「マーブル・ポップコーン」
エピソード1「プロット」
ぐずら
登場人物
一条 はるか(10)(26)
『いちじょう はるか』女。女優を目指し
ている。
二宮 九太郎(36) 通称 ニック。
『にのみや くたろう』男。夢は小説家。
フリーター。
三木 秀人(35)通称 シュミレット。
『みき しゅうと』男。普通のサラリーマ
ン。外に出る時はいつもスーツ。
五十嵐 西貴(33)通称 ウェス。
『いがらし さいき』男。ダンスレッスン
の先生をしている。
四葉 詩詞 (10)(26)通称 シシ。
『よつば しし』女。はるかの親友。密か
に歌手を目指している。
彼氏(26) はるかと付き合っている彼氏。
バンドマンっぽい。
浮気女 はるかの彼氏の浮気相手。
学校の先生 はるか(10)の担任。
子供(10)はるか達の前でコケて泣く子供。
選考員1 はるかのオーディションの選考員。
選考員2 同じく。
マスター(65)バーのマスター。
女1
女2 普通の若い女達。合コンに参加。
女3
男1 普通の若い男。
男2 フランスかぶれの怪しい男。合コ
ンに参加。若い。
彼氏の連れ 男二人
「マーブル・ポップコーン」
〇都会の街 昼
一条ハルカ、街をウキウキした感じで
歩いている。
一条ハルカ(N)「今年から、私は地方から
この都会に来た。憧れの都会生活である。
彼氏が夢の為にこっちに引っ越してきて、
私は転がり込むように彼氏の家に流れ込ん
だ」
ハルカ、彼氏の写真が入ったペンダン
ト(ロケット?)を見る。
少し微笑みまた歩き出す。
これからのハルカの長いナレーション
を面白い通行人とかを登場させて長さ
を気にならないようにする。
ハルカは変な通行人達をどれも気づか
ず歩いていく。
ハルカ(N)「私を迎え入れてくれた優しい
彼が大好きだ。昔から憧れてた都会にも住
めた。そして、私の幼い時からの夢、女優
の夢もこの街なら叶えられる。今、私は幸
せの絶頂期だ。毎日が輝いている。私を生
んでくれて育ててくれた、お母さんお父さ
ん。この世界を生んでくれた神様にも感謝
な気持ちでいっぱい。そんな私の溢れる幸
せをみんなに分けてあげたいくらい。まず、
私を夢の世界に連れて来てくれた王子様。
今日は彼の誕生日。一番大切な人から少し
でも喜ぶようにサプライズしてあげたい。
何週間も前から考えていたプラン。きっと、
驚くだろうなぁ。もしかしたら、このまま
ゴールインしちゃうかも?あ、けど夢と恋
愛のどっちを取るのか悩みが生まれるかも?
まぁ、そんなドラマのような人生が私を待
っている。ときめく都会生活だ」
〇アパートの部屋 昼
ハルカ、クローゼットに隠れている。
部屋は暗くしてある。
ドアが開く音。
ハルカ(あ、帰って来た!)
ハルカ、クローゼットの隙間から部屋
を見る。
部屋に明かりが付けられる。
彼氏と見知らぬ女が部屋に入ってくる。
ハルカ「え?」
彼氏と見知らぬ女はベッドで横になる。
浮気女「ちょっと!早すぎない!」
彼氏「いいだろ別に!」
ハルカ(え? あ、あれ? ど、どういう事?)
浮気女「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
彼氏「大丈夫だって。あいつは夜まで仕事だ
からよ」
ハルカ、二人は裸になりベッドで始め
る所をスキマから見ている。
脱いだ服とかズボンがクローゼットに
バシバシあたる。
ハルカ(ちょ、ちょっと、マジか。これ、逆
にビッグなサプライズされてるんですけど!
あー! それ私の枕。そんな所に置くな!
うっわ、マジどうなっての? しかも、真
っ当な方がクローゼットに隠れてるってど
うなのよ?普通は間違いを犯した方がクロー
ゼットかベランダに隠れるんでしょ!?あ
の芸能人だってそうだったじゃない!?)
× × ×
窓からの日が少し落ちている(数時間
経った)。彼氏と浮気女はベッドで裸
になり寝てる。
ハルカ(やっべ……、完全に出るタイミング
を失ってしまった。全部見てしまった。完
全に真っ黒だった。それよりこれ、いつの
タイミングで出ればいいの? 教えて、シ
リ(iPhone))
ハルカの携帯が鳴る。ブーブーとバイ
ブ音。
ハルカの父親のマサルから。
携帯の画面はマサルの変顔。
ハルカ(え?シリ?違う!マサルだ!?ぎゃ
~! なに陥れようとしてるんだマサル!
普段かけてこねぇクセに何でこのタイミン
グなんだ!)
浮気女「携帯鳴ってるよ?」
彼氏「俺じゃねぇよ。俺、マナーにしない派
だもん」
ハルカ(あんがー!ちくしょう! 神め!
なんの恨みがあるんだ私に!)
浮気女「じゃあ、どこから?」
彼氏「さぁな。隣か下の階からとかじゃねぇ
の?けっこう壁も薄いし」
浮気女「ふ~ん、そうなんだ。それにしても
なかなか取らないね」
彼氏「寝てんじゃねぇの?」
携帯が止まる。ハルカ、ホッと息を吐
く。
浮気女「ごめん、ちょっともう行かなくちゃ!」
彼氏「早いじゃん。もっと楽しもうぜ」
浮気女「Tシャツでいいから何か貸してくれ
る?」
彼氏「あいつの奴ならそこのタンスにあるぜ?」
ハルカ(私のを貸すだと!? なんの冗談だ!)
浮気女「なんの冗談よそれ。私が彼女の着て
たらびっくりするでしょ?」
ハルカ(不覚! 浮気女と一緒の事を思って
しまった!)
彼氏「クローゼットに俺のがあるぜ」
ハルカ(え? 待って待って? え?)
浮気女「なら借りるね?」
浮気女、クローゼットを開けてハルカ
と目が合う。
ハルカ「あぁ~!」
浮気女「きゃあー!」
その声にびっくりして彼氏も叫ぶ。
彼氏「ああぁ~!」
浮気女「お、おばけ!」
ハルカ「違うわ! たけるの彼女じゃ!」
浮気女「……え?」
〇シェアハウス(友達(四葉詩詞)がルーム
シェアしている家)リビングルーム 昼
ハルカ「……という事があったの」
ハルカと四葉詩詞(シシ)、立って説
明。
他のルームメイト達は(二宮 九太郎、
三木秀人、五十嵐 西貴)、あっけに
とられた顔でソファに座って聞いてい
る。
シシ、なぜか頭にケーキのクリームだ
らけ。(あとのシーンでなぜクリーム
だらけか分かる)
シシ「ね?考えれる限りの最悪な事にあった
のよ彼女は。だからね、しばらく家に帰れ
ないから、ここに泊まらす事になったの。
何か質問ある?」
五十嵐、なぜかトイレットペーパーで
作った服を着ている(これもあとで分
かる)。
三木、鼻メガネと誕生日帽子をかぶっ
ている。
三木「あ~ん……ちくわは好き?」
〇タイトル「マーブルポップコーン」
〇カフェ 昼
T(少し前の過去)
コーヒーを飲みながら二人で会話。店
内のミュージックは変な曲。(浜田ぱ
みゅぱみゅとか)
ハルカ「どう思う?」
シシ「最悪のシナリオね」
ハルカ「もう、最悪! 泥棒ネコ(あの女に)
にはホラー映画に出てくるモンスターのよ
うな扱いされるし」
シシ(泥棒ネコって……)
シシ「で、その後どうしたの?」
ハルカ「え? その後?」
シシ「うん、その後」
ハルカ「……そのまま出ていったわよ」
シシ「泥棒猫ちゃんが?」
ハルカ「ううん、私が」
シシ「え!?」
ハルカ「けど安心して。ちゃんと通帳とお気
に入れのTシャツは持って出たから。コア
ラの貯金箱は忘れちゃったけど」
シシ「ちょっと待って!何であんたが出てい
くのよ!」
ハルカ「だって……なんかそこに居たくなか
ったんだもん」
シシ「そこにいるみんな全員そうよ!で、そ
の話が三日前なんでしょ?出ていって、今
はどこに住んでるの?」
ハルカ「んん~と……土手?」
シシ「……ドテ?」
ハルカ「うん、……土手」
シシ「川の、ドテ?」
ハルカ「一日目はネカフェだったよ。だけど
このままじゃお金が尽きちゃうし、行く当
てもないし」
シシ「……はぁ。分かったわ。これは緊急事
態ね」
〇住宅街 昼
街を歩くハルカとシシ。
ハルカ「えぇー!いいの?本当に?」
シシ「仕方ないでしょ?家が見つかるまで私
の家に来なよ」
ハルカ「シシの家?シシの家って、今シェア
ハウスしてるよね?」
シシ「そうね。シェアハウスの仲間には分か
ってもらうようにするわ。友人をドテで寝
かせる訳にはいかないからね」
ハルカ「ありがとう、シシ。あ!そういえば、
なんか持って来た方(品物)がよかったか
な?」
シシ「いいよ別に。あんたの家が見つかるま
での間だし。それでもって言うなら、後か
ら買えばいいでしょ」
ハルカ「そっか……、分かった。また後で買
うね」
〇シェアハウスの家の前 (一軒家、アパー
ト、どっちでもいい) 昼
シシ「着いたわ。ここが私がシェアハウスし
てる家よ」
ハルカ「わぁ~、素敵な所じゃない」
シシがドアを開けようとした時に止ま
り振り向く。
シシ「あ!ちょっと待って」
ハルカ「どうしたの?」
シシ「えっと~、シェアハウスしてる人達な
んだけど、さっき話した通り全員男なの」
ハルカ「うん、さっきカフェで聞いたよ」
シシ「それだけじゃなくて、ちょっと変わっ
た連中なの」
ハルカ「変わった連中?」
シシ「そう、変な事があっても、とにかく気
にしないで。気にすると頭がおかしくなる
から」
ハルカ「うん、大丈夫だよ。私もよく人から
変わってるって言われてるもん」
× × ×
〇(回想)学校の教室 昼
学芸会を題目を決める学級会。
子供の頃のハルカ(11)がイスに座
っている。子供のシシもいる
先生「じゃあ、学芸会で披露したい作品はあ
りますか?」
ハルカ「はい!」
ハルカ、手を上げる。
他にも手を上げている子もいる。
先生「はい、一条さん。何の舞台がしたいの?」
ハルカ「失楽園!」
先生「えぇ!」
先生、驚きの顔。
子供のシシ、頭を抱える。
クラスの周りが口々に言う。知ってる
子は笑う。
クラスの子達「失楽園ってなに?」
クラス「あははは!」
× × ×
〇(戻って)シェアハウス前 昼
シシ「……そうだったわ。知らなかった(無
知だった)とはいえ、あれはひどかったわ。
名作だけどね」
ハルカ「何の話?」
シシ「ううん、気にしないで」
ドアを開ける。
シシ「さ、入って」
ハルカ「お邪魔しまーす」
〇シェアハウスの中 昼
部屋が真っ暗。
ハルカ「あれ?誰もいないのかな?」
いきなり電気がついて部屋が明るくな
る。
電気がついたと共にクラッカーの破裂
音が数発。
同居人がお迎え。
三木、
二宮、「誕生日おめでとうー!」
五十嵐、
ハルカ「え? 何なに?」
三木「あれ? 友達も一緒だったんだ?」
T『三木 秀人 アダ名「シュミレット」』
五十嵐「マジかよ! 勘弁してくれよ! 初
対面でこの格好を見せちまうなんて!」
T『五十嵐 西貴 アダ名「ウェス」』
五十嵐、変な恰好。肩にティッシュの
箱。
箱には「ハッピーバースデー!」とマ
ジックで書いてある。頭にトイレット
ペーパー。
三木「最悪のファーストコンタクトだな」
二宮「まぁ、いいじゃねぇか。普段とそんな
変わらねぇぜ」
五十嵐「お前が普段見えてる俺ってこんなん
なのか?」
二宮「みんなで盛大に祝おうぜ!よぅ!ささ、
シシもお客さんもここに座って」
T『二宮 久太郎 あだ名「ニック」』
〇シェアハウス リビング 昼
二宮がシシとハルカを誘導。座る二人。
シシ、座ってから変な格好をしている
五十嵐に話す。
シシ「所で、それ、何の格好なの?」
五十嵐「うーん、そうだな。誕生日の精霊っ
て所かな?」
シシ「わぁ、最高に気持ち悪いわね」
三木「シシのためにイロイロ用意したんだぜ?
ほら! 豪華だろ!」
豪華な料理が目の前のテーブルにある。
シシ「わぁ~ありがとう~!」
シシ、笑顔から真顔になる。
シシ「私の誕生日、先週だったけど」
周りがシーンとする。
二宮「え?待って、先週?」
三木「おいおい、どうなってんだ?」
五十嵐「なんで言ってくれなかったんだよ?
先週、誕生日の時シシは何してたんだ?」
シシ「ずっと遅くまでバイト。帰ってきた
ら家が真っ暗で誰も居なかった。後から聞
いたけど三人は合コン行ってたんでしょ?」
× × ×
〇(回想)ファミレス、夜
二宮、三木、五十嵐が合コンして盛り
上がっ ている。
三木、鼻眼鏡かけている。
二宮「イェーイ!次は俺だ!俺の時代だぁ!」
三木「ファオーン!」(犬の鳴き声)
× × ×
〇(戻って)シェアハウス リビング 昼
三木「ああ、ま、まぁ、ちょっと遅くなっち
まったけど、いいじゃねぇか!ほら、28
歳の誕生日おめでとう!」
五十嵐「イェーイ!」
二宮「最高の28歳の始まりだ!」
シシ「26な」
「……」
また周りが静かになる。
三木「結果オーライ!」
シシ「なんの結果じゃ!」
二宮「まぁ、まぁ、せっかくケーキも用意し
たんだし。ほら、持ってこいよ!」
五十嵐がケーキの箱を持ってくる。
五十嵐「(ディズニーの星に願いの鼻唄)ト
ゥトゥトゥン、トゥントゥン!トゥトゥト
ゥトゥン、トゥントゥン! ジャジャーン!」
ケーキの箱をあける。ケーキがかなり
右寄りで形がかなり崩れている。
三木「おぅ……」
二宮「……嘘だろ?」
五十嵐「あぁ……大丈夫だ。形は少し悪くな
ってるけど、味とかは変わんねぇよ。ささ、
切り分けようぜ。形が一番まともなのがシ
シのだ……」
五十嵐がテーブルに運ぼうとして、何
かにつまずきよろけてケーキを落とす。
ケーキがシシの頭の上に。シシの顔の
半分くらいケーキに埋まる。
全員、驚いて叫び、悲惨な空気になる。
ハルカ「きゃあ!」
三木「うわ~!」
二宮「わぁ!」
五十嵐、驚いた顔で固まっている。
五十嵐「……ソーリー」
シシ「ホントに……最高の26歳の始まりだ
わ……」
〇同・シシの部屋 昼
ハルカとシシが座って会話。シシは風
呂上がりでタオルを巻いている。
シシ「ねぇ?変な連中でしょ?なんかいつも
あいつらに巻き込まれるのよ」
ハルカ「けど悪い人達じゃないのは分かった
よ。さっきの話し合いで私が住むことも許
してくれたし」
〇(回想)シェアハウス リビング 昼
みんなソファに座っている。
三木「うん、いいんじゃない。女ならいつで
も大歓迎……」
三木の口を抑える五十嵐。
五十嵐「歓迎するよ」
二宮「お、おい、ちょっと、お前ら……はぁ
……」
二宮だけ頭を抱え込む。
〇(戻って)シシの部屋 昼
シシ「それはあなたが女だからよ」
ハルカ「空いてる部屋も使わせてくれたし」
シシ「空いてたからね。とにかく、あんたは
早くちゃんとした仕事見つけて部屋も探し
な。ここにいて、あいつらといたら頭がお
かしくなる。決して良い事は起きないわ。
変な事は日常的に起きるのに」
ハルカ「うん。……ありがとうシシ」
シシ「いいのよ。別に」
三木、ドアを開けて部屋に顔を出す。
三木「へい、ちょっと話があるんだ」
シシ「何?」
三木「君って(ハルカ)、おでんでちくわばか
り食べる男は嫌い?」
ハルカ「ううん、別になんとも思わないよ。
考えた事ないかな?」
三木「よし、決定!」
三木、扉を閉めて去る。
ハルカ「ああ!そろそろ行かなきゃ!」
シシ「え?どこに?」
ハルカ「今日はオーディションなの!」
シシ「なんの?」
ハルカ、ドアを開けて、部屋を出る前
に振り返る。笑顔で誇らしげな顔。
ハルカ「夢のためのオーディションよ」
〇街 昼
日常の風景が流れる。
〇電車の中 昼
ハルカ、顔が放心状態で電車の席に座
っている。
ハルカ「……」
〇コンビニの中 昼
ハルカ、放心状態でレジに並んでいる。
ハルカ「……」
〇ハルカの部屋の中 昼
ハルカ、おにぎり片手に放心状態で止
まっている。
ハルカ「……」
ハルカの部屋のドアが開いて、二宮と
シシが少しドアを開けてハルカの部屋
に顔を出す。
二宮「へい、今、大丈夫かい?」
シシ「ほら、ちょっと来なよ!」
ハルカの顔放心状態でドアップ。
〇リビングルーム 夕方
ソファの真ん中に座るハルカ。パーテ
ィー料理が机の上に。みんなが歓迎会
を開いてくれた。
全員「ウェルカムトゥ!アワーホーム!」
三木「大、大、大!大歓迎だぜ!」
シシ「女なら誰でもいいクセに」
二宮「まぁ、ここにちょっとしかいねぇかも
しれないけど、ちょっとの間でも俺達と仲
良くやってこうぜ」
五十嵐「よろしく! ハルカ!」
ハルカ「……」
シシ「ハルカ?」
ハルカ「ウェーン!」
ハルカ、下を向いて泣く。
三木「お、おう? な、何があった?」
五十嵐「ここまで感動するとは思わなかった
な。久しぶりに大人の号泣を見ちまったぜ」
二宮「ああ、けど、様子がおかしくね?もし
かすると五十嵐の顔に号泣するヒントがあ
ったのかもしれねぇ」
五十嵐「……そんなに悲壮感漂ってたか?お
い!誰か !俺の生い立ちを喋ったか?」
シシ「どうしたのハルカ?」
ハルカ「実はね……」
〇(回想)オーディション 会場 昼
オーディションの部屋前に、
「京本政樹誕生秘話ドラマ」と書いて
ある立て看板がある。
〇オーディション 部屋
部屋に選考員三人が長い机に横に座っ
ている。
ハルカもパイプ椅子に座り、オーディ
ションを受けている。
室内にはオーディション受けている人
はハルカだけ。
選考員「では、最後に何か自信のあるモノマ
ネをしてください」
ハルカ「……モノマネ?」
選考員「はい」
ハルカ(なんだモノマネって?何に必要なの?
京本政樹のドキュメンタリーでしょ?)
ハルカ、ゴリラのモノマネ。
ハルカ「ウホ、ウホ、バナナ!ウホ!ウホホー
ォ!ごほっ!」
ハルカ、むせる。それでも無理矢理続
ける。
ハルカ「ごほっ! ごほん! ウホ……ごほ
っ、ごほぉー!」
選考員「あ、ああ、もう結構ですよ」
ハルカ「ありがとうございま……ごほっ!」
選考員「じゃあ、今回の結果を言いますね」
ハルカ(え?もう結果?まさか、即決で受か
っちゃった!?)
選考員「落選です」
ハルカ「え?……ゴリラのモノマネ、ダメで
したか?」
選考員「いや、そうじゃないんです。ゴリラ
のモノマネは本物以上でしたけど、ただ、
ごめんなさいね。ちょっと時間も切り詰め
なきゃいけなくなって、合否も本当は郵送
だったんだけど、つまり、その……」
ハルカ「……ありがとうございました」
〇(戻って)シェアハウス 夕方
みんなソファで座っている。
シシ「そう、残念だったね」
ハルカ「彼氏には浮気されて、夢のオーディ
ションは散々。生まれて初めてのゴリラの
モノマネは鼻で笑われた。ってか何でモノ
マネさせたんだあいつ!」
五十嵐「ゴリラのモノマネ?」
二宮、五十嵐に周りに聞こえないよう
に耳打ち。
二宮「彼女、何のオーディション受けにいっ
たんだ?」
ハルカ「私はこの世界でいらない人間なのよ」
三木「そんな事ないぜ。女の子でいらない子
なんていないんだ。特に若い女の子は一晩
だけでも俺と寝てから……」
シシ「黙ってシュミレット」
ハルカ「この先、本当に真っ暗な未来だわ。
もう私には何も残ってない!」
五十嵐「ああ……、あんまりこんな時に言う
ことじゃないかもしれないけど、そこのタ
コス食べていい?出来立てが一番美味いん
だ。それ」
ハルカ「ウェーン!」
シシ「ウェス(五十嵐)!?」
五十嵐「ごめん!ごめん、ちくわにしておく
よ」
五十嵐、手前にあったちくわを食べる。
三木「俺のちくわだぞ!先に食べるな!」
三木の皿に大量のちくわ。それを見た
五十嵐が突っ込む。
五十嵐「いや、いっぱいあるじゃん!」
三木、ちくわの皿を奪って、泣いてい
るハルカの隣か座ってセリフ。
三木「はるちゃん、悲しい時は、この曲を聴
くといい。佐村河内(さむらかわちorさむ
らごうち)っていう人が作曲した曲さ。俺
も昔、絶望に苛まれた時に救われたんだ。
この人は俺よりも不自由に生まれてきたの
に、それでも人の何倍も努力して栄光を掴
んだんだ。とても偉大な人なんだ。今では
俺のバイブルとしていつもこのアルバムを
持っている。ちくわもそうさ。この人が辛
い時にいつも食べていた大好物らしい。俺
もソウルフードとして、ちくわが大好きに
なった」
三木、ズボンの後ろからアルバムCD
と本を取り出し、ハルカに見せる。
CDのジャケット、本の表紙に佐村河
内氏の偽物の人が写っている。
三木「ほら、このCDと本に、俺は本当に救
われたんだ。この人が書いた本も素晴らし
い出来だ。俺の中ではこれが芥川賞さ。作
曲した曲はどれも魂がこもってる。宇宙と
人類、俺達を繋ぐ壮大な曲ばかりさ」
二宮「……ああん、こんな事知らせるべきじ
ゃないかもしれないけど、その曲達、ゴー
ストライターが作曲したやつだぞ」
三木「……は?!何言ってんの?いきなりお
かしな事言うなよ!」
シシ「ええ、ゴーストライターを使った事で
有名な人ね」
五十嵐「その書いた本もゴーストライターだ
ったりしてな!」
シシ「それは、分からないけど、否定は出来
ないわね」
三木「どうしちまったんだよみんな?」
五十嵐「宇宙と俺達じゃなくて、ゴーストラ
イターとエセ作曲家を繋ぐ曲だな。ぶっは!
ぶはははは!」
三木「……ノンノンノン、俺はそんな偽情報
には踊らされないぞ。自分の目で確かめな
い限りな!」
二宮「ほらよ」
iPadか、タブレットか、スマホを渡す。
ゴーストライターだったニュースの記
事を見せる。
三木、徐々に目を見開いてタブレット
を観る。次に本を見る。
三木「なぜ今まで黙ってた?」
二宮「なんとなく」
三木、五十嵐にも聞く。
三木「なぜ言わなかった?」
五十嵐「ギャグかもって思って。本当に知ら
なかったのか?」
三木「……燃やしてやる!」
三木、本を燃やす準備をしにどこかへ
行く。
三木「チャッカマンと灯油はどこだ!オリー
ブオイルを使っておいしく仕上げてやろう
か!CDもフリスビーにしてやる!」
五十嵐「ちくわはどうする?貰っておこうか?」
三木「ちくわ単体で誰が好んで食べるか!」
五十嵐「オーケイ、醤油とワサビ用意しとく
よ」
シシ「ホントにバカ」
ハルカ「……あはは!」
二宮「ど、どうしたんだ?」
シシ「はるか?」
ハルカ「ごめん、ちょっと、面白くて……ま
さか励ましくれてる人の方が人生で大きな
ショックを受けてるなんて。泣いてるのが
バカバカしくなちゃった」
シシ「ええ、そうね。ホントのバカを見ると
そうなっちゃうわね」
三木の声が遠くから聞こえてくる。
違う所で叫んでいる。姿は見えない。
三木「ガッデム佐村河内ぃー!!!」
※場面を次々と切り替えて時間経過
〇同・キッチン 昼
ハルカとルームメイト達で楽しそうに
料理している。
〇同・リビング 昼
ハルカとルームメイト達でトランプ。
盛り上がっている。
〇住宅街 朝
ハルカと五十嵐と三木、ランニングし
ている。
ハルカと五十嵐は普通に走っている。
三木、今にも倒れそうなほどバテバテ。
三木だけ異様の汗でTシャツが濡れて
滲みまくってる。
〇映画館 昼
ルームメイト達と一緒に映画館へ行く。
ハルカと三木、号泣。それを見ている
シシと二宮が引いている。
五十嵐、熟睡。
〇住宅街 夕方
ルームメイト達で買い物帰り。男ども
が買い物袋を持っている。
ハルカとシシ、二人が前に歩いている。
男三人後ろから付いて歩いている。
三木、買い物袋の中身を見る。
三木「おい、またらっきょう買ったのか?」
五十嵐「カレーにはらっきょだろ?」
三木「俺が死ぬ程嫌いな食べ物だ。匂いを嗅
いだだけでも頭痛がするんだぞ!」
五十嵐「俺もお前のその毎日つける香水の匂
いに頭痛がしてたんだ。ついでに吐き気も
するんだぞ。俺の方が症状が可哀そうだろ?」
三木「ニック(二宮)もなんか言ってやれ!
この皮肉野郎に」
二宮「俺が何を言えばいいんだ?別にらっき
ょう嫌いじゃねぇし。お前の香水の匂いの
方がキツイしな」
五十嵐「ほらな。香水に2票入ったぞ」
三木「ホントにお前達は男として生まれた事
を恥じて生きていくべきだな!」
ハルカとシシ、先頭を歩いて会話。
シシ「はるかが来て、もう二週間経ったね。
慣れた?」
ハルカ「うん、今の生活めちゃめちゃ楽しい
よ」
シシ「良かった。最初からあいつらといて平
気そうだったもんね」
ハルカ「うん、全然嫌じゃないよ?逆に楽し
くて良かった」
シシ「(小声で)案外、似た者同士なのかも
ね」
歩いていると幼い子供が走って転ぶ。
子供が泣く。
子供「うぇーん!」
ハルカ「あらら!」
ハルカ、子供に近づいてしゃがんで慰
める(助ける)。
ハルカ「大丈夫だよ、痛いの痛いの飛んでけ
~!」
三木「ついでにウェス(五十嵐)のらっきょ
も飛んでけ~」
五十嵐「何でだよ!?」
二宮、ハルカが子供に優しくしている
姿を、優しい眼差しでずっと見ている。
子供泣き止む
子供「ありがとうお姉ちゃん!」
子供、どこかへ行く。
ハルカ「気を付けるんだよ~」
シシ「ねぇ、みんな。今夜、あそこに行かな
い?」
ハルカ「あそこ?」
二宮「夕飯買ったのにか?」
シシ「いいじゃん!はるかも行った事ないん
だし、またツケにしてもらって飲もうよ」
三木「いいね!それ!」
五十嵐「久々だしいいんじゃね? マスター
にも会いたいしな」
二宮「ま、悪くねぇか」
シシ「決まり!行こう行こう!」
〇バー、夜
店の外のネオンの看板「マーブルポッ
プコーン」と書かれている。
店の中みんなそれぞれのグラスを持ち
乾杯。
二宮、
五十嵐、
三木、「乾杯!」
シシ
ハルカ「え?ホントにいいの?」
シシ「いいの、いいの、今日は飲み放題だか
ら。ジャンジャン飲んで、酔っ払って嫌な
事はみんな忘れよう。これは大人の特権だ」
ハルカ「本当に払わなくていいの?」
三木「今夜は俺達のおごりだ!この店のマス
ターにも承諾してるしな」
シシ「私達はこの店の顔馴染みなのよ。まぁ、
厳密にはマスターのツケだけどね」
マスター、こちらに気づいて軽く会釈
する。ハルカも会釈。
マスターの心の声。お互いに心の声で
会話する。通い合う。
マスター(今日はいっぱい飲んで、嫌な事を
忘れなさい)
ハルカ(ありがとうございます!)
ハルカ「みんな、ありがとう。こんな私のた
めに」
二宮「オッケイ!今日くらいは暗い言葉を使
うんじゃない。ハルカのためは俺達のため
だ」
五十嵐「それ、どういう意味?」
二宮「えぇー?つまり……その……、ニュア
ンスだ。 その……」
シシ「私達は仲間だって事」
二宮「そう!それだ!何でも聞き返すんじゃ
ねぇよ。俺が話す大半は「なんとなく伝わ
る」んだから。感で分かれよ」
五十嵐「あぁん、そうか。遠回しの下ネタと
一緒って事だな」
ハルカ「みんなのおかげで、2週間でだいぶ
元気になってきてる」
三木「それは良かった。おいニック!俺のフ
ランクフルト取るんじゃねぇよ!欲しいな
ら頼め!」
二宮「頼む程でもないかな、って」
三木「だからって俺の取るな!卑しい泥棒の
末裔め!」
二宮「ご先祖様まで侮辱すんじゃねぇよ!」
ハルカ「そういえば、みんなのあだ名が気に
なったんだけど、シシは分かるけど、なん
でみんなそんなあだ名なの?」
三木「ああん、ニックは二宮久太郎で、こい
つの顔のようにクシュっとして「ニック」
だ」
ニック「シュミレットは「三木秀人」ってい
う、サッカー好きでもなんでもないのにそ
んな名前で、昔ハムレットがどうのって言
ってたから「シュミレット」にしたんだ」
シシ「ニックとシュミレットは幼馴染なんだ
って」
二宮「ああ、腐れ縁だ」
三木「たしかに腐った縁で。ニックは実際に
も腐ってる」
二宮「腐ったやつの近くにいると腐るからな。
みかんが例だ。先にシュミレットが腐って
たんだ」
一条「なんでウェスはウェスなの?」
三木「五十嵐 西貴(さいき)って変な名前
だから、西を英語読みにして言いやすいか
たちにしただけなんだ。俺達だけな」
五十嵐「最初はなぜかこいつらに「ひろし」
って呼ばれてたからな。一文字もあってね
ぇあだ名よりはマシで、俺が許したんだ」
二宮「ひろしっぽいから、俺はひろしでもよ
ったんだけどな」
五十嵐「いや、全然良くないよな?」
三木「でも良かったよ、はるちゃんが元気に
なって。俺達は恋に破れた者達の集まりだ
から、はるちゃんの気持ちはものすごく分
かるんだよ」
ハルカ「え?恋に破れた?」
三木「ああ、ウェスは3ヶ月前にフラれて、
俺は3日前にフラれた。まぁ、俺の場合は
お互い遊びだったから別にいいけど」
ハルカ「へぇ~……」
三木「ニックなんて3年前に奥さんが出てい
ったからな!」
ハルカ「え!?」
二宮「おい、俺の離婚話を面白トークにする
んじゃねぇよ」
三木「ありゃひどかった。あの後のニックは
本当に酷かった。半年くらい半ストーカー
になってたしな。イタズラ電話をどんだけ
相手の携帯の履歴に残したか。もっと記憶
を残せって話だよ」
二宮「あれは心からの伝えたい想いがあった
からだ。……確かに1日20回は多い気も
したがな」
三木「ああ、立派なストーカーだ」
ハルカ「シシも、別れたの……?」
シシ「私もシュミレットと同じ感じよ。ちょ
うど3週間前ね……。線香花火みたいに消
えていく泡のような恋だったわ……」
ハルカ(全然知らなかった……シシって、昔
っから本当にあんまり自分の事を話さない
なぁ)
シシ、少し顔が暗くなるが、すぐに(
装った)笑顔になる。
シシ「ま、今はそんな話いいじゃない。それ
よりほら、飲もうよ」
男女グループが(女三人、男二人)声
をかけてくる。
女1「ミッキー~(三木のアダ名)、みんな
来たよ~」
三木「オッケー!さすが明美ちゃん(女1の
名前)だぜ!」
二宮「な、なんだ?」
シシが三木に耳打ち。
シシ「ちょっ、ちょっと、シュミレット」
三木「ん? どうした?」
シシ「何よコレ? どうなってんの?」
三木「どうなってるの? 恋に傷ついたら、
新たな恋で癒すしかないだろ?だから呼ん
でおいたんだ」
シシ「呼んで、何するのよ?」
三木「合コンに決まってんだろ? 勝ち抜き
戦で相撲でもすると思ったのか?」
シシ、呆れる顔。
シシ「はぁ……(小声)余計な事して……」
シシがマスターの方向を観る。
マスターは悲しい顔。
心の声だけでシシとマスター会話。や
りとり。
マスター(シシちゃん、ちょっと人が多くな
い?私もちょっと、経営がね……)
シシ(大丈夫、勘定はあとでみんなで返すか
ら。安心して。だけど、今夜はごめん!)
女2「相変わらずスーツなんだね」
三木「だろ? だってこれが俺だからさ。生
まれた時からスーツを着てたからな」
女1「何それ~(笑)」
ハルカ「そういえば、なんでシュミレットは
いつも外に出る時はスーツなの?」
ハルカ、シシに聞く。
シシ「頭がおかしいからよ」
三木「ささ、座ろうぜ」
男五人(メイン人物も含めて)、女五人
の合コンが始まる。
みんな椅子に座っている。
二宮、五十嵐に耳打ち。
二宮「ちょっと、人数多くね?」
五十嵐「ああ、3、3がベストだよな」
三木「それじゃみんな、グラス持ったな?か
んぱーい!」
みんな「かんぱーい!」
シシ「はは、さっきしたけどね……」
ハルカ、シシに耳打ち。
ハルカ「シシ、私、合コン初めてなんだけど、
どうするの?」
シシ「大丈夫、大丈夫、ムリせずに適当に流
しておけばいいのよ」
ハルカ「そ、そうなの?」
三木「じゃあ、自己紹介からいこうか!」
主要キャラ以外は早巻きで進む。
一人毛食が違う男2。留学生を偽った
日本人がいる。どう見てもエセフラン
ス人。モテようとして偽っている。
胡散臭いアフロにサングラス。
フランス人と言い張る。
男1「仕事は(早巻き)……趣味はサーフィ
ンで……」 (早巻き)
女1「コーンフレークが大好き……」(早巻
き)
女2「たい焼きが徐々にブームに……」(早
巻き)
女3「アメリカ留学帰りで~、ちょっとたま
にワオッ!とかでちゃう……」(早巻き)
三木「可愛い~!めっちゃ可愛いじゃんそれ!」
男2「初めまして、私の名は、ムッソリーニ・
エスカルゴです」
三木「え?なんだって?」
男2「ムッソリーニ・エスカルゴ、です」
二宮、三木と無言で顔を合わす。なん
だあれ?って感じで。
五十嵐「ハーフなのか?」
男2「フランス人、花の都パリです!交換留
学生で日本に来ました。オー!シャンゼリ
ィ~ゼ!」
女1「すごいね。パリだって!私もいつか凱
旋門行ってみたいな~」
男2「うん?うん、うん、ああ!ギャイセン、
モンね……あはは!」
女2「凱旋門ってフランス語で何て言うの?」
男2「ぶぁっ!ごほごほっ!ごほっ!」
エセフランス人、ドリンクでわざとむ
せる。
女3「だ、大丈夫?」
男2「ごおほー!」
二宮、ヒソヒソ声で三木に耳打ち。
二宮「おいあいつ、ホントにハーフの留学生
なのかよ?何と交換したらあんなのが来る
んだ?」
三木「本人がそう言ってるんだ。間違いない
だろ?」
二宮「どう見てもありゃ……まぁ、いいや。
てか誰が呼んだんだよ?あんなやつ」
三木「とにかく!ニック、次お前だぞ!」
二宮「ん?ああ、俺か……ええーと、名前は
二宮久太郎です。ニックって呼ばれてます。
よろしく」
三木「……だけ?」
二宮「ああん、趣味は映画やドラマ観る事、
特に本を読むことは大好きだ。一番好きな
趣味は家に居る事かな?ははは」
場がちょっとシラケる。
三木、二宮の背中を叩く。
三木「なに緊張してんだよ!いつも言ってる
じゃねぇか!趣味は女のケツを叩く事だっ
て!」
二宮「おいおい、嘘つくんじゃねぇよ!俺の
ホントの趣味はな……」
× × ×
〇(回想)二宮の部屋 夜
二宮が小説の投稿の雑誌を読んでいる。
受賞していなかったのでがっくりと肩
を落とす姿。
二宮「……はぁ」
× × ×
〇(戻って)同・バー 夜
二宮「……ああ、そうだった。女のケツを叩
いてイッツスモールワールドを口ずさむの
が趣味だった」
三木「だろ!?こいつ奥さんに逃げられて走
る所がおかしくなっちまったんだ!」
二宮、渋い顔。
二宮「はは……ありがとよ。気づかせてくれ
て(少し怒り気味)」
三木「次はウェスだ!」
五十嵐「いや、分かんねぇだろそのあだ名。
あぁ、俺か。名前は五十嵐っていいます。
普段はダンスのインストラクターをやって
る。興味があったら来てくれ。駅前だ」
× × ×
〇(回想)五十嵐の職場 ダンス教室 昼
五十嵐が客にダンスを教えている。
五十嵐「はい!みんな!リズムに乗って!は
い!はい!はいぃ!」
客はおじいちゃんとかかなり太った人
ばかり。みんなトロいし、変なダンス。
五十嵐、顔が引きつっている。
× × ×
〇(戻って)同・バー 夜
五十嵐「……ああ、ホントに来てくれると助
かる。せめて普通に踊れる人が」
三木「次はシシだな!」
シシ「初めまして、マイネームイズ、シシで
す。う~んと、趣味はカラオケです。あと
ギターの演奏です」
× × ×
〇(回想)街の路上orデカイ橋の上 夕方
シシがギター一本だけ持って一人で路
上ライブをしている。
客は小さな女の子だけ。
× × ×
〇(戻って)同・バー 夜
シシ「まぁ、そんな感じです。以上」
三木「さて次は、内のシェアハウスの新メン
バーだ!よろしく!」
ハルカ「は、は~い、えっと、名前は一条は
るかです。よろしくお願いいたします!趣
味は映画とドラマを観る事、あと舞台を観
に行くことです」
三木「さらに、はるちゃんは女優を目指して
いるんだよね?」
ハルカ「はい、そうです」
男1「へぇ、そうなんだ」
男2「どおりで可愛いと思ったです」
ハルカ「いやいや、ありがとうございます」
三木「次はお待たせしました。この会の司会
者、三木こと、合コン王のシュミレットで
す!仕事は……」
× × ×
〇(回想)三木の仕事場 昼
オフィス内通路で三木が女性の上司に
胸ぐらをつかまれている。
女上司、恐いが顔と容姿はめちゃくち
ゃ綺麗。良い女。
女上司「今度私のケツをその気持ち悪い眼差
しで舐めるようにみたら、屋上からつき落
とすぞ?分かったな!」
三木「ご、ごめんなさい……」
〇オフィスの部屋 昼
女上司「おい、三木!ジャンプとコーヒー牛
乳買ってきて」
三木「それって、パワハラじゃ……」
女上司、ものすごい鬼の形相。
三木のネクタイを掴んで引っ張って顔
を近づける。
女上司「焼きそばパンもお願い」
三木「わ、分かりましたぁ!」
× × ×
〇(戻って)同・バー 夜
三木「……仕事はいいや、たいした仕事場じ
ゃない。ええっと、趣味は……」
二宮「ちくわで笛を吹く事だろう?」
三木「おい、ちくわの事を言うんじゃねぇ!
俺は今、ちくわの事を少しも考えたくない
んだ!」
二宮「さっきのお返しだ。お前はちくわに失
恋したんだもんな?」
女1「それ、どういう事?」
三木「聞かなくていい。ニック、それ以上俺
をちくわでいじるな。ちくわの真ん中に空
いた穴を想像するだけで体が震える!」
五十嵐「会話だけ聞くとやらしいな。食事中
だぞ?気持ち悪い。クソおっさんずラブじ
ゃねぇか」
三木「クソは余計だろうが!」
二宮「ああ、誰がこんなちくわ野郎と一線を
越えるか」
三木「もう許せねぇ」
三木が五十嵐と二宮に襲いかかる。
だが、弱すぎて猫のようにじゃれあっ
てるようにしか見えない。こしょばい。
二宮「やめろよ!こしょばいって!うわ!唾
が飛んできたじゃねぇか!汚ねぇな!」
五十嵐「おいおい!やめろよ。俺はゲイじゃ
ないんだ。やるならニックオンリーにしろ
よ。ニックはこう言ってるけど嫌いじゃね
ぇんだから」
二宮「へい!風評被害はやめてもらいたいね。
俺は少しもゲイの要素はねぇからな!アイ
ムノットゲイ!」
五十嵐「そうだった。お前は女のケツを叩き
ながら歌を口ずさむ変態野郎だった」
二宮「てめぇ!」
他の人が二宮と五十嵐と三木とじゃれ
あいを見て少し引いている。
ハルカだけが笑っている。シシ呆れる。
ハルカ「あはははっ」
シシ「はぁ……」
〇バー・女子トイレ 夜
ハルカとシシが鏡の前で話している。
ハルカ は化粧直ししている。
シシ「ごめんね、シュミレットが勝手なマネ
して。合コンするなら先に言っとけっての」
ハルカ「けど、私はけっこう楽しいよ?」
シシ「そう、それは良かった。いきなりだっ
たから。で? さっそくあんた、電話番号
ゲットしたじゃない」
× × ×
〇回想 バー 夜
合コンの時、男1と男2がハルカに電
話番号を書いた紙を渡している。
シシ(M)「どうするの?一応連絡はするんで
しょ?」
× × ×
〇(戻って)バー・女子トイレ
ハルカ「う~ん、どうだろ?まだ分かんない
な。別れたばっかだし、そんな気持ちじゃ
ないかも……」
シシ「うん、そっか。けど、言わせて、確か
にあなたは別れたばっかだけど、相手の男
が酷かったのよ。あなたは次の恋愛に進ん
だ方がいいわ。そんな気持ちじゃなくても。
もし、前のその恋愛で臆病になってるんだ
ったら大間違いよ。トラウマにまでしてし
まったら、相手のいいツボよ」
ハルカ「相手って、元カレの事?」
シシ「違う。運命に悪さをする魔王のよ」
ハルカ「……ドラゴンボールでいうと、緑の
皮膚をして頭の真ん中に卑猥そうなやつが
ある、あいつ?」
シシ「違う。運命の魔王をなめちゃだめなん
だから。もちろん、ピッコロもね。魔王は
ね、これからの人生思いやられるくらい苦
しい爪痕を残す事もあるのよ?」
ハルカ「う~ん……分かった。よし、頑張っ
てみるか!」
シシ「その意気よ」
ハルカ「そういえば、あの留学生にも貰った
んだけど……」
シシ「あれはやめときなさい。得体が知れな
いわ」
ハルカ「私も思った(笑う)」
〇バー
女子トイレから出た所で元カレ(彼氏)
とすれ違う。
ハルカ「……え?」
元カレ「うん?」
ハルカと元カレ、お互いに振り返り目
が合う。見つめあったまま。
ハルカ「げ!?出た!」
元カレ「げっ出た!って、人を妖怪みたいに
言うじゃねぇ!」
ハルカ「妖怪よ!妖怪二股クソ男よ!」
元カレ「二股クソ男ってお前な……」
シシもトイレから出てくる。
シシ「ん?どうしたの?知り合い?」
ハルカ、引きつった顔。
〇同・バー 合コンの場所
女の子達はけっこう飽きてる。シケて
る。
男どもだけ少し盛り上がっている。
二宮「ところでエスカルゴ・ムッソリーニ、
だっけ?」
男2「エスカルゥーゴ・ムッソリニ!あ、間
違えた。ムッソリーニ・エスカルゴ!」
二宮「ははっ、自分の名前を間違えるなんて
傑作だな!」
五十嵐「ついに自分の名前を間違えたぞ!あ
はは!」
シシ、戻ってきて三木にバツが悪そう
に話しかける。
シシ「ねぇ……」
三木「ん?何?」
合コンのテーブルで(ルームメイトだ
け)で密会。ひそひそ話。
二宮、五十嵐、三木「えぇ!元カレが来てる!?
」
シシ「そ、ハルカのね。あそこに座っている
男三人の一人よ」
男三人が別の席で飲んでいる。一人は
元カレ。
三木「お~……確かに女にだらしなさそうな
面子してやがる。特に右の奴、女を泣かし
て来た数はかなり多いだろうなぁ……俺ほ
どではないだろうけど」
二宮「何で分かんだよ?」
三木「経験とにおいさ。俺様ほどになると見
た瞬間に相手がどんな人間なのか分かるの
さ」
二宮「ニセ作曲家はずっと気づけなかったの
にか?」
三木「はぁ……分かってねぇなお前は」
二宮「何が?」
三木「分かってない。全然分かってないなぁ
~お前は。逆にうらやましいよ。ここまで
きたら。ホントに分かってない」
二宮「いや、だから何が?」
三木「左の奴もありゃ、やってるぜ」
二宮「シカトすんじゃねぇよ。左の奴やって
る?何を?」
三木「5回は決めてるぜ」
二宮「朝にか?」
三木「真ん中の奴は……まぁ、まだマシなや
つかな?一番まともだな」
シシ「真ん中が浮気してた彼氏ね」
三木「やっぱりか。逆にあやしいと思ったよ。
黒髪でメガネかけてスーツ着てたらインテ
リと思ってしまうのと一緒だ。詐欺師の手
法に俺は騙されないぞ」
二宮「詐欺師のような作曲家には気づけなか
ったのにか?」
三木「ニック、これ以上その事を言うとひど
い目に会うぞ?」
二宮「おお、怖い!またネコパンチが飛んで
くるかもしれねぇ!」
ハルカ「……」
男2「元気ないですね? マドモアゼルはる
か」
ハルカ「え? ううん、大丈夫だよ」
ハルカ、元カレの席を見る。元カレも
こっちを見て目が合う。
そしてハルカだけ背ける。
それを見ていた二宮とシシ。二人とも
溜息まじりに首を振る。
女1「あ! ごめん、ミッキー!私達、ちょ
っと用事が出来ちゃったんだ。そろそろ抜
けるね」
三木「え!? まだこれからじゃん。早いよ
~」
女2「ごめんごめん。じゃあね~」
女1~3、店から出る。
五十嵐「……あれはただこの場に居たくなか
ったんだろうな」
三木「それか、帰って早くフォートナイトや
りたかったのかも」
五十嵐「本当にそう思ってるのか?」
三木「いや、言われなくても分かってる」
男1「じゃあ、俺もそろそろ帰ろうかな?」
三木「ああ、気を付けて帰れよ」
男1「早っ!」
二宮「嘘でもいいからちょっとでも引き留め
てやれよ」
三木「あ~、そこのフランクフルト持って帰
っていいぞ。次も楽しもうぜ。じゃあな」
男1、引きつった顔。フランクフルト
を握りしめて帰る。
男2「マドモアゼルはるか。出来ればまた会
いましょう」
ハルカ「うん、また会おうね」
男2「明日なんてどうです?」
ハルカ「あ、明日!?」
男2「今から抜けだしてでもいいですけど。
はっはっは!」
ハルカ「えっと~、それは……」
ハルカ、チラッと元カレの方向を見る。
元カレもまたハルカを見てる。
ハルカ「……うん、いいよ。今からどこか行
こっか?」
シシ「ハルカ? いいの?」
五十嵐「お! いつの間に出来上がってたん
だ?てか、あの合コンでよく出来上がれた
な」
二宮「合コンというか、あの怪しい奴で、だ
ろ?」
男2「では今からパリに行くざんすか?」
ハルカ「え?」
男2「って、フレンチジョークざんす!」
ハルカ「ははは……」
二宮「おい、ざんすなんて語尾付けてたか?」
五十嵐「さぁな。今さっき思い出したんじゃ
ね? なんちゃっておフランスの語尾を」
二宮「よりによってイヤミからフランスを学
ぼうするなんてな。考える限りの哀れさだ
な」
男2「それでは、私とマドモアゼルは行きま
す。ではでは、ボン・ボヤージュ!」
シシ「言葉間違ってるし」
ハルカと男2が一緒にバーの外に出る。
それを見ていた元カレが後を追うよう
にバーの外へ。
二宮「なぁ、これって……」
五十嵐「ひょっとするな」
元カレの様子を見ていたメンバー(二
宮、三木、シシ、五十嵐)がさらに外
の様子を伺いにいく。
〇バーの外 夜
メンバーが遠くから、店の前に置かれ
ている看板か何かに隠れながら様子を
探っている。
元カレと男2と共に何か話しているハ
ルカがいる。
三木「おい、何て言ってんだ?」
二宮「ここからじゃ聞こえねぇな」
五十嵐「これって、けっこう修羅場なんじゃ
ね?」
シシ「けど、見せつけるのにはちょうどいい
わ。ここで思いっきり元カレを引き離して
やるのよハルカ! やっぱり私の方が良か
ったって後悔させるぐらいね! 叩きつけ
てやれ!」
三木「おい、シシに何があったんだ?」
二宮「にしても聞こえないな。なぁ、何喋っ
てるか聞いてこいよ」
五十嵐「バカ言え。これ以上近づけるわけな
いだろ? 俺をジェームズボンドだと思っ
たのか?」
ハルカと元カレと男2が何か言い合っ
ている。この声は聞こえない。
男2がハルカを連れて行こうと手を取
ってどこかへ行こうとする。
シシ「おお! いい感じいい感じ!」
五十嵐「そうだ、そんな男を置いてきぼりに
しろ」
元カレが去ろうとするハルカの手を取
る。
見つめ合うハルカと元カレ。
シシ「え?えっ?」
二宮「これはちょっとヤバイな」
ゆっくりとハルカと元カレの距離が近
づいていく。
三木「マジかよ」
五十嵐「ダメだダメだ。そっちはダメだ」
シシ「ちょっ、ちょっ!」
ハルカと元カレ抱き合う。
男2は首をふってどこかへ行く。(何
か去り際の一言があってもいいかも?)
ルームメイト達の落胆の声。
ルームメイト全員「あ~……」
〇シェアハウス ハルカの部屋 昼
ハルカ、荷物をまとめてる。
ハルカ「ふぅ~……これで全部かな? よっ
と!」
ハルカ、荷物を担いで、リビングへ
〇シェアハウス リビング 昼
みんなリビングにいる。
二宮「早ぇな。仕度もう終わったのかよ?」
ハルカ「うん、一か月ぐらいしか居なかった
から荷物も少なくて済んだの」
二宮「そうかい」
三木「ホントにあっという間だったな」
ハルカ「うん」
二宮「やっぱ、あいつの元に戻るんだな?」
ハルカ「うん……ごめんね。いっぱい相談乗
ってもらったのに……」
〇(過去回想) シェアハウス リビング
夜
シシ「絶対ダメだよ! ああいう男はまたや
るんだよ! しばらくは大人しくしてても
さ!」
ハルカ「けど……」
シシ「けども、なにもないよ!」
五十嵐「確かに、またヨリを戻した所でだぞ?
かしこい選択とは言えないな」
三木「まぁまぁシシ、ウェス。一応はるちゃ
んの考えも聞こうよ」
ハルカ「私、まだ彼氏の事が好きなんだと思
う。確かに一回思いっきり傷付けられたけ
ど、抱きしめられたら、やっぱり私はこの
人が好きなんだ、ってなちゃった。まだ一
緒に居たいって。だから、もう一度信じて
みようと思うの。この気持ちの方が今は強
いかな」
シシ「友達としては反対だな」
ハルカ「シシ……」
二宮「俺はシシの意見に賛成だな。それにシ
シはお前の事をホントに心から心配しての
一言だと思うぜ?」
ハルカ「うん……」
二宮「けど、ここで一番大事なのはお前の心
だ。お前が本当にあの男と、心の底からも
う一回ヨリを戻したいのなら、俺達が意見
しても仕方ねぇ。それを邪魔する権利もね
ぇ。決めるのはお前だ。だが、俺達が心配
してるのも分かってくれ。よーく考えて、
答えを出してくれ」
ハルカ「うん」
シシ「……今すぐにじゃなくていいから」
ハルカ「シシ……」
二宮「俺達も、ハルカが最終的に決めた道を
応援してやろうぜ。それがハルカが信じた
道だ。一瞬でも一生に過ごしてきたんだ。
仲間の門出を祝ってやろうぜ」
三木「ああ、そうだな。……それより、ニッ
ク。お前臭すぎねぇ?」
二宮「まぁいいじゃねぇか。たまには臭い事
言っても」
三木「いや、ちげぇよ。もっと強めのデオド
ラント使えよ」
場が少しの間静かになる。
二宮「……このタイミングでそんな話するん
じゃねぇよ」
〇(回想)から戻ってくる アパート
三木「やっぱ行っちゃうんだね? はるちゃ
ん」
ハルカ「ごめんね……あれからいっぱい考え
たけど、やっぱり戻る事にした」
シシ「……」
二宮「ほら、シシもなんか言ってやれよ。別
に今生の別れじゃねぇんだから」
シシ「……困った事があったら、またいつで
も相談に乗るから。気軽に来なよ」
ハルカ「シシ……」
二宮「そうだぜ。ルームメイトじゃなくなっ
ても、またいつでも来いよ」
ハルカ「ありがとうニック」
二宮「まぁ正直、お前がヨリに戻る気持ちも
分かるしな」
三木「まだ元嫁の事言ってんのか? それは
何て言うか、向こうは無理だと思うぜ」
二宮「うるせぇな」
五十嵐「いつでも来いよ。あと、駅前にある
俺のダンスレッスンに来てくれてもいいん
だぜ?」
二宮「爺さんと婆さんのリハビリ施設みたい
な所だけどな」
五十嵐「それ以上言うな」
ハルカ「みんな、短い間でしたが、本当にあ
りがとうございました!」
五十嵐「ああ、俺達もけっこう楽しませても
らったよ」
三木「じゃあ、最後に、これからお別れパー
ティーでもしますか!」
ハルカ「え!? 今から?」
三木「そ! 今から!」
シシ「別に急いでるんじゃないんでしょ?
それにちょっとぐらい待たせても大丈夫よ。
ハルカが出ていったのも、元はあいつのせ
いなんだから」
二宮「ああ、帰る家は逃げやしないさ。それ
に、人生はまだまだ長い。時間はあるはず
だろ?」
ハルカ「……うん、そだね。分かった」
三木「ふっふ~! それじゃあ、いつものバー
に行きますか!」
ハルカ「まだ開いてないんじゃ……」
二宮「大丈夫。マスターは暇だから、いつで
も開けれるさ」
ハルカ「そんなもんなの?」
二宮「ああ、マスターの心の扉を開くよりバー
を開ける方が簡単さ」
シシ「いいから、行くよ!」
〇バー 夕方あたり
みんなバカ騒ぎしてる感じ。ルームメ
イトと一緒に楽しそう。ハルカもみん
なも笑い合ってる。
〇ハルカと元カレのアパート 夜
ハルカがアパートの玄関を開けて帰っ
てくる。
元カレ「遅かったじゃねぇか」
ハルカ「ごめん、ちょっとみんなとお別れの
挨拶してて。えっと、ただいまでいいのか
な?」
元カレ「おかえり」
ハルカ、笑顔。
元カレ「それより、お腹空いてるんだ。何か
ない?」
ハルカ「あぁ、ちょっと待ってね。今から何
か作るよ」
元カレ「分かった。じゃあ、頼むね~。ああ、
あと、」
ハルカ「何?」
元カレ「そのTシャツとか洗濯しといて」
ハルカ「う、うん……」
元カレ「ああ! それと」
ハルカ「他に何かあるの?」
元カレが黙って近づいてハルカを抱き
しめる。
元カレ「おかえり」
ハルカ「……さっき言ったじゃない」
ハルカ、抱きしめられて幸せそうな声
と表情。
〇シェアハウス 二宮の部屋 昼
二宮、パソコンで小説を書いている。
けど、何か物思いにふけっている。パ
ソコンで元奥さんの画像を開くがすぐ
閉じる。
二宮、執筆をやめて寝転び、ウォーク
マンで音楽を聴く。
〇五十嵐のダンスレッスン室 昼
五十嵐、優しくおばあさんにダンスレ
ッスン教えている。後ろで激しくラン
ニングマンを踊るおじいちゃん。
〇三木の職場 昼
三木、女上司の肩を揉みながらビルの
窓の外を憂鬱そうに眺めている。
女上司はコーヒーを飲みながらパソコ
ンをいじっている。
〇公園 夕方
シシ、ギター一本で座り込んで歌って
いる。観客は少女一人座り込んで聞い
ている。
〇ルームシェアアパート 朝
みんなリビングにいる。全員ソファや
イスに座って何かしている。
二宮は小説読んでいる。シシはスマホ
いじり。三木はジグソーパズル。五十
嵐は何か書いている。
三木「あれ? ピースが足りねぇな。どこだ?
誰か知らねぇ?」
シシ「知らない」
二宮「失くしたピースはなかなか見つからな
いぞ。俺は風呂場で見つけた時はびっくり
したな。小さいピースなら尚更失くすとキ
ツイぞ。1000ピースで完成のパズルな
ら大変だ」
三木「20ピースのパズルだから見つかりそ
うな気もするんだが……」
二宮「20ピースぐらいならすぐ見つかるだ
ろ。ってか、20ピースのパズルしてたの
か?何のために? 子供用だろそれ」
三木「何言ってんだよ。老人もこれぐらいか
らやってボケを防止するんだ」
二宮「赤ちゃん並に知能が落ちた老人がな」
三木「見つからねぇな。最後のワンピースな
のに。ほら、アンパンマンの顔が欠けてる」
二宮「顔が無くても生きれるし、それがアン
パンの本体だからもういいじゃね?」
三木「やっぱ、一つピースが掛けるだけで全
然違うんだな。そういえば、短期間とはい
え、初めてルームシェアメンバーから欠け
たな……仲間が出ていくって、こんなに焦
燥感でるもんなんだな。ニック、シシ、出
ていく時は前もってちゃんと言うんだぞ?」
五十嵐「おおい! 俺の名前が抜けてるぞ?」
三木「え? お前は来月出ていくんじゃねぇ
の?」
五十嵐「誰がそんな事言った」
三木「冗談だよ。冗談」
五十嵐「笑えねぇっつうの」
みんな物思いにふける。
シシ「そういえば、今日はるかの誕生日なの」
三木「へぇ、そうなんだ。じゃあさ! 誕生
日パーティーでもしてやろうぜ! ここに
呼んでよ!」
二宮「いいじゃねぇか、それ」
三木「だろ?」
シシ「残念。今日は彼氏と遊園地デートだっ
てさ」
三木「遊園地デートか……それじゃあ無理だ
な」
シシ「そう」
少し間があって。
三木「……なぁ、みんな、今日ヒマか?」
みんな、三木が何が言いたいのか分か
らない感じで困惑な表情。
〇遊園地 昼
にぎわう遊園地。ハルカと元カレが色
んなアトラクションに乗っている。
ハルカ、元カレ、アトラクションが乗
り終わって遊園地を歩いている。
ハルカ「楽しいね」
元カレ「ああ……」
元カレ、少しダルそうに言う。
ハルカ「あんまり?」
元カレ「違うよ。ちょっと疲れてただけ。休
もうぜ」
ハルカ「うん、そうしよ」
ハルカと元カレ、ベンチを見つけて座
る。
ルームメイト達、ハルカ達に分からな
いように遠くから陰でこっそり監視し
ている。
二宮「なぁ、最近俺達、こうコソコソするの
多くね?」
三木「いいじゃねぇか。これもまたスリルが
あって楽しいじゃねぇか。昔、好きな女の
子を下校中家までつけた(尾行)事を思い
出すよ」
二宮「お前それでよく俺の事をストーカー扱
いしてくれたな。まだ幼かったとはいえお
前もやってる事変わらないからな」
三木「幼かった? バカ言え。俺が大学一年
生の話だぞ?」
二宮「もう立派なやつじゃねぇか! 中学か
小学生じゃないだと!ストーキングだお前
も!」
シシ「うるさいな二人とも! 何しに来たの
よ!」
五十嵐「ああ、聞いてくれてありがとう。本
当に俺達何しに来たんだろうな?」
シシ「かつての仲間がうまくやってるかどう
か確かめに来たんでしょ?」
三木「そうだ。かつての仲間がどうなってる
か、半分心配、半分楽しみながらコソコソ
して様子見るんだよ」
五十嵐「おいまさか、シュミレットの犯罪的
な趣味開拓のリハーサルじゃねぇだろなこ
れ? それならごめんだぜ」
二宮「もうシュミレットはその趣味は開拓済
みだ。大学生の時に」
五十嵐「末期患者だったわけかよ」
ハルカと元カレがベンチに座っている。
ハルカだけ楽しそうに話している。元
カレはちょっと面倒くさそう。
それを遠くで眺めているルームメイト
達。
二宮「……なんか、幸せそうだな(はるか)」
五十嵐「ああ、何も心配いらなかったな」
シシ「……」
三木「大丈夫なんじゃないの? はるちゃん
は幸せそうだ。次はシシが幸せにならない
とな」
シシ「うるさいな!」
二宮「幸せそうでなによりだ。俺達はこれ以
上邪魔しない方がいいんじゃねぇか?」
シシ、ハルカの幸せそうに笑っている
姿を見て。
シシ「……そうだね。ありがとうみんな。私
に付いて来てくれて」
三木「いやいや、俺達もはるちゃんがどうし
てるか心配だったし?」
五十嵐「お前はついでに追跡の趣味も味わえ
たしな」
二宮「幸せになった仲間も見れた事だし、そ
ろそろ帰りますか?」
三木「ああ、帰ろう。けどよ……」
ルームメイト達、帰ろうとするが帰り
道のゲートの近くにハルカと元カレが
座っている。
バレずに帰れるか分からない事に気づ
く。
三木「出口、あそこだよな?」
三木、出口の方面を指す。
二宮「うん? うん、そうだな」
五十嵐「おいおい、出るに出れねぇじゃねぇ
か」
二宮「まぁ、しばらくここにいれば向こうが
勝手にどこかに行くだろうよ」
三木「それまで待つしかないか」
五十嵐「いや、ダメだ」
二宮「うん? 何で?」
五十嵐「ビコーズ!なぜならば、俺は今、猛
烈にトイレに駆け込みたい」
二宮「我慢しろよ。あと数十分ぐらいだろう?」
五十嵐「もうかれこれ数十分我慢してるんだ。
おかわりの数十分で確実に俺は大人の威厳
を失うぞ」
二宮「安心しろよ。お前に威厳なんて最初っ
からねぇから。失うものはない」
五十嵐「プライドがあるだろ?」
二宮「お前自身のな。それは時に人生の壁に
もなるんだぜ?」
五十嵐「分かった。漏らしたあとのパンツを
お前のベッドに叩きつけてやる」
二宮「おい! 八つ当たりも良い所だぜ。俺
の神聖な寝具に、お前の汚物で何しようと
してるんだ!」
シシ「二人ともうるさい!」
二宮「ほら怒られた。お前のせいだぞ」
ハルカが立ち上がり、トイレとジュー
スを買いに行く。
三木「トイレならあっち側にあったはずだぞ?
そっちを使えばいいじゃねぇか」
五十嵐「そうだな。あっち側なら見つからず
に行けそうだ。ちょっくら行ってくる」
シシ「ダメよ!」
五十嵐「え? 何で?」
シシ「あっち側にハルカが行ったのよ? 鉢
合わせするかもしれないわ。もしかしたら
トイレでばったりなんて事も……」
五十嵐「けどもう俺、けっこう限界だぞ?
大人のおもらしなんてユウチューブの中で
しか笑えないぞ?鉢合わせしたらしたでい
いじゃねぇか!」
シシが怖い顔を五十嵐に向ける。
シシ「絶対、ダメよ!」
五十嵐「えぇ……(何で?)」
五十嵐、怖いからと色々と我慢しなき
ゃいけない顔。
三木「あぁ! 忘れてた!」
二宮「どうした? シュミレット?」
三木「観たいドラマの再放送が今日だった!
やべぇ、録画し忘れてたわ。早く帰らねぇ
と!」
二宮「家のデッキに録画出来るスマホアプリ
があればいいんだけどな。シュミレット、
自分で開発しとけよ」
シシ「あっ、私もバイトだった」
二宮「えぇ? お前もかよ!?」
三木「じゃあ、こっそりと俺達は抜けていく
から、ニック、あとは頼んだぞ」
二宮「バカ言え! 俺1人だけこそこそして
たら余計怪しまれるだろ! 今でも十分怪
しいけど、一人で怪しまれるのと、大勢で
怪しまれるのとは全然違うだろ! もし、
何してるんですか?って聞かれたらどうす
る? 俺1人で聞かれたら何て答えればい
い? バードウォッチングしてました、て
か? 鳥の種類も知らないのに?最終的に
お前達に会えるのはムショの中かもな!
ハッハー!面会は三日に一回は来いよ!」
三木「あぁん、じゃあどうしよう?盛り上が
らない合コンみたいにひっそりと隠れなが
ら帰るか?」
シシ「前の合コンみたいにね。全員で行った
ら目立つし、前に会った人達と思われそう
だから、1人づつ抜けていくのはどう?」
三木「そうだった。俺達は一回顔を見られて
るんだ。 1人づつ隠れながら抜けていこう。
じゃあ、まず 俺から……」
シシ「シュミレット!」
三木「うん?な、何?」
シシ「念のため顔を作りなさい」
三木「顔を作るって?」
シシ「眉間を寄せて、顎をシャクれさせるの
よ」
三木「猪木のモノマネすればいいの?」
シシ「そうよ」
三木「……オーケイ」
三木、猪木の顔マネで彼氏の前を通り
すぎる。
二宮「ワォ、上手くいった」
シシ「えぇ、予想以上にね」
三木、出口の前でこっちを見ている。
猪木の顔マネをやめてない。
二宮「何であいつあそこで待ってるんだ?急
いでたんじゃねぇのかよ?」
シシ「さぁ?もしかして私達がどんな風に抜
けていくか見たいんじゃないかしら?」
二宮「なんて嫌なやつだ。しかもまだあの顔
のままだし」
シシ「ええ、とても愚かね。じゃあ、次私が
行くから……」
五十嵐「ちょっと待て、順番的に生理現象に
猛烈に襲われてる俺からじゃね?」
シシ「じゃあ、みんな気を付けるのよ」
五十嵐「おい!何故だ?!俺から先に……!?」
シシ、聞かずに出ていく。
五十嵐「なぁ? 俺、今ここにいるよな?
ニック? ニック!?」
二宮「うるさいな、静かにしろ! バレるだ
ろ?」
五十嵐「良かった!聞こえてて。あぁ、漏れ
そうだ!」
シシ、ペコちゃんみたいな変顔。
遠くで三木がスマホで撮影している。
それを見たシシが一瞬で般若の顔に変
わる。
素早くベンチに座る彼氏を通りすぎる
シシ。三木の元へ。
三木のスマホを取ろうとする。
二宮「よし、次は俺だな」
五十嵐「何でだよ!?分かった。これもう嫌
がらせだろ?俺が漏らした所をみんなで笑
って動画サイトにでも上げるつもりだろ?
この人でなしどもが」
二宮、すっと立ち上がって出ていく。
五十嵐「シ、シカトかよ……。マジで俺より
先に行きやがった……鬼だ」
二宮も変顔で通る。手にはオモチャの
犬の車(ビニールでもぬいぐるみでも)
を引いている。おみやげ?
二宮が彼氏のもとを通ろうとした時に、
彼氏に携帯電話がかかってきて、彼氏
が取る。
元カレ「あ、もしもし、あぁ俺。今? 今ま
だ遊園地。マジでかったるいよ!」
ピクっと二宮が反応して立ち止まる。
元カレは二宮に気づていない。
元カレ「あいつ?あいつ今何か買いに行って
る。ホント超めんどくせぇよ。誕生日?
俺が知るかっての」
二宮はまだ立ち止まっている。
立ち止まる二宮に疑問を抱き始めるあ
との三人。
あとの三人には元カレの声が聞こえて
こない。
三木「どうしたんだあいつ?あの状態で気絶
したのか?」
シシ「様子がおかしいわね?」
五十嵐「何してんだよ!?嫌がらせかよ?」
元カレ「早く帰りたいわマジで。時間の無駄
だぜこんな所。けどま、あいつのご機嫌も
取っとかないと、また出て行かれたら厄介
だしな。あいつがいるだけで家賃は半分、
掃除洗濯ご飯はしてくれるし、たまに家賃
も全部出してくれるし。大助かりだ」
三木、シシ、二人は不穏の表情。
五十嵐、汗だくで我慢している表情。
元カレ「おっと! そろそろ奴隷ちゃんも戻
って来るかもしれねぇから切るわ。え?ひ
どい奴だって? バカ言ってんじゃねぇよ。
これも才能だろ?夢の栄光の踏み台は必要
さ。成功してる奴はたいがいこんな生活だ
ったんだ。犠牲は付き物だって。それにア
イツも好きで俺の元にいるんだ。ケースバ
イケースだよ。ま、あいつには俺は勿体な
いけどな。じゃあ、今日はマジでごめん。
また連絡するよ。ハイハーイ、バァイ」
元カレ、電話を切る。
しばらく二宮は立ち尽くす。元カレは
気づいていない。
ハルカの過ごした日々やハルカの笑顔
を思い出す。
そして、二宮が元カレの襟元を握る。
元カレを立たす。
元カレ「な、なんだよお前!」
二宮「……」
三木、シシ、二宮の行動に驚く。
五十嵐だけ眉をひそめて苦しみながら
驚く。
二宮「聞いたぞ? お前は本当の本当にクズ
だな」
元カレ「あぁん? ケンカ売ってんのかおっ
さん!」
一触即発な雰囲気におもわず三木とシ
シが駆け寄る。
五十嵐はズボンを後ろに引っ張りなが
ら近寄ってくる。
シシ「ちょっと、ニック、何してんの?」
三木「いきなりどうしたんだよ?」
二宮「こいつは最低だ。ハルカを奴隷だと思
ってやがる」
シシ「何ですって?」
ハルカが飲み物を持って現れる。
ハルカ「え!? みんな何でここにいるの!?
それに……どうしたの?」
二宮「こいつがクソ……」
シシ「ニック!」
二宮「何だよ?」
シシがジェスチャーや目だけで伝える。
「今日はハルカの誕生日」だと。
二宮、それに気づいて。手を離す。
二宮「……すまねぇ。何でもない。悪かった」
元カレ「何だよこいつ?」
この場から引こうとした二宮をハルカ
が止める。
ハルカ「いいの。何かあったんでしょ? も
しかして、私の事?」
二宮「すまなかった、何にもねぇんだ」
ハルカ「いいから。説明して」
二宮はシシの方を見る。シシは顔を反
らして「もう……」みたいな表情。
二宮「……こいつはクソ野郎だ。お前の事を
全く考えちゃいねぇ。今すぐにこいつと離
れた方が良い。お前の人生にこいつは必要
ねぇ」
元カレ「何言ってんだよお前! 何聞いたか
知らねぇが、意味分かんねぇ事言ってんじ
ゃねぇぞこら!」
二宮にくいかかる元カレ。
ハルカは元カレを止める。
三木と五十嵐は二宮を抑える。
三木「オーケイオーケイオーケイ、イージー
に行こうぜ」
二宮「じゃあ、お前こそ電話で何の話をして
たんだ? 言ってみろよホラ」
元カレ「あれは、違う話だっての!」
二宮「ほぅ、じゃあもうすぐ何が戻って来る
って言ってたんだ?あぁん?俺はしっかり
と聞いてたんだぞ?この二つある耳でな!」
元カレ「うるせぇな! お前には関係ねぇだ
ろ!殺すぞおっさん!」
ハルカ「何?何か言ったの?」
ハルカ、元カレに聞く。
元カレ「お前にも関係ねぇよ!」
ハルカ「か、関係ない事ないじゃない! だ
って今はそれで揉めてるんでしょ?」
元カレ「うるせぇよ!黙れ!」
ハルカ「……」
シシ「ニック、本当に何か聞いたのね?」
二宮「ああ、間違いない」
元カレ「だから誤解だって言ってんだろ!
また別の話だって! おい、お前だよ!」
元カレ、ハルカに言う。
元カレ「そいつらと俺、どっちを信じるんだ
よ? お前が決めろよ」
ハルカ「え?」
元カレ「どっちを信じるんだ!?もし、そい
つらの肩を持つんだったら、分かってんだ
ろな?」
ハルカ「わ、私は……」
ハルカはルームメイト達と元カレを交
互に見る。
二宮「……俺達に気を遣わなくていい。お前
がどちらを選ぼうと、俺達はお前を見捨て
たりしねぇよ」
少し間が空く。
ハルカ「……ごめん、みんな……」
みんな少しガッカリした様子。
シシ「はるか……」
二宮、一呼吸して喋る。
二宮「気にするな。すまねぇ。俺の勘違いだ
ったかもしれねぇ。難癖つけて悪かったな
彼氏さん。また今度じっくり謝罪させてく
れ。じゃぁ……俺達は退散するよ」
ハルカ「私、ダメなの。この人(彼氏)が居
てくれないと、私が私じゃなくなるような
気がして……」
元カレ「だろ? 俺をいつでも信じろ。俺も
いつでもお前の事を想っている」
元カレがハルカを抱きしめようとする
が、ハルカは振りほどく。
ハルカ「……だけどそれは、昔の私」
みんな帰ろうとした時に、ハルカの言
葉で立ち止まる。
ハルカ「何か無くなるのがすごく恐かった。
いつも自信が無くて、誰かに依存してない
と耐えられないかった。だけど今は違う。
私の事を本気で心配してくれる仲間がいる。
短い時間だっけど、偶然に出会ったかもし
れないけど、一緒に過ごした信頼できる仲
間がいる。私は、そんな仲間と一緒に居て
強くなっていきたい」
元カレ「何言ってんだよ?」
ハルカ「アナタと一緒にいた時間はすごく楽
しかった。それは嘘じゃない。運命の相手
だと思った事もあったし、本当に結婚して
もいいと思ってた。本当に大好きだったよ」
元カレ「俺よりも、あんな奴らの事信じるの
かよ?」
ハルカ「……(少し強がりながら)うん」
元カレ「勝手にしろ。あぁ、お前の代わりな
んていくらでもいるからな。お前は奴隷だ
ったんだよ! 俺の方もブスと別れれてせ
いせいしたぜ。次はもっと美人で、イイ女
を探す事にするよ。とっとと俺の部屋から
も出ていけ!クソ女!」
二宮「てめぇ!」
二宮、シシ、元カレに掴みかかろうと
する。
それをハルカが止める。
ハルカ「分かった。今からでも帰って荷物を
まとめて出ていくよ。それと……」
ハルカ、ペンダントの写真を地面に叩
きつける。
ハルカ「ありがとう、今まで一緒にいてくれ
て。私は心から好きだったよ。さようなら、
妖怪クソ男!」
元カレ「ふん!」
元カレ、怒りながら歩いてどこかへ行
く。
シシ「よくやったわ。はるか」
三木「あぁ、俺も何が起こるかドキドキした
ぜ。まぁもしケンカになれば、俺の得意の
ブラジリアンキックがあいつの顔面に……」
ハルカ「うぇ~ん!」
ハルカが膝を付き、うずくまって大泣
き。
うずくまるハルカを抱きしめるシシ。
シシ「頑張ったね、はるか。辛いよね、やっ
ぱり、どんな別れだって……」
みんな「…………」
辺りは夕方の情景になっている。
〇アパート 夜
ハルカ荷物をまとめてアパートに帰っ
てくる。
ハルカ「ただいま~。あれ?」
部屋が真っ暗。急に明かりが付きみん
なクラッカーを鳴らす。
みんな「ハッピーバースデー!ハルカ!」
ハルカ「みんな……」
三木「イェーイ、ほらこっちに座って!」
ハルカ、三木に連れられてソファの真
ん中に座る。
シシ「今日は確かに辛い誕生日だったかもし
れないけど、最後くらいはこんな形にした
くて……迷惑だった?」
ハルカ「ううん、ありがとう。その気持ちが
嬉しいよ」
二宮「俺、余計な事したかな?夢の国(ディ
ズニーランド?)で悪夢にしちまった。悪
かった、つい……」
ハルカ「確かに、夢の国で悪夢を観たわ。こ
れはしばらくトラウマになりそう」
二宮「ああ、ホントにすまない」
ハルカ「いいの。私の事を心配してくれてた
んでしょ? 逆に感謝してるよ」
二宮、肩をすくめて微笑。
五十嵐が奥から料理を持ってくる。
五十嵐「ヘイ、特性の料理もあるぜ」
三木「おい、ちゃんとパンツと手は洗ったの
か?」
五十嵐「うるせぇな! もとはと言えばお前
らのせいだからな!」
ハルカ「何の事?」
シシ「聞かない方がいいわ。ねぇ! 汚い話
は食事前にしないで!」
二宮「ウェスを見るたびにそれしか浮かばな
いんだけど。ウェス、ちょっと食事中は外
してくれるか?」
五十嵐「嫌だね。お前らが例えカレーを食お
うとも俺は絶対にお前らの近くに居座るぜ!」
二宮「とんだ守護霊だぜ。汚物の精霊かよ」
シシ「はいはい、それより、早くケーキ開け
よう!」
五十嵐がケーキの箱を開ける。
ホールケーキ登場。
五十嵐「じゃ~ん!」
三木「イェーイ! 28歳の誕生日おめでと
う!」
ハルカ「……26な」
みんな一瞬固まるが、笑いだす。
全員「あははは!」
シシ「ハルカなら突っ込んでくれると思って
た!」
ハルカ「ひど~い!」
みんな笑いあっている。
その中でナレーション。
ハルカ(N)私はこの仲間達と過ごしていっ
た。そして、ここで色んな経験した。明日
を信じたくないくらい悲しい出来事、幸せ
が溢れ出すくらい人生最高の時。別れや出
会いを繰り返して、仲間と共に生きていっ
た。
今はみんな、それぞれ別々の道を選らんで
歩んでいるけど、みんな自分が信じた道を
選らんで、とても幸せに暮らせている。人
生で言えばたったの1ページだったかもし
れないけど、ここから全てが始まっていっ
た。これも大切な1ページだって今は言え
る。
本当に素敵で、楽しい、私達の想い出だ…
…。
開け放した窓の近くに、みんなで撮っ
た写真が置かれている。
その写真が徐々に色あせていく。
(暗転)。
〇バー 夜
全員で飲んでいる。
ハルカが、マスターに話しかける。
ハルカ「なんで店のマーブルポップコーンっ
て名前にしたの?」
二宮「響きとかリズムが良かったからだろ?」
マスター「違うんだ。それはね、色んな個性、
出会い、人生が混じりあう場所、そしてそ
んな色同士が混じり合って、この世の人生
を輝くように、鮮やかに生きていくって言
う意味を込めているんだ。マーブルが混じ
り、ポップコーンは楽しいイメージがある
だろ?そんなフレーズを忘れないためにも、
合言葉のように、店の名前にしたんだ」
ハルカと二宮、一瞬間があって(感動
してると思わせて)、
二宮「一生分かるわけないぜ!」
シシ「ちょっと無茶があるわ!」
三木「おかしすぎて鼻が出たぜ」
五十嵐「名前の由来がキラキラネームみたい
じゃねぇか」
ハルカ「ホントにマスターって、面白い人ね」
マスター、白目を向いてコップを拭い
ている。
マスター「まさか鼻で笑われる日が来るとは
……ははは……」
〇 ~END~
■あらすじ
現代を生きる若者が、夢や恋、仕事を通じて
交流していくポップなコメディ物語。
田舎から都会に出てきた主人公の一条はるか
(20代半ば)は恋と夢に裏切られる。そん
な彼女をルームシェアしている親友たちと共
に過ごしていって、本当の大切なモノがなん
なのか気づいていく。
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