僕の名はメル。「花火師を目指す少年」 SF

どこかの誰かに「僕の名はメル。」から始まるメッセージが届く。そこには指定の行動を取ることにより、世界に『善きこと』を行えると書かれている。今回は花火師を目指す少年に、夜空に魔法をかけろ、という内容だ。【連続者第1話想定】
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第一稿

人物
メル(?) 「生ける究極兵器」と呼ばれる謎
の人物

白馬昇太(18) 高校生 白馬火工の跡取り息

川崎新一(18) 高校生 白馬の幼馴染
今泉舞子(18) ...続きを読む
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人物
メル(?) 「生ける究極兵器」と呼ばれる謎
の人物

白馬昇太(18) 高校生 白馬火工の跡取り息

川崎新一(18) 高校生 白馬の幼馴染
今泉舞子(18) 高校生 白馬の幼馴染

白馬権平(54) 花火職人 白馬の父

後藤(49) 国際スキー場広報部部長

職人
司会(ワイドショー)
コメンテーター1
コメンテーター2
司会(ステージ)
高官1
高官2

----

○白馬の部屋(朝)
   白馬昇太(18)のスマートフォンにメッ
   セージが表示されている。
   【僕の名はメル。でも僕のことはひと
   まず置いておいて。----あなたに、お
   願いしたいことがあります。これを実
   行してくれるのならば、あなたはこの
   世界に1つ『善きこと』を行うことに
   なります。どうか僕を信じて、行動し
   てください】
   驚愕する白馬。
白馬「嘘だろ…。メルは『神ヒコーキ』を見
 てるんだって噂、ほんとだったんだ…」

○高校・屋上(正午)
   白馬、川崎新一(18)にスマートフォン
   を見せている。
川崎「すごいよ、昇太。これはたぶん本物だ
 よ…」
白馬「そっか。お前もそう思うか?」
   川崎、自分のスマートフォンでSNS
   で拡散しているメルのメッセージのス
   クリーンショットと比較している。
川崎「間違いないと思うけどな。その……『
   神ヒコーキ』にはどんなこと書いたの?
   白馬、グラウンドを見渡しながら語る。
白馬「悔しいって。その……、あいつに最後
 にウチの花火見せられなくて悔しいって」

○(回想)教室
   土砂降りのグラウンドを教室から呆然
   と見ている白馬。
   白馬に寄り添うように川崎と今泉舞子
   (18)が声をかける。
   舞子はステージ用のきらびやかな衣装
   を着ている。
白馬「おい。いいのかよ。お前らは……体育
 館で出番あるんだろ?」
舞子「残念だったな。あんたんちの花火をバ
 ックに歌いたかった」
川崎「マイ…。最後の学校祭だもんね」
舞子「それだけじゃなくって。私、卒業した
 らウィーンに留学できることになったの」
川崎「え! それって」
舞子「うん。この前言ってた声楽の試験、通
 ったんだ」
川崎「すごいじゃん!」
舞子「自分でもびっくりしてる。だから……、
 あんたたちと一緒に大学生できない」
   舞子、白馬の手を握る。
舞子「ごめんね。あんたのカノジョもできな
 い」
   白馬、寂しそうに舞子に振り返る。
舞子「だから……、あの花火の下で最後に歌
 いたかった」
   舞子、手を離す。
舞子「じゃあ、もう行く。ちゃんと見に来て
 ね」
   白馬と川崎、立ち去る舞子を複雑な表
   情で見送る。

○(回想)体育館・ステージ
   合唱部のステージを後ろの方で見守る
   白馬と川崎。
   舞子のソロパートになると白馬は、本
   来ならばグラウンドで美しい花火の下
   で歌われるはずだったステージを想像
   して、握りこぶしを作って悔しそうに
   している。
   (回想終わり)

○高校・屋上(正午)
   白馬と川崎、グラウンドを見ている。
川崎「その時の気持ちを書いたんだね。『神
 様にだけ届くお願いメール・神ヒコーキ』
 か……」
   白馬、こくんと頷く。
川崎「でもこれでいよいよ噂の信憑性が高ま
 ったね。やっぱりメルは『神ヒコーキ』か
 ら、助ける相手を選んでるんだよ。……で
 さ、メルからメッセージが届くと、MYL
 INEにもいつの間にか『ともだち登録』
 されるんだろ?」
   白馬、スマートフォンを見せる。
川崎「うわ……。ほんとだ。じゃあこれでメ
 ルとやりとりできるんじゃん」
   川崎、MYLINE(SNSメッセン
   ジャー)に書かれたメルからのメッセ
   ージを読む。
   【改めてあなたに、お願いしたいこと
   を伝えます。あなたには、クリスマス
   イブに国際スキー場で行われる、今泉
   舞子さんも所属する合唱部のコンサー
   トを盛り上げるために、夜空に魔法を
   かけてほしいのです】
川崎「夜空に魔法? どういうことだろ」
白馬「花火師の跡取りがかけられる魔法なん
 て1つしかねえだろ」
川崎「花火?」
   白馬、頷く。
川崎「それは……。昇太はまだ花火師の資格
 なんて持ってないだろ」
白馬「だから、親父に頼んでウチの花火を上
 げてもらえってことじゃねーの」
川崎「でもそれだったら、メルは親父さんに
 頼むんじゃないかな。ここには、はっきり
 『あなたには』って書いてある」
白馬「わっかんねーよ」
   川崎、少し考える。
川崎「じゃあ直接聞いてみようよ。……メル
 に」
白馬「それでいいと思うか?」
川崎「うん。いいよ、それで」
白馬「正直ちょっとびびっちまって……。ま
 ず、お前に見てもらいたかった」
   川崎、ふふふと笑う。
川崎「じゃあこれでいいかな。『メルさん、
 空に魔法をかけるってどういうことですか。
 僕はまだ花火を作ることも打ち上げる資格
 も持っていませんが』」
白馬「ああ、それでいい。送ってくれ」
   川崎、言われた通り、白馬のスマート
   フォンを代わりに操作し、メッセージ
   を送信する。
川崎「既読には……ならないね。なんか予想
 外」
白馬「そっか。なら仕方ない、待つしかない
 な」
   白馬、まだ大雨の後が乾ききっていな
   いグラウンドを、悔しそうに見つめる。

○『白馬火工』の事務所
   事務所のテレビでは、ワイドショーで
   『僕の名はメル。』現象について、コ
   ンメテーター達があれやこれや言い合
   っている。
司会「もはや皆さんご存知かと思いますが、
 メルを名乗る人物から、場所と時間を指定
 され、ある行動を取れと指示されるメッセ
 ージが、突然送られてくる。メッセージの
 書き出しの部分を引用して『僕の名はメル。
 』現象ということで、今SNSなどを中心
 に非常に話題になっています。共通してい
 るのは、指示された場所には必ず困りごと
 を抱えている人がいて、その人を助ける内
 容になっている、ということですね。もは
 や社会現象になっているとも言えますが、
 皆さんはどうお考えになりますか?」
コメンテーター1「……まあ、色々とSNS
 上でも議論されていますが、いずれにせよ、
 このようなメッセージ1つで実際に行動し
 てしまう人がいる、ということは、ある意
 味で危険とも言えますよね」
司会「危険、ですか」
コメンテーター1「今は良い行いを指示され
 ていますが、これで徐々に洗脳されていっ
 てしまう人が出てきていつかはカルト教団
 化していく、というようなこともあると思
 うんですよ」
コメンテーター2「私も全く同感ですね。楽
 観的に考えれば、新しい時代のボランティ
 ア精神の現れとも捉えられますが、普通に
 考えて、特定の人物のスマートフォンにメ
 ッセージを表示させるということも技術的
 に決して簡単なことではないですし、まし
 て助ける人と助けてもらう人の行動まで何
 らかの方法で監視しているということです
 よね。普通に考えて、組織的な活動と考え
 るのが妥当です。不気味ですよ」
司会「しかし、若い世代を中心にメルからメ
 ッセージが届くのは良いことだと、嬉々と
 してSNSにスクリーンショットをアップ
 ロードする人が絶えませんね?」
コメンテーター1「そう。かつて平成の時代
 に現れた例の教団も、優秀な若い世代をう
 まく取り込んで成長し、未曾有のテロ行為
 にまで及んだことを忘れてはいけません」
   白馬は1人、テレビを聞き流しならが
   宿題をしていたが、いつの間にか、ス
   マートフォンを取り出しメルからのメ
   ッセージを眺めていた。
白馬「たしかに……、これはちょっとこえぇ
 よ……」
   するとちょうどメルから返信が届く。
   びくっとする白馬。
   【今からそちらに国際スキー場の後藤
   さんという人が訪れます。まずは彼の
   話を聞いてあげてください】
   読み終えると、ほぼ同時にインターフ
   ォンが鳴る。
   またびくっとする白馬。
   白馬、ひとまず、事務所のドアを開け
   る。
   そこには後藤(49)が立っていた。
後藤「お忙しいところ、突然申し訳ございま
 せん。私、国際スキー場広報部の後藤と申
 します。……失礼ですが、白馬昇太さん?」
   白馬、戸惑いながら答える。
白馬「あ、はい。僕が昇太ですが……」
   後藤、少し緊張しながらスマートフォ
   ンの画面を見せる。
   画面上にはMYLINEのメルのメッ
   セージが表示されていた。
   【今日、これから今すぐに、白馬火工
   の白馬昇太君を訪ねてください。彼に
   も僕から知らせておきます】
   白馬、驚きつつも全てを察したと、つ
   ばを飲み込みながら何度か頷き、後藤
   を事務所に招き入れる。

○同・作業場
   数人の職人たちが花火作りを行ってい
   る。
   白馬権平(54)も真剣に玉に火薬を詰め
   ている。
   作業場の入り口から若い職人が権平に
   話しかける。
職人「社長すみません」
   権平、何も答えず、作業を続ける。
職人「昇太君が事務所に来て欲しいって」
   権平、真剣に作業を続ける。
   何も答えない権平に若い職人はまだな
   にか言おうとするが、ベテランの職人
   が目配せをして、それを制す。
   若い職人、その場に立ち尽くす。
   権平、立ち上がりやっと若い職人の方
   を見る。
権平「こっからやってみろ」
職人「え? いいんですか?」
権平「いいから、何でも経験だ。ケツは吹く」
   若い職人、ベテランの職人を見る。ベ
   テランの職人も頷く。
   権平、ベテランの職人を見る。
   ベテランの職人、権平に頷く。
   権平、作業場を出ていく。

○同・事務所
   白馬と権平、向かい合って後藤。
   応接テーブルとソファに座っている。
後藤「本当に突然、申し訳ございません」
   権平、後藤の名刺を見る。
権平「ほう、国際スキー場の広報部の部長さ
 んですか。そんな立派なかたが、ウチみた
 いな小さい花火屋にどのような御用ですか
 ?」
後藤「ええ、実は、我々はある困りごとを抱
 えていまして……」
権平「どうぞ。できることはあまりないかも
 しれませんが、まずはお話伺いますよ」
後藤「ありがとうございます。その……、今
 年のクリスマス・イブに、イベントを行い
 ます。特設のステージを作って、そこで音
 楽やお笑いのライブを行うのですが……、
 例年頼んでいたイベント会社さんが、倒産
 されてしまいましてね。もうすぐ雪が降っ
 てくるというのに……、現場はてんやわん
 やです」
権平「それはそれは……。それでウチが何か
 お助けできることが?」
後藤「はい……、その……、ステージでは例
 年レーザービームを使ったイルミネーショ
 ンで演出してるんです。ステージと、あと、
 空にもこう……ぱっと鮮やかな」
   後藤、昨年のステージの写真を見せる。
   白馬と権平、それを見る。
権平「ほう……」
後藤「過去には花火を打ち上げていたことも
 あるんです」
権平「ええ。ただ、難しいでしょうなぁ。冬
 の山は気候条件が厳しい」
   X  X  X 
   フラッシュ
   大雨で中止になった学校祭の花火大会。
   X  X  X
後藤「そこで、近年はプロジェクトマッピン
グなんかを使ったレーザーに切り替えていた
んですがね、その演出をそこにいる昇太さん
にお願いできないかと思いまして」
   白馬、ひっくり返るほど驚く。
白馬「俺! 俺ですか!?」
後藤「いや実は、今年のステージのオオトリ
 は、あなたが通われる高校の合唱部の皆さ
 んなんです。今年はほら、全国大会でも入
 賞して、特に今泉舞子さんは、ウィーンの
 大学の特待生にもなって、ちょっとした有
 名人ですから」
権平「へえ! 舞子ちゃん、特待生受かった
 のか! そら良かった!」
後藤「だから、ここはいっそ、合唱部の皆さ
 んと、未来の花火師として活躍される白馬
 昇太さんの、高校生コラボレーションとい
 うことで、いかがでしょうか!」
   白馬が戸惑っていると、権平が勝手に
   答える。
権平「面白い! やってみろ、昇太!」
白馬「おいおいおい。イルミネーションの演
 出なんて……、さっぱりだぜ?」
権平「いや!これは良い機会だ!」
   権平、興奮して立ち上がる。
権平「いいか、これから花火1本でやってい
 ける保証なんてなんもねぇんだぞ。今は中
 国の方が技術も上で、単価も安いってんで、
 そっちに切り替えるイベンターも多いんだ。
 空に魔法をかけるって意味では、レーザー
 も花火も一緒だ」
白馬「だけどさ……」
   権平、ぐずぐすしている白馬に、掴み
   かかりそうな勢いですごむ。
権平「俺が何のために、イヤイヤ言ってるお
 前を大学に行かそうとしてるか、わかるか。
 お前が将来、立派な花火を作りたいならな、
 花火だけを勉強してちゃダメなんだ。もっ
 と色んな世界を知って、磨いたセンスって
 やつを玉に火薬と一緒に練り込むんだよ。
 こういう機会にうんと勉強すればいい。絶
 対にプラスになる」
白馬「ああ……。それは、わかるけど……」
   権平は怒鳴る。
権平「てめぇ! それでも男か!」 
   白馬も立ち上がる。
白馬「なんだよ! うっせえよ!」
権平「何より舞子ちゃんのステージじゃねぇ
 か!! あの子に花火を見せられなくて 悔
 しいのは、てめぇだけじゃねぇんだぞ!!」
白馬「ま、舞子のことは……」
権平「未来のカミさんになるかもしれねぇ、
 惚れた女に、さいっこうの魔法をかけてや
 れなくて、何が花火師のせがれだ!!」
   白馬、真っ赤になりながらキレる。
白馬「わかったよ! やってやらぁ! こう
 なりゃ、白馬火工の3代目の意地、見せて
 やらぁ!!」
   後藤、2人の親子喧嘩に気圧されなが
   らも、なんとかうまくいったとハンカ
   チで汗を吹く。

○メルの部屋
   コンクリートともプラスチックとも判
   別がつかない、不思議な素材感の壁で
   囲まれた、未来的な一室でPCを操作
   するメル(年齢不詳)。
   メルの顔はわからず背中だけが見える。
   PCのスピーカーからは、白馬のスマ
   ートフォンから拾っている音声が流れ
   ている。
白馬の声「わかったよ! やってやらぁ! 
 こうなりゃ、白馬火工の3代目の意地、見
 せてやらぁ!!」
   メル、うんうんと頷く。
メル「まさに花火の導火線に火が付いたって
 わけだ」
   メルは微笑み、次の指示を送る準備を
   進める。

○高校・教室
   白馬のスマートフォンにメッセージ。
   【1人の力では難しい。親友の助けも
   借りましょう。】
   白馬、川崎にも協力してもらいながら、
   演出プランを考えている。

○同・合唱部練習室
   舞子、クリスマス・イブのステージの
   ため、合唱部の皆と練習に励む。

○国際スキー場・とある一室
   後藤のスマートフォンにメッセージ。
   【白馬君と川崎君に、指南役として専
   門家を手配してください。】
   白馬と川崎、レーザーイルミネーショ
   ンの専門家にも指導を受け、演出プラ
   ンを練り上げていく。

○同・ステージ・外
   白馬のスマートフォンにメッセージ。
   【さあ、大詰め。しっかり舞台監督さ
   んともよく相談して、最高の魔法をか
   ける仕上げをしてください。】
   イベント会社のスタッフが特設ステー
   ジを組み上げていく。
   そして、白馬と川崎、そして権平も
   付き添い、舞台監督にあれこれと相談
   をしている。

○メルの部屋
   メルがPCの前に座ると、モニタには
   ついにステージの幕が上がる様子が映
   し出されている。

○国際スキー場・控室
   舞子は椅子に座って目をつぶって
   いる。

○(回想)高台・外(夜)
   小学生の白馬、川崎、舞子が花火を見
   ている。
舞子「きれいだな……」
白馬「これが白馬火工の花火さ!」
川崎「僕も花火師になるよ! 昇太社長の右
 腕になる!」
白馬「そっか。お前がいれば怖いものなんて
 ない! 頼むぜ!」
舞子「私は…、この花火の下で…。昇太と新
一が打ち上げた花火の下で歌いたい、な」
   3人は顔を見合わせる。
   花火が少年たちの横顔を美しく照らす。
   (回想終わり)

○国際スキー場・控室
   舞子、目を開ける。
舞子「大丈夫。それは絶対叶う!」

○国際スキー場・ステージ(夜)
   舞子達合唱部はステージに上る。
司会「最後は、せせらぎ高校の合唱部の皆さ
 んです! 今年の全国大会でも上位入賞を
 果たした皆さんの、聖なる歌声に酔いしれ
 てください!」
   盛り上がる観客達。
   歌が進み、舞子のソロパートの前の間
   奏になる。
司会「今日、このステージを彩るのは、同じ
 くせせらぎ高校に通う、白馬昇太さんと川
 崎新一さんの演出です! とびっきりの夜
 空の魔法もぜひご堪能ください!」
   舞子は一際良い笑顔になる。
   後ろに居た白馬と川崎が客席の最前列
   に飛び出る。
白馬と川崎「がんばれー! マーイ!!」
   舞子、最高の笑顔とテンションで歌い
   始める!
   権平と後藤、後ろの方で彼らを見守る。
   大歓声の中、ステージは大成功する。
   X  X  X
   メルの部屋。
   メルもモニタ越しにその様子を見て満
   足げに微笑む。(顔は見えず口元だけ)
   X  X  X

○空港・ロビー
   舞子の出発を、白馬と川崎が見送りに
   きている。
川崎「僕は気を使って、先に帰るね」
白馬「はっきり『気を使って』って言うなよ
 !」
川崎「じゃあ、マイ。がんばって。僕は必ず、
 昇太と一緒に立派な花火師なるよ!」
舞子「私がいない間、(白馬に向かって)こい
 つにへんな虫がつかないように見張ってて」
川崎「もちろん、仰せのままに。……じゃあ
 ね」
   川崎は先に帰ってしまう。
   残された白馬と舞子。
白馬「親父は『このままでは』いずれ日本の
 花火師はいなくなるって言う。でもそれは
 ……『このままでは』って意味そのままな
 んだ。俺は……、新しい時代にふさわしい
 誰も見たことのない花火を創ってみせる。
 そのために……、まずは大学で勉強だ」
舞子「うん。私も、そんなあんたたちが創る
 花火に負けない歌い手になる」
   2人は抱き合う。
舞子「ねえ…、プロポーズする時もサプライ
ズで花火打ち上げてね」
白馬「それ、サプライズじゃねぇじゃん」
   くすくすと笑い合う2人。

○とある軍事基地・モニタールーム
   モニタがいくつもあり、メルの部屋を
   監視している。
   職員達が淡々と自分の仕事をこなして
   いる。
   政府の高官2人が部屋を見渡せる場所
   で話している。
高官1「まったく。メルは好き放題やってま
 すね」
高官2「ああ。だけど、誰にも止められんさ」
高官1「なぜ……、彼はこんな事態でも生か
 されているんです?」
高官2「殺すのは簡単だが、万が一にでもど
 この国が殺したか発覚すれば、重大な協定
 違反だ。戦争になりかねない。ま、そんな
 ことになれば、『実際に』どこの国がやっ
 たかなんて、もはや関係なくなるだろうが
 ね」
高官1「『生ける究極兵器』か……」
高官2「彼をモニタリングするための細く、
 がちがちにプロテクトをかけた回線がある
 だけで、このザマだ。彼がこの地上に降り
 立てば……。核ミサイルが飛び交った後の
 世界など想像もしたくないね」
高官1「彼の目的は何なのでしょう?」
高官2「退屈だから遊んでいるのだろう?」
高官1「ま、あそこには静かで何もないこと
 だけはたしか、ですね」

○メルの部屋
   メル、白馬達が空港で別れ、それぞれ
   の道を歩き出したことを確認し、満足
   そうにしている。
   メル、ゆっくり椅子から立ち上がり、
   伸びをする。
メル「うーん。今日も『善きこと』をした」
   メル、窓の方に向かう。
   窓からは大きな地球が見える。
メル「……ハロー、美しき我が故郷」
   メル、しばらくうっとりと地球を眺め
   る。

○どこか誰かの部屋・中
   誰かのスマートフォンにメルのメッセ
   ージが表示される。
   【僕の名はメル。でも僕のことはひと
   まず置いておいて。----あなたに、お
   願いしたいことがあります。これを実
   行してくれるのならば、あなたはこの
   世界に1つ『善きこと』を行うことに
   なります。どうか僕を信じて、行動し
   てください】

(終)

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