形勢一変 ドラマ

最高のひとときを再現するをモットーに掲げる代行会社に勤める吉田彰。 ある日、吉田は勤務中に目の前で交通事故が起こってしまう。その時に怪我を負った歩行者は高校時代の同級生、鈴木浩一だった。 競合コンペを明日に控えていた鈴木は、案件を逃さないため、ある提案を吉田にするが・・・
くじら 30 1 0 11/15
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第一稿

人 物
吉田彰(35)代行会社の社員
鈴木浩一(35)吉田の友人
中村美穂(23)鈴木の後輩


○病院の個室(夕)
鈴木浩一(35)が病室のベットで寝ている。
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人 物
吉田彰(35)代行会社の社員
鈴木浩一(35)吉田の友人
中村美穂(23)鈴木の後輩


○病院の個室(夕)
鈴木浩一(35)が病室のベットで寝ている。
吉田彰(35)は3枚の紙を見ている。
吉田は何度も紙をめくり、書いてある
文章を読んでいる。
吉田は紙を鈴木が寝ているベットに
ついている机に置く。
吉田「正気か?」
鈴木「ああ」
   吉田は頭をかく。
   鈴木は顔をゆっくり吉田に向ける。
鈴木「そんなに気になるか?お前、代行の仕事をしているんだろう?」
吉田「そうだ。そうだけど、俺がやってるのは父親だったり、弁護士のまねとかその場凌ぎのもんばっかりなんだ」
鈴木「それが営業マンになるだけでは?」
吉田「全然違うだろ!」
   吉田はベットにつけられた机を
大きな音を立てて叩く。
机から紙が舞い、床に落ちていく。
吉田は反射的に拾おうとするが、
拾わずに椅子に座り直す。
鈴木は真っ直ぐ正面を見る。
鈴木「吉田。俺とお前は似ている」
吉田「声と顔だけだ」
鈴木「体格もだ」
吉田「ああ、はいはい。体格も。でもそれだけだ」
鈴木「いや、度胸も頭の良さも機転が効くとも似ている。挙げたらキリがないくらいだ」
吉田「褒めているのか、自慢したいのかどっちなんだ」
鈴木「それにお前の会社に正規で申し込んで、利用しているだけなのに何の問題があるんだ」
吉田「守秘義務とか色々あるだろ」
鈴木「まあ、大したもんじゃない」
吉田「大ごとだろ」
鈴木「今回の案件が取れるなら大したことじゃない」
吉田は大きなため息を吐く。
鈴木「俺とお前で違うのは、記憶力と演技力だ」
吉田「はあ」
鈴木「覚えているか?大学入試の時」
吉田「あー。あれか、そういえばお前は大事な時にいつも怪我するな」
鈴木「そして運がいいことに、吉田と一緒にいる」
吉田「運が悪いの間違いだろ」
鈴木「大学入試の時」

〇(回想)日英大学近くの公園・トイレ(朝)
鈴木は脱いだ服を吉田に渡す。
吉田は服に着替えると、
鈴木に服を着せる。
鈴木は鞄の中からノートを渡す。
鈴木「ここに入試対策の質問の答えが書いてある」
吉田「ああ、とりあえず救急車がくるからベンチに移動するぞ」
吉田は肩を貸して鈴木を引きずるよう
に動かしベンチへ移動する。
吉田は手に持っていたノートを
パラパラとめくる。
吉田はノートを鈴木のカバンに入れて
持って走り出す。
吉田「まかせろ。合格させてやる」

○病院の個室(夕)
鈴木は瞬きをする。
鈴木「あの時と一緒では?」
吉田「全然違う」
鈴木「あのあと、合格した時に思った。お前には才能がある。なんで劇団を辞めたのか聞かないが、俺はそう思ってる」
   鈴木は胸を押さえながら、起き上がる。
鈴木「頼む。これが取れるかで会社の存続がかかってるんだ」
吉田は手をあたふたとさせる。
鈴木「他に行けばいい?と思うだろうが、俺はここの社長に恩があるんだ。今時古臭いと思うけど、俺はこんなことで会社を潰したくない」
   鈴木は頭を深く下げる。
鈴木「頼む」

○マンション・吉田の部屋(夜)
6畳の部屋にはホワイトボートが
3つあり、壁には何も入っていない
本棚が並んでいる。
部屋の真ん中にスマホスタンドが
置かれた小さな机が立っている。
吉田は部屋に入るとスマホを
スタンドにセットする。
通話を開始すると、画面は鈴木と
通話中になる。
吉田はホワイトボードマーカーを
手にもつと書き始める。
1つには鈴木の自身のことを、
1つは鈴木の人間関係のことを、
1つは今回の案件のについて書く。
吉田は写真を貼る。
ホワイトーボードは隙間が
なくなっていく。

○マンション・吉田の部屋の外(夜)
部屋にはカーテンがないのに、
繋げられた紙ののれんが
カーテン替わりになり中が見えない。

○マンション・最上階の廊下(朝)
吉田はスーツ姿で廊下を歩いている。

○マンション・最上階のエレベーター(朝)
吉田はスーツ姿でエレベーターに入り、
1階のボタンを押す。
○マンション・エレベーター内(朝)
吉田はスース姿でネクタイを締める。
腕につけた時計を見て、目を瞑る。

○マンション・1階エントランス(朝)
吉田はスーツ姿でエレベーターから
出てくる。
コツコツと音を立てつつ、
エントランスから出ていく。

○ひまわり公園(夕)
中村美穂(23)は両手にコーヒーショップ
で買ったSサイズのコーヒーを持って、
公園のベンチに座っている吉田
に近寄る。
美穂は吉田の前に立つと、
吉田にコーヒーを渡す。
吉田は美穂からコーヒーを受け取る。
美穂は吉田の隣に座る。
美穂「本日はありがとうございます。その、吉田さん」
吉田「気にしなくていい、仕事だ」
美穂「そんな訳には」
   美穂は持っているコーヒーを見つめる。
   吉田はコーヒーを一口飲む。
美穂「あの!」
   吉田は美穂を方へ顔を向ける。
美穂「先ほどの商談ですが」
   美穂はコーヒーを一口飲む。
美穂「まるで鈴木先輩みたいでした。どうしてあそこまでそっくりに出来たんですか?付き合いが長いからですか?」
吉田「中村さん。落ち着いて」
   美穂ははっとしてコーヒーに
視線を向ける。
美穂「すみません」
吉田「いや、まあ。そう言って貰えると僕としては嬉しいよ。役者冥利に尽きるってやつさ」
美穂「はあ」
吉田「鈴木については昨日知ったこと以外はほぼ知らないよ。大学時代でも関わりがあったのは少しだし」
美穂「そうとは思えませんでした」
吉田「ははは。まあ、鈴木のことは知らないけど、人のことはよく見てきたからね」
美穂「人ですか?」
吉田「ほら、この人はこう考える。この人はこうするとかあるだろ?」
美穂「ええ、まあ」
吉田「そういった色んな人のパーツを切り取って、鈴木浩一を昨日作ったんだ」
美穂「は、はあ?」
吉田「そして作り上げた鈴木浩一を演じた」
   美穂は首を傾げた。
吉田はコーヒーを一口飲む。
美穂「すみません。よく分からないです」
吉田「ははは」
   美穂は目線を足元にずらす。
吉田「じゃあ、AさんとBさんがいたとしよう。2人は同じ営業マンだけど、Aさんは明るくておしゃべり。Bさんは口数が少なく大人しい。でも2人とも業績が一緒で優秀だ。なぜだと思う?」
美穂「ええ?えっと営業が上手いとか?」
吉田「ではどういった営業をすると思う?全く同じ方法でやると思うかい?」
美穂「いえ、違うと思います。Aさんは営業の内容以外も話てそうな気がします。取引先の人と仲良くなったりとかかな」
吉田「じゃあ、Bさんは?」
美穂「営業の内容をプレゼンするのが上手いとかかな」
吉田「じゃあ、鈴木はAさんとBさんどっちのタイプに近いと思う?」
美穂「え?うーん。Aさんですかね」
吉田「俺も昨日の話を聞いててそう思った。じゃあ、Aさんをベースにもっと考えてみようか」

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