ファミリー!〜sunflower〜 ドラマ

高校生の浜松凛は同級生の水野彰に告白され、付き合うことに。 それを心配したオカマクラブで働く父親が巻き起こす、爆笑恋愛物語!? そして、明らかになる彰の暗い過去・・・ バラバラになったピースが重なり合うとき、真実が明らかになる!?
氷澄 37 0 0 05/10
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第一稿

   ファミリー!〜sunflower〜

CAST
(はままつ りん ) 浜松 凛 (凛)…主人公。高校二年生。
(はままつ けんいち) 浜松 健一(父)…凛の父親( ...続きを読む
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   ファミリー!〜sunflower〜

CAST
(はままつ りん ) 浜松 凛 (凛)…主人公。高校二年生。
(はままつ けんいち) 浜松 健一(父)…凛の父親(シングルファザー)。
(みずの あきら) 水野 彰(彰)…凛の同級生。後に恋人。だが実は…
(いのうえ まこと) 井上 誠(誠)…凛の父の勤めるオカマクラブのマネージャー。
*********************************************************************

舞台中央に凛。手に紙を持ったままうろうろしている。

凛「あ〜、もう!遅い遅いおそーい!ったく、いつになったら来るのよ!も〜!『放課後、体育館裏で待ってます♡』って、もう放課後になってニ時間も経ってるっつーの!放課後の何時よ!…せっかく、今日は午前授業だったってのにぃ〜……。この手紙、間違ってるっつーの!『体育館裏で待ってます♡』じゃなくて『体育館裏で待ってもらいます♡』が正解じゃないの、これ!」

凛、座り込む。

凛「あ〜あ〜。生まれて初めてもらったラブレターだったのに…。これ、からかいだったのかなぁ〜?まぁ、よく見れば字も雑だし、文によってなんか筆跡もまちまちだし…。…だいたい、この文章も変だよねぇ〜……」

音響、彰が読んだ手紙の文。

彰『オー、ベイベー、イエー!オレ、君に一目惚れ。マジ、好き好き。やべぇ、メロメロなんすけど(笑)おれっち、いつもいつもお前のことばっか考えちゃったりなんかしちゃったりして〜!僕は君を思うと胸が苦しくていてもたってもイラン人。今日の放課後、体育館裏で待ってます♡この思い、あなたに伝えたい。meの気持ちゲッチュしてくれたまへ♡』
凛「…読み返すとますますおかしく感じるわ。一人称がオレだったりおれっちだったり僕だったりmeだったり。しかもこの『僕は君を思うと胸が苦しくていてもたってもイラン人』って何よ。…それに、この差出人の名前。『おおばかなひと』って誰?そんな名前の人聞いた事ないし。『おおばかなひと』…『おおばかなひと』…『大バカな人』!?は、ははははは…。なるほど。全部からかいだったってワケ!…私の事バカにしてんの。そう。きっと今、その辺に潜んで私のこと見て嘲笑ってるヒマ人の連中がいるんでしょーねぇ!も〜、こんな手紙〜!(手紙をくしゃくしゃに丸める)」

彰、下手より登場。

彰「あ、あの、浜松…さん」
凛「バカ、バカ、バカー!」
彰「あ、はい。バカですいません…。今日、委員会があった事、ホントに忘れてて…、それで…」
凛「ホント、バカ過ぎて涙が出るわよ!どうせ、私はバカよ〜。何でこんなのに引っ掛かかってるの〜?いくら出会いがないからって、不覚だわ〜」
彰「え?あ、ぼ、僕の事じゃないんだ。なんだ〜、あはは。…あの、で、その…浜松さん。あの〜。お〜い、浜松さーん?」
凛「(上手側へ歩き出す)最悪の週末だわ。…あぁ、もう帰ろう。…お、落ち込むことないのよ?きっと今にも私の目の前に、白馬に乗った王子様…そう、運命の人が現れるはずだもんね〜…。(振り返る)…い、いた!私の、う、運命の人!」
彰「え?う、運命の人?」
凛「そう、あなたが私の運命の人なのよ!私の王子様!」
彰「僕が?浜松さんの?」
凛「そうよ!あなたが!」
彰「…僕が、浜松さんの運命の人だなんて、そんな…」
凛「(声色を変えて)って、よく見れば、家がお金持ちで有名なウチのクラス長の水野彰君じゃない。どうしたの、こんな体育館裏なんかに来て。不良に呼び出されて、集団リンチでも受けに来たの?お金を巻き上げられに」
彰「え?え?凛さん?」
凛「あ、ごめんなさい。私、なんか変な事言っちゃった。今、ちょっと落ち込んでて…。ごめんなさい」
彰「え?あ、いや…そうだったの……」
凛「…うん。でも、もう大丈夫。…それで、水野君、どうしたの?」
彰「…えっと、手紙の方は、読んでくれたのかな?」
凛「手紙?…手紙って、何の事かしら?」
彰「え?あれ?違うの?え?じゃあ、手紙読んだんじゃないなら、どうしてこんな所に?」
凛「え?あ、あら?わ…私、どうしてこんな所にいるのかしら?もう二時だし、ご飯食べてないから帰らなきゃ。じゃあね。(上手側へ行こうとする)」
彰「(凛を引き戻す)な、なぁ、ちょっと待ってくれよ。…本当は、手紙読んでくれたんじゃないのか?だから、ここに来てくれたんじゃないのか?」
凛「…え?」
彰「二時間も待たせて、本当に悪かったと思ってる。委員会があったのすっかり忘れてて、サボる訳にもいかなかったし…。ホントにごめん!…でも、浜松さんに対する…いや、凛さんに対する気持ちは、本当なんだ。本当に、凛さんの事は好きなんです。だから…お願いです、僕と付き合ってください!」
凛「え?」
彰「付き合ってください!」
凛「…あの、水野君……」
彰「はい!」
凛「…もしかして、この手紙って…水野君が?」
彰「あ、いや…ごめん。実は、手紙の方は、知り合いが僕の代わりに書いてくれたんだ。僕、筆無精だし、ラブレターなんて初めてだったから、どう書いていいかよくわからなくて…」
凛「あ、そうだったの?どうりで…。頭良くて真面目な水野君がこんな文章書くワケないものね」
彰「え?(小声で)…マコちゃん、一体どんな文章書いたんだろ……」
凛「水野君?どうかしたの?」
彰「あ、いや、ごめん。何でもないよ!…えっと、あの…それで…返事は……」
凛「…。ええ、もちろん。よろしくお願いします、水野君」
彰「…え?あ、は、はい!よろしくお願いします、凛さん!(凛と握手する)いやぁ〜、てっきりフラれるんじゃないかとばかり思ってたけど、なんかすごく嬉しいよ!…えっと、じゃあ、僕は委員会の方に戻らないといけないから!たぶん遅くなるから、今日は先に帰っていいよ。じゃあ、ホントにごめんね、凛さん!」

彰、下手に退場。

凛「え?委員会途中だったの?委員会抜け出してきていいんかーい?なんて。がんばって、水野君!」
彰「(下手袖で)うん!ホントにごめんね!後で電話するからー!」
凛「…。(声色を元に戻して)きゃ〜、嘘でしょ!?彼氏出来ちゃったぁ!すごーい!夢みたーい!もう、サイコーじゃん!しかも水野君の家ってお金持ちだっていうし、欲しい物なんか全部買ってもらえるかも〜。きゃ〜!あはは、あははははははは!」

凛、上手へ退場。
暗転。
照明つく。凛の家。ソファやテーブルなどが置いてある。
凛、上手より登場。

凛「あはは。ホントすごい信じられな〜い!今日ってもしかして人生最大の幸運日!?(ソファーに座る)あははははは!」
父「(ソファーの裏から飛び出す)パパも今日はもしかして人生最大の幸運日かもしれないわ〜」
凛「うわっ!いきなり変なとこから出てくんな!このオカマ野郎!」
父「聞いて凛!パパね、オカマクラブの人気オカマ投票で、一位獲得したのよ〜!」
凛「どーでもいいけど、家にいる時ぐらい普通のカッコしてよ。見てるこっちが恥ずかしいわ」
父「凛ったら冷たいわね。ね、凛は何があったの?」
凛「お父さんには関係ないでしょ!?もぉ〜」
父「凛!『お父さん』じゃなくて、『パパ』って呼びなさいっていつも言ってるでしょ!」
凛「うるさい、オカマ野郎」
父「オカマ野郎も禁止!ほら、凛言ってみな。『パパ』ほら、『パパ』」
凛「バッカみたい。その前にまだ『お父さん』って呼んでもらえる時があるって事を喜んだ方がいいと思うんだけど?」
父「…凛。……パパは、パパは悲しいぞーーーーー!」
凛「あ、そうですか」
父「…。で、ねぇ、凛は今日何があったの?教えてよ〜」
凛「…彼氏が出来たんだよ」
父「そ〜う、彼氏!彼氏が出来たの〜!よかったわねぇ〜!そう、彼氏が…彼氏……え?か、彼氏ですって?」
凛「そう、彼氏。うちのクラスの級長でね、頭もいいし、お父さんとは違って、すごくいい人なの」
父「何ぃーーー!?許さん!パパは許さんぞ、凛!彼氏…彼氏だなんて、オレというものがありながらーーー!」
凛「もう、何言ってんの、このオカマ野郎は(下手側に歩いていく)」
父「パパは悲しいぞーーー!」
凛「(立ち止まって振り返る、が、また下手側へと歩いていく)」
父「凛!パパは、パパは悲し(凛の投げたクッションが当たる)ぼふっ!」

凛、下手へ退場。

父「凛—————!」

  間

父「…彼氏、か。…凛も、もう高校生だものね。そういう年頃だわよね。(スカートのポケットから写真を取り出して)…清美、凛に彼氏が出来ました。清美の方はどうだ?新しいお相手は見つかったか?…たまには連絡くれたっていいじゃないか。オレの事、本当に嫌いになっちまったのか?…離婚したって、オレ達繋がってるだろ〜、清美〜!」

凛、下手より登場。

凛「またお母さんの写真に語りかけてるの?全く。未練たらたらで、情けない」
父「おお、凛、戻ってきてくれたのか」
凛「別に、鞄取り来ただけ。オカマモード直ったのね。よかった。いつも家ではそうやって普通に喋っててくれる?気持ち悪いから。っていうかその服もいい加減脱いでよね」
父「(写真に向かって)清美—!凛がオレの事をこんな風に言うんだー!ひどいだろーーー!?」
凛「はぁ…。…そんなにお母さんの事好きなら、ちゃんと会って自分の気持ち伝えりゃいいのに。もしかしたら、またやり直せるかもしれないじゃん?」
父「おお、やっぱりお前もお母さんに戻ってきて欲しいか!」
凛「…戻ってきて欲しいっていうか、会ってみたい。どんな人なのかって。私、お母さんの事全然覚えてないし」
父「ああ、そうか。そうだよなぁ〜。お前、こんなちっちゃい(指で小さな丸を作る)赤ちゃんだったしなぁ〜」
凛「私は米粒か!全く…。……それにさ、私、兄弟いるんでしょ?弟」
父「…ああ、まぁな」
凛「会ってみたいよ、弟にも」
父「そーだなぁ〜。きっとオレみたいに背が高くてハンサムなヤツになってるだろうなぁ〜」
凛「お父さんみたいにオカマになってないといいけどねぇ〜」
父「でも〜、きっとあの子なら女装は似合うと思うわ〜♡」
凛「うわっ!気色悪いからやめてよ!」
父「ははっ。でも、お前もよく似てるよ、清美に。……元気にしてるといいんだけどな、二人共」
凛「電話すれば?番号知ってるんでしょ?」
父「…いや、それがな、もうずっと前から通じないんだ」
凛「え?」
父「『この番号は現在使われておりません』だとさ」
凛「え。…じゃ、じゃあ、向こうから連絡は?あったりしないの?」
父「(首を横に振る)」
凛「そんな…」
父「…きっと、新しい相手が見つかったんだろう。それで、もうオレとは関係を絶ちたいって事なんだろうな。…だったら、オレもやり直そうなんて思わないさ。せっかく出来た家族関係を壊そうとは思わない。…もう他人同士って事か」
凛「……そっか」
父「あぁっ、でも、きっとお前の事は心配してると思うぞ。別れてすぐの頃は頻繁に電話かけて来て、『凛は元気?病気はしてない?』って、聞いて来たからな」
凛「……ねぇ、お父さん。どうしてお父さんは、お母さんと離婚なんかしちゃったの?」
父「(凛の言葉を遮って)『パパ』と呼びなさい!」
凛「…嫌よ!『お父さん』」
父「『パパ』」
凛「『お父さん』」
父「『パパ』だって言ってるでしょう、凛!」
凛「このオカマ野郎!」
父「なんだと?『お父さん』。『お父さん』と呼びなさいと言ってるでしょう!」
凛「あ、『お父さん』でいいの?じゃあ、お父さん。どうしてお父さんはお母さんと」
父「(凛の言葉を遮って)あぁっ、いや、間違えた。『パパ』。『パパ』と呼びなさい!」
凛「…嫌よ!」
父「凛!」
凛「嫌よ、『お父さん』」
父「『パパ』」
凛「『お父さん』!ねぇ、だから何で離婚しちゃったの?教えてよ〜!」

電話音。

父「ああっ、電話だ。珍しいな、自宅に電話だなんて(受話器を取ろうとする)」
凛「わー!ちょっ、待って!水野君かも!ケータイ番号教えてないから、自宅に電話して来たのかも!」
父「え?み、水野君?」
凛「(受話器を取る。声色を変えて)はい、もしもし、浜松です」

彰、下手より登場。

彰「あ、凛さん?僕、水野です」
凛「あ、やっぱり水野君。委員会の方は、もう終わったの?」
彰「うん。でも、さっきはホントにごめん。待たせちゃって」
父「水野君?水野君って、その、今日出来た同級生の彼氏か?っていうか凛、お前いつもとキャラが違うぞ?どうしたんだ?パパの前でも、いつもそうしてくれてればいいのに〜」
彰「凛さん?もしもし?…凛さん?」
凛「うるさい」
彰「え?あ…ごめん。やっぱり、怒ってる?」
凛「あ、ち、違うの!水野君の事じゃなくて、あの〜、蚊!私の周りブンブン飛んでて…」
父「オレは蚊か…」
彰「なんだ、びっくりした〜。…あの、それで、いきなりで悪いんだけど、明日って…空いてる?」
凛「え?あ、うん、別に明日は何も予定ないよ。私、基本的に土日はフリーなの」
彰「そうなんだ、よかったぁ〜。あの、もしよかったら、映画でも見に行かない?さっき知り合いに、いらないからってチケットもらっちゃったんだ。『ハウルの動く城』のさ」
凛「ハウル?ホントに?うれしぃ〜!私、見たかったの!」
彰「そっか。よかった。で〜、えっと、待ち合わせは…十時に学校の前でいいかな?」
凛「あ、うん!じゃあ、明日楽しみにしてるね!ありがとう」
彰「うん。じゃあ、また明日ね!」

彰、下手へ退場。

凛「(声色を元に戻して)やったぁ〜!もう、水野君サイコー!」
父「元に戻った!?」
凛「お父さん。私、明日出掛けるから」
父「デート?デートのお誘いか?そうなのか、凛!」
凛「そーよ」
父「デートならパパとすればいいじゃないか〜。なぁ、どこに行きたいんだ?遊園地か?お前、ちっちゃい頃から好きだったもんなぁ〜、コーヒーカップ。パパと二人で乗らないか?な、な?」
凛「ねぇ。いい加減、子離れしたら?キモい」

凛、下手へ退場。

父「凛—————!……り、凛が………あうううぅぅ………………」

*凛、下手より登場。

凛「仕事行かなくていいの?もう三時過ぎてるよ」

凛、下手へ退場。

父「……………。(立ち上がる)…行ってきマンモス」

*父、上手へ退場。
*暗転。
*照明つく。オカマクラブ。誠が下手側のカウンターで皿を拭いている。
*彰、上手より登場。

誠「あ〜あ、彰君。どうだった?カノジョの反応は」
彰「ええ、オッケーしてくれましたよ。『ハウル見たかったんだ〜』ってすごく喜んでくれました」
誠「そう、よかった。でも、意外だなぁ…。まさか、あのラブレターからここまで発展するなんて」
彰「僕もです。…まさか、マコちゃんがそんな文章書くなんて思いもしませんでしたよ。後から聞いてビックリしました。しかも『大バカな人』なんて」
誠「別に僕が書いたんじゃないんだよ?このオカマクラブのオカマさんの共同作業」
彰「…そうだったんですか……」
誠「…そういえば、彰君。その子には言ったの?彰君の事」
彰「……いえ」
誠「そう、やっぱり…。言えないよなぁ〜」
彰「…でも、出来たら早く言おうと思ってます。隠し事はいけないと思うし、僕、本気で彼女の事好きですから…だから、怖いけど…ちゃんと……」
誠「…そう。まぁ、でも明日は頑張んな!ちゃ〜んと、カノジョの事、エスコートしてやるんだよ!映画、楽しんできな!」
彰「はい。あ…でも、本当に良かったんですか?チケットもらっちゃって」
誠「あ〜、いいんだよ。ホントは健ちゃんと見に行こうかと思ってたんだけど、最近忙しいから暇なくって」
彰「え?でも、オカマクラブって夜しかやってないですよね?昼間、見に行けばいいじゃないですか」
誠「僕は、仕事疲れで昼間は寝ちゃってるから。健ちゃんみたくタフじゃないし。今日だってまだ昨日の疲れが取れてないしね」
彰「あ〜あ、健一さんの方は、体力ありそうですもんね。…マコちゃんは〜、逆に体力なさそうですもんね〜」
誠「ひどい、彰君」
彰「あははは。すみません。マネージャーって大変なんですね」
誠「ホントにそう思ってる?…まぁ、いっか。それよりいいの?もう三時半…。親は、今日は学校午前授業だって知ってるんだろ?もうそろそろ家に帰ったら?心配してるんじゃない?」
彰「心配なんかしてないよ」
誠「彰君…」
彰「心配なんかしてるワケがない。この間だって、電話一本入れずに朝帰りしても、何も心配なんかしてなかった。それどころか、僕が家に帰ってなかった事すら、気づきやしなかったんだ」
誠「あ、朝帰りって…ダメじゃんか、彰君!そんな事しちゃ。まだ高校生なんだから!夜はどこに泊まっったの?野宿?そ、それともまさか、元カノの家にでも…」
彰「ここです!『もう夜遅いから泊まってっていい』って言ったのマコちゃんじゃないですか!」
誠「あぁ〜、そうだった」
彰「そうですよ〜!マコちゃんが健一さんを紹介してくれたのもあの時だったし!それに僕、元カノなんていません!…マコちゃんと出会うまでは僕、臆病で、人を好きになる事も出来なかったし……。…あんな水野家の人じゃなくて、マコちゃんが僕の親だったらいいのに……」
誠「…彰君」
彰「何ですか?」
誠「…お母さんとお父さんの事、そんなに嫌い?」
彰「……あんな人、親じゃありません。僕の事なんて、息子だなんて思っちゃいない。…僕を引き取ったのだって、ただお金があるから、ただ子供がいなかったから…それだけだよ」
誠「………。…そんな事、ないと思うけど?きっとその水野家の両親も、彰君にどう接していいのか、わからないだけなんだよ」
彰「もう三年も経ってるんですよ?」
誠「………」
彰「僕があのウチに行って、もう三年も経つんですよ!?…僕だって、最初はどう接したらいいかわからなかった!今まで色んな家たらい回しにされて、もう、どうしていいのかわかんなくなってた!でも、出来るだけ明るく接するようにしてたんだ!…なのに、何も言葉を返してくれない。『おはよう』って言っても、そのひとことすら…。…あっちから話し掛けて来る事もないし……。…まるで僕、幽霊だよ……」
誠「………。…大丈夫だよ、彰君。彰君は難しい時期だから、きっと、それで敏感になっちゃってるだけだって」
彰「でも!」
誠「きっと、両親も不器用なんだな。(彰の頭を撫でる)さ、彰君。いい子だから、今日はもう帰りな」
彰「………」
誠「…彰君、わかるよな?僕も、仕事の準備で忙しいんだ。彰君には構っていられないんだよ」
彰「…はい」

彰、上手へ退場。

誠「(皿を拭きながら)何なんだよ、あの子。毎日毎日、僕の所に来て。自分で問題を解決しようとしないで、人にばっかり頼って…。…見てるだけで腹が立つ。あんな子…。…昔の、僕じゃないんだから……」

父、上手より登場。

父「誠—!」
誠「…どうしたんだ、健一。血相変えて」
父「凛に…凛に彼氏が出来たんだーーー!」
誠「そう!良かったじゃんか!」
父「良くねーーー!しかも、明日デートするらしいんだ!初デート!あー、ぜってー後つけてやる!男の子と二人きりなんて許さんぞ!」
誠「へぇ、凛ちゃんも〜」
父「え?凛ちゃん『も』って?え?ま、まさか、誠も明日、初デートに〜!?」
誠「そんなワケないだろ〜?ウチの常連客の人の子供だよ。あの金持ちの」
父「ああ!この間ここに泊まってったメガネの子か!えっと、確か〜、彰君だったか。今、そこですれ違ったぞ。なんかうつむいてて、元気なさそうだったけど。あいさつしても返してくれなくてなぁ〜」
誠「あの子はいつもああだけど?」
父「…そうか?この間会った時は、そんな感じじゃなかったぞ?もっと、こう明るくて素直な感じの…」
誠「考え事でもしてて、気がつかなかったんじゃないか?」
父「そうか〜。…そーいや、彰君て、あの金持ち家の子供じゃなくて、どっかから引き取られた養子なんだろ?家であんまりうまくいってない、ってお前に言ってたよな?…もしかして、その事で悩んでたのかな〜?それで、今日もここに来てたんだろ?」
誠「…ああ」
父「本当の親はどうしちまったんだろうな〜。最近、親も変なヤツが多い、って聞くし〜」
誠「それ、健ちゃんが言える事じゃないんじゃないか?」
父「ん?何か言ったか、誠」
誠「いや、別に」
父「……そーいや、お前も子供ん時親御さんいなくて、親戚の人に育てられたって言ってたっけ?」
誠「(父の言葉を遮って)健ちゃん!今日も忙しくなりそうだ。予約がいっぱい」
父「…そうか……。…。よし!今日も凛の為に頑張るぞーーー!」
誠「健ちゃん。この食器、向こうの棚に持ってってくれよ」
父「ええ。わかったわ、マコちゃん♡」

父、下手へ退場。

誠「…当たり前じゃないか。他人なんかと家族になれるワケがないんだ。…普通になんて、暮らせるワケがない……始めから………。…僕だって……ずっと耐えて来たんだ………。…あの人がいなくなった後、絶望の中、僕は、ずっと一人で………」

*暗転。
照明つく。次の日。凛の家。父がソファに座って新聞を読んでいる(顔は隠れて見えない)。テーブルには地味な色の帽子が置いてある。
凛、下手より登場。

凛「じゃ、お父さん。私、行ってくるから」
父「ああ」

凛、上手へ退場。

父「(しばらくして、新聞を置く。ヅラは外していて、サングラスとマスクをかけている。かなり変な格好だ。上手を確認する。テーブルの上の帽子をかぶり立ち上がる)」

凛、上手より登場。

凛「お父さん!」
父「(慌ててソファに座り、新聞を読みはじめる)」
凛「絶対つけてこないでよ!」
父「何言ってるんだ、凛。パ、パパがそんな事す、する訳ないじゃないか!ま、全く。ははは」
凛「ふ〜ん。じゃあ(新聞を取り上げる)、この格好は一体何?」
父「え?あ、い、いやぁ〜これはだな、パパ花粉症だから〜。今日は花粉が多いんだぞ〜。ははは」
凛「お父さんてさ、嘘つく時いつも愛想笑いするよね。バレバレだよ」
父「え?」
凛「いい?絶対ついて来ないでね!もしついてきたら、お父さんとはもう一生口聞かないから!わかった!?」
父「…わかったよ」
凛「本当かしら〜?デート終わったら、ソッコー、オカマクラブの方に確認に行くからね!『父は今日ずっといましたか?』って」
父「え!?…そんな〜」
凛「じゃーね!バイバイ!」

凛、上手へ退場。

父「え?じゃ、じゃーね?バ、バイバイ…って?そ、そんな…い、家出するみたいな言い方……。…凛。(上手側へ行く)りーん!行かないでくれーーー!凛!行かないで(上手側から飛んできたクッションが当たる)ぼふっ!」

暗転。

父「りーーーーーーーーん!!!!!!!!!」

照明つく。公園らしき場所(ベンチがある)。
凛・彰、上手より登場。

凛「(声色を変えて)『ゲド戦争日記』面白かったね。やっぱり私、宮崎アニメって大好き!」
彰「そっか。…よかった。凛さんが喜んでくれて」
凛「…どうしたの?水野君」
彰「え?」
凛「…今日、朝会った時から思ってたんだけど、何だか水野君、元気ないみたい…」
彰「…そ、そんなことないよ!ははは」
凛「…。…水野君てさ、嘘つく時、愛想笑いするでしょ?(ベンチに座る)」
彰「え?あ…。あ、いや、ははは。これちょっとクセかも。すごいね、凛さん。…何でわかったの?」
凛「ウチのお父さんもそうなの。今日も、私がデートだって言ったら、ついて来ようとしてサングラスとマスクして変装してて…。それで、『花粉症だから〜』とか言ってたけど、愛想笑いしたからすぐわかった。ま、そうじゃなくてもバレバレだったんだけど」
彰「凛さんの事、心配してるんだ。いいお父さんだね(凛の右隣に座る)」
凛「そうかなぁ?」
彰「…近すぎると、自分が愛されてるなんて事、気がつかないんだよ。失わないと、そんな事…きっと気がつかないんだ……」
凛「…水野君?」
彰「…ごめん、変な事言った。…何だか僕、うらやましくって。凛さんが」
凛「え?」
彰「僕にはそんな父さんいないから。…母さんも」
凛「え?…でも、この間、お母さん面談に来てたじゃない」
彰「あの人は母さんなんかじゃないんだ」
凛「え?」
彰「…本当の母さんじゃないんだ。血はつながってない」
凛「あ、そ、そうなんだ。…ごめんね。…でも、私も、お母さんいないんだ。私がちっちゃい頃に離婚しちゃって、それから会った事ないし。だから、ほんの少しだけ、ほんの少しだけだけど、水野君の気持ち、わかるかな。母親のいない寂しさって」
彰「…そっか」
凛「案外似てる所あるかもね、私達。ほら、視力悪いからメガネだし」
彰「あ、そうだね」
凛「でしょ?」
彰「…でもね、僕は両親が離婚したから母親がいないんじゃないんだ。父親の方も、いないし…」
凛「…どういう事?」
彰「………。(遠くの空を見つめるように)…僕さ、赤ん坊の時に、親に捨てられたんだ」
凛「…え?」
彰「草むらの中に、投げ捨てられてんだって。…段ボールの箱にも入れられずに」
凛「…ご、ごめん、水野君!…私、そんな事何も知らずに……」
彰「…発見された時、僕はすごく衰弱してて、死にかけてたらしい。…それから施設送りになって、その養護施設で五歳まで過ごして、新しい親の所に引き取られた。その人は、優しくてすごくいい人だったんだけど、何年も経たない内に、病気で死んじゃった…」
凛「…そう……」
彰「今は、その人の親戚の家にいるんだけどさ、あんまり…うまくいってない」
凛「………」
彰「…ごめん。ヤな事ばっかり言って。でも、凛さんには話しておきたくて…」
凛「………」
彰「…僕の事、嫌いになった?」
凛「…そんな!嫌いになんてなるワケないじゃない。…まぁ、ちょっとビックリしたけど、でも、彰君が捨て子でも何でも、関係ないよ、そんな事!」
彰「そっか…」
凛「…本当の両親は、見つからないんだ……?」
彰「…うん。まぁ、会いたいとは思わないしね……」
凛「どうして?」
彰「……凛さん。僕はね、捨て子だから辛いワケじゃないんだよ」
凛「え?」
彰「今の両親に冷たくされてるから、それが辛いんだよ…」
凛「彰君…」
彰「いつも周りの人そうでさ。『捨て子なの?かわいそうに』って言うんだ…。だから、その事をわかってくれる人がいなくて、辛かったんだ。マコちゃんに出会うまでは、ずっとそれで胸を痛めてた……」
凛「マコちゃん?」
彰「知り合いのおじさん。今の親がよく行くバーのマネージャーさん。僕の事をすごくよくわかってくれる人なんだ」
凛「そっか」
彰「うん」
凛「…ねぇ、さっきから思ってたんだけどさ」
彰「ん?」
凛「そのネックレス…何?」
彰「ああ、これ?草むらで発見された時につけてたネックレス。ちょっとつけてみたんだ」
凛「…そうなんだ。なんか、手作りっぽい感じだから、気になったの」
彰「…ここに小さく、『一九九〇年二月十日』って彫ってあるんだ。たぶん、これが作られた日かな?」
凛「あ、私の誕生日、この日だよ!」
彰「そうなの?」
凛「なんかすごい偶然だね。おもしろ〜い」
彰「…じゃあ、これ凛さんにあげるよ(ネックレスを外す)」
凛「え?で、でも、これは…」
彰「いいから。(ネックレスを凛にかける)ほら、よく似合ってる」
凛「ダメだよ、大切なものなのに…(ネックレスを外そうとする)」
彰「持ってて」
凛「でも…」
彰「僕、すごく嬉しいんだ。凛さんがそんな風に僕の事受け入れてくれて。今まで、同い年の人でそんな事言ってくれる人、僕の周りにはいなかったから…。だから、大切なものだからこそ、凛さんに持っててもらいたいんだ」
凛「彰君…」
彰「(微笑む)」
凛「うん、わかった。じゃあ、ありがたく受け取っておくね。大切にするよ」
彰「うん。(腕時計を見て)あ、もう五時なんだ。一日って早いな〜」
凛「ね。…そろそろ帰らなきゃ。今日夕方雨降るって、石原良純が言ってた」
彰「そっか。もし当たったら大変だ。…じゃあ、気をつけて」
凛「…あ、でも、水野君は…家には……」
彰「大丈夫だよ。心配しないで。もうあの環境には慣れちゃったから。ははは」
凛「…愛想笑い」
彰「あ…。いや、でも、大丈夫。他に行く当てはあるし」
凛「…ホント?」
彰「うん、ホント」
凛「そう、ならいいんだけど…。…今日はありがと。楽しかったよ、彰君」
彰「え?」
凛「恋人同士なんだから、こう呼んだ方がいいでしょ?彰君」
彰「…凛さん……。…ありがとう……」
凛「じゃあね、また明日〜あ、明日は日曜だから…。じゃあ、またあさって!」
彰「うん!」

凛、下手へ退場。
暗転。
照明つく。オカマクラブ。父がキッチンで何かを切っている。誠はイスに座っている。

父「凛…凛…凛〜〜〜!オレは…うっうっうっ…」
誠「健一、うるさーい。料理する時ぐらい静かにしてくれよ。土曜なのに珍しく午前から来たと思ったらこれなんだからさ〜」
父「だって、だってよ〜!今頃きっと、『好きだよ、凛』『私もよ、水野君』とか言っちゃってるんだろ〜!?挙げ句の果てにチューとかしちゃってよお!そんなの…許せねぇぞ、水野〜〜〜!!!」
誠「気持ちはわかるけど、何も泣く事ないじゃんかー」
父「でも、止まんねーんだ!止まんねーんだよ〜〜〜。このタマネギ野郎のせいで〜〜〜。くそ〜。凛…。ついて行けばよかった…。凛…凛……」
誠「…こりゃ重症だ。(タマネギを見て)わ!健一。こんなに細かくみじん切りなんかにして〜!これじゃあサラダに出来ないじゃないじゃんかよ〜。お客に出せないし!」
父「ごめんよ、マコちゃん…」
誠「…ホントに」
父「(泣いている)」

彰、上手より登場。

誠「(彰の方を見る。目をそらす)………」
彰「………。…あれ?どうしたんですか、健一さん」

暗転。
照明つく。父と彰はイスに座っている。誠はキッチンに立っている。

彰「ははは、あははははは。なるほど、タマネギでね」
父「そうなんだよ〜。あはははは。あ、そーいや、彰君。今日初デートだったんだろ〜?どうだった?チューはもうしたのか?」
彰「え?い、いえ…まだそこまでは……」
父「そ、そうだよなぁ〜。やっぱり、まだだよなぁ〜!初デートじゃ、まだしねぇよなぁ〜。さすがに」
彰「え、…ええ。…でも、今日の事で、やっぱり僕には彼女が必要だ、ってわかったような気がします。きっと彼女が、僕の運命の人なんだ、って。そう…思います!」
父「ははは。誰だって始めはそうだぞ〜、彰君。オレだって『運命の人だ』って思って結婚したけど、たった二年で別れちまったからなぁ〜」
彰「二年?随分短い結婚生活だったんですね」
父「うるせ〜!」
彰「どうして離婚しちゃったんですか?」
父「お、いい質問だ。彰君に将来同じ経験させない為にも言っとくか。いいか?自分の親と嫁は絶対同居させない方がいい!嫁姑はホントに犬猿の仲だからな」
彰「…それで、別れちゃったんですか……」
父「ああ。まぁ、今はそのオレの親も年で死んじまったんだけど。だから、今ならまたやり直せるかもしれない…とか思うんだけどな」
彰「じゃあ、やり直せばいいじゃないですか」
父「そりゃ、オレだってそうしてぇけどよ。連絡つかねぇし!…きっと、あいつはもうオレの事なんて忘れてよ、もう新しいダンナと……」
彰「健一さん…」
父「それに、オレがオカマクラブなんかで働いてるって知ったら、どう思うだろうな〜」
彰「え?奥さんと別れた後なんですか?オカマになったの」
父「ああ。自分でもよくわかんないけど、何か、ある日いきなりこっちの道に目覚めたんだ。…前は、もっと大きなオカマバーとかで働いてたんだけどな、そこで、バーテンダーやってたマコちゃんと会ってよ。意気投合して、二人でこの店立ち上げたんだ。オレ達以外のオカマさんも、ほとんど前働いてた店の同僚でよ。な〜、誠」
誠「………」

ホリゾント青。
雨の音。

父「マコちゃん?」
彰「………。…あの、昨日はごめんなさい。マコちゃんが忙しいのわかってるのに、僕…」
誠「………」
彰「…もう、家に帰りたくなくて。マコちゃんが、僕の一番の理解者だと思ってるから…。だから、会いたくて。マコちゃん、僕の話聞いてくれるから。僕が悩んでると、いつも手を貸してくれるから…。…だから……」
誠「………」
彰「…マコちゃん、ここに泊まっちゃダメ?もう、帰りたくないんだ。…あの家には…もう……」
誠「…うるさい」
彰「…え?」
誠「うるさいんだよ!いつもいつもゴチャゴチャと馴れ馴れしく!僕は…僕はな、お前の親でも何でもないんだよ!ただあの常連客の子供だから相手してやってるだけなんだよ!」
彰「マコちゃん…?」
誠「家に帰れよ!捨て子にふさわしいのはそういう場所なんだよ!お前が捨て子である以上、それは仕方ない事なんだよ!どこへ行っても同じ!邪魔者扱いされるだけだ!本当の居場所なんてどこにもないんだよ!」
父「マコちゃん、何言ってるんだ!」
誠「お前みたいなのを見てると腹が立つんだよ!もう帰れ!二度とお前の顔なんか見たくない!!!」

彰、上手へ退場。

父「あ、彰君!おい、お前、何言ってんだよ!あんな事…」
誠「あの子は捨て子なんだ。親に捨てられた子なんだよ!」
父「そういう事を聞いてんじゃねーんだよ!何であんな事を言ったのかって聞いてんだ!」
誠「…もう、あの子を見てるのは嫌なんだ!もう限界なんだよ!」
父「…どういう事だよ?」
誠「前話しただろ?僕はは親戚の家で育ったんだ。僕も親に捨てられたんだよ!…あの子、昔の僕にそっくりだ……!親に捨てられて、色んな親戚の家たらい回しにされて…。…苦しい思いしてるけど、必死に希望を見つけようとして……。でも、そんな事しても、全部無駄なのに!まるで昔の自分を見てるみたいで嫌なんだよ!腹が立つんだ!」
父「…そっか……。…マコちゃんの言いたい事はわかった。…けどよ、希望を見つけようとしても無駄っていうのは、ちょっと違くねぇか?」
誠「違う?…何が違うって言うんだよ!?健一は、僕と同じような思いをした事ないからわからないんだよ!」
父「…ああ、わかんねぇ。わかんねぇよ!お前が今までどんな思いして生きて来たかなんて、全っ然わかんねぇ!けどなぁ、オレはマコちゃんが希望を見つけられなかったように見えねぇ!希望を見つけようとしても無駄だったようには見えねぇよ!」
誠「………」
父「だって誠、いつも楽しそうじゃねぇか!いつも楽しそうに笑ってるじゃねぇか!それは嘘だってゆーのか!?その感情が、全部嘘だって言うのかよ!?」
誠「………」
父「…本当に希望がなかったら、誠、そんな風に笑えてないだろ?…確かに、その希望を見つけるのに、時間はかかったのかもしれない。けど、お前は諦めずに希望を探し続けたんじゃないのか!?だから今ここに、お前がいるんじゃないのか!?希望を見つけようとしても無駄?本当にそうだったのかよ、誠!」
誠「………(首を横に振る)」
父「だろ?」
誠「…僕、きっとあの事がショックで、何も見えなくなってたんだな……。…今、こんなに幸せな毎日を送ってるっていうのに、それに気がつかないなんて………」
父「…あの事?」
誠「…僕が育った親戚の家の近所に、すっごい優しいお姉さんがいてな、その人は、いつも僕の話を聞いてくれて、苦しい時は、助けてくれたんだ。唯一の、アタシの心の支えになってくれる人だった。…でも、ある日その人が、交通事故に遭って死んだんだ。僕は目の前が真っ暗になって、何もわからなくなった。毎日が楽しくなくなった。思ってみれば、僕は毎日あの人の家に行ってた。学校から帰って来ては、すぐあの人に会いに……」
父「………。あのなぁ、マコちゃん。…だったら…だったら何で彰君にあんな事言ったんだ!?じゃあ、彰君だって、お前と同じだったんじゃないのか!?彰君にとってお前は、唯一の心の支えになってくれる人じゃなかったのか!?だから毎日ここに来て、お前に色んな話したし、苦しい時は頼って来たんじゃないのか!?」
誠「………!」
父「その心の支えをなくした時、今お前はどう思ったって言った!?辛かっただろ!?寂しかっただろ!?目の前が真っ暗になって、何も見えなくなったんだろ!?それと同じ思いを、お前、彰君にさせたんだ!…なのに、どうしてそれに気がつかないんだよ!?お前が誰よりも一番、彰君の気持ちわかってやれるヤツじゃないか!!!」
誠「………!……そうだな、健ちゃんの言う通りだ。…僕、大バカだよ。何してるんだか…。…ホントに……(泣く)」
父「………。…あー。彰君、こんな雨の中傘持たずに出ていっちまってよ〜。びしょ濡れだろうなぁ〜。…誠、オレちょっと彰君探してくるわ」

父、上手へ退場。

誠「(泣きながら)…彰君……ごめん………ごめんよ………」

暗転。
雨の音少し大きく。
照明つく(少し暗め)。ホリ青(青いライトでもいいかも)。外のどこか。
彰、下手より登場。

彰「…マコちゃん、信じてたのに……。…僕……。(座り込む)ははっ。…こんな事になるくらいなら、ひとりの方がよかった……。誰かに頼ろうなんて思わないで、始めから、ひとりの方が…(舞台中央で倒れる)」

暗転。
すぐ照明つく(さっきと同じ照明)。
父、下手より登場。

父「(倒れている彰を発見して)彰君!彰君!…おい、しっかりしろ!彰君!」

*暗転。
照明つく。オカマクラブ。誠がイスに座ってうつむいている。

誠「………」

凛、上手より登場。

凛「あ、あの〜…すみません」
誠「…店なら九時からだよ」
凛「いえ、…そうじゃなくて…あの、お父さんいますか?」
誠「お父さん…?(凛の方を見る)………!…清美……?」
凛「え?…私、凛ですけど……。えっと、お会いするの、幼稚園生の時以来ですよね。お久しぶりです、井上さん」
誠「あぁ、ごめん。そっか、凛ちゃん。大きくなったな〜」
凛「…あの、私ってそんなに母に似てますか?」
誠「母?」
凛「いや、だって今私の事見て『清美?』って…」
誠「え?ちょっと待て!…君、清美の?」
凛「え?…はい、そうですけど……」
誠「………」
凛「…あの……」
誠「ああ、ごめんよ。ちょっとビックリして…。っていう事は、健一の元奥さんて清美って事……?」
凛「…あ、はい、そうですけど」
誠「…世の中って、案外狭いんだなぁ。…そう。じゃあ、健ちゃんは知らないのか、清美の事…」
凛「え?」
誠「あ、いや、何でもない」
凛「…井上さんは、母とは、どういう関係なんですか?」
誠「…僕、昔、清美の家の近所に住んでてさ、すごく世話になったんだよ。…何か、姉貴みたいな存在だったな、清美は」
凛「…そうですか……」
誠「あ、それで…健ちゃんに何か用?」
凛「え、あの…ここに…いないんですか?」
誠「今さっき出ていったばっかりなんだけど…」
凛「まさか、私の事監視するつもりで〜!」
誠「監視?」
凛「私が彼氏とデートするって言ったら、ついて来ようとしてたんです!あの、変なカッコとかしてませんでした!?サングラスとかマスクかけて!」
誠「いや。いつもみたいに普通にカツラかぶってスカートだったけど?でも、別にそういう事で出ていったんじゃないんだけど…」
凛「え?そうなんですか?なんだ〜、よかった」
誠「………。…なぁ、そのネックレス……」
凛「え?」
誠「ちょっと見せてくれ!…これ……。このネックレス、どうしたんだ!?」
凛「彼氏に…もらったんです」
誠「彼氏?誰?その彼氏って!名前は!?」
凛「『水野彰』ですけど…」
誠「『水野彰』!?まさか………」
凛「どうかしました?」
誠「あ、いや。何でもない。ごめん。勘違いだったみたいだ」
凛「…はぁ……?…えっと、じゃあ私はこれで…。ありがとうございました!」

*凛、上手へ退場。

誠「…彰君……。…そう、彰君が……。やっぱり、生きてたんだ……。…こんなに、すぐ近くにいたなんて…………。(ケータイを取り出して電話をかける)…もしもし、健ちゃん?」

父、非常口のドアより登場。

父「あぁ、誠?彰君ならさっき見つけたぞ。気を失って道端に倒れてたから家まで連れて来て寝かせたんだけど、彰君一人置いてそっちには戻れねーわ。凛が帰って来たら戻るけど〜」
誠「いや、いいよ。今日は、店休みにするからさ」
父「え!?急にか?」
誠「大丈夫だよ。どうせこんな小規模の店なんだから。…それより、健一に大事な話があるんだ。今から、そっちに行ってもいいか?」
父「え?…あ、ああ」
誠「…じゃあ、また後で(電話を切る)」
父「…?何だ、いきなり。大事な話って……」

父、非常口のドアへ退場。

誠「…運命って、残酷……」

暗転。
照明つく。凛の家。彰(服装変わってる)がソファで寝ている。

彰「…ん。(起き上がる)……ここは………?…そっか、僕、道で倒れて……」
凛「ただいま〜。あ、明かりついてる。お父さん?お父さんいるの〜?」
彰「え?ど、どうしよ、誰か来た。えっと、ど、どっか、隠れなきゃ〜。あ!(とっさにソファの後ろに隠れる)」

*凛、上手より登場。

凛「お父さん?…あ!またソファの後ろなんかに隠れて〜。脅かそうってったってもう引っ掛からないわよ〜!」
彰「わっ!」
凛「きゃ!?え?だ、誰よ、アンタ!勝手に人の家に!誰か!誰か助けてー!」
彰「え!?い、いや、違う!誤解だ!僕だよ、凛さん!(凛の腕を掴む)」
凛「変態!放して!(彰の手を振りほどく)…え?」
彰「凛さん…」
凛「…あ、彰君?え?どうしてここに…。ってゆうか、何で隠れてんの?」
彰「え?あ、いや、その…何でだろう?」

父、下手より登場。

父「お、気がついたか」
彰「健一さん!」
父「服濡れてたから、今乾燥機で乾かしてるぞ」
彰「あ、す、すみません…」
父「はっはっは。ま、そんなに気にすんなよ!お、凛、帰ったのか」
凛「ねぇ、ちょっと待って。彰君と知り合いなの!?」
父「え?…彰君、って……。お前、彰君知ってるのか?」
凛「知ってるも何も、(彰を引き寄せる)私の彼氏よ、水野彰君!」
父「水野!?何!?お前が水野かーーー!!!」
彰「え?あ、まぁ、『水野』が一応名字ですけど…」
父「そうか、お前が…『水野』なのか…。そうか。凛をよろしく頼むな!そうだ、今日は泊まっていけ彰君!」
彰「…え?で、でも…」
父「遠慮はいらねぇ!な?凛もその方がいいだろ〜?」
凛「え?ちょ、ちょっと、お父さんどうしちゃったの!?『彼氏なんて許さんぞー!』とか言ってたクせに!」
彰「え?『お父さん』て…。…健一さん、凛さんのお父さんなの!?」
凛「そうよ。浜松健一」
彰「…お互いの名字知らないって、なんかすごい不幸だね」
父「(ネックレスに気がついて)ん?凛、お前こんなネックレス持ってたか?」
彰「あ、それは、今日僕があげたんですよ。そのネックレスに書いてある日が、ちょうど凛さんの誕生日と同じだったから」
父「へぇ〜。ちょっと、見せてくれよ」
凛「(ネックレスを外して、父に渡す)汚さないでよ?」
父「…ホントだ。妙な偶然だなぁ〜」
凛「ま、どうでもいいけど、仕事はどうしたのよ?」
父「ああ、さっき誠から電話あって、今日は休みにするって」
凛「あ、そうなの?」
父「ああ」
彰「………」
父「(彰をちらっと見てから)あー、凛、お前夕飯の前に風呂入って来いよ。湧かしてあるから」
凛「え?…うん、わかった」

凛、下手へ退場。

父「…彰君」
彰「(遮って)僕、マコちゃんの事、すごく好きだった。親みたいな人だって、そう…思ってたのに…。なのにマコちゃんは、僕の事……」
父「(彰を抱き寄せる)ああ、わかってる。わかってるよ。……でもな、彰君。誠、ホントは苦しかったんだ。彰君が悩んでる姿見て、ずっと胸を痛めてたんだ。自分とそっくりだから、って」
彰「………」
父「…誠もな、小さい頃親に捨てられて、彰君と同じような思いして生きて来たんだ。でも、何でこんなに同じなんだ、って思って、逆に悲しみが怒りになっちまったみてーだ」
彰「……え?」
父「…だから、あんな事本当は心ん中じゃ、少しも思ってないよ。誠は、本当は彰君の気持ち、一番わかってる。あの後、すごい後悔してた。『アタシ、何言ってるんだろう』って…」
彰「…マコちゃん……。…僕……。…マコちゃんの事、どうして信じられなかったんだろう……。マコちゃんがあんな事言う人じゃない、って…わかってるのに……なのに…僕……」
誠「彰君」

誠、上手より登場。

彰「…マコちゃん!」
誠「…ごめんな、彰君。…僕、あんな事言うつもりじゃなかったんだ。…ごめん」
彰「…マコちゃん……。ううん。僕、嬉しいよ。マコちゃんが僕の事、そんなに思っててくれたなんて。僕の方こそ、マコちゃんの事信じられなくて…ごめん」
誠「彰君…。ううん、ありがとう……」
父「っと〜、誠、こんな時に悪いがな、何で玄関のチャイム鳴らさなかったんだ?住居不法侵入だぞ〜?」
誠「ごめんごめん。そっち(観客席側)の窓から中の様子見てたんだけど、なんか鳴らしづらい雰囲気だったからさ〜」
父「何!?覗きまでしたのか、このヤロ〜!って、いや〜ん、カーテンが全開じゃないの!健ちゃん、気が付かなかったわ〜!(カーテンを閉める動作)」
彰「ぷっ。はは、ははははは!」
父「…彰君?」
彰「あ、ごめんなさい。初めて見たんで、健一さんのオカマモード」
父「あら〜、そうだったかしら、うっふ〜ん♡」
誠「健一気持ちわる〜い」
父「何!?お前、オカマクラブのマネージャーしてんのにそりゃねーだろ〜」
誠「オカマにもタイプがあるのさ。健ちゃんみたく趣味でやってるオカマさんと、その道を極めた真のオカマさんが。真のオカマさんは、健一みたいに気持ち悪くないんだよ。こんなカツラじゃなくて(父のカツラを取る)、ちゃんと地毛だし」
父「なるほど…」
彰「っていうか、プロとかアマとかあるんですね、オカマさんにも」
誠「全く、これだからダメだ。わかってない奴は。…それより……。…彰君、悪いけど、ちょっと席をはずしてくれる?僕、健ちゃんに大事な話があるんだ」
彰「え?…あ、はい。わかりました」

彰、下手へ退場。

父「…で、何だよ?その、大事な話っつーのは(ソファに座る)」
誠「櫂君の事さ」
父「…櫂、って……」
誠「お前の息子で、凛ちゃんの双子の弟の櫂君の事」
父「…お前、何で知ってるんだ?凛に双子の兄弟がいるなんて、オレ、そんな事一度もお前に……」
誠「清美に聞いた」
父「清美に?お前、清美の事知ってるのか?」
誠「…ああ」
父「…清美は、今どうしてるんだ?」
誠「さっき、店で話したよな?私の心の支えになってくれた、って人の話…」
父「え?あ、ああ」
誠「…それが、清美なんだ」
父「そうだったのか…。…え?でも、その人って……」
誠「ああ、亡くなったよ、交通事故で。…清美がお前と別れて、たぶん一年ぐらい経った頃だった。清美は、櫂の容態がちょっと悪いからって言って、櫂君を連れて病院へ向かったんだ。けど、その時に、飲酒運転をしていた乗用車に跳ねられて…」
父「………!」
誠「…僕が駆けつけた時には、清美は、もうすでに冷たくなってた。…信じられなかった。自分の目に写っているものを、すべて否定したかった……」
父「…どうして、今まで黙ってたんだ?」
誠「…知らなかったんだよ。清美の旦那さんが健ちゃんだったなんて。さっき凛ちゃんが店に来た時に知って…。…凛ちゃん、清美にそっくりだな。メガネは遺伝かな?」
父「……それじゃあ、櫂も死んだのか?」
誠「(顔を横に振る)近くにベビーカーは転がってたけど、…遺体は、見つからなかった。救急隊員の人の話によると、清美は死ぬ前、櫂がどこか行っちゃう、って言ってたらしいんだ。…でも、その付近をいくら探しても、櫂君は見つからなかった」
父「…そうか……」
誠「…僕、櫂君にネックレスをあげたんだ。高校の美術の時間に作った手作りのネックレスを…。ちょうどそのネックレスが完成した日が、櫂君の誕生日だったから…」
父「…え?」
誠「そこにあるネックレス、それが私が櫂君にあげたものなんだ。凛ちゃんがしてたから、驚いたよ。それで凛ちゃんに、それどうしたの?って聞いたら、彼氏にもらった、って言うから…」
父「(立ち上がる)ちょっと待て。…それじゃあ……」
誠「…ああ」
父「…まさか、そんなワケねぇだろ?…彰君もきっと、このネックレスをもらったんじゃねぇのか?」
誠「…その可能性はあるけど、でも……」
凛「それは彰君のだよ!」

凛、下手より登場。

凛「彰君、言ってたもの。草むらで倒れてるのを発見された時に付けてた、って!」
父「凛!?」
誠「…凛ちゃん、聞いてたのか!?今の話」
凛「…はい。始めからずっと……。…先に彰君にお風呂入ってもらう事にして、それでこっちに戻って来たら、井上さんが来てるから……。…でも、そのネックレス、彰君…本当に、付けてた、って…言ってたの」
父「………。…なんつー事だ……。…じゃあ、彰君は……。彰君は………」

彰、下手より登場。

彰「凛さーん。お風呂場の電気のスイッチって、どこにあるの?暗くて見えないんだ」
凛「………」
彰「凛さん?…どうしたの?」
父「…お前が櫂なのか……」
彰「え?」
父「………。(彰を抱きしめる)…ごめんな。…今まで、辛い思いさせたな」
彰「………?(ボー然状態)」
父「…おかえり、櫂」
凛「………。(笑顔で)おかえり!」
誠「………。(拍手をする)」
彰「………えっと、あの、すみません。…状況、説明してもらっていいですか?」

暗転。

彰「えーーーーー!?」

照明つく。

彰「え?じゃ、じゃあ…僕……」
父「ああ!お前は捨て子なんかじゃないぞ!正真正銘、オレの息子だ!」
彰「…そんな……」
父「何だ?オレが父親じゃ、不満だっていうのか?」
彰「い、いや、そうじゃないですけど…。…僕、ずっと、本当の両親は僕の事なんて必要としてないんだろう、って…邪魔だと思われてるんだと思って……。だって、草むらに投げ捨てられてた、って施設の人に聞かされてたから…」
凛「きっと、何もわからないままハイハイして遠くまで行っちゃったんだね」
彰「……でも、よかった!僕、捨てられたんじゃなかったんだ!」
父「当たり前じゃないか〜!こんなかわいい息子を誰が捨てるかよ〜!」
誠「出た。親バカ」
凛「…でも、お母さんは、死んじゃったんだ……」
彰「…凛さん……」
誠「そうだな…。よし!今度、皆で清美の墓参りに行こう!ちょっと遠いけど、僕が車運転して連れてってやる!」
凛「本当ですか?」
誠「ああ、本当だ!」
父「じゃあ、ヒマワリを持っていかねーとな」
凛「ヒマワリ?お母さん、ヒマワリが好きだったの?」
父「ああ。だからプロポーズの時も、清美にたくさんのヒマワリ持って告白したんだぜ!」
凛「へぇ〜」
誠「普通、バラだろ。バラ」
父「なんだよ、お前ヒマワリの花言葉知ってるのか〜?」
誠「何?」
父「あなたは素敵、って言うんだぞ」
誠「だから?」
父「だから、ってお前…」
誠「さて、じゃあ今日は彰君の歓迎パーティーだな!腕ふるって、ごちそう作るぞー!キッチン借りるな〜」
父「あ、お前勝手に…。まぁ、いいや。オレも手伝う」
誠「健一はいい。料理下手だから」
父「そんなことねぇよ!いつも、ちゃんと自炊してんだからな〜!」

父・誠、下手へ退場。

凛「…あの、彰君」
彰「(遮って)僕と凛さん、姉弟なんだ!なんか、すごい信じられないな〜」
凛「…彰君……」
彰「テレビとかでは見た事あったけど、姉弟を好きになっちゃうなんて本当にあるんだね。なんかびっくりだよ」
凛「…そうだね」
彰「………。…失恋、しちゃったなぁ〜………」
凛「…うん」

  間

凛「ねぇ、彰君」
彰「何?凛」
凛「え?」
彰「だって姉弟なんだから、呼び捨てで呼ぶのが普通じゃない?」
凛「…そうだけど……ショックじゃないの?私と姉弟だった、って事」
彰「…そりゃ、ショックだけど……。…でも、別に凛は、僕を好きだったワケじゃないでしょ?試しに付き合ってみようと思っただけで」
凛「え?…あー、えーっと……その〜………」
彰「ね?だから結局は、僕の片思いなワケだし…」
凛「……うん、まぁ〜そうだね」
彰「…ねぇ、凛さんて、それが素の性格なの?」
凛「そーよ。学校じゃいいコちゃんぶってるの。悪い人でしょ〜。皆には内緒ね」
彰「…うん」
凛「あはは。まぁ、将来私みたいな人に騙されないように気を付けてね〜」
彰「…でも、いいや。これでなんか割り切れたような気もするし」
凛「そう?」
彰「うん。…で、何?凛」
凛「え?」
彰「ほら、さっきなんか言いかけてたでしょ?」
凛「あ、うん。…私、思いついたんだけどね。今度の文化祭、ウチのクラス、劇やらない?この、私達の出来事。もちろん、私達の事だっていうのは、クラスの皆には伏せてだよ!」
彰「…うん。それ、いいかもね」
凛「でしょ〜?あ、私の二面性は伏せてね!」
彰「はいはい。じゃあ、台本はどうする?」
凛「私達で書く!」
彰「よし!じゃあ、早速構想練ろう!(ソファに座る」
凛「うん!(ソファに座る)」

*父、下手より登場。

父「(泣いている)」
凛「…お父さん?どうしたの?」
父「タマネギが目にしみた…」
凛「え?」

誠(ボウルを持っている)、下手より登場。

誠「だから健一!これはサラダにするんだから、みじん切りにしないでって言ったじゃんか。どうするんだよ、これ〜」
父「シーチキンにあえてサラダディップにする…」
誠「全く。だから手伝わなくていいって言ったのに」
父「ごめん…」
誠「いいから、洗面所で目洗って来いよ!」
父「目が開かないから、見えない…。洗面所どこ…?(上手側へ行く)」
誠「知らないよ!僕、健ちゃんの家の中入ったの初めてなんだからさ!」
凛「そっち玄関!もぅ、こっちだよ!お父さん!」
彰「あははは」
父「笑い事じゃねぇよ〜」
彰「ほら、早く目洗わないと。父さん!」
父「彰君…」
彰「櫂でいいよ。だって、それが僕の本当の名前なんでしょ?」
父「おう!そうだな、櫂」
凛「櫂!」
三人「(笑う)」

凛・父・彰にスポットライト(ストップモーションになる)。誠にスポットライト。

誠「どうやら、あの三人が家族になるのに、そんなに時間はかからなさそうだな…」

照明、元に戻す。凛・父・彰、笑っている。誠、三人に寄り、話し掛ける。
*幕。

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