ドリーミングガール 恋愛

「切ない運命。それは純愛。」 才能はあるが自分勝手なアーティストが交通事故を起こし、事故の後遺症で記憶喪失となった被害者と病院で恋に落ちてしまう。 約126分
友里香 83 0 0 05/04
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第一稿

◯水道橋駅西口(夕)
   沢山の人が行き交う。
   リクルートスーツ姿の宮田日夏梨(21)が疾走している。

◯東京ドーム・全景(夕)

◯同・正面入り口(夕)
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◯水道橋駅西口(夕)
   沢山の人が行き交う。
   リクルートスーツ姿の宮田日夏梨(21)が疾走している。

◯東京ドーム・全景(夕)

◯同・正面入り口(夕)
   Dawn Dusk Night LIVEの看板。
   開場15:00 開演17:00の文字。

◯同・ステージ裏・廊下(夕)
   沢山のスタッフが走り、行き交う。

◯同・同・男子トイレ(夕)
   個室から派手な衣装を着た男がよろめきながら出て来る。
   片手には酒瓶。
   鏡を見つめる男の背中。
   男はその場に倒れる。

◯水道橋駅西口(夕)
   疾走する日夏梨。
   青信号の点滅。
   日夏梨、走る。腕時計を見る。
日夏梨「早く早く早く早く」
   突然よろめく。
日夏梨「きゃ!」
   日夏梨、右足のパンプスを見る。
   底が剥がれているパンプス。
日夏梨「嘘!」
   赤信号。
   慌てて走る。
日夏梨「いっ!」
   足を抑える。
   クラクション。
日夏梨「すいません!すいません!」
   頭を下げ、足を抑えながら走る。
   スマホが鳴る。
   慌てて電話に出る。
日夏梨「ああもしもし!結月!?」
結月の声「日夏梨!今どこ!もうライブ始まっちゃうって!」
   通行人とぶつかる。
日夏梨「きゃ!すいません!今ちょうど駅着いたとこ!全力で走ってるって!」
   日夏梨は足を引きずりながら走り出す。

◯同・控え室(夕)
   内藤隼人 (22)が立っている。地味な衣装で見栄えはしない。
   ドアを開けるスタッフ1。
スタッフ1「本番10分前です。スタンバイお願いします!」
   内藤が部屋を見渡し、
内藤「尚也は?見なかった?」
スタッフ1「いないんですか!?」
   内藤、舌打ちをする。

◯東京ドーム付近(夕)
   日夏梨が階段を登っている。足を抑える。
   パンプスを両足脱ぎ、走る。
結月の声「後5分だよ!日夏梨この日のために今まで頑張ってきたんでしょ!?尚也さんに会える
 んだよ!後5分で!」
日夏梨「絶対間に合わせてみせる!」
   裸足で走り出す日夏梨。

◯東京ドーム・全景(夕)
   T「ドリーミングガール」

◯同・廊下(夕)
   一人立っている平林結月(22)。
   裸足で走る日夏梨。
結月「日夏梨!」
   結月が手を振る。
日夏梨「結月ごめん!」
   結月が日夏梨に駆け寄る。
結月「早く!もう後1分もないって!どうしたの!その足!」
日夏梨「いいから早く!」
   日夏梨と結月が走る。

◯同・メインステージ裏(夕)
   内藤がよろめく一ノ瀬尚也(22)を連れてくる。
   岸本浩一(36)が駆け寄る。
岸本「どこにいた?」
   内藤が一ノ瀬の耳にイヤーモニターを付ける。
岸本「酒臭いぞ…」
内藤「トイレでぶっ倒れてました」
岸本「またか、酒なんてどこにもなかっただろ」
内藤「隠し持ってたんです」
   頭を抑える一ノ瀬。
一ノ瀬「ああ頭いてえ」
岸本「おい!しっかりしろ!」
   一ノ瀬を揺さぶる岸本。
岸本「お前がいなかったらどれだけの労力と金が無駄になると思ってんだ!」
   一ノ瀬は岸本を見下す。
内藤「岸本さん、一曲終わったら尚也一旦下げましょう」
岸本「そうだな。伝えてくる」
   岸本が走っていく。
一ノ瀬「できるって」
内藤「ふざけんな、こんな状態で2時間持つわけないだろ」
一ノ瀬「俺のラストステージ…」
   鼻で笑う一ノ瀬。

◯同・アリーナ客席(夕)
   日夏梨と結月が人をかき分けていく。
日夏梨「はあ間に合ったあ!」
結月「間に合ったあ!」
   腕時計を見る結月。
結月「後10秒…」
日夏梨「ひいい!」
   日夏梨が飛び跳ねる。
結月の声「7…6…」
   日夏梨、結月を揺さぶり笑う。
結月「5…4…」
結月・日夏梨「3!」
結月・日夏梨「2!」
   パンプスを踏みつぶす日夏梨の足。

◯同・客席全景(夕)
   沢山の人が座席を埋め尽くしている。
   明かりが消える。
   歓声。

◯同・メインステージ(夕)
   ステージがせり上がる。
   一ノ瀬、内藤が立っている。
   一ノ瀬を照らす強い光。
   片目をつぶる一ノ瀬。
   ステージの両サイドの大画面に映る一ノ瀬の顔。
   両目を閉じ、俯く一ノ瀬。
   内藤は一ノ瀬の背中を見つめる。

◯同・メインステージ袖(夕)
   スタッフ1が走っている。
スタッフ1「岸本さん」
   一ノ瀬を見つめる岸本。
   岸本に駆け寄るスタッフ。
スタッフ1「無理ですよ、このまま暗転させます」
岸本「大丈夫だ」
スタッフ1「いやでも1曲目から独奏ですよ」
岸本「何が何でもやるよあいつは」
   岸本は一ノ瀬をじっと見つめる。

◯同・アリーナ席(夕)
   結月と日夏梨が顔を合わせ叫ぶ。
結月・日夏梨「尚也さーん!」

◯同・メインステージ(夕)
   俯いている一ノ瀬。
   一ノ瀬を見つめる内藤。一歩足を出す。
   ギターを握る一ノ瀬の手。
   一ノ瀬、目を開ける。
   高速で指を動かす一ノ瀬。
   歓声。
   内藤、立ち止まる。

◯同・ステージ裏・廊下(夕)
   モニターの周りに集まるスタッフ。
   モニターにはギターを弾く一ノ瀬の姿。

◯同・メインステージ袖(夕)
   岸本、スタッフらが一ノ瀬を真剣に見つめている。

◯同・客席全景(夕)

◯同・メインステージ・全景(夕)
   両サイドの大画面にはギターを弾く一ノ瀬の姿。

◯同・同(夕)
   ギターを弾く一ノ瀬。
   凄まじい速さで動く指。
   一ノ瀬、ギターから両手を離す。
   前を向く。
   歓声。
   暗転。

◯居酒屋(夜)
   スーツ姿の客で賑わう店内。
   結月と日夏梨がビールを流し込んでいる。
   乱雑に置かれたパンプス。
結月「はあ!」
日夏梨「ぱあ!」
   結月が日夏梨にDawn Dusk Nightのグッズが沢山入ったカバンを渡す。
結月「はい日夏梨、ご注文通り尚也さんのグッズは全部買いましたよー」
日夏梨「ありがとう!結月!お金間違ってなかった?」
結月「大丈夫。今回の尚也さん超かっこいいから早く見てみて」
   日夏梨が写真を取り出す。
   尚也が映っている写真。
日夏梨「ほんとだ!かっこいい尚也さん」
   結月が内藤の写真を日夏梨に見せる。
結月「私の隼人さんも負けてないから」
日夏梨「何が私のだよー。悪いけど尚也は誰にも勝てないから」
結月「何が尚也だよ」
   日夏梨、写真を見つめる。
   結月がスマホを見て、ため息をつく。
日夏梨「どうしたの?」
   結月、日夏梨にスマホを渡してビールを勢いよく飲む。
   日夏梨がスマホを見る。
   不採用通知の文字。
日夏梨「何社受けた?」
結月「これで22社目」
日夏梨「そっか…」
結月「日夏梨は?」
日夏梨「明日でぴったり30…」
   見つめ合う日夏梨と結月。
結月「20社超えてくるとさすがに心折れそうになってくるよね」
日夏梨「うん。不採用通知が届く度に自分、否定されてるみたいっていうか…誰も私のとなんか必
 要としてないのかも…」
   結月と日夏梨が泣きそうな顔で見つめる。
結月「うええー」
結月・日夏梨「乾杯!」
   二人同時に勢いよくビールを飲む。
日夏梨「そういえばさ、今日の尚也さん何か変じゃなかった?」
結月「え?何変って」
日夏梨「何か顔色悪そうっていうか」
結月「そう?変わらずイケメンだったじゃん」
日夏梨「うーん」
   日夏梨、写真を見つめる。
結月「好きなだけ見つめててもいいけど、そろそろ日夏梨は卒業も考えないとねえ」
日夏梨「え?卒業ってどういうこと?」
結月「このまま一生彼氏できなくてもいいわけ?」
日夏梨「それとこれとは話が…」
結月「別じゃない。尚也さんに全力すぎると身の回りの身近な恋見逃しちゃうよ」
日夏梨「…今は就活のことで頭いっぱいだし」
結月「学生最後の年だよ」
日夏梨「しょうがないじゃん…尚也さん以外好きになれないんだから…」
   日夏梨、再び写真を見つめる。

○都内某所高級ホテル・大広間(夜)
   大勢の人がグラスを掲げる。
全員「乾杯!」
   ワインを飲み干す一ノ瀬。徐に歩き出す。
   グラスを掲げる内藤。そのままグラスをテーブルに置く。内藤が一ノ瀬の後を追う。

○同・ロビー(夜)
   一ノ瀬が窓の外を見つめる。
   内藤が一ノ瀬を見つめる。
内藤「大丈夫か?」
一ノ瀬「大丈夫だっつってんだろ。おせっかい野郎…」
   鼻で笑う一ノ瀬。
   近藤義男(56)が歩いてくる。
   頭を下げる内藤。
内藤「お疲れ様です社長」
   一ノ瀬が振り返る。
近藤「お疲れ様」
   一ノ瀬を見る近藤。
近藤「全く…君を守ってあげられるのは人気がある今しか無理なんだ。いい加減大人になりなさ 
 い」
一ノ瀬「やめたいって何度言ったら聞いてくれるんですか?こんな問題児さっさとクビにしてくれ
 て構わないんですよ」
近藤「やめてどうするつもりなんだ」
   一ノ瀬は窓の外を見つめる。
一ノ瀬「…俺はあんた達のために音楽やってるんじゃない」
   一ノ瀬が去っていく。
内藤「なんでやめさせないんですか?このままだとあいつ、いつか壊れますよ」
近藤「分かるだろ。今やめてもらっては困るんだよ。一ノ瀬には2年先のスケジュールまで決まっ
 てるんだ」
   近藤が去っていく。
   内藤が一ノ瀬を見つめる。

○同・廊下(夜)
   多岐川ノア(22)がマネージャーに
   上着を投げ渡す。
ノア「これクリーニング出しといて、明日までに返してね」
   マネージャーが書類を落とす。
ノア「それから今日一緒に撮影したおチビさんのモデル、名前なんだっけ?あの子共演NGね」
マネージャー「そんなこと出来ません。週末から新しく連載される雑誌の専属モデルなんですよ」
   ノアは振り返り、手を出す。
ノア「早くカード頂戴、ていうか早く開けてよ」
   マネージャーがポケットからカードを取り出す。
   マネージャーの後ろを通る一ノ瀬。
   ノアが一ノ瀬を目で追う。
ノア「一ノ瀬尚也…」
   ノア、一ノ瀬の後を追う。
   マネージャーがノアに手を伸ばす。再び書類が落ちる。
マネージャー「あちょノアさん!」
   × × ×
   ポケットを探る一ノ瀬。
ノアの声「尚也さん?」
   一ノ瀬、ノアを一瞥する。
一ノ瀬「誰?俺のファン?」
ノア「はい!スパイシーガールの専属モデル多岐川ノアです。尚也さんの大ファンなんです!」
   一ノ瀬、ノアに微笑み、上着のポケットを探る。
ノア「今日東京ドームでライブだったんですよね!」
一ノ瀬「ああ!今人気のモデルの子か…」
ノア「え?知ってくれてたんですか!?嬉しい!」
一ノ瀬「カードがねえ…」
   一ノ瀬がスマホを取り出す。スマホをいじる。
一ノ瀬「ちょっとごめんね」
   スマホを耳に当てる一ノ瀬。
   ノアが首を傾ける。マネージャーがノアの腕を掴む。
マネージャー「ちょっとノアさん何してるんですか?」
ノア「離してよ」
   マネージャーの腕を振りほどくノア。
   一ノ瀬がノアを見る。
マネージャー「ノアさん!お願いします!」
   ノアの腕を再び掴むマネージャー。
マネージャー「これ以上、記事出されたら私クビにさせられるんです」
   ノアの耳元で囁くマネージャー。
ノア「そんなこと知らないわよ」
   腕を振りほどこうとするノア。
   一ノ瀬はノアをじっと見つめ、スマホをポケットにしまう。
   マネージャーの手を掴む一ノ瀬。
一ノ瀬「そんな無理やり連れてくことないだろ」
   ノアが一ノ瀬の腕に掴まる。
一ノ瀬「少しくらい一人にさせてやれって」
   マネージャーがカードをノアに渡し、去っていく。
   ノアは一ノ瀬の腕に掴まり、一ノ瀬を見つめる。
   一ノ瀬はノアを見つめる。

○日夏梨のアパート・全景(夜)
   ぎこちない足取りの日夏梨。立ち止まる。

○同・玄関前(夜)
   郵便受けに向かって拝んでいる日夏梨。
   手紙を取り出し、部屋に入る。

○同・日夏梨の部屋(夜)
   日夏梨がベッドに倒れ込む。
   日夏梨の手には書類。
   不採用の文字。
   日夏梨はボーッと一点を見つめている。

○都内某所高級ホテル・ノアの部屋(夜)
   ベッドに寝ている裸姿の一ノ瀬とノア。
   一ノ瀬の腕にうずくまって眠るノア。
   一ノ瀬は窓の外を見つめている。
   起き上がる一ノ瀬。服を着る。部屋から出て行く。

○立川駅・ホーム(朝)(日替り)
   沢山の人が並んでいる。
   先頭でリクルートスーツにスニーカーの日夏梨がパンプスの底に接着剤を付けている。
日夏梨「ふっ!」
   パンプスをギュッと抑える日夏梨。

○株式会社DDN・待合室(朝)
   スーツを着た人が沢山座っている。日夏梨はパンプスを見る。
   接着剤にホコリが付いている。
   ホコリを取ろうとする日夏梨。なかなか取れないホコリ。
社員の声「エントリナンバー0218、宮田日夏梨さん」
日夏梨「あ、はい!」

○同・面接室(朝)
   日夏梨が椅子の横に立つ。
   男性社員2名が座っている。
男性社員1「エントリーナンバー0218、
 宮田日夏梨さんで間違いないですか?」
日夏梨「はい。よろしくお願い致します」
男性社員2「どうぞ座ってください」
日夏梨「失礼します」
男性社員2「まず志望動機を聞かせてください」
日夏梨「はい。御社の手がける様々なイベントに惹かれました。同じ業界の中でも運動会や町おこ
 しや…ライブ等の小規模のイベントを御社程沢山行い、地域の人々とのコミュニティの輪を大切
 に広げていく会社は無かったので、志望しました」
男性社員1「じゃあ興味があるのは、地域イベントということですね」
日夏梨「はいそうです」
男性社員2「自己PRをしてもらえますか」
日夏梨「はい。私は人とコミュニケーションを取るのが得意です。大学ではバンドサークルに入っ
 てました。サークルではよく演奏会場を探して交渉したりして…」
   男性社員1が日夏梨の足元を見る。
   ホコリが付いて汚いパンプス。
男性社員1「君はうちには向いてないと思うな」
日夏梨「え…」
男性社員1「うちは接客が命なんだよ。君みたいに身だしなみがきちんと出来ない子は論外だか
 ら」
   日夏梨が俯く。
男性社員2の声「…そうだな。君うちで何社目ですか?」
   日夏梨が手を握りしめる。
男性社員2の声「宮田さん?」
日夏梨「すいません…ありがとうございました」
   日夏梨が立ち上がる。
   ドアの前で再び一礼する日夏梨。
日夏梨「ありがとうございました」
   面接室から出て行く日夏梨。

○赤坂ビル街
   ボーッと歩く日夏梨。
   日夏梨の横を通る一台の赤い車。

○某テレビ局・駐車場
   赤い車が止まる。
   運転席から降りる岸本。

○車内
   後部座席に横たわり眠る一ノ瀬。
   ドアを開ける岸本。
   一ノ瀬、眉間に皺を寄せる。
岸本「ほら起きろ」
   一ノ瀬を起こす岸本。
岸本「昨日のクラブ、出禁だからな。聞いてるのか?もう二度と行くなよ」
一ノ瀬「ああ海」
岸本「あ?」
   一ノ瀬、目をつぶったまま。
一ノ瀬「海行きてえ」
岸本「バカ言うな」
   一ノ瀬を車から降ろす岸本。

○同・控え室
   一ノ瀬が岸本に連れられ部屋に入る。     
   内藤、一ノ瀬を鏡越しに睨む。
   ソファに倒れ込む一ノ瀬。
岸本「隼人、尚也見張っててくれ」
   鏡に映る岸本の顔。
岸本「頼んだぞ」
   岸本が電話に出ながら、部屋を出て行く。
   苦しそうな表情の一ノ瀬。
内藤の声「おい。起きろ」
一ノ瀬「なんだよ…」
   内藤が一ノ瀬の胸ぐらを掴む。
内藤「起きろっつってんだよ!」
   一ノ瀬、内藤を見つめる。
内藤「いい加減にしろよ。毎回毎回、尻拭いされんのはこっちなんだよ。今まで何回フォローして
 やったと思ってんだよ」
   笑う一ノ瀬。
内藤「何がおかしい?」
一ノ瀬「はっきり言えよ」
内藤「あ?」
一ノ瀬「目障りならそうはっきり言えっつってんだよ」
   一ノ瀬が内藤の手を振り払う。
一ノ瀬「自分のためだろ?俺に手貸したり、周りに良い顔すんのだって全部、お前自分のためだ
 ろ」
   一ノ瀬を見つめる内藤。
一ノ瀬「富とか名声とか、俺はそんなものには興味ねえ」
   再び一ノ瀬が笑う。
一ノ瀬「でも生憎、お前は俺がいねえと注目されねえもんな」
   内藤が一ノ瀬を殴りかかろうとする。
   手を止める内藤。一ノ瀬を睨む。
   真剣な目で内藤を見つめる一ノ瀬。
内藤「さっさとやめろよ」
一ノ瀬「やめてやるよ。今すぐ」
   内藤を睨む一ノ瀬。

○同・廊下
   スタッフをかき分け、一ノ瀬が走る。
   岸本がスタッフと話している。一ノ瀬、岸本のポケットから鍵を盗む。再び走る。
   岸本、一ノ瀬を追う。

○同・駐車場
   一ノ瀬が走る。赤い車の運転席に乗る。
   岸本が走る。
岸本「尚也!おい!やめろ!」
   赤い車が猛スピードで去る。

○同・同・出口
   ロケバスが出てくる。ロケバスの横を猛スピードで抜かしていく赤い車。

○同・同
   走る岸本。岸本の背後を追ってくる内藤。
岸本「尚也!」
   立ち止まる岸本。振り返り、走ろうとする。立ち止まる内藤。岸本、内藤に勢いよく掴みか
   かり、
岸本「なんで止めなかったんだ!?」
   岸本が走る。
   息を切らす内藤。

○赤坂ビル街
   ボーッと歩く日夏梨。
   スマホが鳴る。
   日夏梨、スマホを見る。
結月からのメッセージ「内定やっともらえたよー!」
   日夏梨、スマホをじっと見つめる。通行人とぶつかる。ヒールの底が剥がれる。倒れる日夏
   梨。
通行人の男性の声「邪魔だな」
   路上のスマホ。手に取る日夏梨。足を抑えながら立ち上がる。立ち尽くしたまま俯く。
   唇を噛み締める日夏梨。
   歩行者側の青信号が点滅する。
   ×   ×   ×
   赤い車が走る。

○車内
   一ノ瀬、真剣な目つきでハンドルを握る。スマホが鳴る。ポケットからスマホを取り出す。
   電話を切り、スマホを放る。

○赤坂ビル街
   車道の赤い車。車と車を縫うように走る。
   角を曲がる赤い車。
   車道側の赤信号。
   立ち尽くす日夏梨。涙が落ちる。
   スマホを握りしめる日夏梨の手。
   歩行者側の青信号の点滅。赤に変わる。
   車道に出る日夏梨の右足。底の剥がれたパンプス。
   日夏梨の背中。
   歩行者側の赤信号。
   日夏梨の右足が捻る。
   日夏梨、バランスを崩す。

○車内
   一ノ瀬、目が赤い。
   フロントガラス越しのバランスを崩す
   日夏梨の姿。
   目を見開く一ノ瀬。

○赤坂ビル街
   目を見開く日夏梨。

○車内
   ハンドルを思いきり切る一ノ瀬の手。

○赤坂ビル街
   路上に投げ出されるスマホ。
   赤い車が回転する。ガードレールにぶつかる。
   車のフロントガラスから一ノ瀬の体が飛び出す。
   路上の上のパンプス。日夏梨の裸足。

○病院・廊下
   2台のストレッチャーを押す沢山の看護師と医師。
   息を切らしている看護師が医師と顔を見合わせ頷く。
   1台のストレッチャーが左へ曲がる。
   1台のストレッチャーが右へ曲がる。

○同・手術室1
   看護師が医師に器具を渡す。
   心電図の音。
   人工呼吸器を加えている一ノ瀬。

○同・手術室2
   医師が心電図モニターを見て、器具を看護師へ渡す。
   心電図の警告音。
   人工呼吸器を加えている日夏梨。
   心電図モニターの波が止まる。
   医師が心臓マッサージをする。

○同・廊下(夜)
   真っ暗な廊下。
   看護師が急ぎ足で駆ける。
   窓には大量の雨が打ち付ける。
   雷が轟き、廊下が光る。

○同・一ノ瀬の個室(朝)(3日後)
   ベッドで眠る一ノ瀬。
   一ノ瀬の左手は手の指先から肩に掛けてギプスと包帯が巻かれている。
   花を飾る岸本。大量の花。大量の果物やジュース瓶。
   目を閉じている一ノ瀬。
   一ノ瀬の右手の指先が動く。
   目を開ける一ノ瀬。
一ノ瀬「病院…」
   岸本が振り向く。
岸本「尚也…」
   岸本はナースコールを押す。
岸本「お前丸3日間、意識が無かったんだ」
一ノ瀬「3日間……」
岸本「被害者の女性も一命は取り留めた。今は何とかご飯が食べられるまでにはなったそうだ」
一ノ瀬「ごめん…岸本」
岸本「謝罪するべき相手は俺じゃないだろ」
   医師と看護師が入ってくる。
   起き上がろうとする一ノ瀬。
   自分の左手を見つめ、固まる。
医師「そのまま横になってて下さい。私を見て下さい」
   医師は一ノ瀬の目にライトを当てる。
   一ノ瀬、横になるが目が泳ぐ。
医師「一ノ瀬さん。こっち見て下さい」
一ノ瀬「先生…」
   一ノ瀬が医師を見つめる。
医師「大丈夫ですね」
   聴診器を耳につける医師。
医師「ちょっと失礼しますよ」
   医師が一ノ瀬の胸に聴診器を当てる。
   一ノ瀬、酸素マスクを慌てて外し、医師の腕を掴む。
一ノ瀬「先生、俺…」
   医師が聴診器を外す。
医師「どうしました?」
一ノ瀬「俺…またギター弾けるんすか…」
   岸本、俯く。
医師「正直、何とも言えません。ただ、前に比べると思い通りに動かすことが難しくなるかもしれ
 ません。特に指先なんかは」
   一ノ瀬が枕に頭を落とす。

○同・廊下
   内藤がベンチに座っている。
   立ち上がり、去ろうとする。内藤の背後から岸本の姿。
   岸本、内藤を見て、
岸本「尚也の意識戻ったぞ」
   内藤が立ち止まる。
岸本「会わないのか。3日間毎日来てはそこに座って帰って。本当は心配なんだろ」
内藤「合わせる顔なんかないです。お互い」
   内藤が去っていく。

○同・診察室(7日後)
   看護師に押され、車椅子の一ノ瀬が出て来る。
   俯いている一ノ瀬。

○同・廊下
   車椅子の一ノ瀬。
一ノ瀬「…あの」
看護師「はい?」
一ノ瀬「俺の手って一生治んないんすか?」
看護師「一ノ瀬さんの左手は以前のように動かすことが難しいのは事実です」
一ノ瀬「…もう事故から一週間以上経ってんのに、ビクともしねえ。指先も」
看護師「一ノ瀬さん。でも…本人次第で結果は変わります」
一ノ瀬「俺次第?」
看護師「はい。その気になりさえすれば、前の生活を取り戻せる可能性はゼロではありません。全
 治9ヶ月っていうのはあくまで…」
   一ノ瀬が左手を触り、前を向く。固まる。
   車椅子の日夏梨の横顔。
   一ノ瀬、見つめる。
   日夏梨が看護師に向かって笑う。
   一ノ瀬、一瞬目を伏せ、再び見つめる。
   日夏梨の笑顔。
   日夏梨、一ノ瀬を見る。そしてボーッと見つめる。
   一ノ瀬、日夏梨を見つめる。
   見つめ合う一ノ瀬と日夏梨。
   一ノ瀬と逆方向に進む日夏梨。
   すれ違う。
   一ノ瀬、日夏梨の去った後を見つめ、数秒固まる。
看護師「一ノ瀬さん?一ノ瀬さん?」
一ノ瀬「え?」
看護師「結構良いこと言ってたつもりなんですけど…」
   姿勢を正す一ノ瀬。

○同・一ノ瀬の個室
   看護師に押され、車椅子の一ノ瀬が入って来る。
   岸本が花を飾っている。
岸本「今日は顔色が良さそうで何よりだ」
   ベッドに座る一ノ瀬。
   看護師、出ていく。
一ノ瀬「…俺の解雇の話進んでんのか?」
岸本「…お前をクビにするかどうかはまだ会議中だ。それよりも先に事故の件が先だ」
   一ノ瀬、俯く。
岸本「まず、被害者に謝罪しに行かなければならないんだが…本人には会わないで欲しいって」
   一ノ瀬、岸本を見る。
一ノ瀬「親御さんか?」
岸本「そうだ」
一ノ瀬「…仕方ない」
岸本「尚也の過失は、シートベルト着用義務の違反、スピード違反、信号無視だ」
   一ノ瀬が眉間にシワを寄せる。
一ノ瀬「信号無視?」
岸本「事務所の車だったから、これは弁償してもらうことになる。有罪になったら、相手の治療費
 や…」
一ノ瀬「待て。待て」
   一ノ瀬が岸本を見る。
岸本「なんだ?」
一ノ瀬「信号無視はしてない」
岸本「本当か?」
一ノ瀬「向こうが赤だった。目撃者くらいいるだろ」
岸本「それが…今調査中なんだ。ただ目撃者が現れる可能性は低いかもしれない。丁度人通りの少
 ない所だったからな…」
一ノ瀬「嘘だろ…」
   しばらく固まる一ノ瀬。一ノ瀬が左手を抑える。
一ノ瀬「俺も相手の人も命が助かったことは本当に良かったって思った。けど…こうなった原因
 は…俺だけのせいじゃねえ」
   岸本が一ノ瀬の左手を見つめる。
一ノ瀬「俺のこの手はもしかしたらもう前みたいには動かせなくなるかもしんねえんだよ」
   俯く一ノ瀬。

○同・廊下(夜)
   先の暗い廊下。

○同・一ノ瀬の個室(夜)
   ベッドで横になっている一ノ瀬。
   左手を触っている。
   天井を見つめる。

○同・廊下(3日後)
   一ノ瀬が乗る車椅子を押している岸本。
岸本「いいか、謝罪しに行くんだぞ」
一ノ瀬「…」
   車椅子を止める岸本。
岸本「一昨日話した信号の件は、俺が話すからお前は何も言うなよ」
一ノ瀬「…やっぱ俺、無理」
岸本「は?」
一ノ瀬「不本意なんだよ。俺が謝罪する理由は何もねえよ」
岸本「相手の女性が死んでたらどうしてた」
一ノ瀬「悪いけど、あれは自殺行為だ。それにもう俺は…音楽ができなくなる可能性だってある。
 音楽がない人生は…死ぬより辛い」
岸本「もう話が通ってるんだご両親には…」
一ノ瀬「悪い」
   × × ×
   一ノ瀬の車椅子を窓際に止める岸本。
岸本「自分で戻れるよな」
一ノ瀬「…ここで待ってる」
岸本「分かった」
   去って行く岸本。
   一ノ瀬が窓の外を見つめ、左手を見つめる。
   再び窓の外を見つめる。
   一ノ瀬、車椅子から右足を出す。
   ゆっくり立ち上がり、窓に右手をつき体を支える。
   歩こうとする一ノ瀬。
   2、3歩でバランスを崩し倒れる。
一ノ瀬「くっそ…」
日夏梨の声「大丈夫ですか?」
   一ノ瀬が声の方を向く。
   車椅子の日夏梨が一ノ瀬を見つめている。
   一ノ瀬、日夏梨を見つめる。
日夏梨「無理やり歩こうとしても、返って怪我しちゃいますよ」
一ノ瀬「早く、治したいんだよね」
日夏梨「心配しなくても骨は育ってくれてますよ。だから今私たちに出来ることはよく食べて、栄
 養を体に入れることです」
   日夏梨は笑顔でギプスの両足を撫でる。
   一ノ瀬が日夏梨の足を見て、日夏梨を見つめる。
一ノ瀬「なんで笑ってられんの?」
日夏梨「え?」
   首を傾ける日夏梨。
   微笑む一ノ瀬。
一ノ瀬「すげえポジティブなんだね」
日夏梨「病は気から。ですよ」
一ノ瀬「さっきから言ってることが、患者の言葉っつうか看護師みてえ」
日夏梨「そうです」
一ノ瀬「え?」
日夏梨「看護師さんが言ってました」
   笑う一ノ瀬。
   日夏梨が車椅子を動かす。
   一ノ瀬の前に差し出される日夏梨の手。
   一ノ瀬、日夏梨の手を見つめる。
日夏梨「お互い頑張りましょう」
   一ノ瀬、日夏梨と握手をする。
   立ち上がる一ノ瀬。
一ノ瀬「一ノ瀬尚也」
日夏梨「一ノ瀬さん…」
   日夏梨がボーッとする。笑顔が消える。
   日夏梨、一ノ瀬を見て微笑み、
日夏梨「初めまして。宮田日夏梨です。初めて病院で知り合いができました。嬉しい」
一ノ瀬「知り合い?」
   車椅子に座る一ノ瀬。日夏梨を見つめ、
一ノ瀬「…友達じゃなくて?」
   日夏梨が一ノ瀬を見つめる。
   × × ×
   車椅子姿の日夏梨と一ノ瀬が隣同士で話している。
日夏梨「そうなんですか?一ノ瀬さん見た目大人っぽいので年上だと思ってました」
一ノ瀬「だからタメでいいんだよ。それに尚也でいいから。俺も日夏梨って呼ぶし、ね」
   一ノ瀬、日夏梨を見つめる。
   日夏梨は一ノ瀬を見つめる。目線を下
   にを逸らす。
日夏梨「じゃあ…お互い就職活動だったんだあ…」
   一ノ瀬は日夏梨を見つめる。下を向き照れ笑い。
一ノ瀬「そう。結構大変だったよ。やっと一社内定もらえた矢先に…階段から大転倒」
日夏梨「そうなんだ…」
一ノ瀬「日夏梨は?」
日夏梨「内定はもらえてなかったみたい…一社も…」
一ノ瀬「みたい?」
日夏梨「私ね、記憶喪失なんだ。だから、前のことも、なんでこうなっちゃったのかも全然思い出
 せなくて…」
   笑う日夏梨。
日夏梨「自分の名前さえ思い出せなかった」
一ノ瀬「戻る可能性あるの?記憶」
   首を振る日夏梨。
日夏梨「分からないって」
一ノ瀬「そっか…」
日夏梨「今は親から教わって色々覚え直してるところ。こうなっちゃたのは交通事故に遭ったから
 なんだって」
一ノ瀬「事故?」
日夏梨「そう。突然突っ込んできた車に跳ねられちゃったんだって」
   一ノ瀬、一点を見つめる。
日夏梨「あ」
   一ノ瀬、日夏梨を見る。
日夏梨「どうしよう」
一ノ瀬「…どうした?」
日夏梨「いや、実は今日、お母さんから部屋から出ちゃダメって言われてたの。忘れてた。戻らな
 きゃ…ごめんね…」
   一ノ瀬、首を振る。
   日夏梨が車椅子を漕ぐ。
   一ノ瀬、ボーッとする。
日夏梨の声「尚也!」
   一ノ瀬が振り向く。
   日夏梨の笑顔。
日夏梨「明日もまた会おう」
   一ノ瀬、しばらく日夏梨を見つめる。
   笑顔が消える日夏梨。日夏梨は一ノ瀬を見つめ、
日夏梨「…いいかな?」
一ノ瀬「おう」
日夏梨「じゃあまた明日ね」
   日夏梨が再び車椅子を漕ぎ、去っていく。
   一ノ瀬、窓の外を見つめる。

○同・日夏梨の個室
   日夏梨が車椅子から、別の椅子へ移動する。鼻歌を歌っている日夏梨。
   椅子からベッドへと移動しようとする日夏梨。
   ドアの開く音。
   日夏梨、慌ててベッドへ移動し、車椅子を整える。
日夏梨「おかえり」
   宮田佳子(47)と宮田一之(48)が日夏梨のベッドの横に座る。
佳子「ただいま。調子どう?」
日夏梨「いい感じ」
佳子「うん。今日は凄く顔色良いわね」
一之「日夏梨」
日夏梨「なに?お父さん」
一之「その…示談交渉は無理かもしれない」
日夏梨「どうしたの?」
   佳子と一之が目を合わせる。
佳子「相手の人…来なかったわ…」
日夏梨「え?いやでも…私はその人のせいで」
佳子「それがね…、聞けば、信号無視したのは日夏梨だって…」
日夏梨「え…そんなの嘘だよ」
一之「俺たちも実際に見てたわけじゃないから何とも言えなくてな…目撃した人も今の所一人も出
 てきてないみたいなんだ…」
日夏梨「…」
   日夏梨、乱雑に黒いバッグを拾い、中から4冊のノートを取り出す。
日夏梨「これ…事故の時、私が持ってたカバン…中に説明会に行った時に書いたノートが入って
 た」
   日夏梨が涙をこらえ、佳子を見る。
日夏梨「こんなに頑張ってたのに…私がいけないって言うの?」
佳子「日夏梨…」
日夏梨「お父さんも、お母さんも事故が起きたのは私のせいだって言いたいの?」
佳子「もちろんお母さんは真面目な日夏梨がそんなことするわけないって思ってるわ」
一之「そうだぞ」
   日夏梨がベッドに横たわる。
日夏梨「…一人にして」
   佳子と一之が顔を見合わせ、出ていく。
   × × ×
   ベッドで横たわる日夏梨。
   目を閉じる日夏梨。
   頭を抑える。
日夏梨「思い出してよ!」

○同・日夏梨の個室の前
   佳子と一之が出てくる。
一之「相手が一ノ瀬尚也ってことはまだ言うのはやめておこう」
佳子「そうね…もし記憶が戻ったりでもして、自分がファンだったなんてこと思い出したら…相当
 ショックだろうし…」
一之「今はとりあえず、日夏梨がパニックに陥らないためにも体のことを第一に考えよう」
佳子「うん」
一之「記憶はゆっくり俺たちで埋めていこう」
   佳子が涙を流す。
   一之が佳子の肩を支え歩く。

○同・廊下
   車椅子に乗っている一ノ瀬の後ろ姿。
   慌てている様子で資料をめくっている。
   隣には岸本が立っている。
岸本「尚也?どうかしたのか?」
   一ノ瀬、動きが止まる。
   うなだれる一ノ瀬の顔。目を閉じる。
   一ノ瀬の手には宮田日夏梨と書かれた診断書の書類。
岸本「尚也?どうした?」
一ノ瀬「…」
   一ノ瀬、ため息をつく。
一ノ瀬「…何でもねえ」
   一ノ瀬が右手で車椅子を漕ぐ。
   一ノ瀬、止まる。
   岸本、止まる。
   内藤が立っている。内藤は一ノ瀬を見つめている。
   一ノ瀬、車椅子を漕ぐ。
   内藤が俯く。
   内藤の隣で車椅子を止める一ノ瀬。
一ノ瀬「俺音楽やめるわ」
   一ノ瀬が去る。
   内藤を見つめる岸本。
   内藤は岸本に会釈をして去って行く。

○同・一ノ瀬の個室
   一ノ瀬がベッドに座ろうと立ち上がる。
   バランスを崩して倒れる。
   棚の上の紙袋とリモコンを落とす。
   テレビが点く。
   一ノ瀬、テレビを見る。
MCの男性「事故の詳細はただいま調査中ということで…一ノ瀬さんの容態は深刻だということです
 ね。もしかするとこのまま引退という可能性もありえます。このような事態に世界各国のメディ
 アも注目しております」
   一ノ瀬が俯く。
   床に散らばっている沢山のファンレター。
   一ノ瀬はファンレターの上に倒れる。

○同・全景(日替り)

○同・廊下
   窓の外を見つめる車椅子の日夏梨。辺りを見渡す。

○同・一ノ瀬の個室
   ベッドに座り、俯いている一ノ瀬。
   机の上を見る。
   宮田日夏梨と書かれた診断書。
   一ノ瀬、ベッドに横たわる。天井を見つめる。

○同・廊下
   俯いている日夏梨。ふと横を見る。
   車椅子の一ノ瀬。
一ノ瀬「遅くなってごめん」
日夏梨「ううん」
   笑顔の日夏梨。
   × × ×
   笑いながら話す日夏梨、一ノ瀬。
   日夏梨の変顔。
   笑顔の一ノ瀬。
   笑顔の日夏梨。

○同・日夏梨の個室(日替り)
   佳子がカバンを持ち、去る。
   日夏梨が手を振る。
   日夏梨、笑顔でベッドの横の車椅子を引き寄せる。

○同・廊下(日替り)
   窓の外を見つめる一ノ瀬。驚く。
   日夏梨が笑う。
   一ノ瀬が笑いながら胸を抑える。
   日夏梨の首をくすぐる一ノ瀬。

○同・一ノ瀬の個室(日替り)
   岸本とスーツを着た男性一人が立っている。一ノ瀬、ベッドに座り軽く会釈をする。
   男性が名刺を一ノ瀬に渡す。
   名刺には赤坂法律相談事務所と書かれている。
   一ノ瀬、名刺を見つめる。

○同・廊下(日替り)
   ボーッと一点を見つめる一ノ瀬。一ノ瀬の頬をつまむ日夏梨の手。痛がる一ノ瀬。
   × × ×
   日夏梨はトランプを切る。
   一ノ瀬、トランプを一枚引く。元に戻す。
   日夏梨が指パッチンをする。一番上のトランプを取り、一ノ瀬に見せる。
   一ノ瀬、驚く。
   日夏梨のトランプを取ろうとする一ノ瀬。日夏梨はトランプを隠す。
   × × ×
   一ノ瀬と日夏梨が並んで話している。
日夏梨「私ね、30社も受けてたのに全部ダメだったんだって。どこからも必要とされてない人間
 だったんだなあって…」
一ノ瀬「…俺も。本当に自分を必要としてくれてる人なんて誰もいなかった。自分の親の顔も知ら
 ないし。俺は本当に望まれて生まれてきたのかも分からない」
   日夏梨は俯く。
日夏梨「そうなんだ…でも…私は尚也と会えて良かったよ。尚也と一緒にいると楽しい」
   日夏梨の笑顔。
一ノ瀬「ありがとう」
日夏梨「ねえ、私たちって本当に友達じゃなかった?」
一ノ瀬「なんで?」
日夏梨「だって…他人だと思えないんだもん」
一ノ瀬「俺も…日夏梨といると自然でいられる。本当の自分でいられる気がする」
日夏梨「お互い頑張ろうね」
一ノ瀬「…うん」
   一ノ瀬と日夏梨、二人の車椅子の後ろ姿。

○同・全景(日替り)

○同・診察室
   医師と日夏梨が向き合っている。日夏梨の横には佳子と一之が座っている。
   真剣な目の日夏梨、佳子、一之。
一之「あの…日夏梨に何か悪いところが見つかったんでしょうか?」
   微笑む医師。
医師「お父様、逆なんです」
日夏梨「え?」
佳子「それはつまり…」
医師「はい。日夏梨さんの状態はよくなっていってます。それも我々の想像を遥かに超えるスピー
 ドで」
   笑い合う佳子と一之。
   俯きながら微笑む日夏梨。

○同・廊下
   日夏梨が車椅子を漕ぐ。
   微笑む日夏梨。

○同・一ノ瀬の個室
   一ノ瀬がベッドから立ち上がり、松葉杖を手に取る。

○同・一ノ瀬の個室の前
   一ノ瀬が松葉杖をつきながら、出てくる。
   立ち止まる一ノ瀬。
   花を手に立っているノア。

○同・廊下
   日夏梨が辺りを見回す。
   日夏梨が車椅子を漕ぎ出そうとするが、手を止める。
   一ノ瀬とノアが歩いている。
   × × ×
   向かい合う一ノ瀬とノア。
ノア「私の気持ちは変わらないから…ギター弾いてる尚也が好きなの」
一ノ瀬「…ごめん。お前の気持ちには答えられない…本当にごめん」
ノア「…諦めないから私。尚也も音楽諦めないで」
   去っていくノア。
   一ノ瀬は振り返り、歩く。
   ノアが立ち止まり振り返る。
   × × ×
   一ノ瀬が日夏梨の元へ歩く。
   俯いている日夏梨。
一ノ瀬「お待たせ日夏梨」
日夏梨「…」
一ノ瀬「日夏梨?」
   日夏梨を見つめる一ノ瀬。
一ノ瀬「日夏梨!」
   慌てる一ノ瀬。しゃがみ込み日夏梨を覗き込む。
一ノ瀬「どっか具合悪いのか?頭痛いのか?足か?足が痛むのか?」
   ノアは一ノ瀬と日夏梨を見て、一歩前へ足を踏み出す。
   日夏梨がノアを見る。
   ノアは日夏梨を見ている。
   目を逸らす日夏梨。
   ノアは颯爽と振り返り去っていく。
一ノ瀬「どうした?何かあったか?」
   日夏梨は首を振る。
日夏梨「違うの…私…」
   一ノ瀬は一瞬固まる。目を見開く。
一ノ瀬「もしかして…事故のこと知ったのか?」
日夏梨「え?」
一ノ瀬「ごめん…ずっと言おうと思ってた…初めて話した時は日夏梨が被害者だとは…知らなく
 て…」
   日夏梨、一ノ瀬の顔を覗き込む。
   涙を流す一ノ瀬。
日夏梨「え?ちょっと尚也…」
一ノ瀬「日夏梨に拒絶されんのが怖くて言えなかった。最低だよな…」
日夏梨「…尚也?」
一ノ瀬「俺なんだ…日夏梨を引いたのは俺だ」
   固まる日夏梨。
一ノ瀬「…運転してたらいきなり日夏梨が目の前に現れて…」
   放心状態の日夏梨。
日夏梨「何言ってんの尚也…」
一ノ瀬「急いでハンドル切ったけど、間に合わなかった。日夏梨が車にぶつかった音が今でも耳
 に…残ってる…」
日夏梨「嘘だよね…」
一ノ瀬「…ごめん日夏梨…全部俺のせいだ。日夏梨の記憶、人生、俺が全部奪った」
日夏梨「そんなの嘘だよ…」
一ノ瀬「日夏梨…」
日夏梨「私死んでたかもしれないって…記憶は命の代償だったんだって…そう言い聞かせてた…」
   涙を流す日夏梨。
日夏梨「…私さっきまで……尚也と出会うためにこうなったのかもって…尚也が私にとって…」
   目を閉じ号泣する日夏梨。
一ノ瀬「日夏梨…」
   日夏梨の涙を拭く一ノ瀬。
   日夏梨はそっと一ノ瀬の手を離す。
   ゆっくり去っていく日夏梨。
   泣いている一ノ瀬。

○同・日夏梨の個室(夕)
   車椅子に乗ったまま、泣いている日夏梨。
   佳子が入ってくる。
佳子「日夏梨ー、今日は仕事早く終わったからスイカ買ってきちゃったー一緒に食べようかー…」
   佳子、日夏梨を見て止まる。慌てて駆け寄る。
佳子「日夏梨?どうしたの?」
   日夏梨の肩を支える佳子。
佳子「どこか具合悪いの?どっか痛い?」
   泣いている日夏梨。
佳子「先生呼ぼうか。ね」

○同・一ノ瀬の個室(日替り)
   一之と佳子、岸本と一ノ瀬が立っている。
一之「一体全体どういうおつもりですか!」
岸本「本当に申し訳ありません」
   頭を下げる、岸本と一ノ瀬。
一之「娘の人生を奪っておいて、今度は嘘までついて娘と関わっていたなんて、君は一体何を考え
 てるんだ!」
   一ノ瀬は頭を下げたまま、
一ノ瀬「…すいません」
一之「謝って簡単に済むようなことじゃないんだ!娘は、日夏梨は、死んでいたかもしれないんだ
 ぞ!」
一ノ瀬「…すいません…」
岸本「日夏梨さんにはもう二度と関わらせませんので…」
一之「当たり前だ。今後一切、日夏梨の前に現れないでくれ」
   頭を下げる一ノ瀬を見つめる佳子。
一之「自分のやったことをきちんと反省しなさい」
   一ノ瀬は頭を下げたまま、
一ノ瀬「…はい」
一之「行くぞ母さん」
   去って行く一之。佳子は一ノ瀬を見つめ、軽く会釈をして去る。
   頭を下げている岸本と一ノ瀬。

○同・日夏梨の個室(夜)
   ベッドの上の白い山。震えている。
   涙を流している日夏梨。
   日夏梨の泣き声が響く。

○同・日夏梨の個室(3日後)
   看護師が入ってくる。
看護師「日夏梨ちゃん点滴の時間ですよー」
   虚ろな目の日夏梨、看護師を見る。
   看護師、日夏梨を見て驚く。
看護師「日夏梨ちゃんどこか具合悪い?顔色悪いわ」
日夏梨「ここ3日くらい、全然寝れてなくて…」
   日夏梨のおでこに手を当てる看護師。
看護師「日夏梨ちゃん熱あるわ。すぐに先生呼んでくるわね」
   看護師が出ていく。
   ボーッとしている日夏梨。
   × × ×
   日夏梨がベッドで横になっている。医師と看護師が日夏梨の横に立っている。
   佳子が心配そうに日夏梨を見つめる。
佳子「先生、日夏梨は…」
医師「大丈夫ですよ。睡眠不足もあって体が弱っていたんです。ここ最近食事も全部食べられなか
 ったみたいですし」
佳子「そうですか…」
医師「ただ何か異変があればすぐに呼んでください」
佳子「はい」
   医師と看護師が出て行く。
   顔が赤い日夏梨。
   × × ×
   ベッドで横になっている日夏梨。
   隣には佳子が座っている。佳子は日夏梨の就活ノートを見ている。
   目を開ける日夏梨。
   佳子は日夏梨を見る。
佳子「どう?具合は?」
日夏梨「…だいぶよくなった」
佳子「そう…お水飲んで」
   日夏梨に水を渡す佳子。
   水を飲む日夏梨。日夏梨の隣に座る佳子。
佳子「ねえ日夏梨…お母さん日夏梨がイベント会社ばっかり受けてること知らなかったわ」
日夏梨「え?」
佳子「どうして…イベント会社だったのかしら…」
日夏梨「私にも分かんないよ…」
佳子「お母さんにも分からない…」
   微笑む佳子。
   微笑む日夏梨。
佳子「日夏梨はね…ギターを習ってたのよ」
日夏梨「え?いつ?」
佳子「高校生の時」
日夏梨「へえ…上手かった?私」
佳子「うーん、微妙」
日夏梨「ちょっと…」
佳子「お母さんにね、キラキラ輝いた目で、お母さん見て!すごい人がいる!って言って動画を見
 せてきてね」
   日夏梨は佳子の言葉に耳を傾ける。
佳子「見たら凄い人だかりの真ん中でマイクも使わず歌ってる男の子の動画でね、ちょうど…日夏
 梨と同い年くらいの男の子かな」
日夏梨「へえ」
佳子「その男の子ね、施設で育った子でいつもギター弾いて同じ施設の子達を喜ばせてたんだっ
 て」
日夏梨「ふーん、良い子だね…」
佳子「日夏梨はすっかりその子のファンになっちゃってね、ずっと追っかけてたわよ」
日夏梨「そうなの?」
佳子「うん」
日夏梨「その男の子、名前何て言うの?」
   日夏梨に向かって佳子が微笑む。
   部屋に入ってくる一之。
   顔を見合う3人。
佳子「お父さんどうしたの、まだ仕事じゃ」
一之「日夏梨…」
   息を切らし真剣な目つきの一之。

○同・一ノ瀬の個室
   一ノ瀬、ベッドに横になりスマホを見ている。
   一ノ瀬尚也(17)が路上ライブしている動画。マイクを使わず叫ぶように歌う動画の中の
   一ノ瀬。
   一ノ瀬は動画を見つめる。
   ノックの音。
   一ノ瀬、スマホをしまう。
   ドアが開く音。
   ベッドの横へと歩く内藤。
   一ノ瀬は天井を見つめたまま、
一ノ瀬「何しに来た」
内藤「一応…見舞い」
   鼻で笑う一ノ瀬。
一ノ瀬「相変わらず暇してんだな」
内藤「ああ。たった1ヶ月で仕事はどんどん減っていった」
   一ノ瀬は内藤を見る。
内藤「今はゼロだ。お前の言う通り、俺はお前がいないと注目されない」
   鼻で笑う内藤。
一ノ瀬「…悪かった」
   一ノ瀬は天井を見つめたまま、
一ノ瀬「ガキん時から俺には音楽しかなかった。口下手な俺でもギターさえあれば施設の子も皆ん
 な俺に話しかけてくれた」
内藤「…」
一ノ瀬「あの時の俺はただ純粋に音楽を楽しんでた。けど…段々、俺は何のために音楽をやってる
 のか分かんなくなってきて…」
   上体を起こす一ノ瀬。
一ノ瀬「気づけば…色んな人に迷惑かけてた…自分勝手だった俺…」
   一ノ瀬が徐に立ち上がる。
一ノ瀬「お前にも沢山迷惑かけたな。ごめん」
   一ノ瀬が軽く頭を下げる。
一ノ瀬「お前なら大丈夫。俺が初めてギターで嫉妬した男だから。今までありがとな隼人」
   一ノ瀬が右手を出す。
   内藤が一ノ瀬の手を見つめる。
内藤「ふざけんなよ…なんだよそれ…」
   内藤が一ノ瀬の手を振り払い、胸ぐらを掴む。
内藤「ここで終わりかよ!あ!?怪我したらそこですぐ諦めんのかよ!お前の音楽に対する情熱は
 そんなもんだったのかよ!」
   一ノ瀬は内藤を見つめる。
内藤「やめるなら、俺を納得させてからやめろ」
   内藤が去っていく。
   一ノ瀬、その場に座り込む。
   ため息をつく一ノ瀬。

○同・一ノ瀬の個室の前
   去っていく内藤。
   内藤の後ろ姿を見つめる岸本。

○同・廊下(夕)
   一ノ瀬の顔を照らす夕日。
   岸本が隣に立っている。
一ノ瀬「そうか…」
   岸本がゆっくり去っていこうとする。
   俯く一ノ瀬。振り向き、
一ノ瀬「岸本…あ…」
   頭を下げる一ノ瀬。
   先には一之と佳子。
   × × ×
   一ノ瀬の前で、頭を下げる一之。
一ノ瀬「あ…」
岸本「宮田さん」
一之「本当にすいませんでした」
   佳子も頭を下げる。
一之「目撃者の方によれば娘はスマホを見ていたと…娘が信号無視なんかするわけない。そう思い
 込んで頭ごなしに一ノ瀬さんを怒鳴ってしまいました…」
岸本「宮田さん謝罪をするのはこっちの方です」
一ノ瀬「岸本の言う通り、こうなったのは全部俺の責任です。日夏梨さんの治療費、リハビリ費用
 も含めて全部俺に払わせてください」
一之「…いや…でも…」
一ノ瀬「…一つだけ…お願いがあるんです…もし…許して頂けるのであれば…」
一之「…何でしょう?」
   立ち上がる一ノ瀬。
一ノ瀬「日夏梨さんに…会わせてください…」
   頭を下げる一ノ瀬。
一ノ瀬「お願いします!勝手なこと言ってるっていうのは分かってます」
   一ノ瀬を真剣に見つめる一之。
一ノ瀬「事故の前までは、毎日毎日明日が来ることが嫌で嫌で仕方なくて、自分は逃げ出してばか
 りいました」
   一ノ瀬を真剣に見つめる岸本。
一ノ瀬「けど日夏梨さんと出会って、明日が待ち遠しくなったんです。一緒に話すと気持ちが楽に
 なって前向きでいられるんです」
   頭を上げる一ノ瀬。
一ノ瀬「お願いします。日夏梨さんに会わせてください」
   再び頭を下げる一ノ瀬。
一ノ瀬「お願いします…」
   佳子が一之の腕を掴み、
佳子「お父さん…教えてあげましょうよ」
   頷く一之。
一之「一ノ瀬さん…実は私も一ノ瀬さんの音楽に感動した人の一人なんです…」
   一ノ瀬は頭を上げる。
一ノ瀬「え…」
一之「今の言葉…。記憶を無くす前の日夏梨に聞かせてやりたいです」
   微笑む一之。
   一ノ瀬は一之を見つめる。

○同・屋上・全景(日替り)

○同・同
   一ノ瀬の車椅子を押す看護師。
看護師「景色も良くて気持ちいいですよね」
一ノ瀬「…はい」
   辺りを見渡す一ノ瀬。
看護師「あの…」
一ノ瀬「はい?…」
看護師「一応許可は取ってるんですけど、程々にお願いしますね」
一ノ瀬「…はい…」
   一ノ瀬は景色を見つめる。目を閉じる。
看護師「来ましたよ」
   一ノ瀬、横を見る。
   車椅子姿の日夏梨。
   見つめる一ノ瀬。
   微笑む日夏梨。なびく長い髪。
   見つめる一ノ瀬。
   一ノ瀬、車椅子を漕ぐ。
   × × ×
   日夏梨が景色を見つめている。
一ノ瀬の声「日夏梨…」
   日夏梨が振り向く。
   日夏梨、車椅子を漕ぐ。
一ノ瀬「待って」
   日夏梨が止まる。
   頭を下げる一ノ瀬。
一ノ瀬「ごめん。嘘ついたりして本当にごめん」
日夏梨「私…どうしたらいいのか分からないよ…」
   車椅子を動かす日夏梨。向かい合う一ノ瀬と日夏梨。
一ノ瀬「怖かった。日夏梨に拒絶されたら俺…自分がどうなるか分からなくて…」
日夏梨「私のこと憎んでるでしょ?」
一ノ瀬「え?」
日夏梨「私は、尚也の大事な手を奪ったんだよ…」
一ノ瀬「日夏梨…」
日夏梨「許せないでしょ私のこと…」
   日夏梨は再び車椅子を漕ぐ。
一ノ瀬「音楽ってさ、すげえんだよ」
   日夏梨は止まる。
   一ノ瀬は景色を見つめる。
一ノ瀬「認知症の人の脳でも音楽って理解できるらしいんだよ。リラックス効果だけじゃなくて脳
 を活性化させることもできる。知ってたか?例え言葉が通じなくても音楽さえあれば繋がること
 ができる」
   一ノ瀬は日夏梨を見つめる。
   日夏梨、一ノ瀬の言葉に耳を傾ける。
一ノ瀬「日夏梨にどうしても聞いて欲しい」
   立ち上がる一ノ瀬。ゆっくり目を閉じる。
   日夏梨は止まっている。
   沈黙。
   一ノ瀬の歌声。
   アカペラで歌う一ノ瀬。
   日夏梨は顔を上げ、ゆっくり目を閉じる。
   叫ぶように歌う一ノ瀬。
   日夏梨は目を閉じている。
   目を閉じたまま涙を流す日夏梨。
   ゆっくり目を開ける日夏梨。
   一ノ瀬が日夏梨の前にしゃがみ込む。
   日夏梨を抱きしめる一ノ瀬。
一ノ瀬「ごめん…好きだ…」
   日夏梨は泣いている。

○同・廊下(7日後)
   一ノ瀬が松葉杖無しで歩いている。
   車椅子姿の日夏梨。
   日夏梨、一ノ瀬を見て微笑む。
   微笑む一ノ瀬。
   × × ×
   一ノ瀬はベンチに座り、日夏梨と向かい合っている。
日夏梨「ねえ歌って」
一ノ瀬「え?ここで?」
日夏梨「歌って」
   一ノ瀬は日夏梨の車椅子を動かす。
   窓に向かっている二人。一ノ瀬は日夏梨の横に膝をつく。日夏梨は一ノ瀬に耳を傾ける。
   一ノ瀬は日夏梨の耳元でかえるの歌を歌う。
   日夏梨、笑う。
   一ノ瀬、笑いながら、
一ノ瀬「ほら日夏梨も続けて歌って」
   日夏梨は笑いながら一ノ瀬を叩く。
一ノ瀬「いって!なんだよ」
   笑い合う一ノ瀬と日夏梨。

○同・廊下(夜)
   消灯。

○同・一ノ瀬の個室(夜)
   ベッドで眠っている一ノ瀬。
   ライトを持った看護師がドアから覗く。
   去っていく看護師。
   一ノ瀬、目を開ける。

○同・廊下(夜)
   一ノ瀬が歩いている。看護師の姿。身を隠す一ノ瀬。再び歩く。

○同・日夏梨の個室(夜)
   ベッドに横になっている日夏梨。目を開けている。日夏梨はスマホを取り出す。
   日夏梨はスマホを付ける。0時25分と書かれているスマホ。画面には一件のメッセージ。
一ノ瀬からのメッセージ「今からそっちに行く」
   ドアの開く音。
   起き上がる日夏梨。
   一ノ瀬の姿。
   日夏梨のベッドに一ノ瀬が入る。
   一ノ瀬は日夏梨の頭の下に腕を回す。
日夏梨「退院おめでとう」
   笑う一ノ瀬。
一ノ瀬「まだだよ」
日夏梨「今日だよもう…。私は後1週間くらいだって」
一ノ瀬「退院したら…海行こう」
日夏梨「…うん」
   日夏梨の顔を覗く一ノ瀬。
一ノ瀬「どうした?」
日夏梨「ううん」
一ノ瀬「何も変わんねえよ。退院しても毎日来るからさ」
   一ノ瀬と日夏梨、見つめ合う。一ノ瀬は日夏梨にキスをする。
   日夏梨の首元にキスをする一ノ瀬。
   目を閉じる日夏梨。
   一ノ瀬、左手で日夏梨のガウンをずらす。
一ノ瀬「…いっ」
   一ノ瀬、痛がるようにうずくまる。日夏梨は一ノ瀬の顔を覗く。
日夏梨「大丈夫?」
   一ノ瀬、笑いながら、
一ノ瀬「ちょっと痛かった…」
   一ノ瀬が日夏梨にキスをする。
   日夏梨の顔、首、胸元にキスをしていく一ノ瀬。
   一ノ瀬は日夏梨のガウンを噛んでずらす。日夏梨の肩にキスする一ノ瀬。
   足音。
   慌ててベッドに横たわる一ノ瀬。
   日夏梨と一ノ瀬、ドアの方に目を向ける。
   遠ざかる足音。
   顔を見合わせる一ノ瀬と日夏梨。
   一ノ瀬は日夏梨を抱きしめる。
日夏梨「…尚也が音楽続けるなら、私は全力で応援するよ。どこにいても…」
   鼻で笑う一ノ瀬。
一ノ瀬「なんだよそれ。そばにいろよ」
   日夏梨を強く抱きしめる一ノ瀬。

○同・廊下(夜)
   一ノ瀬が歩いている。
   ふと立ち止まる。
   再び歩き始める。

○同・日夏梨の個室(朝)(日替り)
   松葉杖の日夏梨は窓の外を眺める。
   佳子が日夏梨の隣に立つ。
佳子「凄い数ね…」
   俯く日夏梨。

○同・正面入り口(朝)
   私服姿の一ノ瀬が岸本と共に出てくる。
   おびただしいフラッシュ。
   車に乗り込む一ノ瀬と岸本。
   発進。

○車内(朝)
   一ノ瀬は窓の外を眺める。病院を見つめる一ノ瀬。

○一ノ瀬の事務所(朝)
   近藤が座っている。前には一ノ瀬と岸本が立っている。
   一ノ瀬は頭を下げている。
近藤「君をクビにする気は最初からない」
   一ノ瀬、頭を上げる。
近藤「君を拾ったのはこの私だ。最後まで面倒見させてもらうよ」
一ノ瀬「ありがとうございます」
   再び頭を下げる一ノ瀬。
   近藤は一ノ瀬の頭を見つめ、微笑む。
近藤「まずはリハビリに専念しなさい」
   頭を上げる一ノ瀬。
一ノ瀬「はい」
近藤「それと…君は今後ソロとしてやっていくのか?」
   一ノ瀬は近藤を見つめる。

○病院・日夏梨の個室
   日夏梨の前に姿を現わすスーツ姿の結月。
日夏梨「久しぶり、結月」
   泣きながら日夏梨に抱きつく結月。
結月「日夏梨!」
   × × ×
   結月が固まり、目を見開いた状態で日夏梨を見つめる。
結月「えーーーー」
日夏梨「ちょっと結月」
   結月の口を封じる日夏梨。
   結月は日夏梨の手を振りほどき、
結月「って!これからどうするの!?日夏梨とな、尚也さん?は付き合って行くわけ?え!?って
 か波乱万丈すぎ!」
   騒ぐ結月。
   日夏梨は俯く。
結月「あんな雲の上の存在だった人と!?こんな運命的なことないよ!?」
   結月、日夏梨を見て固まる。
結月「…日夏梨?」
   日夏梨の顔を覗く結月。
結月「どうしたの?」
   涙を流す日夏梨。
結月「泣いてるの?日夏梨?」
   勢いよく結月を抱きしめる日夏梨。
結月「え…ちょっと…日夏梨?」
   日夏梨は大粒の涙を流す。

○高円寺・商店街
   一ノ瀬が歩いている。帽子を被る一ノ瀬。
   路上ライブ。
   一ノ瀬は横目に通り過ぎる。
   路上ライブ。
   一ノ瀬は横目に通り過ぎる。
   沢山の人だかり。
   一ノ瀬、足を止める。
   × × ×
   ギター片手に歌を歌っている内藤。
   内藤の周りには沢山の人だかり。
   拍手。
内藤「ありがとうございました」
   ギターを片付け始める内藤。
   数人の女子高生が内藤に駆け寄る。
女子高生「あの…サインしてもらってもいいですか?」
内藤「はい、いいですよ」
女子高生「ありがとうございます!」
   去って行く女子高生。
   内藤、固まる。
   女子高生は一ノ瀬の横を走って行く。
   内藤は一瞬目を逸らす。再び一ノ瀬を見る。
内藤「遅えぞ!!」
   一ノ瀬は内藤へ近寄る。
一ノ瀬「お前が納得するだけの理由、用意してきたよ」
内藤「…なんだよ」
一ノ瀬「お前と、もう一回音楽やる」
   内藤、数秒固まる。
内藤「なめんな!世間はそんな甘くねえんだよ!分かってんのか!」
一ノ瀬「おう。1から、なんなら0からでもいい。お前とまた音楽できるなら何だってやる」
   内藤、一ノ瀬を見つめる。
   鼻で笑う内藤。
内藤「上等じゃねえか」
   内藤は手を差し出す。
   一ノ瀬は内藤の手を握る。
   内藤、強く握り返す。
   一ノ瀬、強く握り返す。
   微笑み合う一ノ瀬と内藤。

○リハビリセンター(日替り)
   一ノ瀬は腕のストレッチをしている。
   指にゴムをはめ、一本一本動かしていく。
   ダンベルを持ち上げようとするが落とす。
   腕立て伏せをする。倒れる。痛そうな一ノ瀬。再び腕立てを始める。

○病院・廊下(日替り)
   一ノ瀬が松葉杖の日夏梨に花を渡す。
   × × ×
   一ノ瀬は日夏梨に左手を動かしてみせる。
   笑顔の日夏梨。
   トランプを取り出す一ノ瀬。
   日夏梨、トランプを引く。
   指パッチンをする一ノ瀬。
   一ノ瀬は一番上のトランプを見せる。
   驚く日夏梨。
   一ノ瀬と笑い合う日夏梨を佳子が見つめる。真剣な目の佳子。
   一ノ瀬がトランプをいじる姿を微笑みながら見つめる日夏梨。

○高層マンション・中(夜)(日替り)
   一ノ瀬はギターを抱える。
   指を動かそうとする。中々動かない指。
   × × ×
   ピアノの前に座る一ノ瀬。
   ピアノを弾く一ノ瀬。
   固まる指。
   一ノ瀬、ため息をつき上を向く。
   再び弾き始める。

○病院・日夏梨の個室(日替り)
   日夏梨、ベッドに座りイヤホンをつけている。目を閉じている。
   手には Dawn Dusk NightのCD。

○リハビリセンター(日替り)
   一ノ瀬は腕のストレッチをしている。
   指の体操をする。
   ダンベルを持ち上げる。苦しそうな一ノ瀬の表情。
内藤の声「だらしねえなあ」
   一ノ瀬が顔を上げる。
   内藤が立っている。
一ノ瀬「うるせえ」
   × × ×
   内藤と一ノ瀬が隣り合わせで座る。
内藤「相手の子…ヒカルちゃん?」
一ノ瀬「日夏梨」
内藤「…俺らのファンだったって」
一ノ瀬「俺のファンな」
   鼻で笑う内藤。
内藤「その子のためにも音楽続けようと思ったってわけか…」
   水を飲む一ノ瀬。
内藤「てっきり俺だけが理由かと思ったのにな…明日退院なんだって?」
一ノ瀬「おう…。つうか誰から聞いたんだよ」
内藤「岸本さん。しかいないだろ」
一ノ瀬「言うなっつったのに」
内藤「つうか、俺にも話せよ」
   一ノ瀬を見る内藤。
   再び水を飲む一ノ瀬。
内藤「これからはお互い腹割って何でも話すことにしないか。まあ…その…親友?とか言う関係性
 になれたら…いいよな…」
   一ノ瀬、内藤を見る。
一ノ瀬「キモい」
内藤「(小声で)なんでだよ」
   笑う一ノ瀬。
   笑う内藤。

○都内某所・花屋(日替り)
   花を手に持ち、店から出てくる一ノ瀬。

○病院・日夏梨の個室
   花を持つ手を降ろす一ノ瀬。
   空のベッド。
   走る一ノ瀬。立ち止まる。
   佳子の姿。頭を下げる佳子。

○同・ロビー
   佳子と一ノ瀬が隣合って座っている。
佳子「ごめんなさいね、驚いたでしょう。てっきり日夏梨は連絡してると思ってたんですけど…主
 人も申しわけないと伝えてくれと頼まれました」
一ノ瀬「何で一日早く退院したんですか?」
佳子「それがね早く元の生活が送れるように一日でも早くリハビリするんだって。日夏梨はそんな
 ようなことを言ってまして」
一ノ瀬「…何で何も言わねえんだよ…」
佳子「実は一ノ瀬さんに見てもらいたいものがあるんです」
   佳子は日夏梨の就活ノートを取り出す。
   一ノ瀬、ノートを見て、
一ノ瀬「何ですか」
佳子「これは日夏梨の就活ノートです。沢山、説明会に出向いてたみたいで」
   ノートを見つめる佳子。
佳子「どうやら、あの子はイベント会社を狙っていたみたいなんです」
一ノ瀬「イベント会社?」
佳子「はい。あの子、リハビリが終わったらまた受け直すって言ってて」
   佳子はページをめくり、一ノ瀬にあるページを見せる。
   一ノ瀬、ページを見つめる。
佳子「あの子はきっと、一ノ瀬さんのような人になりたかったんだと思うんです」
   ノートには、私も多くの人々を感動させる!尚也さんみたいに!と大きく書かれている。
佳子「…思い出したみたいなんです」
   驚く一ノ瀬。
一ノ瀬「え…思い出したって…」
佳子「一ノ瀬さん、日夏梨に歌を歌ってくださったでしょう?」
一ノ瀬「はい…」
佳子「その時、日夏梨は一ノ瀬さんのライブに向かって走る自分を思い出したそうです。 その日
 から一ノ瀬さんのCDを毎日毎日聞いてました。音楽を聴くと当時の記憶が蘇ってくるんだそうで
 す」
   ノートを見つめる一ノ瀬。
佳子「こんな私じゃ、一緒にはいられない。日夏梨はそうも言ってました」
   一ノ瀬、目を閉じて肩を落とす。

○日夏梨のアパート付近
   一ノ瀬が歩いている。
佳子の声「本当は口止めされてるんですけど…これ日夏梨のアパートの住所です」
   一ノ瀬は紙を見つめる。住所が書いてある紙。
   一ノ瀬、立ち止まる。

○日夏梨のアパート・全景
   一ノ瀬は歩く。

○同・玄関前
   一ノ瀬、チャイムを鳴らす。
   応答なし。
   一ノ瀬はドアに寄りかかる。

○同・全景(夜)
   一台のパトカーが止まる。

○同・玄関前(夜)
   座り込んで眠っている一ノ瀬。
   警察が一ノ瀬の肩を叩く。
警察「起きてお兄さん。お兄さん。ここ君の家じゃないだろ」
   一ノ瀬、目を覚ます。辺りを見回す。
   ため息をつく一ノ瀬。
一ノ瀬「…すいません」
   一ノ瀬、立ち上がり歩く。

○高層マンション・中(夜)
   一ノ瀬は部屋に帰ってくる。
   片手にはウォッカ瓶。
   一ノ瀬、ソファに倒れる。
   スマホを出し日夏梨に電話をかける。
   繋がらない。
   酒を口に運ぼうとする。しかし手を止め、瓶を投げ飛ばす。
   目を閉じる。

○同・同(日替り)
   一ノ瀬はソファで寝ている。
   チャイムの音。
   一ノ瀬、起きない。
   スマホが鳴る。
   一ノ瀬、慌ててスマホを見る。
   内藤隼人からの着信。
   一ノ瀬、電話を切る。

○同・同(夜)
   一ノ瀬、ギターを抱える。止まる指。
   立ち上がりギターを振り上げる。
   しかし、その場に立ち尽くす。

○赤坂・ビル街(夜)
   すり減り、歪んだガードレール。
   赤いコーンが立っている。
   一ノ瀬は呆然とガードレールを見つめる。

○高層マンション・正面入り口(日替り)
   内藤がオートロックを押す。チャイムの音。
   内藤はスマホを取り出し、耳に当てる。
   内藤の手には週刊誌。
内藤「くっそ…」
   電話の通じる音。
内藤「あ…尚也?お前今どこだ?」
一ノ瀬「…家…ごめん少しでいいから休ませ…」
内藤「尚也、今日出された週刊誌見ろ」
一ノ瀬「…なんだよ…」
内藤「いいから!つうか中入れろ!」

○同・玄関
   ドアを開く。一ノ瀬の姿。
   内藤が一ノ瀬に週刊誌を突き出す。
内藤「見ろこれ」
   一ノ瀬、週刊誌を勢いよく奪う。
   しばらく週刊誌を見つめる一ノ瀬。
   一ノ瀬が舌打ちをして、出ていく。
内藤「おい尚也!」
   内藤は一ノ瀬の腕を掴む。
内藤「どこ行くんだよ!」
一ノ瀬「決まってんだろ!」
   一ノ瀬が内藤の手を振り払い歩く。

○ノアの事務所
   机の上に放り出される週刊誌。
   週刊誌にはノアと一ノ瀬の熱愛報道の文字。ノアと一ノ瀬がホテルでキスをしている写真。
   病院に入るノアの写真。
   一ノ瀬と尚也が立っている。前にはノアのマネージャーとノアが立っている。
一ノ瀬「事実無根です。交際してもないのに認めるような発言しないで欲しい」
   ノアは目を逸らす。
マネージャー「この記事に関しましては私共も一体どこからこんな写真が…」
一ノ瀬「彼女が全部仕組んだことだ。わざと撮らせたんだろ」
   マネージャーがノアを見つめる。
一ノ瀬「そうだろ」
ノア「…」
マネージャー「そうなんですか?ノアさん」
   ノアは顔を背けている。
   一ノ瀬、週刊誌を見つめる。
一ノ瀬「…前はこんな記事なんてどうだってよかった。こんなのただの茶番だって。でも今は…こ
 れを見たら傷つく子を知ってる」
   内藤が一ノ瀬を見る。
一ノ瀬「俺はその子をもう二度と傷つけたくない。だから…」
ノア「似合わないって!」
   一ノ瀬と内藤、ノアを見る。
ノア「日夏梨ちゃんでしょ?その子って」
一ノ瀬「…あ?てめえ何で知ってんだよ!」
   一ノ瀬がノアに向かって迫ろうとする。
   内藤が一ノ瀬を止める。
一ノ瀬「あ!?お前まさか、日夏梨に会ったのか?」
ノア「…」
一ノ瀬「日夏梨に変なこと言ったんじゃねえだろうな!?黙ってんじゃねえよ!日夏梨に何し
 た!?」
ノア「本当のこと言ってやっただけだよ!」
   一ノ瀬は内藤の手をどける。
一ノ瀬「なんだよ、本当のことって」
ノア「尚也と付き合えるようなご身分じゃないって」
   一ノ瀬はノアに近寄る。
   ノアの椅子を蹴飛ばす一ノ瀬。
一ノ瀬「人を好きになるのにな、身分もクソもねえんだよ」
   一ノ瀬が去って行く。
   内藤が去って行く。

○一ノ瀬の事務所(夕)
   一ノ瀬がソファでうなだれている。
   一ノ瀬の前にウォッカ瓶を置く内藤の手。
   内藤が座る。後ろに岸本が立っている。
   酒を飲む内藤。
岸本「悪いが記事はもうどうにも出来ない」
内藤「俺がついてるから、今日は飲め」
岸本「そうだな…。もう音楽で挽回するしかないな」
一ノ瀬「ごめん隼人…。全然やる気が出ねえ」
内藤「今日は許す」
   ソファに寝転がり目を閉じる一ノ瀬。

○同(夜)
   ソファで眠る内藤。内藤を照らす光。
   物音。
   内藤、目を覚ます。

○同・倉庫(夜)
   一ノ瀬が大量のファンレターを漁っている。
   あくびをする内藤がドアに立つ。
内藤「何してんだよ」
   一ノ瀬、手を止め、
一ノ瀬「手紙探してる」
内藤「誰からの?」
一ノ瀬「日夏梨からの。もしかしたら、前に送ってきてたかもしれないだろ」
内藤「探すっつったって、お前…この中から」
   大量に積み上げられているダンボール。
   ダンボールの中には大量の手紙。
   手紙を漁る一ノ瀬。必死。
   ダンボールを降ろす内藤。内藤は手紙を漁る。
   一ノ瀬は内藤を見る。再び手紙を漁る。

○同(朝)(日替り)
   朝日に照らされるテーブルの上の新品
   のウォッカ瓶。

○同・倉庫(朝)
   大量の手紙が散らばっている。内藤と
   一ノ瀬は手紙を漁っている。
   必死に漁る一ノ瀬。汗を掻いている。
内藤の声「あった!」
   一ノ瀬が内藤に駆け寄る。
   内藤の手には、ピンク色の手紙。宮田日夏梨と書かれている。

○皇居周り(日替り)
   走っている一ノ瀬。
日夏梨の声「一ノ瀬尚也さんへ。いつも尚也さんの音楽から元気をもらっています。私が初めて自
 分の中で尚也さんに出会ったのは高校生の時」

○日夏梨のアパート・玄関前(日替り)
   ドアの前で立ち尽くす一ノ瀬。
   部屋にダンボールを運ぶ引越し屋。
   一ノ瀬、俯く。
日夏梨の声「偶然見つけた一本の動画です。同い年の男の子が必死にギターを弾き、必死に歌うそ
 の姿に感動しました」

○リハビリセンター(日替り)
   腕をマッサージする一ノ瀬。
   腕立てをする。
   指の体操をする。
   日夏梨の手紙を読む一ノ瀬。
   再び腕立てをする。
日夏梨の声「尚也さんは施設の子が喜ぶ姿が見たくて音楽を始めたと聞いたことがあります。私も
 いつか人を喜ばせるようなお仕事がしたいです。尚也さんのように」

○高層マンション(日替り)
   ギターを弾く一ノ瀬。
   ピアノを弾く一ノ瀬。
   ピアノの上には日夏梨からの手紙が置いてある。
日夏梨の声「尚也さんの真っ直ぐな歌声が大好きです。尚也さんのかっこいいギターが大好きで
 す。そして何より尚也さんが大好きです。これからもずっと応援しています。 宮田日夏梨」

○一ノ瀬の事務所・全景
T「2ヶ月後」

○同
   岸本と近藤が座っている。
   内藤と一ノ瀬が向かい合うように座っている。
近藤「よく頑張ったな」
一ノ瀬「まだまだこれからです…」
岸本「さて…じゃあ、ざっと」
   岸本が机に資料の束を置く。
岸本「復活ライブをうちでして欲しいと依頼されてる。日本から7件、アメリカから5件、フラン
 スから2件、合計14件ほどある」
近藤「二人で決めなさい」
一ノ瀬「はい」
内藤「もう決まってます」
一ノ瀬「え?」
   岸本と内藤が目を合わし、微笑む。
岸本「つい昨日届いた案件があってな…地域イベントの一環でな。しかも無償でやってくれなん
 て、信じられないよ全く。でも…これしかないだろうな…」
   岸本は一ノ瀬に資料を渡す。
   一ノ瀬は資料を見て驚く。
岸本「依頼主との打ち合わせ場所は13時にこの会社だ」
   岸本は資料を指差す。
岸本「こんなこと普通はあり得ないんだが向こうも了承済みだ。俺と隼人は衣装をどうするか話し
 会う必要がある。だよな?」
内藤「はい」
岸本「だから尚也一人で行ってくれるか?」
   一ノ瀬、走る。

○コミュニティーイベント会社・全景
   一ノ瀬が走る。

○同・受付
   一ノ瀬が走る。
一ノ瀬「あの…一ノ瀬尚也です」
   受付の女性が尚也を見て固まる。
受付嬢「一ノ瀬尚也様ですね。ご案内致します」

○同・オフィス
   受付嬢が一ノ瀬を連れて歩く。辺りを見渡す一ノ瀬。
   ざわめくオフィス。スーツ姿の男性が一人立ち上がる。
男性「おい本当に来たぞ…」
   一ノ瀬を見つめる男性。

○同・屋上
   受付嬢と一ノ瀬が現れる。
   受付嬢、会釈して去る。
   スーツ姿の日夏梨の後ろ姿。
一ノ瀬「日夏梨?」
   日夏梨、振り向く。固まる日夏梨。涙をこらえながら、
日夏梨「…来てくれた…」
   一ノ瀬、涙をこらえ、日夏梨に駆け寄る。
日夏梨「本当に…来てくれたん…」
   一ノ瀬、日夏梨を勢いよく抱きしめる。
一ノ瀬「なんで…なんで勝手にいなくなんだよ!」
日夏梨「ごめんね…」
   涙を流す日夏梨。
日夏梨「思い出せば思い出すほど尚也の存在が遠くなっていったの…それが凄く怖かった…」
   一ノ瀬は強く日夏梨を抱きしめる。
一ノ瀬「俺はここにいるだろ…」
日夏梨「尚也には自由でいて欲しかったの。私がいれば尚也は私に縛られちゃうでしょ?尚也は誰
 のものでもないから…」
   一ノ瀬、日夏梨を見つめる。
日夏梨「私は必死であの頃に戻ろうとしたの。リハビリもして、実家に帰って、夢だったイベント
 会社の内定ももらって…。生活は前よりも良くなった。なのに…」
   涙を流す日夏梨。
日夏梨「何かが足りないの…もう私は、あの頃の私じゃなかった」
   俯く日夏梨。
日夏梨「尚也…ごめんね…私はずっと尚也にそばにいて欲しかった…」
   日夏梨は一ノ瀬を抱きしめる。
日夏梨「尚也のそばにいたいの…ごめんね」
   一ノ瀬、日夏梨を強くだきしめ、
一ノ瀬「違うよ、日夏梨。俺は自由だよ。日夏梨がそばにいれば。俺は生まれてはじめて自由にな
 れる、日夏梨が俺に向かって笑う時。知ってたか?」
   涙を流す笑顔の一ノ瀬。
一ノ瀬「もう二度と、俺から離れんな」
   抱きしめ合う日夏梨と一ノ瀬。
   一ノ瀬は日夏梨の足を見る。
一ノ瀬「ちゃんと歩けるようになったんだな」
日夏梨「うん…」
   日夏梨と一ノ瀬が見つめ合う。
日夏梨「でも…本当にいいの?」
一ノ瀬「ん?」
日夏梨「本当に出てくれるの?凄く小さいイベントなんだよ」
   笑う一ノ瀬。
一ノ瀬「いいよ」
日夏梨「地域イベントだよ。尚也、地域イべントって知ってる?ギャラ出ないんだよ。
 お客さん凄く少ないかもしれないんだよ」
   笑う一ノ瀬。
一ノ瀬「いいよ。俺らの復活にこんなふさわしい場所ないだろ!」
日夏梨「きゃ!」
   一ノ瀬は日夏梨を抱き上げる。

○河川敷・全景
   簡素なステージが一つある。

○同
   中学生の吹奏楽部がステージで音出しをしている。
   ステージの壁には、多摩川ミュージックイベントの文字。
   日夏梨がスーツ姿でステージ横を走る。
日夏梨「ああ椅子は50でお願いします、上手下手それぞれ25、25で」
   × × ×
   一台のワゴン車が止まる。
   内藤と一ノ瀬、岸本、そしてブライアン(20)が降りてくる。
   日夏梨が駆け寄る。
日夏梨「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
岸本「よろしくお願いします。おお結構いい場所だね。ああこちらがブライアン、話してたドラマ
 ーの人ね」
日夏梨「ああ、ナイステュミーテュー。アイム日夏梨」
   日夏梨とブライアンが握手をする。
   日夏梨の頭を軽く叩く一ノ瀬。
一ノ瀬「よろしく」
内藤「よろしくね」
   ギターを背負う内藤と一ノ瀬。
   × × ×
   ステージの上に立っている一ノ瀬と内藤。日夏梨が見守っている。
   ギターの調節をする一ノ瀬と内藤。
一ノ瀬「あ、あ」
   マイクチェックをする一ノ瀬。
   女子中学生達が騒ぎ始める。
女子中学生「え?あれってダンダスの尚也さんと隼人さんじゃない?」
   日夏梨が中学生を見て、微笑む。
   スマホを構える中学生。
日夏梨「あ」
   日夏梨が中学生に駆け寄りながら、
日夏梨「ごめんなさい!写真撮影は出来ないのでスマホは閉まって…」
一ノ瀬の声「日夏梨!」
   日夏梨が振り返る。
   一ノ瀬と岸本が話す。頷く一ノ瀬。
一ノ瀬「(マイクに向かって)そこの子達、撮っていいよ」
日夏梨「え…」
女子中学生「きゃ!ありがとうございます」
一ノ瀬「(マイクに向かって)撮るならかっこよく撮ってね」
   微笑む一ノ瀬。
   騒ぐ中学生。
女子中学生「即ツイッターいきでしょ。めっちゃかっこいいんだけど」
   スマホをいじる中学生の手。
   × × ×
   ステージから降りてくる一ノ瀬と内藤。
   内藤が立ち止まる。
   ノアが立っている。
内藤の声「あんたもしぶといな」
   ノアが内藤を見る。
   内藤がギターを抱えたまま歩いてくる。
ノア「別に私は…」
日夏梨の声「ノアさん!」
   日夏梨が走ってくる。
日夏梨「来てくださったんですね」
ノア「…」
   目を逸らすノア。
   ギターを降ろす一ノ瀬、日夏梨とノアを見て歩き出す。
日夏梨「嬉しいです」
   立ち止まる一ノ瀬。
ノア「うっざ…」
日夏梨「同じファンとして今日のステージは絶対に見逃せないと思ったので、ノアさんには是非来
 て頂きたかったんです」
ノア「尚也が復活するのを私が見なくて誰が見んのよ」
   笑顔の日夏梨。
日夏梨「はい!」
   一ノ瀬、微笑みながら去っていく。
   日夏梨を呼ぶ声。
日夏梨「あ、すいません失礼します!どこからでも好きな場所から見てください!」
   笑う内藤。
内藤「皆んなして尚也尚也って…そんなにあいつカッコいいか?」
ノア「あんたと尚也比べないでよ」
   内藤はノアを見る。鼻で笑う内藤。
   内藤が去りながら、
内藤「まあ楽しんで」
   ノアは内藤を見る。

○同・全景
   ステージで中学生吹奏楽部が演奏している。
   ステージの周りにぞくぞくと集まる沢山の人だかり。

○同
   拍手の音。
   コーンを駆け足で立てる日夏梨。
   辺りを見渡し、日夏梨が慌てる。
日夏梨「え…ちょ…何でこんなに…」
   岸本が走ってくる。
岸本「宮田さん!中学生の子がSNS上げちゃったみたいで…」
日夏梨「あ…そうだったんですね…」
   日夏梨、腕時計を見る。
岸本「あいつらに話して来ますね」
日夏梨「もう時間なので私から伝えてきます!」
   日夏梨が走る。
   × × ×
   白いテントの中に入る日夏梨。
日夏梨「失礼します!スタンバイお願い…」
   椅子に座ってる一ノ瀬と内藤が立ち上がる。
一ノ瀬「よし。行くぞ!」
内藤「おう!」
日夏梨「あ!ちょ!」
   日夏梨が両手を広げる。
一ノ瀬「どうした?」
日夏梨「いや…その…人がね…想像以上に…」
   俯く日夏梨。
一ノ瀬「日夏梨」
   日夏梨の顔を上げる一ノ瀬。
一ノ瀬「俺は日夏梨のおかげでここまで来れた。客が1000人だろうが、1人だろうが、俺らの
 音楽は変わんねえよ」
日夏梨「え…いや…」
一ノ瀬「だろ?隼人」
内藤「もちろん!」
   日夏梨の頭に手を置き、出て行く一ノ瀬。続いて出て行く内藤とブライアン。
   日夏梨、振り返る。
日夏梨「頑張れ」
   微笑む日夏梨。
   × × ×
   土手を歩いている佳子と一之と結月、立ち止まり、
佳子「まあ凄い人ねお父さん」
一之「凄いなほんと。日夏梨はどこだ?」
結月「あ!あそこです!あそこにいます!」
一之「え?どこどこ?」
   一之必死に辺りを見回す。
   × × ×
   ステージ裏でイヤーモニターを付ける一ノ瀬と内藤。手を合わせる。内藤と一ノ瀬、それぞ
   れブライアンと握手をする。
   一ノ瀬、勢いよくステージに出る。
   歓声。
   立ち止まる一ノ瀬。客席を見渡し、呆然と立ち尽くす。
   続いて、内藤がステージに上がり、立ち止まる。

○同・全景
   ステージの周りを埋め尽くす大勢の人。

○同
   ステージの上の一ノ瀬と内藤、顔を見合わせる。
   × × ×
   佳子が一之の肩を叩く。
佳子「お父さん一ノ瀬さん!」
一之「ああ!一ノ瀬さーん!」
   手を挙げ叫ぶ一之。
   × × ×
   ゆっくりと一ノ瀬、内藤、所定の位置へと歩く。
   一ノ瀬は振り向く。
   内藤が一ノ瀬に頷く。
   一ノ瀬が頷く。一ノ瀬、ブライアンにも頷く。
   一ノ瀬はマイクに向かって、目を閉じる。
   歌い始める一ノ瀬。
   ギターを弾く内藤。
   勢いよくギターを弾く一ノ瀬。
   マイクに向かい叫ぶように歌う一ノ瀬。
   手を挙げる客席。

○同・全景
   ステージの周りの大勢の人が手を挙げている。

○同
   ステージの上でギターを弾く一ノ瀬と内藤。
   一ノ瀬は叫ぶように歌う。
   一ノ瀬、振り返り内藤に微笑みながらギターを弾く。
   一ノ瀬、内藤のマイクで内藤と一緒に歌う。
   リズムに乗る客の手。
   内藤がギターを弾いている。
   × × ×
   結月がジャンプしている。結月の隣にはノアの姿。
結月「隼人さーん!」
   ノアが結月を見て、内藤を見つめる。
   佳子と一之がジャンプしている。
   × × ×
   日夏梨が客席を見渡し、笑顔になる。
   × × ×
   カメラを担いで走ってくる沢山の男達。
   カメラを構える男。隣には叫びながら指示を出している男。
   × × ×
   マイクを両手で掴み歌う一ノ瀬。
   一ノ瀬はマイクを取り、アンプに足を乗せながら歌う。
   一ノ瀬、内藤とブライアンを見てギターを振りかざす。
   歓声。
   拍手の音。
   一ノ瀬が客席を見渡す。
   一ノ瀬、イヤーモニターを外し頭を下げる。
   頭を上げる一ノ瀬。笑顔が消える。
   客席を見渡す笑顔の日夏梨。日夏梨、ステージを見て、高々と手を掲げ拍手をする。
   鳴り止まない歓声。
   一ノ瀬、日夏梨を見つめる。
   日夏梨、一ノ瀬を見つめる。
   一ノ瀬、ゆっくりと笑顔になり、愛してるとつぶやく。
   笑顔の日夏梨。
   笑顔の一ノ瀬。

○同・全景
   大勢の人のかたまり。

○海(日替り)
   タキシード姿の一ノ瀬とウェディングドレスを着ている日夏梨が見つめ合っている。日夏
   梨、苦笑い。
   × × ×
   カメラを整える男。周りには沢山のスタッフ。
   日夏梨がカメラマンに近づく。
日夏梨「あの…本当に私でいいんでしょうか?私、本当に地味な顔ですし…」
   日夏梨の腕を掴み、連れて行く一ノ瀬
一ノ瀬「日夏梨」
日夏梨「ちょ…」
一ノ瀬「なんだよその顔!俺の記念すべきモデルデビュー台無しにするつもりかよ」
日夏梨「だから…私じゃなくても…」
   一ノ瀬が日夏梨の頬をつまむ。
日夏梨「い!」
一ノ瀬「俺と二人でいると思え」
日夏梨「無理に決まってるでしょ!そんなの」
一ノ瀬「なんで無理なんだよ。俺だけ見てればいい。それだけのことだろ?」
日夏梨「いやだからそんなの無理だって!っていうか痛い!離して!」
   日夏梨が一ノ瀬の腕を振り払おうとする。
一ノ瀬「やだ」
   日夏梨が一ノ瀬の頬をつまむ。
   カメラマンがゆっくりカメラを構える。
   日夏梨を追う一ノ瀬。
   笑顔の日夏梨。
   一ノ瀬が日夏梨に抱きつく。
   一ノ瀬を押す日夏梨。
   日夏梨の手を引っ張る一ノ瀬。
   一ノ瀬が日夏梨に水をかける。
   日夏梨が驚く。

○同(夕)
   タキシード姿の一ノ瀬と手を繋ぎ歩く
   ウェディングドレス姿の日夏梨。
日夏梨「さすがプロだね。凄く綺麗に撮れてたね写真」
一ノ瀬「そうか?」
日夏梨「そうか?ってそれどういうこと?」
一ノ瀬「俺には全部微妙に見える」
日夏梨「ちょっと!ひどい!」
   笑う一ノ瀬。
   一ノ瀬は左手で日夏梨の右手を引っ張る。
一ノ瀬「なあ日夏梨…」
日夏梨「ん?」
一ノ瀬「俺はずっと…音楽がどれだけ凄いか分かってたつもりだった。でも…違った」
日夏梨「え?」
一ノ瀬「俺なんかよりもずっと…目の前で純粋に音楽を楽しんでる皆んなの方が知ってた」
   一ノ瀬は振り返り、
一ノ瀬「日夏梨に気付かされた」
日夏梨「そうだよ」
   微笑む日夏梨。
日夏梨「皆んな尚也の音楽が大好きなんだよ」
一ノ瀬「日夏梨は?」
日夏梨「え?」
一ノ瀬「俺のことどう思ってる?」
日夏梨「え?どうって…同じ指輪…付けれて嬉しかったなあ…一瞬だったけど…」
   左手を見つめる日夏梨。
一ノ瀬「そうじゃなくて」
   一ノ瀬を見つめる日夏梨。
日夏梨「…かっこいい…」
一ノ瀬「…じゃなくて」
   日夏梨が海を見つめる。
日夏梨「わあ!綺麗!」
   一ノ瀬は俯き、笑う。
   振り返る日夏梨。笑顔の日夏梨。
日夏梨「尚也、大好きだよ」
   笑顔が消える一ノ瀬。
日夏梨「今までも、今も、これからも、ずっと大好きだよ」
   日夏梨を後ろから抱きしめる一ノ瀬。
   日夏梨、一ノ瀬を見つめる。
   一ノ瀬、日夏梨の左手を掴み薬指に指輪をはめる。
   日夏梨、左手を上げる。
   薬指には指輪。
   日夏梨、驚き一ノ瀬を見る。
   一ノ瀬が日夏梨を見つめ、笑顔になる。
   日夏梨が笑顔になる。
   一ノ瀬、日夏梨にキスをする。
   一ノ瀬と日夏梨、海を見つめる。
   海を見つめる一ノ瀬と日夏梨の後ろ姿。
   日夏梨が海に向かって走る。
   続いて一ノ瀬が海に向かって走る。
   夕日に照らされる海で、日夏梨を抱き上げる一ノ瀬。

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