
ゴロツキC「待てぇ!」

市の中を逃げるシトリン。混み合っているが、ゴロツキは押しのけながら追いかける。誰もシトリンを助けようとはしない。

シトリン 「(さっきの店)おじさん助けて!」
店主   「んー?」
ゴロツキA「待てぇ!」
店主   「ひぃ!」

店主   『(心の声)あいつらに睨まれたら商売ができなくなっちまう!』

シトリン 「(探知して)そんな!(再び逃げる)」
ゴロツキB「どけぇ!」
店主   「ひぃ!」
シトリン 「しつこいなぁ!」

シトリン、必死に逃げ惑うが壁際に追い詰められる。

ゴロツキA「手こずらせやがって。」
ゴロツキB「心配するなよ、身代金の為だ、傷つけたりしねぇよ。」
シトリン 「いや!」

上から声がする。

ルチル  「おい。」
ゴロツキC「なんだ?」
ゴロツキD「あそこ!上!」
ゴロツキA「誰だ!」
シトリン 「お兄様!」
ルチル  「汚い手で妹に触らないでもらえるか。」
ゴロツキC「汚い手だぁ?キサマ、俺達がカルセドニー一味の者だと分かって言っているんだろうなぁ!?」
ルチル  「もう一度言う。汚い手で僕の妹に触らないでもらえるか。」

ルチル、金針の槍を出す。

ゴロツキB「あ、あれは・・・まさか!」

ジャスパー兄弟が走ってくる。

ジャスパー「コラァ!お前達!」
ゴロツキD「兄貴、足!」
ゴロツキA「なんじゃコリャ!?」

ゴロツキ達の足元の土が変形し、足が埋もれる(ジャスパーの能力)。

オーシャン「このお方をどなた心得ている!我がクリスタル王国の王子ルチル様と、その妹君シトリン様だ!」


『タイトル』


城の一画にある庭。

ルチル  「ダメじゃないか勝手に城を抜け出したりして!」
シトリン 「ごめんなさい・・・。」
ルチル  「何かあったらシトリンだけの問題じゃないんだ。御付きのオーシャンだって責任を取らなきゃいけなくなるんだぞ!」
オーシャン「御無事で何よりでした。」
シトリン 「だってぇ・・・。」
ルチル  「だって、なんだ?」
シトリン 「お城は息苦しくって・・・。」
ルチル  「・・・(ため息)。とにかく、一人で抜け出すなんてもってのほかだ。分かったな?」
シトリン 「オーシャンと一緒なら良い?」
ルチル  「・・・安全な所ならな。オーシャン、頼んだよ。」
オーシャン「お任せを!」
ルチル  「くれぐれもオーシャンを困らせるな。」
シトリン 「お兄様!あの・・・今日の事は・・・お父様には・・・。」
ルチル  「・・・(微笑んで)心配するな、言ったりしないよ。」
シトリン 「ありがとう!大好き!(抱きつく)」
ルチル  「次は無いからな。」

ジャスパーがやってくる。

ジャスパー「ルチル様、そろそろダイヤ帝国の使者がやってくる時刻です、陛下もお呼びです。」

謁見の間。クリスタル大王(手にコア・クリスタルの杖)、王妃セレニテス(首からペンダント、以後ずっと外すことは無い)、ルチルとシトリン、ジャスパーとオーシャン。エメラルド大臣とライト将軍とファイアー将軍。その他大勢。

臣下   「御使者の到着!」

ラッパの音と共にダイヤ帝国の使者の列が入ってくる。先頭にカーボン元帥、その斜め後ろにモリオン。階段下まで進み片膝をつく。

クリスタル「遠路遥々ようこそお出でくださった。」
カーボン 「ありがとうございます、クリスタル大王陛下。私、ダイヤ帝国元帥カーボンと申します。ダイヤ帝国を代表しまして、平和条約締結の為参りました。こちら我がダイヤ帝王からの書状でございます。」
クリスタル「ライト将軍。」
ライト将軍「はっ。」

ライト将軍が受け取り、王に渡す。

クリスタル「ふむ・・・皆の者、ダイヤ帝王は今までの事は忘れ、手を取り合おうと申しておるぞ。」
ファイアー「バカな。過去を忘れろと言うのか?」
クリスタル「確かに。隣国の宿命なのか、我々は何度もいざこざを起こしてきたからのぉ。とくに国境付近の領土問題・・・」
ファイアー「そうだ!ダイヤ帝国は何度も侵犯を繰り返している!それだけじゃないぞ、あんな腹黒い連中信じられるか!平和条約なんてもっての外だ!」
エメラルド「御使者の前でやめんか!」
クリスタル「カーボン元帥殿、正直なところ我が国ではファイアー将軍のように考える者も少なくない。そなたはどうお考えかな?」
ファイアー「敵の言葉に耳を貸すことはありません、陛下!」
クリスタル「これファイヤー将軍。おぬしはさっきから私の話の遮ってばかりおるのぉ。」
エメラルド「そうですぞ!大体貴殿は普段からお喋りが過ぎるのだ。」
ファイアー「はっ・・・申し訳ございません。」
クリスタル「カーボン元帥、そなたの率直な気持ちを教えてはくれぬか?」
カーボン 「陛下、こちらに控えておりますのは、私の息子でございます。」
クリスタル「立派な青年だ、名はなんと申す?」
モリオン 「モリオンでございます。お目にかかれて幸栄でございます。」
クリスタル「なんと!モリオン、とな?」
ライト将軍「陛下と同じではないか!?」
モリオン 「では陛下も・・・?」
クリスタル「そうだ、わしの本名はモリオン。黒水晶の力を持っておる。」
ファイアー「しかし、カーボンなどという水晶は聞いた事が無いぞ。」
カーボン 「カーボンは水晶ではありません。つまり・・・モリオンは私の本当の息子では無いのです。おそらく、事情はわかりませんが・・・このクリスタル王国のどこかから・・・。しかし、今では私の息子同然、そして息子の故郷であろうこの王国、私は息子と同時にもうひとつの故郷を持ったのです。」
クリスタル「ふむ、エメラルド大臣。」
エメラルド「はっ。」
クリスタル「我がクリスタル王家の家系図をお見せしなさい。」

巨大な家系図、垂れ幕みたいなもの。

エメラルド「えーっ、ゴホン。当代クリスタル大王陛下は、初代から数えまして16番目、つまり第16代クリスタル大王でございます。ゴホン!まぁ改めて説明する必要はありませんでしょうが、我々ネコ獣人族はパワーストーンの力を宿す事があります。初代クリスタル大王は文字通りクリスタル、つまり純粋な水晶の力をお持ちでした。そして、陛下が今お持ちになっております、コア・クリスタルの杖と深い繋がりがございました。」
ライト将軍「大臣、そんな事まで喋ってはいかん。」
クリスタル「まぁまぁ、良いではないか。」
ライト将軍「しかし・・・。」
クリスタル「コア・クリスタルの力は余所の者が知ったとて役には立たんよ。エメラルド大臣、続けなさい。」
エメラルド「はっ。只今陛下が申し上げました事は、コア・クリスタルを受け継いだものが王となるという意味でございます。これには条件がございまして、必ず『水晶系列のパワーストーンの力を持つ者』でなければなりません。これも説明するまでもございませんでしょうが、パワーストーンの力は父親から受け継がれるものです。従いまして、我がクリスタル王国では王は必ず男でなければならない、と決まっているのであります。女ですと、次の代が途絶えてしまうからであります。先代の王はアメジスト、その前はアゲート。もし王が息子に恵まれなければ、王の兄弟もしくはその息子、という順番になりまして、第7代クリスタル大王の時には・・・。」
クリスタル「大臣、もう結構。」
ライト将軍「大臣も喋りだすと止まらんからなぁ!」

一同、ドッと笑う。
ファイアー将軍の部下がファイアー将軍に何かを耳打ちする。

ファイアー「なんだと!それは本当か!?」
クリスタル「紹介しよう、わしの息子と娘だ。」
ルチル  「ルチルです、ダイヤ帝国の名高きグラファイト元帥のお目にかかる事ができて嬉しく思います。」
カーボン 「王子様、こちらこそ幸栄な事でございます。」
シトリン 「シトリンと申します。ようこそお出でくださいました。」
カーボン 「おぉ、太陽の力をお持ちなのですね?」
クリスタル「その通り、我が妻から太陽の力が生まれるとは感慨深いものじゃ。紹介しよう。我が妻、つまりクリスタル王妃『セレニテス』じゃ。」
セレニテス「この出会いが、互いの平和への架け橋となりますように。」
カーボン 「勿論でございます、御妃様。・・・珍しいお名前をお持ちですね。」
シトリン 「お母様にはもうひとつ名前がございますの。ムーン、つまりお母様のパワーストーンはムーンストーンですの。」
カーボン 「成程、この王国には月と太陽がいらっしゃる。将来は約束されておりますなぁ。」
クリスタル「しかし、同じパワーストーンを持つ猫に出会う事はなかなか難しいと言われるが、本当にクリスタル王国出身なのか?」
モリオン 「それが、残念ながら本当の事はよくわからないのです。というのも、幼い頃の記憶がほとんど残っていませんで。」
クリスタル「そうか、大変だったのじゃの。」
モリオン 「父と出会っていなかったら、こんな立派な服を着る事はなかったでしょう。」
カーボン 「本当にたまたまでしたが、剣の稽古をつけてみましたところ、みるみる上達しまして。これなら我が家を継ぐに相応しいと思い、息子にしたのです。」
クリスタル「うーむ、血は繋がっていなくとも、立派な親子じゃな。」
モリオン 「血が繋がっていても他人同然という事もありますからね。」
クリスタル「え?」
ファイアー「陛下!失礼(耳打ちする)。」
クリスタル「まことか?」
ファイアー「はっ。」
セレニテス「陛下、せっかくです。使者にお城を案内して差し上げてはいかがでしょう?」
クリスタル「おぉ、よくぞ気が付いた。ふむ・・・ルチル、シトリン。お前達が案内して差し上げなさい。」
ルチル  「畏まりました。」
ライト将軍「お待ちを。良いのですか、これから平和条約を結ぶとはいえ、今まで争ってきた相手です。城の内部をあまり知られては。」
ルチル  「それは尤もな意見と言いたいところですが。モリオン殿を見るとなんだか他人とは思えない気がします、私は疑いたくありません。」
セレニテス「シトリン、あなたはどう思うかしら?(こっそりムーンストーンの力を弱める)」
シトリン 「えっと・・・(突然涙が溢れだす)あれ?」
クリスタル「ど、どうした?」

セレニテス、溜息をついて再びムーンストーンの力を強める。やっぱりダメか・・という心持。

シトリン 「申し訳ありませんですの、もう大丈夫です。」
カーボン 「ははは、美しい王女様に涙は似合いませんよ。」
ルチル  「いや、申し訳ありませんでした。ところでカーボン元帥、食事はいかがなさいますか?」
カーボン 「頂きたい、実は空腹でしてな。なぁ、モリオン。」
モリオン 「はい。」
ルチル  「では、お城の案内はその後にしましょう。皆の者、御使者に食事の準備を。」

お城にある、ルチルとシトリンのプライベートゾーン。外でルチル・シトリン・ジャスパーがくつろいでいる。養育係のオパールとセレニテスは部屋の中。

セレニテス「まぁ、シトリンが城を?」
オパール 「はい、申し訳ございません。」
セレニテス「いいえ、これは私の責任でもあります。」
オパール 「後でキチンと言い聞かせます。」
セレニテス「あまりきつく言わないであげてね。きっと・・・本人に自覚は無いだけなのでしょう。」
オパール 「何がでございますか?」
セレニテス「あの子に持たせてある私のムーンストーンの事。あの子の力はとても強いから・・・でも抑制されているのが心にも影響しているのだわ・・・。」
手下   「御妃様、陛下がお呼びです。」
セレニテス「分かりました、すぐに参りますと伝えて頂戴。オパール、あの子達の事はお前が頼り、どうか・・・。」
オパール 「はい、よく分かっております。」
セレニテス「ルチルも・・・。」
オパール 「御妃様のお苦しみはよく分かっておりますとも。お二人の事はきっと私が。」
セレニテス「そう、そうよね。それに一番辛いのはあの子達自身なのだから・・・。」
オパール 「陛下がお呼びですよ。」

すれ違うようにオーシャン。

オーシャン「母上。」
オパール 「聞いていたの?」
オーシャン「少し。」
オパール 「他言は。」
オーシャン「分かっています。」

プライベートゾーンの庭。部屋の外。ルチル、シトリン、ジャスパー。

ルチル  「あーくたびれたなぁ!」
シトリン 「お父様、何か慌てた様子でしたけど、何かあったのでしょうか。」
ルチル  「さぁ・・・?ジャスパー、何か聞いてるか?」
ジャスパー「いや。しかしあの様子、かなり驚かれていたようですね。」
ルチル  「そうだな・・・あんな驚いた父上を見たのは、シトリンの力が暴走しかかった時くらいじゃないか?」
シトリン 「私もう子供じゃありませんの。だからきっと!」
ルチル  「やめとけって。ごろつき相手に震えていたじゃないか。」
シトリン 「もう!お姉様の意地悪!」

ルチル、『お姉様』というワードに『えっ』という感じで反応する。

ルチル  「あっはっはっは!また、ばあやに怒られるぞ。」
シトリン 「お姉様はお姉様だもの、本当なんだから仕方ないでしょ。」
ルチル  「僕は男なのさ。」
ジャスパー「世間ではイケメンだと評判ですが・・・こんなに美人な男も珍しいですね。」
ルチル  「ジャスパー!君まで!」
シトリン 「そんなに照れなくても良いじゃない?」
ルチル  「やめて、やめてくれ・・・。僕は男なのだから・・・王子として・・・生きるのだから。」
ジャスパー「ルチル様・・・。」

オパールとオーシャンがやってくる。

オパール 「さぁさぁ、あまりくつろぐと御使者をお待たせしてしまいますよ。」
ルチル  「はーい、ばあや。」
オーシャン「兄上、なんか神妙な顔をしてますね?」
ジャスパー「え?そうかな?」

ルチルとジャスパーは先に行く。思い悩むシトリン。オーシャンが気付いて、

オーシャン「いかがなさいましたか、シトリン様。」
シトリン 「なんでもないの。ただね、たまに思うの、このままじゃいけないって。」
オーシャン「・・・。」
シトリン 「ね、オーシャン。あなたは私の味方ですよね?これからもずっと。」
オーシャン「何を仰るかと思えば。お二人の将来は、我ら兄弟の将来です。」

カーボン元帥・モリオン両名を案内するルチルとシトリン。ジャスパーとオーシャンも付いている。様々な情景。

ルチル  「この城はもともと小高い山だったところを、初代クリスタル大王が城を建て、それから現在まで改築しながら発展してきた歴史があります。残念ながら初代が建てた名残は土台付近の他は殆ど残っておりません。」
カーボン 「深い谷ですな。」
ルチル  「城の北から西側にかけて続いています。自然を活かした堀ですね。川の流れがかなり強いので船もほとんど通りません。」
モリオン 「どこに続いているのですか?」
ルチル  「川ですか?城下町から少し離れたところに市があります。そのはずれにある、カルセドニーの森と呼ばれている場所・・・あまり近づかない方が良いとされている森です。」

モリオン、北側にある谷を渡る橋を見つける。城の規模のわりには細い。

モリオン 「あれは?」
ルチル  「あぁ、使う事はめったにありません。北の山脈に続いていますが・・・あれを越えてまで向こう側へ行こうなんて、普通考えませんからね。ひと昔前までは、山で修業をする猫がいて、その者達の為に使っていた橋だと聞いています。」

同時刻、城の密会の間。王・王妃、エメラルド大臣・ライト将軍・ファイアー将軍。
フードを被ったマラカイトが部屋に入ってくる。

クリスタル「おぉ・・・そなたは。」
マラカイト「お久しぶりでございます、陛下。」
エメラルド「アズライト!」
マラカイト「フッフッフ・・・懐かしい名だ。(フードを脱いで)改めて自己紹介を、私の名はマラカイト。」

城の東側、二重の城壁うち、内側の城壁の上。外側は広場になっている。

ルチル  「こちらには谷がありませんので、二重の城壁を作ったわけです。有事の際は防衛ラインになりますが、重要な発表やお披露目の時はこの広場に民衆を集める事になっています。明日、お二人にも立っていただきますよ。」
シトリン 「平和の使者として、是非お願い致しますの。」
カーボン 「勿論です、王女様。ちょっと恥ずかしいですがね。」

密会の間。荒れている。

エメラルド「どういう事だアズライト!」
マラカイト「ですから今の名前はマラカイト・・・」
エメラルド「そんな事はどうでも良い!今の発言はどういう意味だと聞いている!」
マラカイト「そのままですが。予言は絶対。あの時の予言は活きております。」
ファイアー「陛下、かつて私は申し上げた筈です、このような予言など信じるべきではないと!」
ライト将軍「アズラ・・・いやマラカイト。そもそもおぬしは今までどこにいた?何故予言の後姿を消したのだ。」
マラカイト「理由などありましょうか。私は運命の指さす所へ、ただそれだけの事。」
ライト将軍「では何故またこの城にやってきたのだ。」
マラカイト「運命が、まもなく動き出す予兆を見たからです。」

城の塔。高い。

モリオン 「おー!」
シトリン 「ここが一番見晴らしの良い場所ですの。」
ルチル  「山脈の向こうは流石に見えませんが。」
モリオン 「これが・・・クリスタル王国・・・。」
ルチル  「そうです!広いでしょう?」
カーボン 「ところでルチル王子。貴方様の噂は我がダイヤ帝国まで隠れもないものとなっております。」
ルチル  「それはまた何故?」
カーボン 「またまた御謙遜を。『金針のルチル王子』と言えばクリスタル王国最強・・・と。」
ルチル  「えぇ?そんな事はありませんよ!」
カーボン 「是非ともその腕前が見たいものですなぁ。」
ルチル  「いやしかし・・・。」
シトリン 「良いではありませんか。お兄様の腕は確かのですから。」
ジャスパー「そういう問題ではありません、ダイヤ帝国元帥とクリスタル王国の王子が、練習試合とはいえ、戦えば個人の問題ではなく、国の威信をかけたものになってしまいます。」
モリオン 「では、私ではどうでしょう?」
ルチル  「えぇ?」
モリオン 「私は元帥・・・父に付き添って来ただけですし、国の代表と呼べる者ではありません。私ならば角が立つ事はありますまい。」
シトリン 「(ジャスパーに)どう?」
ジャスパー「ふむ・・・まぁそれなら確かに。良いでしょう。」
カーボン 「では決まりですな!」
ルチル  「いや勝手に話を・・・。」
シトリン 「せっかくですから!自慢のお兄様!」
ルチル  「またそんな事を・・・。」

予言の間、まだ荒れている。

クリスタル「では予言が・・・。いやしかし!そんな筈は無いのだ!」
エメラルド「そ、そうだ!絶対ありえないのだ!」
マラカイト「だからあの時、予言を聞くのはおやめなさいと言ったのだ。あなた達がどんな手を使って運命を変えようとしたかは知らぬ。だが・・・全ては無駄な努力だった。クリスタル大王よ、あなたは破滅する。他でもない、ルチル王子によってね!」

城の一画。ルチルとモリオンは練習用の武具を身につけている。

ルチル  「モリオン殿、やるからには遠慮は不要だぞ。」
モリオン 「王子様こそ、手加減なしでお願いします。 (部下に)練習試合用の剣をくれ。」
ルチル  「準備できたかい?」
モリオン 「王子様もさぁ、剣を。」
ルチル  「武器ならここにあるさ。(細い剣状の金針を出す)」
カーボン 「おぉ・・・あれが!」
シトリン 「御所望の金針ですの。」

ルチル・モリオン互いに構える。

ジャスパー「始め!」

激しく戦うが、剣の腕前自体はほぼ互角。ルチルは『こいつ、強い』という心持。

オーシャン「凄い・・・。」
カーボン 「手前味噌だが、モリオンは国一番の剣士でしてな。」

密会の間、マラカイトはいない。大王・王妃・重臣による討論。セレニテスは終始沈黙。

ライト将軍「マラカイトのやつ・・・また厄介な。」
ファイアー「やはり予言など聞くべきではなかったのだ!」
エメラルド「くどい!」
ライト将軍「それに貴殿は反対したと言うが、いざとなったら進んで事に乗っていたではないか。」
ファイアー「そ、それは・・・。」
エメラルド「ふん!魂胆は見えておるわ。ルチル王子の代で王家が途絶えれば、次の王は代14代大王の弟、つまり先代のジャスパーの男子直系である貴殿に白羽の矢が立つ。」
ファイアー「き、きさま!私が王位を狙っているとでも言いたいのか!」
エメラルド「それとも息子のジャスパーに王位を?」
ファイアー「ぶ、無礼だぞ!」
クリスタル「それくらいにせんか。心配はいらぬ・・・。」

王達の会話は続くが、場面はルチルとモリオンの戦い。

クリスタル「あの予言は実現しない。そうじゃろ?」
ライト将軍「うむ・・・マラカイトの予言が一語一句正しいとすれば、予言は実現しない事になります。」
クリスタル「ルチルがワシを破滅させる事は絶対にありえない・・・だから心配はいらぬ。」

モリオンの本気。殺気。シトリンの力が発動。

シトリン 「えっ・・・?お姉様あぶな・・・!」

シトリン、思わず口にしてしまった『お姉様』という言葉にギクッとする。カーボン元帥をチラ見するが聞いていない様子。ホッとする。
ルチルとモリオン、互いの喉元に剣先。

ジャスパー「そこまで!」

モリオンは剣を部下に渡す。ルチルは針を消す。

ルチル  「いやぁ強い!」
モリオン 「いえ、実戦だったら私の負けでした。」
ルチル  「何故?」
モリオン 「私の武器は剣ひとつ、ですが王子様は本来剣だけではない筈。」
ルチル  「・・・どうだか。」

夜。プライベートゾーンで話すオパールとシトリン。

オパール 「そんなにお強いのですか、そのモリオンという方は。」
シトリン 「そうなの・・・でね、私には、モリオン殿がお兄様を・・・殺そうとしたように感じられて・・・。」

オパール、笑う。

オパール 「お嬢様、それはそうでしょう。」
シトリン 「え?」
オパール 「練習試合とは言っても、試合は試合ですよ。それくらい当然です。」
シトリン 「そう、なのかしら。」
オパール 「ルチル様が強い事の裏返しですよ。」
シトリン 「そう・・・そうですわね!きっとそうなんだわ!ありがとう、ばあや!」
オパール 「さぁ、はやく寝室へお戻りなさい。明日も忙しいですよ。」
シトリン 「はい、ばあや。」

シトリン、部屋を出ようとする。

オパール 「お嬢様。」
シトリン 「なあに、ばあや。」
オパール 「あなたはルチル様を大切にしていますね?」
シトリン 「え?勿論ですの!だって私のたったひとりの(お姉様と言いかけてやめる)。」
オパール 「それなら良いのです、おやすみなさい。」

カーボン元帥とモリオンの部屋。

カーボン元帥「ここの者は誰もいないな?」
部下   「はっ、おりません!」
カーボン 「部屋の外で見張っていろ。誰か来る気配がしたらノックして知らせろ。良いな?」
部下   「はっ!」

部下、ドアを閉めて外で見張る。

モリオン 「どうやら間違いなさそうだぜ、元帥。」
カーボン 「言った通りだろう。」
モリオン 「偽物め!何が王子だ!」
カーボン 「女の王子か・・・悪くはないがな。」
モリオン 「だが分からない・・・どうしてこんな事を・・・!」
カーボン 「落ち着け、計画通りに進めるぞ。」
モリオン 「・・・あぁ。」
カーボン 「明日、日が暮れるまでにはおおよその事は分かる筈さ。」
モリオン 「約束は守るんだろうな!」
カーボン 「これでも政治家ではなく軍人だぜ?嘘は苦手のつもりなんだが。」
モリオン 「明日・・・!(手に何かを握っている)」
カーボン 「そうだ。最後の晩なんだ、名残を惜しんで乾杯しようじゃないか。」
モリオン 「そんな気分じゃねぇ!(部屋を出る)」
カーボン 「おやおや・・・冷たいねぇ。」

同じ頃、クリスタル大王と呼び出されたルチル。塔の上。夜のクリスタル王国。

ルチル  「お呼びでしょうか、父上。」
クリスタル「おぉ、すまんの。こんな時間に。」
ルチル  「いえ・・・それでお話というのは・・・。」
クリスタル「実は、とくにはないのだ。」
ルチル  「はぁ・・・。」
クリスタル「美しい眺めだと思わんか?」
ルチル  「はい。」
クリスタル「わしはこの景色を守るために・・・沢山の事を・・・お前は分かってくれるな?」
ルチル  「勿論です。」
クリスタル「(ルチルの目を見て)お前は王子として、やがてワシの跡を継ぐ運命にある!分かっておるな!」
ルチル  「はい!・・・何か至らぬ事がありましたでしょうか?」
クリスタル「いやそうじゃない。(帰る方向へ歩みながら)心配するな、お前はわしの自慢の息子じゃよ。わざわざすまんの、もう休め。」
ルチル  「はい。おやすみなさい、父上。」
クリスタル「おやすみ。」

ルチルは残って夜景を見ながらたそがれる。ジャスパー、そっと近寄る。

ジャスパー「(町の方を見ながら)猫はやっぱり夜に限りますね。」
ルチル  「聞いていたのか。」
ジャスパー「たまたまです。」
ルチル  「どうだかね。」

少しの間無言。

ジャスパー「私は反対です。」
ルチル  「僕が王になる事がか?」
ジャスパー「いえ・・・息子である事が。」
ルチル  「ジャスパー・・・。」
ジャスパー「私には・・・理想の息子である事を演じているように・・・。あなたは美しい。」
ルチル  「時々思う事はある、もし女として生きていたらどうなっただろうかってね。」
ジャスパー「今からでは、間に合いませんか?」
ルチル  「えぇ?それは無理だろう、君だって分かっているじゃないか。僕は国王となるんだ。でも残念だ、クリスタルの力は僕の代で終わり・・・本物の男だったらなぁ・・・。いや、違ったな。ジャスパー、君もクリスタル大王の直系だったか。」
ジャスパー「私は、ルチル様を護る者。王の器ではありません。」
ルチル  「そんな事はない・・・君なら・・・。」

翌日、広場に集まった民衆。城壁の上にエメラルド大臣、ライト将軍・ファイヤー将軍。クリスタル大王、セレニテスがカーボン元帥とモリオンを連れて登場、並んで座る。ルチルとシトリンはいない。
城壁で喋っている事は拡声器で流れている。

エメラルド「えーゴホンッ(マイクテスト)。国民諸君、よく集まってくれた!残念ながら若干天気が怪しいが・・・しかし!我がクリスタル王国の未来は明るいのであります!何を隠しましょう、長い間紛争の絶えなかった隣国、ダイヤ帝国が平和条約を結びたい旨をそこにいらっしゃいますカーボン元帥を使者として送ってきたのであります!諸君の間には、紛争で被害を被った者もいるだろう、ダイヤ帝国が憎いと思っている者がいる事、このエメラルド大臣、よーっく分かっている!だが!今こそ負の感情は捨て、平和を!明るい未来を・・・・ん?」

ファイアー将軍とライト将軍が『早くしろ』という合図。

エメラルド「あー・・・ゴホンッ。ではまず、我がクリスタル王国の最高にして象徴!クリスタル大王陛下よりお言葉を頂戴したいと存じます。陛下、お願い致します。」
クリスタル「大臣、簡潔な挨拶をありがとう。」

民衆、クスクスと笑う。
場面変わり、同時刻の城の裏側。マラカイトがフードを深くかぶり城を出ていこうとするのを、ルチルが見つける。

ルチル  「何者!」

小さい針を飛ばして行く手を遮る。

マラカイト「怪しい者ではございません・・・私はマラカイトと申します予言者でございます。あ!あなたは・・・。」
ルチル  「この国の者ならその針を見ればわかる筈。」
マラカイト「王子様!」
ルチル  「マラカイト・・・と言ったな。初めて聞く名前だ。」
マラカイト「昔はアズライトと呼ばれておりました。王子様・・・いや・・・まさか・・・そんな!」

城壁。

エメラルド「ではカーボン元帥、ダイヤ帝国を代表してお言葉を願います。」
カーボン 「紹介にあずかりましたカーボン元帥です。まぁ、つまり軍人なわけで、こういう事には不慣れなもので・・・えー。何故私が使者に選ばれたかを話しますと、そこにいますのは私の義理の息子、名はモリオンと言います。」

民衆ざわつく。

カーボン 「そう、モリオンの出自はこのクリスタル王国にあるのです。大臣殿、願わくはモリオンに発言の許可を。」
エメラルド「陛下。」

クリスタル大王、頷く。

エメラルド「どうぞ。」

モリオン、静かに立る。

モリオン 「・・・クリスタル王国の民達よ・・・私はとても悲しい。同情を禁じ得ないのだ。お前達は騙されている!」

ルチルとマラカイト。

ルチル  「どうした?」
マラカイト「あなた様は・・・馬鹿な!ルチル様!このマラカイト、怪しいのを承知で申し上げます!何かが・・・何かが起きようとしています!陛下を・・・国王陛下をお守りしなさい!早く!」
ルチル  「落ち着きたまえ、何を・・・」

城壁の方で悲鳴や騒ぐ声。
ジャスパーが走ってくる。

ジャスパー「ルチル様!」
ルチル  「何事だ!」

再び城壁。正体を現したモリオン。黒針を大王の喉に当てている。

モリオン 「全員動くな!動いたら・・・分かっているな!」
ライト将軍「おぬし・・・モリオンというのは嘘だな!」
モリオン 「そうだ!だが、お前達・・・とくに大王!お前はこの黒針を知っている筈だ!そうだろう、答えろ!」
クリスタル「な、な、なんの事だ。」
モリオン 「とぼけるのか・・・・良いだろう!だったらこれを見ろ!」

ロケットペンダントを見せる。

クリスタル「ま、まさか!」
モリオン 「開けてみやがれ!」

大王は震える手で開けてみる。若き日のセレニテスが描かれている。

クリスタル「あぁ!」
モリオン 「さぁ正直に言え!俺は・・・誰だ!」
クリスタル「む、息子よ・・・。」
モリオン 「皆に聞こえるように!」
クリスタル「お前は、わしの息子だ!」
セレニテス「あぁ!(失神する)」

民衆、動揺して大騒ぎ。

モリオン 「聞け!俺はルチル!ただし・・・黒針のルチル・・・本当の名前はブラックルチルだ!正真正銘、このクリスタル大王の息子だ!そうだな?」
クリスタル「間違いない・・・。」

ルチルとジャスパー城壁の上に飛び乗る。

ルチル  「父上!」
モリオン 「動くな!」
ルチル  「その針は・・・!」
モリオン 「出たな偽物め・・・!」
ルチル  「どういう意味だ。」
モリオン 「聞きたいのはこっちだ!俺の偽物を、何故女にやらせている!」

民衆さらにざわめく。

エメラルド「あぁ何もかもおしまいだ!」
ルチル  「待て、どういう事だ。」
モリオン 「それは王自ら話してもらおうか!何故俺を捨てた!何故偽物を、しかも女を仕組んだのだ!」

マラカイトが静かに歩み出る。

マラカイト「それは私から説明しよう。」
モリオン 「誰だお前は?」
マラカイト「私はマラカイト、予言者だ。ルチル王子が生まれる少し前の事、私はこの城に立ち寄った。クリスタル大王は、私に予言を依頼した。私は最初、断った。予言というものは、むやみに聞くものではない・・・それに私には見えていた。予言は不吉なものになる事がね。だが王は是非と仰る。そこで私はお教えしたのだ。」
モリオン 「その予言の内容は!」
マラカイト「あなたは破滅する、息子によって。そして今、その予言は現実となった。私は最初、ルチル王子が王を破滅させるものと思っていた・・・しかしルチル王子は女性だった!」
モリオン 「それで・・・それで俺は捨てられたのか!」
クリスタル「ファイアー将軍!これはどういう事だ!あの時・・・あの時殺せと言った筈だぞ!」

ファイアー将軍、何も答えない。

モリオン 「殺せ・・・?お前は・・・俺を・・・息子を殺そうとしたのか!」
クリスタル「そうだ!お前はわしは破滅させる!そうなったら、この国も破滅する、お前は死ぬべきだったんだ!」
モリオン 「だったら予言通りにしてやる!」

モリオン、黒針で大王を一突き。

クリスタル「ぐわぁ!」
ルチル  「父上!」

カーボン元帥の合図でダイヤ帝国の兵士が乱入、民衆は散り散りとなって逃げていく。

ライト将軍「おのれ元帥!」

ライト将軍、雷の力を開放。同時に曇っていた空から雨が降り始める。
城壁の下にシトリンとオーシャン。

オーシャン「これはライト将軍の!いけません、感電してしまいます!」
シトリン 「だってお父様とお母様が!」
オーシャン「ルチル様にお任せしましょう!」
シトリン 「でも!」
オーシャン「私が行きます!シトリン様は、御自分の安全を!良いですか!あなたの替えは利かないのですよ!」

オーシャンは走って登っていく。

シトリン 「あなたの替えは効くって言うの・・・?」

城壁の上、対峙するカーボン元帥とライト将軍。ライト将軍の手にハンマー。

カーボン 「かつてクリスタル王国の雷神と恐れられたライト将軍と戦えるとは幸栄、だが貴方の伝説はここまでだ!」

カーボン元帥が剣を抜くと同時に、黒い物質が体を覆い、鎧の形状になる。剣の刃も黒。
両者、激しく戦う。ライト将軍の雷が激しく誰も近づけないが、カーボン元帥にはあまり効いていない様子。
死にかけのクリスタル大王。
モリオンと戦うルチル。実力は互角。
ジャスパーはこの間に気を失っているセレニテスを担いで城壁を飛び降りる。

ルチル  「よくも父上を!」
モリオン 「笑わせるな!偽物め!」
ルチル  「僕は偽物なんかじゃない!」
モリオン 「いいや偽物だ!お前は誰なんだ!」
ルチル  「僕は・・・僕は・・・。」

ルチル  「(心の声)僕は一体・・・誰なんだ?」

シトリン 「お母様!」
ジャスパー「大丈夫、気を失っているだけです。」
シトリン 「お父様は!?」

ジャスパーは首を横に振る。泣くシトリン。

オーシャン「ルチル様!ここは僕に任せて陛下を!」
ルチル  「わかった、ありがとう!」
モリオン 「ボディガードの青二才か、お前なんか相手になるもんか。」
オーシャン「どうだろうな、来い!」

オーシャンの呼びかけに応じて空から鉾が出る。雨が鉾に呼応するように蠢く。

モリオン 「水の力か。」

戦闘、オーシャンが実力的に不利。
クリスタル大王とルチル。

ルチル  「父上、しっかり!」

傷を見て絶望、急所。

クリスタル「わしは間違っていた。何もかも・・・。」
ルチル  「父上・・・!僕はあなたの息子ではなかったのですか?僕は偽物王子なのですか・・・?」
クリスタル「(意識が混濁)許してくれ・・・許してくれ・・・わしはただ王国を守りたくて・・・。」
ルチル  「父上!僕を見てください、僕は誰ですか!」
クリスタル「(ルチルを見て)ルチル・・・!お前は・・・(言葉が途切れてそのまま死ぬ)。」
ルチル  「・・・・・・ひどい、あんまりです父上!僕は、僕は一体!」

ルチル、戦意喪失。

カーボン元帥とライト将軍。まだまだ決着がつきそうにない。

カーボン 「どうしたどうした!」

ライト将軍は戦いながら、何故電撃が効かないのか考えている。

ライト将軍「鎧か・・・?」

一気に懐に潜り込む。素早く反応するカーボン元帥。

カーボン 「む!?」

ライト将軍の手元にハンマーがない。

カーボン 「上か!」

避けようとするが間に合わず、ハンマーがカーボン元帥の肩を直撃、鎧にヒビ。

カーボン 「クッ!やるな!」

カーボン元帥、ライト将軍から剣を抜きながら後退する。流血するライト将軍。
ファイアー将軍が間に入る。

ファイアー「お待ちを。」

奮戦するも徐々に追い詰められるオーシャン。

オーシャン「くそっ!」
モリオン 「ふん、所詮はボディガードか。」
ジャスパー「待て!」
オーシャン「兄上、助かります!」
ジャスパー「無駄な抵抗はやめるんだ、オーシャン。」
オーシャン「あ、兄上!?」
モリオン 「ほう?」
ジャスパー「二度も言わせるな、無駄な抵抗はやめて職務に戻れと言っているんだ。」
オーシャン「う、裏切るのか!ルチル様を!シトリン様を!」
モリオン 「あいつはもう王子じゃない、そうだな?」

片膝をつくジャスパー。

オーシャン「兄上!」
ジャスパー「物分かりの悪い弟だ・・・ここは私が。」
モリオン 「好きにしろ。」
オーシャン「兄上ぇ!」

ジャスパーに襲い掛かるオーシャン。
ライト将軍に話しかけるファイアー将軍。

ファイアー「何故戦うのだライト将軍。」
ライト将軍「何故だと!国王殺しだぞ!」
ファイアー「カーボン元帥は殺してなどいない、殺したのは・・・新しい国王陛下だ。」
ライト将軍「血迷ったかファイアー!次の王はルチル様と決まっている!」
ファイアー「無駄だ!女である事がバレてしまった以上、ルチル様に継承権は無い!それに正真正銘、ブラック様が生きていたのだ。となれば次の王はブラック様とするのが王家のしきたりだ!」

エメラルド大臣が顔を出す(彼は戦う術がない。)。

エメラルド「私はライト将軍に賛成だぞ!第一いくら本物の息子であっても、王家としての教育をまともに受けていないのに、どうして国王など務まるのだ!それにファイアー将軍!貴殿の妻はルチル様とシトリン様の教育係ではないか!なのに裏切るとはどういう了見だ!」
モリオン 「ほう、反対なのか。」

エメラルド大臣、ギクッとして振り返る。コア・クリスタルの杖を持ったモリオン。

エメラルド「光っていない・・・やはりお前に国王の資格はない!」
ファイアー「(エメラルド大臣の言葉に引っかかる)・・・。(部下を呼ぶ)おい!大臣殿は錯乱しておいでだ、閉じ込めて差し上げろ。」
エメラルド「私は錯乱などしていない!ファイアー将軍!おぬし、必ず後悔することに・・・やめろ!離せ!」

連れて行かれる。

ライト将軍に凄まじい雷が落ちる。次の瞬間、ライト将軍は消えている。

カーボン 「逃げたか・・・。」
モリオン 「(部下に)偽物王子を牢に入れろ。それから元王妃と娘もな!」
カーボン 「良いのか?母親だぞ。」
モリオン 「俺を殺そうとしたんだ。親だなんて思ってねぇ!」

ジャスパーを追うオーシャン。北側の谷。

オーシャン「兄上!考え直すんだ、今なら間に合う!」
ジャスパー「お前こそ、いつもの懸命な判断はどうした!」

大地がオーシャンを掴もうとする。水で退ける。逆に水でジャスパーを捕まえようとするが、炎(というより溶岩)で蒸発してしまう。オーシャンは追い詰めたつもりが、逆に追い詰められている。

ジャスパー「終わりだ。」
オーシャン「どうしてなんだ兄上!ずっとルチル様を護ってきたじゃないか!」

スッと近づくジャスパー。ハッとするオーシャン、そのまま突き飛ばされ谷底へ落ちていく。

オーシャン「うわあああぁぁぁ!」

国王謁見の間。国境からの使者が走ってくる。使者、ファイアー将軍を見つけて。

使者   「た、大変です!ダイヤ帝国の軍隊が、国境を越えて進軍しています!」
ファイアー「迎え入れろ。」
使者   「は?」
ファイアー「迎え入れろ。ダイヤ帝国は敵ではない、そうですな?」
モリオン 「その通りだ。」

国王の椅子に座るモリオン。手にはコア・クリスタルの杖。

使者   「誰・・・?」
ファイアー「おい、さっさと行け!」
使者   「はっ。」

牢に入れられるルチル、そこへジャスパーがやってくる。牢番に話しかける。

ジャスパー「おい、そんな手前じゃなくて奥の独房に入れろ。」
牢番1  「しかし、あそこは風が冷たくて。」
ジャスパー「命令が聞けないのか。」
牢番1  「はっ。」

ジャスパーはルチルを見もせず去る。
奥の牢に入れられるルチル。小さな窓があり、谷が見える。
牢番が去りながら話すのが聞こえる。

牢番1  「しかし、あのジャスパー様があっさり裏切るとは。」
牢番2  「てっきり忠臣だと思っていたのに、分からないもんだな。」

谷底に流れる川の音だけ聞こえる。静か。
無気力なルチル。窓の外から小声。

オーシャン「ルチル様、ルチル様。」
ルチル  「・・・(どこだろう)。」
オーシャン「僕です、オーシャンです。今お助けします。」
ルチル  「しかし・・・。」
オーシャン「良いから、壁から離れてください。」

言われた通り壁から離れるルチル。オーシャン、壁を破壊し侵入。鉾でルチルの手枷を破壊。

オーシャン「さ、早く!」
ルチル  「僕は・・・。」
オーシャン「つべこべ言わないで!」

驚くルチル。

牢番2  「誰だ!」
オーシャン「行きますよ!」

オーシャン、ルチルの手を引っ張って一緒に谷底へ落ちる。

街を進軍するダイヤ帝国の軍隊、全部カーボン元帥の部下。不安な様子の民衆。

再び謁見の間。

カーボン 「ルチル王子が逃げただと?牢を破って谷底に?あの高さから落ちて無
事に済むとは思えないが・・・。」
モリオン 「放ってはおけないな。それにライト将軍の行方も気になる。」
ファイアー「私の部下がすでに捜索を開始しています。見つかるのも時間の問題でし
ょう。ただ、ライト将軍が自分の城に戻ったとすれば、ひと戦は覚悟し
なければならないかと。」
カーボン 「心配するな、クリスタル王国とダイヤ帝国、ふたつの国が結ばれた以上、
恐れるものは何も無いのだ。でしょう、国王陛下。」
モリオン 「あぁ。ところで、あの予言者はどうした?」
カーボン 「いつの間にやら消えたよ。」

オパールが駆け込んでくる。

オパール 「あなた!」
ファイアー「なんだ!勝手に入ってはいかん!」
オパール 「あなたどういうつもりですか、王子を・・・!それに御妃様まで!」
ファイアー「もう妃ではない!それにルチル王子は正体がバレた、王子ではなくなったのだ!」
オパール 「どれが牢屋へ入れる理由ですか?あなたのやっていることはメチャクチャです!」
ファイアー「黙れ、先代は自己保身の為に国民に嘘をつき、国を滅ぼそうとした。それを見過ごした周りも同罪だ!」
オパール 「ではあなたには罪は無いって言うの?率先して計画に乗ったのは誰だったかしら!」
ファイアー「お前と言うやつは!」
モリオン 「ファイアー将軍の妻か、偽物王子の教育係だったというのはお前だな。」
オパール 「あぁ・・・!その目!黒針・・・(泣く)」
ファイアー「目障りだ!誰か外へ放り出せ!」

カルセドニーの森。川岸で気を失っているルチルとオーシャン。ゴロツキ達が発見する。

ゴロツキC「おい、あれ・・・。」
ゴロツキB「あ、ルチル王子!」
ゴロツキD「偽物だったって、本当なのか?」
ゴロツキA「どうやら本当らしい、女だったとか。」
ゴロツキB「コイツ!よくも俺達を虐めたな。」
ゴロツキD「どうしてくれようか。」

カルセドニーがやってくる。

カルセドニ「おい、何をしている。」
ゴロツキC「あ、オヤジ!見てくれ、偽王子がここに!」

カルセドニー、ルチル王子を見て、

カルセドニ「びしょ濡れだ、家まで運んで差し上げろ。」
ゴロツキA「えぇ?そんな事する必要ねぇですよ。」
カルセドニ「良いから運べ。」
ゴロツキA「親父!俺達はこいつのせいで散々な目に・・・いでぇ!」

カルセドニー、ゴロツキAを殴る。

カルセドニ「バカ野郎!お前ら本当に分かってねぇな!俺達みたいなロクデナシが・・・それでもそこそこ暮らしていけるのは誰のおかげだと思っているんだ。黙って運べ、それから何か温かいものを用意。サッサと動け!」

雨があがった情景、日が暮れて夜になる。
部屋の中。ゆっくりと目を覚ますルチル。

オーシャン「気が付きましたか、ルチル様。」
ルチル  「ここは・・・?」
オーシャン「カルセドニーの森です。」
ルチル  「そうか・・・。」

カルセドニーが入ってくる。

カルセドニ「気が付いたか。雨が止んだようだが、一時的なものだろう。そのうちまた降りだしそうだ。」
ルチル  「なんとお礼をしたら良いか・・・いや、お礼したくても僕には何も残ってないんだな。」
オーシャン「諦めるのは早いです、ルチル様!」
ルチル  「違う!僕は・・・僕は偽物だった!父上の息子なんかじゃなかったし、国を、民衆を騙して・・・。オーシャン、君だって僕に構う事は無いんだ。」
カルセドニ「そうだぜ、追手が来ているみたいだしな。王子を探している・・・いや、元王子か。お前の兄さんは賢明だな、長い物には巻かれろってな。」
オーシャン「兄上はルチル様を裏切ってなんかいない!」
カルセドニ「だが、お前さんは谷底へ落されたんじゃないのか。」
オーシャン「どうしてそれを・・・。いや!ルチル様、僕のパワーストーンはオーシャンジャスパー、水を扱う力があります。その僕を、兄上は谷底へ落した、この意味が分かりますか!」

オーシャンの回想、オーシャンがジャスパーに突き落とされる直前、ジャスパーがオーシャンにスッと近づいたところ。

ジャスパー「(小声で)ルチル様を一番奥の独房に入れる、あとは頼んだ。幸いライト将軍は無事だ、ライト将軍を頼め。」
オーシャン「兄上!うわあああぁぁぁ(落ちる)」

部屋の情景に戻る。

ルチル  「ジャスパー・・・。」
カルセドニ「良かったな、孤立無援ってわけじゃなさそうで。ほれ。」

手紙のようなものを見せる。

ルチル  「これは?」
カルセドニ「秘密の連絡さ、ライト将軍からな。」

読む。ライト将軍の声で再生。

ライト将軍「国王が殺された、王子を始め王妃、シトリン様はおそらく地下牢に入れられるであろう。なんとか救い出してくれないか。ジャスパーが城に残っている、彼が手伝ってくれる筈だ。最悪ルチル様かシトリン様どちらかだけでも良い。こんな事ができるのはあなたしかいない、後ほど迎えに行く。かつての友、ライト。」

ルチルとオーシャン、カルセドニーを見る。

カルセドニ「どうやら手間が省けたらしいな。」
オーシャン「ルチル様、さぁ行きましょう!シトリン様や王妃様をお救いしなければ!」
ルチル  「うむ・・・。」
オーシャン「何を躊躇う事があるのですか!僕は王位を継ぐのはルチル様しかいないと思っています、今でも!」
ルチル  「オーシャン・・・。だが、僕はもう。」
カルセドニ「ちょっと待ちな。」

カルセドニー、椅子に腰かけ煙草に火をつける。

カルセドニ「どうやら、この話を打ち明ける時が来たらしい。」
オーシャン「なんの話ですか?」
カルセドニ「他でもねぇよ、ブラックとルチルの物語さ。」

謁見の間。モリオン、カーボン元帥、ファイアー将軍。セレニテスとシトリンが牢番に連れてこられる。

牢番1  「連れて参りました。」
モリオン 「ご苦労、下がってよろしい。それから、合図があるまで誰も中に入れないようにしてくれ。」
牢番1  「はっ。」

牢番、去る。

モリオン 「さて、つい逆上して国王を殺してしまったが、まだ聞かなければならない事がある。予言の話通りであれば、息子でさえなければ王子は男で良かった筈だ。何故女にやらせた?同じルチルクォーツの力を持っているからか?」
セレニテス「あなたは・・・。」
モリオン 「(遮って)黙れ!俺が発言するタイミングを与える・・・信用できないからな。ファイアー将軍、これについて俺が納得できる回答をしてもらおうか。」
ファイアー「陛下、あなた様は勘違いをしておられる。」
モリオン 「何が。」
ファイアー「ルチル様はあなたの偽物ではありません。ルチル様はルチル様なのです。」
モリオン 「どういう意味だ?」

ここから先、カルセドニー・セレニテス・ファイアー将軍の話が交互に入れ替わりつつ展開する。

カルセドニ「つまり、お前達は双子だ。」
オーシャン「ルチル様と・・・ブラックが?」
モリオン 「男と女の双子だと言うのか?」
ファイアー「そういう事もあります。神かけて、あなた様とルチル様は同じ日、同じ場所、同じ母から生まれた双子!」

ここから過去の映像。生まれたばかりのルチルとモリオン(ブラック)と若き日のセレニテス、オパール。

カルセドニ「予言については聞いたんだな?」
ルチル  「はい。」
カルセドニ「あれさえ無かったらお前さん方は、普通の王子と王女として育てられたんだろうがな。」
ファイアー「だが陛下は予言を聞いてしまった。そして生まれたのが双子だった事、性別が別々だった事が今回の悲劇を生んだのだ。」
モリオン 「くそっ!」
カルセドニ「出産は秘密裏に行われ、誕生した事もすぐには公表されなかった。」
オーシャン「何故ですか?」
カルセドニ「息子が生まれた時、手を打つためさ。」

過去の回想、若き日のクリスタル大王(セレニテスの肖像入りのロケットペンダントを身につけている)、エメラルド大臣、ファイアー将軍、ライト将軍。

ファイアー「陛下!あんな予言を信じる必要はありません!」
エメラルド「お言葉だが、予言者の言葉を信じなかった結果、予言通り滅亡した事例が実に多い事は歴史が証明している。」
ライト将軍「だが、予言を回避しようとして失敗した例も多いのでは?」
エメラルド「それは否定しない。」
ファイアー「賛成なのか、反対なのかどっちだ!」
エメラルド「何が?」
ファイアー「予言を信じる事にだ!」
エメラルド「我々はパワーストーンの力を使っているではないか。なのに予言の石の言葉を信じないのは、いささか矛盾している。」
クリスタル「その通りだ・・・生まれたのは王子ひとり、という事にしよう。」
ファイアー「陛下、王子が危険だという話なのですよ?」
クリスタル「分かっている・・・誰か、私が顔を見ないうちに・・・息子を葬ってはくれないか。」

一同、沈黙。

クリスタル「世間には、生まれたのは息子ひとりと公表する。」
ライト将軍「では、王女様はいかがなさるおつもりで?」
クリスタル「王女はいない。息子だが、本当は息子ではない、だから予言は実現しない、そして本物の息子には死んでもらうしか・・・。」
ファイアー「で、ですが!いくら王子として育てても、後継ぎは!その実態が女ではクリスタルの力は受け継がれません!それどころか、結婚すらできない!」
クリスタル「・・・そちもクリスタル王家の男子直系であろう。」
ファイアー「はぁ!?」

映像が現在に戻る。

ファイアー「私はすぐに拒否したのだ。私は軍人として生きてきたし、これからだってそのつもりだと。」
モリオン 「それで?」
ファイアー「・・・お前には生まれたばかりの息子がいるだろう、と。陛下の意思は固かったのだ。」

再び過去の映像。カルセドニーの森へと続く川を小舟で下るファイアー将軍。赤ん坊の横にはセレニテスの肖像が収められているロケットペンダント。

カルセドニ「ファイアー将軍は息子を始末する役目を自ら申し出た。だがな、ブラックを殺さなかった。殺そうとしたかもしれないが、殺せなかった。」
ファイアー「こんな時に頼れるのはひとりしかいない。」

カルセドニーの森を行き、カルセドニーの家に到着するところまで。
次のカルセドニーの語りの間、旅をするカルセドニーの姿。

カルセドニ「ここから先の話を知っているのは俺だけだ。何故なら、ブラックを遠くの国の誰かに預ける事がファイアー将軍の依頼だったからだ。つまり・・・唯一身の証となる、王妃様が描かれたペンダントを見ても、誰も気づかない余所の国・・・。だが、俺達裏社会の者は、簡単には余所の国へ行けない。その代わり表では不可能な付き合いがある。俺はダイヤ帝国の信頼できる筋の奴にブラックを預けた。その後聞いた話じゃ、金持ちの家の台所係とかに貰われたような話を聞いたが・・・まさか軍人に拾われていたとは・・・しかもあのペンダントをまだ持っていたなんてな。」

映像が現在のカルセドニーの部屋に戻る。

カルセドニ「さて、確かにお前さんは、偽の王子だった。だがこの際どうでも良いんじゃないのか。俺の部下共を見ただろ、皆訳アリさ。ブラックのように親に捨てられた奴もいる。それぞれだが・・・共通するのは、味方になってくれる奴がいなくて、ここにやってきたって事だろうな。社会からはぐれて、道を見失って、俺はあいつ等が無茶しないように、親分を気取ってはいるが・・・。ルチル様、あんたは違う。ここはあんた達がいるべき世界じゃない、自分をしっかり持て!あんたはルチル!他の誰でもないんだ。自分の心に聞け、お前は一体どうしたいんだ!」
ルチル  「・・・僕は。」
オーシャン「ル、ルチル様に向かってお前とは、無礼だぞ!」
カルセドニ「良いじゃねぇか、説教してる時くらい。チッ、煙草もう切らしたか。」

ルチル、スッと立って部屋を飛び出す。

オーシャン「どこへ!」
ルチル  「ライト将軍と合流するぞ!母上とシトリンを救うんだ!」
カルセドニ「あっちの方が早かったようだな。」

表で雷が落ちる凄まじい音がする。
謁見の間。以後、モリオン表記を改め、ブラックとする。
ブラックが黒針を槍状にしてセレニテスに詰め寄る。シトリンが必死に庇う。

シトリン 「やめて!お願い!」
ブラック 「構わんぞ!諸共にくたばれば良い!」
ファイアー「陛下!それは流石に!」
カーボン 「仕方なかろう。」
ファイアー「なっ!余所者は黙れ!」
カーボン 「おやおや。」
セレニテス「待って。シトリン、もう良いの。」

シトリンの肩に手を当てて、横に移動させる。黙ってブラックを見つめ、涙する。

ブラック 「何故泣くんだ・・・命が惜しいのか?俺を殺そうとしたくせに!」
ファイアー「ち、違うのだ陛下!セレニテス様は出産の後体調が悪くて・・・あなたの顔も一度しか見ていない!ずっとベッドの上で・・・次に目を覚ました時にはもう私が連れ出した後で、だから!」
ブラック 「(驚いて)本当なのか?」
セレニテス「まさか生きていたなんて・・・。」
ブラック 「でも・・・でも、そんなの言い訳になるかよ!俺がどんな思いをして生きてきたと!薄汚い台所の片隅でゴミ同然に扱われ、少し大きくなったらこき使われ・・・辛くて辛くて、必死で逃げだしても世間は地獄だった、生きていく為にどんな事でもした!なのになんだ!俺と同じ親から生まれた妹はのうのうと・・・こ、こんな物!」

持っていたペンダントを投げつける。

ブラック 「俺はなんだ、クズか?出来損ないか?そんなに不吉なのかよ!なぁ!」

セレニテス、涙を流しながら黙ってブラックに近づく。

ブラック 「来るな!来るなって!来るなぁ!」

思わず槍でセレニテスの腹を刺す。

シトリン 「お母様!」

ブラック、自分の行動に驚き槍を手放す。
セレニテス、刺されたままさらに近づく。ブラックは驚きのあまり動けない、槍は消えてしまう。
セレニテス、ブラックを優しく抱きしめる。モリオンはほとんど恐怖に近い感覚で動けない。

セレニテス「酷い母親・・・あなたの言う通り。私にしてあげられるのはもうこれしかないの、許してとは言わないわ。」

セレニテス、膝をついてブラックを見上げるような体制になる。首からロケットペンダント(これはブッラクの所持品ではなく、セレニテスがずっと身に着けている物)を外し、ブラックの手に渡す。

セレニテス「開けてみて。」

開けてみると、小さな猫の絵。

セレニテス「あなたよ。殺されたと分かって、何日泣いたか・・・お墓すら無いあなたを忘れない為に絵を描いて、こっそりペンダントにしてもらったの。」
ブラック 「これが、俺・・・。」
セレニテス「(今度は強く抱きしめて)あなたに殺されたって良い!どんなに恨まれたって良い!ブラック、あなたは私の子ですもの!痛くなんかないわ!よく頑張ったわね、ひとりで・・・辛かったでしょう。もう良いの、そんな辛い日々は終わったのよ。」
ブラック 「なにを今更・・・遅すぎる、遅すぎるんだよ・・・うわああぁぁぁん!」

ブラックは子供のように泣く。泣いている途中で、カーボン元帥が細長い槍状のものでブラックとセレニテスまとめて刺す。

ブラック 「うがっ!?」
カーボン 「クリスタル王国はダイヤ帝国に滅ぼされるのではない、後継者争いによる内乱で自滅するのだ。」

カーボン、槍を抜く。血まみれのブラック(母の血も浴びている為)が振り返るとファイアー将軍が気を失っているのが目に入る。

ブラック 「げ、元帥!お前約束が違うぞ!お、俺を王に・・・。」
カーボン 「なったじゃないか。」
ブラック 「最初からそのつもりで・・・。」
カーボン 「あれだけ憎しみを煽って育ててやったのに。勘違いするなよ、お前を王にして、俺は陰で操るつもりだったんだ・・・だが情にほだされるようじゃな。悪いがダイヤ帝国元帥としての職務を全うさせてもらうよ。」

仰向けに倒れているセレニテス。シトリンが駆け寄る。

シトリン 「お母様!」
セレニテス「私はもうここまでね。」
シトリン 「嫌!死なないで。」
セレニテス「聞いて頂戴、あなたは私の最後の希望よ。ルチルとブラックを救えるのは、あなたしかいない。」
シトリン 「でも私・・・。」
セレニテス「あなたの力を開放します。」

ブラックがカーボン元帥に蹴飛ばされ倒れ込む。

ブラック 「ぐああぁ!」
カーボン 「余計に苦しみたくないんだったらジッとしていろ。今までのよしみだ、目の前で王族が滅びるのを見ながら死ね。」

ブラック、血が止まらない(セレニテスも同様)。出血多量で、もはや立つこともかなわない。
ファイアー将軍が起き上がる。

ファイアー「では私も抹殺対象というわけか。」
カーボン 「なんだお前も王族か、だったら殺しておけば良かった。」

ファイアー将軍、現状を一目見て激昂する。全身が炎上する(ファイアー将軍の覚醒の力)。

ファイアー「カーボン!キサマァァァ!」
カーボン 「む!?」

殆ど瞬間移動に近い速度で近寄り、カーボンもろとも幾重の壁を突き破って外へ出ていく。凄まじい破壊力だが、同時に城のあちこちから出火する。

セレニテス「もう時間が・・・。」

セレニテスが手を上げると、シトリンのペンダントが自然に外れ、セレニテスの手に戻る。

セレニテス「これであなたの力を抑えるものは無くなった。」
シトリン 「お母様。」
セレニテス「大丈夫、あなたならきっと・・・辛い思いをさせてしまうけど・・・許してね。でもルチルとなら大丈夫。」

シトリンの目が光る。力が徐々に解放されていく。ジャスパーが飛び込んでくる。

ジャスパー「シトリン様!申し訳ありません、私の動きを感づかれてしまい、追っ手をまくのに手間取ってしまいました・・・これは一体!」

シトリン、完全に覚醒し、『覚醒のシトリン』となる。
その途端、ジャスパーに今起こった事、ブラックやセレニテスの気持ちが流れ込んでくる。

ジャスパー「これは・・・そんな・・・。」
セレニテス「ジャスパーお願い、ブラックをここに。早く。」

ジャスパーは、シトリンとセレニテスが話す間に、気を失っているモリオンをセレニテスの横に置く。

シトリン 「あぁ・・・全部、全部見える!」
セレニテス「負けちゃダメ!自分をしっかり。」
シトリン 「大丈夫ですの。」
ジャスパー「御妃様。」

セレニテス、先程のムーンストーンを掲げる。

セレニテス「私の命の灯火・・・。」

ムーンストーンが白い炎に変わる。

ジャスパー「御妃様!」
セレニテス「良いのよ、これが私に出来る、せめてもの償い。」

火事が広がってくる、そろそろこの辺も危ない。

セレニテス「さぁ・・・あの子に命を。」

セレニテスの炎がモリオンに吸収される。見た目に変化はない。

ジャスパー「行きましょう!」

ジャスパー、周囲を見回し、コア・クリスタルの杖を回収。それからセレニテスの所に戻る、もはや助からない事は誰の目にも明らか。迷わずモリオンを抱える。

ジャスパー「御妃様!」
セレニテス「・・・ありがとう。早く行って!」
シトリン 「お母様!愛してます!」

セレニテス、小さく頷いてそのまま目を閉じる。途端に天井が崩れる。

ジャスパー「こっちへ!」

ファイアー将軍の部下やダイヤ帝国の兵士と戦いながら城を目指すルチル・オーシャン・ライト将軍と部下の兵士達。ファイアー将軍はカーボン元帥と戦闘中だが、指揮系統が混乱している為それを知らない。
ルチルの目に変化。ハッと気付くルチル。

ライト将軍「如何しました!」
ルチル  「母上が・・・死んだ。」
ライト将軍「王妃様が?どうして分かるのです?」
ルチル  「シトリンの力だ、シトリンが覚醒した!」
オーシャン「そんな!制御できないのに!精神が死んでしまいます!」
ルチル  「そんな事分かっている!」

次々と襲い掛かるダイヤ帝国の兵士。パワーストーンの力が無いが、如何せん数が多いのでなかなか前へ進めない。ここから先は戦いながら。

ルチル  「将軍!さっきみたいに瞬間移動で行けないのか!」
ライト将軍「瞬時に膨大なエネルギーを使うので無理です!恰好の餌食になるのがオチ、ルチル様が行くのです!」
ルチル  「どうやって!」
ライト将軍「道を作ります!オーシャン!」
オーシャン「なんでしょう!?」
ライト将軍「城まで一直線に水を!」
オーシャン「はい!」

鉾を操って一直線の水を流す。

ライト将軍「ハァ!」

電流。水の付近にいたものは敵味方関係なく感電して動けなくなる。

ライト将軍「今だ!行きなさい!オーシャンもだ!」
オーシャン「は、はい。」

全速で走るルチル。目が更に変化、光りだす。覚醒し『キャッツアイ・ルチル』となる。目にズームアップし、シトリンの目と重なる。

シトリン 「お姉様・・・!」

シトリンは怪しく光る。まるで太陽。ルチルは先程のジャスパーより更に深い、あらゆる関係者の声が一気に流れ込んでくる。それらはシトリンが感じているもの。
この時ルチルは初めて、ブラックが体験してきた事、ここへ来た動機、そしてクリスタル大王とセレニテスの真実、ジャスパーの真意、カーボン元帥の企みなどを完全に理解する。

ルチル  「そうだったのか。」

涙が流れるが、悲しんでいるわけではない、完全なる無意識。シトリンも同じ現象、ただしこちらは深刻。
城壁に向かって走るルチル。門には敵が多い為。

オーシャン「ルチル様!」
ルチル  「登れば良い!」
オーシャン「えぇ!?」

ルチル、城壁を一気に駆け上がり、飛び越える。ライト将軍、それを遠目に見て、

ライト将軍「次はもっと高くせんとな。」

オーシャンは鉾の力を使って水に乗り、越える。城壁の内側は手薄。

ルチル  「次突破したら頼みがある。」

一方、カーボン元帥とファイアー将軍。

カーボン 「どうした、かつて炎神(あぐに)と言われたあなたが・・・この程度の熱じゃ効かないぞ。」
ファイアー「く、くそ!若い時だったら・・・。」
カーボン 「たらればは嫌いだ。そっちが来ないなら、こっちから行くぞ。」
ファイアー「このぉ!」

地下牢。入口付近が燃えている。その奥にエメラルド大臣が牢にいる。

エメラルド「おーーーーい!誰かーーー!」

返事がない。

エメラルド「おのれ牢番どもめ!ここから出たらお前達はクビだぁ!」

燃える音だけが響く。

エメラルド「こんなところで死ぬは嫌だ!出してくれぇ!」

突然水がかかり、火が消える。

オーシャン「エメラルド大臣!?今開けます!」
エメラルド「お、おぉ!ファイアー将軍の・・・!助かったぁ。牢番め、この私を置いてけぼりにして逃げやがった!」

鉾で鍵を壊して開ける。

オーシャン「話は後にして!着いてきてください!」
エメラルド「ま、待ってそんな速く走れない・・・。」

必死で走るジャスパーとシトリン。ジャスパーはブラックを背負っている。北側を目指している(南は戦場になっている為)、北の橋から脱出するつもり。
シトリン、覚醒が収まっている。
ジャスパー、ブラックの息がだんだん弱くなっていくのを感じる。

ジャスパー「このままでは時間の問題だ。」
シトリン 「でもお母様が!」
ジャスパー「この状態で生きているのが不思議なくらいです。」
シトリン 「(ハッとして)来る!」

目の前にカーボン将軍を降り立つ。ピンチ。
カーボン、何も言わず一気に駆け寄り三人を殺そうとする。

ジャスパー「しまっ・・!」
シトリン 「・・・あぁ、やっと!」
ルチル  「なんとか間に合ったみたいだ。」

ルチル、カーボンの剣を金針の剣で受け止めている。薙ぎ払われて、数歩下がるカーボン元帥。

カーボン 「そちらから出向いてくれるとはありがたい。」
ルチル  「ファイアー将軍をどうした?」
カーボン 「あ?・・・あぁ(ニヤリ)。」

壁にもたれているファイアー将軍。死にかけ。
部下のひとりがやってきて、

部下   「将軍!」
ファイアー「どうした。」
部下   「奥様が。」

無音。ベッドに眠るオパール。傍らに小瓶(服毒自殺を暗示)。

ファイアー「そうか。息子達に伝えてほしい、申し訳なかったと・・・」

シトリンの力でファイアー将軍の意識がルチルやジャスパーにリンクする。

ジャスパー「父上。」

ルチルとカーボンは戦い始めている。

カーボン 「無駄だ、お前では私には勝てん。」

ルチルは覚醒している為、針の質・量・出せる空間の広さ全てが増大している。
大量の針がカーボンに襲い掛かる。

カーボン 「む?これは一体!」

針はカーボンの鎧を貫通できない。

カーボン 「ハハハハ!」
ルチル  「グッ!」

ルチル、蹴飛ばされころげる。すかさず斬りかかるカーボン、ギリギリ受け止めるルチル。大地が蠢き、カーボンは吹っ飛ばされる。

カーボン 「ぬおっ!」
ルチル  「ジャスパー!」

ブラックを降ろしたジャスパーがルチルと並ぶ。

ジャスパー「なにもひとりで戦う事はありません。己しか見ない奴は、どんなに強く
ても価値がない。それを証明しましょう。」
ルチル  「あぁ。」

二体一で戦う。ジャスパーは自身の剣を使う。最初は上手く連携が取れないが、途中から思考がリンクしている事に気が付く。

ルチル  「シトリン!」

シトリン、再び覚醒している。

ルチル  「無茶だ!」
カーボン 「どこを見ている!」
ルチル  「うわっ!?」

無表情で涙を流すシトリン。ジャスパー、それを見て、

ジャスパー「時間が・・・。やるしかないか。」
ルチル  「ジャスパー!?ぐわぁ!」

ルチル、斬られそうになるのを回避するが間に合わず腕から流血。
ジャスパー、力の開放。覚醒のジャスパー。全身真っ赤、灼熱。ファイアー将軍を彷彿とさせる姿。

カーボン 「ハッハッハ!あの将軍ですら勝てなかったのに!」
ルチル  「黙れ!」
カーボン 「おっと厄介な針・・・な、なんだ!」

地面が割れ、手の形をした無数の溶岩。

カーボン 「無駄だ!この程度の熱では私の鎧は溶けん!」

次々と襲い掛かる溶岩の手を全て薙ぎ払っていくが、飛び散った溶岩が鎧にかかっていく。最後の手が斬られる。

ジャスパー「今だ!」
ルチル  「はぁ!」
カーボン 「なっ!?」

空間から飛び出した無数の針がカーボン元帥を貫通する(急所は避ける)。」

カーボン 「グワァ!な、なぜ・・・?」
ジャスパー「溶けなくとも、強度さえ落ちれば良い。」
ルチル  「殺すなよ、重要参考人だ。」
ジャスパー「これがジャスパーに宿る大地の力、いや。我々クリスタル王族の力ですよ、元帥。」
カーボン 「く・・・(倒れる)。」

オーシャンがエメラルド大臣を連れてやってくる。

オーシャン「おーい!」
ルチル  「大臣!無事でしたか。」
エメラルド「ルチル様こそ、よくご無事で!」
オーシャン「兄上!」
ジャスパー「突き飛ばして悪かったな。」
オーシャン「良いんです。あぁ!シトリン様!」

無表情で虚空を見つめるシトリン。

ルチル  「いけない!シトリン!聞こえるか!僕だ、ルチルだ!」
オーシャン「シトリン様!」
エメラルド「あぁ!あぁぁぁ!あぁぁ!」

突然変な声を出すので皆が注目する。

エメラルド「つ、杖が!コア・クリスタルの杖が光る時、新たな王が生まれる!」

エメラルド大臣が杖を掲げる。先端の水晶が白く輝いている。

エメラルド「さぁ!コア・クリスタルよ!新たな時代を示すのだ!」

輝きを増す水晶。

ジャスパー「これは一体。」
エメラルド「ど、どういう事だ!」

光は二筋に別れ、ルチルとシトリンに向けられている。
皆唖然とした図。シトリン、意識がもどる。ゆっくり目を閉じて、

シトリン 「みんな、ありがとうですの。」
ルチル  「シトリン!」
シトリン 「(目を開けて)夜明けの時が来ました!」

立ち上がって再び覚醒、しかし徐々に収まる。

ルチル  「制御・・・できるようになったのか?」
シトリン 「お姉様!(抱きつく)」
ルチル  「いてっ!いててて!」
シトリン 「ご、ごめんなさい!」
ルチル  「い、良いんだ、シトリン!良いんだ。(泣く)」

突然カーボン元帥が動き出し、布のような翼を広げて谷を飛び出し、滑空する。

オーシャン「逃がすかぁ!」

巨大な水の手でカーボン元帥を掴む。カーボン元帥はそれを抜け出し、城の上空へ出てそのまま飛び越えようと滑空する。

オーシャン「くそっ!」
カーボン 「まさかクリスタル王族にここまでの力があるとは。次は総力を挙げて正面突破を・・・ん?」

滑空する方向の地面に何か見える。ライト将軍。

ライト将軍「どこへ行きなさる?」

カーボン元帥、びしょぬれかつボロボロになった自分の鎧の事を考え蒼白、ヤバイという顔。

ライト将軍「ウオオオオォォォ!」
カーボン 「やめろぉぉぉぉぉ!」

城の遠景、酷く損壊した様子を強調。凄まじい稲妻。小さな点が落ちていく。
雨が再び降りだす。土砂降りとなり、城のあちこちで起きていた火災が鎮火していく。


数カ月後。城の遠景、前よりかなり修復されている。城壁を高く作り直す様子。快晴。
新しくデザインし直された謁見の間。エメラルド大臣、ライト将軍、ジャスパー。

エメラルド「女王陛下!」

シトリンが現れ、王の椅子に座る。手にはコア・クリスタルの杖。斜め後ろにオーシャン。

エメラルド「ゴホン!えー・・・」

扉が開き、ルチルが入ってくる。

ルチル  「あー、えっと。遅れて申し訳ない。」
シトリン 「(威厳のある声で)お姉様。」
ルチル  「は、はい!女王陛下には大変申し訳なく・・・。」

シトリン、プッと噴き出し、クスクスと笑う。

ルチル  「あー、いやぁ申し訳ない、あはは。」
エメラルド「笑い事じゃありません!仮にも陛下の姉君が大事な会議の場に遅刻とは、示しがつきませんぞ、示しが!」
ジャスパー「まぁまぁ、大臣。」
エメラルド「あまい!そなたはルチル様に甘すぎる!それとも何かな?将軍になって浮かれているのか!」
ジャスパー「そんな事はありませんよ。」
ライト将軍「大臣、そう言う貴殿こそお喋りが過ぎる。せっかく女王陛下が即位しためでたい時に、不愉快な声を出さんでも良いだろう。」
シトリン 「それでライト将軍、ダイヤ帝国はなんと?」
ライト将軍「はっ。今度の事は、全てカーボン元帥の独断による陰謀、当国としても大変遺憾である。」
エメラルド「(顔を真っ赤にして)ななななな、なんちゅう他人事だ!」
シトリン 「話を遮らないで。」
エメラルド「は、はっ!」
ライト将軍「死亡したカーボン元帥及びその義理の息子であるモリオンは、当国の法においても当然死刑となるべきところである故、クリスタル王国にその責を問うべきものではないと考える。」

エメラルド大臣怒りで気が狂いそう。

ライト将軍「また、カーボン元帥とモリオンの名誉は永久に剥奪するものとする。所有していた領地はふたりが罪を償って然るべきクリスタル王国に譲渡するものとする。」
ルチル  「それでチャラにしろって事か。」
エメラルド「そ、そ、そ、そんなものは要らん!こっちは国王と妃を殺され・・・いや言い出したらキリが無いが、と、と、とにかく誠意ってものは無いのかあの国は!」
シトリン 「こうなると、気をつけろと仰っていたファイアー将軍の言葉が耳に痛いですわね。」

一同、沈黙。

ルチル  「ま、そうは言っても向こうの落ち度である事に変わりはない。それに、ダイヤ帝国屈指の実力者が敗れたという事は・・・な?」
ライト将軍「そう、そう。当分の間は、こっちの頭を悩ませる事はできまい。」
エメラルド「逆にこっちは私のような頭脳派が足りないですがね。」
シトリン 「えぇ?大臣はご自分の事を頭脳派だと思っていましたの?」
エメラルド「そ、そんな酷いですぞ!」

一同、ドッと笑う。
北の山脈の情景。

ルチル  「本当に行ってしまうのか?」

北の谷にかかる橋を渡ったところ。
ルチル・シトリン、その横にジャスパー・オーシャン。旅装束のブラック。

ブラック 「あぁ。俺は死んだ、幽霊がいつまでも残るわけにいかないだろ。」
シトリン 「でも、山越えは厳しいですの。しかもたったひとりで。」
ブラック 「一人じゃないさ。俺には・・・これがある。」

ブラック、セレニテスから渡されたロケットペンダントを見る。

ルチル  「ブラック・・・。」
ブラック 「それから、ボディガードのふたりにも・・・悪い事をしたと思っている。親父さんを・・・取り返しがつかねぇ。」
オーシャン「父は昔、命がけであなたを救う事を選んだ。そして再びあなたが現れた時、自分の運命を悟ったのでしょう。」
ジャスパー「そう。僕たちは父があなたに殺されたとは思っていませんし、恨んでいません。」
ブラック 「そうか・・・(ちょっと顔を伏せる)。」
ルチル  「でも時々思うんだ。やっぱり王位はブラックが継ぐべきだったんじゃないかって。」
ブラック 「そんな事はどうでも良い。それより聞きたい事がある、どうしてルチルじゃないんだ?どうしてシトリンに譲ったんだ!?」
ルチル  「うーん、そうだなぁ。コア・クリスタルが次の王に僕とシトリン両方を指名したのには必ず意味がある。」
ブラック 「それで?」
ルチル  「考えたんだけど、僕よりシトリンが王位についた方が万事上手くいくんだ。太陽は一番高いところにいるべきだし、シトリンの力もコア・クリスタルが傍にあると安定するらしいんだ。」
シトリン 「もう!無くても安定してますの!」
ルチル  「いやだけどやっぱり・・・」
シトリン 「お姉様は心配しすぎです!」
ルチル  「ちょっと前までお母様に抑えてもらっていたくせに、よくそんな事が言えるなぁ。」
ブラック 「ふっ(ちょっと笑う)。」
ルチル  「まぁ僕が王になろうが、シトリンだろうが、何か変わるかって言われると・・・ねぇ?」
シトリン 「座る場所が違うだけですの(ニコニコ)。」
ブラック 「あ、あの!」
ルチル  「なに?」
ブラック 「(勇気を振り絞って)俺は、ここを帰る場所だと・・・思って良いのか?」
ルチル  「何を言っているんだ?(本気で何を言っているのかわからない)当たり前じゃないか?」
シトリン 「公然とはお迎えできないのが残念ですけど・・・お待ちしていますわ、お兄様。」

ブラック、お兄様という言葉に感動して何も言えない。

ルチル  「あとは、僕達の代で王家が途絶える事だけが、気がかりだなぁ。」
ブラック 「あぁ、その事なんだが。」
ルチル  「うん?」
ブラック 「もう心配する必要は無さそうだぜ。(シトリンの顔を見て)な?」

シトリン、にっこり笑う。

シトリン 「その通りですの。」

シトリンはルチルの片手を取ると、ジャスパーの片手にのせる。
ジャスパー、ハッとする。

シトリン 「(ジャスパーを見て)そうでしょう?」
ジャスパー「シトリン様・・・(意を決し、片膝をついて)ルチル様、僕は・・・」
ルチル  「ちょちょちょちょちょちょっっっっと待った!」

ルチル、顔が真っ赤。

シトリン 「もう!お姉様ったら素直じゃないんだから!」
ルチル  「いやいやいやいやいや!そういう問題じゃないくて!ぼ、僕はずっと男として生きてきたんだ!今更なにをそんな!女っぽい事なんて出来ないし・・・。」
シトリン 「あら、別に男同士でも構わないではありませんの。」
ルチル  「えぇ?えぇ・・・えぇ!?」

うんうんと頷くブラック。ニッコリとほほ笑むシトリン。そうですとも、と言った感じのジャスパーとオーシャン。

ルチル  「ええええぇぇぇぇぇ!」

雲一つない空と太陽の情景。

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