マーブル・ポップコーンEP2 【人生、谷あり山あり】 コメディ

現代を生きる若者が、夢や恋、友情を通じて交流していくポップなコメディ物語。 ルームメイトのニックに次々と幸運が訪れる。夢、お金、(まだ大好きな)別れた奥さんも会いに来る。だが、そこまで人生は甘くなかった……。果たしてニックの運命は?
ぐずら 14 0 0 05/26
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第一稿

マーブル・ポップコーンEP2

 タイトル:【人生、谷あり山あり】

※マーブル・ポップコーン エピソード1が
 ありますが、基本的に一話完結なのでこの
 エピソードか ...続きを読む
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マーブル・ポップコーンEP2

 タイトル:【人生、谷あり山あり】

※マーブル・ポップコーン エピソード1が
 ありますが、基本的に一話完結なのでこの
 エピソードから読んでも特に問題ありませ
 ん。ボソボソ(どこからでもアホらしい展開です)。

登場人物
一条 はるか(26)『いちじょう はるか』
  女。女優を目指している。
ニック、(二宮 九太郎(36))『にのみ
  や くたろう』男。夢は小説家。フリー
  ター。
シュミレット、(三木 秀人(35))『み
  き しゅうと』男。普通のサラリーマン。
ウェス、(五十嵐 西貴(33))『いがら
  し さいき』男。ダンスレッスンの先生。
シシ、(四葉 詩詞(26))『よつば し
  し』女。はるかの親友。密かに歌手を目
  指している。

編集者 出版社の編集者
マスター バーのマスター
元奥さん ニックの別れた妻
カップル男女


『マーブル・ポップコーンEP2』 【人生、谷あり山あり】

〇シェアハウス リビング 昼
   ルームメイト達で人生ゲームをしてい
   る。
ニック(二宮 久太郎)「イエーイ! どう
 だ!? アメリカのトランプもびっくりす
 るぐらいのリッチマンになったぜ!」
ウェス(五十嵐 西貴)「はいはい。お前み
 たいな奴が人生ゲームでリッチになったん
 だぜ! って言ったら、そりゃあトランプ
 もびっくりするだろうよ」
シシ(四葉 詩詞)「これはニックの一人勝
 ちかもね」
シュミレット(三木 秀人)「現実の世界で
 一番貧乏な奴がゲームの世界で金持ちにな
 るとは、神様も少しは何も持っていない男
 に慈悲を与えたか」
ニック「ヘイ!シュミレット、そんな小さな
 家買うのかよ?ビンボー人は辛いな」
シュミレット「おい、悲しくならないのか?
 現実の自分を見てみろよ! お前とは真逆
 の人生じゃねぇか」
ニック「おいおい、負け惜しみは見苦しいぞ?
 大人げないな~。忘れるなよ! 最下位だ
 ったやつが一杯奢るんだぞ?まぁ、なんに
 せよ、俺は全く気にしなくていいぜ!」
ハルカ(一条 はるか)「次、ニックの番だ
 よ」
ニック「うん? 俺か。あとは消化試合みた
 いなもんだな。悪いな、みんな」
   ニックがルーレットを回す。ニックは
   余裕があるので見てない。
ニック「楽しみだぜ。人生ゲームで一番稼い
 だんじゃねぇか? 金の紙が足りるか心配
 になってきたぜ」
   ルーレットが止まり、ニックの駒が近
   くにあったのでハルカが動かす。
ハルカ「1,2,3……」
ニック「ははっ、何が起きても恐くないぜ。
 無双ってこの事を言うんだな。ハハハッー」
ハルカ「……9、え~と、家が火事になり全
 焼する」
ニック「アハハハ! ほら、聞いたか? 次
 は家が全焼だって!? アーハハハハ……」
   ニック、マジメな顔になり。
ニック「え、燃えたん?」
ハルカ「うん」
ニック「家、燃えたん?」
ハルカ「うん。あ、けど火災保険入ってたら
 半分保障があるって」
ニック「火災保険?」
ウェス「めんどくさいって言って入らなかっ
 たやつだよ」
ニック「今からじゃダメ?」
ウェス「ダメだろ」
   シシがニックの豪邸のジオラマ?から
   フラッグを取る。
シシ「はーい、残念でした~」
ニック「マジかよ……」
   ゲームが終わり。ニックが最下位にな
   っている。
   ハルカが一位。みんな喜んでる時にニ
   ックだけ不満顔。
ハルカ「やった~! 一位!」
シシ「ちぇ、あと少しだったのにな」
ウェス「三位か、悪くねぇ」
シュミレット「最下位は……終盤でまさかの
不幸ラッシュのニックさんです!」
ニック「おかしいだろ! あんな落差! 家
 を失ってゴッホの絵を20億円で買うって
 なんだよ! 家を買えよ! イカれてるぜ
 このゲーム!」
シュミレット「まぁまぁ、お前の人生もそん
 なもんだろ?」
ニック「うん? 最下位の俺をさらに精神的
 に追い詰めてるのか?」
シュミレット「とりあえず、バーでの一杯は
 奢りはニックに決まりだな」
ニック「おいおい、この中でゲームでもリア
 ルでも貧乏な俺から金を取ろうってのかい?」
ウェス「いや、それがルールだっただろ?」
ニック「本当にお前達は鬼畜だよ! 金どこ
 ろか俺の魂まで持っていっちまう!」
シュミレット「ニック……それで逃げれると
 思うなよ? お前が、負けたんだ。人生で。
 いや間違えた。人生ゲームで」
ニック「(渾身の)ちっきしょう~!」
ウェス「あ、懐かしい。小梅だゆう」
   ニックに電話がかかってくる。
ニック「お、電話だ。失礼」
   ニック、家を出ようとする。
シュミレット「おい、まさかお前逃げるんじ
 ゃねぇだろな?」
ニック「違う!大事な電話なんだ!」
   ニック、そそくさと家の外へ。
ウェス「なんで外で電話するんだ!? 待て
ぇい!」
   ウェスとシュミレットが追う。

○住宅街 昼
ニック「うまく撒けたな……」
   まだ電話が鳴っている。ニック、電話
   を取る。
ニック「はい、もしもし」
編集者「あ、もしもし、こちらロバ出版の者
 ですが」
ニック「ロバ出版?……」

〇タイトル「マーブル・ポップコーン」

〇シェアハウス リビング 昼
シュミレット「あいつどこまで行きやがった?」
シシ「まぁそのうち戻ってくるわよ。だって
 ここが家なんだもん」
シュミレット「いや、あいつの事だからこの
 まま失踪するかもしれない」
ハルカ「みんなに一杯奢るくらいで失踪なん
 て……」
シュミレット「このまま大人しく、なにもな
 かったように帰ってくるバカな犬じゃない
 んだ。ほら、いるだろ?訳もわからず「バ
 ゥバゥ!ハッハ!」とか言って興奮して急
 に走り出すバカな犬。そのまま失踪するタ
 イプの。確かにあいつはバカかもしれない
 けど、一応俺達と同じ言語の小説を書いて
 いる。やつはチンパンジーでもない!もし
 かすると変に人間の部分があるから、余計
 にすぐに帰る選択をしないんじゃ……」
   ガチャと玄関の扉が開く音。
ニック「たっだいま~!」
   ウェス、「ほら帰ってきたぞ」と手振
   りだけで伝える。
シュミレット「……あいつはバカな犬だった
 ようだ」
   ニック、リビングに登場。
ニック「みんな聞いてくれよ!」
シュミレット「なんだ? 貯金が底をついて
 たって言われても同情しないぜ?」
ニック「それは同情しろよ。まぁとにかく、
 聞いてくれ。びっくりするぞ。今さっき電
 話が掛かってきたんだ」
ウェス「金を振り込んだら一年後に倍になる
 って電話か?」
ニック「違ぇよ! 俺が執筆した作品を送っ
 たら返事が来たんだ! 一度本社に来て下
 さいだって!?」
ハルカ「すごいじゃないニック!」
シシ「夢に一歩前進ね」
シュミレット「それホントかよ?」
ニック「これで俺の夢がやっと叶うぜ! こ
 の日の為に俺は色んなものを犠牲にしてき
 たからな!」
シュミレット「夢の為に色々失った、みたい
 に言ってるけど、夢が叶ってようが叶わな
 いでいおうが、お前が失うものは何も変わ
 らなかったと思うぜ」
ニック「うるせい! とにかく俺は、今から
 出版社に行ってくるぜ!」
ウェス「ああ、行って来いよ。俺は今から「
 ジュラシック・ジョーズ」でも観ながらパ
 ンケーキでも食べて待っとくよ」
   ウェス、ジュラシックジョーズのビデ
   オの裏面を見ている。
シシ「ジュラシックジョーズ? パクりにパ
 クったタイトルなのね」
ウェス「隠れた名作だ」
ニック「シュミレット、金貸してくれ。電車
 賃でいいから」
シュミレット「おい! ボケてるのか? 数
 秒前の事を忘れてやがる。ボケ老人め! 
 お前は人生ゲームで負けて俺達に金を払わ
 ないといけない立場なんだよ! 電車賃で
 いいから? 笑わせてくれるね! はっはー!
 歩いていくか自転車で行ってこい!」
ニック「自転車で行ったら格好がつかないだ
 ろ?」
シュミレット「金ねぇ奴が格好を意識するん
 じゃねぇ!」
ニック「いいじゃねぇか。小説が売れたら数
 倍にして返してやるからよ」
シュミレット「はっ! お花畑も良い所だぜ!
 小説が売れてベストセラーになって、金が
 次々と溢れて、女を何人もはべらせて、い
 くつもの国に別荘を持って、夏の海にクルー
 ザーの上で毎日パーティーってか!? よ
 し! いくらいるんだ? 電車賃くらい、
 俺が!、出してやるよ」
ニック「お前の方がお花畑じゃねぇか。まぁ、
 ありがとうよ!」
シュミレット「ニック、忘れるな。俺が!、
 金を貸したんだぞ?」
ニック「ああん、分かってるよ。じゃあ、着
 替えて行ってくるわ」
ハルカ「気を付けてね~」

〇電車の中 昼
   ニック、まぁまぁ混雑している電車の
   座席に座っている。
   隣の座席に可愛い女の子が眠っていて、
   ニックの肩に寄り掛かる。
   ニック、気持ち悪い笑顔になって喜ぶ。
   匂いを密かに嗅いだりしてる。

〇ビジネス街 昼
   ニック、時計を見る。3時くらい。ス
   マホのメモで「待ち合わせ4時」と書
   かれているのを見る。
   まだ時間があるので偶然、目の前に見
   えていた宝くじ売り場に行く。
   歩いていると100円を踏んで、拾う。

〇宝くじ売り場 昼
   ニック、スクラッチを買って削ってい
   る。
   すると大当たり。
   チャランチャランっという鐘の音。

〇出版社 昼
   ニック、笑顔で編集者と会話。
   上手い事いってる感じになっている。

〇ビジネス街 夕方
   ニック、出版社を出てホッっと息を吐
   く。安堵の顔。

〇シェアハウス リビング 夕方
   みんなリビングでくつろいでいる。
   ウェス、昔のビデオデッキを引っ張り
   出してきてビデオテープを観ようとす
   るが、悪戦苦闘している。
ウェス「どうやって観るんだ? これ?」
シュミレット「DVDで観てたら今頃映画観終
 わってた時間だな」
ウェス「俺はこれが観たいと思った映画しか
 観ないんだ」
シュミレット「悲しい人間だな~。そんなこ
 だわってたら、今日一日が終わっちゃうぜ?」
ウェス「それでも観るまで諦めねぇ」
シュミレット「そうやって人生が終わってい
 くんだね~」
   ニック、帰ってくる。
ニック「ようよう! バーに来いよ。俺が全
 員に奢ってやるから!」
シュミレット「わぉ! マジかよ! いきな
 り成金野郎みたいになって帰って来たぜ!
 成長がドバイのように早いぜ!」

〇バーの外 夜
   バーの外の看板「マーブルポップコー
   ン」。

〇バー 店内 夜
   ルームメイト全員で乾杯。
みんな「乾杯!」
ニック「飲め飲め!今日は俺の奢りだ!」
ハルカ「すごいじゃない!前金でも貰ったの?」
ニック「いんや、宝くじで当たった」
ハルカ「宝くじで!?すごい!」
シシ「で?小説の方はどうなったのよ?」
ニック「ああ、手直しはだいぶ必要だけど、
 上手い事いったら出版OKだとよ」
シシ「すごいじゃない。頑張ってきた甲斐が
 あったね」
ニック「ああ。なんか知らないけどツキまく
 ってるんだ。今ならなんでも出来る気がす
 る」
ウェス「おーいニック! 久しぶりにダーツ
 やろうぜ!」
   ニック、ハルカとシシに顔を向けて微
   笑む。
ニック「見てろよ?」
   ニック、ダーツで勝ちまくる。ウェス
   悔しい表情。
   みんなでポーカーをする。それでも強
   いニック。
ニック「ロイヤルストレートフラッシュ!」
シュミレット「何!?」
ウェス「ニックの奴、マジでとってもラッキー
 マンだぜ」
シシ「ホントに運が止まらないわね」
ニック「イェーイ! この世は俺様無双だぁ!
 金かけてたらお前らの奢った分も返って来
 てたぜ! 今の俺なら、何でも手に入るん
 だ!」
シシ「あらら、調子乗っちゃって。古代マケ
 ドニア王みたいな事言ってる」
シュミレット「悪魔と取引したに違いねぇ!」
ハルカ「ははっ……ホントにすごいね」
   バーに誰かが入ってくる。扉の音だけ
   が聞こえる。
   入ってきた客は女でニックの前で立ち
   止まる。
   ニック、ポーカーの途中で女に気づく。
ニック「お?」
   ニックの前にニックの元奥さんが立っ
   ている。
奥さん「久しぶり。何回か電話したんだけど
……ここなら会えると思って」
   ニック以外のみんな、気まずくなって
   理由をつけて離れる。
シシ「あぁ……あ~! みんな見て見て! 
 この観葉植物新しくない?」
ウェス「嘘! マジで!」
シュミレット「どれどれ! 本当だ! めっ
 ちゃ緑じゃん!」
ニック「(奥さんに向かって)どうしたんだよ?
 いきなり」
奥さん「話したい事があるんだけど、先にち
 ょっと、久々に飲まない?」
ニック「ああ、別にいいぜ」
   みんな、離れてニックと奥さんの様子
   を伺っている。
   ニック、奥さんと良い感じに笑いなが
   ら会話してる。奥さん「変なメッセー
   ジ残さないでよ!」とかニック「綺麗
   になってんじゃねぇか畜生!」とか言
   い合ってる。
ウェス「なんか、良い感じじゃね?」
シシ「ええ、予想以上にね」
ハルカ「あの人がニックの奥さんなの?」
シュミレット「元な」
ウェス「なんだか、このままヨリを戻しそう
 な勢いだな」
   みんなシーンとなる。
ウェス「なわけねぇか」
シュミレット「いや、あり得るかもしれねぇ
 ぞ。今のあいつの運のツキようは神がかっ
 ている。再婚もあるかもしれねぇ」
シシ「運で再婚するもんなの?」
シュミレット「世の中全て運みたいなもんさ。
 ルーレット回して、パチンコ玉みたいなチ
 ンケな玉が入るか入らないかで人生全てが
 決まるんだ。成功も恋愛もな」
ハルカ「ニックは今、ガバガバ入ってる状態?」
シュミレット「そうだ。やつは人生で一回あ
 るかないかのフィーバー中だ。何があって
 もおかしくねぇ」
   ニック、奥さんと楽しく会話中。お互
   い笑い合っている。
ニック「はっはっは! そりゃおかしいぜ!」
奥さん「でしょ?ホントに笑えるわ!」
ニック「変わってねぇな。お前」
奥さん「あなたもね」
ニック「ははは……そういえば、話したい事
 ってなんだよ?」
奥さん「ここじゃなんだから、ちょっと出な
 い?」
ニック「ああん……全然いいぜ。悪いなみん
なちょっと外に行ってくる!」
シュミレット「ああ、帰ってくるか連絡しろ
よ!」
   ニック、去り際に手だけ上げて去って
   いく。
   みんな飲む直す。しばらくして気づい
   たようにウェス喋る。
ウェス「あれ?金は?」
 みんな、ハッ!とする。

〇ゲームセンター 夜
   ニック、元奥さんとレースゲームやUF
   Oキャッチャーなどして楽しむ。元奥
   さんも楽しそう。プリクラもふざけて
   撮ったりする。

〇シェアハウス リビング 夜
   みんな、リビングでくつろいでいる。
   ウェス、まだビデオテープ(ジュラシ
   ックジョーズ)を観ようと頑張ってい
   る。
ハルカ「ニック、遅いねぇ」
ウェス「連絡もないしな……くそ! なんで
 つかないんだよ!(ビデオデッキ)」
シュミレット「このまま今夜は帰らないんじ
 ゃねぇか?」
シシ「今夜は?」
シュミレット「うん、今夜は……」



〇公園 夜
   ニックと元奥さん、どこかで飲んでき
   た帰り道に公園に寄る。
   お互いに楽しそうに笑い合い、酔って
   いる。
ニック「はっははー!」
奥さん「はぁ~飲み過ぎちゃった」
ニック「久しぶりの再会だ! たまにはいい
 じゃねぇか!」
奥さん「そうね……なんで私って、いつも離
 れてから気づくのかしら……」
ニック「何の事だ?」
奥さん「一緒に過ごしている時に、もっと楽
 しくこんな事が出来てたんじゃないかって
 ……」
ニック「……今からでも遅くないんじゃない
 か?」
   元奥さん、ニックの顔をじっと見てる。
ニック(やばい、これってもしかして、バッ
 クトゥザワイフじゃね?意味は合ってるの
 か知らないが。けど俺今めちゃめちゃツイ
 てたからな。これは、ひょっとするとひょ
 っとするぞ!)
   ニック、ドキドキしている。少し合間
   を開けて元奥さんが口を開く。
奥さん「私ね……」
ニック「おう、何だ?」
   ニック、何もないように振る舞う。
奥さん「私……来月結婚するの」
ニック「……え?」
奥さん「分かってもらえないかもしれないけ
 ど、あなたには言ってた方がいいかなっと
 思って」
ニック「結婚って、誰と?」
奥さん「半年前に知り合った人よ」
ニック「マジかよ……今夜のは何だったんだ
 よ!? 期待させやがって!」
奥さん「それは……ごめんなさい。あなたと
 別れて私も少しは後悔してたから」
ニック「少しかよ! 俺は後悔の嵐だったよ!
 あぁ! 俺が快く祝いの言葉を言うと思っ
 たか!? 結婚? んなもん勝手にしやが
 れ!」
   ニック、どこかへ行く。
奥さん「ちょっと!」
   奥さん、ニックを追いかけようとする。
ニック「くるんじゃねぇ!」

〇大きな橋の道路 夜
   ニック、酔っ払ってフラフラと歩いて
   いる。
   前から来るカップルにジロジロ見られ、
   ひそひそ話をされる。
ニック「何観てんだ? あん!? お前らも
 どうせすぐ別れるんだ! 今だけでも楽し
 んどきな! はっ!」
   カップル、危険を察知して逃げていく。
   ニック、手すりに寄りかかり、夜の川
   に向かって叫ぶ。
ニック「(渾身の)ちっくしょ~!」

〇シェアハウス ニックの部屋の前 朝
   ニックの部屋の前にみんな(ニック以
   外)いる。
   ニックは部屋に閉じこもっている。
シシ「昨日帰って来てからずっと閉じこもっ
 ているね」
ウェス「あいつもこれで中年の引きこもりデ
 ビューか?」
ハルカ「ニック~!夕飯いらないの?」
ニック「(部屋から)いらねぇ」
シュミレット「お前の好きならっきょうもあ
 るぞ!」
ニック「(部屋から)好きでもねぇよ」
シシ「こりゃあ、しばらくダメかな?」
   ハルカ、少しいき込んで部屋に入る。
〇ニックの部屋 夜
   ニック、部屋を真っ暗にしていて扉か
   ら背を向ける感じで座っている。
   相当沈んでいる。
ハルカ「ニック、大丈夫?」
ニック「笑えるほど辛すぎるぜ。もう、何も
 できねぇ……」
   ハルカ、ニックの隣に座る。
   ニック、泣きながら言葉を続ける。
ニック「昔はよぅ、何も知らなかった頃だ。
 まだ夢ばかり見てた頃だ。小説家になって、
 金持ちになって何でも買えて、みんなに憧
 れられて有名になって、業界の友人や美人
 の恋人達がいっぱいいるのが幸せだと思っ
 てた。だけど、大人になった俺はそんなの
 求めていなかったんだ。夢が叶っても、金
 があっても、メチャクチャおいしいのを毎
 日食べようが、美人にモテようが、どうで
 もいいんだよそんなもん。本当に大切なも
 のが一つあればいいんだ……あったんだよ
 俺は。気づけなかった……俺は、なんてバ
 カなんだ……ちっくしょ~……」
   ニック、大泣き。
〇シェアハウス ニックの部屋の前 夜
   ハルカ、ニックの部屋から出てくる。
ハルカ「相当ショックみたい」
シシ「まぁ、二回振られたようなもんね」
シュミレット「まぁ、あいつの事だ。数日す
 れば迷子になった犬のようにケロっと出て
 くるよ(部屋から)」
ハルカ「そうだといいけど……」
   ニックの扉の前でテロップ。
T『2週間後……』
〇ニックの部屋の前 夜
   ニックの部屋の前にみんな(ニック以
   外)いる。
シュミレット「うん、出てこないね。嘘だろ?
 何日こもれば気が済むんだ! ってか、生
 きてる!?」
ウェス「食料とかは自分で買ってるみたいだ
 ぞ」
   ウェス、落ちているレシートを見なが
   ら。
シシ「さすがに心も体も健康じゃないね」
ハルカ「小説はどうなってるんだろ?」
シシ「書いてないみたいよ。書く気力がない
 んだって」
ハルカ「……」
ウェス「あ~あ、もったいねぇな」
シュミレット「おいニック! 忘れんじゃね
 ぇぞ! 俺が貸した電車賃だけは返せよ!」
ニック「(部屋から)うるせぇ! ライター
 の給料が入ったらすぐにでもお前の部屋に
 叩きつけてやるよ!」
シュミレット「てめぇ! 叩きつける音で俺
 をビックリさせるなよ! 突然の大きな音
 とかのホラーは一番苦手だからな!」
   ハルカ、いきこんでニックの部屋に入
   る。
〇ニックの部屋 夜
   電気が消えている。
   テレビだけついている。映画「きみに
   読む物語」?
   部屋が空の酒瓶やゴミだらけ。
ハルカ「失礼しまーす、ニック生きてる?」
ニック「生きてるぜ~半分死んでるけどな~」
   ニック、酒瓶を片手に飲んで酔っぱら
   っている。
ハルカ「何観てるの?(映画の事)」
ニック「ああ、傑作の恋愛映画だ。原作が小
 説なんだ。最後に奇跡が起きて運命の二人
 が結ばれて、ラストはお互い老人になって
 幸せに死んで逝くストーリーだ」
ハルカ「へぇ~」
ニック「バカげたストーリーだ。こんな事現
 実であるわけないぜ。大抵の人間は夢か愛
 に破れて、偽りの、勘違いの幸せを掴んで
 生きていくんだ。クソみたいな人生をな」
ハルカ「……小説は書いてるの?」
ニック「うん? 馬鹿らしくなって書いてね
 ぇ。成功もしないのにバカみたいに十年以
 上頑張ってた自分が恥ずかしいぜ。俺はど
 うせ何やっても幸せが逃げていくようにな
 ってるんだ。波のように幸運が訪れて、引
 き潮のように去っていく。何やっても無駄
 さ。こうやって一生映画でも観ながら飲ん
 でる方がマシさ。俺の人生は。あぁ、いい
 かげん認めてやるよ神様よぅ。俺は負け犬
 さ。そうなんだろ?」
ハルカ「ねぇ、ニック」
ニック「うん?」
ハルカ「また、書き始めなよ」
ニック「だから、何しても無駄なんだよ……」
ハルカ「無駄じゃないよ(キツめに)」
ニック「え?」
ハルカ「今までバカみたいに頑張って来たん
 でしょ? 信じて頑張って来た夢でしょ?
 色んなもの失っても、しがみついて来たん
 でしょ? 簡単に投げ出さないでよ」
ニック「……」
ハルカ「確かに今はとても辛いだろうけど、
 絶望だろうとも、夢を捨てないでよ。自分
 を捨てないで。夢を追ってきた過去を、努
 力してきた過去を後悔しないでよ。もう一
 度思い出して。今まで好きだから書いてき
 て、ここまで来たんでしょ? 小説が好き
 だから、夢を追ってたんでしょ?」
ニック「……あぁ、そうだ……」
ハルカ「私も、好きだから女優の夢を追って
 来た。誰に何て言われようと、地元を離れ
 ようと、彼氏に捨てられても、今もまだ夢
 の途中で頑張ってる。好きだからまだ続け
 てる。ニックにも助けてもらったんだよ?
 私は知ってるよ。ニックは負け犬なんかじ
 ゃないって。ニックの今までの努力は無駄
 なんかじゃないって」
ニック「けど、俺はもう……」
ハルカ「気持ちは分かるよ。けど、奥さんも
 少し後悔したって言ってたよね? 奥さん
 も乗り越えて、前に進んだって事なのよそ
 れは。ニックも、辛くてボロボロだろうけ
 ど、もう一度立ち上がって前に進まなきゃ。
 私は、ううん、ルームメイトのみんなもそ
 う。ニックが幸せになる道を選んで欲しい
 から。これがニックにとって幸せに繋がる
 道だとは思わないよ」
   ニック、黙って何もない所を見ている
   (考えている様子)。
ハルカ「さ、立ち上がって。まず部屋から出
て、するべき事をして。……じゃあね」
   ハルカ、優しく微笑んで部屋から出る。
   ニック、大きな息を吐く。
ニック「……フゥ~……」

〇シェアハウス リビング 夜
   ルームメイト達、それぞれ違う事をし
   て過ごしている。
   ニック、部屋から出てくる。
シュミレット「よぅニック! 久しぶりだな。
 ちょっと老けた?」
ニック「ああ、ずっと精神と時の部屋にいた
 からな」
ウェス「へぇ、じゃあもうすぐ還暦じゃねぇ
 のか?」
ニック「まぁな。ちょっと、出てくる」
シシ「え? どこ行くの?」
ニック「ちょっと、な」
   ニック、出て行く。
シュミレット「樹海はやめとけよ~! 探す
 の大変だから!」
シシ「ねぇ、はるか、どこに行くか知ってる?」
ハルカ「う~ん……分からないけど、きっと
 大丈夫だよ。もう立ち上がってると思うか
 ら」
シシ「うん?」

〇河川敷 夜
   ニック、電話を取り出しどこかへ掛け
   る。相手に繋がる。
奥さんの声「……はい」
ニック「よぅ、俺だ」
奥さんの声「うん……」
ニック「そのよぅ、……この前は悪かった」
奥さんの声「ううん、急だったもん。私の方
 こそごめんなさい」
ニック「いや、俺が悪かったんだ、あの時は。
 謝らせてくれ。……結婚の事だけどよぅ?」
奥さんの声「うん……」
ニック「……おめでとう。今度は、幸せにな
 れよ」
奥さんの声「……ありがとう」
ニック「そうだ、まだ分かんねぇけど、俺が
 書いた小説がうまくいけば出版されるかも
 しれねぇんだ」
奥さんの声「すごいじゃない。ずっと頑張っ
 て書いてたもんね。夢だったんでしょ?」
ニック「ああ、そうさ。お前と別れた後もバ
 カみたいにしつこく書いてきたよ。出版し
 て、もし大ヒットして映画にでもなったら、
 真っ先に試写会に招待してやるよ。断るな
 よ? これも俺の一つの夢だったんだから」
奥さんの声「ふふ、楽しみにしてる」
ニック「そう……それじゃあな、切るわ」
奥さんの声「うん」
ニック「お前の幸せを願ってるぜ。……じゃ
 あな」
   ニック、微笑みながら電話を切る。
   大きく息を吸い込み深呼吸して、川の
   向かい側の夜の都会を眺め、ゆっくり
   と歩き出す。


〇シェアハウス リビング 夜
   ウェス、ビデオデッキを引っ張りだし
   てテレビに繋げている。
シュミレット「まだ諦めてなかったのか?」
ウェス「俺は諦めない男なんだ。この映画を
 観るまでまだ他の映画を観てないからな」
シュミレット「なるほど、類は友を呼ぶ。お
 前とニックが仲良しの理由が分かったよ。
 お前も離婚したあとすぐに別れた奥さんに
 毎日一日20回もコールする奴なんだな?」
ウェス「お前はニックの親友だけどな」
シュミレット「お前はニックとおっさんずラ
 ブだけどな」
ウェス「おう!映った!」
シュミレット「マジかよ! ビデオなんて観
 れるのかよ!」
   シュミレット、ウェスと共に座りテレ
   ビを観る。
ウェス「やっと念願のジュラシックジョーズ
 が観れるぜ。70年代の伝説のパロディ映
 画なんだ。これを観るためにどれだけ金と
 時間と労力を使ったか……高かったんだぜ、
 このビデオデッキ!ヒャッホー!」
   一瞬映画が映るが、途中で画面がジリ
   ジリになる
ウェス「あれ?どうなってるんだ?」
   ジリジリがなくなり次に映ったのはシ
   ュミレットとニックのホームビデオor
   エロい映像が流れる。(ビデオテープ
   が上書きされていた)
   ウェス、シュミレット、開いた口が塞
   がらない。

〇~~~~END~~~~~~

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