遺失物防止用スプレー【世にも奇妙な物語風】 ファンタジー

「もしも落とし物の頻度を減らしてくれる魔法のアイテムがあったら…」そう願って購入したスプレーだったが、そのアイテムには副作用が存在した。 医学的に開発されたからこそ引き起こされる副作用と並行して主人公は奇妙な世界に巻き込まれ、やがて主人公は真実と対面するとき、一体何を思うのか。
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第一稿

忘れ物。それはふとした気の緩みから発生する、いわば人間のバグみたいなものである。この世に存在する全ての人間が一回は経験した事があるその行為をもし、ある一つの「アイテム」によって医学 ...続きを読む
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忘れ物。それはふとした気の緩みから発生する、いわば人間のバグみたいなものである。この世に存在する全ての人間が一回は経験した事があるその行為をもし、ある一つの「アイテム」によって医学的に回避することが出来たらあなたはどうしますか?

今回はそんな奇妙な世界の主人公となった「原田 碧」という男の物語を実際に覗いて見ましょう。

「ご乗車ありがとうございました。」毎日聞いていたアナウンスと共に電車のドアが開く。「あ、降ります!」人ごみに飲み込まれながら、とても朝とは思えない大きい声を発して、目的地へ降りようとする。

いち早く降りるために力強く踏ん張ったせいで、何かカランと音がしたが人混みを掻き分けるのに必死で気づかなかった。それが今後の人生を変えるかもしれない「モノ」とも知らずに。

「遺失物防止用スプレー」

「これだから朝は嫌いなんだよ…」そう愚痴をこぼしながら碧は専門学校に通う途中、右ポケットに異様な違和感を感じた。そして感じたと同時に頭の中で察してしまった。

そう。「落とし物」だ。

しかもよりによって落としたのは通帳と印鑑だった。今日学校で重要書類を書く時間があり、その授業の一環として通帳と印鑑を持ってくる必要だったのだが、急いで家を出たためにずっとポケットの中に入れたままだったのだ。

「やっべ!あ、うわぁ…」声にならない声を漏らし、急いで引き返そうとするがもう間に合わないと諦め、また前を向こうとする。その時、目の前にある一頭の動物がこちらを見ていた。

「なんだあれ?シロクマ?」

碧は何度も目を擦り確認したが、どうしてもシロクマが立っているようにしか見えなかった。

普通は注目を浴びるはずのシロクマなのに誰にも気付かれないことに対して碧は「明らかにおかしいのになんで気付かないんだ?」と呟く。そう呟いた瞬間、シロクマは自らめがけて追いかけてきた。

「え、ええっ! やばいやばい!」たくさんの人がいる中、なぜ朝からシロクマに追いかけられなければいけないんだと思いながら碧は近くの専門学校まで走り続けた。

「もうさすがに追いかけて来ないだろ… シロクマが学生じゃなければの話だけど…」と碧は息を漏らす。

チャイムが鳴り、エレベーターのドアが開いたと同時に見たことある生物が学校の入り口に入ってくるのを見て碧は「おい、うっそだろ! まじでヤバすぎるって!」と言いながら碧は急いでエレベーターのボタンを連打する。

それに気付いたシロクマも、急いで追いかけるがあと一歩のところで扉が閉まり、間一髪のところで難を逃れた。

「なんなんだ朝から…」碧は安心して自分のクラスがある4階のボタンを押す。チャイムが鳴り、出ようとすると少し先に消火器を持ったシロクマに遭遇する。

「ま、まさか…」その後シロクマは碧の姿を確認した後、こちら目がけて走ってきた。「おいおいおいおい!」またもエレベーターのボタンを連打し、消火器を振りかぶる直前にドアが閉まった。

「もういい加減にしてくれよ…」誰もいないエレベーターの中で碧は嘆いた。朝から疲労で疲れ、碧は思わず体育座りになって蹲る。

それから数秒後、碧の携帯から着信音が鳴る。電話の主が誰かも確認せずにまるで八つ当たりかのような声色で碧は「おいどうなってんだよ!おまえの目的はなんだ!誰なんだお前は!」と誰かも分からない人物に対して怒りを露わにした。

すると、電話口から聞いたことある声が聞こえた。「お前どうした朝から? 一旦落ち着け。お前今日電車の中で通帳と印鑑落としたろ? 今からそれを届けに行くから少し待っとけ。」淡々と話し、すぐに電話を切ろうとしたのは同じクラスの優也だった。

「なんだ優也か… お前マジで驚かせんなよ… 」知り合いの声が聞こえた瞬間に安心しきった碧は、今こんな馬鹿みたいな話を聞いてくれるのは優也しかいないと確信し、電話の向こうにいる優也に続けてこう話しかけた。

「なあ、聞いてくれよ… 今二足歩行するシロクマに追いかけられてんだよ… しかもなんか消火器持って追いかけてきてもう何が何だか分からなくて…」

すると優也は当たり前のように疲労困憊の碧をからかい始める。「二足歩行のシロクマなんて存在する訳ないじゃんw ここは南極じゃないんだし笑 それに消火器持って追いかけてきたんでしょ? クマにしては頭良すぎでしょ笑」

優也の性格が手にとってわかるような理にかなった話に思わず納得してしまった碧は、一人エレベーターの中で笑っていた。「じゃあ教室に集合な! 合流したら渡しにに行くから!」そう言って碧は電話を切り、自分の教室に向かった。

教室に着くと、自分の普段座っている座席の近くにシロクマが立っていた。「えっ… なんで…」思わず絶句した碧のもとにシロクマがゆっくりと近づいてくるのを見て、あまりの恐怖心から腰を抜かしてしまい、動けなくなってしまう。それでも構わず近づいてくるシロクマに対して碧は、「や、止めろ! これ以上近づくな!」と騒ぎ立てる。

朝の授業前の準備時間に個人個人のプライベートを破壊するような大きな声が聞こえたことに他のクラスメイトは碧に視線を向けるが、誰一人として助けようとはしなかった。なぜなら、碧にとってはシロクマに見えているはずの生命体が第三者視点から見るとシロクマではなく優也だからだ。

そんなことも知らず、碧は今いるクラスメイト全員に呼び掛ける。「おい!誰か助けてくれよ!シロクマがいるんだぞ!誰も逃げようとしないのかよ!」

その呼びかけに答えたかのように一人のクラスメイトが答えた。「何言ってんだお前は。そいつシロクマじゃなくて優也だぞ。」

「えっ… だって…」碧がそういった瞬間、シロクマは優也のテンションで話しかけてきた。

「ほらお前、通帳と印鑑。お前朝からマジでどうした? 一回医務室行って診てもらえよ笑」そういわれた瞬間、シロクマから優也にだんだん変化し始め、ついには完全な優也へと変化した。

「あれ…なんで…」先程まではどこからどう見てもシロクマだったのに、今は優也にしか見えなかった。

「ご、ごめん… みんなも朝から騒いじゃって…」受け止めきれない現実を直視できないまま碧は思わず謝った。

その後碧は床にあった通帳と印鑑を拾いながらいつも通り自分の席に着席し、自分にしか見えなかったシロクマの謎を考えながら、いつもつるんでいる友人と何気ない会話で盛り上がった。

「ごめん!やっぱり俺医務室行ってくる。さっきのまだ気になってて…」何分か経ち、碧は自分の精神状態が心配になり、途中で会話をやめて医務室に行くと伝えた。

「やっぱりなんかひっかるんだよなぁ… よりによってなんで優也なんだろうな…」碧はそう呟きながら1階のエレベーターのボタンを押す。

8時55分。始業開始5分前になった時、碧の通っている専門学校はチャイムが鳴る。それはまるで遅刻しそうな学生の足を強制的に走らせるトレーニング器具のように。あるいは話に盛り上がっている学校内の学生の話を遮る遮断機のような役割を持っているかのようだった。

ただ、碧ともう一人の学生だけはその日のチャイムの効力は効かなかった。そして、チャイムとほぼ同時に4階のエレベーター前で「ドンッ」と鉄製の鈍い音が響き渡った。だがその音は誰にも聞こえなかった。

1つの事件の合図だったはずのその音も虚しく、1人の学生はエレベーター前で倒れ、意識を失ってしまう。その後に到着したエレベーターのチャイムが鳴り、当たり前のように扉が開く。その様子はまるで碧の意識だけを幽閉するために開いた地獄の扉かのように感じた。

「…田さーん! 原田さーん! 聞こえますかー!」

「えっ… は、はい…」

目を覚ますと水色の服と白いヘルメットを着用した男性が複数人いた。碧は薄っすらと返事をしながら、今自分の身に起きている非日常な出来事を理解しようとした。「このヘルメットは明らかにそうだ。救急隊員だ。」碧はそう確信した。

そして、碧は5%程の理解をした後、頭残っていた異様な痛みによって気を失った。

目を覚ますとそこは大きな病院だった。ベッドの傍には両親や担任の飯島先生、そして複数人のクラスメイトが見守っていた。「大丈夫か碧?」父親が心配そうに話しかける。

「なっ、何が?」碧がそう答えると、見守りに来ていた両親は驚いた。「何がって、お前、消火器で後頭部を殴られたんだぞ!」反射的に父親が答えた。

「だっ、誰に?」「そんなこと分かってたらもう捕まってるわよ!」疑問形で答えた碧に対して、母親が答える。病室で自身に起こった出来事について状況整理をしようとした瞬間、担当医が部屋に入室してきた。

「原田様失礼致します。担当医の岡本と申します。」見た目に反するぐらいの丁寧さで挨拶をしてきた岡本に対して碧は、「この人少し相性合わないかも…」と余計なことを考えていた。

「申し訳ございませんが、お子さんと少しお話をさせて頂きたいので、ご退出して頂いてもよろしいでしょうか?」そう岡本が話すと、両親は少し不満に感じながらも渋々病室から出た。

「なんで親だけ? 他にも担任とかいっぱいいたのに。」疑問に思った碧は思わず質問する。「原田様。 こちら見覚えありませんか?」岡本は碧の疑問をスルーして、袋に入っているスプレーに注目させた。「あ!それ!俺の忘れ物を防ぐスプレー!」岡本が手に持っていたスプレーには「遺失物防止用スプレー」と書かれたラベルが貼ってあった。

「病院に搬送した際に所有物をまとめて保管させて頂いたのですが、そのときに見つけたものです。 勝手に所有物をまとめたことに対しては申し訳ないと思っているのですが、こちらはどのような経緯で入手されましたか?」と、社会人としてはあってはならない「質問を質問で返す」ということを軽くやってのけながら、岡本はスプレーの詳細について質問した。

「えっと… それは普通にZazazonで買ったやつで、最近忘れ物とか落し物がひどいからちょうどいいなぁと思って…」恥ずかしそうに説明する碧に対して、岡本は警察の取り調べのような空気感で物事を整理し始めた。「こちらちゃんと説明書などは読みましたか?」と質問する岡本に対して碧は、「いや、早く使いたくて読んでないんですよね…笑」と答える。

「分かりました。では先程の質問も交えてこのスプレーの詳細について説明させて頂きます。」と岡本は話し始める。寝たままの状態で訳も分からないままスプレーについての説明をすることに仕方なく了承した後、説明が始まった。

「まずこちらのスプレーはご覧の通り、落とし物や無くし物を防ぐためのスプレーとなっております。使い方としてはこちらのスプレーを貴重品や私物に吹きかけるだけの物ですが、こちらを使うにあたっての注意点として、落とし物や忘れ物をした場合、幻覚作用が発生する仕組みとなっており、この医学的に引き起こされた幻覚作用を利用して使用者に心的外傷を与え、再度引き起こさないように注意して頂くというのがこの遺失物防止用スプレーの詳細でございます。」

岡本はセールスマンのように商品を説明し、先程の質問に対する回答をしようとした時に碧はすべてを察する。「えっ…じゃあ… 追いかけてきたシロクマとか今病室にいる飯島先生とかクラスメイトとかって…」「左様でございます。そのようなものは存在しません。」岡本が言ったその言葉を聞いて碧はすべてを理解した。そして同時に、碧の傍にいた飯島先生やクラスメイトが煙のように消えていった。

「さらに先程シロクマと言いましたが、幻覚作用といっても種類があり、動物や植物などがあります。もしかして原田様は直近でシロクマを見たのではないでしょうか?」と岡本はさらに碧の心を探り始めた。その岡本の問いに対して、碧はあることを思い出す。「そういえば、コンビニで飲み物を探していた時にアイスコーナーで白くまっていうアイスを見た気がする…」

「おそらくそれが原因かと思われますね…」と岡本はスプレーの詳細について長々と説明し、幻覚の謎が解けたことで一安心した碧は、「このスプレーめっちゃ詳しいんすね笑 使ったこととかあるんですか?」と尋ねる。

「いや、このスプレーはこちらが販売していますし、この幻覚作用についての問い合わせなどが多いので、説明するのは慣れているんです。」と、スプレーについての説明が終わり、岡本が病室を退出しようとした瞬間、警察が病室に入室してきた。

「今原田さんの状態は大丈夫ですか?」と警察が岡本に尋ねると、「大丈夫です。意識も回復して会話できるほどにはなったので。」と答える。

安否を確認した警察はゆっくりと碧に近づいて、「こんにちわー。警察の菊田と申します。ちょっと先程の傷害事件について碧さんからも状況を教えて頂きたくて、来させてもらったんだけど今別室に移動できるかな?」と挨拶をしたついでに別室に行くように提案してきた。

「えっとその…」突然の誘いに若干戸惑いを隠せない碧は断ろうと考えたが、続けて発せられた菊田の一言によって別室に行くことを決心する。

「内容としては今朝の傷害事件についての事情聴取とあなたを殴った犯人について話そうと思っているんだけど、少々重い話になるかもだから無理して来なくてもいいけどどうする?」

自分を殴った犯人について知る必要があると考えた碧は快く提案を受け入れ、財布や携帯などの貴重品を持って菊田と一緒にパトカーに乗って警察署に向かった。

取調室のような部屋に案内され、菊田と二人きりで部屋に入る。部屋に入ると壁には意味深な壁掛けテレビがぶら下げてあり、部屋の角には監視カメラが置いてあった。「じゃあ早速今朝起きた事件について話してほしいんだけど、全然ゆっくりでも大丈夫だから安心していいよ。でもちょっと参考のために録音とかメモとかするけど気にしないでいいから。」と安心させるために優しい口調で菊田は言った。

碧は菊田のその言葉を信じ、今朝自分の身に起きた不思議な出来事について包み隠さず全てを話した。

忘れ物に気づいた瞬間にシロクマに追いかけられたこと、消火器で殴られそうになった瞬間にエレベーターのドアが閉まり、間一髪で助かったこと、そしてそのシロクマが忘れ物を拾った瞬間に優也に変化したことなど、話の途中でその都度菊田に質問されながら話を広げていった。

ある程度被害者からの情報を入手した菊田は、「分かった。色々話してくれてありがとう。」と会話を終わらせた。会話を終わらせたと同時に菊田はいきなり壁に掛けられたテレビの電源をつけ、おもむろにチャンネルを変え始めた。

チャンネルを変えながら菊田は碧にこう尋ねた。「もちろん碧くんは殴られたとき誰に殴られたか分かってないよね?」

「は、はい…」いきなりテレビをつけたことに動揺を隠せない碧は、質問の内容を理解することもなく無意識に答えた。

「じゃあちょっとこれ見てくれる?」そう言って菊田に見せられたのは何気ない情報番組だった。そこには何故かさっきまで自分が通っていた専門学校が映し出されており、テレビには優也の顔と見出しのテロップに殺人事件の文字が書かれていた。

「えっ…これって…」碧が事件の真相に気付き、口を開こうとした瞬間菊田は先程の会話のテンションとは真逆の声色で衝撃の事実を口にした。

「実は君のことを殴ったのは優也くんなんだよ。」

その言葉を聞いた瞬間碧はその事実を疑い、自分が怪我人だと忘れてしまったかのような勢いで身を乗り出しながら菊田に質問した。「嘘だ!優也はそんなことをするような人じゃない!きっと何かの間違いだ! な、何か証拠はあんのかよ!」

「分かったから落ち着け。証拠はあるから取りあえず座ってくれ。」怪我をさせるとさらに悪化すると感じた菊田は、碧をなだめながらゆっくりと話し始める。

「これは自分から話すより直接加害者から聞く必要があると思って、一応録音しておいたからまずはそれを聞いてくれ。」そして机の上に置かれたのは誰もが知っているテープレコーダーというものだった。カチッと菊田はスイッチを入れるとレコーダーから紛れもない優也の声が聞こえた。そこには優也本人からすべての事件の真相について語られた音声が流れた。

優也は元々数週間前から人を殺める計画を立てていて、昼休憩や帰り道に計画がばれないようにホームセンターなどで買い物をしていたこと、初めはたまたま電車で落とし物を拾い、碧に届けようとして追いかけたが計画に間に合わないと思った優也は後で渡そうと考え、先に殺人を実行した瞬間エレベーターのドアが開き、殺人事件を見られたと勘違いした優也は乗っていた碧を殺そうと追いかけたこと、途中で会話をやめて急いで医務室に行くと言った瞬間、通報されると思った優也は即座に追跡し、近くにあった消火器で口封じのために碧を殺そうとしたことなど全て優也の声で音声が流れていた。

「これで信じてもらえたかな。紛れもなく犯人は優也君だよ。」

全ての証拠が出揃い、疑う余地もなくなった先に見えたのは「友人が殺人犯」という信じ難い事実だった。つけっぱなしのテレビには未だに殺人事件のニュースが放送されており、丁度画面のテロップに「滝沢優也」というのフルネームと共にパトカーに連行される優也の姿が映し出されていた。

「ある程度覚悟してきてくれたとは思うけど、急にこんな衝撃的な内容を聞かしてしまって申し訳ない。今はゆっくり病院に戻って休んで、親とか担任の飯島先生とかに無事を伝えないといけないから先に戻ってていいよ。 後の対応に関してはこっちでやっておくから。」と菊田は言うが、受け止めきれない現実に直面し、放心状態の碧は「あ、ありがとうございます…」と言ってゆっくりと部屋を後にした。

女性の警察官に誘導され、病院に着くと両親が待っていた。「碧… 本当に生きててよかった…」母親がその言葉を口にした瞬間、碧は心の中で「両親もあのニュース見たんだな…」と感じた。母親が泣きながら迎えに来てくれたが、未だに自分の知らないところで優也が殺人に対しての計画を立てていたことが受け止めきれず、碧は「ごめん、今は一人にさせてほしい。」と言い、病室に戻った。

自分の病室に戻ると、通学時に持っていた私物が全て机の上に置かれていた。その中には奇妙な出来事に巻き込まれたきっかけとなる通帳や印鑑、そして袋に保管されていた遺失物防止用スプレーなどが置かれていた。

あれからどれだけの時間がたっただろうか。気付いたらベッドに寝そべっており、3時間程時間が進んでいた。「俺… いつの間にか寝てたのか…」そう呟き、気を紛らわすためにスマホゲームをしようとした瞬間、碧はあることに気が付く。

「えっ!ス、スマホがない! まずいこのままだと… 幻覚作用が…」

無くしたことにより、望まない幻覚作用が襲い掛かると分かっていた碧は急いで携帯を探し始める。

「やっべぇ!寝てたから何にも分かんねぇ! あの時どこやったっけ…?」探してから数分後に碧は、病室のドアを破壊して現れたヒグマを目撃する。「今度はシロクマじゃなくてヒグマかよ! やばい!殺される!」

そして碧は誰もいないはずの病室で一人で騒ぎはじめ、パニックに陥ってしまう。

そしてそんなことも知らず、一人の看護師が病院の廊下でひとりでに鳴り続ける携帯を拾う。

「あら?これ落とし物かしら? 取りあえずサービスカウンターに届けに行かないと… まだたくさん仕事が残ってるのに途中で寄り道しないといけないなんて…」

看護師がサービスカウンターに落とし物を届けると、鳴り続ける携帯の画面には「熊田」の文字が書かれていた。

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