真島尋也(20)…大学生
橘俊介(40) …真島の援交相手
織田蒼太(20)…真島の友人
篠原実花(25)…橘の援交相手
男(30) …真島の援交相手
○公園(夜)
静か。人気がない。
○同・公衆トイレ・前(夜)
真島尋也(20)と男(30)、共に中から出て
くる。
○マンション・前(夜)
一台の車が停まっている。
○車・中(夜)
男、運転席。
真島、助手席。
男、財布から五千円札を取り出す。
真島「え、一万の約束じゃ」
男「今日、手持ち少ないんだよ」
と、真島に渡す。
真島、ひったくるように受け取る。
男、真島に顔を近づける。
真島、顔を逸らす。
男、真島の顔を掴み、強引にキス。
真島の手、男の胸あたりを押して、抵抗する
が、次第に力なく垂れ下がる。
男、顔を離し、真島の耳元で
男「……まあ、君もさ、いい加減働きなよ」
と、真島の肩を叩く。
真島、脱力したように呆然としている。
○マンション・真島の部屋・中(夜)
真島、中に入り、電気を点ける。
床に散乱するゴミ袋、ペットボトル。
机の上、様々な種類の処方箋。
隅に転がっているエレキギター。
真島、ほとんど足場がない床を歩く。
ベッドに座り、ズボンのポケットから五千円
札を取り出す。
舌打ちをして、近くのゴミ袋を蹴り飛ばす。
○大学・食堂
生徒で溢れかえっている。
真島、カレーライスの乗ったトレイを持ち、
誰かを探している。
織田蒼太(20)、席に座り、真島に向かって
手をあげている。
真島、織田に気がつく。
× × ×
真島と織田、向かい合って座っている。
織田のトレイに乗ったラーメン。
織田「めっちゃ久しぶりじゃね? 一週間とかだっ
け」
真島「うん。そんぐらい」
織田「また昼飯だけ食いに来た感じ?」
真島「……まあ」
織田「親泣くぞ」
真島「もう泣いてる」
織田「バイトは? 探してんの?」
真島「検索すらしてない感じ」
織田「尋也、お前さあ……」
真島「うん」
織田「ちゃんとするっていうかさあ、もっと、こ
う、最低限っていうか……」
真島、食事している手を止める。
真島「ちゃんとするって何?」
織田「え、だから、バイト見つけるとかさ」
真島「……それすらできない俺はどうしたらいいん
だよ」
と、俯く。
織田、黙り込む。
○マンション・外観(夜)
○同・橘の部屋・ベランダ(夜)
橘俊介(40)、煙草を吸いながら、スマホを
操作している。
○LINE画面
橘「今から会える?」
○マンション・橘の部屋・ベランダ(夜)
橘、煙草を吸って、景色を眺めている。
実花の声「何してんの?」
橘、振り返らずに
橘「別に」
篠原実花(25)、後ろから抱きつく。
実花「ねえ、今日泊まっていい?」
橘「駄目って言ったら?」
実花「橘さんのこと嫌いになる」
橘「それは困るなあ」
と、振り向いて、実花の頭を撫でる。
○定食屋・中(夜)
真島、カウンター席で食事。
○マンション・橘の部屋・ベランダ(夜)
橘と実花、向かい合ってキスしている。
実花、橘の首に両腕を回している。
顔を離す。
実花「じゃあ、私シャワー浴びてくるね」
橘「うん」
スマホの通知音。
橘、ズボンのポケットからスマホを取り出し
て、画面を見る。
実花、部屋の中に入ろうとしている。
橘、実花の背中に向かって
橘「あ、実花ちゃん」
実花、振り返る。
橘「あのさ、帰ってくれる? 金なら机の上にある
から」
と、優しく微笑みかける。
○同・.エレベーター・前(夜)
真島、エレベーターを待っている。
エレベーターが到着。
開く。実花が泣きながら立っている。
真島、一瞬驚くが、会釈して中に入る。
実花、中から出てくる。
真島と実花、すれ違う。
○同・橘の部屋・前(夜)
真島、ドアをノックする。
身なりを整える。
ドアが開き、橘が顔を出す。
真島、中に入る。
○同・中(夜)
綺麗に整頓された室内。
真島、先に中に入る。
橘、後ろから抱きしめる。
真島「……珍しいっすね。俊介さんの方から呼ぶな
んて」
橘「たまにはいいだろ」
真島、身体ごと振り向く。
真島「俺、今日すげえ会いたくて、学校も、頑張っ
て行って、授業受けて……」
橘、真島の頭を撫でる。
橘「頑張ったね」
真島と目を合わせて
橘「……って言われたかった?」
真島「え……」
と、驚いて目を見開く。
橘、真島の手を引き、ベッドへ連れて行く。
そのまま押し倒す。
橘「褒めてくれるとか思った?」
真島「……機嫌よさそうだし」
橘「残念。ほんと馬鹿だよね、お前」
真島、両手を広げる。
真島「……もっと言ってください」
真島と橘、抱き合いながらキスをする。
× × ×
机の上、並んだマグカップ。
真島と橘、ベッドの上に並んで座っている。
互いに半裸。
橘、煙草を吸っている。
真島、橘の肩にもたれかかっている。
真島「俺、同じ夢ばっかり見るんですよ」
橘「うん」
真島「俺と俊介さんがね、海に入ってるの。服着た
まま」
橘「俺と?」
真島「うん。それで、二人で遊んで、ぷかーって浮
かんでるんだけど」
橘「うん」
真島「どんどん、俊介さんだけ沈んでいっちゃうん
です。俺だけ一人ぼっち」
橘「……縁起悪い夢」
真島「そこで目が覚めて、隣見ても、誰も居なく
て。すごく淋しくて、毎朝泣いてて」
橘「……」
真島「沈むのは俺だけで十分なのに……」
橘、吸っていた煙草を咥えさせて
橘「それ以上言わないでいいよ」
真島、煙草を吸うが、むせる。
橘「沈むなら、お前と一緒がいい」
真島、驚き、橘を見る。
真島「ほんと?」
橘、頷く。真島から煙草を奪う。
枕元の灰皿に入れる。
○同・玄関(朝)
真島と橘、向かい合って立っている。
橘「これ、持っていきなよ」
と、一万円札を渡す。
真島「え、何で」
橘「薬とかさ、結構金かかるでしょ」
真島「いや、でも」
橘「正直、金欲しいから来たんでしょ?」
真島「は? そんなわけ」
橘「まあ、貰っときなって」
と、無理やり一万円札を押し付ける。
橘「どうせこんなことでしか、金稼げないんだか
らさあ」
真島、言葉が出ず、涙目。
橘「……あ、今のは、その」
真島「俺、ほんとに俊介さんのこと……」
と、呟く。最後の方が聞き取れない。
橘「え?」
真島、そのまま飛び出していく。
ドアが勢いよく閉まる。
一人、取り残された橘。
(終)
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